著者
大塚 洋子
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

福島県の過疎地金山町を調査地域として選定し、高齢者の生活自立を支援する子世代である30歳代から50歳代の住民に対し、健康づくりや今後の生き方に関するアンケート調査を実施した。その結果は以下のようであった。1.健康づくりのために定期的な健診受診、十分な睡眠休養、気分転換の心がけについては実行率が高いものの、定期的な運動は低かった。2.健康づくりの施策として、運動環境の整備や精神保健事業の充実が高く望まれていた。3.自分の老後について考えている者は、半数以上であり、好きなことを優先する、のんびり気ままに過ごす、近所づきあいを大切にする生き方は高く望まれていた。4.ボランティア活動には6割以上に参加の意思をもっており、興味のある活動内容は、地域活動、環境活動やスポーツレクリエーション活動であり、国際交流活動や児童や障害者を対象とする活動は低調であった。5.世代間交流が重要であると捉えられており、世代間交流を進めるにあたっては餅つきや祭りなどの伝統行事、共同農作業、伝統芸能やむかし遊びなどの企画に高い関心がみられた。生活の質の向上においては、生活の安心と安定、生活の自立が重要であり、とりわけ生活支援は、支援する側と支援される側双方の健康資源が重要となること、また、生活の拠点である地域に根ざした、相互の助け合い支援としてのネットワークを活用しての健康資源の向上への期待は大きく、地域特性を配慮したきめ細やかな施策の取り組みが個人の主体的な取り組みとともに、地域社会の健康実現に肝要といえることを明らかにした。
著者
手塚 純一 大塚 洋子 長田 正章 岩井 良成
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.BbPI2176, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】 長い間、小脳は純粋に姿勢の制御や随意運動の調節を行なうための神経基盤であると考えられてきた。1980年代半ばから、神経心理学・解剖学・電気生理学などの発展により、運動・前庭機能以外にも様々な認知過程に関与することが明らかになってきた。1998年にはSchmahmannとShermanが小脳病変によって生じる障害の4要素(遂行機能障害・空間認知障害・言語障害・人格障害)を小脳性認知・情動症候群(CCAS)として提唱した。しかしながらリハビリテーションの領域では小脳と高次脳機能についての報告は散見されるが症例報告に留まっており、特に理学療法における報告は少ない。本研究の目的は、小脳の損傷部位と臨床症状の関係について量的研究を行ない、理学療法における小脳損傷に伴う高次脳機能障害に対する対処の必要性を明らかにすることである。【方法】1.対象: 対象は2008年1月から2010年10月の間に脳卒中を急性発症し当院に入院した患者連続895例のうち、小脳に限局した病変を有する39例である。除外基準は1)脳室穿破、2)水頭症、3)発症前より明らかな認知機能低下を有する例とした。2.方法 調査項目は年齢、性別、梗塞・出血の種別、画像所見、臨床症状とした。画像所見は入院時に撮影した頭部CTもしくはMRI画像を利用し、小脳の損傷部位を虫部、中間部、半球部に分け列挙した。臨床症状は意識清明となった時点での運動失調、見当識障害、注意障害、記憶障害、言語障害、空間認知障害、人格障害について次の基準で有無を判定し列挙した。運動失調は鼻指鼻試験もしくは踵膝試験での陽性反応を、人格障害はFIM(Functional Independence Measure)社会的交流項目での減点を認めた場合に有とした。それ以外はMMSE(Mini-Mental State Examination )、HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)の、見当識障害:見当識項目、注意障害:計算項目及び逆唱項目、記憶障害:遅延再生項目、言語障害:物品呼称項目もしくは語想起項目、空間認知障害:図形模写項目、において減点を認めた場合に有とした。3.解析 損傷部位と臨床症状に関連があるかを、フィッシャーの正確確率検定を用いて検討した。なお統計学的判定の有意水準は5%未満とした。【説明と同意】 本研究は個人情報を匿名化した上で、その取り扱いについて当院の規定に則り申請し許可を得た。【結果】1.最終対象者 39例中5例は脳室穿破、水頭症もしくは発症前からの認知機能低下を有し対象から除外した。従って最終対象者は34例(男性18例、女性16例、平均年齢70.2±11.0歳)であった。2.脳損傷様式 小脳梗塞11例、小脳出血23例、損傷部位は虫部~半球部に渡るものが15例、虫部~中間部が8例、中間部~半球部が9例、半球部のみが2例であった。3.臨床症状 項目毎に発生数を計上すると、運動失調31例(91.2%)、記憶障害23例(67.6%)、見当識障害17例(50.0%)、注意障害14例(41.2%)、言語障害9例(26.5%)、人格障害5例(14.7%)、空間認知障害5例(14.7%)であった。上記の症状の多くは合併し、総合すると24例(70.6%)に何らかの高次脳機能障害を認めた。半球部に損傷がある26例のうち22例(84.6%)に何らかの高次脳機能障害を認めた。半球部に損傷がない8例のうち6例(75.0%)には高次脳機能障害を認めなかった。4.解析 検定の結果、有意な独立性を認めた項目は1)虫部~中間部の損傷と運動失調の発生率(p<0.01)、2)半球部の損傷と何らかの高次脳機能障害の発生率(p<0.01)、3)半球部の損傷と記憶障害の発生率(p<0.001)であった。【考察】 半球部は歯状核から視床外側腹側核を経由して運動前野や前頭前野・側頭葉に投射し、小脳-大脳ループとして認知機能に関与している。本研究で半球部損傷の多くに高次脳機能障害を認めたことは、SchmahmannとShermanの報告と一致した結果となった。多くの例に記憶障害を認めたことにより、CCASの概念で取り上げられている作動記憶の障害や視空間記憶の障害だけでなく、エピソード記憶の障害にも小脳が関与している可能性が示唆された。 記憶障害・注意障害等による生活指導の定着率低下や、人格障害による練習の拒否等の問題は、理学療法の進行に大きな影響を与える。半球部に損傷を認めた場合には、高次脳機能障害の有無を精査し対処していく必要があると考える。今後は半球部損傷のみの症例数を増やすと同時に、各臨床症状の半球部における責任領域について検討を重ねていきたい。【理学療法学研究としての意義】 小脳損傷に伴う高次脳機能障害は患者の学習や社会復帰において多大な影響を与える要素であり、理学療法においてもその研究と対策は重要である。本研究はその一助となると考える。
著者
笠岡 俊志 大塚 洋平 牟田口 真 熊谷 和美 金子 唯 河村 宜克 鶴田 良介 前川 剛志
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.283-288, 2010-06-30 (Released:2023-03-31)
参考文献数
9

救急隊の活動中には現場や搬送の状況により良質な胸骨圧迫を実施できない可能性が指摘されている。本研究の目的は救急隊による心肺蘇生の質的評価と課題について検討することとし,救急救命士を対象に心肺蘇生の質に関するアンケート調査を行うとともに,蘇生訓練用シミュレーターを用いて胸骨圧迫の質および身体的ストレス度について評価した。アンケート調査では,蘇生活動時間のうち平均27%(中央値5分)は良質な胸骨圧迫を実施できていなかった。シミュレーターによる評価では,2分間の胸骨圧迫のうち約30%は良質な胸骨圧迫ではなかった。救急救命士の血圧・脈拍数・呼吸数で評価したストレス度は,胸骨圧迫実施前に比べ胸骨圧迫後に有意に上昇した。救急隊による心肺蘇生中には良質な胸骨圧迫を実施できない時間が存在し,改善策が必要である。
著者
中島 功 大塚 洋幸 市村 篤 本多 ゆみえ 梅澤 和夫 関 知子 中川 儀英 猪口 貞樹
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.219-224, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
5

家禽や野鳥が保有する低病原性鳥インフルエンザウイルスであってもヒトが死に至る例が報告されており, これまで定説となっていた豚由来のウイルス感染とは違うルートが推測される。鳥からヒトへの感染に関する最近の文献調査, およびモンゴルへの調査視察を踏まえ鳥から直接感染するインフルエンザの動向を本稿では報告する。アザラシのインフルエンザ, 日本のイノシシのインフルエンザ, 豚便所, 北米大陸における豚のインフルエンザ, H7N9の動向, スペイン風邪, シアル酸レセプタなどを文献調査した。その結果, ヒト側の遺伝子の発現の仕方の違い (シアル酸レセプタ), ウイルス側遺伝子再集合, RNAポリメラーゼの読み違いなどにより, 鳥型インフルエンザが直接ヒトに感染し, 重篤な症状を引き起こす可能性がある。臨床医としてこれらの報告を鑑み, 患者の感染ルートには常に十分な注意を払うべきと考える。
著者
斉藤 寿仁 大塚 洋子 倉井 宏明 大川 真一郎
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.213-217, 2004-02-29 (Released:2010-06-28)
参考文献数
7

胃食道逆流症Gastro esophageal reflux disease (GERD) は比較的新しい疾患概念で, 胃液が食道に逆流し不快な症状を起こしたり, 下部食道粘膜の障害を起こす疾患である.上部消化管内視鏡検査所見で食道粘膜にびらんや潰瘍を確認できる場合には逆流性食道炎と呼称している.本疾患の重要な特徴として胸やけなどの逆流による定型的自覚症状の有無や程度と食道粘膜の障害の程度 (内視鏡所見上の重症度) とは相関しないことが挙げられる.また, 逆流による自覚症状が非常に不快となり, 患者のQOLを著しく低下する場合があること, また様々な症状を呈することから診断治療の重要さが多くの論文にとりあげられている.耳鼻咽喉科領域の症状としては咽喉頭異常感 (globus sensation), 音声障害, 慢性の咳嗽, 耳痛, 喉頭肉芽腫などがあり, Laryngo pharyngeal reflux disease (LPRD) と呼んでGERDから区別して診断することが多くなった.GERDはいろいろな科に関係する症状を呈し, 診断に苦慮する場合も多いがプロトンポンプ阻害剤 (PPI) で劇的に症状を改善できる疾患で日常診療において常に念頭におく必要があると思われる.
著者
大塚 洋一
出版者
日本プロテオーム学会
雑誌
日本プロテオーム学会誌 (ISSN:24322776)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.53-62, 2022 (Released:2023-01-14)
参考文献数
26

疾患機構の解明や診断・治療の高度化には,細胞の変容を区別しうるイメージング技術が求められている.生体組織に含まれる分子群の分布を可視化する質量分析イメージングは,分子夾雑な細胞ネットワークのローカルな化学状態の変化を捉えるために有用である.本総説では,細胞スケールで,脂質やタンパク質の空間分布情報を計測するための先端技術の進展と,それらの生体組織のイメージングへの適用について概説する.微小領域の成分を高感度に計測するためのイオン化法や,試料の前処理法,質量分析装置の進展により,計測できる分子種が拡張されてきた.液体クロマトグラフィー質量分析法を用いたオミクス計測では得られない,疾患組織の不均一化に関与する分子群の分布情報は,生命科学研究の発展に資する.生体成分を詳細に計測するための基盤要素技術の研究開発と,それらを活用する実試料の研究の融合推進がより一層求められている.
著者
我妻 則義 小野寺 恭一 星 豪 大塚 洋一 小高 信子 堀込 智之 佐藤 昌孝 志摩 茂郎 永井 哲 高橋 明 文屋 優 笹野 義則 奥田 光直 久保 素幸 進藤 典夫 野呂 茂樹 阪路 裕
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.95-100, 1998

大雪の影響が残る大学入試センター試験初日の1月17日,宮城県工業高校を会場に東北支部座談会が行われました。急な呼び掛けにも関わらず,小中高大の関係者者3名,書面提出5名の参加によって,「中間まとめ」に対する活発な意見交換が行われました。午後2時より開始された座談会では3時間に亘り熱心な討議が展開されました。
著者
三吉 満智子 大塚 洋子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.157-165, 1995-02-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
10

This report provides theoretically a comparative study of basic pattern of waist loose type and fit type. Following experiments on basic patterns were conducted : 1) Experiments on the theoretical derivation of basic pattern making; 2) experiments on the theoretical verification of basic pattern making; 3) experiments on the body measurement as case examples.The results are summarized as follows : 1) Under convex points of upper trunk, there were differences in the surface angles between waist loose type and fit type, accordingly the element lengths of each parts differed. Therefore the lengths of basic pattern differed.2) The difference of element lengths was larger in back pattern than in front pattern.3) It was devised to change from basic pattern of waist fit type to loose type, utilizing “the difference” of element lengths.4) Even the three-dimentional form of armhole was the same, the sole of pattern armhole differed between in the case of waist loose type and the fit type.
著者
大塚 洋子 澤山 茂 川端 晶子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.177-184, 1995-08-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
14
被引用文献数
1

Jam was prepared from fresh rhubarb, and its properties and sensory characteristics were compared with fourteen kinds of manufactured jam.The pH value of the rhubarb jam was 3.55, a higher value than those of the other sample jams, its hardness was relatively low, and its cohesiveness and adhesiveness were about average.The sensory attributes of the jam samples were investigated by a factor analysis of the results of a sensory evaluation that was conducted by the semantic differential (SD) method.A profile of the sensory attributes was obtained by the SD method, using 20 parameters concerning appearance, flavor and texture. The factor analysis by the principal factor method of the intensity of sensory attributes ranked appearance first, taste and odor second.The factor analysis based on “like or dislike” of the sensory attributes, indicated that the first factor was taste and odor, and the second was appearance. The two-dimensional spatial diagram of the samples was made from the scores of these two factors as a correlation diagram, and the fifteen kinds of jams classified into two groups. The rhubarb jam was classified in the group of fruits and vegetables excepting table fruits.
著者
手塚 純一 大塚 洋子 長田 正章 岩井 良成
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.BbPI2176, 2011

【目的】<BR> 長い間、小脳は純粋に姿勢の制御や随意運動の調節を行なうための神経基盤であると考えられてきた。1980年代半ばから、神経心理学・解剖学・電気生理学などの発展により、運動・前庭機能以外にも様々な認知過程に関与することが明らかになってきた。1998年にはSchmahmannとShermanが小脳病変によって生じる障害の4要素(遂行機能障害・空間認知障害・言語障害・人格障害)を小脳性認知・情動症候群(CCAS)として提唱した。しかしながらリハビリテーションの領域では小脳と高次脳機能についての報告は散見されるが症例報告に留まっており、特に理学療法における報告は少ない。本研究の目的は、小脳の損傷部位と臨床症状の関係について量的研究を行ない、理学療法における小脳損傷に伴う高次脳機能障害に対する対処の必要性を明らかにすることである。<BR>【方法】<BR>1.対象:<BR> 対象は2008年1月から2010年10月の間に脳卒中を急性発症し当院に入院した患者連続895例のうち、小脳に限局した病変を有する39例である。除外基準は1)脳室穿破、2)水頭症、3)発症前より明らかな認知機能低下を有する例とした。<BR>2.方法<BR> 調査項目は年齢、性別、梗塞・出血の種別、画像所見、臨床症状とした。画像所見は入院時に撮影した頭部CTもしくはMRI画像を利用し、小脳の損傷部位を虫部、中間部、半球部に分け列挙した。臨床症状は意識清明となった時点での運動失調、見当識障害、注意障害、記憶障害、言語障害、空間認知障害、人格障害について次の基準で有無を判定し列挙した。運動失調は鼻指鼻試験もしくは踵膝試験での陽性反応を、人格障害はFIM(Functional Independence Measure)社会的交流項目での減点を認めた場合に有とした。それ以外はMMSE(Mini-Mental State Examination )、HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)の、見当識障害:見当識項目、注意障害:計算項目及び逆唱項目、記憶障害:遅延再生項目、言語障害:物品呼称項目もしくは語想起項目、空間認知障害:図形模写項目、において減点を認めた場合に有とした。<BR>3.解析<BR> 損傷部位と臨床症状に関連があるかを、フィッシャーの正確確率検定を用いて検討した。なお統計学的判定の有意水準は5%未満とした。<BR>【説明と同意】<BR> 本研究は個人情報を匿名化した上で、その取り扱いについて当院の規定に則り申請し許可を得た。<BR>【結果】<BR>1.最終対象者<BR> 39例中5例は脳室穿破、水頭症もしくは発症前からの認知機能低下を有し対象から除外した。従って最終対象者は34例(男性18例、女性16例、平均年齢70.2±11.0歳)であった。<BR>2.脳損傷様式<BR> 小脳梗塞11例、小脳出血23例、損傷部位は虫部~半球部に渡るものが15例、虫部~中間部が8例、中間部~半球部が9例、半球部のみが2例であった。<BR>3.臨床症状<BR> 項目毎に発生数を計上すると、運動失調31例(91.2%)、記憶障害23例(67.6%)、見当識障害17例(50.0%)、注意障害14例(41.2%)、言語障害9例(26.5%)、人格障害5例(14.7%)、空間認知障害5例(14.7%)であった。上記の症状の多くは合併し、総合すると24例(70.6%)に何らかの高次脳機能障害を認めた。半球部に損傷がある26例のうち22例(84.6%)に何らかの高次脳機能障害を認めた。半球部に損傷がない8例のうち6例(75.0%)には高次脳機能障害を認めなかった。<BR>4.解析<BR> 検定の結果、有意な独立性を認めた項目は1)虫部~中間部の損傷と運動失調の発生率(p<0.01)、2)半球部の損傷と何らかの高次脳機能障害の発生率(p<0.01)、3)半球部の損傷と記憶障害の発生率(p<0.001)であった。<BR>【考察】<BR> 半球部は歯状核から視床外側腹側核を経由して運動前野や前頭前野・側頭葉に投射し、小脳-大脳ループとして認知機能に関与している。本研究で半球部損傷の多くに高次脳機能障害を認めたことは、SchmahmannとShermanの報告と一致した結果となった。多くの例に記憶障害を認めたことにより、CCASの概念で取り上げられている作動記憶の障害や視空間記憶の障害だけでなく、エピソード記憶の障害にも小脳が関与している可能性が示唆された。<BR> 記憶障害・注意障害等による生活指導の定着率低下や、人格障害による練習の拒否等の問題は、理学療法の進行に大きな影響を与える。半球部に損傷を認めた場合には、高次脳機能障害の有無を精査し対処していく必要があると考える。今後は半球部損傷のみの症例数を増やすと同時に、各臨床症状の半球部における責任領域について検討を重ねていきたい。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 小脳損傷に伴う高次脳機能障害は患者の学習や社会復帰において多大な影響を与える要素であり、理学療法においてもその研究と対策は重要である。本研究はその一助となると考える。
著者
網野 真理 吉岡 公一郎 鈴木 陽介 上村 春良 福嶋 友一 櫻井 馨士 守田 誠司 大塚 洋幸 中川 儀英 山本 五十年 児玉 逸雄 猪口 貞樹 田邉 晃久
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.41, no.SUPPL.3, pp.S3_138-S3_138, 2009 (Released:2015-01-23)

本邦においては硫化水素による自殺者が2008年の1年間のみで1,007人にものぼり社会的に深刻な問題になっている. 今回われわれは, 重篤な意識障害と呼吸不全に心筋障害を合併した硫化水素中毒患者の救命に成功し, 心筋障害の回復過程を心臓核医学検査により評価し得たので報告する. 症例は32歳, 男性. 自ら硫化水素を発生させて吸入自殺を図り, 救急車で当院救命センターに搬送された. 来院時の身体所見では, 除脳硬直肢位, 口唇のラベンダーブルー斑, 腐卵臭を呈し, 両側肺野では湿性ラ音が聴取された. 硫化水素中毒に伴う意識障害, 呼吸不全, 肺炎, 横紋筋融解症と診断し, 人工呼吸器管理, 高濃度酸素投与にて集中治療室へ入院. 第2病日には肺炎による敗血症性ショックを発症, 第3病日には横紋筋融解症の進行と心筋障害の新規出現が認められた. さらに第5病日には心原性ショック, 肺水腫が出現したが, 第7病日には人工呼吸器からの離脱に成功した. 第14病日は心筋血流イメージとして99mTc-tetrofosmin (TF), 心筋脂肪酸代謝イメージとして123I-BMIPP, 心臓交感神経イメージとして123I-MIBGを施行可能であった. TF, BMIPPでは前壁の一部, 下壁~後壁における集積低下が認められ, MIBGでは高度交感神経障害が示唆された. 同時期に施行した冠動脈CTにおいて冠動脈の有意狭窄はなかった. 心筋障害に対する内服加療としてカルベジロールおよびエナラプリルを投与し, 第38病日に退院となった. 受傷6カ月後の心電図および心臓超音波検査では, 左室壁運動は正常化し心臓核医学検査ではTF, BMIPPにおける前壁, 下壁~後壁の集積低下は改善した. MIBGにおいては, wash out rateは改善した. 以上の臨床経過から, 内因性の急性心筋梗塞, たこつぼ心筋症, 急性心筋炎の可能性は低く, 硫化水素による心筋障害と考えられた. 本症例は重篤な硫化水素中毒からの急性期離脱後, およそ6カ月の経過を経て心筋障害の改善傾向を示した貴重な症例である.
著者
山口 尚秀 宮崎 久生 神田 晶申 大塚 洋一
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:07272997)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.944-949, 2002-02-20

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