著者
鹿村 恵明 高橋 淳一 大山 明子 根岸 健一 伊集院 一成 上村 直樹 青山 隆夫
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.131, no.10, pp.1509-1518, 2011 (Released:2011-10-01)
参考文献数
9
被引用文献数
2 4

Community pharmacists can provide effective pharmaceutical care by questioning the physicians about their prescriptions. The regulatory authority (Ministry of Health, Labour and Welfare or the like) has been issuing instructions/advice to health insurance-covered pharmacies about the nature of questions to be asked to physicians under the national health insurance system. However, this practice has been facing similar kind of problems almost every year. To identify the reasons for repetition of the problems and facilitate proper application of drug therapy at hospitals, we recently examined the nature of questions asked to physicians by conducting a survey of 165 health insurance-covered pharmacies belonging to 8 district branches of the Japan Pharmaceutical Association. When the pharmacists were asked to express their view whether each of the 18 sample questions included in the past surveys was actually necessary, the most frequent answer from the respondents (n=1980) was “neutral” (42.9%), followed by “unnecessary” (29.0%) and “necessary” (26.6%). Further, 55.5% respondents answered that it is necessary to refer to publications of the concerned fields (guidelines, etc.) when questioning the prescriptions. However, the responses about the possible reasons for judging the necessity of the questions suggested that sometimes the pharmacists failed to understand the details of such publications. The results from this study suggest that a high percentage of community pharmacists believed that there was little need to ask questions about prescriptions if the suggestions made by the regulatory authority about the relevant questions were taken into account. Further, our study findings suggested that pharmacists working at clinics cannot present a clear-cut rationale for their judgment about the necessity of asking questions about prescriptions under the current circumstances where sufficient information collection and the evaluation of need for asking questions about prescriptions are not possible.
著者
山本 英一郎 樋口 雅樹 井上 裕次郎 青山 菜美子 廣橋 猛
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.191-196, 2021 (Released:2021-06-02)
参考文献数
5

【緒言】新型コロナウイルス感染症の第1波拡大中に, 疼痛コントロール目的に緩和ケアチームで介入していた患者が新型コロナウイルス感染症に罹患し死亡した2例を経験したので報告する. 【症例】疼痛コントロール目的にヒドロモルフォン錠を内服していた造血器腫瘍患者2例であった. 両者とも経過中に新型コロナウイルス感染症に罹患したが, 新型コロナウイルス感染症の特徴の一つとされるhappy hypoxiaと考えられる状態を認めた. 急激な全身状態の悪化を認めながらも呼吸困難感の訴えはなく, 投与経路を含めた薬剤調整を行い症状緩和に努めた. 【考察】緩和ケア診療で関与する患者が新型コロナウイルス感染症に罹患した場合, 基礎疾患を有するため急激な状態悪化を認める可能性があるとともに, 新型コロナウイルス感染症の特徴的な症状に応じたオピオイドタイトレーションが必要となる可能性がある.
著者
赤木 祐貴 荒井 碧 下村 斉 山本 康次郎 青山 隆夫
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.404-414, 2015-06-10 (Released:2016-06-10)
参考文献数
37
被引用文献数
1 1

Low-dose aspirin inhibits cyclooxygenase-1 (COX-1) on platelets irreversibly, suppressing platelet aggregation.Nonsteroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs) also inhibit COX-1 reversibly by forming a salt bridge. However, there is little information on the antiplatelet effects of the chronic use of NSAIDs (other than aspirin). We performed pharmacokinetics/pharmacodynamics (PK/PD) analysis using in vitro experimental data obtained when NSAIDs were added to human blank blood, and estimated the antiplatelet effects of continuous NSAID administration.Ibuprofen, diclofenac, indomethacin and loxoprofen were studied in a one-compartment model, and etodolac was studied in a two-compartment model. Platelet aggregation was measured after adding NSAIDs to platelet-rich plasma at a range of concentrations containing the maximum plasma concentrations of one clinical dose. We calculated the platelet-aggregation threshold index (PATI) as an index of aggregation activity, which was defined as the putative stimulus concentration giving 50% aggregation, and performed PD analysis according to the sigmoidal Emax model. Simulated time-PATI curves of NSAIDs were compared to that of low-dose aspirin.Simulated values of increase in PATI for the maximum plasma concentration of each NSAID were lower than 3.9 µg/mL, which is the same as that of low-dose aspirin. Increases in PATI around the trough concentration were nearly zero for all NSAIDs except ibuprofen, thus suggesting that the antiplatelet effects of continuous NSAID administration are weaker and less persistent than those of low-dose aspirin. The simulation results indicate that continuous NSAID administration is less effective at preventing thrombosis and embolism than low-dose aspirin, and postoperative NSAID treatment needs to be careful of the occurrence of bleeding.
著者
青山 雅史
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.44-60, 2011-01-01 (Released:2015-01-16)
参考文献数
50
被引用文献数
1 1

飛騨山脈南部槍・穂高連峰における山岳永久凍土の有無およびその分布状況を明らかにするため,小型自記温度計を用いて,気温および地温の観測をおこなった.気温観測の結果,槍・穂高連峰主稜線上は不連続永久凍土帯の気温条件下にあることが判明した.また,地表面温度観測の結果,本山域のカール内に存在する岩石氷河や崖錐斜面上の多数の地点における晩冬季の積雪底地表面温度(BTS)の値は,それらの地点に永久凍土が存在する可能性があることを示した.特に,大キレットカール内の岩石氷河上では,永久凍土が存在している可能性が高いことを示すBTSや年平均地表面温度などの値が複数年にわたって得られた.地表面が特に粗大な礫から成る地点では,冬季の地表面温度の低下が他地点よりも顕著であった.これは,冬季に粗大礫の上部が積雪面上に露出し,その露出部が寒冷な外気により冷却され,礫自体の冷却が進行していくことによりもたらされたものと考えられる.
著者
青山 敦 阿部 惇
出版者
Japanese Society for Engineering Education
雑誌
工学教育 (ISSN:13412167)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.3_123-3_127, 2006 (Released:2006-06-23)
被引用文献数
1 1

Japanese industry has been encouraged to transform from a mode of ‘recovery’ to one of 'front-runner' in effective innovation and creation of new businesses and markets based in accomplishments of basic research. Graduate School of Technology Management at Ritsumeikan University strives to not only offer knowledge and skills, but also business experiences to its students so that they may acquire the abilities to discover and solve practical problems logically, analytically and systematically. To achieve these aims, it has inaugurated the Ritsumeikan University Practicum Program by enhancing existing internship programs. Under the guidance of its faculties, this program will allow its students a chance to set and solve actual problems in real world business environments.
著者
青山 英幸
出版者
日本アーカイブズ学会
雑誌
アーカイブズ学研究 (ISSN:1349578X)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.23-46, 2015-06-30 (Released:2020-02-01)

この覚書は、2013年1月から2014年7月までに、公文書管理法体系の一部改正――閣議議事録の作成など――が検討された経緯を跡づけ、旧情報公開法体系の「車の両輪」遺産を継承したこの法体系につぎの問題があると指摘した。a)この法体系の「行政文書」の範疇に含まれないドキュメント/レコードとして、1)ドキュメント/レコードの一部として機能している市販刊行物など、2)公文書管理法以外の法律にもとづく「法定ドキュメント/レコード」、3)非「共用文書」としての「メモ」ドキュメント/レコードがあること、b)特定秘密保護法により2)のドキュメント/レコードの領域が一層拡張されたこと、c)閣議議事録などの真正性が3)の「メモ」ドキュメント/レコードと位置づけられ会議構成員の確認行為の欠落により損なわれていること、それとともに、閣議議事録作成のあらたな「神話」が発生しつつあると示唆した。これら諸課題を解決する方途として、各府省庁ドキュメント/レコードは国民の財産であるという観点から、公文書管理法と情報公開法の見直し、「行政文書」と上記1)から3)を「パブリック・ドキュメント/レコード」“Public Docurments/ Records”へ統合し、これら国民の財産を適正にコントロールするArchives Records Management: ARM を強力に推進する機関の創出に言及した。
著者
青山 真人 夏目 悠多 福井 えみ子 小金澤 正昭 杉田 昭栄
出版者
Japanese Soceity for Animal Behaviour and Management
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.109-118, 2010-12-25 (Released:2017-02-06)
参考文献数
34

本研究の目的は、捕食動物に由来する種々の刺激がヤギに及ぼす忌避効果を、ヤギの生理学的および行動学的反応を解析することによって検討することである。実験1においては、7つの刺激-CDプレイヤーで再生したチェーンソーの運転音(ChS)、イヌの吠え声(DoB)、オオカミの遠吠え(WoH)、ライオンのうなり声(LiG)、トラのうなり声(TiG)、テレビモニターに映したオオカミの映像(WoV)、実物のイヌの毛皮(DoS)-をそれぞれ4頭のメスシバヤギに提示し、その反応を観察した。DoBおよびDoS区において、他の区に比較して血中コルチゾル(Cor)濃度が有意に高く(P<0.01、反復測定分散分析およびTukeyの検定)、30分間の身繕い行動の頻度が有意に少なかった(P<0.1、Friedmanの検定とNemenyiの検定)。他の刺激については、いずれの測定項目においても対照区(提示物なし、音声を出さないCDプレイヤー、映像を映さないテレビモニター)との間に違いはなかった。実験2においては、実験1と同じ4頭のヤギを用いて、ChS、DoB、WoH、LiG、TiG、DoSの6つの刺激の忌避効果を検討した。飼料のすぐ後方にこれらの刺激のいずれかを提示し、それぞれのヤギがこの飼料を摂食するまでに要する時間を測定した。4頭いずれの個体も、DoBおよびDoS区においては30分間の観察時間中に一度も飼料を摂食しなかった。一方、他の刺激においては遅くとも126秒以内には摂食を開始した。各個体においで、実験2における結果と、実験1における結果との間には強い相関が観られた(対血中Cor濃度:r=0.78〜0.94、対身繕い行動の頻度:r=-0.73〜-0.98)。実験3では、メスシバヤギ5頭を用い、実験1と同じ方法でChS、DoB、イヌの置物(DoF)、DoS、段ボール箱で覆ったイヌの毛皮(DSC)の効果を検証した。実験1と同様、DoBおよびDoS区において、有意な血中Cor濃度の増加と身繕い行動の頻度の減少が観られた。DSC区においては5頭中4頭が、顕著な血中Cor濃度の増加あるいは身繕い行動の頻度の減少のいずれかを示した。これらの結果から、本研究で観られたイヌの吠え声、あるいはイヌの毛皮に対する忌避効果は、ヤギがこれらの刺激に強い心理ストレスを持ったことが原因であると示唆された。さらに、視覚的な刺激は、少なくともそれが単独で提示された際には効果が薄いこと、聴覚的な刺激および嗅覚的刺激が強い忌避効果をもたらす可能性が示唆された。
著者
青山 浩一郎
出版者
多摩大学
雑誌
経営・情報研究 : 多摩大学研究紀要 (ISSN:13429507)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-22, 2002

1990 年代以降、大量に発行されてしまった国債を今後どうするかは、現在のわが国で最大の政策課題になってきた。2000 年度あたりまで、正確には森内閣までは、景気回復を最優先して国債の累増には眼をつぶるというのが政府の方針であった。小泉内閣が登場してから、国の債務累積を抑制しようということに政策の方向が転換した。「国債発行を30 兆円以内にとどめる」というのが、小泉首相の最初の具体的メッセージであった。それ以来、国債問題が国会でも、マスコミでも、霞ヶ関でも、あらゆる機会にとりあげられている。政府や日本銀行はホームページに国債コーナーを設け、広報活動にもつとめている。 しかしながら、経済用語として、国の政策手段として、この国債ほどわかりにくいものはめずらしい。専門家が使っている用語と、普通の国民が理解できる用語がちがうのだ。結果的に専門家の用語は、事実の隠蔽になっていることが多い。典型的な例が「国債発行30 兆円」である。「敗戦」を「終戦」と表現したのとおなじで、政府の国民にたいする欺瞞として、これほど大がかりなものは少ない。わかりやすく「国債の新規発行あるいは増発30 兆円」と、なぜ表現しないのだろうか。 そう思ったのが、今回の執筆動機である。 この小論では、国債をめぐる、政府の国民にたいする欺瞞、専門家が一般の人たちにあたえている誤解のいくつかを、できるだけ明らかにしてみたい。 そして、一般国民や多くの投資家が国債問題を正しく認識できるためには、どうしたらよいかを考えてみたい。とりあえず言えることがいくつかある。わが国最大の課題である国債に関して、政府や日本銀行は正確で平易な広報活動を展開していただきたい。とりわけ財務省、総務省、首相官邸は、債務者としての説明責任を自覚して、急いで本格的な広報にとりくまなければならない。そのとき、専門家の間でしか通用しない言語でなく、国民にむかって普通の言葉と論理を使って説明していただきたい。わが国では、第2 次大戦前後の経験を最たるものとして、国民は結果的に政府が推進した貯蓄奨励にしたがった結果、手痛い損失をこうむった歴史がある。国民は今後とも政府の言うことを、うたがいながら監視する必要がある。マスコミは国債問題をもっと正確に報道しなければならない。論者をふくめて金融・資本市場の研究者はもっと、国債問題の研究と発表をふやして、国民が正しい認識
著者
長谷 実李 青山 和裕
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.53-58, 2019

<p>本研究の目的は,じゃんけんの強さ(弱さ)とその人の性格特徴には相関性があるのか調査し,明らかにすることである。本稿ではその調査方法として,心理検査法として公的にも利用されているYG性格検査を用いて調査協力者の検査結果とじゃんけんの勝ち数を総合し分析し,その結果からじゃんけんと性格特徴にはどのような相関性があるのか検討・考察する。調査の結果,ノンパラメトリック検定の1つであるクラスカル・ウォリス検定を行ったところ,YG性格検査で分類される5つの性格型の各群におけるじゃんけんの勝率に有意差は得られなかった。今後,別の条件を設定したじゃんけんや,他の心理検査法の結果によって異なる結果を得られる可能性があるため,更なる調査が必要である。</p>
著者
郡司菜津美 岡部大介# 青山征彦 広瀬拓海 太田礼穂 城間祥子 渡辺貴裕# 奥村高明#
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第61回総会
巻号頁・発行日
2019-08-29

企画趣旨 パフォーマンス心理学とは,個体主義と自然科学主義を特徴とする心理学へのラディカルな批判から出発し(茂呂, 2019),人間の集合的発達を支えようとする新しい運動である。本企画では,このパフォーマンス心理学の具体について話題提供することで,これまでの学習と発達の捉え方との違いを示し,参加者皆で学習/発達観を発達させたい。 有元(2019)が「パフォーマンスという言葉を用いるということは,アームチェアに座って頭で考えることから心理学という学問を解放したいという意図がある」と述べているように,本企画では,学習と発達について主知的(intellectual)な理解をすることを目指すのではなく,理解のパフォーマンス化(performance turn)を目指してみたい。本企画では関連する2書『パフォーマンス心理学入門』(香川・有元・茂呂編著, 2019)および『みんなの発達!』(フレド・ニューマン著,茂呂・郡司・有元・城間訳,2019)から,発達とパフォーアンスに関する4つの話題を提供する。やり方を知らないことに取り組み,発達するためには,発達の場づくりを皆でパフォームする必要があり,それはアカデミアにしても同じことだ。パフォーマンス心理学においては,研究者自身もパフォーマンスの一部(青山, 2019)であることが前提とされる。 なお本企画は,SIG DEE(日本認知科学会 教育環境のデザイン分科会)が主催する。パフォーマンス・ターンをパフォーマンスする太田礼穂 本発表では,状況論におけるパフォーマンス心理学への転回(パフォーマンス・ターン)について理論的背景と方法論を比較し,発達的実践としての「パフォーマンス」の可能性を以下の2点から議論する。 まず,パフォーマンス心理学における,パフォーマンスの位置づけとその意味を紹介する。特にこのパフォーマンスが,個人に紐づけられた成果や技術という意味ではなく,たとえば乳幼児が遊びながら今現在の自分ではない自分に「成っていく」ような協働の過程に注目する理論的装置であることを紹介する。これを支えるヴィゴツキーの遊び論や演劇論,ヴィトゲンシュタインの言語ゲームの議論などの参照を通じ,パフォーマンス・ターンの意義を整理する。 次に,状況論との連続性と不連続性について紹介する。状況論(状況的学習論)では,人間の知的営みがいかに状況の中に埋め込まれ,その中に参加する人々がどのような存在になっていくかに注目する(たとえばLave & Wenger, 1991/1993)。これは人間の知的営みが社会的起源をもつというヴィゴツキーの理論に基づくものであり,人間の思考や学習の成り立ちを過度に内的プロセスから説明しようとする個人主義的アプローチとは異なる学習・発達に関する知見だといえる。パフォーマンス心理学もヴィゴツキーの理論に基づくという意味で,状況論と思想的起源を共有しているが,両者の違いはいったい何だろうか。本発表では「現実」の分析と制約という観点から,パフォーマンス心理学がもたらす「研究」と「実践」の接続の意味を考えていきたい。学校外における子ども・若者支援のパフォーマンス広瀬拓海 近年,貧困や格差が,子ども・若者にもたらす問題に関心が集まっている。本シンポジウムで話題提供者が注目するのは,以上のような問題を受けて,身近な子ども・若者のために勉強や食事,居場所を提供する新しい地域コミュニティをつくり出した人々の動きである。パフォーマンスとは,自分とは異なる人物に成ることであるが,それは既存の社会的な制約を超えた新しい活動やコミュニティを創造(ビルド)することと切り離せない。貧困問題という急速に現れて来た社会的な課題に対して,それらを良い方向に導いていくための地域住民のコミュニティビルドは,まさに今生まれつつある新しいパフォーマンスだといえるだろう。本発表では,以上のコミュニティビルド=パフォーマンスが,実際の社会的な文脈の中でどのように準備されてきたのかを検討していく。特に,このとき交換(柄谷,2001)の観点からそのプロセスを見ていくことで,パフォーマンスが歴史的な交換様式の変化の中で生じた問題への応答としてあらわれてくる可能性について議論する。教員養成におけるパフォーマンスの実際郡司菜津美 現在,新たに教員養成に求められていることとして,(1)主体的・対話的で深い学びの場作りができるようになること,(2)チーム学校の一員として仲間と共同することの重要性について理解させること,の2点が挙げられる。筆者は教員養成に携わる一人として,この2点を重視した指導を行ってきた。そのために応用演劇の一つである「インプロ」を用い,学生たちが教師としてのパフォーマンスを学習できるように重点を置いてきた。 ここでいう教師としてのパフォーマンスとは,やり方を知らないことに皆で取り組める場をつくることであり,講義ではこのことを先取り的に体験させた。またインプロとは,共同の価値を学習することができる演劇手法であり,集団の中で失敗を失敗にしない安心感のある場を作る体験ができるものである(Lobman & Lundquist, 2007)。講義ではインプロを用いたことで,学生たちはチームの一員として仲間と共同することの重要性に気付いたと考えられた。 ただ,こうした学生たちの姿は何かができるようになったというよりは,パフォーマンスの意味・意義を体験的に知ったという方が妥当であろう。そこから何が起きるのか?授業である以上,ここが最も重要である。 本発表では,筆者が実際に授業で実践しているパフォーマンスの効果について,皆さんと検討してみたい。みんなの発達のためのパフォーマンス城間祥子 『みんなの発達!』は,現代の社会や文化の中で感情の痛みをかかえて生きているごく「普通の人びと」の日常に,ソーシャルセラピーの実践的で批判的なメッセージを届けるために書かれた本である。この本には,パフォーマンス心理学の創始者のひとりであるフレド・ニューマンのソーシャルセラピーに参加した「普通の人びと」が数多く登場する。ソーシャルセラピーは,セラピーと称しているものの,従来の心理療法とは異なり,診断とそれにもとづく問題解決を目指さない。コミュニティを創造するプロセスを通して,自らのライフ(生活,人生,生き方)の全体を転換させる実践である。 ソーシャルセラピーグループは,参加者が自らの発達を創造することを支える場である。参加者は場に「ギブ」することで場の発達に貢献する。同時に,場の発達が個々の参加者に発達と成長をもたらす。グループで試みられた新しい生のパフォーマンスは参加者相互の「ギブ」によって完成し,問題がもはや問題として成立しなくなるような発達が生じるのである。 本発表では,ソーシャルセラピーのアプローチを理解する上で重要ないくつかの概念(ゲットとギブ,全体と個別,言葉,エクササイズ等)を共有するとともに,ニューマンの哲学と実践を,私たちの文化や日常を変化させるためにどのように用いていけばいいのかを議論したい。参考文献「パフォーマンス心理学入門 共生と発達のアート」 香川秀太・有元典文・茂呂雄二 編著 新曜社 2019「みんなの発達!ニューマン博士の成長と発達のガイドブック」 フレド・ニューマン・フィリス・ゴールドバーグ 茂呂雄二・郡司菜津美・城間祥子・有元典文 訳 新曜社 2019
著者
青山 善充 紺谷 浩司 池田 辰夫 石井 紫郎 河野 正憲 瀬川 信久 加藤 雅信 松下 淳一 植田 信廣 三谷 忠之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本科研費による共同研究においては.10国立大学法学部(北大・東北大・東大・名大・阪大・香川大・岡山大・広島大・九大・熊本大)が.最高裁の方針により廃棄の運命にあった明治初年から昭和18年確定分までの民事判決原本を.各地の裁判所から暫定的に移管をうけたのを契機として.この貴重な史科群の保存利用に関し、多面的な検討を行った.具体的には.本研究会に4分科会を設け(外国法制研究、恒久計画測定.保存対策.プライヴァシ-.データベース).それぞれが核となって検討を重ねた結果、以下の知見を得た:1.民事判決原本に関する外国法制調査ヨーロッパ諸国(ドイツ・フランス・イギリス・イタリア・北欧).アメリカ合衆国.韓国.台湾.パナマといった諸国において.民事判決原本が如何なる機関において.如何なる期間保存され.どのように利用に供されているかを.現地調査やヒヤリングをも含めて調査した.この結果、国立の公文書館において.行政・立法の公文書とあわせて現用をおえた司法府の公文書を保存し.利用に供するのが一般的であること.そのシステムは.日本に比して発達した公文書館制度と表裏をなしていることが明確になった.2.日本における民事判決原本恒久保存施設の模索上記1に得た比較法的知見を踏まえて9民事判決原本の恒久的保存利用施設として如何なる機関が適切であるかを検討したところ.大学での保管はあくまで暫定的でイレギュラーな緊急〓措置であり.国立公文書館・国立国会図書館といった既存施設にもそれぞれ難点があるので.やはり.(名称はともあれ)司法資料を収容する国立の文書館を新設するのが筋であるという結論に達した.なお.このことと.民事判決原本を地域的に一箇所に集中するか地方分散とするかは.必ずしも必然的に結びつくものでないということが了解された.3.大学保管中の保存対策2の恒久保存施設に民事判決原本を移管するまで.3乃至4年間をめどに大学が保管の責務を負うのであるが.その間の保存対策について.史料保存学専門家の意見をきいて.協議し.空調・防虫対策・保安措置等について.各大学に助言を行うことができた.4.大学保管中の利用ガイドライン策定大学保管中に.大学は.可能な限り民事判決原本を学術利用に供することが移管に関する最高裁との協定からも望ましいが.これには.史料の性質上.プライヴァシ-保護を中心とする微妙な配慮を必要とする.これらの点を考慮しつつ.本研究会は.学術利用と事件当事者による閲覧との二類型を念頭においた詳細な利用ガイドラインとそれに応じた利用申請書式を策定し.それを.各保管大学で使用することとした.5.民事判決原本のデータベース化これまで民事判決原本へのアクセスを困難にしてきた最大の理由は.その検索の困難性にあった.この点は.民事判決原本に含まれるデータをデータベース化することによって大きく改善される.と同時に.原本自体を画像入力することによって.貴重な原本の損耗を防止できる.この見地から.フィージブルな民事判決原本データベースを模索した結果.明治23年までの判決原本を全文画像入力し.これに.最小限の項目データを付して検索の便を図ることが最善であるとの結論に達し.国際日本文化研究センターがこの作業を引き受けることとなった.
著者
蛭田 明宏 松本 良 石田 泰士 戸丸 仁 町山 栄章 シュナイダー グレン 青山 千春 弘松 峰男
出版者
The Sedimentological Society of Japan
雑誌
堆積学研究 (ISSN:1342310X)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.89-93, 2007-04-20 (Released:2008-12-12)
参考文献数
6
被引用文献数
1

The Umitaka (UT) spur in Japan Sea is characterized by methane-induced features such as Bottom-simulating reflectors (BSRs), pockmarks, mounds and ∼600 m high plumes in the water column (Aoyama et al., 2004). These features seem to indicate active fluid and/or gas venting on the UT spur. In order to estimate methane flux and gas hydrate existence, we measured sulfate and chloride ion concentration of pore water. Sulfate ion concentration has revealed much stronger methane flux than Brake Ridge and chloride anomaly seems to result of recent gas hydrate formation and past dissociation.