著者
青木 浩治 Koji AOKI
出版者
甲南大学経済学会
雑誌
甲南経済学論集 = Konan economic papers (ISSN:04524187)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.1-43, 2019-09-30

本稿は, 第一に, 世界51ケ国の国際投資ポジション(International Investment Position: IIP) の超過収益率を計測することによって日本のIIP 超過収益率の源泉の特徴を浮き彫りにする。特に, 世界第一位の債権大国・日本のIIP 超過収益は主として債券投資超過収益に依存しているものの, 国際比較の観点からはこの日本の特徴はむしろ例外的であり, IIP 超過収益率はエクイティ関連投資, なかでも直接投資の超過収益率に強く依存していることを明らかにする。第二に, 日本の正のIIP 超過収益率が発生する理由を, リスク回避度の差に着目したシンプルなリスク分担モデルで分析し, 日本のようなリスク回避度の高いと考えられる経済はリスク・オフ期における実質為替レート増価というヘッジ機能を提供する代償として正のIIP 超過収益を享受できることを示す。第三に, 日本のIIP 超過収益の源泉が債券投資超過収益から直接投資超過収益にシフトしつつある中で, 外国人投資家による日本株保有増加と株高による負債面での評価損によって, 安倍政権発足後急速に日本のIIP超過収益率が低下している現状を報告する。
著者
青木 光広
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

ストレス応答や免疫応答に中心的役割を果たす転写因子のひとつであるNF-κBを介した慢性炎症が難治性メニエール病の進行する難聴や両側化に、関与するかどうかを2年間の前向き研究で検討する。患者の末梢血単核細胞(PBMC)を分離し、コントロール(非刺激)、酸性刺激下、リポポリサッカライド(LPS)刺激下で培養した上で、炎症性サイトカインやアヂィポカインなどの放出の違いが聴力レベルへ与える影響から進行性難聴ならびに両側化の病態解明ならびにその対処法を解明する。
著者
森山 裕太 青木 久
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

<br><br>1.はじめに<br><br> 岩石海岸における特徴的な波食地形に波食棚がある.波食棚とは,海崖基部から海側に向かって平坦面をもち,その海側が急崖となっている地形である.波食棚の高さは,波の侵食力や岩石の抵抗力(力学的強度)などの諸要因によって規定されると報告されている.本研究では,まず静岡県須崎半島の岩石海岸に卓越する波食地形を把握する.そして恵比須島に発達する,火山角礫岩と砂岩からなる波食棚の形成高度の違いについて,岩石の抵抗力という観点から定量的に明らかにすることを目的とする.<br><br>2.調査地域の概観<br><br> 須崎半島は,静岡県下田市東部に位置する半島であり,伊豆半島ジオパーク下田エリアの一部となっている.恵比須島は,須崎半島南部の沖にある小さな島であり,須崎ジオサイトとなっている.恵比須島を調査地域として選定した理由は,(1)島の周囲には「千畳敷」と呼ばれる火山角礫岩と砂岩で構成される波食棚が発達すること,(2)それらの波食棚は近接して存在するため,作用する波の侵食力や潮汐の場所的違いが少なく,波食棚の地形と構成岩石との関係を考察しやすいと考えたためである.<br><br>3.調査方法<br><br> まず地形図の読図と現地観察に基づき,須崎半島南部に発達する波食地形を分類し,地質図を用いて,構成岩石との対応関係を調べた.次に,恵比須島に発達する波食棚を構成する火山角礫岩と砂岩の分布を調べ,地質図の作成を行った.さらに火山角礫岩と砂岩からなる波食棚に測線を設け,レーザー距離計を用いた縦断面測量を行い波食棚の形成高度を把握した.またシュミットハンマーによる岩石強度の計測を行った.<br><br>4.結果・考察<br><br> 須崎半島南部の岩石海岸は火山角礫岩,砂岩,安山岩で構成されており,波食棚の地形が卓越することがわかった.安山岩からなる海岸では,一部海食崖(プランジングクリフ)となっている海岸も存在した.<br><br>恵比須島に発達する波食棚は,火山角礫岩の波食棚のほうが砂岩の波食棚よりも高い位置に形成されていた.構成岩石の強度は火山角礫岩のほうが砂岩よりも大きな値を示した.このように力学的強度の大きい火山角礫岩の方が,砂岩に比べて波食棚の形成高度が高いという結果は,火山角礫岩の波食棚は砂岩に比べ,波によって下方に侵食されにくく,高い位置に形成されていることを示唆している.
著者
和田 宏幸 青木 美智子 田宮 千春
出版者
医療法人茜会 昭和病院
雑誌
昭和病院雑誌 (ISSN:18801528)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.57-60, 2005 (Released:2005-09-13)
参考文献数
7

病棟にポータブル撮影に行くと、急いで遠くに逃げる人や、部屋の中にいるときに撮影すると、かなり離れていても「ああ、放射線あびちゃった」などと落胆する人がいます。このように、放射線が恐いと思っている人や、不安に思っている人が多いようです。それでは、ポータブル撮影はそんなに恐いものなのでしょうか。そして、どのくらい周囲にいる人に影響があるのでしょうか。 結論的には、胸部ポータブル撮影では2m、腹部でも3m離れていれば問題ないことが分かりました。それ故、本人が退室を希望される場合以外は、お見舞いに来られた方の退室の必要はありません。近年、報道されている原子力発電所の事故による大量被曝と医療被曝の違いを認識していれば、ポータブル撮影時の被曝を恐がる必要はないといえます。

2 0 0 0 OA 青木南八遺稿

著者
青木得三 編
出版者
青木得三
巻号頁・発行日
1923
著者
上田 渉 大川 清孝 青木 哲哉 佐野 弘治 田中 敏宏 小谷 晃平 松井 佐織 会澤 信弘 川崎 靖子 斐 英洙 井上 健 平井 学 川島 篤
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1983-1991, 2008-12-25

要旨 患者は34歳の男性.当初回腸末端の不整形潰瘍,結腸の類円形潰瘍,縦走潰瘍からCrohn病を疑われた.steroid使用にて一時症状は軽快するが狭窄を呈し手術が施行された.その後も約1年にわたり発熱,腹痛が持続.播種性血管内凝固症候群で緊急入院した際,異常な抗Epstein-Barr virus(EBV)抗体価と血中EBVの増加から慢性活動性EBV感染症(chronic active EBV infection ; CAEBV)と診断した.CAEBVは数か月以上伝染性単核球症様の症状が持続し,5年で約半数が致死的となる疾患である.本症例はCrohn病類似の腸病変を呈したこと,steroidで一時症状が軽減したことで診断に難渋した.Crohn病と診断された症例でも不明熱が持続する場合はCAEBVの消化管病変の可能性も考え,EBVの検索をすることが必要であると考えられた.

2 0 0 0 OA 罰金額の変遷

著者
青木 正良
出版者
立教大学
雑誌
立教法学 (ISSN:04851250)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.149-174, 1998-03-20
著者
松岡 由幸 谷郷 元昭 寺内 文雄 久保 光徳 青木 弘行
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.57-66, 1997
参考文献数
8

近年, 製品に対するニーズが多様化する傾向にあり, 製品開発においてユーザーの嗜好性の違いを考慮した設計方法の構築が望まれている。そこで, 嗜好性の違いを考慮する方法として, ロバスト設計の方法に注目した。ロバスト設計とは, 製品における機能のばらつきに対処する方法である。本研究では, この方法を基に, 機能のばらつきを人の嗜好性の違いに置き換えることで, 嗜好性の違いを考慮する設計方法の構築を図った。具体的には, 自動車用シートのギャザーパターンをケーススタディーとして, シート設計におけるいせ込み量と引張力を制御因子, ギャザーパターンの外観に対する嗜好性の違いを誤差因子とし, ロバスト設計の手順に従うことで設計方法の構築を試みた。また, 従来の設計方法と比較することにより, 本方法の有効性を検討した。その結果, 今回の方法が製品設計において嗜好性の違いを考慮する上で有効であることを示した。
著者
露木 基勝 大儀 和彦 今井 裕一郎 青木 久美子 山本 一彦 桐田 忠昭
出版者
Japanese Society of Oral and Maxillofacial Surgeons
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.430-434, 2007-07-20 (Released:2011-04-22)
参考文献数
31
被引用文献数
1

An odontoma is an odontogenic, tumor composed of enamel, dentine, and cementum, commonly less than 30 mm in diameter. We describe a large compound odontoma arising in the left anterior region of the mandible.A 16-year-old boy was referred by an orthopedist to our hospital for evaluation of a radiopaque lesion in the left side of the mandible. Clinical examination revealed a bony-hard swelling in the left anterior region of the mandible at presentation. The left mandibular canine and lateral incisor were not erupted. Radiographic and CT examinations showed a large, circumscribed, radiopaque lesion, measuring 30×40×28mm and surrounded by a thin radiolucent area accompanied by two impacted teeth. There were many small tooth-like structures within the lesion. The clinical diagnosis was odontoma. The tumor and the impacted teeth were surgically removed by an intraoral approach under general anesthesia. The tumor was covered by a thin capsule and consisted of 321 small tooth-like structures. The histopathological diagnosis was a compound odontoma. The clinical course has been uneventful for 4 years 3 months after surgery.
著者
青木 悠 杉山 昌秀 依田 一美 星野 明子 跡部 治
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.371-376, 2011 (Released:2012-08-25)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

When lansoprazole orally dispersing tablets (30 mg) are administered through a tube, a residue often remains in the syringe and tube because the tablets contain fine enteric granules which are nearly insoluble in water. As a solution, we added thickening agents and examined their effectiveness in reducing the residue in syringes.The amount of lansoprazole residue in syringes was 11.4±1.3 mg when the agents were not added (Group A) and 1.3±0.6 mg when the agents were added (Group B). For Group A, the residue from a single injection was approximately 30-40% of the total amount of lansoprazole, while there was almost no lansoprazole residue for Group B. Performed by nurses, tube administration took slightly longer for Group B - 51.4±5.5 sec for Group A and 70.8±6.1 sec for Group B.Our solution of just adding thickening agents improved the dispersivity of the drug in the suspension as well as the mobility of the drug suspension, by getting the particles and solvent traveling at the same speed. It enabled injection to be performed smoothly and decreased the amount of residue in the syringe. The addition of thickening agents is therefore useful in tube administration because avoiding any lansoprazole loss would help ensure that the expected efficacy is achieved, since this is dosedependent.
著者
青木 康彦 野呂 文行
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.2-10, 2020-08-20 (Released:2021-08-20)
参考文献数
16

研究の目的 本研究では、発達障害児2名を対象に80回の随伴ペアリングを実施し、称賛が条件性強化子として成立し、維持するかを検討した。場面 大学のプレイルームで行った。対象児 発達障害のある幼児2名であった。行動の指標 “両手合わせ”、“ハイファイブ”の生起頻度であった。研究計画 “両手合わせ”にABCBデザイン、その後、コメントの条件性強化子成立、維持を検討するため、“ハイファイブ”にABデザインを用いた。介入 標的行動に随伴させて日常生活で聞くことが少ないコメント(中性刺激)を称賛として与え、同時にお菓子(強化子)を対提示した。結果 2名中2名で随伴ペアリング前の称賛期よりも随伴ペアリング後の称賛期において“両手合わせ”の生起頻度が多かった。また、2名中1名において随伴ペアリング期後の称賛期において“両手合わせ”の生起頻度は高頻度で6ブロック維持し、随伴ペアリングを行っていない“ハイファイブ”においても、消去期よりも称賛期において生起頻度が多かった。結論 80回の随伴ペアリングにより2名中2名で称賛コメントが条件性強化子として成立し、2名中1名で称賛コメントの条件性強化子の強化価が維持するものであった。
著者
青木 淳一
出版者
The Acarological Society of Japan
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.7-13, 1992-05-25 (Released:2010-06-28)
参考文献数
3
被引用文献数
2 3

栃木県宇都宮市上横田町にある温室内で栽培されているランの一種(Vanda)の茎・葉・花および培地から多数のササラダニ類が発見され,調査の結果,それらはパナマ,コロンビア,ヴェネズエラから知られるMochlozetes penetrabilis Grandjean(マルコバネダニ,新称),グァテマラから知られるPeloribates grandis(Willmann)(オオマルコソデダニ,新称),日本南部に分布するScheloribates decarinatus Aoki(ミナミオトヒメダニ,新称),および新種Hemileius clavatus(イムラフクロコイタダニ,新称)の4種からなることがわかった。これらのダニはランの輸入先であるタイ国から植物体に付着して移入されたものと思われる。今のところ植物に対する害の有無は不明であるが,ダニ体内に生きた植物に由来すると思われるものは見られず,一部の個体からは多量の菌類の胞子が見つかったことから,ランの植物体上や培地に生育する菌源を栄養源としているものと推定される。