著者
青木 健
出版者
東京大学東洋文化研究所
雑誌
東洋文化研究所紀要 (ISSN:05638089)
巻号頁・発行日
vol.158, pp.78-166, 2010-12-24

The Persian treatise, ‘Ulamā-ye Islām, whose origin is supposed to be the Pahlavi Edict by the Sasanian Prime Minister Mihr Narseh (5th CE) to force Armenian Christians to convert to Zoroastrianism at that time, i.e. Zurvanism, is the only surviving work from a Zurvanite point of view. Although the Persian text has been published in lithograph or print form since the 1820s, no critical editions exist thus far. To address this situation, I have collected independent MSS of that treatise both already known in Mumbai (3) and Navsari (1) and unknown in Tehran (2) and Hyderabad (1), and I have prepared the stemma codicum of ‘Ulamā-ye Islām and established an Urtext that could account for the variants. (改行) This process generated a number of findings, not confined to detailed textual issues, but including religious history. The Zurvanite thought expressed in this Urtext is quite resemblant of Manichaeism in its Cosmology, Anthropology and Eschatology, rather than Dualistic Zoroastrianism in Pahlavi Books written between the 9th and 10th centuries. If Zurvanism is allowed to speak for itself, it can tell us a great deal about the Religionsgeschichte in Early Sasanian Persia which focuses on Zurvanism’s unexpected but great influence on Manichaeism in historical context.
著者
青木 仁志 伊藤 太乙 長谷川 雄二
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.491-498, 2015-06-30 (Released:2015-06-30)
参考文献数
8

目的:近年,救急医療においては,頭部外傷に対して頭部CTのみで診断している例が散見される。頭蓋内出血の検出に対して頭部CT が第一選択であることは論を待たないが,頭蓋骨骨折を考慮した場合,頭部CTのみの診断で良いのか,その適否について検証を行った。方法:当院(東京都指定二次救急医療機関)を受診した頭部外傷7,126例を対象に後ろ向き研究を行った。頭部X線と頭部CTの頭蓋骨骨折に対する感度を求め,加えて,頭部CTでは検出されにくい頭蓋骨骨折の形態的特徴の分析と,頭部X線を併せて施行した際の被曝量,検査から診断に要する時間の比較検討を行った。さらに,頭部X線を施行せず頭部CTのみで診断する場合の頭蓋骨骨折を見逃す危険度を求めた。結果:頭蓋骨骨折に対する感度は頭部X線が0.99,頭部CTは0.46であった。頭部CTでは骨折の幅と角度によって検出されない形態的特徴が存在した。頭部X 線の被曝線量は頭部CTに比べて低く,検査から診断までに要する時間の延長はみられなかった(CT画像再構成時と比較)。頭部CTのみの場合と頭部X線も併せて施行した場合の頭蓋骨骨折の見逃しの相対危険度は128であった。結論:頭部CTの頭蓋骨骨折の診断能は極めて低く,骨折の幅と角度によっては検出されないことが判明し,頭部外傷をCTのみで診断することの危険性が示唆された。
著者
大川 清孝 青木 哲哉 上田 渉 佐野 弘治 小野 洋嗣 中内 脩介
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.10, pp.470-481, 2018 (Released:2018-10-25)
参考文献数
32

サイトメガロウイルス(CMV)腸炎は免疫不全症や集中管理を要する重症患者が背景として多い.内視鏡像では打ち抜き様類円形潰瘍のみでなく,輪状傾向潰瘍,帯状潰瘍,縦走潰瘍,二段潰瘍などの存在,多彩な潰瘍の混在などがあれば,本症を疑う必要がある.診断には病理学的検査(HE染色による核封入体の検出とCMV免疫組織検査によるCMV抗原の検出)やCMV抗原検査が用いられるが,偽陰性が多いのが問題である.潰瘍性大腸炎(UC)においてステロイド抵抗性や難治性の場合にCMV腸炎合併を疑う必要がある.病理学的検査とCMV抗原検査は,特異度は高いが偽陰性が多い.粘膜CMV-DNA検査は感度,特異度とも高いが,抗ウイルス療法の適応を決めるには疑陽性が多くなるため,適正なcut off値を決める必要がある.両疾患ともCMV検査が陰性であっても,臨床的にCMV感染症を強く疑えば,診断的治療が必要なこともある.
著者
吉野 朋美 小林 ふみ子 青木 幸子 中嶋 真也 平野 多恵 佐藤 至子 兼岡 理恵 中野 貴文
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究の概要は、以下の四点に集約される。【1】多様な教育手法と経験を備えた大学と高校の教員が、専門分野や学校の垣根を越えて連携し、研究と高等教育の現場を結びつけて、探究型の古典文学教育を実現する。【2】学習者(高校生・大学生・大学院生)と教授者(高校・大学教員)が同じ題材を学び合うことで多様な視座の獲得を可能にするワークショップ(以下WS)を継続的に開催し、古典文学教育でディープ・アクティブラーニングを実現する授業方法を開発する。【3】欧米の大学・大学院における教育方法を応用し、新たな古典教育のモデルを開発する。【4】本研究で開発した教材や教育方法モデルをWeb公開して、社会に広く還元する。
著者
青木 葉子 岩本 雅弘 木村 洋貴 長嶋 孝夫 吉尾 卓 岡崎 仁昭 簔田 清次
出版者
自治医科大学
雑誌
自治医科大学紀要 (ISSN:1881252X)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.29-36, 2007

Objective Prednisolone has traditionally been tapered below 30 mg daily before patients are discharged from hospitals in Japan because of concerns regarding the development of infectious complications. We undertook this study to compare the incidence of infectious complications in patients taking more than 30 mg of prednisolone daily with those taking less than 30 mg. Patients and Methods The medical records of fifty-seven patients with systemic lupus erythematosus (SLE) were reviewed retrospectively, and divided into three groups based on the dose of glucocorticoids at the time of discharge: group A (n=13), newly-diagnosed SLE patients taking more than 30 mg of prednisolone daily; group B (n=22), newlydiagnosed SLE patients taking less than 30 mg; and group C (n=22), patients with an established diagnosis taking more than 30 mg daily for the treatment of an exacerbation of symptoms. The development of infectious complications within two months after discharge was identified from a review of the medical records to determine the effect of glucocorticoid dose at the time of discharge on the subsequent development of infectious complications. Results Two patients in group A and three in group C developed infectious complications within two months following discharge, while no patients in group B contracted an infection. These included herpes zoster in group A (n=2) and herpes zoster, urinary tract infection and Pneumocystis jirovecii pneumonia in group C (n=3, one each). However, the incidence of infectious complications comparing groups A and B, and groups A and C was not statistically significantly different( p>0.05). There was no correlation between the incidence of infection and the total dose of glucocorticoids given during admission.Conclusion Although this study was retrospective and involved only a small number of patients with SLE, there is no increased risk of developing infectious complications in pa-tients receiving more than 30 mg of prednisolone daily at the time of hospital discharge, compared to those taking less than 30 mg. Based on these results, prolonging hospitalization only to reduce the dose of prednisolone to less than 30 mg daily lacks justifiable grounds, even if it has been a tacit consensus in Japan.
著者
大坂 和可子 青木 頼子 江藤 亜矢子 北 奈央子 有森 直子 中山 和弘
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.334-340, 2019 (Released:2020-03-14)
参考文献数
22
被引用文献数
2

目的:本研究の目的は,患者の意思決定の葛藤をスクリーニングするSURE(Sure of myself; Understand information; Risk-benefit ratio; Encouragement)test日本語版を,言語的妥当性を踏まえ開発することである.方法:SURE test日本語版は,第1段階:2名による順翻訳,第2段階:順翻訳統合,第3段階:2名による逆翻訳,第4段階:研究者協議(暫定版作成),第5段階:一般市民,医療者への調査,第6段階:再検討,を経て開発した.結果:暫定版作成後,第5段階の一般市民と医療者32名の調査において,「わかりやすい」と回答した割合は各項目で47%から78%であった.第6段階にて言語的妥当性を再検討し,日本語版を確定した.結論:一連の過程を経て,言語的妥当性を踏まえたSURE test日本語版を開発した.
著者
青木 秀希 矢嶋 龍彦 小山 利幸
出版者
一般社団法人 表面技術協会
雑誌
表面技術 (ISSN:09151869)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.744-744, 2007 (Released:2008-08-01)
参考文献数
8
被引用文献数
1 3
著者
大川 清孝 上田 渉 佐野 弘治 有本 雄貴 久保 勇記 井上 健 田中 敏宏 松井 佐織 小谷 晃平 青木 哲哉
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.1103-1108, 2011 (Released:2011-06-14)
参考文献数
10

5日間の便秘後と下剤服用後に発症した一過性型虚血性直腸炎の2例を経験した.腹部大動脈手術,骨盤内手術,膠原病・血管炎,動静脈廔などはなく腸管側因子が主因で発症したと考えられた.いずれも肛門直上にも病変がみられた.著明なCRP上昇がみられたが保存的治療にて速やかに改善した.虚血性直腸炎は血管側因子が主因でおこると考えられていたが,腸管側因子が主因で発症することもあることを示した点で貴重な症例と考えられた.
著者
小野寺 敦子 青木 紀久代 小山 真弓
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.121-130, 1998-07-30 (Released:2017-07-20)
被引用文献数
4

はじめて父親になる男性がどのような心理的過程を経て父親になっていくのか, そして親になる以前からいだいていた「親になる意識」は, 実際, 父親になってからのわが子に対する養育態度とどのように関連しているのかを中心に検討を行った。まず, 父親になる夫に特徴的だったのは, 一家を支えて行くのは自分であるという責任感と自分はよい父親になれるという自信の強さであった。そして父親になる意識として「制約感」「人間的成長・分身感」「生まれてくる子どもの心配・不安」「父親になる実感・心の準備」「父親になる喜び」「父親になる自信」の6因子が明らかになった。親和性と自律性が共に高い男性は, 親になる意識のこれらの側面の内, 「父親になる実感・心の準備」「父親になる自信」が高いが「制約感」が低く, 父親になることに肯定的な傾向がみられた。また, これらの「親になる意識」が実際に父親になってからの養育態度にどのように関違しているかを検討した。その結果, 「制約感」が高かった男性は, 親になってから子どもと一緒に遊ぶのが苦手である, 子どもの気持ちをうまく理解できないと感じており, 父親としての自信も低い傾向がみられた。さらにこれらの男性は, 自分の感情の変化や自己に対する関心が高い傾向が明らかになった。
著者
景山 一郎 栗谷川 幸代 山内 ゆかり 石橋 基範 鳥居塚 崇 山田 多恵子 青木 和夫 時田 学
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.431-437, 2017 (Released:2018-05-15)
参考文献数
14
被引用文献数
1

高度運転支援に用いるためにドライバの運転動作を表現するドライバモデル構築を行う.前報では主にフィードフォワード項を用いたドライバ行動の検討を行ったが,本報では,主にフィードバック項を用いたドライバ評価の可能性について検討を行う.フィードバック項は主に前方注視三次予測モデルを用い,実路におけるドライバの運転動作解析を行う.
著者
青木 由直 棚橋 真
出版者
北海道大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1996

本研究は遺跡の音響特性を調べることにより、その遺跡が音響的にどのような目的で造られたかを推定する新しい音響考古学の学問分野を開拓する基礎技術として、音場の可視化を行なう技術の開発を目的として行なった。遺跡として残されている岩板が声の反射板であると予想されるので、この反射板からの音の反射を計算し、可視化する方法として、記録した音場データを最大エントロピー(MEM)法により再回折を行なって岩板による音の反射点を計算する方法を開発し、計算機シミュレーションでその妥当性を確かめた。この方法は、音の進行方向に垂直な断面での音場分布を可視化する方法で、これに対して音の伝播の状況の可視化の目的で、音の伝播を音線を用いて追跡し、これを可視化する方法を開発した。この方法では、記録した音場のデータを基に、音場の強度の微分により得られる局所的な空間周波数成分に音線の傾きを対応させて、音線の伝播をCGにおける2次元の光線追跡法と同様にして求め、音の収束していく様子を可視化する方法である。この音線追跡法はMATLABおよびC言語により開発を行ない、3次元空間での音線追跡法にも対応できるようにした。音線の可視化のためのGUI(Graphical User's Interface)の機能を強化してシステムの利用が容易になるよう改良を加えた。開発した音線追跡法によるシミュレーション結果をインターネットで公開する目的で、音線可視化システムをJava言語で記述し、実際にインターネットでの公開実験を行ない、将来的に音響考古学に関するインターネットを利用した仮想実験室の構築に基礎データを得た。計算機シミュレーションを実験と対応させるため、スピーカで造り出される音場の記録データを処理して、これからの音線追跡を行ない、簡単な音源であれば本研究で即発した音線追跡の可視化が行なえることを明らかにした。
著者
青木 博史
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.47-60, 2005-07-01

古典語における<コト>を表す補文の名詞節には,「準体型」と「コト型」の2つがある。「準体型」が主語として用いられる場合,その述語は状態性のものに限られる,といった制限がある。目的語として用いられる場合も考え合わせると,「準体型」は,感覚・感情,判断等の「対象」としてのみ用いられているといえる。これに対し,「コト型」にそのような使用制限はなく,両者は性格を異にしている。「コト型」は,古代から現代に至るまで,その機能をほとんど変えることなく引き継がれたが,「準体型」の機能は,「ノ型」が引き継ぐ形となった。「ノ」は<モノ>を表す代名詞が文法化し,<コト>を表す形式へ拡張したものである。このような「ノ」の発達が,「準体型」を衰退させたものと考えられる。