著者
馬田 敏幸
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.25-33, 2017-03-01 (Released:2017-03-23)
参考文献数
43
被引用文献数
2

将来の新エネルギーを創出すると期待されている核融合技術には,燃料となるトリチウムが大量に使用され,放射線作業従事者のトリチウムによる被曝が懸念される.また福島第一原子力発電所の廃炉作業の工程では,発生しているトリチウム汚染水対策による,作業従事者の健康問題が懸念されている.トリチウム被曝の形態は,低線量・低線量率の内部被曝が想定されるが,経口・吸入・皮膚吸収により体内に取り込まれたトリチウム水は,全身均一に分布することから影響は小さくないと考えられる.さらに有機結合型トリチウムは生体構成分子として体内に蓄積され,長期被曝を生じるので,トリチウムの化学形の考慮は重要となる.トリチウムの生体影響を検討するために,生物学的効果をX線や γ線と比較する必要があり,トリチウムの生物学的効果比(RBE)の研究が多くされてきた.本総説では,確率的影響に分類される放射線発がんや,発がんの原因となる突然変異など生物効果を指標にして得られたRBEについて紹介する.加えて,近年開発されてきた,低線量・低線量率被曝の生物影響を検出可能な遺伝子改変マウスを使った動物実験系の原理と,トリチウム実験の概要についても紹介する.
著者
高橋 敏子 久留島 典子 山部 浩樹 高橋 慎一朗 金子 拓 馬田 綾子 池田 好信
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

中世東寺を統括していた長者・凡僧別当・執行などに関する史料を系統的に調査した結果、「東寺長者補任」の諸本、「東寺凡僧別当引付」、京都国立博物館所蔵「阿刀家伝世資料」、天理大学附属天理図書館所蔵「東寺執行日記」、「東寺過去帳」などの写真や情報を収集することができた。その上で、これまで行われてこなかったこれらの史料学的検討を行った。1.「東寺長者補任」諸本の調査とそれらの史料学的考察の結果、従来認識されていなかった長者補任の類型を抽出することができた。さらに、諸本それぞれの特徴を提示するとともに、いくつかの補任については作成者を確定することもできた。2.「東寺執行日記」については、これまで研究の素材として主に利用されてきたのは内閣文庫所蔵の二種類の写本であったが、今回の調査によって天理図書館所蔵のより良い写本を発見することができた。今後は、こちらが研究の基礎史料になると考える。3.「東寺文書」「東寺百合文書」「教王護国寺文書」など、これまで利用されてきた東寺関係史料に「阿刀家伝世資料」を加えて分析することによって、平安時代から近世初期に至る東寺執行職の歴代を確定し、その根拠となる史料を翻刻提示した。また執行の職務内容についても検討し、新たな知見をえた。4.東寺に伝来してきた複数の「過去帳」について、それぞれの性格を確定した。また、東寺と関係の深い醍醐寺の過去帳分析も行った。今後も収集史料の史料学的研究を継続するとともに、「東寺執行日記」のテキスト化を行う予定である。
著者
西本 一志 渡邊 洋 馬田一郎 間瀬 健二 中津 良平
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.1556-1567, 1998-05-15
参考文献数
13
被引用文献数
7

音楽との能動的な接し方の特徴は,自分なりの音楽表現という創造性の発揮にある.しかし現実には音楽理論や楽器操作技術の困難により,多くの人は能動的な音楽との接触を諦めている.筆者らは,これらの困難を計算機で支援することにより,だれでも容易に創造的音楽表現に取り組める楽器の実現を目指している.本論文では,そのための一手段として,音機能固定マッピング手法を提案する.従来の楽器は音高を演奏インターフェース上の固定ポジションにマッピングする音高固定マッピング型の楽器であった.しかし,音には音高以外の属性があり,その1つとして,音楽的環境に応じて個々の音が人に様々な情動的作用を与える,機能という属性がある.音機能固定マッピングとは,常時一定の演奏ポジションに一定の機能を持つ音をマッピングする手法である.ある音の機能の判定には音楽理論に基づく解析が必要であるが,この手法によれば,演奏者は必要な機能を持つ音を理論的解析を行うことなく直接取り出せ,さらにそれらを自由に組み合わせることにより,容易に自分なりの創造的音楽表現を実現できるようになる.本論文では,特に音の機能の考え方が重要となるジャズの即興演奏を対象として作成した試作器と,それを用いた被験者実験について説明し,本手法の可能性について検討する.Many people cannot help but give up to play music bacause of difficultyof a musical theory or a manipulation of a musical instrument.The authors aim todevelop a musical instrument with whcih anyone can enjoycreating of music with the support of a computer.In this paper,we propose a concept called the "fixed mapping of note-funcitons".With an ordianary musical instrument,a specific pitch is always mapped on a specific position of the instrument;this is a "fixed mapping of pitch" instrument.However,a note has other attributes.A note-function,i.e.,theemotional effect of a note depending on the temporal musical situation,is one of them.The mapping of a specific note-function on a specific position is the basis of the "fixed mapping of note-funcitons" concept.In order to determine the note-function,a theoretical analysis is usually necessary.Using the proposed method,however,it becomes possible to directly extract notes with the required functions without any theoretical considerations and to exhibit creativity by combining the notes.In this paper,we show a prototype of an instrument for improvisational jazz,provide several subjective experimental results and dsicuss the possibilities of the method.
著者
馬田 敏幸 笹谷 めぐみ 立花 章
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 = Journal of plasma and fusion research (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.190-197, 2012-03-25
参考文献数
34
被引用文献数
1

放射線の個体への影響について,人の疫学調査で得られた知見を一般的な観点から述べ,マウス個体を使ったトリチウム水による高線量・高線量率の研究により,何がわかっているのか明確にする.そして低線量・低線量率の放射線披ばくによる生物影響を感知する実験系をトリチウム生体影響研究に応用した研究や,必要とされている新しい高感度検出系の開発について概説する.
著者
松井 克文 牧野 恵美 馬田 隆明 菅原 岳人 吉田 塁 栗田 佳代子 長谷川 克也
出版者
日本ベンチャー学会
雑誌
日本ベンチャー学会誌 (ISSN:18834949)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.29-43, 2020-09-15 (Released:2022-01-12)

本研究の目的は、起業家によるゲスト講義を中心とした起業家教育プログラムの効果検証である。ゲスト講義は、ロールモデルや代理経験の効果を通して起業における自己効力感を向上させ、起業意思が醸成されて起業につながると期待されてきた。本研究では、同一環境にある非受講のコントロールグループを設定した準実験を実施し、差分の差分法を用いてゲスト講義の効果を検証した。対象のプログラムはゲスト講義を4回含む7週間の大学の大規模授業である。検証の結果、受講の効果による起業意思と起業における自己効力感の向上は確認されなかった。また、受講前の起業意思が高い学生ほど、受講後に起業意思が低下する結果が示された。以上のことから、ゲスト講義中心の教育プログラムは期待した効果が得られていないと考えられる。一方、受講前に起業意思が高い学生は、起業への向き不向きを再考する機会を得て、自らの適性を見つめ直したと考えられる。
著者
田内 広 馬田 敏幸 立花 章
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 = Journal of plasma and fusion research (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.119-124, 2012-02-25
参考文献数
17
被引用文献数
1

核融合炉で利用されるトリチウムの量は少なくないことから,低濃度かつ少量のトリチウムによって生物が影響を受けるのか,そしてもし影響が出るのであれば,それはどのくらいの量(線量率)を超えれば生じる可能性があるのか,ということを科学的データによって明らかにすることが求められている.低線量放射線被ばくによる生体影響研究の現状と,これからのトリチウム生物学の方向について概説する.
著者
植田 睦之 馬田 勝義 三田 長久
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.S9-S13, 2011 (Released:2011-09-11)
参考文献数
6

洋上風力発電のバードストライクのリスクの高い種を検討する上の一資料として長崎県池島近海において2009年11月から2011年1月にかけて海上を飛行する鳥類の飛行高度を調査した。海上30m~150mをバードストライクの危険のある高さと想定すると,オオミズナギドリ Calonectris leucomelas,カツオドリ Sula leucogaster,ウミネコ Larus crassirostris はそれより低い高さを,スズメ目の鳥類はそれより高い高さを主に飛ぶため,バードストライクの危険性は低いと考えられたが,ウミウ Phalacrocorax capillatus,セグロカモメ L. schistisagus,ミサゴ Pandion haliaetus,トビ Milvus migrans はバードストライクの危険性が高いと考えられた。
著者
馬田 敏幸
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
産業医大誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.25-33, 2017
被引用文献数
2

<p>将来の新エネルギーを創出すると期待されている核融合技術には,燃料となるトリチウムが大量に使用され,放射線作業従事者のトリチウムによる被曝が懸念される.また福島第一原子力発電所の廃炉作業の工程では,発生しているトリチウム汚染水対策による,作業従事者の健康問題が懸念されている.トリチウム被曝の形態は,低線量・低線量率の内部被曝が想定されるが,経口・吸入・皮膚吸収により体内に取り込まれたトリチウム水は,全身均一に分布することから影響は小さくないと考えられる.さらに有機結合型トリチウムは生体構成分子として体内に蓄積され,長期被曝を生じるので,トリチウムの化学形の考慮は重要となる.トリチウムの生体影響を検討するために,生物学的効果をX線や <i>&gamma;</i>線と比較する必要があり,トリチウムの生物学的効果比(RBE)の研究が多くされてきた.本総説では,確率的影響に分類される放射線発がんや,発がんの原因となる突然変異など生物効果を指標にして得られたRBEについて紹介する.加えて,近年開発されてきた,低線量・低線量率被曝の生物影響を検出可能な遺伝子改変マウスを使った動物実験系の原理と,トリチウム実験の概要についても紹介する.</p>
著者
馬田 英隆
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

世界的な森林の撹乱と劣化は森林植物に深刻な影響を与えつつある。例えば、少なからずの森林植物の絶滅が危惧され、中には絶滅してしまった種もある。本研究の目的はそれら植物の保全のための基礎情報を得ることにある。本研究では、ラン科植物のタカツルランを事例として研究した。タカツルランは無葉緑植物で、わが国では絶滅危惧1A類(CR)に分類されている。タカツルランは根の中に棲息している木材腐朽菌と共生関係を結んでいる。このランは光合成能力を喪失しているので一生を通して炭素源は共生菌に依存し、さらに種子の発芽にも共生菌を必要とする。これらのことは、共生菌がタカツルランの保全に有用なツールとなり得ることを示唆している。タカツルラン保全の試みは移植によって行った。最初に、タカツルランの根から共生菌を分離した。次いで、共生菌とタカツルランの種子との共生培養を試験管内で行い、プロトコームと幼植物体を準備した。最後に、プロトコームや幼植物体を土壌中に埋設した。得られた結果から次のような提案をすることができる。1.移植植物体は、共生菌が繁殖している培養基と共に埋設したときに成長した。このことから、共生菌は植え戻しにとって必須で有ることが明らかにされた。植え戻しを確実に成功させるためには、容器の中で植物体を共生菌が繁殖している培養基と共に培養し、その容器を森林に埋設すれば良い。2.移植用の植物体は根・茎が充分に生長した植物体を用いるのが良い。3.移植された植物体は外部へ根を伸長させ、其処にあった丸太に付着し、丸太の中のキノコが親和的な種であればそのキノコと共生関係を築いた。従って、移植する前に親和的なキノコが生育しているかどうかを調査しておく。4.共生菌の生長はタカツルランの生長にとって是非とも必要である。従って、生長と植え戻しに適する時期は温度が高く降水量が豊富な6月、8月、9月が良い。
著者
西本 一志 渡邊 洋 馬田 一郎 間瀬 健二 中津 良平
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.1556-1567, 1998-05-15

音楽との能動的な接し方の特徴は, 自分なりの音楽表現という創造性の発揮にある.しかし現実には音楽理論や楽器操作技術の困難により, 多くの人は能動的な音楽との接触を諦めている.筆者らは, これらの困難を計算機で支援することにより, だれでも容易に創造的音楽表現に取り組める楽器の実現を目指している.本論文では, そのための手段として, 音機能固定マッピング手法を提案する.従来の楽器は音高を演奏インタフェース上の固定ポジションにマッピングする音高固定マッピング型の楽器であった.しかし, 音には音高以外の属性があり, その1つとして, 音楽的環境に応じて個々の音が人に様々な情動的作用を与える, 機能という属性がある.音機能固定マッピングとは, 常時一定の演奏ポジションに一定の機能を持つ音をマッピングする手法である.ある音の機能の判定には音楽理論に基づく解析が必要であるが, この手法によれば, 演奏者は必要な機能を持つ音を理論的解析を行うことなく直接取り出せ, さらにそれらを自由に組み合わせるとこにより, 容易に自分なりの創造的音楽表現を実現できるようになる.本論文では, 特に音の機能の考え方が重要となるジャズの即興演奏を対象として作成した試作器と, それを用いた被験者実験について説明し, 本手法の可能性について検討する. : Many people cannot help but give up to play music because of difficulty of a musical theory or a manipulation of a musical instrument. The authors aim to develop a musical instrument with which anyone can enjoy creating of music with the support of a computer. In this paper, we propose a concept called the"fixed mapping of note-functions". With an ordinary musical instrument, a specific pitch is always mapped on a specific position of the instrument; this is a"fixed mapping of pitch"instrument. However, a note has other attributes. A note-function, i.e., the emotional effect of a note depending on the temporal musical situation, is one of them. The mapping of a specific note-function on a specific position is the basis of the"fixed mapping of note-functions"concept. In order to determine the note-function, a theoretical analysis is usually necessary. Using the proposed method, however, it becomes possible to directly extract notes with the required functions without any theoretical considerations and to exhibit creativity by combining the notes. In this paper, we show a prototype of an instrument for improvisational jazz, provide several subjective experimental results and dsicuss the possibilities of the method.
著者
馬田 一郎 伊集院 幸輝 加藤 恒夫 山本 誠一
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.163-173, 2022-06-01 (Released:2022-06-15)
参考文献数
40
被引用文献数
1

This paper examines the characteristics of face-to-face communication and online communication from the viewpoint of group co-creation. First, we review the previous studies of face-to-face communication and that of online communication to discuss the merits and demerits of each communication style. Then we present observational results of our pilot face-to-face co-creation conversation data that shows the collage nature of such interaction: the ideation process often consisted of step-by-step accumulations of fragmentary pieces of information that were incomplete and vague per se, fully utilizing the abundant nonverbal cues and a shared collaboration environment. These findings are expected to contribute to designing matching strategies of communication styles and the characteristics of collaborative tasks.
著者
清水 哲雄 小松 治男 馬田 俊雄 高橋 清 佐藤 正矩
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.64, no.623, pp.2348-2353, 1998-07-25 (Released:2008-02-26)
参考文献数
3
被引用文献数
1

Understanding the spinning mechanism of an impacted golfball is an important factor in golf science and engineering. The rigid sphere model which considers the Coulomb-type slip friction presented independently by Daish and Kawamura (referred to here as the Daish-Kawamura model) seems to well explain the experimental results of golfball spinning. For a more general interpretation of the spin phenomenon, we attempted to modify this model by introducing a physical quantity called the "s parameter", which is defined as the ratio of the circumferential velocity of the ball to its centroid velocity. An experiment performed to verify the appropriateness of the new parameter introduction led to the following conclusions: The spin phenomenon in golf impact can be divided into two phases, in both of which the Daish-Kawamura model is effective. A method is described to evaluate the coefficient of slip friction under high sliding velocities, and the value is estimated as 0.07 for a slippery surface condition.
著者
馬田 敏幸 法村 俊之
出版者
一般社団法人 日本放射線影響学会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集 日本放射線影響学会第51回大会
巻号頁・発行日
pp.202, 2008 (Released:2008-10-15)

p53野生型マウスにトリチウム水一回投与によるβ線照射、あるいはセシウム-137γ線をシミュレーション照射法(トリチウムの実効半減期に従って線量率を連続的に減少させながら照射)により3Gyの 全身照射を行ったとき、T細胞のTCR遺伝子の突然変異誘発率は、γ線では上昇しなかったがトリチウムβ線では有意に上昇した。この差異の原因がp53の活性量の違いにあるのかを明らかにするために、次の実験を行った。8週齢のC57BL/6Nマウスの腹腔内に、270MBqのトリチウム水を注射し19日間飼育した。この間にマウスは低線量率で3Gyの被ばくを受けることになる。γ線はシミュレーション照射法で7日間照射し、その後12日間飼育した。飼育最終日にマウスに3Gy(0.86 Gy/min)照射し、4時間後に脾臓を摘出しT細胞分離用とアポトーシス解析のためのタネル法の試料とした。ウェスタンブロット法によりp53の発現量とリン酸化p53の存在量を比較した。p53の活性量とアポトーシス活性を現在解析中であり、突然変異の除去機構について考察を行う。
著者
八木 史郎 畑 邦彦 馬田 英隆
出版者
鹿児島大学農学部演習林
雑誌
鹿児島大学農学部演習林研究報告 (ISSN:13449362)
巻号頁・発行日
no.40, pp.49-66, 2013-03

鹿児島のキノコ(1)(馬田ら2009)と(2)(八木ら2011)に記述されたように,日本は,北から南まで多様な森林相をもち,それに対応するようにキノコ相も異なっている。最近の温暖化とも関連してキノコは,環境指標や,森林保護の点から,また食を含む生物資源としての点からもっと知識の集積が必要であるが,特に南九州においてはまだ不十分な状況にある。筆者らは,南九州キノコ会を立ち上げ,2006年から定期的に観察会を開催してきた。前2報は2006年~2007年,2008年~2009年の観察会で見られたキノコを資料としてまとめたものであった。本報告書は2010~2012年の観察会第18回から32回の観察記録を資料としたものである。観察場所は,紫尾山,県民の森,清浦,八重山,吉野公園,高隈演習林,藺牟田池周辺,吹上浜の8地点であった。この間には,梅雨時では豪雨のために中止,順延が多く,また紫尾山においては雷雨による中止や短時間で切り上げという事もあった。第22回観察会の記録としては10種以上観察されたがPCの不具合で記憶にあった2種のみの記載とした。過去7年間に観察されたきのこの属する科名を表1に示す。観察されたきのこの種類は種を特定できたと判断したものだけで300種を超える。観察されたきのことしてはキシメジ科,フウセンタケ科,イグチ科,ベニタケ科,タコウキン科のものが多かった。きのこの分類は現在DNAの一部の比較によって大きく変わりつつあり,まだその作業は進行している途中に有り,十分に落ち着いていない現状であるので,本資料はこれまでの形態的分類によるものを基準とし,新しい分類に立脚した資料とはしていない。
著者
馬田 一郎 下嶋 篤 片桐 恭弘 井ノ上 直巳
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.573-587, 2008 (Released:2010-04-23)
参考文献数
17

An empirical investigation was conducted on the characteristics of language use in graphics communication settings. Graphics communications, such as dialogues using maps, drawings, or pictures, provide people with two independent systems of representation, spoken language and graphics. Drawing on our dialogue data, we show that the presence of a graphical representation significantly changes the way the spoken language is used, extending its expressive capacity in most cases. As two remarkable uses of language affected in this way, we report the phenomena of mediated reference and dual description, illustrating them with actual examples from our data. Further, a quantitative analysis of our data shows that these special uses of language are indeed as common as conventional uses of language in the presence of graphical representations.
著者
馬田,敏幸
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, 2012-03-25

放射線の個体への影響について,人の疫学調査で得られた知見を一般的な観点から述べ,マウス個体を使ったトリチウム水による高線量・高線量率の研究により,何がわかっているのか明確にする.そして低線量・低線量率の放射線披ばくによる生物影響を感知する実験系をトリチウム生体影響研究に応用した研究や,必要とされている新しい高感度検出系の開発について概説する.