著者
佐藤 和夫 西村 顕 小林 美希 進藤 斉 高橋 康次郎
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.2, pp.122-129, 2013 (Released:2017-12-28)
参考文献数
49
被引用文献数
1 1

1.醪の生成アルコールを17%以下とした液化仕込みによる清酒製造において,酒粕中の酵母を再利用した高密度酵母による繰り返し仕込みを長期間継続して行うことができ,平均で約3日の醪期間の短縮効果がみられた。2.繰り返し仕込みの醪では,酵母の増殖量は少なかったことから,何らかの増殖阻害現象が生じたと考えられた。3.醪の圧搾は粕中の酵母の増殖能や発酵能に影響しなかった。また,酵母のメチレンブルー染色率は10%以下を維持し,生酸菌や野生酵母による顕著な汚染は生じなかった。4.繰り返し仕込み回数が多くなると製成酒のアミノ酸度や着色量が増大して品質評価上の問題が生じたことから,実現可能な繰り返し仕込み回数は数回程度と考えられた。
著者
高橋 康弘 振甫 久 村山 智恵子 下田 雄斗 石黒 正樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】肩関節周囲炎は中年以後の肩関節周囲組織の退行性変化を基盤として発症した疼痛性肩関節制動症として理解されている。痛みは徐々に増強し,その激痛により日常生活の行動を制限する。特につらいのが夜間痛である。夜間痛の持続期間は,全く無いものから数ヶ月間に及ぶものまで幅が広いのが現状である。今回,夜間痛の持続期間が影響を及ぼす因子について検討するために,肩関節周囲炎がプラトーに至り,治療が終了となった症例を分析した。【方法】2011年5月から2013年9月までに肩関節周囲炎と診断され,機能面がプラトーに至るまで運動療法を施行した23症例23肩(女性18例・男性5例,年齢64.3±10.7歳)を対象とした。腱板断裂は対象外とした。両側肩に,肩疾患・受傷既往や合併症のある者も除外した。全例同一理学療法士が担当し,概ね同じリハビリテーションスケジュールで行われた。肩関節周囲炎の回復期に入り,4週間以上関節可動域(以下,ROM)の改善が得られない状態をプラトーとし治療を終了した。夜間痛は,毎日持続する痛みがあり,一晩に2~3回以上は目が覚めるものと定義し,夜間痛の発症から消失するまでの期間を週単位で記録した。夜間痛の持続期間が影響を及ぼす予測因子として,全治療期間,運動療法期間,最終獲得ROM(屈曲・外転・外旋・結帯動作)を列挙した。外旋ROMは下垂位でのポジションとした。全治療期間は初診日から治療の終了日までとし,発症日は特定できないケースが多いため考慮しなかった。運動療法期間は,運動療法が開始となった日から治療の終了日までとした。最終獲得ROMの屈曲・外転・外旋に関しては,プラトーに至った患側ROMを健側ROMで除し,患側ROMの改善した割合(以下,改善率)を算出した。最終獲得の結帯動作に関しては,健側結帯動作とプラトーに至った患側結帯動作の差(以下,結帯差)を脊椎の個数で示した。Grubbs-Smirnov棄却検定を行ない外れ値の検討をした上で,夜間痛の持続期間と各予測因子の関係をSpearmanの相関係数を使用して調べた。p<0.05で統計学的有意とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に沿って計画され,対象者には本研究の趣旨を説明し,同意を得て実施した。【結果】夜間痛の持続期間と外旋改善率においてはr=-0.79 p<0.01であり,負の強い相関を認めた。夜間痛の持続期間と結帯差はr=0.46 p<0.05であり,正の弱い相関を認めた。夜間痛の持続期間とその他の因子には相関は見られなかった。【考察】今回の研究により,外旋ROMと結帯動作の予後は夜間痛が長期間に及ぶほど,悪影響を受けることが示唆された。特に外旋ROMは夜間痛の期間に強く影響を受ける結果となった。肩関節周囲炎の夜間痛は,肩峰下滑液包と腱板の癒着による肩峰下滑動機構の破綻,もしくは上方支持組織の拘縮が,肩峰下圧の上昇に関与しているといわれる。夜間痛が発生している期間は上方支持組織の伸張性が低下し,下垂位での内外旋を制限するため,それが長期間になるほど,外旋・結帯動作のROM予後に悪影響すると考察された。一方で,屈曲・外転ROMに関しては,上方支持組織の伸張性は関与しないため,夜間痛の持続期間の影響を受けなかったと考えられた。夜間痛に対しては炎症軽減のために日中の安静指導や,上方組織の伸張性回復のための徒手的治療が提案されており,これらの重要性を再確認する機会となった。夜間痛と内外旋制限の関係については,先行研究とも一致する結果であった。今後はさらに症例数を重ね,夜間痛の持続期間に影響する因子を可能な限り多く抽出し,より信憑性の高い研究が必要であると感じた。【理学療法学研究としての意義】今回我々は,夜間痛の持続期間が明確で,尚且つプラトーに至り治療が終了になるまで介入可能であった症例を分析した。肩関節周囲炎の夜間痛に対する報告は散見されるが,持続期間に着目した研究や,最終予後に至るまで追求し分析を行った物は見当たらないため,本研究の臨床的意義は高いと考える。
著者
高橋 康弘 振甫 久 石黒 正樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】我々は第49回日本理学療法学術大会で夜間痛が長期に及ぶほど肩関節外旋のROMと結帯の予後に悪影響が及ぶことを明らかにした。今回の目的は前回の研究に症例数を増やし改めて明確にする事と,その内訳を分析し詳細な予後の特徴について明らかにする事である。【方法】2011年5月から2015年6月までに肩関節周囲炎と診断され機能面がプラトーに至るまで運動療法を施行した40名(女性26名,男性14名,年齢65.5±10.8歳)を対象とし後方視的研究を行った。除外基準は腱板断裂,患側・健側肩に既往や合併症のある者,糖尿病や重度全身性疾患を持つ者とした。夜間痛は発症から消失するまでの期間を週単位で記録した。屈曲・外転・外旋は,プラトー患側ROMを健側ROMで除し,患側ROMの改善した割合(以下:改善率)を算出した。結帯は健側結帯とプラトー患側結帯の差(以下:結帯差)を脊椎の個数で示した。夜間痛期間と各項目(屈曲・外転・外旋の改善率,結帯差)との関係をSpearmanの相関係数を用いて調べた。次に相関の得られた項目を夜間痛が無かった群(以下:無群)と夜間痛を有した群(以下:有群)に分け改善率,結帯差をMann-Whitney検定による2群比較を行った。さらにこの比較で有意差の得られた項目を,無群,夜間痛が1週から4週続いた群(以下:1-4週群),夜間痛が5週以上続いた群(以下:5週以上群)に分け改善率をKruskal-Wallis検定による3群比較を行い多重比較にはScheffeの方法を用いた。有意水準はp<0.05とした。【結果】夜間痛期間と外旋改善率はr=-0.58 p=0.0003で負の相関を認めた。夜間痛期間と結帯差はr=0.31 p=0.04で正の弱い相関を認めた。屈曲・外転は相関は無かった。外旋改善率の2群比較はp=0.01で無群が有意に高かった。結帯差の比較は有意差は無かった。外旋改善率の3群比較は無群と5週以上群で無群が,1-4週群と5週以上群で1-4週群がp=0.0001でそれぞれ有意差が見られた。無し群と1-4週群は有意差は無かった。【結論】本研究も外旋ROMと結帯の予後は夜間痛が長期に及ぶほど悪影響を受けることが明確となり前回の研究結果と一致した。Mengiardiらは肩関節周囲炎による烏口上腕靭帯と腱板疎部の関節包の肥厚を指摘しており炎症による夜間痛が続くほど伸張性が落ち予後に影響すると考察された。また夜間痛が無い群に着目したところ外旋は特に予後が良いことが示された。さらに3群比較により無群と1-4週群の間には有意差は無いが,これらと5週以上群の間に有意差が見られたことは夜間痛が4週以内の患者は特に予後が良い事が示された。統合すると外旋改善率は夜間痛が長期に及ぶほど低くなるがこの期間が4週以内に治まれば特に予後が良いという特徴が明らかになった。
著者
吉沢 淑 高橋 康次郎
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.192-194, 1989

A simplified method for the determination of ethyl carbamate (CAE) in sake was devised.Twenty ml sample was adsorbed on Extrelut-20 (Merck Co., Ltd.), left for 20 min., and eluted with 60 ml of chloroform.The eluate was concentrated to 5-7 ml using a Kuderna-Danish (K.D.) evaporator.After washing the evaporator with 3-5 ml of chloroform, the concentrate was again evaporated to 0.5 ml by blowing air at 37&deg;C.CAE was determined by GCusing a capillary column packed with 5% phyney methyl silicone.
著者
高橋 康夫
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
vol.267, pp.155-162, 1978

Contents are mainly classified by two items as follows : 1. The constitution of the Rokucho. -1. The territory of the Rokucho. -2. The names of the constituent towns. 2. The pre-history of the Rokucho : a consideration on the process of the urban development of the constituent towns.
著者
高橋 康介 三橋 秀男 村田 一仁 則枝 真 渡邊 克巳
出版者
Japan Society of Kansei Engineering
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18845258)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.261-268, 2011 (Released:2011-12-09)
参考文献数
15
被引用文献数
1

Nonverbal communications involving physical contact convey “Kansei” information that is difficult to express in verbal communications. In this study, we proposed a method to investigate “Kansei” information in nonverbal communications, and surveyed how people perceive nonverbal communication involving physical contact. In the psychological experiment using questionnaire, we presented various words describing tapping and patting actions with Japanese onomatopoeias and sound symbolic words expressing a concept or nuance that is difficult to verbalize explicitly. Participants first imaged the situation wherein they made communication with another person through the physical contact, and then evaluated the “Kansei” information of communications and rated them by adjectives. We found that onomatopoeias added a variety of impressions to communications with physical contact. We then applied factor analysis using adjective rating to extract a factor space of the communicative actions. For both tapping and patting motion, the first factor represented atmosphere of the behavior, and the second dimension represented activeness of the physical motions themselves. We then mapped the rating scores of desirability of the communication onto the factor spaces. The scores of the first and the second factors well predict in an additive way the desirability of communication for both actions, and the influence of the first factor was stronger than that of the second factor. These results suggest that the structure of factor space represents desirability of the communication regardless of actions. The proposed method may be useful and efficient to investigate the Kansei information, factor space, and their inter-relation, of nonverbal communications.
著者
吉沢 淑 高橋 康次郎 中村 欽一
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.80, no.10, pp.682-686, 1985

新しく設定した官能評価法により, 国産ウイスキー (2級1級及び特級) 及び外国産特級ウイスキー (スコッチ) の官能検査を行い, その結果を比較するとともに官能評価値間及び成分間の単相関分析を行った。<BR>1.香りの調和及び豊かさ, 味のまろやかさ及び調和の項目は上級ウィスキーほど評価がよく, 中でも外国産特級ウイスキーの評価が高かった。<BR>2.香りの個性では, 国産ウイスキーはいずれも普通という評価であったが, 外国産特級ウイスキーはやや個性的という評価であった。<BR>3。各官能評価項目間で多くの有意な関係がみられたが, 中でも, 香りの軽さと味の濃さの項目間に, 高度に有意な負の相関関係が認められた。<BR>4.香りの個性と総酸, フェノール量, i-AmOH及びi-BuOH含量との間に高度に有意な正の相関関係が認められた。
著者
佐藤 信 大場 俊輝 高橋 康次郎 蓼沼 誠
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.593-599, 1976-08-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
2

清酒をもろみの汲水の全部または一部にして使用し醸酵させて造る新しいタイプの清酒, いわゆる貴醸酒について, それの製法, お酒の特微, 開発に致る経過をくわしく解説していただいた。醸造技術者にとって新製晶開発は1つの大きな仕事であリ, また願望でもある。しかし, それは単にアイデアのみで生まれるものではない。本誌には著者の長年にわたる清酒成分に関する研究の成果を基とした多様化の設計の手法, 新製品開発までのステップと新製品に与えるイメージ, 製造法の緻密な検討が紹介されている。是非一読をすすめたい。
著者
桧山 亮 折橋 健 小島 康夫 寺沢 実 鴨田 重裕 高橋 康夫
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.115, pp.P3047, 2004

1、目的 エゾシカ(以下シカとする)の嗜好性とそれが生じる要因を研究することは樹皮剥ぎ害対策のための重要な情報になると考えられる。本研究では特に樹皮の物理的な発達がシカの嗜好性に与える影響を調べるためにハリギリ丸太を用いて樹皮の剥ぎ難さの測定と野外摂食試験(Orihashi et al., 2002)およびハリギリ丸太から調製した樹皮片の摂食試験を行った。2、試験方法1)試験材料 2003年3月上旬に東京大学北海道演習林(以下北演)でハリギリ2個体(DBH17.5cm、27cm)を伐採し、樹幹及び枝の直径1_から_18cmの部分から長さ1mの丸太を調製した。丸太は長さ40cmと60cmに切り分けて前者を樹皮剥ぎ抵抗値測定用、後者を野外摂食試験用とした。丸太は切断面において直径と樹皮の厚さを0.1mm単位で測定した。2)抵抗値の測定 【剥がし抵抗値測定】大井(1999)の剥皮試験の方法を参考に、樹幹方向に15cm×1.5cmの切込みを樹皮にいれて周囲の樹皮と切断し、端から5cmの部分を剥がして掴み、残りの10cmの部分を約10秒かけて引き剥がし、デジタルひずみ測定器(共和電業製)を用いて応力を計測して剥がし抵抗値とした。【刺し込み抵抗値測定】マイナスドライバー様の型をしたステンレス製の擬似シカ門歯をデジタルひずみ測定器に取り付けて、丸太の接線方向に対しては垂直に、樹幹方向に対しては約30度の角度から刺し込み、応力を測定して刺し込み抵抗値とした。各測定では1試験体(丸太)につき5回計測を行い、平均した。3)摂食試験 【抵抗値と嗜好性】摂食試験用の丸太を北演の林道沿いに設けた試験サイト(20m×5m)にランダムに並べて直立させて3月下旬の10日間(樹皮剥ぎ被害期間)シカに自由に摂食させて剥皮された面積を測った。【樹皮片の摂食試験】直径12_から_17cmのハリギリ丸太から一辺が3cm程度の方形樹皮片を3種類(内樹皮のみ、外樹皮のみ、外樹皮つき内樹皮(以下全樹皮とする))調製した。この3種類を1組として9反復用意し、それぞれ生重量で40gずつプラスチックの容器にいれて摂食試験を行った。試験中は一日一回観察し、組の中でどれかが半分以上減っていたらその時点で回収して残ったものの生重量を測定した。試験前後の様子を撮影し、食べられ方の様子を比較した。3、結果【抵抗値と嗜好性】摂食試験で剥皮が確認された丸太は剥がし抵抗値が2kgf以下、刺し込み抵抗値が6kgf以下のものがほとんどであった(図)。丸太の直径(cm)に対する樹皮厚さ(mm)の関係は内樹皮がy=0.31x+2.44, R2=0.76、外樹皮がy=0.99x_-_0.77, R2=0.84(共に単回帰分析、P<0.01)であった。直径(cm)と樹皮剥ぎ抵抗値(kgf)の関係は剥がし抵抗値でy=0.26x+0.39, R2=0.85、刺し込み抵抗値でy=0.77x+1.90, R2=0.88(共に単回帰分析、P<0.01)であった。【樹皮片の摂食試験】試験前後での試料の減少量(生重量)は内樹皮片で38.9g(±0.3)、全樹皮片で20.8g(±10.3)および外樹皮片で4.0g(±3.0)であった。内樹皮片と外樹皮片の間で減少量に有意な差が存在した(Tukey型多重比較、P<0.05)。4、考察 抵抗値と嗜好性の試験結果より、樹皮を剥がす際の抵抗値が大きな丸太の樹皮をシカがほとんど食べていないことから、樹皮の物理的な抵抗がシカの樹皮剥ぎに影響を与えていることが予想できる。丸太の直径と樹皮厚さと抵抗値には高い正の相関が見られた。樹皮厚さは直径が大きくなると特に外樹皮が発達する。外樹皮にはシカにとって栄養にならないリグニンが多く含まれ(安井、2002)、樹皮全体に占める外樹皮の割合が高くなると樹皮中のリグニン量は増加することになる。直径が大きくなった時にシカの嗜好性が下がる(小島ら、2003)主な要因として少なくとも上述の2つ(樹皮剥ぎ抵抗値、リグニン量)が考えられた。樹皮片の摂食試験結果において内樹皮片が外樹皮片よりもよく食べられたことからシカが樹皮を食べる時には内樹皮を目的としていることが示唆された。全樹皮片は中間的な食べられ方と観察された。この試験はシカが通常好まない太さで抵抗値も大きな丸太から調製した樹皮片を用いたが、人為的に剥ぎ難さを排除して供試すると食べられた。このことから剥ぎ難さがシカの嗜好性に影響をしていると言えるだろう。しかし、全樹皮片は内樹皮片よりも食べられ方が少なかったことから剥ぎ難さを排除しても外樹皮の存在により嗜好性を下がったと考えられる。
著者
牧野 州明 高橋 康 中村 由克 向井 理史 法橋 陽美 津金 達郎
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.121, no.7, pp.249-260, 2015-07-15 (Released:2015-08-04)
参考文献数
38
被引用文献数
1

和田峠周辺は良質な黒曜石やざくろ石の産地,あるいは石器の原産地である.しかし,黒曜岩は露出状況が悪く構成物質も非常に細かいという事情が,黒曜岩の岩相や組織を探ることを妨げている.最近,機器の性能が向上するに伴い,微細な構成物の分析や観察も可能になり,黒曜岩にみられる微細組織の観察と理解が進んできた.今回、和田峠の黒曜岩と流紋岩に記録されている組織から読み取れるマグマの冷却と穏やかな脱ガス過程とそれを反映した岩相変移を紹介する.
著者
高橋 康之
出版者
日本香粧品学会
雑誌
日本香粧品学会誌 (ISSN:18802532)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.280-287, 2018-12-31 (Released:2019-12-31)
参考文献数
57

The stratum corneum (SC) is the outermost layer of the skin and plays important roles in sustaining physiological activities. One of the roles of the SC is in the maintenance of skin moisture. The decrease in water content in the SC, which is a condition called dry skin, leads to a mildly rough skin and desquamation. Natural moisturizing factor (NMF) and intercellular lipids are essential for skin moisturization. NMF, which is composed of amino acids, pyrrolidone carboxylic acid, lactic acid, urea, and mineral ions, can hold water molecules in the SC. Intercellular lipids consisting of ceramides, cholesterol, cholesterol esters, and free fatty acids can prevent the evaporation of water molecules from the body, which is a barrier function. Moisturizers are broadly categorized into two types, humectants and emollients. Humectants such as amino acids, polyols, hyaluronan, and its derivatives moisturize the SC similarly to NMF. Emollients such as ceramides and oils are effective for improving the barrier function. Moisturizing products contain these moisturizers in various formulations. The moisturizing effect of products differs depending on the type of formulation. An adequate amount of a moisturizer in a product is important for providing both the moisturizing effect and the good texture of use, which affects continued use, because a large moisturizer amount impairs the texture of use.
著者
竹村 朋実 渡辺 清香 田中 万祐子 進藤 斉 小泉 武夫 高橋 康次郎
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.8, pp.547-555, 2011-08-15
参考文献数
15
被引用文献数
2 1

本研究は,長期貯蔵した本みりんの抗酸化性にアミノ・カルボニル反応の後期段階で生成する褐色色素メラノイジンが寄与していることを明らかにしたものである。市販本みりんの着色度と抗酸化性との間にはr=885**(n=19,p<0.01)と高い相関関係が認められた。貯蔵期間の短い一般的な本みりんの着色度(OD430nm)は0.028~0.122と低く,DPPH-ラジカル消去活性から求めた抗酸化性は257~431 Trolox equivalent(μmol/100ml)であった。一方,貯蔵した本みりんの着色度及び抗酸化性は,3年貯蔵本みりんOD430nm:0.676, 抗酸化性:1,064 Trolox eq.(μmol/100ml),10年貯蔵本みりんOD430nm:10.641, 抗酸化性:2,978 Trolox eq.(μmol/100ml)と,貯蔵期間とともに着色度・抗酸化性ともに増加した。精製した着色物質は抗酸化性のピークと重なることから,貯蔵本みりんの抗酸化性は主としてメラノイジンそのものに起因すると考えられた。着色度当りの抗酸化性(Trolox eq./OD430nm/100)は,貯蔵期間の短い本みりんでは35.3~113.4の値を示したが,貯蔵により小さな値となり熟成本みりんでは2.8~15.7の値に,また,精製した着色物質では1.92~5.72 (平均 3.55)に収束した。精製着色物質の分子量は3年貯蔵本みりん26~43KDa,10年貯蔵本みりん34~57KDaと推定され,貯蔵とともに本みりんの着色物質が高分子化し,それに伴い抗酸化性も増加することが認められた。さらに,温度履歴の明確な試験醸造本みりんの貯蔵試験により,着色度の増加とともに抗酸化性が増加することを確認した。
著者
佐藤 信 大場 俊輝 高橋 康次郎 高木 光良 難波 康之祐 小泉 武夫 鈴木 明治
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.8, pp.643-647, 1978
被引用文献数
1

長期貯蔵清酒の一般成分ならびに熟成に関与する成分の分析を行ない, 次の結果を得た。<BR>1) 熟成に関与する成分の貯蔵年数による変化のパターンはこれまでに報告した結果とほぼ同様であった。<BR>2) DFCYが貯蔵年数11年以上の試料には全く検出されなかった。<BR>3) 貯蔵につれて<I>iso</I>-AmOHが増加し, <I>iso</I>-AmOAcが減少した。<BR>4) 96年長期貯蔵清酒は, 通常の清酒に比べて, アミノ酸, 有機酸組成が大きく異なり, 長期貯蔵により成分が変化したものと推定された。また, Feが極めて多く, Cuが少なかった。さらに, アセトンが多量に検出された。筆者らが設定した清酒の甘辛と濃淡の等高線図上に96年長期貯蔵清酒をプロットしたところ, 濃醇辛口の清酒であった。