著者
志藤 博克 積 栄 岡田 俊輔 高橋 圭二 舘山 則義 馬渕 彰二
出版者
日本農作業学会
雑誌
農作業研究 (ISSN:03891763)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.173-182, 2018 (Released:2019-06-20)
参考文献数
20

北海道では牛との接触による負傷事故が年間700件以上も報告されているが,府県では負傷事故調査を行っている自治体が限られていることもあり,問題が顕在化していない.そこで筆者らは9道県40戸の酪農家に聞き取り調査を実施した.その結果,府県でも北海道と同様,繋ぎ飼いでは搾乳時,放し飼いでは牛の移動時に事故が多く,長期入院した事例もある反面,労働力に余裕がないため余程のことでない限り入通院しない実態が明らかになった.事故の要因を分析した結果,繋ぎ飼いでの搾乳中の事故では,牛舎環境や牛の扱い方の改善による牛へのストレス軽減で,牛の危険行動を抑制すると同時に乳量増加や疾病の低減効果が期待でき,放し飼いでの牛の移動中の事故では,施設の改善により人と牛を分離することで事故の低減が期待できること等が示唆された.
著者
一井 亮介 前田 陽一郎 高橋 泰岳
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.560-570, 2012-02-15 (Released:2012-02-27)
参考文献数
12

本研究では,リラクゼーションサウンド生成システム構築のためのリラクゼーション効果計測手法の提案を行う.まず意識集中(ストレス時)と音楽聴取(リラックス時)の脳波計測を行い,人間の覚醒状態に関わりがあるとされる特定の周波数帯(θ波,α波,β波)を抽出し,各含有率を解析することによりリラクゼーション傾向をつかむ.次に,提案手法の有用性を検証するため,本研究室で開発した同期性を制御できる大規模カオスを用いて音高,音長,音量を決定し,ユーザが自在にサウンドを生成することが可能なインタラクティブ・カオティック・アミューズメント・システム(ICAS)により人間にサウンドを提示することでリラックス度の有効性検証実験を行った.実験を行った結果,被験者にICASのサウンドを提示したときのアンケート評価値と,本提案手法によるリラックス度の数値がほぼ同じ傾向を示していることが確認できた.
著者
高橋 健一郎
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.40-51, 2003

本稿は非協同的なコミュニケーションの一例としての1934年のスターリンとH.G.ウェルズの対談を「イデオロギー闘争」という観点から分析する.スターリンのディスコースの基本的な命題は,「資本主義はアナーキーを生む」(つまり,資本主義は悪である)と「人間は資本家階級と労働者階級に分けられ,両者は闘争をしている」というものであるが,ウェルズがいかにそれを批判し,スターリンがいかに正当化するかを分析する.ウェルズは自分自身を「世界を知り,イデオロギー的制約から自由な一庶民」と提示し,その反対の立場にスターリンを置きながら批判を試みる.それに対して,スターリンは「資本主義」と「資本家階級と労働者階級」に関する基本命題をさまざまな言語形態の《前提》表現によって発話の中に滑り込ませ,ウェルズの批判をかわしていく.そして,上記のウェルズの立場に対立する立場として「豊富な歴史的経験」を持ち出し,ウェルズが批判する「古臭さ」から「豊富な歴史的経験」へと価値評価を逆転させる.
著者
高橋 郁夫
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.85-99, 1998-04

本稿は買物行動における消費者満足を取り上げ,満足形成プロセスとそのフィードバック・プロセスとを統合する買物満足プロセス・モデルの提示とそのテストを試みる。そのためには,まず消費者満足に関する既存研究を概観し,主に製品に対する消費者満足の基本的分析枠組を整理することによって今回の実証分析の研究上の位置づけを明らかにする。次に,百貨店での買物満足プロセスの構造に関し,2つのモデルを提示した上で,その適合度を共分散構造分析によって比較する。その結果,店内購買行動と購買後の製品利用行動とは異時点で行われるものの,
著者
高橋 幸一
出版者
スポーツ史学会
雑誌
スポーツ史研究 (ISSN:09151273)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.1-14, 2016 (Released:2017-06-08)

It can no longer be believed that the Greeks were unique in their agonal spirit. Many scholars argue that competition is typical of ancient societies. The purpose of this paper is to examine sport in the Mycenaean civilization. However, it is necessary to clarify whether the Minoans influenced the Mycenaean sports. Minoan civilization The Minoans mainly practiced bull leaping and boxing. Bull leaping in particular was the most popular sport among the Minoans. The noble participants had to leap over bulls. Though it is supposed that the bull leaping is, like boxing, a kind of competitive sport, there is no certain evidence. On the other hand, the boxers weared a metal helmet protecting the head and face. The purpose of this dangerous boxing is uncertain. We cannot clearly decide whether the boxing and bull leaping are initiation ritual, or secular activity. Some scholars believe that the Minoan sport influenced the Myceaean and Greek sports. The Mycenaeans adopted only the bull sport. The helmeted boxers and bull leaping are unknown in Greek art. Mycenaean civilization Many archaeological evidences confirm the existence of horse-drawn chariots in the ancient Near East, but they were used in war and hunting. Although F. Starke’s new interpretation of the Kikkuli Text was accepted by a few scholars, he wrongly interpreted the Text. Hittites did not enjoy chariot racing. It seems to be possibility that chariot racing was performed by the Myceaeans. However, a few archeological evidences only suggest the sport. The issues of prizes remain unsolved. It is not clear whether the Mycenaean chariot racing influenced Homer. It is clear that sports were part of the funeral ceremony held in honor of the dead. It seems to be reasonable to suppose that the Mycenaeans had funeral games with armed combat, bull leaping and possibly chariot racing. However, some scholars argue that boxing and bull leaping are not funeral game, but initiation ritual in the Aegean civilization. It is the present conditions that opinions about sports in the Mycenaean civilization are argued variously because there is no certain evidence.
著者
小針 靖子 高橋 舞 高野 洋子 前田 昇三 牧野 武朗 悦永 徹 齊藤 佳隆 竹澤 豊 小林 幹男
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.353-357, 2017-11-01 (Released:2018-01-17)
参考文献数
16

急激な身長の増加と陰茎肥大を主訴に受診し, Leydig細胞腫と診断された5歳男児例を報告する. 初診時, 身長 128.0 cm (+4.95 SD), 体重 26.7 kg (+3.60 SD), 骨年齢9歳7ヵ月, 精巣容量右6 ml, 左4 ml, 陰茎長 9 cm, 血中testosterone 3.40 ng/mL, LH<0.10 IU/mL, FSH<0.20 IU/mLであり, ゴナドトロピン非依存性思春期早発症と診断した. エコーおよびMRIにて右精巣に腫瘤を認めた. 右高位精巣摘出術を施行し, 組織学的にLeydig 細胞腫と診断した. 摘出術後, 成長率は正常化し, testosterone値は測定感度以下に低下した.
著者
赤澤 正人 松本 俊彦 勝又 陽太郎 木谷 雅彦 廣川 聖子 高橋 祥友 川上 憲人 渡邉 直樹 平山 正実 亀山 晶子 横山 由香里 竹島 正
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.550-560, 2010 (Released:2014-06-12)
参考文献数
37
被引用文献数
1

目的 わが国の自殺者数は,平成10年に 3 万人を超えて以降,11年に渡りその水準で推移しており,自殺予防は医療や精神保健福祉の分野に留まらず,大きな社会的課題となっている。本研究では心理学的剖検の手法で情報収集がなされた自殺既遂事例について,死亡時の就労状況から有職者と無職者に分類し,その心理社会的特徴や精神医学的特徴の比較•検討を通じて,自殺既遂者の臨床類型を明らかにし,自殺予防の観点から有職者ならびに無職者に対する介入のポイントを検討することを目的とした。方法 心理学的剖検の手法を用いた「自殺予防と遺族支援のための基礎調査」から得られたデータをもとに分析を行った。調査は,自殺者の家族に対して独自に作成された面接票に準拠し,事前にトレーニングを受講した精神科医師と保健師等の 2 人 1 組の調査員によって半構造化面接にて実施された。本研究で用いた面接票は,家族構成,死亡状況,生活歴,仕事上の問題,経済的問題等に関する質問から構成されていた。なお,各自殺事例の精神医学的診断については,調査員を務めた精神科医師が遺族からの聞き取りによって得られたすべての情報を用いて,DSM-IVに準拠した臨床診断を行った。本研究では,2009年7 月中旬時点で23箇所の都道府県•政令指定都市から収集された自殺事例46事例を対象とした。結果 有職者の自殺者は,40~50代の既婚男性を中心として,アルコールに関連する問題や返済困難な借金といった社会的問題を抱えていた事例が多かった。無職者では,有職者に比べて女性の比率が高く,20~30代の未婚者が多く認められ,有職者にみられたような社会的問題は確認されなかった。また,有職者では死亡時点に罹患していたと推測される精神障害としてアルコール使用障害が多く認められたのに対して,無職者では統合失調症及びその他の精神病性障害が多く認められた。結論 自殺予防の観点から,有職者に対しては,職場におけるメンタルヘルス支援の充実,アルコール使用障害と自殺に関する積極的な啓発と支援の充実,そして債務処理に関わる司法分野と精神保健福祉分野の連携の必要性が示唆された。一方で,無職者に対しては,若い世代の自殺予防に関する啓発と支援の充実,統合失調症と自殺に関する研究の蓄積の必要性が示唆された。
著者
高橋 ひとみ 衞藤 隆 Hitomi Takahashi Takashi Eto 桃山学院大学法学部 東京大学教育学研究科
雑誌
桃山学院大学人間科学 = HUMAN SCIENCES REVIEW, St. Andrew's University (ISSN:09170227)
巻号頁・発行日
no.37, pp.35-61, 2009-10-20

In February 2009, we tested the far-vision visual acuity and near-vision visual acuity of school children at "A" elementary school, a municipal school. The purpose of the test was to examine whether the present far visual acuity test could also identify the children whose near visual acuity is bad. Based on the past study, we set the standard of near visual acuity at 0.8. We recommended that children whose near visual acuity was under0.8 see an ophthalmologist. There were many children whose far visual acuity was under 1.0, more than half of all children, especially in the upper grades. This result shows that there is concern with the control of children's eyesight after the test.On the other hand, more than ten percent of the children of each grade scored less than 0.8 in uncorrected vision. We found children who have trouble seeing near objects who are overlooked in the present far visual acuity test. We have to check children's near visual acuity in order to find children who have trouble with near visual acuity.
著者
田中友二 高橋寛幸 徳永幸生 杉山精
雑誌
第75回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, no.1, pp.185-186, 2013-03-06

情報入手では検索エンジンの利用が一般的であり,この情報入手の支援は重要である.一方で,自然文でやりとりするQ&Aサイトも利用される.そこで,本研究では従来の情報入手支援手法を更に強化することを念頭に,Q&Aサイトの質問回答データの分析を進めた. 本稿では,Q&Aサイトのテキストデータを用いて,検索エンジンに入力される検索語と関連する語の抽出とその評価を行ったことを報告する.具体的には,テキストデータにおける単語の出現頻度や閲覧者の評価値に基づいて,抽出アルゴリズムを構築し,抽出された語を既存検索エンジンのサジェスト語と比較した.
著者
有田 皓亮 高橋 健一 上田 祐彰
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第26回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.121, 2010 (Released:2010-11-05)

近年,大学などへのパソコンの普及とともに,eラーニングシステムが広く用いられるようになってきた.eラーニングシステムは,時間や場所を選ばず、学習者の理解度に応じて学習を進められるなどの利点を持っている反面、学習者の学習意欲の持続が難しいことや,教師が学習者の状況を視覚的に把握できないことなどの欠点も持っている.そこで本研究では、Webカメラにより学習者を正面からと側面からの2方向から撮影し、撮影画像に画像処理を施すことによって学習者の集中度を推定するシステムを構築する.正面からの撮影画像からは,Haarlike特徴を用いたAdaboostによって学習された識別器を用いて学習者が正面を向いて学習を行っているかを判定し,横からの撮影画像からは,ニューラルネットワークを用いて学習者が正しい姿勢で学習を行っているかを判定する.また,これらの有用性を確かめるために,それぞれの判定の正答率を調べ,その結果について考察する.
著者
渡辺 和宏 舟山 裕士 福島 浩平 柴田 近 高橋 賢一 上野 達也 長尾 宗紀 羽根田 祥 松野 正紀 佐々木 巌
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.517-521, 2004 (Released:2011-06-08)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

術前診断が可能であった右傍十二指腸ヘルニアを経験したので報告する. 症例は71 歳の男性で, 突然の右側腹部痛で発症した. 小腸造影にて, 口側, 肛門側での狭窄を伴う, 空腸係蹄の集塊像を右側腹部に認めた. 上腹部CTにて, 右側腹部で被膜に包まれ嚢状塊となった拡張した小腸を認め, 上腸間膜動静脈の腹側を扇状構造の腸間膜が走行していた. 右傍十二指腸ヘルニアの診断にて, 発症から14日後, 開腹手術となった. 開腹所見にて下結腸間膜窩に発生した右傍十二指腸ヘルニアと診断され, 嵌入した腸管を還納した後ヘルニア門を閉鎖した. 腸間膜側壁窩に発生する一般的な傍十二指腸ヘルニアでは, ヘルニア嚢は上腸間膜動静脈の背側を走行するが, 自験例では上腸間膜動静脈とは独立した位置関係であった. 下結腸間膜窩をヘルニア門とするヘルニアは我々が検索した限りでは報告がなく, 極めてまれな症例であると考えられた.
著者
青木 亮磨 北澤 正樹 高橋 聡 吉川 厚 山村 雅幸
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.159-164, 2019-12-21 (Released:2019-12-18)
参考文献数
7

教育においてデータを活用して教育施策に活用する動きが近年盛んになっており,多くの教育に関するデータが雑誌や本,WEB上で公開されている.本研究では大学入試に関するデータを用いた大学の入試難易度序列の決定手法を提案する.各高校の公開している大学合格実績データは高校の実力と大学入試の難易度に依存する系統的な欠損である.この系統的な欠損は高校がターゲットとする大学のみ合格率が高い性質を持つ.ここで,高校からの合格率の高い大学の入試難易度が似ていると考えると,合格率の高い部分にのみ注目することで系統的な欠損のあるデータで入試難易度を比較できる.この点から,距離を用いた並び替え手法,合格率を用いた並び替え手法,レイティングを用いた序列決定手法の3つの手法を作成した.得られた序列を塾が公開する偏差値による序列との順位相関で評価した結果,各手法での順位相関は0.83,0.85,0.89という値になった.今後は精度向上を目指して,同じ順位に分類された大学の更なる序列付けをする手法を検討していく.