著者
泉谷 清髙
出版者
日本国際情報学会
雑誌
国際情報研究 (ISSN:18842178)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.3-19, 2014-12-19 (Released:2014-12-19)

On March 11, 2011, a big earthquake (today named the Great East Japan Earthquake) hit north-east Japan. Fukushima Daiichi nuclear power station suffered from the disaster, with part of its main buildings destroyed. The other power stations throughout the country stopped work one after another, and have been out of operation up to now (August, 2014). Taking into account increasing costs of fossil fuel, and worsening air pollution with emission of more carbon dioxide and greenhouse gas, restart of nuclear power generation will be desired. In view of the fact that about 60% of the power plants are located on the Pacific coast, there would be a lot of power shortages if a big earthquake directly hit the Tokyo area. In order to prevent shortages, it may be necessary that plants situated on the Japan Sea side should resume operation as soon as safety has been reconfirmed. In this article I will consider how unevenly nuclear power stations are distributed and dispersed, and what problems this irregular location poses to us, by making simulations of what effects an earthquake in the Tokyo area will have on nuclear plants in the TEPCO area.
著者
髙良 幸哉
出版者
日本比較法研究所
雑誌
比較法雑誌 (ISSN:00104116)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.129-156, 2017-12-30

児童ポルノ規制の保護法益に関し,わが国においては被写体児童の保護という個人的法益に基礎をおく見解が長く通説的見解であったが,2014年の児童ポルノ法改正における児童ポルノ単純所持罪の新設により,かかる観点からの理論づけが困難になっている。さらに,東京高判平成29年1月24日判例集未登載(Westlaw 文献番号:2017WLJPCA01246001)において,児童ポルノの保護法益について社会的法益から説明する裁判例も登場するなど,児童ポルノ規制を巡る状況は変化している。一方,わが国の刑法が範とするドイツにおいては,被写体児童の保護の観点を踏まえつつ,将来害される恐れのある児童の保護という観点を取り込み,仮想児童ポルノ規制や単純所持規制についての根拠づけを図っている。そこでは児童ポルノ規制の保護法益と規制目的を意識した検討がなされている。本稿は,ドイツにおける児童ポルノ規制をめぐる議論を参照し,児童ポルノ規制の保護法益と児童ポルノの規制目的を明らかにし,近時の児童ポルノ規制をめぐる諸論点について検討するものである。
著者
髙良 幸哉
出版者
日本比較法研究所
雑誌
比較法雑誌 (ISSN:00104116)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.277-303, 2014-12-30

2014年第186回国会において児童買春,児童ポルノにかかる行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下児童ポルノ法)の改正がなされ,児童ポルノの単純所持罪が規定された。性刑法をめぐってはインターネットの発展に伴い,国境を越えた対策が必要となっている。かかる傾向において,我が国でも児童ポルノ規制が強化されるに至った。しかし,改正児童ポルノ法についてはなおも定義の曖昧さなど批判のあるところである。児童ポルノ規制については,欧米においては我が国に先だって,その定義や行為態様について規定がある。我が国の刑法が範とするドイツにおいても,1973年以降数度に渡り,性刑法に関する主要な改正がなされている。その中でも1993年,2003年,2007年改正においては児童ポルノと青少年ポルノに関連して,ドイツ刑法上重要な改正がなされている。その背景となる保護法益に関する議論や行為態様に関する議論は,我が国における児童ポルノ規制に関する法解釈および,今後の刑事立法を含めた議論において参考となる点も多い。本稿は,ドイツにおける性刑法の法状況,とりわけ,児童ポルノ規制(StGB184b条)青少年ポルノ規制(同184c条)をめぐる法状況を概観し,我が国の児童ポルノ単純所持に関して,児童ポルノマーケットへの影響という客観的な基準を用いることで,規制範囲の不当な拡大を制限することを示すものである。
著者
髙見澤 こずえ 福田 一史
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.41-46, 2022-02-01 (Released:2022-03-22)
参考文献数
12

1980年代から家庭用ゲームを中心に急速に普及したビデオゲームは、プレイによる消耗や新製品への代替わりによる陳腐化が懸念されており、四半世紀以前に発売されたゲーム機本体およびパッケージ化されたゲームソフトのうち不具合なく作動するものの確保は今後ますます厳しくなると想定される。ビデオゲームの保存としてマイグレーションやエミュレーションなどが急務とされるなか、その前提として実物保存もまた不可欠である。本稿では博物館における資料保存の観点から、ビデオゲームの劣化要因と対策、保存環境ほか実物保存の方法論について述べる。
著者
髙山 卓美
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.4, pp.204-218, 2016 (Released:2018-06-29)
参考文献数
36

中国の蒸留酒は,固体発酵,大曲,泥窖地発酵,固体醪蒸留など他に見ない特徴を持ち,その酒質も高アルコール度,高い香気など独特の個性を有している。しかしながら,その起源については諸説あり謎に包まれた部分も多い。中国では近年,遺跡の発掘が相次ぎ貴重な発見がなされているが,著者は2007年に発見された劉怜酔焼鍋遺址の出土遺物をもとに,これまでの古記録を整理しつつ,その歴史的意義と酒造法変遷についての考察を行った。本論文は中国酒史を考える上で重要な知見と示唆を与えるものである。
著者
髙田 琢弘 吉川 徹 佐々木 毅 山内 貴史 高橋 正也 梅崎 重夫
出版者
独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
pp.JOSH-2020-0022-GE, (Released:2021-02-11)
参考文献数
26

本研究は,過労死等の多発が指摘されている業種・職種のうち,教育・学習支援業(教職員)に着目し,それらの過労死等の実態と背景要因を検討することを目的とした.具体的には,労働安全衛生総合研究所過労死等防止調査研究センターが構築した電子データベース(脳・心臓疾患事案1,564件,精神障害・自殺事案2,000件,平成22年1月~平成27年3月の5年間)を用い,教育・学習支援業の事案(脳・心臓疾患事案25件,精神障害・自殺事案57件)を抽出し,性別,発症時年齢,生死,職種,疾患名,労災認定理由および労働時間以外の負荷要因,認定事由としての出来事,時間外労働時間数等の情報に関する集計を行った.結果から,教育・学習支援業の事案の特徴として,脳・心臓疾患事案では全業種と比較して長時間労働の割合が大きい一方,精神障害・自殺事案では上司とのトラブルなどの対人関係の出来事の割合が大きかったことが示された.また,教員の中で多かった職種は,脳・心臓疾患事案,精神障害・自殺事案ともに大学教員と高等学校教員であった.さらに,職種特有の負荷業務として大学教員では委員会・会議や出張が多く,高等学校教員では部活動顧問や担任が多いなど,学校種ごとに異なった負荷業務があることが示された.ここから,教育・学習支援業の過労死等を予防するためには,長時間労働対策のみだけでなく,それぞれの職種特有の負担を軽減するような支援が必要であると考えられる.
著者
廣中 直行 高野 裕治 髙橋 伸彰 田中 智子 板坂 典郎 小泉 美和子
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.96-102, 2011 (Released:2017-04-12)

ヒト以外の動物を用いて快情動を研究することは難しく、客観的に計測可能な行動を対象にする必要がある。このような観点から、我々は報酬探索の神経機構について検討した。一連の実験によって、1)内因性のノシセプチンが高脂肪食に対する選好を調節していること、2)海馬のシータ波が報酬の予期に関係しているらしいこと、3)報酬記憶の形成に伴って海馬のドパミン受容体が増加すること、4)扁桃体のドパミン受容体が選好行動の発現に重要な役割を果たしていることなどが示された。これらの結果は報酬探索における学習や記憶の重要性を示すものであった。報酬探索は生存に必須な生理機能であるが、嗜癖や依存といった病態につながるおそれもある。今後の研究では、正常な報酬探索とその病態を統合的にとらえる視点が必要である。そのような研究の中から快情動の構造と機能について新たな洞察が得られることが期待される。
著者
髙木 太郎 麻生 沙和 横井 隆司
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.123, no.11, pp.1298-1303, 2020-11-20 (Released:2020-12-02)
参考文献数
15
被引用文献数
1

TIPIC syndrome は, 頸動脈周囲の一過性の炎症が原因となり頸部痛を来すまれな疾患である. これは以前から carotidynia として扱われてきた疾患であるが, 近年ではその画像所見に関する報告が増えたことで徐々に病態が解明され, 診断基準とともに名称を変えつつある. 今回われわれは, TIPIC syndrome の2例を経験した. 2症例とも特徴的な頸部圧痛 (Fay 徴候) を認め, 超音波検査と造影 CT 検査にて患側の総頸動脈遠位部に全周性の軟部組織陰影を認めた. いずれも NSAIDs の内服で経過観察をしたところ, 1週間後に症状は軽快した. 今回, これらの症例について文献的考察を加え検討した.
著者
髙嶋 博
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.636-639, 2020 (Released:2021-05-27)
参考文献数
5

Autoimmune encephalopathies are clinically and immunologically heterogeneous disorders. Many different types of autoimmune encephalopathy have been discovered, and most common type may be Hashimoto encephalopathy in it. In clinical situations, we often recognize that patients with autoimmune encephalopathy are misdiagnosed as exhibiting functional psychogenic movement, conversion, or somatoform disorders. Most patients with autoimmune encephalopathy showed motor disturbance mostly with unsustained and/or give–way weakness. About 70% of patients showed sensory abnormalities that was not explainable anatomically. One–fourth of patients exhibited involuntary movements such as tremor entrainment, dystonia, or coarse involuntary movement. Although give–way weakness, anatomically unexplainable pain, and strange involuntary movements were thought to be psychogenic, the presence of one of these three symptoms was indicative of autoimmune encephalopathy. As autoimmune encephalitis exhibits diffuse involvement with the whole brain, these symptoms were entirely understandable. Except for the presence of organic disease, most patients were classified into somatoform disorders or functional movement disorders. Without first excluding autoimmune encephalopathy, physicians should not diagnose somatoform disorders.