著者
林 達也 髙石 鉄雄 本田 寛人
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

2型糖尿病患者を対象として、短時間の階段昇降運動による血糖コントロール改善効果を検討した。食後90分に行う8~10分間、及び食後60分と120分に行う3分間の階段昇降運動は食後高血糖を急性的に緩和した。階段昇降運動と自転車運動を同じ心拍数で行ったところ前者でより急性的な血糖降下が得られた。さらに自宅内で毎食60分後と120分後に3分間の階段昇降運動を2セットずつ行うことで24時間にわたる血糖コントロールが改善するとともに、この運動を2週間継続することで血糖コントロール指標(血中1,5-アンヒドログルシトール)が改善した。以上より、階段昇降運動の2型糖尿病治療における臨床的有用性が示唆された。
著者
厚味 英 髙田 乃倫予 山本 信次
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.43-51, 2023 (Released:2023-11-12)
参考文献数
42

学校林に関する研究は,その設立経緯から公立学校の事例が多く,現在の活動状況に関する報告は環境教育利用を中心とした「新しい学校林」を扱った事例に偏っている。一方で学校の基本財産形成を目的として設置された「伝統的な学校林」は利用が低調である。よって本研究では,伝統的な学校林を今後有効利用していくために調査の及んでいない私立学校学校林の現状と課題を明らかにし,学校林の抱える課題や解決方法を抽出することを目的とした。調査対象は学校法人自由学園であり,調査方法は文献収集と整理,半構造化インタビューによる聞き取り調査,現地踏査である。その結果1950年の植林開始から生徒が造林・育林作業を担い現在も実施していること,学校林の木材を用いて校舎建築や木工品製作が行われていることから,森林造成から木材生産という一連の流れが学校教育に直結していることが確かめられた。こうした活動が可能な理由として,教員の長期在籍,独自のカリキュラムでの活動展開,教育理念に沿った活動展開という私立学校の特徴が関係しており,これらを参考した新たな仕組みの構築や応用が公立学校学校林の抱える問題解決する要素の一助になると考えられる。
著者
金井 壽宏 髙橋 潔
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.4-15, 2008-06-20 (Released:2022-08-19)
参考文献数
51
被引用文献数
1

経営学における組織行動論は,心理学にベースを置き,しばしば社会学からも影響を受けてきた.心理学の影響で感情の機能が扱われ,社会学に依拠して感情にまつわる労働が注目され,ようやく経営における感情の研究が姿を現しつつある.その姿を,まず感情の定義,機能,種類,そして感情と行動との関係を踏まえ,トピックとしては,文化に規制される感情の表示規則,感情労働などに見る感情のマネジメント,経営層(マネジメント)の抱く不安などの感情,リーダーシップに伴う感情過程,カリスマの言説,ポジティブ組織行動における感情の扱いなどの論点について試論的にとりあげて,組織理論における感情研究のおおまかな地図を提示する.
著者
髙泉 佳苗 原田 和弘 中村 好男
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.63-73, 2017 (Released:2017-05-31)
参考文献数
20
被引用文献数
4

目的:食生活リテラシーと食情報源(利用回数,信用度)および食情報検索バリアとの関連を検討した.方法:社会調査会社の登録モニター(20~59歳)を対象に,ウェブ調査による横断研究を実施した.解析対象は1,252人(男性631人,女性621人)であった.食生活リテラシーと食情報源(利用回数,信用度)および食情報検索バリアとの関連は重回帰分析(強制投入法)を用いた.結果:食生活リテラシーと正の関連が認められた食情報源は,男性では「医療従事者・専門家」(利用回数:β=0.12,p<0.01),「友人・知人」(信用度:β=0.14,p=0.01),「インターネット」(信用度:β=0.23,p<0.01)であった.女性では「インターネット」(利用回数:β=0.17,p<0.01,信用度:β=0.19,p<0.01),「友人・知人」(信用度:β=0.13,p=0.01)であった.食生活リテラシーと関連が認められたバリアは,「自分で検索した食情報は難しすぎて理解できない」(男性:β=-0.23,p<0.01,女性:β=-0.25,p<0.01),女性では「食情報を検索していると欲求不満や苛立ちを感じる」(β=-0.11,p=0.01)であった.結論:食生活リテラシーが低くなるほど,特定の食情報検索バリアが高くなる可能性が示された.食生活リテラシーに影響を与えている可能性がある食情報源は,男性女性ともに「友人・知人」,「インターネット」であり,さらに男性においては「医療従事者・専門家」も含まれていた.
著者
栗田 慎也 髙橋 あき 髙橋 忠志 久米 亮一 山崎 健治 尾花 正義
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.69-73, 2021-01-01 (Released:2022-01-15)
参考文献数
15

脳卒中発症早期より長下肢装具(Knee-Ankle-Foot-Orthosis : 以下,KAFO)を使用する報告は増えているが,KAFOの使用や作製に伴う有害事象の報告はない.そこで,急性期病院である当院で,脳卒中発症早期患者に対するKAFOの使用や作製に伴う有害事象を後方視的に調査し,それに対する対策を行った.対象は2017年8月から2019年7月までの間に報告された有害事象データとした.この調査期間内の有害事象は376件あり,そのうちKAFOに関するものは25件(6.6%)であった.有害事象の多くは備品KAFOで生じており,最も多かった内容は医療関連機器圧迫創傷(Medical Device Related Pressure Ulcer : 以下,MDRPU) 6件であった.急性期病院での備品KAFOの使用には,MDRPUの発生予防対策や創傷に対する知識獲得が重要と考える.
著者
髙田 咲季 後藤 崇志
出版者
人間環境学研究会
雑誌
人間環境学研究 (ISSN:13485253)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.43-48, 2022 (Released:2022-06-21)

We examined the stereotypical images of those who do not have a romantic partner with considering their desire for a romantic relationship. We revealed that those who had neither a romantic partner nor a desire for a romantic relationship were evaluated the most negatively in the sociality dimension. We also revealed that they were evaluated negatively in the positive trait dimension, while those who do not have a romantic partner but have a desire for were not. Furthermore, we showed that they were evaluated negatively in the negative trait dimension by those who had less egalitarian sex role attitudes. We discussed the possibility that stereotypes about those who do not have a romantic partner were involved with the internalization of a “normative” life course.
著者
大平 雅之 髙尾 昌樹 佐野 輝典 瀬川 和彦 富田 吉敏 佐藤 和貴郎 水澤 英洋
出版者
日本神経感染症学会
雑誌
NEUROINFECTION (ISSN:13482718)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.85, 2022 (Released:2022-05-12)
参考文献数
13

【要旨】新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症(COVID-19)では、さまざまな精神・神経症状が急性期症状の回復後、長期に持続し、新たに出現することが知られるようになり、神経症候についてはCOVID-19 後神経症候群(PCNS)と呼ばれることもある。国立精神・神経医療研究センターでは 2021 年6 月より後遺症外来を開設し、このような PCNS あるいは COVID-19 後遺症の患者さんを積極的に受け入れている。当院でも嗅覚障害、記憶障害、不安、うつ状態、疲労など多彩な症候がみられ、その治療は容易ではない。今後は神経内科医を含む複数の専門科が横断的に COVID-19 の長期症状の診療にかかわることが望ましい。
著者
髙橋 義雄
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.25-35, 2022 (Released:2023-04-26)
参考文献数
23

技術革新の兆候を感じた編集委員会が、『スポーツ社会学研究』第23巻の特集論文で、超人スポーツ委員会についてすでに触れている。それから7年の間に、超人スポーツ協会は法人化し、様々な活動を実施してきた。現在ではヒューマンオーグメンテーション(Human-Augmentation)と呼ばれる技術が急速に発展し、「人機一体」と称されている。脳神経科学や医学などの学際的な知見によるこれらの技術は、工学が社会実装化を試みている。2013年に2020年東京オリンピック・パラリンピックの招致に成功し、アニメやロボットなどの日本が得意とする分野の科学技術の発展のための関係者間のプラットフォームが構築された。一方で、人間拡張技術によって、人間の「身体所有感(Sense of self-Ownership)」と「運動主体感(Sense of self-Agency)」の研究が進んだ。その結果、近代スポーツ科学が当然のこととして扱ってきた物理的な肉体としての身体の再検討が必要になった。つまり、人機一体化したアバターという機械は、「私」の範囲なのか、それとも「機械」の範囲なのかという認識の揺らぎを生じさせた。さらに、不測の事故が発生した際の責任は人間にあるのか、それとも機械側にあるといったルールの整備、個人の権利や情報保護、科学技術における経済安全保障の議論に照らした身体活動や個人の生理的情報のビックデータの管理が必要になっている。また、人間と機械の変化と適応のなかで、人間を機械依存の最適化方向へ適応させ、自らの心身自体を縮小しスポーツ競技者単体の能力を低下させてしまう危険性も指摘されている。不自由な設定をしてそれを楽しむスポーツの特徴は、人間拡張技術をスポーツに導入しやすくする。そのため、人間拡張技術による「人間像」の議論は、スポーツを通じてこそ可能になるとも考えられる。
著者
髙谷 正敏
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.13, no.9, pp.423-428, 2013 (Released:2016-02-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1

エリスリトールは,ショ糖の約75%の甘味をもつ四炭糖の糖アルコールである。ブドウ糖を原料として酵母の発酵により生産される “ブドウ糖発酵甘味料” であり,糖質では唯一のカロリーゼロの甘味料である。消費者の健康志向を背景として,エリスリトールは,あらゆる分野での低カロリー製品の検討やシュガーレス菓子の検討などに利用されている。本稿では,エリスリトールの生理的特性や物理化学的特性を中心に紹介し,その特性を利用した使用例についても紹介する。
著者
髙木 英行
出版者
東洋大学法学会
雑誌
東洋法学 = TOYOHOGAKU (ISSN:05640245)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.1-24, 2017-07
著者
髙野 剛史
出版者
日本動物分類学会
雑誌
タクサ:日本動物分類学会誌 (ISSN:13422367)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.36-41, 2023-02-28 (Released:2023-03-07)
参考文献数
53

At least ten families of the molluscan class Gastropoda contain parasitic species. Parasitic gastropods exhibit an extraordinarily large number of species and wide varieties of morphologies and host-exploitation strategies. Here, I introduce our evolutionary studies based on molecular phylogenetic analysis for two lineages of parasitic gastropods: Caledoniella (Caledoniellidae) and Eulimidae. Species of Caledoniella parasitize stomatopods (mantis shrimps) and have close phylogenetic kinship to burrow commensals of marine benthic invertebrates. Interestingly, Sigaretornus sp. from mantis shrimp burrows was found to be sister to Caledoniella, suggesting the following evolutionary scenario from free-living organisms to parasites: (1) colonization into benthic invertebrates’ burrows, (2) specialization to mantis shrimps, and (3) habitat-shift to the host body surface with the acquisition of the parasitic nature. Members of the other group Eulimidae show the widest range of parasitic strategies (i.e., temporary, ecto- and endoparasitism) on their echinoderm hosts. Molecular phylogenies of the family have revealed the polyphyly of endoparasitic taxa and repeated evolutionary changes from slender to globose shells. Recurrent specializations to the parasitic mode of life probably have an important role in the diversification of eulimid gastropods.
著者
米井 嘉一 八木 雅之 髙部 稚子 今 美知
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.83-90, 2019-06-20 (Released:2019-06-21)
参考文献数
25
被引用文献数
1

皮膚の老化の機序を考える上で光老化による酸化ストレスと糖化ストレスは大きな要因となっている。紫外線は活性酸素やフリーラジカルを介して皮膚に酸化ストレス障害を惹起し,色素細胞のメラニン産生刺激と角化細胞の遺伝子損傷はシミ形成に,線維芽細胞刺激はシワ形成に関わる。糖化ストレスは次に大きな皮膚老化の原因である。これは還元糖,脂質や酒由来のアルデヒドによる蛋白修飾が主反応で,カルボニル化蛋白ならびに糖化最終産物(advanced glycation end-products: AGEs)を生成,さらにはRAGE(receptor for AGEs)に結合して炎症性サイトカイン産生を促す。RAGE は免疫応答細胞のみならず皮膚線維芽細胞にも存在する。コラーゲン糖化は皮膚弾力性低下,エラスチンの糖化はたるみを惹起する。近年,AGEs が色素細胞を刺激してメラニン産生を助長することが明らかになった。すなわちシミ形成にも関与する可能性がある。糖化ストレス対策化粧品の開発はきわめて重要であり,今後の発展が期待される。