著者
髙橋 涼太朗
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.194-217, 2019 (Released:2021-07-28)
参考文献数
64
被引用文献数
1

本稿は,「福祉元年」政策である老人医療無料化と年金制度改正の政策形成過程の分析を通じ,「高福祉高負担」路線が部分的にしか達成されなかったことを明らかにするものである。「福祉元年」は日本型福祉国家の黎明期として位置づけられ,「福祉元年」に内包される政策は国民一般を支える制度とみなされる一方で,財政収支バランスを毀損する枠組みであると指摘されてきた。本稿は経常収支不均衡問題下の大蔵省に着目することで上述の評価に新たな視点を提供する。ニクソン・ショックによって租税負担率引き上げが棚上げされ,スミソニアン合意による円切り上げにより大蔵省は老人医療無料化を許容した。また,経常収支不均衡問題対策の調整インフレ政策は労使協調を生み,年金水準は引き上げられたものの,大蔵省は国庫負担を回避する制度を導入した。「高福祉」は実現したが,「高負担」は社会保障負担の増徴という形でしか実現しなかったのである。
著者
髙田 真弥
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.610-613, 2021-10-15

愛知県高等学校情報教育研究会では,令和7年度より実施される大学入試共通テスト「情報」に向けてサンプル問題を題材として研究協議を行った.参加者は事前にサンプル問題を解き,アンケートに解答,当日はZoomを用いて講演,研究協議を行った.大学入試共通テスト「情報」では,情報デザインや画像処理,プログラミング,データの活用や統計処理等幅広い分野からの出題が想定される.令和4年度より実施される「情報I」では,授業時間の配分や授業の構成,他教科との連携による読解力や計算力などの向上が課題となる.需要の高まる情報教育の発展のため,教員の情報交換や資質向上の場として本研究会が活発に運営されていくことが期待される.
著者
中原 未智 日髙 未希恵 酒井 一夫
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.211-219, 2021 (Released:2021-09-23)
参考文献数
15

目的:看護師の診療看護師(以下,NP)への認知度と期待,NPを志望する看護師の潜在状況を明らかにすることとする.方法:東京都目黒区内の病院,診療所,介護施設,訪問看護ステーションに勤務する看護師を対象に,NPの認知度,期待,関心に関する横断的調査をWebアンケートにて実施した.結果:110施設へ計818部の研究資料を配布し72件の回答を得た.多重ロジスティック回帰分析では,所属施設にNPが在籍する看護師は,在籍しない看護師よりNPの認知度(オッズ比61.62,p < 0.01)及び期待(オッズ比9.219,p < 0.05)が高かった.一方で,NPを志望する看護師は13.9%に留まった.結論:より多くの施設にNPを在籍させることは,NPの認知度と期待を高める.
著者
山内 聡 菅野 勝也 髙田 訓
出版者
日本口腔診断学会
雑誌
日本口腔診断学会雑誌 (ISSN:09149694)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.243-248, 2017-10-20 (Released:2017-10-21)
参考文献数
28

To investigate the effects of exercise stress on halitosis, we determined concentrations of cortisol and catecholamine in the blood and that of volatile sulfur compounds (VSC) in the expired gas. The experiments were conducted on healthy volunteers. All volunteers were measured for VSC (hydrogen sulfide, methylmercaptan, dimethylsulfide), cortisol and catecholamine (adrenaline, noradrenalin, and dopamine) before and after a footstool elevation movement. We found significant increases in hydrogen sulfide in the volatile expired gas and cortisol, adrenaline, noradrenalin, and dopamine in the blood in a comparison of before and after exercise. In addition, a significant positive correlation was found between hydrogen sulfide and adrenaline, hydrogen sulfide and dopamine. These results suggest that induced exercise stress is a factor that increases the concentration of sulfur compounds. In particular, the results strongly suggested that adrenaline and dopamine are involved in the increase of hydrogen sulfide.
著者
渡辺 大士 砂川 正隆 片平 治人 金田 祥明 藤原 亜季 山﨑 永理 髙島 将 石野 尚吾 久光 正
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.146-155, 2017 (Released:2017-10-03)
参考文献数
34

加味逍遥散は,柴胡,芍薬,蒼朮,当帰,茯苓,山梔子,牡丹皮,甘草,生姜,薄荷の10種の生薬から構成される漢方薬であり,比較的体力の低下した,精神不安やイライラなどの精神神経症状を有する人の全身倦怠感,のぼせ,寒気,種々の身体痛,食欲不振,好褥的傾向などの症状に用いられている.近年,オレキシンがストレス反応の制御に関与することが明らかになってきた.オレキシンは神経ペプチドの一種で,オレキシン産生神経は主に視床下部外側野および脳弓周囲に存在するが,その軸索は小脳を除く中枢神経系全域に分布し,摂食行動や覚醒反応ほかさまざまな生理活性の制御に関与している.本研究では,ラット社会的孤立ストレスモデルを用い,加味逍遥散の抗ストレス作用,ならび作用機序の検討としてオレキシン神経系の関与を検討した.初めに,加味逍遥散がオレキシンの分泌に影響するのかを調べた.Wistar系雄性ラットに,100mg/kg/day,400mg/kg/day,1,000mg/kg/dayの3種類の用量の加味逍遥散を7日間連続で経口投与し,血漿オレキシンA濃度を測定した.Control群と比較し,100mg/kgならび400mg/kgの投与で有意な低下が認められたが,1,000mg/kgでは有意な変化は認められなかった.次に,ラットをグループ飼育群(Control群),孤立ストレス群(Stress群),ストレス+加味逍遥散(400mg/kg)投与群(Stress+KSS群)に分け,7日間の飼育後,攻撃性試験ならび血漿コルチコステロンならびオレキシンA濃度の測定を行った.Stress群ではControl群と比較し,攻撃行動を示す時間が有意に延長し,血漿コルチコステロンならびオレキシンA濃度も有意に上昇したが,Stress+KSS群ではこれらの変化は有意に抑制された.更には, いずれの生薬が主として作用しているのかを検討した.本研究では柴胡に注目し,柴胡単独投与で検証した.ラットをControl群,Stress群,ストレス+柴胡投与群(Stress+saiko)の3群に分け,血漿コルチコステロンならびオレキシンA濃度の測定を行った.Stress+saiko群では,これらの濃度の上昇が有意に抑制された.ストレス負荷によって,攻撃性が高まり,血漿コルチコステロンならびオレキシン濃度が上昇したが,これらの変化は加味逍遥散の投与によって抑制された.オレキシンが本モデル動物のストレス反応の発現に関与していることから,加味逍遥散の効果は,オレキシン分泌の制御を介した作用であり,柴胡が重要な働きをしていると考えられる.加味逍遥散は抗ストレス作用を有し,作用機序として,オレキシン分泌の制御が関与することが示唆された.
著者
窪田 愛恵 伊藤 栄次 髙橋 直子 井上 知美 大鳥 徹 小竹 武 西内 辰也 平出 敦
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.6-13, 2019-02-28 (Released:2019-02-28)
参考文献数
13

目的:薬局・薬店もしくは薬剤師が関与し救急車が出動したケースを検討し,薬局・薬店における救急対応のニーズに関して検討した。方法:大阪市消防局の救急活動記録から,薬局・薬店もしくは薬剤師が関与した救急要請のあった事例を抽出して検討した。結果・考察:薬局・薬店が関連した事例は6年間で1,075件であった。救急要請の原因としては,774例が内因性で,全身倦怠感,失神,腹痛,痙攣,呼吸困難が多かった。このうち意識レベルに問題を生じたケースは183例あった。外因性は250件で,転倒に伴う打撲,挫創,骨折が多かった。病院外心停止の事例も10件報告されていた。結論:薬局・薬店では基礎疾患を有して複数の薬剤を常用している高齢者が数多く薬局・薬店を訪れるが,内因性の救急病態とともに,転倒に伴う損傷にも対応できる必要がある。一次救命処置ができる体制も重要である。
著者
稲野 利美 山口 貞子 千歳 はるか 梅沢 亜由子 長橋 拓 岡垣 雅美 青山 高 森 直治 東口 髙志 大前 勝弘 盛 啓太 内藤 立暁 高山 浩一
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.71-80, 2020 (Released:2020-04-21)
参考文献数
56

【目的】本研究の目的は,進行がんを有する高齢者に対する集学的介入(NEXTAC-ONEプログラム)の栄養介入について詳細を示し,その忍容性を評価することである.【方法】初回化学療法を開始する70歳以上の進行非小細胞肺がんおよび膵がんを対象とし,8週間に3回の栄養介入を行った.標準的な栄養指導に加え,摂食に影響する症状,食に関する苦悩,食環境の問題への対処法を含めたカウンセリングを行い,分枝鎖アミノ酸含有の栄養補助食品を処方した.【結果】計30名の試験登録者のうち29名(96%)が予定されたすべての介入に参加し,遵守率については日記記載率90%,栄養補助食品摂取率99%であった.また治療期間中に栄養状態の悪化を認めなかった.【結論】悪液質リスクの高い高齢進行がん患者において,われわれの栄養介入プログラムは高い参加率と遵守率を有し,化学療法中の栄養状態の維持に寄与した可能性が示唆された.
著者
髙坂 康雅 柏木 舞
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
no.10, pp.113-121, 2017-03

現在の日本では、離婚件数が高い水準で推移しており、親の離婚を経験する子どもの数も多くなっている。本研究の目的は、親の離婚を経験した子どもが、親の離婚経験から立ち直るまでのプロセスを明らかにすることであった。東京都内の大学生10名を対象にインタビュー調査を行い、M-GTAを援用して、親の離婚経験からの立ち直りに関するプロセスモデルを構成した。親の離婚を経験した子どもは、親が離婚したことに対する「否認」からはじまり、「悲しみ」や「怒り」を経て「抑うつ」状態に陥る。しかし、他者の存在に支えられ、離婚経験を開示することにより、「安堵」、「受容」を経て、未来に向けて「希望」を抱くことができるようになることが明らかになった。
著者
髙橋 圭子 東泉 裕子 佐藤 万里 Keiko TAKAHASHI Yuko HIGASHIIZUMI Mari SATO
出版者
国立国語研究所
雑誌
言語資源活用ワークショップ発表論文集 = Proceedings of Language Resources Workshop
巻号頁・発行日
vol.3, pp.57-67, 2018 (Released:2019-02-14)

会議名: 言語資源活用ワークショップ2018, 開催地: 国立国語研究所, 会期: 2018年9月4日-5日, 主催: 国立国語研究所 コーパス開発センター 近年,ビジネスマナーに関する書籍やウェブ上において,「了解」は上から目線の言葉で失礼なので使わないほうがよい,とする記述が少なからず見られる。本発表では,各種コーパスの用例,辞書やマナー本の記述などを調査し,(1)応答詞としての「了解」とその派生形式,(2)「了解は失礼」説,のそれぞれについて,出現と広がりのさまを探る。
著者
髙岸 輝 岡田 貴憲 ディディエ ダヴァン 海野 圭介 山下 則子 滝澤 みか 中嶋 英介 入口 敦志 恋田 知子 太田 尚宏
出版者
人間文化研究機構国文学研究資料館
雑誌
国文研ニューズ = NIJL News (ISSN:18831931)
巻号頁・発行日
no.52, pp.1-16, 2018-08-01

●メッセージ絵巻研究とデジタル画像の活用●研究ノート「硯に向かひて」考――『源氏物語』手習巻の表現探究――国際共同研究 中近世日本における知の交通の総合研究国際共同研究 UCバークレー校所蔵古典籍資料のインスタレーション・キュレーション国際共同研究 古典芸能における身体――ことばと絵画から立ち上がるもの――●書評ブックレット〈書物をひらく〉6 高津孝著『江戸の博物学 島津重豪と西南諸島の本草学』●エッセイ共同研究(若手) 「山鹿素行関連文献の基礎的研究」を終えてAAS2018 ANNUAL CONFERENCE 見聞記●トピックス特別展示「祈りと救いの中世」のご案内平成30年度国文学研究資料館「古典の日」講演会〈国文学研究資料館展示室より〉特設コーナーのご案内ホームページのリニューアルについて連続講座「多摩地域の歴史アーカイブズ(古文書)を読む」を終えて表紙裏反古ワークショップ第42回国際日本文学研究集会告知総合研究大学院大学日本文学研究専攻の近況●表紙絵資料紹介『解体新書』
著者
行平 真也 髙間 雄斗 村田 龍 米田 誠司
出版者
公益社団法人 日本航海学会
雑誌
日本航海学会論文集 (ISSN:03887405)
巻号頁・発行日
vol.137, pp.81-89, 2017 (Released:2017-12-25)
参考文献数
6

The Ehime and Oita prefectures are connected by three ferry routes: Yawatahama-Beppu, Misaki-Saganoseki, and Yawatahama-Usuki. The Shikoku and Kyushu islands are linked by these routes. Each route is important in various aspects such as freight and passenger transportation. Passengers especially use these routes to ply between the Shikoku and Kyusyu islands for tourism as well as business. This study aims to investigate the travel behavior of passengers, which promotes the use of these routes.As a result of the questionnaire survey, 1,649 effective responses were obtained including 471 from the Yawatahama-Beppu route, 610 from the Misaki-Saganoseki route, and 568 from the Yawatahama-Usuki route .The results are as follows:(1)Attributes of the passengers and the actual conditions of the use of routes were aligned with each other.(2)The passengers' purposes varied with each route; for example, the Yawatahama-Beppu route was especially used for sight-seeing.(3)Based on the place of departure and the destination of passengers, the total migration between the Ehime and Oita prefectures accounted for 32.3%.
著者
髙橋 陽子
出版者
日本幼稚園協会
雑誌
幼児の教育
巻号頁・発行日
vol.104, no.2, pp.58-63, 2005-02
著者
髙橋 三郎
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.233-238, 2021 (Released:2021-08-26)
参考文献数
30
被引用文献数
1

本研究では,なぜ吃音が母音で生じやすいと感じられるのかを明らかにするために,学齢期の吃音児の自由会話を分析し,子音と母音の違いが吃音の生起に与える影響を検討した.そのうえで,語頭モーラ頻度と吃音生起数の関係性を検討した.対象児は6歳9ヵ月から12歳1ヵ月までの吃音児20名であった.対象児と筆者との自由会話の様子を録画し,発話を分析した.二項ロジスティック回帰分析の結果,子音と母音の違いは吃音の生起に有意な影響を与えなかった.また,一部の母音(「い」「お」「あ」)は他の子音よりも語頭モーラ頻度が高く,吃音生起数も多かった.以上のことから,一部の母音で吃音が生じやすいと感じられるのは,語頭モーラ頻度の高さによって吃音生起数が多くなることが関与すると推測された.
著者
山田 来樹 髙橋 俊郎
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.127, no.9, pp.507-525, 2021-09-15 (Released:2021-12-15)
参考文献数
162
被引用文献数
3

日本海拡大時には北陸地方を含む環日本海地域で活発な火成活動が起きた.日本海拡大期に北陸地方で起きた最初の火成活動は,33 Ma頃の能登半島での安山岩質マグマの活動である.能登半島での安山岩質火成活動は,デイサイト質マグマの活動を挟んで前期中新世にも発生した.一方で後期漸新世~前期中新世には,北陸地方の広範囲で月長石を含む流紋岩質火砕流が噴出した.その後,多様な化学組成をもつ玄武岩~安山岩が前期中新世に北陸地方の全域で大量に噴出した.この火成活動に続いて前期~中期中新世には大量の流紋岩が噴出し,北陸地方は急速な沈降を開始した.この日本海拡大に関連した活発な火成活動は,西南日本弧の時計回り回転の終了にあたる16 Ma頃に急速に減退した.これら火成岩類を形成したマグマは,日本海拡大時にアセノスフェア貫入の影響を受けたマントルウェッジや沈み込むスラブ,大陸地殻が溶融することによって生成されたと考えられている.