著者
田中 美加 池内 眞弓 松木 秀明 谷口 幸一 沓澤 智子 田中 克俊 兼板 佳孝
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.386-398, 2018-08-15 (Released:2018-09-14)
参考文献数
42

目的 不眠症状を訴える高齢者は多い。高齢者の不眠症状に対しては,非薬物的アプローチが優先されることが望ましい。不眠に対する認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia: CBT-I)が不眠症患者に有効であることが多くの臨床研究で示されていが,地域高齢者の睡眠の改善にも役立つかは十分に示されていない。我々は,看護職でも実施可能な簡易型CBT-Iが地域高齢者の睡眠を改善させ,睡眠薬服用者の服薬量を減らす効果があるかを調べることを目的に無作為化比較試験を行った。方法 60歳以上の地域高齢者を対象に,看護職が,集団セッション(60分)と個人セッション(30分)からなる簡易型CBT-Iを実施した。主要アウトカムは,ピッツバーグ睡眠質問票(Pittsburgh Sleep Quality Index: PSQI)の得点と不眠重症度指数(Insomnia Severity Index: ISI)得点の介入前後の変化量,副次アウトカムは,介入前後の不眠症有所見者(ISI得点8点以上)の割合と,睡眠薬使用者における減薬の有無とした。フォローアップ期間は3か月間とした。結果 介入3か月後のPSQI得点は,対照群(38人)に較べ介入群(41人)で有意に改善し,介入の効果量(Cohen's d)は,0.56(95% Confidence interval [CI], 0.07 to 1.05)であった。ISI得点も,介入群で有意に改善し,介入の効果量は,0.77(95%CI, 0.27 to 1.26)であった。サブグループ解析において,不眠改善に対するNumber Needed to Treat(NNT)は2.8(95%CI, 1.5 to 17.2),睡眠薬の減薬に対するNNTは2.8(95%CI, 1.5 to 45.1)であった。結論 簡易型CBT-Iは,地域高齢者の主観的睡眠の質を改善させ,不眠症状を軽減させることが示唆された。また,簡易型CBT-Iは睡眠薬の減薬に対しても効果的な介入であることが示唆された。睡眠の問題を抱える地域高齢者は多いことから,地域保健活動における簡易型CBT-Iの方法や効果についてさらなる検討が必要と考える。
著者
森 久栄 黒田 研二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.138-150, 2019-03-15 (Released:2019-03-26)
参考文献数
21

目的 これまで報告されていない乳児院・児童養護施設での食物アレルギー児の在籍状況および食物アレルギーの給食対応の実態を明らかにし,ガイドライン・マニュアル等の有無別に比較する。方法 全国の乳児院・児童養護施設に自記式アンケート調査を郵送した。回収数は394(乳児院107,児童養護施設287)施設,回収率は53.6%であった。有病率等の実態把握には,人数記載のある392施設を集計対象とした。ガイドライン・マニュアル等の有無との関連の検討には,食物アレルギー児がいる230施設を解析対象とした。ガイドライン・マニュアルの有無を目的変数に,アナフィラキシーショックなどのアレルギーに関連する事象の有無ならびに給食対応との関連をフィッシャーの正確確率検定および多変量ロジスティック回帰分析で検討した。結果 392施設の食物アレルギーの有病率3.31%であった。「医師の診断書等がない児童」,「アレルギー情報が未確認のまま入所した児童」,「入所時情報と事実に相違のあった児童」は,アレルギー児童の約20%~50%と高率で在籍し,入所時点での情報が把握しにくい現状がうかがわれた。 230施設のうち何らかのガイドライン等を用いている施設は25.0%,明文化された申し合わせ事項を含めても32.1%しかなかった。「施設種別」を調整変数とし,ガイドライン等による取り組みを行っている施設のオッズ比をみると,医師の診断書がない児童がいる(0.35),情報収集のための統一書式がある(5.04),定期的な更新をしている(2.85),ヒヤリハット・誤食時の報告を課している(2.49)の項目で有意であった。また,過去にアナフィラキシーショックを起こした児童がいる(9.72),アレルギー情報が未確認のまま入所した児童がいる(3.12)についても関連が強かった。結論 給食対応についてガイドライン等を用いていた施設では,情報収集書式の整備や情報の更新,ヒヤリハット・誤食の報告などでルール化された取り組みを行っていた。ガイドライン等のある方がアナフィラキシーショックを起こした児童や入所時に情報未確認の児童がいる施設が多かったが,調査時では医師の診断書を得ているなど,入所後に適切な対応がなされているものとうかがわれた。
著者
中島 正夫
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.515-525, 2011 (Released:2014-06-06)
参考文献数
20
被引用文献数
2

目的 既存の資料に記載されている乳幼児体力手帳制度,妊産婦手帳制度,母子手帳制度,母子健康手帳制度の政策意図などを整理し,各手帳制度の公衆衛生行政上の意義について考察することである。方法 厚生省関係通知,関連書籍,および妊産婦手帳制度等の企画立案に従事された瀬木三雄氏の著作物等により,各手帳制度の政策意図などを整理,検討する。結果 (1)乳幼児体力手帳制度:根拠は国民体力法(1942年改正)。1945年度まで実施。乳幼児体力検査受診者に手帳を交付。保健医療従事者が記載した記録を当事者が携帯,その後の保健指導等に役立てた。(2)妊産婦手帳制度:根拠は妊産婦手帳規程(1942年)。妊娠した者が医師または助産婦の証明書を付して地方長官に届出(義務)をすることにより手帳を交付。保健医療従事者が記載した健診等の記録を当事者が携帯,その後の保健指導等に役立てた。一定の妊産保健情報を提供。妊産育児に必要な物資の配給手帳としても利用。(3)母子手帳制度:根拠は児童福祉法(1948年)。(2)を拡充し乳幼児まで対象。手帳交付手続き等は基本的に(2)と同様。乳幼児を対象とした一定の保健情報も追加。配給手帳としての運用は1953年 3 月まで。(4)母子健康手帳制度:根拠は母子保健法(1966年)。妊娠の届出は勧奨(医師等の証明書は不要)とされた。当事者による記録の記載が明確化,また様々な母子保健情報が追加された。結論 各手帳制度の公衆衛生行政上の意義について次のとおり考える。(1)母子保健対象者の把握:乳幼児体力手帳制度以外すべて,(2)妊産婦を早期に義務として医療に結びつけること:妊産婦手帳制度,母子手帳制度,(3)保健医療従事者および当事者が記載した各種記録を当事者が携帯し,その後の的確な支援等に結びつけること:基本的にすべての手帳制度(当事者による記録の記載は母子健康手帳制度で明確化),(4)当事者•家族による妊産婦•乳幼児の健康管理を促すこと:①保健医療従事者が記載した各種記録を当事者が保持;すべての手帳制度,②母子保健情報の提供;乳幼児体力手帳制度以外すべて,③当事者による記録の記載;母子健康手帳制度で明確化,(5)配給手帳として母子栄養を維持すること:妊産婦手帳制度,母子手帳制度。  以上のことから,わが国の手帳制度は,戦時下において主に父権的制度として制定され,その後の社会情勢の変化や保健医療体制の整備などに伴い,当事者の自発的な健康管理を期待する制度へと成熟していったと考えられる。
著者
河田 志帆 畑下 博世 金城 八津子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.186-196, 2014 (Released:2014-05-29)
参考文献数
33
被引用文献数
1

目的 ヘルスリテラシーの概念分析の結果を基に独自の尺度を作成し,性成熟期女性のヘルスリテラシー尺度の開発を試みた。20~39歳の女性労働者を対象に項目の選定,信頼性と妥当性を検討した。方法 先行研究の概念分析より抽出された要素を基に,内容妥当性および表面妥当性の検討を経て30項目の尺度を作成した。近畿圏および東海圏在住の20~30歳代の女性労働者を対象に,本調査として1,030人,追加調査として424人に自記式質問紙調査を行った。なお,追加調査で実施した再テストは,同意書に署名を得た協力者により実施した。尺度の信頼性の検討は,クロンバック α 係数,再テストにおける相関係数の有意性の検定により行った。一方,妥当性の検討は日本語版健康増進ライフスタイルプロフィール(JLV–HPLPII),成人用ソーシャルスキル評定尺度の下位尺度との相関,子宮頸がん検診受診行動別の尺度得点の比較により行った。結果 本調査の対象者は1,030人で,回収数632人(回収率61.4%),有効回答数622人(有効回答率98.4%)であった。追加調査の対象者は424人で,回収数は86人(回収率20.3%)で,有効回答数86人(有効回答数100%)であった。項目分析および主因子法プロマックス回転による因子分析を行った結果,4 因子,21項目が抽出され,累積寄与率は53.7%であった。4 因子は【女性の健康情報の選択と実践】,【月経セルフケア】,【女性の体に関する知識】,【パートナーとの性相談】と命名した。各因子におけるクロンバック α 係数は α=0.72~0.83,全体は α=0.88であり,再テストでの相関係数は尺度全体で r=0.85(P<0.01)であった。また,開発した尺度と JLV–HPLPII,成人用ソーシャルスキル評定尺度は,有意な正の相関(P<0.01)を示し,子宮頸がん検診受診行動別の尺度得点の比較では,子宮頸がん検診受診群の得点が有意に高かった(P<0.001)。結論 今回開発したヘルスリテラシー尺度の信頼性および妥当性は概ね確保されていた。子宮頸がん検診受診行動と尺度得点との間に有意な関連がみられたことから,女性特有の疾患の予防および早期発見・治療に向けたヘルスリテラシー教育への実用可能性が示唆された。
著者
馬場 千恵 村山 洋史 田口 敦子 村嶋 幸代
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.727-737, 2013 (Released:2014-01-15)
参考文献数
33

目的 社会とのつながりの欠如から孤独感を持ちやすい状況にある育児中の母親へ効果的な支援を行うため,ソーシャルネットワーク(接触頻度)とソーシャルサポートの状況を把握し,それらと孤独感との関連を明らかにする。方法 2008年 8~11月に,東京都 A 区の 4 つの保健センターで行われた 3~4 か月児健康診査に来所した母親978人を対象に,無記名自記式質問紙を配布した。調査項目は,改訂版 UCLA 孤独感尺度,母親と子どもの基本属性,育児環境,夫(パートナー)•実父母•ママ友達•友人の有無,およびそれらとのソーシャルネットワーク(接触頻度)とソーシャルサポートであった。接触頻度は,直接会うこととそれ以外に分けて測定した。分析は,まず,孤独感尺度を従属変数とし,夫(パートナー)•実父母•ママ友達•友人の有無を独立変数とした重回帰分析を行った。次に,孤独感と夫(パートナー)•実父母•ママ友達•友人との接触頻度とソーシャルサポートとの関連を検討するため,孤独感得点を従属変数とした重回帰分析を行った。接触相手やサポート提供者等がなく欠損値があった者は分析から除外されたが,ママ友達がいない者の分析は追加し,副解析として重回帰分析を行った。結果 配布した963票のうち432票を回収し,417票を有効回答とした(有効回答率43.3%)。母親の孤独感の平均得点は34.4±9.0点であった。重回帰分析の結果,ママ友達および友人がいない者ほど,孤独感得点が高かった。すべての接触相手•サポート提供者がいる者(ママ友達もいる者)は,夫(パートナー)との会話時間が長いほど,ママ友達,友人との会う頻度が少ないほど,また,実父母やママ友達,友人からのソーシャルサポートが低いほど,孤独感得点が高かった。一方,ママ友達以外の接触相手•サポート提供者がいる者(ママ友達がいない者)では,孤独感得点と接触頻度,ソーシャルサポートとの関連はなく,対人態度や母親意識が関連していた。結論 母親の孤独感の予防•軽減には,ママ友達や友人の有無,実父母•ママ友達•友人との関係,対人態度,母親意識等をアセスメントし,その上で,母親役割の肯定感を高められるような介入や,ママ友達•友人と直接会う機会および実父母•ママ友達•友人からソーシャルサポートを得られるような働きかけを行うことが重要であると考えられた。
著者
金山 敦宏 加來 浩器
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.697-704, 2013 (Released:2014-01-10)
参考文献数
16

目的 近年,国民の食生活の多様化に伴い,海外からの輸入食品を喫食する機会が増えている。海外における主な食中毒事例の原因食品は,国内発生事例の原因食品と必ずしも一致するとは限らず,潜在的に輸入食品が国内で食中毒を発生させる原因となりうる。本研究では,2011–2012年の 2 年間に海外で発生し公表•報道された食中毒のうち,原因食品の特定された主な事例を分析し,輸入食品のリスクを調査した。方法 本研究において「食中毒事例」は,食品衛生法第58条に従って,「食品,添加物,器具若しくは容器包装に起因した中毒事例(疑い例を含む)」と定義した。海外の食中毒事例に関する情報は,国際感染症学会の公式プログラムである ProMED-mail(the Program for Monitoring Emerging Diseases; http://www.promedmail.org,以下 ProMED)に2011–2012年の 2 年間に掲載されたものを使用した。国内の食中毒事例との比較には,食品安全委員会の公表している統計や国立感染症研究所の病原微生物検出情報の資料などを参照した。結果 2011–2012年に ProMED に掲載された感染症関連事例のうち,続報などを除いた主な海外の食中毒事例は113件で,原因病原体として細菌が98件(86.7%)と大多数を占めた(表 1)。このうちサルモネラ属菌が39件(39.8%)と最も多く,ボツリヌス菌20件(20.4%)と合わせると約 6 割を占めた。サルモネラ食中毒事例の特徴は,原因食品として国内では想定しにくい果実類(6 件)や豆類•種実類(3 件)があること,野菜類や魚介類の割合が多いことであった。また,野菜等の缶詰等がボツリヌス中毒の原因としてリスクの高いことが分かった。さらに,メロンの喫食からリステリア症を発症した事例や,イチゴからノロウイルスのアウトブレイクが発生するなど国内では稀な事例が存在した。結論 海外における食中毒事例では,国内の常識が当てはまらない事例が数多く報告されていることが明らかとなった。これらの食品が輸入され国内流通した場合には食中毒発生リスクのあることが示された。
著者
江尻 愛美 河合 恒 藤原 佳典 井原 一成 平野 浩彦 小島 基永 大渕 修一
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.125-133, 2018 (Released:2018-04-03)
参考文献数
25

目的 本研究は,都市部の地域在住高齢者における社会的孤立の予測要因を縦断的に明らかにし,その予防策を検討することを目的とした。方法 2012年10月1日時点で東京都板橋区の9町丁目に在住する65歳から85歳の高齢者7,015人を対象として,郵送法による質問紙調査を行った。回答が得られた3,696人に対し,2014年に再度質問紙を送付し,2,375人から回答を得た。孤立は,「別居家族や友人等との対面・非対面接触頻度が合計で月2,3回以下」と定義した。その他の調査項目は,2012年の性,年齢,健康度自己評価,現病歴,手段的日常生活動作(IADL),外出頻度,団体参加頻度,家族構成,主観的経済状況とした。孤立の予測要因を検討するため,上記の調査項目と,2014年の孤立の有無との関連を,t検定,カイ二乗検定およびロジスティック回帰分析で検討した。結果 孤立に関してデータが完備した1,791人中,2014年の孤立者は348人(19.4%),非孤立者は1,443人(80.6%)だった。多変量のロジスティック回帰分析の結果,男性(調整オッズ比,95%信頼区間:1.88,1.41-2.50),加齢(1歳増加)(1.03,1.01-1.06),団体参加頻度が週1回以上の者と比較して,月1~3回の者(1.62,1.04-2.53),主観的な経済状況が苦労していない者と比較して,苦労している者(1.67,1.20-2.32),2012年の非孤立者と比較して,孤立者(10.24,7.60-13.81)と,孤立状態不明者(8.15,3.76-17.67)は,孤立の発現率の高まりと有意に関連していた。また,ベースライン時に孤立していなかった者において,男性(2.39,1.57-3.64),健康度自己評価が非常に健康である者と比較して,健康でない者(3.99,1.33-11.94)は,2年後に新たに孤立する可能性が有意に高かった。結論 都市高齢者の孤立を予防するためには,社会活動への定期的な参加が有効である可能性があり,孤立の危険性の高い高齢男性に対して活動への参加促進を図っていくことが効果的であると考えられた。
著者
八巻 知香子 高山 智子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.270-279, 2017 (Released:2017-06-14)
参考文献数
44

目的 欧米諸国においては,障害のある人の健康状態が悪いこと,健康サービスの利用が阻害されていることを施策上の課題と捉え,実態の把握と改善に向けた検討が行われているが,日本においては実態すら把握されていない。本研究では,視覚障害者における健康診断・人間ドック(以下,健診と記載)・がん検診受診と健康医療情報の入手の実態を探索的に明らかにすることを目的とする。方法 大阪府堺市在住の視覚障害者のうち,市内の点字図書館に利用登録をしている人および同市の視覚障害者団体の会員計311人を対象として質問紙調査を行い,回答された150件(回収率48.2%)を対象とした。結果 対象者の健診の受診率は男性70.3%,女性62.2%,対策型がん検診の対象年齢における受診率は男性で34.5%~44.8%,女性では30.8%~40.0%であった。健診やがん検診の未受診の理由は,「心配なときはいつでも医療機関を受診できるから」,「毎年受ける必要がないから」など一般住民と同様の回答が多かったが,付き添い者の確保が困難であることや医療機関の対応への不安など,障害による困難や不安もあげられた。健康医療情報の入手にあたっては,「一般的な健康情報の入手経路」において一般マスメディアからの情報入手が多く,「自分や身近な人ががんと診断されたときの情報の入手(以下,がん情報の入手)経路」では,「専門家からの指導」に次いで,一般マスメディアや身近な人を介した情報入手経路をとる人が多かった。考察 本研究の対象者は,相対的にサービス利用や日常生活スキルが確保できている人たちであると考えられ,健診・がん検診の受診については,調査対象地域の一般住民と大きな差は見られなかった。しかし,未受診の理由に障害による不安や困難が挙げられ,改善の必要性が示唆された。健康医療情報の入手については,一般住民ではインターネットや専門的資料の利用の割合が増える「がん情報の入手経路」においても,一般のマスメディアからの情報や人を介した情報入手経路が多数を占めることが特徴であった。医療機関に対して視覚障害のある人への適切な対処方法を周知すること,医療者が視覚障害のある人への説明しやすい環境を整備すること,視覚障害者が利用しやすい健康医療サービスや情報について,視覚障害者サービス機関を通じた周知と一般向けの広い周知の双方が必要であると考えられた。
著者
増田 理恵 田高 悦子 渡部 節子 大重 賢治
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.557-565, 2012 (Released:2014-04-24)
参考文献数
23

目的 肥満は心血管系疾患等のリスク要因となるが,地域で生活する成人知的障害者には肥満が多いことが指摘されてきた。本研究の目的は,地域で生活する成人知的障害者の肥満の実態および肥満をもたらす要因を明らかにすることにより,肥満予防に向けた実践への示唆を得ることである。方法 A 市における 5 つの通所施設•相談施設に通う男女39人を対象に,BMI,食事,活動についての面接調査を行った。対象者の基本属性について,項目別の単純集計を行った。BMI については平成19年版「国民健康•栄養調査」における20~59歳の一般成人の平均値と t 検定を用いて比較した。エネルギー摂取については,対象者の摂取エネルギー,摂取エネルギーと推定必要エネルギーの差,および食品群別摂取量を算出した。またエネルギー消費については,消費エネルギー,身体活動レベル,エクササイズ量を算出し,身体活動レベルについてはカイ 2 乗検定により一般成人と比較した。食習慣については 7 つの質問項目の和(食習慣得点)を算出した。さらに対象者の BMI について,対象者の属性,エネルギー摂取に関連する項目,エネルギー消費に関連する項目,食習慣得点,および食品群別摂取量との相関分析を行った。結果 対象者の BMI の平均値は一般成人と比較すると男女とも有意に高かった(P<0.001)。摂取エネルギーと推定必要エネルギーの差の平均値は男性で396±503 kcal,女性は569±560 kcal であった。BMI との有意な相関(P<0.05)がみられたのは摂取エネルギー,摂取エネルギーと推定必要エネルギーの差,消費エネルギー,穀類摂取量,菓子類摂取量,食事制限の有無であった。対象者の身体活動レベルは,一般成人に比べて低い者の割合が有意に高かった(P<0.001)。結論 対象者の BMI の増大をもたらしている要因は,主には過剰なエネルギー摂取であり,その背景には間食で菓子類を多く摂取するなど不適切な食習慣がある。また,一般成人に比して著しく低い身体活動レベルが対象者の生活上の特徴であることが明らかとなった。成人知的障害者の肥満対策として,過剰なエネルギー摂取,不適切な食習慣,低い身体活動レベルのすべてに対し,包括的に介入する必要がある。
著者
土井 由利子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.599-605, 2016 (Released:2016-10-23)
参考文献数
17

医療の質を担保するためには,エビデンスに基づく医療 Evidence-based Medicine (EBM)が基本となる。そして,EBM での推奨グレードを満たすためには,システマティックレビューにより収集・選択された複数の個別研究の集積と,メタアナリシスによる分析・評価が必須とされる。一方,システマティックレビューに基づくこの方法では,未公表・未報告の研究が含まれず,メタアナリシスへの公表・報告バイアスの影響が懸念される。このバイアスを軽減するため,すべての臨床試験が事前登録されることとなり,世界保健機関 World Health Organization (WHO)は臨床試験検索エンジンポータルサイト International Clinical Trials Registry Platform (ICTRP)を2007年に開設し,WHO の基準を満たした,日本(Japan Primary Registries Network (JPRN))を含む国・地域から登録データの提供を受け,公開している。米国のClinicalTrials.govでは,事前登録と併せ,Food and Drug Administration Amendments Act Section 801 の対象となる臨床試験の結果についても,標準化されたデータとして公表している。しかし,日本を含め世界の現状をみると,結果の公表が進んでいるとは言い難い。2015年 4 月14日,WHO は新たな声明(WHO Statement on Public Disclosure of Clinical Trial Results)を発表し,現行および過去の臨床試験に対し,公表の方法・期限などより具体的な勧告を行った。今後,WHO の主導の下,臨床試験の事前登録・結果公表がさらに進み,公表・報告バイアスが軽減されるものと期待される。日本においても,この新たな国際標準に準拠した,結果公表を含む,臨床試験登録データベースの整備について,早急に対応を検討する必要があると思われる。
著者
橋本 修二 川戸 美由紀 山田 宏哉 鈴木 茂孝 三重野 牧子 遠又 靖丈 村上 義孝
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.617-623, 2015 (Released:2015-11-25)
参考文献数
11

目的 国民生活基礎調査の世帯数と患者調査の推計患者数について,東日本大震災によって調査対象から除外された地域の補完を行った。方法 国民生活基礎調査において,東日本大震災によって調査対象から除外された2011年の岩手県・宮城県・福島県と2012年の福島県の世帯数について,前後の大規模調査年の情報を用いて線型内挿法で補完した。2011年における宮城県と福島県の推計患者数について,同年の患者調査(宮城県の石巻・気仙沼医療圏と福島県が調査対象から除外)と2012年の福島県患者調査,2011年と2012年の医療施設調査と病院報告を用いて補完した。結果 全国の世帯数(各年 6 月時点)における補完値は2011年で48,732千世帯,2012年で48,874千世帯であった。世帯構造別の世帯数において,2011年と2012年の調査値が前後の年次よりも大きく落ち込んでいたのに対して,両年の補完値には落ち込みがなかった。2011年10月の推計患者数の補完値は,全国で入院1,365.4千人と外来7,383.9千人,施設所在地が宮城県で入院21.2千人と外来130.0千人,施設所在地が福島県で入院22.0千人と外来108.8千人であった。調査値に対する補完値の比を性・年齢階級と傷病分類ごとにみると,全国の推計患者数ではほぼ1.02倍であったが,患者住所地が宮城県と福島県の推計患者数ではきわめて大きかった。結論 国民生活基礎調査の世帯数と患者調査の推計患者数の補完値を示した。年次推移の観察にあたって,補完の仮定を十分に考慮することが重要であろう。
著者
堀越 直子 大平 哲也 安村 誠司 矢部 博興 前田 正治 福島県県民健康調査「こころの健康度・生活習慣に関する調査」グループ
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.70-77, 2017 (Released:2017-03-16)
参考文献数
21

目的 福島県立医科大学では,福島県からの委託を受け,東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う放射線の健康影響を踏まえ,将来にわたる県民の健康管理を目的とした「県民健康調査」を毎年実施している。そのうち,平成23年度「こころの健康度・生活習慣に関する調査」の生活習慣支援対象者(高血圧・糖尿病)に対し,看護師・保健師等が実施した電話支援の効果,特に次年度の調査票への回答および医療機関受診の勧奨効果を明らかにすることを目的とした。方法 平成23年度「こころの健康度・生活習慣に関する調査」の生活習慣支援対象者(高血圧・糖尿病)1,620人をベースラインデータとし,平成24年度「こころの健康度・生活習慣に関する調査」の結果との関連を縦断的に検討した。結果 平成23年度の生活習慣支援対象者で,電話支援を実施した者(以下,電話支援者)は1,078人,電話番号の未記載や留守等で電話支援を実施しなかった者(以下,電話未支援者)は542人であった。単変量解析の結果,電話支援実施の有無で,居住場所(P=0.001),教育歴(P<0.001),就業状況(P<0.001)に違いがみられた。 平成24年度調査票への回答者数は,電話支援者が616人(57.1%),電話未支援者が248人(45.8%)であり,電話未支援者に比べ電話支援者の平成24年度調査票回答率は高く,統計的に有意であった(P<0.001)。また,平成24年度調査票への回答の中で,医療機関に受診したと記載のあった者は,電話支援者が184人(29.9%),電話未支援者が68人(27.4%)であり,電話未支援者に比べ電話支援者の受診者の割合は高かったが,統計的に有意差はなかった。 多変量解析の結果,平成24年度調査票への回答には,電話支援を受けた者であることが有意に関連した(P=0.016)。結論 電話支援者は電話未支援者に比べ,次年度の調査票回答率が有意に高く,電話支援の取り組みは,調査票回答率の向上に有効であると考えられる。
著者
永井 雅人 大平 哲也 安村 誠司 高橋 秀人 結城 美智子 中野 裕紀 章 文 矢部 博興 大津留 前田 正治 高瀬 佳苗 福島県「県民健康調査」グループ
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.3-10, 2016 (Released:2016-01-29)
参考文献数
24
被引用文献数
2

目的 東日本大震災による避難者において,生活習慣病が増加していることが報告されている。避難による生活環境の変化に伴い,身体活動量が減少したことが原因の一つとして考えられる。しかしながら,これまで避難状況と運動習慣との関連は検討されていない。そこで,福島県民を対象とした福島県「県民健康調査」より,避難状況と運動習慣の関連を検討した。方法 震災時に原発事故によって避難区域に指定された13市町村に居住していた,平成 7 年 4 月 1 日以前生まれの37,843人を解析対象者とした。避難状況は震災時の居住地(13市町村),避難先(県内避難・県外避難),現在の住居形態(避難所または仮設住宅,借家アパート,親戚宅または持ち家)とした。また,本研究では自記式質問票にて運動を「ほとんど毎日している」または「週に 2~4 回している」と回答した者を「運動習慣あり」と定義した。統計解析は,運動習慣がある者の割合を性・要因別(震災時の居住地,避難先,住居形態)に集計した。また,standard analysis of covariance methods を用いて,年齢,および震災時の居住地,避難先,住居形態を調整した割合も算出した。結果 運動習慣がある者の調整割合は,震災時の居住地別に男性:27.9~46.5%,女性:27.0~43.7%,と男女それぞれ18.6%ポイント,16.7%ポイントの差が観察された。避難先別では,男性で県外(37.7%),女性で県内(32.1%)においてより高かったが,その差は小さく男性:2.2%ポイント,女性:1.8%ポイントであった。住居形態別では,男女ともに借家アパート居住者が最も低く,避難所または仮設住宅居住者が最も高かった(男性:38.9%,女性:36.7%)。避難所または仮設住宅居住者に比し,借家アパート居住者で男性:5.4%ポイント,女性:7.1%ポイント,親戚宅または持ち家居住者で男性:2.0%ポイント,女性:4.2%ポイント,それぞれ低かった。結論 避難区域に指定された13市町村に居住していた者の運動習慣がある者の割合は,震災時の居住地および住居形態によって異なっていた一方,県内避難者と県外避難者との間では同程度であった。とくに借家アパートに居住している者における割合が低く,孤立した人々を対象とした新たな生活習慣病予防対策を立案・実行することが必要である。
著者
岸田 研作 谷垣 靜子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.703-714, 2005 (Released:2014-08-06)
参考文献数
23

目的 特別養護老人ホーム(以下,特養)における身体拘束を受ける入居者の数と施設の特性との関連を明らかにすること。方法 対象は,2002年度に岡山県下で運営していたすべての特養,103施設,入居者総数6,829人である。データは,2002年10月に福祉オンブズおかやまが県下の特養に対して行ったアンケート調査(郵送自記式)と同年度の行政監査資料を併せたもので,施設単位の集団データである。調査では身体拘束の定義は示されておらず,拘束の有無は個々の施設が判断している。解析は,重回帰分析を行った。被説明事象は,身体拘束を受ける者が身体拘束を受ける可能性のある者に占める割合 (以下,身体拘束者数の割合),独立変数は施設の特性である。推定の精度をあげるためには,各施設の入居者から拘束対象となりうる母集団を出来る限り正確に絞り込む必要がある。そこで,身体拘束を受ける可能性がある者は重度痴呆老人(痴呆老人の日常生活自立度でIV以上と定義)であると仮定した。重度痴呆老人をIII以上とした場合についても解析を行った。成績 必要な変数に欠損値がなく解析の対象となったのは,72施設,1,700人の重度痴呆老人であった。74%の施設で少なくとも 1 人の入居者が身体拘束を受けていた。身体拘束者数の割合の平均は24.2%であった。身体拘束者数の割合が低いことと,手厚い人員配置,定期的なケアカンファレンス,ユニットケアの実施が,有意に関連していた。重度痴呆老人の定義をIII以上としても重回帰分析の結果はほとんど変わらなかった。結論 身体拘束者数の割合が低いことと,手厚い人員配置,定期的なケアカンファレンス,ユニットケアの実施が,有意に関連していた。
著者
蔭山 正子 横山 恵子 中村 由嘉子 小林 清香 仁科 雄介 大島 巌
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.625-636, 2014 (Released:2014-11-27)
参考文献数
19

目的 精神障がい者の家族を対象とした家族ピア教育プログラム「家族による家族学習会」の効果的な普及戦略を検討するために,プログラムを実施していない家族会を対象として,家族学習会の採用に関連する要因を明らかにすることを目的とした。方法 精神障がい者家族会連合会12か所と加盟する単位家族会を対象に,2013年 6~9 月に郵送で質問紙調査を実施した。分析枠組みは,ヘルスケア組織におけるプログラム普及の理論枠組みを適用し,プログラムの採用プロセスを 2 段階に分けた。第一段階のプログラムを把握する段階では,把握レベル(家族会で把握あり/家族会で把握なし)の 2 群,第二段階のプログラムの採用意思を決める段階では,実施予定(実施予定あり・検討/実施予定なし)の 2 群をそれぞれ従属変数とし,2 群間で比較した。プログラムを把握した段階については,多重ロジスティック回帰分析を行い,検討した。結果 10の精神障がい者家族会連合会から協力が得られた。加盟家族会のうち,家族学習会を実施したことのない177か所の家族会に調査票を送付し,110か所から回答を得た(回収率62.1%)。プログラムを把握する段階では,家族会所在市町村の人口が10万人以上であり(OR=5.53, 95%CI; 1.93–15.89),周囲にプログラムを積極的に勧める人がいて(OR=5.22, 95%CI; 1.46–18.69),連合会からプログラムのことを知った(OR=3.41, 95%CI; 1.27–9.17)家族会ほど,プログラムを家族会で把握していた。プログラムの採用意思を決める段階では,プログラムを家族会で把握していた39か所を分析した。プログラムを実施予定・検討中の家族会は,実施予定なしの家族会と比較して,役員数が多く,プログラム実施に必要なマンパワーがあり,意欲的な会員がいると思っている家族会が有意に多かった。また,実施予定・検討中の家族会は,プログラムの難しさ・リスク・労力といったプログラムの実施負担が少ないと思っており,プログラムを実施することで会員増や相互支援が進むことにつながると思っている家族会が有意に多く,プログラムが家族会や会員の関心と合致しており,周囲にプログラム実施に反対する人がいないと思っている家族会が有意に多かった。結論 本プログラムを知ってもらうためには,影響力の大きい人との協力と連合会を通した情報発信が有効であり,プログラムを採用してもらうためには,複数の家族会での合同実施,および,家族会に未入会の家族を対象に実施する方法が有効である。
著者
石川 孝子 福井 小紀子 澤井 美奈子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.545-555, 2014 (Released:2014-10-08)
参考文献数
33
被引用文献数
1

目的 今後都市部における高齢化が著しく進むことから都市部の地域終末期ケア体制の推進が重要となる。終末期療養や看取りに対する認識は,年代によって大きく異なることが指摘されている。そこで,65歳以上と40–64歳の年代別に,都市部在住市民の終末期の希望療養場所と,医療福祉資源などの知識,経験,認識との関連を検討する。方法 東京都武蔵野市民のうち層化無作為抽出した40歳以上の1,500人を対象に,無記名自記式質問紙調査を実施した。調査項目は,終末期の希望療養場所,属性,医療・介護の経験・知識・認識とし,終末期の希望療養場所との関連を年代別にロジスティック回帰分析で検討した。結果 769人(回収率51.6%)から回答が得られた。終末期の希望療養場所は,65歳以上では自宅40.9%,自宅以外59.1%,40–64歳では自宅54.1%,自宅以外45.9%であった(P<0.001)。自宅療養選択に関連する要因は,65歳以上の群では,緩和ケアにおける薬物による疼痛管理の知識:「麻薬は中毒になるのではないかと心配」と認識していない(オッズ比:95%信頼区間1.90:1.17–3.08),セルフケア:「服薬行動(風邪をひいたときにすぐに薬を飲まずに予防行動)」をしている(1.97:1.21–3.22),社会的役割:「ボランティア」をしている(2.38:1.34–4.21),在宅療養の認識:「在宅療養費用を入院費の8割以内が妥当」と認識している,「相談できる医療関係者が居る」と認識している(1.82:1.10–3.03,1.90:1.06–3.41),在宅医療の認識:「自宅での看取りでも医療を十分に受けている」と認識している(2.30:1.37–3.87)ことが挙げられた。40–64歳の群では,介護希望者:「介護士」を希望しない(2.80:1.62–4.83),在宅医療の認識:「自宅でも急変時対応ができる」と認識している(2.97:1.15–7.66),終末期の認識:「最期は自由な環境がいい」と認識している(4.57:2.43–8.59)ことが挙げられた。結論 本研究の結果,終末期療養場所の希望と実際の隔たりを少なくするために,65歳以上では介護の社会化への意識変革,40–64歳では死生観の醸成をする機会を持つ,両年代共通として正しい知識の普及啓発の必要性が示唆された。
著者
片岡 千恵 野津 有司 工藤 晶子 佐藤 幸 久保 元芳 中山 直子 岩田 英樹 渡部 基
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.535-544, 2014 (Released:2014-10-08)
参考文献数
29

目的 我が国の高校生における危険行動と睡眠時間との関連を明らかにする。方法 分析には,Japan Youth Risk Behavior Survey 2011のデータ(全国の高校から無作為に抽出された102校の 1~3 年生,男子5,027人,女子4,751人,計9,778人)を用いた。危険行動に関しては,「有酸素運動不足」,「朝食欠食」,「月喫煙」,「月飲酒」,「シンナー乱用経験」,「性交経験」,「シートベルト非着用」,「暴力行為」,「自殺願望」の 9 項目を取り上げた。結果 睡眠時間の実態は,6 時間未満の者が男女ともに40%前後を占める等,憂慮される状況であった。危険行動が最も低率であった,睡眠時間が「6 時間以上 8 時間未満」の群を基準として,他の群における危険行動のオッズ比を算出した結果,「4 時間以上 6 時間未満」の群では,男女ともの「有酸素運動不足」および「朝食欠食」等のオッズ比が有意に高値であった。さらに睡眠時間が短い「4 時間未満」の群では,男子では全 9 項目(オッズ比1.47~3.28),女子では「シートベルト非着用」を除く 8 項目(1.54~4.68)について,オッズ比が有意に高値であった。他方で,睡眠時間が長過ぎる「10時間以上」の群でも,男女ともの「月喫煙」および「シンナー乱用経験」等について,オッズ比が有意に高値であった。結論 我が国の高校生において,6 時間未満の短い睡眠時間および10時間以上の長過ぎる睡眠時間は危険行動に関連していることが示され,睡眠時間も危険行動の一つとして注目していくことの必要性が示唆された。
著者
青山 友子 苑 暁藝 松本 麻衣 岡田 恵美子 岡田 知佳 瀧本 秀美
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.23-020, (Released:2023-09-05)
参考文献数
31

目的 集団における肥満ややせをモニタリングするために,疫学調査ではしばしば自己申告による身体計測値が用いられる。自己申告された身長と体重からBMI (body mass index)を求めると,集団における肥満(BMI≧25 kg/m2)の割合を過小評価することが知られている一方,やせ(BMI<18.5 kg/m2)の割合がどのように評価されるのかはよく理解されていない。そこで本研究では,肥満とやせの問題が共存する日本人において,自己申告による身体計測値の正確さに関するスコーピングレビューを行うことを目的とした。方法 PubMedとCiNii Researchを用いて,2022年までに英語または日本語で出版された文献を検索し,日本国内で行われた身長・体重・BMIの自己申告値と実測値を比較した研究を採用した。各研究より,研究デザインおよびmean reported errors(平均申告誤差=申告値の平均-実測値の平均)を抽出して表に整理した。また,BMIカテゴリによる違いも考慮した。結果 全国的なコホート研究(n=4),地域住民(n=4),職場(n=3),教育機関(n=6)において実施された計17編の文献(英語11編)が本レビューに含まれた。対象者の年齢(10~91歳)およびサンプルサイズ(100人未満~3万人以上)には多様性がみられた。観測された平均申告誤差の程度は研究によって異なったものの,大半の研究で身長は過大申告,体重は過小申告,BMIは過小評価された。BMIカテゴリ別の平均申告誤差を報告した3つの研究では,身長の申告誤差の方向性はすべての体格区分で変わらないものの,体重およびBMIはやせの区分のみで過大申告(評価)された。成人を対象とした4つの研究は,自己申告身長・体重に基づいたBMIを用いると,肥満の14.2~37.6%,やせの11.1~32.3%が普通体重(18.5≦BMI<25 kg/m2)に誤分類され,普通体重の0.8~5.4%および1.2~4.1%が,それぞれやせおよび肥満に誤分類されることを示した。結論 自己申告による身長と体重に基づくBMIを用いると,日本人では集団における肥満とやせ両方の有病率を過小評価する可能性がある。自己申告による身体計測値を疫学調査に用いる際は,こうしたバイアスの存在を考慮する必要がある。