著者
趙 棟梁 鳥羽 良明
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, 2002-03-05

Phillipsの風波の平衡領域の概念と観測データを用いて,HasselmannのモデルとPhillipsのモデルからエネルギー散逸率を計算すると,二つのモデルの形は異なるにもかかわらず実質上一致することが分かった。どちらも空気の摩擦速度u_*の3乗に比例し,波齢に弱く依存することが分かる。白波面積率Wも砕波過程を表すので,エネルギー散逸率と同様と考えられ,従来のWの経験公式の多くはu_*^3に比例する形をとっている。今回,風波の情報を含む過去の種々の観測データを最小二乗法を用いて再検討した。Wは,波齢や波周期より,風速や風の摩擦速度との相関が高い。さらに,u_*^2と風波のピーク角周波数を含む無次元の「砕波パラメータ」R_Bを導入すると,データのばらつきが著しく下がることが分かった。ちなみにR_Bは,u_*^3と波齢の積で表される。現在のエネルギー散逸モデルは,上記の砕波の特性を表現すべく修正される必要がある。
著者
西岡 純
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.19-36, 2006-01-05

サイズ分画測定法を用いて外洋海域における鉄の存在状態を研究した。その結果, 従来"溶存態"と定義されてきた画分中にはコロイド状鉄が含まれており, 海水中の植物プランクトンによる鉄の利用過程や地球化学的鉄の循環を理解するために重要な画分であることを示した。また, 国際共同プロジェクトとして, 北太平洋亜寒帯域の西部および東部で現場鉄散布実験を行ない, 大気から供給される鉄が他海域より多いと考えられる西部海域においても, 鉄の不足が生物生産を制限する要因であることを明らかにした。さらに, 西部海域が鉄制限海域になるプロセスとして, 供給された鉄が, 速やかに植物プランクトンが利用しづらい形態に変化してしまうことが重要であることを示した。海洋における鉄の生物地球化学的な研究は, 自然海域における生物生産の諸過程を理解するためには欠かせない分野と成りつつある。本稿では, 著者がこれまでに展開してきた, 海水中の鉄の存在状態と鉄が生物生産に果たす役割に関する研究の一部を紹介した。
著者
杉江 恒二 芳村 毅
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.101-148, 2011-09-15

海洋酸性化が海洋生物に及ぼす影響に関する研究が近年勢力的に行われている。本総説では,先ず,地球史における海水のpHの変遷と現代の海洋酸性化とを対比しながら植物プランクトンの動態について考察した。続いて,海洋酸性化の実験方法および植物プランクトンの生理生態と物質循環に及ぼす影響に関して近年の報告を中心にまとめ,以下の課題を抽出した。(1)過去の海洋酸性化の研究において亜寒帯や寒帯および外洋性の単離培養株が用いられていないこと,生息域や生活環に基づく実験が行われていないことは,自然環境における海洋酸性化の影響を把握する上での知識の欠如となっている。(2)pHの変化によって鉄と錯形成をする有機配位子の化学形態や2価鉄の濃度が変化するため,それらが生態系に及ぼす影響を評価する必要がある。(3)pHの低下により植物プランクトン細胞の有機炭素:リン比は増加する傾向,有機炭素:窒素比はほとんど変化しない傾向にある。一方では,pHの低下が溶存有機物およびケイ素の動態に与える影響には未解明な点が多いため,研究を促進させる必要がある。(4)pHの低下と鉄などの微量元素の利用性との複合作用がシアノバクテリアの窒素固定速度に及ぼす影響を明らかにし,窒素循環過程の理解を深化させる必要がある。
著者
伊藤 敬 仲居 裕 稲野 俊直 田口 智也 前田 昌調
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.417-423, 2006-09-05
被引用文献数
1

本研究は,微生物間の拮抗作用を利用してアユ冷水病原因菌であるFlavobacterium psychrophilumの増殖を抑制することを目的としている。この研究の一環として,アユ飼育槽内や天然河川から細菌を分離し,F. psychrophilumの増殖阻害活性を測定した。分離した97細菌株において,水槽壁および水中に浸漬したスライドガラス表面から得た菌が,高い割合で活性を示し,中でも7株は強い病原菌の増殖阻害作用を示した。そして,これら7株の簡易性状試験を行なった結果,3株はPseudomonas I/II, 2株はMoraxella属の種と考えられ,残りの2株は同定することができなかった。なお、この同定に関しては16SrRNAの解析について考察した。この7株の各々を配合飼料に20%(v/w)の割合で混合した後,体重あたり3%量の本飼料を稚アユに8日間毎日投与した結果,4株についてはアユの初期減耗がみられたが,飼育4日目以降では,死亡個体はなかった。一方,他の3株については,この初期減耗は見られなかった。
著者
井桁 庸介 北出 裕二郎 松山 優治 Yosuke Igeta Yujiro Kitade Masaji Matsuyama 東京海洋大学海洋科学部 東京海洋大学海洋科学部 東京海洋大学海洋科学部 Departments of Ocean Sciences Faculty of Marine Science Tokyo University of Marine Science and Technology Departments of Ocean Sciences Faculty of Marine Science Tokyo University of Marine Science and Technology Departments of Ocean Sciences Faculty of Marine Science Tokyo University of Marine Science and Technology
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.441-458, 2005-05-05
参考文献数
17
被引用文献数
4

海岸・海底地形が沿岸捕捉波の伝播におよぼす影響について, 簡単な地形を用いた数値実験により研究した。狭い陸棚を持つ深い湾へ伝播する場合には, 岸に沿う風で発生した内部ケルビン波型の沿岸捕捉波は, ほとんど分裂せず湾内へ伝播する。一方, 陸棚が湾口の外側まで張り出す浅い湾へ伝播する場合には, 沿岸捕捉波は湾内へ進入する内部ケルビン波と, 陸棚に沿って湾口沖を伝播する陸棚波型沿岸捕捉波に分かれて, 波形が変化した。これらの特徴は, 沿岸捕捉波による日本南岸各地での潮位変動を良く説明している。陸棚幅が広い場合には, 岸に沿う風により陸棚波が発生するが, 浅い湾の湾口で分裂せずに陸棚端に沿って伝播した。また, 湾口の陸棚に沿って伝播する陸棚波型沿岸捕捉波は, 陸棚の途切れを跳び越えて伝播し, その振幅は途切れ幅が狭くなるに従い大きくなることが確認された。さらに, 湾の幅がロスビーの内部変形半径の2倍より狭い場合, 湾口で分離して湾内へ入射する内部ケルビン波の一部が湾口を跳び越えることが明らかになるとともに, その振幅は湾口幅が狭くなるに従い大きくなることが判明した。Numerical experiments using a two-layer model with simple topography were performed to investigate the scattering of a coastal-trapped wave (CTW) generated by alongshore winds. In the case of a narrow shelf with a deep bay, an internal Kelvin-type wave propagated into the deep bay without wave separation and mode conversion. However, in the case of a narrow shelf with a shallow bay, the internal Kelvin-type wave separated at the bay mouth into two types of waves, a shelf wave and an internal Kelvin wave. The shelf wave propagated along the shelf edge off the bay mouth, while the internal Kelvin wave propagated into the shallow bay. The sea level fluctuations along the southeast coast of Japan that were caused by typhoon 8818 were well explained by the separation and mode conversion process of CTW. In the case of a wide shelf with a shallow bay, a generated shelf wave was propagated along the shelf edge without separation at the bay mouth. In cases with a disconnection of shelf, the shelf wave was found to bridge over the disconnection of shelf and the amplitude of the bridged wave decreased exponentially with increasing disconnection length. Most of the internal Kelvin-type wave bridged over the bay mouth when the width of the bay mouth was shorter than twice the internal radius of deformation.
著者
田中 勝久 児玉 真史 熊谷 香 藤本 尚仲
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.163-172, 2004-03-05
被引用文献数
10

筑後川河口域において濁度とクロロフィル蛍光の連続観測をノリ施業期の2002年9月から2003年4月初旬まで約半年間にわたって実施し,潮汐変動との関連を調査研究した。クロロフィル蛍光強度は高濁度の大潮干潮時に増大し,濁度と対応した大きな短期的増減を示した。しかし,濁度の低下する満潮時のデータで比較するとクロロフィル蛍光強度から推定される植物プランクトン現存量は,日射量が極端に低下した2002年12月後半および小潮時に塩分が低下した2003年2月を除くと,小潮時から中潮にかけて増大するが大潮時以降には安定または減少する傾向が認められた.小潮時には,表層塩分の低下(弱混合化・成層化)が進み,表層へ高栄養塩濃度の河川水が影響するとともに透明度の上昇による光条件の好転などにより表層での植物プランクトンの増殖が促進されたものと考えられる。一方,強混合となる大潮時は淫祀の巻き上がりにより透明度が低下し,植物プランクトンは光量不足や物理的分散作用(鉛直混合および沖合水との混合),さらに淫祀による凝集作用により現存量の増大が抑えられると考えられる。
著者
吉田 隆 下平 保直 林王 弘道 横内 克巳 秋山 秀樹
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.499-507, 2006-11-05
参考文献数
13
被引用文献数
2

黒潮の流路情報をもとに黒潮大蛇行を判定する基準を検討した。潮岬での黒潮の離岸を示す串本と浦神の潮位差が小さい値に安定していることに加えて,遠州灘沖での黒潮流軸の最南下点が北緯32度より南に位置することを,黒潮が大蛇行流路であるか否か判定する基準とした。さらに,大蛇行・非大蛇行流路と黒潮流路のA,B,C,D,N型分類との対応について整理した。
著者
関根 義彦 陳 苗陽
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.277-289, 2003-05-05
参考文献数
41
被引用文献数
3

日本南岸の黒潮流路の変動特性を知るため,1975年から1995年までの都井岬から房総半島沖までの9点からの黒潮の離岸距離を海上保安庁水路部の海洋速報の黒潮流路の中央点との距離として求め,その時間変動を調べた。その結果1975年に発生した黒潮大蛇行は室戸岬から大王崎にかけて離岸距離が大きく御前崎以東で離岸距離が小さいのに対し,1980年以後の五回の大蛇行は室戸岬から潮岬では離岸距離が小さく御前崎以東で離岸距離が大きくなり,大蛇行の流路のパターンが1980年前後で大きく変化していることが示された。大蛇行期ごとの平均距離をみると,1975年発生の大蛇行は伊豆海嶺の三宅島と八丈島の間のゲート領域を通るのに対し,1980年以降発生の大蛇行は平均距離が伊豆海嶺のゲート部よりも南に位置し,C型流路かゲート部を通る流路の選択を強制されることが示唆された。このため1980年以降発生の大蛇行は流路に及ぼす伊豆海嶺の地形効果が大きく,低気圧渦である大冷水塊を伴う大蛇行が比較的短時間で消滅する可能性が示唆された。九州南の潮位差解析により黒潮の南側分流の流量が大きいと都井岬から室戸岬沖の黒潮離岸距離が大きくなり,御前崎から石廊崎沖では離岸距離が小さくなる傾向が示された。一方北部流量が大きくなると,都井岬から潮岬沖の離岸距離が小さくなり御前崎から野島崎沖で離岸距離が大きくなる傾向がある。また,犬吠埼沖では黒潮の離岸距離が九州南の潮位差と有意な相関を示さない。
著者
乙部 弘隆
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.13, no.5, pp.493-494, 2004-09-05

2004年4月2日に岩手県の大槌湾で結氷現象がみられた。この観測された給氷現象は,夜半の降雨による淡水が河川から大量に流れ込み,表層を覆ったところへ明け方に気温が下がり,雨が雪に変わりシャーベット状の雪泥(Slush)からスポンジ氷(Shuga)になっていく過程と考えられる。東北地方では,たまに,このような現象がみうけられるが,公の記録としては残されていないようなので報告する。
著者
芳村 毅 工藤 勲
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.185-193, 2003-03-05
被引用文献数
2

河川から噴火湾への栄養塩負荷量を明らかにするために,噴火湾に流人する8河川および発電所排水路1か所において,流量および栄養塩濃度を一年にわたり観測した。その結果,河川流量は雪解け時の4月に特異的に高い明瞭な季節変化を示した。また,河川水中の栄養塩濃度は河川によって大きく異なったが,全河川の加重平均濃度は硝酸塩が24μM,アンモニウム塩が2.9μM,リン酸塩が0.30μM,ケイ酸塩が270μMであり. DIN:DIP比が非常に高いことが明らかとなった。河川から噴火湾への一年間の淡水負荷量は2.1×10^9m^3であり,溶存無機窒素,リン酸塩,ケイ酸塩負荷量はそれぞれ57×l0^6mol,0.6.3×10^6mol. 570x10^6molだった。これらの栄養塩負荷量が噴火湾の基礎生産に与える影響は総生産を考慮した場合は非常に小さなものだった。しかしながら,新生産を夏期のリン酸塩の減少量から見積もった結果,河川由来の栄養塩が噴火湾の夏期の新生産の最大10%を支えていることが明らかとなった。
著者
岸野 元彰 古谷 研 田口 哲 平譯 享 鈴木 光次 田中 昭彦
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.10, no.6, pp.537-559, 2001-11-01

海水の光吸収係数は, 海洋の基礎生産や海色リモートセンシングの研究において重要なパラメータの1つである。今まで, その測定法について多くの提案がなされてきた。本稿は, まず吸収係数の定義を明確に定義し, その海洋学における意義を述べた。引き続き, オパールグラス法, グラスファイバー法, 光音響法, 積分球法の原理を述べると共に問題点を挙げた。また, 採水処理しなくて済む現場法についてその原理と問題点をまとめた。引き続き吸収係数の組成分離法について直接分離法と実測値から求めた半理論的分離法を紹介した。最後に人工衛星によるリモートセンシングによる推定法に言及した。
著者
堤 裕昭 木村 千寿子 永田 紗矢香 佃 政則 山口 一岩 高橋 徹 木村 成延 立花 正生 小松 利光 門谷 茂
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.165-189, 2006-03-05
被引用文献数
6

有明海では,近年,秋季から初冬に大規模な赤潮が発生し,ノリ養殖漁業に大被害をおよぼしている。水産庁九州漁業調整事務所がまとめた過去の赤潮記録を用いた解析によって,冷却期(10月〜12月)に有明海で発生した赤潮は,1998年以降規模が急に大型化したことが判明した。しかし,赤潮の大規模化を招くような陸域からの栄養塩流入量の増加は,有明海奥部に注ぐ一級河川からの栄養塩負荷量や有明海沿岸での公共用水域水質測定の過去のデータには見られない。本研究では,2002年4月〜2003年4月に,有明海で全域にわたる精密な隔月水質調査を行なった。奥部では7月および10月〜12月において,流入した河川水が表層の塩分を低下させて成層化し,その表層で栄養塩濃度が急上昇して,大規模な赤潮が発生していた。2002年4月〜5月の諫早湾潮受け堤防の開門操作期間には,島原半島側に顕著な湾口流出流が観測された。本研究の調査結果は,1997年の潮受け堤防締めきりが有明海奥部の河口循環流を変化させ,塩分の低下した表層水を湾外へ流出し難くして,1998年以降,毎年冷却期に奥部で大規模な赤潮を起こしてきたことを示している。
著者
梶浦 欣二郎
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, 2002-03-05

本学会名誉会員増澤譲太郎博士は2000年8月29日に享年77歳で亡くなられました。博士は東京帝国大学地理学科を卒業後,1946年に中央気象台(現気象庁)に就職,諏訪湖の研究に着手されました。その後,気象定点観測船による黒潮観測資料の解析に従事され,1954年以降,凌風丸による東北海区の黒潮続流の観測を指揮して,黒潮の実体解明に貢献されました。1962年から2年間,米国に留学してモンゴメリ教授の指導を受け,帰国後,亜熱帯モード水の研究を発表。黒潮協同観測(CSK)では,137°E定線観測計画を策定されました。1976年に日本海洋学会賞を受賞。1980年から3年間は気象庁長官,定年退官後は東海大学海洋学部教授,1987年から2年間は日本海洋学会長を務められました。謹んで哀悼の意を表します。
著者
岩坂 直人
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.197-211, 2009-05-05

太平洋の気象観測ブイの計測値を用いて,海上気温の平均的な日変化について調べた。平均的な気温日変化は,地方時5時前後に最低値,15時から16時頃に最高値を取り,日較差は0.3〜0.8K程度であった。大気潮汐が顕著な海域では午前の昇温が強調され,逆に午後の最大は多少抑制される。しかし,そのような平均的日変化が日々の気温の日変化を代表するのは,赤道域中央,東部など天気の安定している海域だけである。赤道太平洋西部や中高緯度の海域では活発な対流活動や総観規模擾乱,季節内振動などに伴う温度変化と思われる変動が卓越し,一日の最高,最低気温の差は平均的日較差より1桁大きい。なお,過去の研究でも指摘されているが,いくつかのブイの気温観測値には正のバイアスが午前と午後に現れていることが疑われ,その大きさは平均で0.1〜0.2K程度に及ぶ可能性がある。
著者
筧 茂穂 藤原 建紀 山田 浩且
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.527-540, 2005-07-05
被引用文献数
2

鉛直的・空間的に密に測定されたAOUのデータからの線形回帰, あるいは表層と底層の栄養塩濃度の線形補間によって栄養塩現存量を算出し, その季節変動を明らかにした。下層のDIN現存量は, 1,500〜2,600tの範囲で変動し, 夏季に高く, 冬季に低かった。上層のDIN現存量は, 下層に比べ, 夏季は低いものの冬季はほぼ同じであった。DIPの現存量はDINよりも明瞭な季節変動をし, 冬季には上下層とも200tであるのに対し, 夏季には上層は400t, 下層では800tにまで増加した。現存量の時間変化量と海水交換による栄養塩変化量の差から見積もった生物・化学的要因による栄養塩の変化量は, 物理的要因(海水交換)による栄養塩変化量よりも大きかった。夏季の上層では, クロロフィル濃度の増加と対応してDIN・DIPが減少する場合があるものの, 両者が完全に同調するわけではない。夏季の下層における生物化学的要因によるDIP変化量は正であり, 溶出の影響が大きいことが示された。一方で, DIPの吸着や, 一年を通じて脱窒が起こっていることもAOUとレッドフィールド比から示された。
著者
吉田 みゆき 高杉 由夫
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.123-135, 2001-03-05
被引用文献数
6

瀬戸内海という器は経済の高度成長に伴う埋め立て等によって大きく変形してきた。これらの地形変化が潮汐に及ぼす影響を見るため, 過去30年間の潮汐の経年変化を調べた結果, 半日周潮(M_2)の振幅は, 大阪湾で減少(約2.3cm), 瀬戸内海中央部の備讃瀬戸では大きく増加(約4cm), 周防灘奥部ではやや減少, その西端に位置する関門海峡では大きく減少(約5cm)していた。関門海峡では日周潮も変化しており, 振幅は減少(約1cm)し位相は遅れてきていた。これらについて一次元理論より考察した結果, 埋め立て・浚渫・架橋などの影響により瀬戸内海の固有周期が短くなり, 半日周潮の明石海峡付近の節は東へ移動し, その結果大阪湾では減少してきていた。
著者
倉本 敏克 南川 雅男
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, 2002-03-05

タイ南西沿岸域における堆積物中有機物の特徴を明らかにする目的で,陸上植物やマングローブ,河川や沿岸の懸濁態有機物(POM)および堆積物について,安定炭素・窒素同位体比を測定した。試料は,都市の隣接するトラン川流域と,目立った河川の流入がないムック島周辺地域で採取した。陸上植物や河川のPOMのδ ^<13>Cは,両地域で大きな差はなく-24‰以下の値を示した。これは,河川から流入する有機物がC_3植物の影響を強く受けており,δ ^<13>Cの高いC_4植物の影響は小さいことによると考えられる。一方,マングローブ,河川のPOMや堆積物のδ ^<15>Nは,トラン川地域で高い値を示した。これは,農耕や隣接する都市からの排水の流入など人間活動による影響により,トラン川の硝酸のδ ^<15>Nが高くなっている可能性を示唆している。本論文では,堆積物中有機物の起源として,陸上植物,マングローブ,沿岸のPOMに加え,すでにこの海域で測定値が報告されている海草を含めた4種のエンドメンバーを想定し,確率論的な計算を用いることにより両地域における寄与率の違いを明らかにした。その結果,堆積物中有機物の主要な起源と考えられたのは海草であり,トラン川地域で36%,ムック島地域で42%を占める。沿岸のPOMの寄与は,トラン川地域で高く(19%),ムック島地域では低い(13%)。陸上植物とマングローブの寄与はいずれも23%前後で地域による大きな差は見られなかった。
著者
三宅 裕志 山本 啓之 北田 貢 植田 育男 大越 健嗣 喜多村 稔 松山 和世 土田 真二 Hiroshi Miyake Hiroyuki Yamamoto Mitsugu Kitada Ikuo Ueda Kenji Okoshi Minoru Kitamura Kazuyo Matsuyama Shinji Tsuchida 新江ノ島水族館:海洋研究開発機構(JAMSTEC) 新江ノ島水族館 新江ノ島水族館 新江ノ島水族館 石巻専修大学 海洋研究開発機構(JAMSTEC) 海洋研究開発機構(JAMSTEC) 海洋研究開発機構(JAMSTEC) Enoshima Aquarium:Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology Center (JAMSTEC) Enoshima Aquarium Enoshima Aquarium Enoshima Aquarium Ishinomaki Senshu University Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology Center (JAMSTEC) Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology Center (JAMSTEC) Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology Center (JAMSTEC)
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.14, no.6, pp.645-651, 2005-11-05
参考文献数
9
被引用文献数
1 4

シロウリガイ類は深海から採集すると通常2, 3日しか生存せず, 飼育を試みた報告は皆無であった。本研究では, シロウリガイ類の飼育の試みとして, 良好な健康状態で採集し, かつシロウリガイ類の共生細菌のエネルギー源(泥中の硫化水素)を確保するために, 圧力以外の現場環境をできる限り維持した状態で採集する装置のMTコアを開発した。また, シロウリガイ類は高酸素濃度に弱いため, 溶存酸素濃度制御装置により低酸素濃度環境を維持する飼育システムを製作した。シロウリガイとエンセイシロウリガイをそれぞれ相模湾初島沖水深1,150m~1,160mの地点, 石垣島沖の黒島海丘の643mの地点で採集した。採集したシロウリガイは約1週間で死亡したが, 黒島海丘のエンセイシロウリガイは17日間生存した。また, エンセイシロウリガイでは2回放卵が確認された。以上のことから, エンセイシロウリガイは飼育が容易な種と考えられた。