著者
北仲 千里 横山 美栄子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

学術論文の著者の定義/範囲について、国際的な議論と基準の設定がなされているにもかかわらず、日本の科学者はあまりそれを意識していない。日本の自然科学系の研究者へのアンケート調査とインタビュー調査から、国際基準とは異なる考え方にもとづいて、彼らの考える「正しいオーサーシップ」が実践されていることがわかった。例えばそれは「資金を提供した人が入る」「研究室の長が入る、(実験室等の研究環境を整えた人として)」「研究の材料の提供者」「テクニシャン」「何らかの形で”手を動かした”人はすべて」などであった。
著者
北仲 千里 横山 美栄子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

2020年度は、以下の点について研究の進展があったが、研究成果の公表にまでは至っていない。(1)調査対象となる全国すべての国公立大学医学部歯学部の教員のサンプリングを行い、他学部とは大きく異なり、教員の大部分を占める人数が助教であり(とりわけ臨床系分野)、臨床の現場で働く医師と大学教員との区別が比較的緩やかであることがわかった。(助教については、教員数にはカウントしているものの、教員名簿には載せていない大学も、私立大学などでは見られた)したがって、本調査が対象としている研究者、研究組織としての大学教員とは少し異質な「大学教員」がかなり含まれている可能性がわかった。(2)2000年ごろ以降、欧米でも「職場のいじめ」研究の文献が多くなり、その中にはアカデミックな場でのいじめについて取り上げているものもあることがわかった。しかし、本研究が目指すような研究組織、研究集団やアカデミック・ミスコンダクト、オーサーシップに焦点をあてた議論がどの程度あるかどうかは確認できなかった(むしろ、これまでの研究で確認してきたように、研究不正に関する論文や議論において、オーサーシップは積極的に議論されている)。引き続き文献収集と検討が必要である。(3)コロナ禍で大学教員が大学に来ているかどうかの状況が不明(理系は文系よりは来ていると思うが)、また、臨床の医療現場はひっ迫していることが考えられ、アンケート調査を送付して依頼することが不適切であることなどを考え、アンケートの送付や回収が実施できなかった。
著者
台坂 博 大槻 圭史 岩澤 全規 牧野 淳一郎 似鳥 啓吾
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では、土星リングに代表されるリングに関する諸問題(構造や起源)の解決を図るためにこれまでにない大粒子数を用いた惑星リング全系のN体シミュレーションを可能とする方法を確立し、その手法を用いたシミュレーションを実施し、その有用性を実証することを目的としている。令和2年度は、引き続き、開発している数値計算コードの検証作業を行った。前年度に引き続き、光学的に薄いリング系におけるリング粒子系の熱速度の進化を、先行論文の結果と比較することで検証を行っているが、現在のところ、再現性の問題の解決にいたっていない。粒子同士の衝突モデルの変更の検討も行っているが、変更には数値計算コードの高速化の鍵となる部分に大幅な修正が必要となるため、その変更を行うかも含めた検討を行っている。
著者
田中 優子 犬塚 美輪
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

情報通信技術(ICT)を介して迅速かつ広範囲に伝達される情報は、災害時の情報共有や意思決定に役立つ一方で、デマ拡散ツールとして悪用されれば社会を混乱状態に貶めるリスクもある。誤情報拡散防止のための方法論の確立に向けて、本研究では、誤情報に対する信念がカウンター情報呈示後も維持される誤情報持続効果に着目し、その効果が生じる認知的メカニズムを実証的に明らかにすることを目的とする。
著者
柄澤 邦江 小野塚 元子 安田 貴恵子 千葉 真弓
出版者
長野県看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究の目的は、終末期療養者への訪問看護師と訪問介護従事者の連携・協働による支援モデルを開発することである。本研究は、訪問看護と訪問介護従事者の連携・協働に着眼し、医療ニーズと介護ニーズを併せ持つ終末期療養者への支援を明らかにする。支援モデルを開発することにより、終末期療養者の安楽な生活を保障するためのエンド・オブ・ライフケアの質向上に繋がると期待できる。
著者
黒田 寿美恵 山内 栄子 松井 美由紀 安田 千香 中垣 和子 菊内 由貴 澤岡 美咲 滝口 里美
出版者
県立広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究課題では,自宅や居宅系施設など,住み慣れた地域で暮らすがん患者がより充実したエンドオブライフを送り,その人らしく生き抜くことが可能となることを目指すための,外来看護師と訪問看護師の連携モデルを構築する。具体的には,訪問看護を受けながら地域で暮らしているがん患者の療養生活を支えるうえでの看護実践内容や連携の実際,連携上の課題を明示する基礎研究と文献調査とを基盤としてモデルを開発し,訪問看護を受けながら自宅や居宅系施設など,地域で暮らすがん患者への看護実践に適用して妥当性を評価し,必要な修正を行うことでより現実に適合する看護連携モデルに発展させる。
著者
小野 恵子 内田 陽子 中谷 久恵
出版者
青森県立保健大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

これまでの研究を発展させ、在宅エンドオブライフケア(終末期ケア)を支える訪問看護師とケアマネジャーとの連携の様相を明らかにし、コロナ禍における在宅療養の連携支援の実情を明らかにするとともに、終末期の在宅療養者を支える訪問看護師とケアマネジャーの連携支援モデルの構築に発展していく。
著者
西村 馨 木村 能成 那須 里絵 岡本 美穂 佐藤 かな美
出版者
国際基督教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

集団不適応の中学生に対するグループセラピーを実践し、参加者(合計14名)のほぼ全員が学校での適応状態の改善を見た。グループでの治療展開について、個人の未形態の情緒が対人関係的出来事(対人トラウマの再演)をもたらし、その理解が相互の関係性を深化させ、さらに現実的アクションへと至るプロセスが見出された。このようなグループセラピーの構造、治療的活動、基礎技法、セラピストの姿勢、グループ発達段階に応じた介入について整理した。また、本グループによる教師研修(1名)、カウンセラー研修(3名)の検討により、子どもの感情に一層接近する感覚の向上とやりとりの柔軟化が見出された。
著者
清家 泰介
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

酵母を用いた有用物質生産において、近年モデル生物以外の新しい機能を持った酵母の利用も期待されている。しかし、現状では野生酵母の情報は不足しており、産業への展開が遅れている。そこで本研究では、ショウジョウバエが腸管の袋状の器官クロップに微生物を蓄積する性質に注目し、ハエの体内から多様な野生酵母を単離し、有用な酵母を発見することを目的とする。国内の色々な場所から単離できた酵母については、熱やpHなどのストレスへの適応能力や培養中の細胞内外の代謝物量を計測することで、未知の物質を生産するものや特定の代謝経路が強化された酵母を見出す。こうして、野生酵母の情報の提供とさらなる産業への貢献を目指す。
著者
今井 あかね 松田 貴絵 横須賀 宏之 辻村 麻衣子
出版者
日本歯科大学新潟短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

近年、新しい細胞間情報伝達システムとしてエクソソームが注目されている。唾液中にもエクソソームが存在しており、内包されているmiRNAが癌の診断に応用されようとしている。唾液は非侵襲的に得られる検体として、多方面で実用化しようとする動きがあるが、外部環境の影響を受けやすく個人差が大きいため診断材料としてほとんど使用されることがない。また、他の体液に比べ、粘性などの物理化学的特性から安定的にエクソソームを抽出することが容易ではない。本研究では、唾液エクソソームの抽出法を確立し、そこに含まれるタンパク質の基礎的データを収集して、唾液エクソソームの働きや意義を提唱した。
著者
東 信行 佐藤 淳 笠原 里恵
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

青森県のリンゴ園を中心とした農地における有害動物の管理を,生態系サービスに注目しそれを生かしたバランスの在り方を見出す。現状ある捕食―被食関係の定量化と同時に,適切な捕食圧を目指すための地域景観の管理の在り方を把握し,一般に情報提供を行う。慣行型の有害生物管理を超えた生態系管理型農業を目指す。
著者
小針 誠
出版者
青山学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究課題は、国立・私立小学校を志望する家族の社会階層、教育意識・志望理由の変容が学校組織や学校経営に与えた影響を、この20年の定点観察を通じて明らかにする。申請者が2000年に実施した国立・私立小学校を志望する保護者対象の質問紙調査に新規の項目を追加した質問紙調査を2020年に追施、両者を時系列的に比較し、小学校受験層の社会階層や教育意識の変化を捉える。この20年の間、学校を取り巻く環境は大きく変容し、学校に対する保護者の教育期待や要望は著しく多様化した。私立小学校のなかには、志願者がほとんど減少しない学校の一方、存亡の危機に直面する学校も少なくない。
著者
Kenney E.R
出版者
関西外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

"針聞書"は大阪地域に住んでいた医師によって作成された1568年の日付の日本の原稿です。 原稿には、それぞれ独自の名前を持つ63個の虫の絵が含まれています。 これらのワームは人体に住んでいて寄生虫のようです。 しかし、ワームの名前は空想的であり、ほとんどの名前は他の医学書には載っていません。 63の虫のそれぞれについて、患者の症状と病気の治療法についての簡単な説明があります。"針聞書"について真剣に研究した外国人研究者は他にいません。 私の研究の第一段階は"針聞書"を翻訳することです。 さらなる研究には、"針聞書"と同様の期間の他の日本の医学書との関係の調査が含まれます。
著者
寶来 正子 大槻 知忠 高橋 渉 小島 定吉 鵜飼 正二 藤井 光昭
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

型理論の研究で明らかにしたい事柄の一つに,与えられた型システムで型付け可能な項全体を適当な同値関係(例えば,β同値,βη同値,またはその他の同値関係)の下で同値類に分類したとき,その全体がどのような数学的構造を成すかを知ることが上げられる.これは本来,意味論の中心的な研究課題であると言えるが,型理論の場合,この問題に対して構文論(または証明論)的なアプローチの可能性が考えられる.本研究では,構文論的アプローチによって,単純型理論における型付き項全体を,同値関係βηで割った商集合を,ある種の文法的手法を用いて表現することに成功した.ここで用いた手法は,文脈自由文法の名で親しまれている概念を,この目的のために拡張したもので,述語論理における項や,これを拡張した種々の型理論の項から成る集合を端的に表現できる一般的な枠組みであり,今後,単純型以外の種々の体系に対しても,有用性を発揮することが期待される.この,新たに導入した文法的方法の一つの応用として,型理論の型付き項を用いて,自由代数構造の上のどのような関数が表現可能かを調べる問題が上げられる.型のないラムダ計算の項を用いて表現可能な自然数関数はちょうど計算可能関数と一致し,単純型理論の場合はそれが拡張多項式と一致することが知られているが,これを一般の自由代数構造上の関数に拡張すると,単純型理論の場合でも議論が非常に複雑になり,その結果,表現可能な関数についてある種の特徴付けがすでに得られているものの,満足のいく結果とは言い難い.この問題に対して,我々の文法的手法を用いて,既存の結果とは異なる見通しの良い新しい特徴付けを得ることができた.この結果を更に単純型以外の型理論に拡張する試みを今後続けたいと計画している.
著者
大森 雅人
出版者
神戸常盤大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、「幼児が法則性や一般性に自ら気付く体験」に繋がる環境を構成できる力を持つ保育者を養成するための、教育の在り方の提案を目的としている。以下に、令和2年度に取り組んだ内容と得られた成果について、その概要を記述する。養成教育段階で、「規則性・法則性」に関する実践的な知識や、幼児の遊びが「規則性・法則性」に気付く探究活動になるような環境構成と援助ができる力の育成が必要となる。昨年度まで、そうした力の育成を目指す研究の一環として、幼児が自らの力で気付くことができる「規則性・法則性」に関する検討を行い、養成教育段階での教育内容を決定するための基礎資料として蓄積してきた。そこでの検討対象は、幼稚園教育要領解説(指導書)に例示された「規則性・法則性」の内容や、米国のNGSS(Next Generation Science Standards)に示された領域コア概念であった。令和2年度は新たに、米国で出されている「Science Experiences for the Early Childhood Years」に示された科学概念を対象として検討を行った。その結果、「Science Experiences for the Early Childhood Years」に示された科学概念と、我が国の幼稚園教育要領解説(指導書)に例示された「規則性・法則性」の内容には、共通する部分があることが認められた。内容が共通する部分は、今後、養成教育における教育内容を決定する際に、最も重視すべき内容であると考えることができる。また両者に共通していない内容でも、「Science Experiences for the Early Childhood Years」が示す科学概念には、養成教育の教育内容として活用できる概念が多く見られたので、「教育内容」を導く際の基礎資料となることが認められた。
著者
濱沖 敢太郎 内田 康弘 神崎 真実 土岐 玲奈
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究の目的は、通信制高校のカリキュラムやその運用方法の特徴を明らかにすることである。具体的には、「教育課程表を用いた体系的なカリキュラムデータの構築と分析」及び「私立通信制におけるカリキュラム運用の実態検証」を実施する。この研究の特色は「通信制高校と同様、多様な生徒が学ぶ場づくりを進めてきた学校群との比較」そして「1990年代以降の拡充期に起きた通信制内部の変化」に着目する点であり、1990年代以降の高校教育に関するカリキュラム研究を批判的に継承し、その意義や可能性を再構築することにも寄与するものである。
著者
堺 正之
出版者
福岡教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

主として3点を挙げることができる。第1に、1958年以降の日本の小中学校における道徳教育の特徴をその内容の観点から明らかにした。第2に、道徳の時間の諸方法について、その特質を明らかにするとともに、いじめ問題への対応に貢献するための相互補完の可能性を示した。第3に、今後の教員養成教育における道徳の指導法に関する科目改善について提言を行った。
著者
松原 隆彦
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

宇宙の大規模構造を理論的に記述し、大規模な観測データから精密に宇宙論モデルを制限するためには、ゆらぎの観測量に関する非線形性の理論的理解が不可欠である。これまでの宇宙論的摂動論を大幅に拡張して一般化し、単なる密度ゆらぎの非線形性だけでなく、実際の観測量に現れる非線形性を系統的に理解する実際的な方法を基礎づけることができた。
著者
鶴見 太郎
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

組織面から見た時、柳田国男の民俗学はしばしば、地方の郷土史家を従属的に扱い、そこから民俗資料を吸収して、独占的にそれらを分析する構造を持っていたと指摘を受けることが多い。しかしながら、同時代の資料、特に『郷土研究』並びに「橋浦泰雄関係文書」などを子細に、かつ長期的な視野のもとで検証すれば、柳田の研究体制とは、その土地々々に自生する郷土研究会の特質を尊重し、全国組織という体裁をとったとしても、それは在来の研究者・研究会を横から繋ぐ、という様式を旨とするものであり、必ずしもトップダウン型の組織運営が目指されたとは言えない。また、大正中期に『郷土研究』に投稿し、柳田と接触を持った郷土史家は、その後、継続的に柳田の主催する郷土・民俗学に関わる雑誌に投稿しており、すすんで長期にわたって柳田と交流を保とうとしたことが分かる。『郷土研究』とほぼ並行して運営された民俗談話会「郷土会」のメンバーが共通して国家主導のもとで郷土を捉えようとする地方改良運動に強い批判を抱いていたことを確認すれば、実証と経験的思考を徹底する柳田民俗学は、その特色を組織の域にまで拡大して援用し、その効果を挙げたといえよう。
著者
小林 美和 冨安 郁子
出版者
帝塚山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

近時、食育の問題が重要視され、あらためて日本の伝統的食文化見直しの必要性が認識されはじめている。本研究は、そうした社会的要請を背景として、日本食文化の淵源として位置づけられている室町時代の食文化を、当時盛んに作成された室町時代物語を主たる素材として追究した。室町時代物語の多くは、絵巻や奈良絵本等といった形態で流布しており、それらは視覚的資料としても、当時の食文化・生活文化の実態を知る上で、有益である。本研究では、「東勝寺鼠物語」、「六条葵上物語」「月林草」「精進魚類物語」等の作品を素材として、当時の食文化および生活文化の実態を究明した。