著者
内藤 佳奈子 坂本 節子
出版者
県立広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

人工合成培地を用いた無菌培養実験により、赤潮原因藻類の増殖における鉄利用能の検討を行った。その結果、ノリ色落ち原因珪藻Eucampia zodiacusと有害渦鞭毛藻Cochlodinium polykrikoidesの利用鉄種と有機配位子の産生能を明らかにした。また、主要な赤潮藻8種の最小細胞内鉄含量を求め、現場海域における増殖可能な細胞密度と他種との競合における優位性を評価した。瀬戸内海沿岸域の調査研究では、有害赤潮藻類の細胞密度と溶存鉄濃度との間の相関性を示すことができた。
著者
山口 正晃
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

半索動物と棘皮動物は歩帯動物クレードの姉妹群で、三体腔性の幼生を共有する。半索動物は幼生プランを引きつぐ。一方、棘皮動物は成体原基の中で五放射体制をつくり、稚虫へと変態する。半索動物外胚葉の前後軸にそったパターン化を制御する遺伝子のウニ相同遺伝子を単離し、比較発現解析した。ウニ成体原基の外胚葉で発現するのは、ギボシムシの襟外胚葉相同遺伝子のみで、その発現は放射水管を覆う歩帯外胚葉領域に制限されていた。棘皮動物は、共通祖先から吻と胴を失い、襟からの放射状突起伸長によって進化したことを提唱する。一方、Hox複合体の共線的発現は、棘皮動物の前後軸は成体の口-肛門軸であることを示唆する。
著者
柴田 近 小川 仁 坂井 貴文 坂田 一郎
出版者
東北医科薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

大腸運動異常は、QOLを低下させる疾患を引き起こすことから、大腸運動制御機構の解明が求められている。本研究は、食虫目スンクスを用いて、小型の埋め込み型strain gauge force transducerで胃及び大腸収縮運動と行動を同時に24時間連続観察できる実験系を確立した。その結果、排便の際には必ず巨大伝搬性収縮波が観察され、排便の前後に高確率で摂食や飲水が見られることを明らかにした。また、消化管ホルモンのモチリンは大腸運動を刺激しなかったが、セロトニンやノルアドレナリン受容体阻害剤であるヨヒンビンは巨大伝搬性収縮波及び排便を引き起こすことを明らかにした。
著者
岡崎 仁昭 長嶋 孝夫 佐藤 英智 平田 大介
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

【目的】スタチン類はHMG-CoA還元酵素抑制によるコレステロール低下作用以外にも様々な多面的効果(pleiotropic effect)を持ち、近年、免疫抑制作用を有することが注目されている。我々はスタチン類の免疫抑制作用の機序をアポトーシス誘導作用の観点から研究を進め、脂溶性スタチンのフルバスタチンは活性化T細胞と培養RA滑膜細胞に対してアポトーシス誘導能を有し、その機序としてprotein prenylation阻害に基づくことを見出した。今回はスタチン類がループスモデルマウス(MRL-lpr/lpr)に対して治療効果を示すか否かを検討した。【結果】既に自己免疫病を発症している生後4か月齢のMRL-lpr/lprマウス計60匹をコントロール群、フルバスタチン投与群(10mg/kg)、副腎皮質ステロイド投与群(10mg/kg)の3群に分け、週3回腹腔内継続投与した。(1)投与開始4か月後の生存率:コントロール(C)群(50%)、フルバスタチン(F)投与群(55%)、副腎皮質ステロイド(S)投与群(90%)(2)尿所見:C群1.3±0.4、F群0.4±0.2、S群0.6±0.2(3)血清抗ds-DNA抗体価(EU):C群62.9±24.9、F群178.6±88.6、S群17.7±5.3(4)血清INF-γ(ng/ml):C群45.1±12.7、F群34.4±5.7、S群16.0±3.9【考察】今回のフルバスタチン投与実験(投与量と期間)では蛋白尿減少作用を認めたが、長期的生存率は上昇させなかった。血清抗ds-DNA抗体価はフルバスタチン投与群では逆に上昇傾向であった。スタチンには薬剤誘発性ループスの症例報告もあり、全身性エリテマトーデス(SLE)患者に投与する場合には注意を要すると考えられた。【臨床への応用】リウマチ膠原病患者は動脈硬化を合併しやすいことが報告されている。スタチン類がその抗動脈硬化作用に加えて、免疫調節作用をも有していれば、リウマチ膠原病に対する新たな治療薬となり得ることが期待される。
著者
鈴木 俊夫
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

原子核のスピン応答を正確に記述し、崩壊線近傍までの殻進化を再現できる殻模型ハミルトニアンを用いて、高温、高圧の天体環境条件下での電子捕獲率、β崩壊率の精密な評価を、sd殻核、pf殻核から二主殻が関係するsd-pf殻、pf-gds殻の核領域に研究対象を拡張して行う。 また、19Fの合成に重要なニュートリノ-20Ne 核反応の再評価を行う。元素合成および核Urca過程による星の冷却の計算に必要な精密な核データの蓄積を系統的に範囲を拡げて提供することによって、原子核分野での不安定核の研究、核構造研究の精密化の成果を、天体での元素合成、星の進化の分野の研究に有効に反映させる。
著者
新谷 朋子
出版者
札幌医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

小児の睡眠障害はアデノイド・扁桃肥大が原因となる閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS : Obstructive Sleep Apnea Syndrome)が主である。アデノイド・扁桃摘出術によって、口呼吸、いびき、無呼吸、睡眠中の陥没呼吸、胸郭変形、夜尿、起床時の不機嫌、成長発育不良などが著明に改善することが臨床的に経験されるが、近年OSASによる行動異常(多動や攻撃性)、学習障害、ADHD(注意欠陥・多動性障害)との関連が指摘されている。終夜睡眠ポリグラフ、簡易検査であるヒプノPTT、行動評価としてアクティウオッチ、OSA-18を用いて、小児OSASの病態について検討した。簡易検査であるヒプノPTTを終夜睡眠ポリグラフに加えることによって、呼吸努力の評価が可能であった。OSA-18では睡眠や日中の行動、保護者の不安が有意に改善して、手術療法の効果が見られた。アクティウオッチは少数例にしか施行できず、24時間の使用が困難で十分な評価は難しかった。
著者
田口 茂
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

第一に、現象学的観点から見た「現実の手応え」とも言える明証論を追究し、現実を自然に生きる態度と、それについての「超越論的な気づき」との間の密接な関係を明らかにした。第二に、田辺元の「媒介」概念の研究により、現象学を媒介論的に展開するアイデアを複数の論文等で発表した。第三に、神経科学者、数学者、認知科学者との共同研究により、「意識」の学際的研究を推し進め、量子論とも整合的で、数学の「圏論」のアイデアを採り入れた新しい現実観を書籍等で提示することができた。
著者
室崎 生子 小伊藤 亜希子 中島 明子 上野 勝代 吉村 恵 松尾 光洋
出版者
平安女学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

建築・都市計画分野における女性の専門職比率、昇格実態などを把握するために、14年度に都道府県を対象に、15年度には、東京23区を対象に、アンケート調査を実施し、社会進出状況と昇格における男女差の実態を把握した。建築・都市計画分野における女性の専門職の採用は近年、増加の傾向にあることは把握できたが、建築・都市計画分野における女子学生の増加率に比べれば、その増加を反映したものとはなっていないといえる。また、昇格に対しては男女差別が存在しており、等しく昇格試験が受けられる自治体と不明瞭なところとがある。大学における教員比率についても、女子学生の増加に対応したものとなっていないこともわかっており、採用や昇格における改善はエンパワメント政策上の課題であることが確認できた。また、国外比較事例として、1年度は韓国、2年度はイギリス、フィンランドを対象とし、ジェンダーエンパワメントの実態を調査した。いずれの国でも建築・都市計画分野において女性が増加してきており、先進的に活躍する女性たちが存在することが感じられたが、いずれの国においてもジェンダーによる影響が皆無ということはなく、引き続き国際的にも課題であることも確認できた。女性政策や社会の発展からすると後発とも言える韓国は、民主化政策の中で急速に女性政策が進展した国である。韓国調査からは、有効な政策を打つことで、エンパワメントがはかれることが示唆された。ジェンダーエンパワメントが高いフィンランドでは、福祉制度や女性政策が進んでおり、働く環境がととのっていることが、初期から中期のポストでの差がない状態を生んでいることが理解できた。また、養成課程での女性比率が社会進出に反映するなどエンパワメントの実態を目の当たりにすることができた。イギリスにおいては、女子学生の増加に見合った女性建築職の進出の場や活躍の場が少ないなど日本の状況とにており、社会的に活躍できにくい状況の解明調査に取り組んでいるところであった。民間企業に勤める建築専門職の実態調査等が、今後の課題としてのこった。労働政策、福祉政策、女性政策等の連携なしに建築専門職分野のエンパワメントもありえず、総合的視野からの改善ときめ細かなところからの支援改善を連携する提言をしていくことが課題である。
著者
宗岡 光彰 小森谷 久美 村上 康二郎
出版者
東京工科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、「情報アクセシビリティ」を基本的人権の一つとして位置づけ、その実現に困難があると想定される障害者の情報利用、とくにインターネットの利用に焦点を当て、その実態を把握し、障害者の情報アクセシビリティ保障のための方策を探ることを目的としている。研究は平成14年度、15年度の2年度に亘って行った。研究の初年度(平成14年度)には、基本的文献の研究および質問紙法による障害者の情報利用の実態調査を行った。とくに、障害者のITおよびインターネットを活用しての情報の取得・利用やコミュニケーション、社会参加の手段としての利用の実態把握に重点をおいて調査を実施した。この調査により、障害者の情報アクセシビリティの現状や問題点を把握することができた。最終年度の平成15年度は、文献研究の継続、前年度の実態調査結果の詳細分析、障害者の情報アクセス・情報利用の事例研究、技術分野の専門家へのインタビュー調査、アメリカの関連法の調査を実施した。これらの研究調査結果を整理、分析、考察し、さらに、前年度の研究結果を融合して、研究のまとめを行った。研究結果の内容は、まず、障害者の現況、支援政策の最近の動向を整理した。次いで、前年度に実施した障害者の情報利用の実態調査データの詳細分析を行い、携帯電話、インターネットの保有・利用状況、つまり、メディア行動を分析するとともに、問題点・課題を把握した。続いて、障害者の情報化サポートの施策、実状、関連技術の動向をまとめた。また、障害者の情報アクセシビリティの保障のためには、法的、制度的バックアップが欠かせないことから、アメリカの関連法の分析を行い、わが国への示唆を得た。さらに、情報アクセシビリティの経済的問題点について考察を行った。以上の結果を踏まえ、障害者の情報アクセシビリティの問題点と課題を整理し、障害者の情報アクセシビリティの保障のための方策をまとめた。
著者
阿南 透 谷部 真吾 中里 亮平
出版者
江戸川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

日本の都市祭礼を対象に、祭礼の中で起こる事故や暴力の解決法とその変化について、8つの祭礼を例に研究した。以前は祭礼における暴力が当然視され、当事者によって解決する慣例が存在したが、戦後は警察と行政の関与を招いた。このため多くの祭礼は暴力を抑制する方向に変化したが、一部の祭礼は、高度成長期以後、場所と時間とルールを決めて対戦する「競技化」の方向に変化したことが明らかになった。
著者
赤江 達也 大澤 絢子
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究では、メディアに依存した宗教的言説実践、すなわち「メディア宗教」という新たな視座から、大正期に活発化する活字メディア上の宗教活動を検証し、宗教や教派の別を超えた「求道的な宗教性」と「流動的な組織形態」の実態を解明する。研究方法としては、明治末期から昭和戦前期にかけて既成の教団の外で活動した求道者・独立系宗教者たちに注目し、彼らが刊行した膨大な活字媒体(雑誌・書籍・小冊子)の収集整理と言説分析を行う。近代宗教と活字メディアの密接不可分な実態を解明し、広範な読者層の存在や修養・教養・道徳と浸透しあう宗教的ランドスケープを描き出すことで、教団中心に語られやすい日本近代宗教史を拡張・更新する。
著者
田中 佐織 宮治 裕史 井上 加菜 田中 享 谷野 美智恵 加藤 昭人 金山 和泉 西田 絵利香 村上 秀輔 川本 康平 宮田 さほり
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

歯根破折歯接着治療法の予知性向上を目的として,封鎖材料のレジン表面を改変し培養細胞シートを貼ることでレジン上に歯周組織再生を目指した.レジン表面をカーボンナノチューブ(CNT)とナノβ-TCPでコーティングした.細胞付着試験では,CNTコートした試料に付着した細胞はコントロールと比較すると多く,細胞伸展が良好であった.また細胞増殖性試験でも高い細胞増殖性がみられた。皮下埋植試験では著明な炎症反応は認められず,CNTコートした試料に培養細胞シートを貼った試料周囲に骨様組織形成が認められた.以上よりレジン表面を改変することにによりレジン上に歯周組織再生の可能性が見出された.
著者
中本 龍市 中園 宏幸 舟津 昌平 原 泰史
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究の目的は、専門サービス組織の組織成長の要因と過程を明らかにすることである。すでに触れたように、組織の成長は時間的変化を持つ多面的な現象であるため、この答えを導くには、定量および定性研究を併用する必要がある。Penroseの理論を援用すれば、組織成長の要因と過程を明らかにするためには、インタビューなどの質的研究を通して当事者の機会の認識や経営資源の使い方の意思決定を分析する必要がある。この点について、本研究では、営利企業ではなく、専門サービス組織を対象とするため、既存研究の境界条件が明らかにできる。
著者
加藤 文元
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

リジッド幾何学の将来的な応用を見据えた基礎付けとして、対応するZariski-Riemann空間の位相的性質や、その土台部分をなす環論の基礎付けを行い、多くの有用な結果を得た。またその基礎付けに至る過程で、数理物理学や非アルキメデス的一意化理論などへの応用の新たな可能性が明らかとなった。特に後者については、非アルキメデス的一意化に関係した不連続格子について、従来の理論では1 次元の場合に限って有効であった手法を多次元に応用する道が開かれた。
著者
伊東 秀之
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

高齢化社会の進行や医療費の増加などから,機能性食品などを利用したセルフメディケーションに取り組む人々が増えている.しかし,その機能性に反して,過剰摂取や医薬品との相互作用による副作用も出現している.本研究では,機能性成分の生体内挙動に関して,クランベリー成分およびエラジタンニンの尿中代謝物の検索,さらにクランベリーとワルファリンの食品-医薬品間相互作用の疑いが持たれていることから,その相互作用の解明の一環として,クランベリー成分の薬物代謝酵素に与える影響についても検討した.クランベリージュースをボランティアに飲用後,採取した尿を分析し,ジュース中には存在しない成分が代謝物として排泄されていることを確認し.中にはProanthocyanidin A-2のモノメチル化体など,新規代謝物の存在も明らかにした.またクランベリーの代謝物の中には,バイオフィルム形成抑制を示唆する低分子代謝物の存在も見出した.エラジタンニンをラットに経口投与後の尿中代謝物として,7種の新規代謝物を単離し,各種スペクトルデータの解析結果から,その化学構造を明らかにした.その代謝物の中には,抗酸化活性が顕著なエラジタンニンと同等の活性を有する代謝物も存在することを明らかにした.クランベリー成分の薬物代謝酵素(CYP2C9, CYP3A4)阻害活性をin vitro実験系にて評価した結果,高分子ポリフェノール画分が阻害活性を示し,また,in vivo系実験においてもワルファリンの体内からの消失を遅延させることを示唆するデータが得られ,クランベリー成分がワルファリンの主要代謝酵素を阻害する可能性が示された.本研究成果から,生体内代謝物が機能性本体として作用していることが十分考えられることから,機能性成分の評価には,生体内挙動の知見を考慮しながら遂行することが重要であることが示された.
著者
吉田 さち 松本 和子
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は祖国を離れた「ディアスポラ言語変種」が、新天地で接触によって誘発され、様々な変容(contact-induced language change)を遂げる過程と結果、その諸要因を究明することで、言語・方言接触に関する理論構築に寄与することを目指している。具体的には、在外コリアンに焦点を当て、日本の首都圏およびロシアのサハリン州(かつての「樺太」)在住のコリアンコミュニティにおいて言語・方言接触の結果として生じた①コード・スイッチング、②借用語、③コイネーに関する事例を収集し、社会言語学分野の様々な理論的枠組みを検証していく。
著者
高山 千利
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

坐骨神経痛などの神経障害性疼痛は、罹患率が高く難治性であることから、世界的健康問題であり、有効な治療法の開発が待たれている。治療法開発の突破口の1つとして、γアミノ酪酸(GABA)の機能異常を介する痛みの発生機序を明らかにし、その治療法に迫ることを目的として研究を行った。その結果、疼痛モデルマウス、遺伝子改変マウスにおいて、ミクログリアの活性化が持続し、K, Cl共輸送体(KCC2)の発現量が減少したままの状態が続くため、GABAによる抑制力が低下しており、この抑制力の低下が痛みの持続を生み出していることが明らかになった。
著者
村田 浩一 佐藤 雪太 中村 雅彦 浅川 満彦
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

日本アルプスの頚城山脈、飛騨山脈および赤石山脈において、環境省および文化庁の許可を得てニホンライチョウから血液を採取した。栄養状態や羽毛状態に著変は認められず、すべて健常個体であると診断された。血液塗抹染色標本を光学顕微鏡下で観察したところ、78.1%(57/73個体)にLeucocytozoon sp.の感染を認めたが、他の血液原虫感染は認めなかった。検出された原虫の形態および計測値から、大陸産のライチョウに確認されているL.lovatiと同種であると判定した。感染率に性差は認めなかった。本血液原虫の血中出現率は、春から夏にかけて上昇し、夏から秋にかけて低下する傾向が観察された。ほとんどの地域個体群にロイコチトゾーン感染が確認されたが、常念岳および前常念岳の個体群には感染を認めなかった。L.lovatiのmtDNA cytb領域を解析し、各地域個体群間および他の鳥種間で塩基配列の相同性を比較検討した。南北アルプスのライチョウ間では差が認められなかったが、他の野鳥寄生のLeucocytozoon spp.との間では差が認められた。L.lovatiを媒介していると考えられる吸血昆虫を調査した。調査山域でアシマダラブユおよびウチダツノマユブユ等の生息を確認した。PCR法によりブユ体内からL.lovatiと100%相同の遺伝子断片が増幅された。このことから、L.lovatiの媒介昆虫はブユであることが強く示唆された。本研究で得られた数々の知見は、ニホンライチョウを保全する上で有用であると考える
著者
松井 美帆
出版者
防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

慢性心不全は主として高齢者の疾患であり、高齢化のさらなる進展により心不全患者の顕著な増加が見込まれている。心不全の緩和ケアについては十分に実施されているとは言い難く、医療従事者を対象とした教育が必要であるが、教育ニーズや教育効果を検討した報告はなく、研修プログラムについてもその内容は確立していない。本研究では、診断時からの心不全緩和ケアの普及へ向けた研修プログラムの効果を検討することを目的として、1)循環器病棟に勤務する看護師を対象に緩和ケアに関する教育ニーズを明らかにする、2)心不全の疾患特性を踏まえた緩和ケアについて看護師を対象とした研修プログラムを実施、その効果を検証する。
著者
大西 宏志 福本 隆司
出版者
京都芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

広島国際アニメーションフェスティバルは、ASIFA(国際アニメーションフィルム協会)の公認を得て1985年に始まり、2020年の第18回大会をもって終了した。この間、世界四大アニメーションフェスティバルの1つとして数えられるようになり、米国アカデミー賞・同アニー賞の公認映画祭にもなった。国内外からの参加者は毎回3万人に及んだ。本研究は、広島国際アニメーションフェスティバルの通史をオーラル・ヒストリーの方法を用いて記録し後世に残すこと、さらに広島大会の36年間の活動を芸術運動として捉え、その実相に迫ることを目的とする。