著者
吉田 靖
出版者
東京経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

東日本大震災後16週間の上場企業による震災関連の開示6,911件の内容と日時を分析した結果,多くの企業は投資家が必要とする情報を適時に開示するよう努めていたことを示唆するものとなった。さらにイベントスタディーの手法により、大震災後の3週間の開示への株式市場の反応を検証した結果、震災後の1週間が最も大きかった。特に、被害ありとする開示に対しては、当初はマイナスに反応しながらも数日後に反転し、調査中とする開示に対しては、マイナスの反応が被害ありよりも長く続いていた。また被災地の県別事業所率が高い企業に関しては、マイナス幅が大きく、市場は企業の属性により異なった評価をしたことが実証された。
著者
島添 貴美子
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究はNHK(日本放送協会)による日本民謡大観事業の関連資料の収集・整理を通して、民謡調査の意義と調査方法の変容の過程を明らかにするとともに、これらの変容の過程を手掛かりに民謡研究における古典的な問いである民謡の真正性を再興することを目的とする。令和2年度は以下の調査を行い、成果を発表した。①平成30年度から令和元年度にわたる音楽之友社のWEB連載「21世紀のふるさとの歌を訪ねて」をまとめて、単著『民謡とは何か?』を出版した。②これまでの調査成果の一部を、NHKラジオ「音で訪ねるニッポン時空旅」の番組の一部に使用した。③NHKから借用している日本民謡大観事業の関連資料の内容や事業運営について、事業担当者であった元NHK局員稲田正康氏とメールのやりとりによる情報収集を行った。
著者
太田 康晴 田口 昭彦 秋山 優
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

重度の糖尿病をきたすWolfram症候群は、WFS1遺伝子の変異により発症する。我々は、WFS1欠損マウスの膵β細胞において時計遺伝子ネットワークの出力部分の転写因子に異常がある(DBP活性の低下)ことを見出した。DBP活性が膵β細胞特異的に抑制されるような遺伝子改変マウスは顕著なインスリン分泌不全を伴う耐糖能障害を呈していた。正常な膵β細胞は、摂食が始まる時間に備えてインスリンが速やかに分泌されるような準備状態を作るが、DBP活性が抑制されている膵β細胞はこのような準備が出来ないことが示唆された。つまり膵β細胞における体内時計の異常はインスリン分泌不全さらには糖尿病を引き起こす可能性が高い。
著者
野口 啓子
出版者
津田塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は19世紀中葉のルネッサンス期アメリカ文学を、従来活発に行われてきた人種・階級・ジェンダーという視点からの研究に、(文学的)ナショナリズムという視座を加味して考察することで、この時代の文学的特質を横断的に検証することの可能性を探ったものであるが、その結果、このようなナショナリズムからの視座がこの時代の文学の再評価や、人種・階級・ジェンダーの区分を統合的に把握する手段として有効であることが明確となった。
著者
楯谷 一郎 楯谷 智子 樋渡 直 岸本 曜 勝野 達也
出版者
藤田医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

胃食道逆流症(GERD)では、胃酸が食道へ逆流することにより胸やけなどの症状を来すが、音声障害との強い関連が指摘されている。上皮組織は外部の刺激から深層組織を保護する機能的バリアとして働いているが、声帯上皮における接着分子の発現ならびにその役割は十分には分かっていない。本研究では、まず正常ラット声帯上皮において発現しているクローディンのサブタイプを同定してその発現部位を明らかにする。さらに胃酸による上皮バリアの傷害とその修復過程をクローディンの分子発現とバリア機能の両面から解析することで、GERDによる音声障害の発生機序を明らかにし、声帯上皮におけるバリア機構を解明する。
著者
岡市 協生 奥村 寛 井原 誠
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

いくつかの突然変異したp53遺伝子を人工的に作成し、Saos-2細胞(p53遺伝子が欠失している骨肉腫細胞)に導入した。また、コントロールとして正常p53遺伝子をLacSwitchの系を用いて細胞に導入した。これらのp53遺伝子導入細胞の放射線感受性を測定したところ、正常p53遺伝子導入細胞では、放射線感受性が高くなった。また、143A、175H、273H変異細胞では、放射線抵抗性であったが、123A変異細胞では、放射線感受性が高くなった。このことより、p53遺伝子の変異部位によって放射線感受性が異なることが分かった。また、放射線に感受性であった正常p53細胞と123A変異細胞では、放射線照射後のアポトーシスの誘導が観察されたが、放射線に抵抗性であった143A、175H、273H変異細胞では見られなかった。さらに、ウエスタンブロット法でp53を調べると、正常p53細胞と123A変異細胞において放射線によるp53の蓄積が見られが、143A、175H、273H変異細胞では、放射線によるp53の蓄積が見られなかった。そこで、正常p53細胞と123A変異細胞で、Waf-1の誘導を調べたところ正常p53細胞ではWaf-1の誘導が観察されたが、123A変異細胞では見られなかった。また、123A変異細胞では、G1停止が見られなかった。しかし、BaxとMDM2の誘導とBcl-2の減少は正常p53細胞と123A変異細胞共に観察された。また123A変異細胞ではアポトーシスが早期に起こったがこの時期に対応してFasの誘導が見られた。このことより、Waf-1はFasの誘導を制御しているのではないかと考えられた。
著者
上原 佳子 長谷川 智子 北野 華奈恵 礪波 利圭 出村 佳美 安倍 博
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

健康な成人女性を対象として,タクティールマッサージの効果を,生理的指標により検証することを目的とした,成人女性20名に,一定環境下で,同一対象者に手へのタクティールマッサージを実施する【タクティール】と,安静座位を保つ【安静】を20分間,連続した別日に行い,条件の順番は被験者によりランダムとした。生理的指標として,唾液中コルチゾール,唾液中オキシトシン,心拍変動周波数解析を用いた。その結果,タクティールマッサージは,内分泌系においてストレス反応を緩和させること,自律神経系において自律神経活動を活性化させることが明らかになった。
著者
田近 肇 片桐 直人 上田 健介 重本 達哉
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、ドイツ、オーストリア、イギリス及びイタリアの墓地埋葬法制を比較法的な観点から分析した結果を踏まえて、①わが国においても憲法13条によって葬送の自由、すなわち「死後、自らの死体(遺骨)をどのように取り扱ってほしいか」についての故人の意思を尊重すべきことが要請されると考えることができる反面で、②死者は敬意をもって葬られるべきことはわが国でも変わらないところ、③わが国では国レベルでの法令、少なくとも墓地埋葬法上はその調整に係るルールに乏しいことを確認し、そうしたルールの法制化の必要を提唱した。
著者
生田 まちよ
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

医療的ケア児の療育を第三者に委譲できず、他者の支援や社会資源の活用が少ないことで家族や社会との関係性に悪影響をきたしている母親が少なからず存在する。これは医療的ケア児と母親の関係依存による障害が要因ではないかと考えた。このアディクションの視点に立ち、犯行増加面接や共依存チェックリスト等での調査を行い、医療的ケア児と母親の関係性を解明して、療育を抱え込む母親の解き放ちのためのプログラムを開発することである。最終的には、その母親らしく、その医療的ケア児らしく、その家族らしく生活するための関係性造りに少しでも寄与することである。
著者
戸所 隆 宇根 寛 山田 晴通 鈴木 厚志 長谷川 均 川口 太郎
出版者
高崎経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

パラダイム転換を必要とする時代には、地理学を伝統的な総合的基礎科学としてだけでなく、広範な応用科学・政策科学として発展させ、社会貢献しつつ学問的に発展できる地理学に変身させる必要がある。それには、研究者養成や地理教員養成以外にも通用する資格として地域調査士を創設し、その必要性を国民各層に広報・周知させなければならない。本企画調査は地域調査士の創設を目的検討してきた。本企画調査は(社)日本地理学会企画専門委員会のメンバーで東京・群馬を中心に月一回の研究会を開催した。また、地域調査士の創設の是非やそのあり方に関して、教育・研究者の立場から(社)日本地理学会会員に、需要者の立場から地理学および関連専攻学生にアンケート調査を実施し、地域調査士を採用する立場から国や都道府県・市町村関係者、コンサルタントや観光関係などの企業関係者に聞き取り調査を行った。さらに、資格制度を先行的に導入した社会調査士認定機構等にも訪問調査した。その結果、地理学の本質を社会化する新たな資格制度の創設は、次に示す理由から社会的に意義が大きいと判明した。すなわち、(1)分権化社会への転換に伴う地理的知識や技能に基づく地域調査需要の増大(2)地理学の有用性と社会貢献を社会にアピールする認知システムの確立(3)各種資格制度創設ラッシュにおける地理学独自の資格制度の必要性(4)現代社会に必要な幅広い地理的知識を提供できる専門的人材の育成システムの構築である。以上の結論に基づき、制度設計(調査士と専門調査士・認定制度・標準カリキュラム・継続教育・更新制・学会としての講習会)や事務体制・財政的見通し、倫理規程、関連他学会との協力体制、導入スケジュールの基本を検討した。その結果、今回の企画調査によって、制度導入の道筋をつけることができ、制度導入実現に向けての次のステップに進むことができた。
著者
山田 晴通 東谷 護
出版者
東京経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、日本と米国におけるポピュラー音楽系博物館等展示施設を網羅的観点から展望し、基礎的なデータの収集を行なった。山田(2012)と山田(2013)によって、両国における展示施設の状況が、データを通した比較がある程度まで可能な形でまとめられ、日米の比較から、展示施設の規模、立地特性、展示戦略などの面における共通性と対称性が確認されたことは重要である。また、物象化、「可視化」の形態や過程には多様なものがあり、また、複数の様態をとる取り組みが相互に関連性ももちながら展開されていく中で、地域興しやまちづくりに資する社会的モメンタムが生じることが、現地における観察と聞き取りから浮き彫りになった。
著者
中川 成美
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

近代以降、日本人の海外渡航に伴う紀行文、旅行記、旅行日記などは膨大な量に及ぶ。本研究ではその堆積を基礎に、日本人が残した海外体験の実相を追及するとともに、そこには異文化への興味を媒介とする自己の相対化が断行されていたことが了解される。それはまた歴史的な事象によって変転する自身の運命との対峙ともなっている。移民や戦争によって戦地に連れ去られる兵士など、日本人が経験した多様な海外体験は膨大な記録となって積み重ねられているが、その殆どが忘れられている現状を鑑み、それらの資料の発掘と、別の視点からの照射は、あらたな文化研究を拓いていくものと考えている。
著者
志村 真幸
出版者
京都外国語短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

南方熊楠が『ネイチャー』誌に投稿したものの掲載されなかった英文論文の分析を通して、自然科学と人文科学の分離過程の時期と、どのジャンルが自然科学に残された/排除されたかを明らかにする。現在の科学というものは、どの雑誌に掲載されるかで、その論文(および著者)が所属するジャンル・分野が決定されている。『ネイチャー』は世界最高峰の科学誌であり、そこに掲載されない分野・ジャンルは、「それは自然科学ではない」と宣言されているに等しい。このような自然科学の側からの動きが、なぜ起こったのかを明らかにすることが、本研究の目的である。
著者
戸原 玄 稲次 基希 片桐 さやか
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

ヒトの腸管には多様な腸内細菌が生息し、これらの細菌は複雑な微生物生態系を形成しており、これを腸内細菌叢とよぶ。腸内細菌叢のバランスが崩れると、個体の免疫機構の異常、糖尿病など様々な疾患の発症および進展に影響することが報告されている。禁食となった患者に嚥下訓練を行うと、口腔と大腸が腸管を通じてつながっているため、経口摂取の再獲得が腸内細菌叢に影響を及ぼす可能性がある。本研究では、脳卒中によって経管栄養となった被験者に摂食嚥下訓練を行い、経口摂取と腸内細菌叢との関連を細菌学的に検討する。
著者
渕 圭吾
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

経済学における「最適課税論」の成果を租税法に応用することを目指して研究を開始した。最適課税論からの示唆に基づくいくつかの短い研究成果を公表したが,経済学の成果を応用するという大上段の議論で問題が解決するわけではなく,税制の一つ一つの制度のあり方に着目してそのあるべき制度設計を考えていく必要があることが判明した。そこで,国際課税,地方税,所得課税,等につき,個別にその制度の仕組みとそれを改善するための方策を検討し,論文を執筆した。さらに,英語での研究成果の公表を実現した。
著者
廣瀬 隆則
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

脂肪肉腫は脂肪細胞への分化を示す悪性腫瘍であり、適切な診断と治療を行う必要がある。そこで脂肪肉腫の病理診断の精度を高めることを目的に種々の検討を行った。その結果、良性と悪性の区別にはp16免疫染色が有用であること、他の悪性腫瘍との鑑別にはMDM2遺伝子の増幅やMDM2蛋白の過剰発現の証明が役立つこと、また脂肪肉腫は予想以上に周囲に浸潤する腫瘍であることなどを明らかにした。この成果に基づき、脂肪肉腫の診断精度が高まり、治療法の改善につながることが期待される。
著者
加藤 朋江
出版者
城西国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、現代日本における高年初産について聞き取り調査と文献を用いてその実態を明らかにするものである。聞き取り調査では(1)対象者に高年初産が選択される背景が多様であること、(2)対象者の年齢に対する意識が近年において変化していること、(3)対象者が考える高齢出産のメリットとデメリットについて考察した。文献調査では(1)高年初産のリスクとされることが年代ごとに変容していること、(2)かつては若い女性たちにとって特別なものであった高年初産が現在ではいつか選択するかもしれないことに変化していること、(3)高年初産・高齢出産に対する差別的な意識について分析した。
著者
犬飼 朋恵 河原 純一郎
出版者
神戸親和女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では,注意制御機能を中心とした認知機能の男女差にテストステロンが及ぼす影響について調べた。テストステロンの分泌量は,人差し指と薬指の長さ比及び唾液から測定した。認知課題には,男性優位とされる非標的に紛れた標的を報告する時間的探索課題と心的回転課題,実際の動きと反転してディスプレイに呈示されるマウスの軌跡を見ながら指定された英数字を辿るマウス反転課題の3つを用いた。実験の結果,指の長さ比と心的回転課題の成績との間に相関が認められた。唾液中のテストステロンの分泌量と3つ課題の成績には相関が認められなかった。このことから,テストステロンが認知機能に及ぼす影響は限定的であることが示唆された。