著者
小出 慶一
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

出現頻度の高い日本語のフィラー「あのー」「そのー」「このー」「こう」「まあ」「もう」「なんか」「で」「えーと」「えー」及び母音延引形フィラーについて、話し言葉コーパスを利用して出現実態を調査し、それぞれのフィラーが談話行動においてどのような役割を果たしているかを記述した。また、フィラーには、指示詞、副詞などから派生したものと、フィラー専用のものがあるが、それぞれに異なる役割を持つことも明らかにした。
著者
鈴木 哲也 大木 明子
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は摂食・嚥下障害患者に対して用いられる舌接触補助床(PAP)のメカニズムを調べることを目的としている。健康な成人に5mmの厚さのスプリントを装着させ、実験的に固有口腔を拡大した。PAPの装着による効果を、水およびゼリー嚥下時の口蓋に対する舌圧から検討した。スプリントを装着することで舌圧が低下した被験者が、PAPを装着することで舌圧の増加が認められた。PAPは舌と口蓋の接触が損なわれた患者に対して有効であることが示唆された。
著者
小柳 春一郎
出版者
獨協大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

日本の境界法理は,地籍境界を重視している。境界確定訴訟が筆界を明らかにし,地籍調査も地租改正にさかのぼる原始筆界の復興を目指す。問題は,地籍境界=筆界と所有権界との有機的関連がないこと,特に合意による解決が難しいことである。本研究は,フランス法では土地所有権界を中心とした境界法理があること,その境界確定訴訟は土地所有権界を明らかにするものであること,ナポレオン地籍に始まるフランスの地籍は,税の根拠となる点が中心であることを解明した。日本法においても土地所有権界を中心とした法理への転換の必要である。その際には,土地家屋調査士が,合意と筆界を結びつける役割を果たしうる。
著者
水島 郁子 山下 眞弘 木村 敦子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

中小企業が事業承継をする際には、当該企業、その経営者や親族の利益であったり、税制上の利得が、優先されがちである。しかし、事業承継を円滑に行うには、創業者によって築かれた中小企業秩序を尊重し労使双方の利益に配慮することも必要である。本研究では労働法、会社法、家族法の観点から、法人格否認の法理、詐害行為取消権、会社分割など、法交錯領域のテーマの検討を行った。研究会を14回開催し、実務家との積極的な意見交換も行った。
著者
関村 誠
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

プロティノスにおけるアイステーシスの機能の明確化とその意味づけに努め、アイステーシス論が哲学的思索の中に組み込まれていることを示した。感性的な諸局面の議論に関して、プロティノスがプラトン思想をいかに解釈して引き継ぎ、あるいはいかに独自展開しているかを、両哲学者のテクスト批判を遂行して見極めることを試みた。その結果、アイステーシスのある種の働きが「判断」に連係して哲学構造に組み込まれて、感性と知性とを結びつける積極的な面をもつことを示すことができた。
著者
岡崎 彰 栗原 淳一 益田 裕充
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、デジタルコンテンツと理科室のモデル実験とを有機的に結び付けた教材を開発し、新たな視点から展開する天文学習指導プログラムを提案することである。当初の研究実施計画では、(1)「月の満ち欠け」と(2)「日食と月食」で教材開発とそれに基づく天文学習指導プログラムの開発、(3)「太陽の年周運動」と(4)「惑星の動き」で実際に観測された動画や画像を用いた教材開発をテーマに取り組むこととした。(1)「月の満ち欠け」では、月と太陽の離角を媒介として実際の観察結果とモデル実験とを有機的に結び付ける教材と学習プログラムを開発し、公立中学校で授業実践を行った。生徒の理解度の調査・分析の結果、開発した授業が学習内容の理解を促し、その定着を図る上で有効であり、観察記録とモデル実験結果の関連付けを図る上でも有効であることを明らかにした。(2)「日食と月食」では、予備的に開発した教材を用いて公立中学校でモデル実験の授業実践を行い、また、平成24年5月の金環日食では大学内で事前説明会と観察会を実施した。教材の改良と学習プログラムは期間内に完成していないが、本物の日食や月食とモデル教材との結びつきを生徒に実感させることの重要性やモデル教材の作成上の留意点等を考察した。(3)「太陽の年周運動」と(4)「惑星の動き」については、研究期間の短縮もあり次のように統合した形で進めた。恒星に対する太陽や惑星の動きを直接に観察できる素材として太陽観測衛星が太陽と惑星と恒星を同一視野に撮影した実写動画(NASAが公開)に着目し、中学校授業「太陽の年周運動」での利用の有効性を実践例に基づいて論じ、さらに高校地学の探究活動として、この動画を教材とする「合」付近での「惑星の動き」の具体例を提案した。このほか、関連研究として、天球の内側からと外側からとの視点移動を支援する実験用モデル教材作成についても考察した。
著者
藤本 高志 德永 光俊 渡邉 正英
出版者
大阪経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

離島経済を対象に,(1)n種類の産業から成る地域経済の所得決定をモデル化し,(2)ノンサーベィ法による地域産業連関表の推計手法を開発し,(3)それらを活用し,離島の地域所得を,中央政府の直接支出・移転支出,地域外からの純所得受取,移出,所得に依存しない消費・投資,が誘発する所得に分解し,離島経済自立の可能性を探るとともに,(4)離島経済の特徴とその形成要因を定量分析した.また, (5)離島の移出基盤産業である砂糖産業が離島地域内に生み出す所得を評価するとともに,(6)国産砂糖を守ることに対する人々の支払意思額を,表明選好法により推定した.
著者
田中エリス 伸枝
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究はブレンデッドラーニングを教場とした第2言語(L2)学習者の話者のスピーチサンプルを分析する上で重要な点を明らかにした。始めに、本研究は語学クラスの企画者の意向と クラス内の実際のアクティビティの関係をActor-Network Theoryによって明らかにすることができた。また、学習者がブレンデッドラーニング教場でどのようにタスクを遂行するためにテクノロジーを使用したか明らかにした。最後に今までのCAF(複雑さ、正確さ、流暢さ)の測り方では第2言語レベルの低い学習者のスピーチは測るのは難しかったが、本研究ではhierarchical C-Unitという方法を作り測ることに成功した。
著者
中谷 純江 小松 久恵 豊山 亜季
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、インドを代表する産業資本家として知られる「マールワーリー」に焦点をあてて、南アジア地域社会を捉えなおした。これまでのマールワーリーについての研究は、彼らの経済的成功の理由、経済組織の特徴について論じるものが多く、地域社会の歴史的コンテキストに位置づけて彼らを理解する視点が欠けてきた。本研究はマールワーリーの出身社会(ラージャスターンの商業町)を拠点に、移住商人の集団マールワーリーのアイデンティティや表象について明らかにした。
著者
相馬 充 上田 暁俊 谷川 清隆
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

日本・中国・韓国・インド・越南に残る日食や星食の古記録を調査し,それらを用いて紀元1000年までの地球自転角パラメータの値ΔTと月潮汐加速項の決定を行った.また,日本で9世紀からの800年余にわたり使用された宣明暦について具体的な計算方法を調査し,問題点を明らかにした.日食や星食の予報を正確に計算するため,日本の月周回衛星「かぐや」とアメリカNASAの月周回衛星LROによる精密月地形データを使って月縁の凹凸の効果を計算する計算機プログラムを完成させ,実際の予報に役立てた.
著者
宮内 弘
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ラーキンを中心に、イェイツ、ハーディ、ヒーニー,テッド・ヒューズなどの詩作品に見られる形式、すなわち押韻形式、韻律、統語法などを分析し、これらの詩人が使用した形式が、彼らの個々の詩の内容を反映していることを実証した。次にこの研究をふまえて、上述の詩人の作品の際だった特質であると考えられる「重ね合わせ」と「埋め込み」の技法を、特に形式と内容との関係に注意を払いながら、考察した。
著者
阿部 裕之
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

多角形の柱型の花器などを、図面から金属冶具を設計しアルミニウムの金型を製作する。実用寸法を考え大きさを設定する。図面をもとに制作したアルミニウムの金型の種類と大きさは、次のとおりである。450×225×h225(mm)長方形、300×300×h300(mm)正方形、おおよその直径140×h300~h500(mm)の寸法内に分類される、3、5、7、8、9、10角柱である。更に、水盤などに応用できる、大型の径の金型を設計する。図面をもとに制作したアルミニウムの金型の種類とおおよその大きさは、次のとおりである。おおよその直径430×h300(mm)の寸法内に分類される、5、7、8、9、10角柱である
著者
清原 泰治
出版者
高知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

1950年代、「昭和の大合併」後、地域住民の融和を図ることを目的に、市町村民運動会が開始された。県行政は、運動会で実施する種目を提案したり、自治体に配置した体育指導委員に運営を担わせるなど、市町村民運動会の開催を推進した。初期の段階では、地区対抗方式による運営方法のために、住民間の対抗意識が助長され、トラブルが問題となる。主催者は、トラブルを防ぐために、娯楽性の強い種目を取り入れたり、採点方法を工夫するなどして、円滑な実施を図った。このような運営上の工夫もあって、この時期に市町村民運動会は地域に定着する。
著者
灘本 明代 熊本 忠彦
出版者
甲南大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

非定常的感情分析として,TwitterとSNSを対象とし,感情分析を行った.具体的には,(1)Twitter感情分析用感情語辞書の構築(2)Twitter上で用いられている顔文字の感情及びその役割に着目した,顔文字付きツイートの感情値抽出手法の提案,(3)Twitter用の感情軸の決定,(4)SNSからの耳より情報抽出手法の提案を行った.研究成果として,国際会議査読付き6本,国内査読付き1本,国内会議15本,論文誌3本の論文と書籍1編(分担)を発表した.
著者
猪井 新一
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

茨城県内の公立小学校8校(児童1524人、指導者46人)に協力をいただき,授業参観ならびに,外国語活動に関わるアンケート調査を実施した。主に5,6年生の児童及びその学級担任のデータを分析、両者の相関関係の有無を分析した。結果,児童の外国語(英語)や英語授業の好意度,英語学習意欲,活動に対する自信の程度,及び学級担任の英語や英語授業の好意度,満足度,英語教員免許有無の有無等の間には何ら関係性はみられなかった。これはTTによる外国語活動の授業において,ほとんどのHRTが主指導者として授業を展開していないことによるものである。
著者
岡本 真一郎 OKAMOTO Shinichiro
出版者
愛知学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

言語表現の状況的使い分けに関して体系的な枠組を得るため,社会心理学的な見地から実証的な研究を行った.主として,状況要因を独立変数として操作して言語反応等を従属変数とする実験的手法を用いた.これに加えて,結果のエコロジカルバリディティを確認するため,録音した会話やシナリオに現れた会話を分析して,事例的に検討したり,可能な場合は定量的に分析する方法でも研究を進めた.具体的な研究内容は以下の通りである.1. 感謝表現に関して,質問紙を用い状況要因を独立変数とした実験的研究をいくつかの観点から行い,実験結果を分散分析や重回帰分析等により解析することにより,感謝型と謝罪型の表現の使い分けに関与する諸要因の影響について全体的な考察を試みた.英語(英国)での感謝の表現の使い分けのとの比較・検討も行った.2. 対人配慮に関わる他の諸表現についても状況要因との関わりを検討した.具体的には「ごくろうさま」,「おつかれさま」,「たいへんでしたね」等のねぎらい表現,「失礼しました」等の謝罪表現,「そうです」,「いいです」等の評価的応答表現を扱った.3. さまざまの言語表現の使い分けに対する聞き手の反応を実験的に検討した.4. これまでに知見が得られた対人配慮表現に関して,日本語における状況と表現の関わりについて,従来の日本語の敬語に関する先行研究や欧米の諸研究もふまえて包括的なモデルを検討した.今後は4で示したモデルを修正発展させる中で,日本語の対人配慮表現を状況と関連づけて体系的に整理していくことを計画している.その際,他の言語における知見と比較して日本語の場合の特徴を明らかにするとともに,対人配慮の普遍性についても考察を進める予定である.
著者
赤倉 泉
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

中国で1957年に起こった整風運動と反右派闘争について、以下の点を中心に全体像や含意を明らかにした。①一連の過程はどのように進められたか、②現在につながる民主化要求につながる論点の分析、③「右派」の分類、処分、名誉回復の実態、④1957年の事例を基に、その後の民主化運動と比較する事で一党支配下における民主化のメカニズムと限界を考察、⑤名誉回復された元「右派」たちが現在起こしている損害賠償請求の実態とその含意、⑥50年以上前の反右派闘争および「右派」は現在の中国政治にどのような影響を及ぼし続けているか。
著者
中園 眞人 山本 幸子
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

民家活用施設の場合には、用途に応じた平面計画・設備計画のみでなく、耐震診断・補強設計を計画・設計段階で位置づけることが必要で,専門家を含めた計画策定組織を設立し耐震補強の重要性の理解を共有することが重要課題である。設計段階では平面計画と耐震補強設計の整合性を担保すると同時に、設備設計を含めたコスト分析が重要で、施工段階では工期の短縮と施工手間の削減を行うことが重要である。基幹施設と民家活用型の小規模施設のネットワーク形成により、利用圏分担効果・送迎時間削減効果・機能分担効果に加え経営採算補填効果が確認され、過疎地域における高齢者デイサービス施設整備の有効な方法として位置付けられた。基幹施設は介護度の高い利用者にも対応可能な空間機能を有し、的確なサービスが提供されており、民家を改修した小規模施設では、介護度の低い利用者が中心であるが、職員の空間利用と介助の工夫によりデイサービス施設として有効に機能していることが確認された。
著者
佐伯 聡史
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

鉄棒運動のけ上がりは、専門的なトレーニングを行えば、6、7歳で習得可能である。しかし、学校教育現場では習得することは非常に難しいとされている。本研究は、鉄棒運動のけ上がりの習得を促す効果があると期待される、筆者によって特許取得済みの「鉄棒練習具」を使用して、初等教育(小学生)、中等教育(中学生)、高等教育(大学生)の各カテゴリーで実験が行われ、その効果と適時性についての検証を行った。初等、中等教育では運動改善が見られたものの、その効果は限定的であり、短期間でのけ上がりの習得には至らなかった。しかし高等教育においてはけ上がりの習得に直結する運動改善が見られたことから、一定の効果が確認された。
著者
羽生 浩一
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ノーベル平和賞が創設された背景に、19世紀における欧米の民主主義、民族主義の隆盛が存在した。時代の混乱と新しい価値観への希求が「平和」という概念を醸成した。平和の概念を広く伝える役割(PR)としてのノーベル平和賞の創設であった。ノーベル平和賞は20世紀の2つの世界大戦、およびその後の冷戦を経て、「欧米の平和賞」から「世界の平和賞」へと賞の意味や役割を、戦略的に変えてきた。ノーベル平和賞は、戦争や紛争を解決はしないが、注目すべき問題がそこにあることに人々の関心を集めさせる。武力を行使せずとも、広報外交的な役割で平和に貢献することが可能であることを示してきたのである。