著者
浅沼 照雄 小野田 信春
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

n次元複素空間上n個のn変数多項式により定義される多項式写像はそのヤコビアンが零でない定数ならば同型写像になる、という予想はヤコビアン予想といわれ、2以上のnについて未解決問題となっている。本研究はこの予想について2変数の場合に代数学的、位相幾何学的立場から研究を進めとくに予想と同値ないくつかの具体的な条件をあたえた。
著者
青木 一雄 牧野 芳大 鄭 奎城 勝亦 百合子
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ド国サントドミンゴ市の小児(15歳未満)1,031人(男性505人、女性526人)に対し、上部消化管に関する健康調査を実施し、以下の(1)~(5)の結果を得た。(1)ド国小児のH.pylori感染率は、6-10歳において男女間で有意差(p<0.01)が認められたが、他の年齢階級においては、男女間で有意な差は認められなかった。また、慢性萎縮性胃炎(CAG)有病率は、どの年齢階級においても有意な差は認められなかった。小児の男性、女性ともに、加齢とともにH.pylori感染率は増加していたが、CAG有病率は、男性、女性ともに加齢変化は認められなかった。(2)ド国小児のH.pylori菌の病原性の指標になるCagA抗体の陽性率は、男性、女性とも加齢とともに増加していた。また、全体(男性、女性合計)で陽性者、強陽性者の合計は、0-2歳;0.143,3-5歳;0.210,6-10歳;0.356,11-15歳;0.480と加齢とともに有意(p<0.01)に増加していた。(3)H.pylori感染リスクをロジスティック回帰分析で検討した結果、自覚症状として下痢を有していた小児は、同症状を有していない小児に比し、1.6倍高く、男児は女児に比し1.5倍高かった。また、小児の年齢、同居している小児の人数、及び血清ガストリン値は、それぞれ、年齢が1歳高くなるとH.pylori感染のリスクは1.3倍、同居している小児の人数がひとり増えるとそのリスクは1.2倍、さらに血清ガストリン値が1pg/ml増加するとリスクは1.008倍になっていた。(4)CAGのリスクをロジスティック回帰分析で検討した結果、H.pylori感染者では、非感染者に比し2.7倍高かった。また、H.pylori菌の病原性と関与するCagA抗体の多寡もCAGのリスクを2.1倍高め、血清ガストリン値の上昇(1pg/ml)は、CAGのリスクを1.006倍高めていた。(5)H.pylori感染とCagA抗体陽性率の関連性の検討において、男性においては、H.pylori感染者のCagA抗体陽性率は、陽性者、強陽性者を併せて0.883であり、女性においてのそれは0.901であった。また、H.pylori感染の有無別のCagA抗体陽性率は、男女間で有意な差は認められなかった。
著者
高橋 肇 神野 裕信 西村 努
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

西日本生態型品種は、山口の環境条件下において高い光合成生産能力を維持することができ、稈に蓄積した貯蔵養分をもあわせて利用することで登熟中盤からの子実生長速度を高く保つことで粒重を重くして収量性を高めることを明らかにした。さらに、西日本生態型品種は、粒数を多く着生することで植物体の光合成能力を高める優性形質を有しており、このため山口のような環境条件下でも一定の収量を確保することができるものと考えた。
著者
瀧澤 透
出版者
八戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

人口動態死亡票の記載内容を調査集計することで、自殺死亡における精神疾患の実態を明らかにすることを目的とした。調査対象は平成20年人口動態統計の自殺死亡30229人であり、方法は目的外使用による死亡票閲覧であった。その結果、なんらかの精神疾患の記載があった者は、確認ができた29799人中2964人であった。主な記載は、認知症55人、統合失調症550人、躁うつ病101人、うつ病1913人であった。
著者
三木 直大 池上 貞子 佐藤 普美子 松浦 恆雄
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

連携研究者と協力して台湾現代詩研究会を組織し、以下のふたつを大きな柱として共同研究をすすめた。(1)台湾現代詩の研究と翻訳紹介については、研究代表者を編集委員として、台湾現代詩人シリーズ 5 冊の翻訳詩集を詳細な解説と詩人年表を付して出版した。(2)台湾から詩人・研究者を招聘し、日本の詩人にも参加を依頼しての研究会を5回開催し、そこでの成果を公表するとともに、今後の台湾現代詩研究の基礎を提供した。
著者
高田 康民
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

通常のグリーン関数法と密度汎関数超伝導理論(SCDFT)との対応を考え、SCDFTにおける対形成ポテンシャルの新汎関数形を構成し、それを用いて擬クーロンポテンシャルの決定を含めて超伝導転移温度を第一原理的に計算する枠組みを提案した。また、それをグラファイト層間化合物に適用し、その超伝導機構を明確にした。さらに、この物質系も含めて、高温超伝導体合成に向けて理論的観点から思索し、強いフォノン媒介引力とクーロン斥力との相殺系の重要性を示唆した。
著者
紀平 知樹 浜渦 辰二 大北 全俊
出版者
兵庫医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究課題は、環境問題とケアの問題は相互に独立した問題ではなく、むしろ共通の根をもつものであるという観点から、新たな社会のあり方を模索することを目的としていた。そのために生産志向の社会から定常型社会へ、そして生産へと方向付けられたケアから新たなケアのあり方について検討することを課題としていた。本研究では、定常型社会において、生産活動に対して一定の制約を課すために強い予防原則が必要であることを明らかにした。またケアについては、ケアを支える健康に関する政策、特にヘルスプロモーションの意味について問い直す必要があることを明らかにした。
著者
田代 久美
出版者
宮城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

都市戦略として「子ども・青少年にやさしいまちづくり(CFC)」を成功させている海外の都市を調査したところ、ユニセフが掲げる9つのCFC基本条件を元に行政内の横断的連携体制があり、子ども・若者の参画を地域の大人も支えていた。CFCの導入により地域全体が活性化している。日本で実施するためには、国際的な基準を踏まえつつも、日本の社会システムにあった評価スケールの開発や国内ネットワークの整備などが必要である。
著者
家高 洋
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

ドイツの哲学者ガダマーは、理解を「問いと答えの弁証法」とみなした。ガダマーの考察に基づいて、本研究は、まず理解における言語の役割(媒体としての言語)を明らかにした。それから、理解を、言語に基づいた「問いと答えの弁証法」と考えることによって、(看護研究等の)質的な研究の前提と主題が、言語性と意味であることを示した。さらに、哲学カフェという「問いと答えの弁証法」の実践において、この弁証法の具体的なあり方を調査した。
著者
丸山 千賀子
出版者
金城学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

消費者庁の創設により、消費者政策も新しい局面を迎えることになった。そこで、本研究では、新しい消費者政策における消費者団体と企業の役割について、先進諸国との比較をしながらまとめた。海外調査は、アメリカ、フランス、オランダの主要な消費者団体、行政機関、事業者団体や企業を対象として行った。主な研究成果は、消費者政策の変革における消費者団体の態様の変化や最近の特徴、今後の発展といった観点からまとめた。
著者
村松 潤一 柯 麗華
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

中国において日本型自動車流通システムは高く評価されている。本研究は、その背景と実態を中国の自動車産業政策及び自動車流通政策に焦点をあて、日系企業の戦略行動との関係から検討した。それによれば、中国の政策は、第1に日本型自動車流通システムの普及、第2に意図しない差異という重要な変化をもたらした。そして、この意図しない差異には、ふたつの自動車流通システムへの参画及び卸売り機能の外部化が含まれている。
著者
保田 和則
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

微小流路内における流れによって誘起される高分子流体の内部構造変化について調べた。この測定のために独自の光学系を構成し,微小流路内において100μmステップの高い空間分解能で複屈折を測定することができた。また,速度分布も測定した。複屈折は流動による内部構造の変化と密接に結びついているので,複屈折分布と速度分布を知ることで,流動による構造変化を定量的に知ることができた。流れ場として微小円柱まわりの流れと急縮小流れとを取り上げた。その結果,円柱上流部の減速流れ場では円柱に近づくにつれて高分子の分子配向が流れと直交する方向に向くことで,いったん配向の程度が低下するが,円柱のすぐ上流部で高い配向度を示した。それに対し,下流部の伸長流れ場では下流に流れるにつれ配向度が急激に上昇し,内部構造の変化が伸長流れ場に大きく影響されることが明らかとなった。微小領域において光学的測定により流動誘起構造の変化を明らかにしたことはたいへん重要である。次に,ナノスケールの微細繊維からなるバクテリアセルロース(以下ではBCと称す)を分散させた流体の流路内流れについて検討した。4:1の急縮小部を有する矩形断面の流路内における流れを可視化し速度分布を計測した。急縮小部から十分に上流にある位置では,グリセリンは放物線状の速度分布を示すが,BC流体では中央部が平らになったプラグフローに近い速度分布となった。またBCの濃度が上昇すると,さらに台形に近い速度分布となった。また,急縮小部でも同様の傾向が見られた。急縮小部の上流角部に生じる循環二次流れの流れ方向の大きさを調べた。その結果,BC流体ではグリセリンよりも大きな渦となり,またBCの濃度が上昇するとともに渦も大きくなった。これはBC流体の伸長粘度特性に起因する現象であると考えられる。この研究ではナノファイバー分散流体の流動を初めて明らかにした点で重要な結果を得た。
著者
佐藤 茂 森田 重人
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

カーネーションでは,雌ずいで生成するエチレンが花の老化の「スターターエチレン」として働いている.本研究では,雌ずいのエチレン生成誘導因子がアブシシン酸(ABA)であることを,切り花の寿命の異なる3品種のカーネーションを用いてABA含量の変動,及びABA生合成と作用の鍵遺伝子の発現を調べて実証した.また,開花と老化を制御する薬剤の作用の解析を行い,ピリジンジカルボン酸が,スプレーカーネーションの老化を抑制すると共に蕾の開花を速めること,および本来開花せずに寿命を終わる蕾の開花を誘導することを発見し,この薬剤を「夢の薬剤」として提案した.
著者
新田 玲子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009-04-01

ポストモダンの作家は、現実の芸術化に過度に傾き、歴史的・社会的関心や道徳的責任が欠如しているとされてきたが、ホロコーストの影響を強く受けたポストモダンのユダヤ系作家は、同様の影響を受けたポストモダンの哲学者が見せる、ホロコーストの悲劇を繰り返さない未来を思考する姿勢と、そのために必要とされる他者意識を共有していることを明らかにした。そして、これらポストモダンユダヤ系アメリカ作家の文字芸術の特徴を精査すると共に、彼らのポストモダンヒューマニズムの特徴を定義した。
著者
綾野 誠紀
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本科研プロジェクトでは、日本語、中国語、タイ語の受動文の統語構造について検討した。日本語の受動文については、直接受動文、間接受動文、所有受動文の統語構造について考察した結果、直接受動文と所有受動文の派生に関しては、動詞句内からの名詞句移動が関与するのに対し、間接受動文には関与しないことを支持する新たな証拠を提示した。中国語とタイ語の受動文については、派生に独立受動形態素が関与するものについて検討し、それらの形態素の統語特性について、日本語の束縛受動形態素の統語特性との比較対象も行いつつ明らかにした。
著者
佐野 可寸志 ウイスニー ウイセットジンダワット
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

事業所の立地においては、立地場所固有の属性だけでなく、空間効果の影響も大きいが、これまで十分な研究の蓄積されていない。本研究ではまず、独自の調査データに、因子分析と強分散構造分析を適用し、事業所の移転要因を抽出した。次に、Mixed Logit Modelを用いて空間効果を考慮した事業所の立地選択モデルを構築し、空間効果の影響を定量的に把握した。東京都市圏物資流動調査データを用いてモデルのパラメータを推定した結果、通常の立地選択モデルで用いられる地価や交通のアクセスビリティーの要因に加えて、確定項における企業立地相関や、誤差項におけるゾーン間の空間相関が、立地選択に影響を与えていることが分かり、空間効果を考慮することの重要性を示すことができた。
著者
杉本 貴志
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

現在急速に事業の統合・広域化を進める消費者生活協同組合がいかなる課題を抱えているか、日本とイギリスの生協について現地調査と理論的考察を進めることにより、「非営利・協同」の事業体として独自の存在意義を訴えることに成功することができたならば、こうした統合化は流通業界におけるユニークで強力な事業体に生活協同組合を発展させ得るものであることを確認することができた。しかしそれは同時に、組合員の「参画型民主主義」という生協本来の価値を揺るがしかねないものでもあって、その解決のためには「ステークホルダー民主主義」のモデルを模索し、確立することが、今何よりももとめられていることを論じ、考察した。
著者
池田 順子 河本 直樹
出版者
京都文教短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

平成13年度は、以下の通り進行した。(1)中学生を対象者とした10年間のデータファイルを用いて「食生活、生活状況と健康の10年間の推移」について検討した。10年間での対象者数は6477人であり、データファイルに入力した項目は食生活、生活状況、健康状況に関する約130項目であるが、それらから現状を把握・評価するための各種指標を算出したので、解析項目としては約200項目となる。(2)10年間の推移として見いだせた概要は以下の通りである。◇身長には増減は見られなかったが、体重は3年男女で増加傾向が見られ、その結果として、肥満度にも3年男女では増加傾向が見られた。◇血清総コレステロールは2年女子(増加)と3年男子(低下)以外では増減は見られなかったが、HDLコレステロールは全学年で増加傾向が、動脈硬化指数は全学年で低下傾向が見られた。◇睡眠時間は2年女、3年男女で短縮傾向が見られた。◇生活状況では、テレビを3時間以上見る割合が増加傾向であり、1年男女では家での勉強時間の少ない割合が増加傾向であった。◇食生活の取り方では、殆どの学年で共通して認められたのは果実類の摂取頻度の低下傾向と乳類の摂取頻度の増加傾向であった。食べ方では、男子の弁当持参の割合が全学年で増加傾向を示したのみであった。(3)「健康に生活や食生活がどの様に関与しているか」について検討した結果及び、「健康の推移に生活や食生活がどの様に関与しているか」ついて検討した結果と今回得られた結果を総合して検討し、中学生のための指導指針を考案しリーフレット(A2大用紙4つ折りでカラー印刷)に仕上げた。
著者
加井 久雄
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は,原則主義に基づくIFRSの影響が日本企業の単体財務諸表に影響を与える影響を連単分離によって遮断しようとしても上手くいかない条件を数理モデル分析によって明らかにした。具体的には,原則主義であるがために経営者が利益操作を行ないやすいならば,相対的に利益操作されにくい単体財務諸表を投資家は利用することや,子会社を使った親会社の利益管理が容易であるほど,株主と経営者の利害対立の緩和に連結財務諸表の方が有用であることなどを厳密に示した。これらの成果を学会などで報告すると共に,学術誌にも公表した。
著者
濱田 奈保子 中田 絵里子
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

鮮度指標K値と積算温度に基づく非破壊の鮮度評価および管理ツールとして、従来のMTT型に加え、WST-3型BTMを開発した。食品のトレーサビリティに導入するにあたり、MTT型BTMおよびWST-3型BTMの発色に伴い生成される色素成分についてin vivoマウス経口投与試験により安全性を確認した。BTMによる鮮度の可視化が可能な魚について,両BTMの発色度から生可食期限(消費期限)を求めたデータベースを作成した。