著者
林野 友紀 高遠 徳尚
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

木曾シュミット望遠鏡の広視野(50文角×50文角)2Kccdカメラにおいて、本課題で購入した狭帯域(NB)・中帯域(MB)フィルターシステムを用いて撮像観測を行ない、低分散分光サーベイを行なってきた。平成9年度はNB(BW【approximately equal】200Å、CW=4300〜5550Å)9バンドを中心にクェーサー(QSO)輝線サーベイを行ない、V<20.6等級の約5,000天体の中から、赤方偏移z=2.4〜3.6のQSO候補7個を見出した。平成10、11年度は、長波長測に設定したMB(BW【approximately equal】450Å、CW=5750〜7950Å)6個の天体のR(波長分解能)【approximately equal】15分光データから、z【approximately equal】4銀河候補を10個見出した。これらのhigh z 銀河候補は、スペクトルの長波長側がフラットで、6200ないし6610 Aバンドの短波長側が約1等級暗くなっており、更にBバンドが非常に暗いという特徴を備えるもので、z>4の星生成の活発な若い銀河に特有のスペクトルである。なお、木曾で行なった本課題のNB/MBフィルターサーベイの経験は、すばる望遠鏡主焦点用R23フィルターシステムの設計製作に反映されており、更に今後のすばるNBサーベイ観測・解析においてもその経験を活かすことが期待される。
著者
鈴木 博之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

ジョサイア・コンドルは明治期最大の貢献をした御雇外国人建築家である。彼の活動は明治洋風建築の確立に極めて大きな役割を果たした。コンドルの作品は明治洋風建築史上、重要なものばかりである。この研究ではじめて明らかにされた彼の書簡群は、コンドルの多面的な活動を明らかにするものであった。書簡は三菱系のひとびととのあいだに交わされたもので、静嘉堂文庫の原徳三氏の収集によるものである。この書簡群は大きく3つの発動分野にまたがっている。ひとつは岩崎家との関係で繰り広げられる建築家としての活動である。岩崎彌之助と岩崎久彌の邸宅関係の書簡が多く発見された。彼の実務的側面が明らかになったことは大きな成果であった。建築設計のあり方を示す指示や相談が数多く示されている。つぎに明らかにされたのは、建築設計にともなう絵画の収集や配置に関する活動と助言である。後に首相になる加藤高明が、岩崎家の女婿としてロンドンで絵画の買い付けを行なっている様子は、極めて興味深い。同時にこれは、当時の建築家が建築のみならず、建築の使い方、生活様式まで準備する存在であったことを教えてくれる。さらに第三点は、コンドルの趣味である演劇活動の側面である。当時の外国人社会の有り様もまたここに窺われる。明治期の建築・社会・文化の状況を明らかにすることができた研究であった。この成果は2006年にジョサイア・コンドルの本格的評伝としてまとめる予定である。
著者
齊藤 貢 松本 文雄
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

東日本大震災で大量に発生した瓦礫が風により飛散することが予想され、飛散粉じん中の有害物質による周辺住民への健康影響が危惧された。本研究では、瓦礫処理場からの飛散粉じん状況を調査するため、ミクロ繊維シート捕集材による多点モニタリングを実施し、GISを用いて飛散粉じ量および有害物質の分布状況を可視化した。さらに、瓦礫飛散粉じんによる健康リスク度の評価を行った。継続モニタリングの結果、大気環境状況は、平成26年度の瓦礫処理作業終了後には周辺地域と同程度にまで回復され、周辺地域への健康リスク度は低いことが考察された。
著者
石橋 勇人 松浦 敏雄 安倍 広多 郭 仕祥
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は,3G/LTE/WiMAXのような遠距離向けの通信方式と,Wi-FiやBluetoothのような近距離向けの通信方式の両方が使用可能な携帯端末(スマートフォンなど)を対象とし,近隣に存在する携帯端末間で自律的に協調動作を行うことによって,通信回線やバッテリなどの携帯端末のリソースを全体として効率的に利用可能とする方式を提案している.
著者
森 良次
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

18世紀後半以降の西ヨーロッパで進行した継続的人口増加を背景に、バーデン、ビュルテンベルクでは農村の中小産業経営の窮乏化がすすみ、前三月革命期の深刻な社会問題をなしていた。工場制工業からの競争圧力(時計産業においては「アメリカの脅威」)は、こうした事態をさらに悪化させ、これが両政府による産業振興政策発動の契機となった。産業振興政策は、中小産業経営を保全するために、新技術の導入や職業技術教育を通じてその経営的上昇を促そうとするものであった。
著者
元兼 正浩 佐々木 正徳 楊 川 田中 光晴 大竹 晋吾 雪丸 武彦 山下 顕史 李 〓輝 波多江 俊介 金子 研太 畑中 大路 清水 良彦 呉 会利 前田 晴男 李 恵敬
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

我が国においても校長の養成システムには高い関心が寄せられるようになった。だが、校長人事研究は十分に進展しておらず、実務レベルでも行政が大学の諸資源を活用せずにシステム改革の方向を模索している状況にある。したがって、「大学と教育委員会の協働による校長人事・養成システム」をすすめている諸外国(たとえば大韓民国)の事例に学ぶとともに、日本でのシステム構築に資するような校長人事を実証するための研究方法について考察した。
著者
飯倉 道雄 吉岡 亨 樺澤 康夫
出版者
日本工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

昨今、携帯電話などのモバイル機器が広く普及している。携帯電話にはメールの機能があり、携帯電話型の文字入力装置で文章を書くのが巧みな携帯電話ユーザも多い。そこで、コンピュータへの文字入力装置として、携帯電話型文字入力装置の利用の可能性について調査し、携帯電話型文字入力装置の文字入力練習システムを開発した。コンピュータへの携帯電話型文字入力装置の適用性について検討したので報告する。
著者
酒井 治己 高橋 洋 松浦 啓一 西田 睦 山野上 祐介 土井 啓行
出版者
独立行政法人水産大学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ミトコンドリアDNA全塩基配列に基づき、フグ目の硬骨魚種中での系統類縁関係,フグ目内系統類縁関係,及びトラフグ属内系統類縁関係を明らかにした。さらに,AFLP解析によりトラフグ属主要9種の雑種解析を行なった。トラフグとカラスフグを除く各種は明瞭に識別でき、さらに複数マーカーによって雑種の判別も可能で、解析したほとんどの雑種個体(47個体中46個体)が雑種第一代であった。種判別の可能なAFLPマーカーに基づき、それを特異的に増幅するプライマー開発に向けて研究を継続中である。
著者
増山 豊 深澤 塔一 桜井 晃
出版者
金沢工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

我が国を代表する弁才型帆船の帆走性能を明らかにする一環として、帆船として特に重要と考えられる上手回し操船が可能であったかという点に焦点をあてて研究を行った。まず、大阪市が復元建造し筆者らが海上帆走実験を行った菱垣廻船"浪華丸"を具体的な対象として、定常帆走性能を求めるとともに、下手回し操縦運動シミュレーションを行う手法を確立した。このため、船体に関しては曳航水槽試験を行うとともに、帆に関しては風洞試験を行った。なお帆の性能に関しては、空力実験船「風神」を用いた実船レベルの海上試験と数値計算も実施した。また明治後期からは弁才型船に伸子帆が取り付けられた「合いの子船」も多く運用されたため、伸子帆の性能についても実験を行った。なお、伸子帆の性能に関してはこれまで公表されたものはなく、本研究によって初めて明らかとなったものである。浪華丸の定常帆走性能の計算結果と下手回し操縦運動シミュレーション結果は、同船の海上帆走実験データと比較され、よく一致することが確認された。一方、上手回し操船は浪華丸の海上実験でも実施されていない。このため、このような弁才船が上手回し操船が可能であったかについては、上記で精度が確認されたシミュレーション手法を用いて判断することにした。その結果、弁才型の船に弁才帆を組み合わせた場合は、残念ながら上手回しはできなかったものと考えざるを得ないものとなった。一方、弁才型の船に伸子帆を組み合わせた、いわゆる「合いの子船」とした場合は十分に上手回しが可能であることがわかった。このことは、船型的には弁才型の船が上手回しを行うことが可能であることを示しており、風上方向への切り上がり角が70°であることを含めて、江戸時代に完成された船としては、当時の西洋型帆船と比較しても遜色のない性能を有していたことが明らかになった。
著者
平間 淳司
出版者
金沢工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

茸類は免疫増強作用・臓器疾患改善などの健康食品として特に最近注目され茸工場で人工栽培が盛んであるが、至適成育条件(培地・温度・湿度・光など)は栽培現場の経験に大きく依存している。本研究では、新たな試みとして茸の成長の活性化と密接に関係がある生体電位信号を指標として至適生育条件に関して工学的側面から検討する。Growth Chamber内にて形態形成実験を幾度か実施し、得られた知見の確認を十分することで、現場で有用なLED光源システムの基本設計仕様を確立し、茸栽培装置の実用化を目指す。研究実績は以下の通り。(平成18年度)(1)自作型人工環境装置を更に改良(インキュベータ:温度・湿度・CO_2などの設定精度約5%以下)して、これまでの製作ノウハウを活かし、別途装置の2台目を新規に製作した。この装置の完成により、茸の各種光刺激(照射方法や波長)に対する子実体の生体電位の応答特性について、試行回数を増やし一般性を更に検証できる見通を付けた。(2)茸から誘発する自発性のバイオリズムを伴った生体電位信号を常時モニタリングすることで、バイオセンサとして活用し、その信号により特定の茸が周辺の茸への光刺激環境を制御する栽培技術を開発した。(平成19年度)(1)試作型簡易Growth Chamberを用いた形態形成実験(前年度の続き) 各種光刺激や温度刺激が形態形成に及ぼす影響を試作型Growth Chamberを用いて、継続実験を実施した。(2)茸自身をバイオセンサとした至適栽培を目指したLED光源装置の実用化 特定の茸自身をバイオセンサとしてバイオリズムをモニタし、その生体信号を利用して周辺の茸に対し、光刺激の明暗間隔を制御した。Growth Chamber内で栽培した結果を踏まえて、まず、種々の光刺激を与えた場合の成長の比較実験(形態形成実験)を茸工場の現場で光源システムの有効性を検証した(新光源装置の実用化(低価格化、コンパクト化、ランニングコストの低減化)を目指す)。栽培現場としては、これまでに共同研究を行っている県外の舞茸栽培工場で行った。なお、生体電位計測装置(申請者設計製作の小型軽量タイプ)と試作したLED光源装置には、本研究費をフルに活用して準備した。
著者
浜島 京子
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は3カ年計画で行われ、主な研究目的は、家庭科と健康教育の融合カリキュラムを開発しその有効性を検討することであった。そのため、1年目は台湾とアメリカの健康教育及び日本の家庭科のカリキュラムの比較検討をする。2年目は日本と台湾の児童・生徒を対象とした教科観及び健康生活に関わる家庭生活の実態調査を行い、比較検討する。3年目は家庭科と健康教育の融合カリキュラムを作成し有効性を検討することであった。1年目は、台湾の課程標準及び教科書、アメリカウィスコンシン州の「A GUIDE TO CURRICULUM PLANNING IN Health Education」を基に健康教育の内容を分析し、家庭科との違いを見いだした。また、スウェーデンの学校及び教育庁を訪問する機会があり関連資料を収集したが、スウェーデンでは既に家庭科と健康教育が融合されたカリキュラムが作られていることが把握された。2年目は、当初の計画に加え、アメリカウィスコンシン州の中学生も含めた3国4地域(東京・福島・台北・オークレア)で比較調査を実施した。その結果、日本は他国に比べ東京・福島ともに家事実践率が低く、健康生活への意識・実践状況も低率であること、また、「家庭科」-の興味度は中間的回答が多く、役立ち度では現実の生活より将来役立つという意識が高いことが把握された。3年目は、当初の予定にはなかったが、日本の中・高・大学生を対象に家庭科と健康教育を混合した項目に対する学習欲求度及び必要度を調査した。その結果、大学生は全般的に学習必要度が高く表れ、中・高校生は健康教育の住生活及び心身に関わる項目への学習欲求度が高かった。これより、家庭科に健康教育を取り入れることの有効性が把握された。なお、既に健康教育を総合学習の一環として研究開発している小学校の資料も収集しそれらもふまえて、家庭科と健康教育の融合題材を開発した。開発した融合題材に基づいて授業研究を行うことが課題として残された。
著者
三野 和雄
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

マクロ経済学では、依然として経済主体が同質であることを前提とする代表的家計モデルが中心的な役割を果たしている。本研究は、経済主体の異質性を明示的に考慮したマクロ動学分析を行い、同質な経済主体を前提にした従来の標準的理論がどのように修正されるかを検討した。特に、(1)世代重複モデルにおける世代間の消費の外部効果が生み出す影響、(2)無限視野を持つ家計に資産保有の異質性があるような成長モデルにおいて、消費の外部性が長期的な資産分配に及ぼす効果、(3)家計間の時間選好率や選好が異なる成長経済における財政・金融政策の効果、(4)2国間が非対称な場合の2国動学モデルのふるまい、を中心に検討を行った。いずれの場合も、家計の同質性を前提とする標準的な理論では見られない分析結果が得られ、代表的個人の仮定が、分析を簡明にする反面、現実の経済で生じている重要な現象のいくつかを捉え損ねる可能性が高いことを確認した。
著者
児島 伸彦
出版者
理化学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

神経可塑性の長期変化や長期記憶に重要な分子の候補ICERを中心に遺伝子発現変化を調べ以下の結果を得た。(1)キンドリングおよび恐怖条件づけにおける扁桃体でのICER(inducible cAMP early repressor)発現変化。キンドリング刺激後のICER mRNAの発現変化を調べ、ICER mRNAが電気刺激による神経活動の賦活によって脳で一過性に増加することがわかった。また、ICER mRNAはc-fosと同様に恐怖条件づけ後の扁桃体で増加することがわかった。この発現増加は条件づけ後の条件刺激の再提示によっても観察された。したがって、ICERは条件づけや条件反応後、扁桃体の神経活動の賦活に伴って増加すると考えられた。ICERは負の転写調節因子であると考えられているので、神経活動によって発現誘導される他の最初期遺伝子の転写抑制因子として働いている可能性がある。(2)PC12細胞におけるICERの強制発現。テトラサイクリン制御下でICER-IIを高レベルに発現するPC12細胞を作成した。その細胞にジブチリルcAMPを投与してその後の突起伸長に影響あるかどうかを調べ、ICERの突起伸長抑制効果をみとめた。(3)恐怖条件づけにおける扁桃体での遺伝子発現変化。ICERはCREBの活性化によって発現増加する。CREBの活性化はCRE配列をその転写調節部位に持つ多くの遺伝子の発現を誘導するので、条件づけによって扁桃体でICERが増加することは、条件づけによって他の様々な遺伝子の転写がダイナミックに調節されている可能性がある。そのような遺伝子産物をDNAチップによって系統的に探索し、複数種の遺伝子が条件づけ後の扁桃体で増加することを見い出した。
著者
稲本 万里子
出版者
恵泉女学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

後白河院(1127-1192)はさまざまなジャンルにわたる浩瀚な絵巻を作らせたことが知られるが、その多くは失われ「伴大納言絵巻」「吉備大臣入唐絵巻」「病草紙」「餓鬼草紙」「地獄草紙」などが現存するのみである。これらの絵巻研究は個別の作品研究が中心であり、後白河院による絵巻制作の全容とその意味は未だ明らかにされていない。これは「年中行事絵」をはじめとする行事絵や「彦火々出見尊絵巻」が模本でしか現存していないことが要因であると考えられる。本研究は、今まであまり注目されることのなかった模本の調査研究と資料収集を通して、後白河院の絵巻制作とその機能を複眼的に、また総合的にとらえるものである。まずはじめに、福井・明通寺蔵「彦火々出見尊絵巻」模本と「伴大納言絵巻」「吉備大臣入唐絵巻」を取り上げ、人物表現を中心に比較検討をおこなった。「彦火々出見尊絵巻」に措かれた人物は、絵所絵師常磐光長系の表現としてパターン化されているが、龍王の姫君の特異な表現から、治承2年(1178)平徳子の皇子出産が絵巻制作の契機になったと考察される。さらに、陸地と龍宮を往還する神武天皇の祖父の物語である「彦火々出見尊絵巻」は、異国の征服と皇統の視覚化を目的として制作されたと解釈することができる(詳細は、「措かれた出産-「彦火々出見尊絵巻」の制作意図を読み解く」(服藤早苗・小嶋菜温子編『生育儀礼の歴史と文化-子どもとジェンダー-』森話社、平成15年3月)にて発表した)。後白河院が制作させた絵巻群は、自国の支配と異国の支配、そして、皇統と皇権の表象であった。後白河院は、絵巻制作というイメージ戦略によって、自らの権威を認識させようとしたと考えられるのである。
著者
林 為人 高橋 学
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

海洋底深層掘削をはじめ,地震断層をターゲットとする科学深層掘削プロジェクトにおける地殻応力の状態を決定するとともに,深層掘削における応力測定手法に関する基礎研究を行った.その結果,東南海地震の発生源である紀伊半島沖の南海トラフ海域の主応力方向分布を明らかにしたほか,台湾集々地震の震源断層付近で地震発生によって生じた応力分布の異常をとらえた.一方,非弾性ひずみ回復法という深層掘削コア試料を用いた応力計測を初めて,海洋科学掘削領域での適用に成功した.
著者
酒井 隆 清原 一吉 伊藤 仁一 勝田 篤 森 義之
出版者
岡山理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

コンパクト・リーマン多様体上の1点pからの距離関数d_pは重要な幾何学的関数であり,多様体の構造とも関連する.しかしd_pは微分可能でない点を許容し,それはpの切断跡(cut locus)に含まれる.さて,距離関数に対しても危点の概念が定義されるが,危点ではd_pは微分可能ではない.危点を含まない場合には,距離関数に対しても通常のモース理論(イソトピー補題)が得られており,多くの幾何学的応用を持つ.他方,危点を許容する場合にモース理論を展開するためには,まずその指数の概念を定義する必要がある.本研究において,代表者の酒井隆はリーマン計量が自然な非退化性条件を満たすとき,分担者の伊藤仁一と共にこれを実行し,幾何学的な立場から直接に距離関数のモース理論を展開した(掲載済み).その際,切断跡が良い構造(stratification)を持つことを示すのが重要で,危点qの指数はp,qを結ぶ最短測地線の個数とqを含むstratumへの距離関数の制限(これは微分可能でqはその危点である)のqでの通常の指数を用いて書ける.この条件がどの程度まで一般的かについてはさらに考察を続けたい.距離関数に関連して,清原一吉は可積分湖地流の立場から一般次元楕円面(やあるクラスのLiouville多様体)の一般点の切断跡,共役跡の構造を伊藤と共に研究し,勝田篤は境界付リーマン多様体の境界からの距離関数から内部のリーマン計量を復元する逆問題を考察した。計量不変量の間の不等式(等縮不等式・等径不等式),曲率非負のコンパクト・リーマン多様体のラプラシアンの第1固有値評価およびその摂動版については本質的な進展がなかったが,清原はアレキサンドロフ空間の幾何学的不等式に関する結果を得た.これらについては研究を継続する.森義之は量子コンピュータのアルゴリズムを研究し,酒井にコンピュータ支援を行った.
著者
鈴木 健一 山下 久夫 田中 康二 西田 正宏 杉田 昌彦
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

契沖以前から本居宣長以後までの江戸時代の古典学の軌跡を、より詳密に描き出すことに一定の成果を収めた。また、『勢語臆断』『古今通』『土佐日記解』など個別の注釈書の性格や成立について、新見を提示した。
著者
加藤 正平
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

東京タワーと世界一の高さとなる東京スカイツリーのサージ特性を、数値シミュレーションと縮小モデル実験から調べた。東京スカイツリーはペンシルスタイルであるため、鉄塔自体の電位上昇は東京タワーよりも高くなるが、金属導体を東京タワーより多く使用するため、タワー内の配電線路に発生するサージ過電圧値は抑制される。このため、東京スカイツリーにおける雷対策は、避雷器のエネルギー耐量を倍増しさえすれば、これまでの耐雷設計指針を適用可能である。
著者
佐々井 祐二
出版者
独立行政法人国立高等専門学校機構津山工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

インターネット天文台はインターネット上のユーザがリモートでリアルタイムに観測できる装置である。その操作はWebブラウザ上で行われる。我々は口径35cmシュミットカセグレン式望遠鏡と冷却CCDカメラを装備した「津山インターネット天文台」を構築した。また、天文教育のため、世界天文年2009より小中学生を対象とする公開講座としての「天体観測会-君も未来のガリレオだ!-」を9回開催した。計算機シミュレーションの活用も含めて、今後も継続して科学教育を行う。
著者
川 茂幸 太田 正穂
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

自己免疫性膵炎の疾患感受性遺伝子の検索過程でカリウムイオンチャンネル蛋白、KCNA3(Kv1.3)を見出し、病態との関連を検討した。またgenome wide association study(GWAS)により新たな疾患感受性遺伝子の検索を行った。自己免疫性膵炎の病態とKv1.3の発現に有意な関連を見出すことができなかった。GWAS検索で、14種類の染色体上に25種類の感受性遺伝子の候補を認め、遺伝子内に設けたSNPを用いて確認解析を行っている。