著者
戸田 正憲
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究は、ニセヒメショウジョウバエ属を中心としてショウジョウバエ科の系統関係を形態形質により解析することをめざして、1)ニセヒメショウジョウバエ属の単系統性を検討する。2)ニセヒメショウジョウバエ属の各種群間及び本属とショウジョウバエ亜科の主な分類群間の系統関係を明らかにすることを目的とした。ショウジョウバエ科10属41種を66形質について分岐分析した結果、次の結論が得られた。1,ニセヒメショウジョウバエ属は多系統群である:fenestrarum種群、nigricolor種群、miki種群、denticeps種群は一つ単系統群にまとめられるが、tenuicauda種群はトゲオショウジョウバエ属と一緒に別の単系統群を形成する。2,ニセヒメショウジョウバエ属の5つの群群のうち、fenestrarum種群、denticeps種群は単系統群であるが、nigricolor種群は2つの別々の単系統群に分割され、tenuicauda種群は側系統群である可能性がある。また、miki種群の単系統性は今のところ結論できない。3,fenestrarum種群、nigricolor種群、miki種群は単系統群を形成し、denticeps種群と姉妹群の関係にある。4,この4種類から成る単系統群はシマショウジョウバエ亜属と姉妹群の関係にある。5,フサショウジョウバエ属とヒメショウジョウバエ属はそれぞれ単系統群である。6,ショウジョウバエ亜科の中では,まず最初にマメショウジョウバエ属が分岐した。しかし、その後の単系統群(ニセヒメショウジョウバエ属+シマショウジョウバエ亜属、トゲショウジョウバエ属+tenuicauda種群、ハシリショウジョウバエ属、フサショウジョウバエ属、ヒメショウジョウバエ属、ヒョウモンショウジョウバエ亜属、ショウジョウバエ亜属)の分岐関係については、まだ結論できない。
著者
小林 光一
出版者
武蔵工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究は「ジカチオン性二鎖型LB膜の作製とその吸着特性」を中心に系統的に行われたものである。以上研究費補助期間中に得られた結果を以下に要約する。モノジカチオン性アルキルアンモニウム塩(SAC,DAC,DSACとTSAC),ジカチオン性アルキルアンモニウム塩(XSAC)および第1級アルキルアミン(ODA)の膜形成能について検討した。これらの物質のうちで、二つあるいは三つアルキル基を持つDSAC,TSACおよびXSACは安定な単分子膜を形成することが明らかにされた。また、ODAはpH10以上で安定な単分子膜を形成することが分った。一方、MOやNO水溶液上でのπ-A等温線の測定から、TSAC,XSACおよびODAの単分子膜は下層水中のNOやMOイオンと強く相互作用することがわかった。作製されたTSAC,XSACおよびODAのLB膜はカチオン性の性質を保持しており、NOやMOなどの色素イオンに対して高い吸着特性を示した。これらの吸着挙動はLB膜中の炭化水素鎖の充填状態やpHによって影響することが分かった。また、これらの色素の吸着は静電的な相互作用によって化学量論的に起ることもわかった。さらに、カチオン性LB膜中のNOやMOの吸着状態には差異があることが明らかになった。すなわち、MO分子は膜表面に対してほぼ垂直な配置を取り、一方NO分子はLB膜表面に横たわった配置を取る。これはMOとNOの分子構造の違いに起因するものと考えられる。この研究で得られた分子配置についての情報はカチオン性LB膜へのいろいろな吸着質の吸着挙動を理解するのに役立つことが期待される。
著者
福田 宏
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ポリオミノまたはポリイアモンドを基本領域とするアイソヘドラルタイリングの研究をおこなった.アイソヘドラルタイリングの対称性17通りのうち,3,4,6回割の回転対称軸をもつ8通りの対称性 p3,p31m,p4,p4g,p6,p3m1,p4m,p6mについて,アイソヘドラルタイリングを全て列挙するアルゴリズムを研究し,コンピュータによってあまり大きくないポリオミノまたはポリイアモンドについて全て列挙した.
著者
姉川 知史
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

医薬品研究開発効率の向上には,技術イノベーションだけではなく,社会的分業,需要要因,市場競争などの「制度イノベーション」が必要である。本研究は過去20年に世界で開発された医薬品800件の医薬品属性,研究開発,特許,論文,研究者,企業等のデータを収集整理したデータ・ベースを作成し,医薬品研究開発のプロジェクト・ヒストリー,研究開発の社会的分業と技術革新とを数量化し,医薬品研究開発の効率性低下の現状と原因に関する経済的分析を行った。
著者
高際 澄雄
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

18世紀前半イギリスの音楽と演劇の関係は、これまで詳しい研究がなされなかったが、17世紀末イギリスに歌劇が成立したのは、文学者と作曲家の緊密な協力の結果であり、その後も常に強い影響関係をもっていた。特にヘンデルのイタリア歌劇の作曲公演に当時の演劇が強い影響を与え、とりわけ1730年代にヘンデルの王立音楽アカデミーに対抗して貴族歌劇団が結成されたのも、演劇界の活性化が作用したことを、本研究は明らかにした。
著者
大網 功 蔵原 清人 西田 雅嗣 蔵原 清人 西田 雅嗣
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では私達は江戸時代、明治初期の古枡、古分銅、古尺を実測した。さらに、渡仏および渡欧してメートル法草創期のフランスの計量事情およびヨーロッパの長さの単位の変遷について文献調査を行った。古枡の実測結果によれば、江戸時代の公定枡である京枡、江戸枡では、枡は縦、横の内幅が4寸9分に作られたが、深さが容積を一定にするように調節されていた。古分銅では、最も良い組分銅で、実測値は称呼値の0.04~0.27%の誤差を持っていた。
著者
西山 昌秀 石田 武和 野口 悟 川又 修一 加藤 勝 町 敬人
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は銅酸化物高温超伝導体においてスーパークリーンな系であるYBa_2Cu_4O_8(Y-1248)単結晶を用いて、超伝導における競合秩序や隠れた秩序変数の共存などの精密な物性を明らかにすることを大きな目標として行った。実験結果の解析、実験環境の構築を主として行い、単結晶Rb_2Cu_3SnF_<12>やCu_2OCl_2試料の測定を通して、小さな試料、小さな信号に対する信号雑音比の改善に成功した。試料回転機構の構築も行った。微少単結晶に対するNMR測定の環境は整えることができ、このスーパークリーンな系であるYBa_2Cu_4O_8(Y-1248)単結晶を用いたNMRに応用し、詳細な知見を得ることが可能となっている。
著者
山田 宏
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

景気の行方を予測することは,広く国民全体の共通の関心事である。このニーズに応えるためには,より精度の高い景気先行指標の開発を目指した不断の努力が欠かせない。この研究では,よりよい景気先行指標の開発を助けるための幾つかの基礎的な研究を行った。具体的には,(i)景気循環成分を取り出すためのトレンド推定に関する研究,(ii)景気先行指数構成系列評価のための統計的手法の開発に関する研究,などを行った。
著者
乕尾 達哉
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では、ケンブリッジ大学図書館に所蔵されているW.G.アストン旧蔵の和書のうち、国学著作(霊能真柱、古史徴、たまたすき、入学問答、すずのたまぐし、俗神道大意、くずばな、鬼神新論、古今妖魅考、末賀能比連、祝詞考、祝詞正訓、大祓詞後釈、出雲国造神寿後釈、玉くしけ別本)に記されたアストンおよびサトウの鉛筆書き入れを資料として収集し、分析を加えた。その結果、アストンもサトウも本居宣長、賀茂真淵、平田篤胤らの国学著作の内容を精力的に理解・研究したこと、とりわけ篤胤の国学研究を高く評価していたことが明らかになった。
著者
神野 雄二
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009-04-01

日本における篆刻や篆刻家の基礎的研究を、調査研究・文献研究・科学的研究の3種の方法により詳細に進めた。篆刻や印学の史的考察、篆刻家の事跡の調査・研究と作品研究を遂行し、論考として発表した。また、篆刻に関わる傍系の文人・芸術家の事跡の調査・研究と作品研究を行なった。日本における篆刻・印学や篆刻家の研究、それらの広い視野に立った体系的な研究はまだ十分なされていなかった。本研究において、日本の篆刻や篆刻家の歴史的・芸術的・文化史的な面の一端を明らかにすることができ、日本の印学の体系化に向けての研究の深化をはかることができた。
著者
岩本 和久 梅村 博昭
出版者
稚内北星学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では1960年代以降のロシア文学に見られるスターリニズム表象の系譜について、リアリズムとポストモダニズムの間で揺れる現代ロシア文学の変化を参照しながら検討した。また、それら文学作品が21世紀のロシアにおいてテレビ・ドラマ化され、新たに神話化されていく様を検討した。それらを通し、現代ロシア文化におけるスターリニズム表象の志向として、悲劇の告発とユートピアの賛美という対立する要素を明らかにした。
著者
中村 宗一郎 寺嶋 正治 藤井 博
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

全身性アミロイドーシスや認知症を引き起こすとされているL68Qヒト型シスタチンやアミロイドβ蛋白質を用いて,種々の天然フェノール化合物及びそれらのリポフィル化あるいはグリコシル化誘導体のアミロイド線維形成抑制能を調べた。その結果,グリコシル化に比べリポフィル化の方がより効果的であることが明らかにされた。本研究で示された構造と機能に関する成果は,今後の抗コンフォメーション病食品素材の分子設計に活用されるものと期待される。
著者
坂本 育生 樋口 晶彦 日高 正康
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

2010年、坂本は国連機関、国際海事機構(International Maritime Office)」を訪問し、海事英語の貴重な資料を収集した。その後エジンバラ大学での夏季研修を受講し、ESPの最新英語教育教授法研修を受けた。2013年3月までに3本の学術論文を発表し現在4本目の論文を作成中である。大学生へのmotivation促進効果は、海事英語授業と国際英検(G-TELP)によりその効果が実証された。現在坂本は、新英語教材をほぼ完成させ、英語教材大手出版社「南雲堂」と出版契約を結び最終原稿推敲過程にある。
著者
是澤 博昭 湯川 嘉津美 広田 照幸
出版者
聖徳大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、近代日本の地域社会における幼稚園教育の社会的機能について、茨城県土浦幼稚園を事例として検討を行った。土浦幼稚園は1885(明治18)年に設立され、今日まで120年余り地域の幼稚園として命脈を保ってきた公立幼稚園であり、同園には文書資料はもとより、幼稚園の教材・教具類などの実物資料が数多く残されている。そこで、まず資料(計429点)の整理と目録作成を行い、つぎに入園綴や退園届、保育証授与簿などをもとに「土浦幼稚園園児データベース」作成して、利用層についての数量的分析を行い、明治期から大正期にかけての土浦幼稚園の実態と同園が地域社会において果たした社会的機能を総合的に検証した。研究成果は以下の通りである。1)近代日本における幼稚園導入・普及の社会的文脈について、1892年の幼稚園調査を用いて全国的動向の把握を行った。そして、当時の幼稚園が「教育の質」と「社会的開放性」と「財政上の要因」をめぐって複雑なトリレンマ(三すくみ)の状態にあったこと、そのなかで、土浦幼稚園は公費支出と保育料の低額化によって財政上の要因と社会的開放性の問題を解決して、そのトリレンマを処理していたことを明らかにした。2)土浦幼稚園の設立とその後の展開過程について検討し、土浦幼稚園がおもに商業者の支持を得て設立・維持され、小学校との関係を持ちながら、就学準備教育機関として機能していたことを明らかにした。3)「土浦幼稚園園児データベース」をもとに、利用層の数量的分析を行い、女子の就園率の高さ、通園圏の狭さ、在園期間等から、土浦町では幼稚園が小学校就学前の教育機関として男女によらず必要であるという認識が一定程度広まっていたこと、そして、そこでは学歴獲得や社会的地位達成とは別の文脈で、幼稚園の就園そのものに意味を見出す利用がなされていたことなど、土浦幼稚園の実際を利用者の側から明らかにした。
著者
藤澤 政紀 岩瀬 直樹 寺田 信幸
出版者
明海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

視覚刺激と重心動揺に対する姿勢制御との間におけるフィードバックループの研究がなされている.しかし,咬筋の収縮が姿勢制御におよぼす影響についてはあまり知られていない.本研究では,重心動揺に影響を与える3D動画を用い,軽度の咬みしめと下顎安静位という下顎位の違いが重心動揺に及ぼす影響について検討した.被験者は顎関節症のない5名の男性とし,左右の咬筋,前脛骨筋,腓腹筋に電極を貼付し,バーチャル空間内の重心動揺計に立たせた.そして,被験者には軽度の咬みしめとして,最大咬合力の10%MVCを維持する練習をさせた.下顎安静位は上下の歯の無接触状態を指示した,その後ジェットコースターの3D動画を80秒間観賞させ,明らかに姿勢が変化した時間帯の筋電図と重心動揺のデータを分析対象区間とした.その結果,右側の腓腹筋以外は筋電値は下顎安静位よりも軽度の咬みしめ時の方が有意に高く,下顎安静位よりも軽度の咬みしめ時の方が,重心動揺は有意に安定することが確認できた.以上により,上下の歯の接触は姿勢の安定化に影響を与えると考えられた.
著者
定延 利之
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

とりたて表現の数量的側面に関する振る舞いを記述し、この振る舞いを成立させている要因として、「体験vs.知識」という言語情報の区別を浮き彫りにした(「11研究発表」の欄の図書を参照)。そして、この振る舞いに関する日本語と中国語の共通点と相違点を明らかにするとともに、それらがとりたて表現だけでなく、他の表現にも並行的に観察されることを論じた(「11研究発表」の欄の雑誌論文1点目)。次に、これらの共通点と相違点を説明できるモデルを考察した。具体的に言うと、この区別がとりたて表現だけでなく、さまざまな言語表現に共通して見られることを論じ、特に体験の関わる言語表現には、これまで考えられていない新しいデキゴトモデルが必要であることを論じた(「11研究発表」の欄の雑誌論文3点目)。また、それらのうち時間表現については、「情報のアクセスポイント」の観点から、特に詳細な論を展開した(論文4点目)。場所表現についても、モノとデキゴトに関する考察に基づき、詳しい論を展開した(論文6点目)。さらに、「体験vs.知識」という区別が言語情報にとどまらない、人間のコミュニケーションに深く根ざしたものであることを論じた。具体的には、この区別が話し言葉・書き言葉という位相差や(論文2点目)、声質のような言語行動(論文5点目)に関与していることを明らかにし、これまでの言語研究やコミュニケーション研究が知識表現に偏って進展してきており、体験表現が不当に無視ないし軽視されてきていることを示した。
著者
藤倉 良 中山 幹康 押谷 一 毛利 勝彦
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

世界ダム会議(WCD)は,大型ダムに関する国際的に受入れ可能な基準を開発し,普及することを目的として組織された独立の国際委員会であり,2000年11月にWCD報告書を刊行して解散した。WCD報告書に盛り込まれた基準やガイドラインに対しては,開発途上国政府やダム建設業界が明確に反対する姿勢を示し,国際的に受入れ可能な基準作りは失敗に終わった。WCD勧告を文字通り世界が受入れ可能な基準とガイドラインにするためには,その実施可能性を明らかにすることが必要であり,これが本研究のめざすところであった。本研究は,まず,WCD勧告の根拠が必ずしも明確でないということを明らかにした。WCD勧告はWCD報告書の後半部に記述されているが,それは前半部に記述された研究調査結果に基づいていることになっている。しかし,報告書を精査すると,すべての勧告が調査結果に基づいてはいないことが指摘できた。こうした問題点を踏まえ,本研究では,WCD勧告を実現可能にするための選択肢を示した。次に,実現可能性を高めるための条件を検討するため,本研究では日本のODAプロジェクトにWCD勧告を適用する場合に,どのような課題,改善すべき点があるかを明らかにした。さらに,WCD勧告について最も意見が対立した住民移転のありかたについて,提言を行うための知見を収集するためのケーススタディを実施した。一つは日本の過去の経験である。もうひとつは,現在のダムプロジェクト事例として,インドネシアで円借款により実施されたコタパンジャンダムプロジェクトの現地調査である。望ましい住民移転のあり方を示すためには,今後さらなる現地調査及び検討が必要であると考えられるが,このケーススタディによって幾つかの好事例(good practices)を示すことができた。
著者
圓谷 裕二
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009-04-01

近現代哲学においては二つの潮流がある。一方は、超越論的哲学としての究極的基礎づけ主義であり、他方は、経験主義における相対主義あるいは懐疑主義である。本研究の目的は、近代哲学のこれら二つの立場を同時に克服することである。そのためにメルロ=ポンティの哲学に着目した。彼の哲学の特徴は、主知主義と経験主義を彼の独自のパースペクティヴ主義の立場から乗り越えようとすることである。本研究は、この目的達成のために、彼の言語論と歴史哲学に定位するものである。
著者
中村 義一 横山 茂之 渡辺 公綱 志村 令郎 饗場 弘二 多比良 和誠
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

近年のRNA研究の大きな発展を支えた背景には、国内のRNAの基礎研究に関して10年余の間継続して実施されてきたRNAに関係する重点・特定領域研究が果たした役割が大きい。このようなRNA研究に対する熱意は、特に若い研究者の間に大きなうねりとなって現れ、平成11年に日本RNA学会が組織された(初代会長:志村令郎・生物分子工学研究所長)。本基盤研究(C)においては、「RNA研究の21世紀への展開」のために推進すべき課題についての調査と討論を重ね、平成13年度発足特定領域研究(A)「RNA情報発現系の時空間ネットワーク」を申請するに至った。その過程で、本基盤研究(C)に参加し、同時に新特定領域研究の総括班に予定するメンバーは、平成12年に開催されたRNA関連の国際研究集会「tRNA Workshop」(4月、ケンブリッジ)、「RNA Society年会」(5月、マジソン)、FASEBシンポジウム「Posttranscriptional Control of Gene Expression:The Role of RNA」(7月、コロラド)、「Ribosome Biogenesis」(8月、タホ)、「Structural Aspects of Protein Synthesis」(9月、アルバニ)に参加し、最新情報の調査・討論を行った。これらの調査討論に基づき新特定領域研究の申請を準備するとともに、平成13年2月には、国外から12名の研究者を招聘して国際シンポジウム「Post-Genome World of RNA」(開催責任者:東京大学医科学研究所教授中村義一)を東京で開催し、本研究領域に関する最新の発表・討論を実施した。
著者
中村 義一 石浜 明 口野 嘉幸 饗場 弘二 横山 茂之 野本 明男
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本基盤研究は、mRNAの誕生から終焉に至る動態と多元的な制御プログラムについて、国際的な調査及び研究討論を実施し、総合的な討論に基づいて重点領域研究の設定を検討する目的で企画採択されたものである。その研究実績を要約する。1.研究領域の調査結果:転写後の動的な制御プログラムは、広範囲の生物系で重要不可欠な役割を担うことが明らかになりつつあり、mRNAを骨格とする基本的な諸問題を体系的に正攻法で研究すべき時期にある。本研究の成果は、発生・分化・応答等の高次な細胞機能の解明や、RNAダイナミズムの創成、あるいは蛋白質工学やmRNA臨床工学等の次世代バイオテクノロジーの基盤となりうる。mRNA研究に関連する重点領域の推進が必要かつ急務である。2.国際研究集会における学術調査と討議:平成8年11月10〜14日、本基盤研究代表者が中心となってmRNA研究に関する国際研究集会「RNA構造の遺伝子調節機能(“Regulatory Role of RNA Structure in Gene Expression")」を開催した(日本学術振興会王子セミナー/於箱根)。本研究集会には、申請領域の第一戦で活躍する欧米の研究者約40人が参加し最新の研究成果の発表、討論、交流を行った。その機会を利用して、国際的な視点からmRNA研究の展望と研究振興の方策を議論した。3.出版企画:上記国際研究集会に関連した学術刊行物を、学術誌Biochimieの特集号としてElsevier社(仏パリ)から出版することとなり、本基盤研究代表者が監修し平成9年3月に出版の予定である。4.重点領域の設定:本基盤研究の目的をふまえて、重点領域研究「RNA動的機能の分子基盤」(領域代表・渡辺公綱、平成9〜12年)の実施が決定された。