著者
海蔵寺 大成
出版者
国際基督教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

1998年から2000年にかけて起きた米国のインターネット・バブルとバブル崩壊のメカニズムを研究した。(1)インターネット関連企業の株価の逆累積分布はパレート分布に従っており、パレート指数が1に近づいた時、暴落が起きていることが分かった。(2)バブル崩壊は、イジング・モデルにおける相転移に対応することを理論的に示した。
著者
浜野 光之 中島 宣行 川合 武司
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

今年度は、大学生男女バレーボール選手を用いて、特に、トーナメント方式の東日本インターカレッジおよび全日本インターカレッジを中心に、競技開始前の心理的競技能力および状態不安とパフォーマンスの関係を明らかにしようとし、以下のような結果を得ることができた。また、中国遠征の機会を得た男子チームのデータも収集することができた。(1)競技開始2時間前および直前の状態不安は、平常時よりも高くなる傾向が伺えた。(2)トーナメント方式のインカレでは、緒戦や拮抗した展開が予想されるようなチームと対戦する競技開始前の状態不安は、他の試合の時よりも高くなる傾向がみられた。(3)競技開始前の状態不安とパフォーマンスとの関係は、現在のところ一定の関連性は認められていない。(4)競技終了直前の状態不安は、勝利を収めた試合では低下し、敗戦の場合は変化しないか上昇する傾向がみられた。(5)全日本・東日本インターカレッジよりも、自我関与度の強い関東リーグ戦の方が、全体的に強い状態不安を示した。(6)女子選手の方が男子選手に比べて全体として高い状態不安を示す傾向にある。
著者
横田 理博
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

マックス・ウェーバーの宗教論を、同時代の様々な立場からの宗教論(ジェイムズ・ニーチェ・ジンメル・西田幾多郎・ヤスパースなど)と比較することを通じて、宗教哲学・宗教心理学・宗教社会学といった諸アプローチが分化していく状況を把握し、宗教についての多角的理解を追求した。その一環として、ミュンヘンのバイエルン学術協会に保管されているウェーバーの旧蔵書を閲覧し、蔵書へのウェーバーの書き込みについて調査した。
著者
吉武 純夫
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

ギリシア悲劇には人々が死を受容する様々な場面が描かれているが、その中に男女間での色々な差異が認められる.注目に値するのは、自発的な場合でもやむを得ぬ場合でも人物たちは死をよりよきものとして受容れようとするが、女性にはよき死を死ぬ機会が男性よりも閉ざされていると言うことである.それを象徴するのが悲劇『アンティゴネ』である.アンティゴネは「カロンなる死」(美しい死)を得ることができると信じ、それを目指して兄の埋葬を挙行したのだが、結局願いは叶わなかった.このことの背景にあるのは、「カロンなる死」を死ぬことはもともと女性である彼女には許されていない選択であった、という事実である.なぜなら、悲劇の時代までは、戦死以外の死が「カロンなる」と形容されることはなかったからである.「カロンなる死」とは、『イリアス』に語られた「カロンなる死体」を経て、テュルタイオスによって、「前線において戦いながら死ぬこと」と規定された.それ以外には、死が好ましい、望ましい、等と主観的・相対的によきものとされることはあっても、客観的・絶対的によきものとして主張されることは一切なかった.それが5世紀になると、『アンティゴネ』ほかの多くの悲劇が、人は戦死以外に「カロンなる死」を死ぬことができるのではないか、と問題を提起したと言える.しかし予想されるのは、いかなる悲劇もそれに肯定的な答を提供していない、ということであるが、それは今後一つ一つ検証していくべきことである.
著者
中村 稔 小森 敦正 石橋 大海
出版者
独立行政法人国立病院機構長崎医療センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

原発性胆汁性肝硬変(PBC)の新しい病型分類と長期予後診断法の確立のために、全国のPBC症例を対象として、血清自己抗体の測定、HLA-DRB1 typing、免疫関連分子や胆汁酸代謝に関連した遺伝子多型の解析を行った。PBC発症の危険因子としてHLA-DRB1*0803、CTLA4 SNPs、門脈圧亢進症進行の危険因子として抗gp210抗体、抗セントロメア抗体、CTLA4 SNPs、HLA-DRB1*1502と*0901、 肝不全進行のバイオマーカーとして抗gp210抗体、MDR3やintegrin・VのSNPsなどが同定された。これらの中で特に抗gp210抗体の肝不全進行への相対危険度は30倍と高く、抗gp210抗体をバイオマーカーとして用いたPBCの治療が可能となった。また、遺伝子レベルからも、PBCを抗gp210抗体陽性型の進行と抗セントロメア抗体陽性型の進行に分類することの妥当性が示唆された。
著者
黒田 輝 今井 裕
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

乳がんの集束超音波治療の安全性・有効性を改善するためMRI(Magnetic Resonance Imaging)による脂肪組織の非侵襲温度分布画像化の開発ならびに検証実験を行なった.動物脂肪由来のメチレン基及びメチル基プロトンのT_1は室温. 60℃の温度範囲で1.7.1.8[%/℃]及び3.0[%/℃]の線形な温度依存性を呈することを明らかにした.これに基づいて多フリップ角法と多点Dixon法を用いた水・脂肪組織同時温度分布画像化を可能にした.
著者
高田 滋
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

凝縮相の相変化によって起こる気体の非定常1次元流を気体分子運動論によって調べ主に次の成果を得た.(1)凝縮相に隣接する薄層(境界層)の構造解析から広い適用範囲を持つ線形化問題における相反性に関する一般定理群を発見した.(2)一定の条件を満たす初期状態からは互いに逆向きに進行する2つの膨張波が生じるが,それらの間に真空に成長する高度希薄領域が現れうることを示した.この領域は極めて非平衡で気体温度が強い非等方性を示すことを明らかにした
著者
白濱 成希
出版者
北九州工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の主な目的はウェブベースによるソフトウエアコンテストサイトを構築し実際に運用することである。応用事例として国際交流のためのツールとも活用する事を目指した。本ツールで平成21、22年度に九州・沖縄地区を中心とした高専によるリーグ戦を行った。シンガポールのリパブリックポリテクニック校との交流戦でも本ツールを使用した。また初心者用の入門コンテンツ作成や対戦動画配信を行った。
著者
山田 静雄
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は過活動膀胱における病因を膀胱における神経伝達物質受容体異常の面から検証し、その有効かつ安全な薬物療法を確立することを目的とするもので、当該期間で以下の研究成果を得た。1)背椎損傷ラットモデルにおいて、過活動膀胱の徴候である膀胱の不随意収縮波形及び膀胱重量の有意な増大が認められた。2)背椎損傷ラット膀胱への[3H]NMS特異的結合Bmax値の有意な増加が認め、この増加は、膀胱機能曲線の不随意収縮曲線波形における振幅と発現頻度(過活動膀胱の程度)と良好に相関した。3)テストステロン投与による前立腺肥大症モデルラット膀胱において、重量の有意な増加と[3H]NMS特異的結合Bmax値の有意な増加が認められた。以上の結果から、背椎損傷ラットおよび前立肥大ラットの両過活動膀胱モデルにおいて、膀胱ムスカリン性受容体異常が認められ、本病態における抗コリン薬の有効性が示唆された。4)ラット膀胱の受容体標品において、[^3H]αβ-MeATPは飽和性の特異的結合を示した。αβ-MeATP、βγ-MeATP、MRS2273、PPADSおよびsuramineは、いずれも膀胱への[^3H]αβ-MeATP特異的結合を濃度依存的に抑制し、その結合親和性はαβ-MeATP>βγ-MeATP>suramine>PPADS>MRS2273の順であった。これより、ATP(P2X)受容体がラット膀胱に存在することが示され、本受容体は創薬標的分子となることが示唆された。5)トルテロジン(Tol)は経口投与により膀胱mAChRに結合し,その結合様式はOxyと比べ緩徐かつ持続的であった。またTolの唾液分泌抑制作用は,オキシブチニン(Oxy)と比べ有意に減弱することが示された。以上の結果より、TolはOxyよりヒトにおいて口渇の副作用が減弱することが示唆された。
著者
吉村 弓子 河合 和久
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、多様化した日本語学習者の対応した読解教材を作成を支援するシステムを開発することにある。具体的には、WWW情報のキーワード検索において、各学習者に相応しい漢字難易度、語彙難易度、ジャンルに絞り込むシステムをWWW上に作成した。漢字の難易度は日本語能力試験級別漢字表を参照し、学習者が指定する級よりも上級の漢字含有率が20%未満の文章に絞り込むシステムを作った。同様に、語彙の難易度も日本語能力試験級別語彙表と照合し、任意の級よりも上級の語彙が20%未満しか含まれない文章に絞り込むようにした。ジャンルは、歴史、地名、生物、美術、文学、人物、政治、用語の中から学習者がいずれかを選択すると、さらにジャンル毎に設定してあるカテゴリ別に絞り込みを表示した。今後の課題としては、ジャンルの妥当性を検討する必要がある。また、技術面では、システムをWWWサーバから各学習者のコンピュータにダウンロードして使用する方式に改善したい。そうることにより、WWWサーバのセキュリティの強化、また各学習者によるカスタマイズが可能となり、より使いやすいシステムとなることが期待できる。
著者
若菜 マヤ
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

日常は「表現された秩序」だと唱えたミクロ社会学者、E. ゴッフマンの理論をH.ジェイムズの文学作品に重ね、ジェイムズ文学は現実の虚構性をリアルに描いたものだと*Performing the Everyday in Henry James’s Late Novels*(Ashgate, 2009)で主張。今度はジェイムズが高く評価したAusten、Wharton、G. Eliotの作品に同様の分析を行い、インティマシー(「親近感、近しさ」)をテーマに単著*Performing Intimacies of the Everyday*(仮) を書き上げ、英米の某学術出版社の外部審査用に準備中。
著者
尾上 陽介
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

藤原定家の日記『明月記』原本の復元を目指し、各地に大量に存在する明治期以降の古美術品売立目録を網羅的に調査し、細かく切断された原本断簡などの定家関係資料を蒐集し、従来の原本一覧を増補・改訂するとともに、新たに判明した『明月記』逸文については翻刻した。また、陽明文庫などに所蔵される『明月記』原本から剥離された紙背文書についても調査し、撮影した画像を研究成果報告書で公開した。
著者
伊奈 正人
出版者
東京女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

「間」の文化とかかわる日本文化論的な知見などを整理・総括し、その上で「間」を動的関係のなかでの個の存在感=触覚的な手応えの問題として規定した。そして、「間」を、若者の生の実感=柔軟さと頑なさの弁証関係の問題として仮説化し、事例調査を行った。若者が自己の生をどのように「シンボル化」して概括しているか、若者の「間の語彙」、その批評性に着目し、そこに「間の美学」を読解しようとしたことが特徴的成果である。
著者
吉住 潤子 城戸 瑞穂 大山 順子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

近年口腔粘膜に器質的変化を認めないにもかかわらず持続的な痛みを訴えるBurning Mouth syndrome:BMSといわれる患者が増加している。患者の訴えは唐辛子を食べた時の感覚に似ているのではないかと考え、BMSと唐辛子の辛味成分であるカプサイシンの受容体:TRPV1との関連を調べた。またTRPV1のSNPを調べたところ、BMS 発症や痛み感受性の個人差に関与する可能性が示唆された。
著者
山根 健治
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

Modified Atmosphere(MA)包装と1-メチルシクロプロペン(1-MCP)の組合せ処理はカーネーションおよびインパチェンス鉢花の室内での観賞期間を延長させた.カーネーション鉢花への能動的MA包装(10%O_2,2.8%CO_2)と1-MCP処理は鉢花の呼吸とエチレン合成関連遺伝子の発現およびエチレン生成を抑制するとともに炭水化物含量の減少を緩和し,鉢花品質を改善することが示唆された.
著者
深尾 百合子 池田 浩治 並木 美太郎 高木 隆司
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

レポート等の文章を書く能力を養成するための教材を作成した。理工系の留学生の最終目的が科学技術論文,レポート,レジュメを書くことを考慮して,題材を基礎科学分野(中学・高校レベル)からとった。開発教材は15のトピックからなっている。これらの教材の開発については「理工系留学生を対象としたボトムアップ型の作文指導および教材開発」という題で研究発表を行った。上記の教材を使って留学生を対象に作文指導を行ったところ,1つの教材に対して様々な解答文が可能であることが明らかになった。そこで,科学技術文として適切な解答文はどのようなものであるかを明らかにするために,教材[木炭の燃焼]を使用して日本語母語話者73人の解答文を収集した。これらの解答文を工学部専門教官3人(分担者を含む)に評価してもらい,この結果について分析を行った。評価の高かった解答文の分析により,科学技術文として不可欠な要素が抽出された。また,評価の低かった解答文データから,不適切とされた箇所を取り出し分類した。この研究結果を,論文「科学技術作文教材の開発およびモデル解答作成のための解答文分析」にまとめた。また,工学系学部日本人学生のレポート文を収集し,レポートの「考察」部分(一部結果を含む)の文章をデータベース化した。これらの文章を工学部専門教官に「考察」として適切な構成,表現であるかを評価してもらい,共通する欠点をまとめた。また,個々のレポートについてのコメントも記述した。
著者
水野 千依
出版者
京都造形芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、ルネサンスの図像文化における古代異教的慣習の残存を、以下の三つの事例に即して、歴史人類学的観点から考察した。(1)古代異教の慣習や民間信仰を基層とするルネサンス期の終末論的預言や奇蹟の言説と図像、(2)ルネサンスの肖像史にみる古代異教の「祖先の像」「像による葬儀」「コンセクラティオ」の残存、(3)ルネサンスの像文化における奉納像(エクス・ヴォート)の地位。いずれの成果も論文として発表するとともに、出版を予定している著書の一部にて公開する。
著者
井上 悦子
出版者
佐賀医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

「目的」この研究は100歳長寿者の健康度,生活像及び生活支援ニードを明らかにすることを目的とした。「対象」佐賀県に在住する100歳長寿者で承諾の得られた79名を対象とした。「方法」半構成的質問紙を介した面接調査を1.HDS-R 2.Barthel Index 3.老研式IADL 4.AADL 5.PGCモラールスケール6.ライフイベント調査(喜び悲しみの体験,苦労したこと,生きがい)の測定具を使用して行った.「結果」年齢100歳-107.(平均10.1.2)性別男性6名,女性73名,居住場所.在宅22名(27.8%)施設57名(72.2%),HDS-R.8.52,Barthel Index45.38,老研式IADL1.59,AADL1.42,PGCモラールスケール8.79であった。80-90歳寿者24名を同じ尺度で行った調査結果は.HDS-R 19.75,Barthel Index96.67老研式IADL8.21,AADL8.35,PGCモラールスケール9.63であった。身体的能力及び認知能力においては100長寿者と80-90歳寿者の群間にt検定において有意差(P<0.01)があった。ライフイベント調査では両群間においての有意差はなかった。ライフイベントによる生きがいについては,明確に自分の生きがいを答える事ができた者は21名(26.6%)であった。生きがいがあると答えたものには「佐賀県で長寿者一番になるやゲイトボールで勝つ事など人生に対して目的があり,まだまだ何年でも生きたい」と意欲的であった.生きがいがないと答えた対象者はその理由として「ここまで長く生きたからもう十分という満足感」と「長く生きても仕方が無い」「夫・子供・友達も逝ってしまった」という無力感や寂寥感が述べられた。佐賀県に居住する100歳長寿者の主観的幸福感は身体動作能力,認知能力の高い者が生活においても満足しているが全体の概ね1/4の回答によるものであり対象者全体の中では少数である。この考えにおいて100歳長寿者全体としての満足度は低いと考えられる。100歳長寿者がますます増える傾向にあるが,身体能力が低下してない80代からのADLの強化につながる活動計画が100歳長寿者の生活満足感を得る一つの方策と考える。
著者
鈴木 薫 高瀬 浩一
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

エタノールとシリコン基板の境界面に直流沿面放電を行い、陰極と基板間に挟んだ触媒金属メッシュの溶融とエタノールの熱分解によるカーボンナノチューブ(CNT)の析出で鉄やニッケル・銅・ステンレスを内包したCNTの生成に成功した。特にNi内包CNTは、直径D:5~80nm・長さL:50~800nmと直線でアスペクト比が10~20と高く、3~50層のグラフェンがNi棒の周りに析出したCNTが生成し、Niは面心立方構造の結晶性を有し格子定数は0.34nmであった。また、強磁性金属内包CNTを収束イオンビームにより針状タングステン先端に移植し、磁気力顕微鏡用の新規なプローブ作製に成功した。
著者
別府 哲
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

高機能自閉症児における社会性障害の基底にあると考えられる、情動表出や情動理解の障害について、以下のことを明らかにした。(1)情動理解を意識的な情動処理と、無意識的な情動処理に分けた際に、自閉症児は、意識的な情動処理は高い言語能力の補償によって可能になるが、感情プライミングや表情の自動模倣にみられる無意識的な情動処理には障害を持ち続けること、よって無意識的な情動処理が一次障害と考えられることが示唆された。(2)不安な情動のコントロールは、アタッチメント関係を形成することによって可能になる。自閉症児のアタッチメント関係形成を縦断的に検討した結果、自閉症児もアタッチメント関係形成は可能であること、しかしそれが定型発達児より高い言語能力によって成立し、その際アタッチメント対象を心理的安全基地ではなく道具的安全基地と把捉するという障害による特異性も存在することが示された。(3)就学前の高機能自閉症児における自己表情写真の情動理解を検討した結果、知的に遅れのない就学前の障害児はその理解が可能であったのに対し、高機能自閉症児は障害を示すことが明らかとなった。(4)高機能自閉症児は小学生から中学生の時期にかけて、孤独感が増大し社会的コンピテンスが減少すること、定型発達児と比較すると、9,10歳の節で有意な差がみられるようになることが示された。