著者
佐藤 亨
出版者
青山学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は北アイルランドの文化、歴史、社会について、とくにアイルランドが南北に分断した 1921 年以降を中心として、広く、かつ深く研究し、北アイルランドの詩的想像力の諸相(文学作品やミューラル)を検証した。その主なる研究成果は『北アイルランドのミューラル』と北アイルランドないしアルスターを代表する詩人論(サミュエル・ファーガソン論とルイ・マクニース論)である。ほかに、プロテスタント地区とカトリック地区の境界であるインターフェイスを取り扱う論文も書き、北アイルランド紛争の現状についても考察した。北アイルランドに特化した本研究は、ポスト・植民地、ナショナリズム、少数派の問題などを抱える、世界中の他の紛争地域の研究にも貢献すると自負する
著者
前門戸 任 西條 康夫
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究では研究者がすでに作製しているSLPIプロモーターを用いたアデノウイルス(AdSLPI.E1AdB)の非小細胞肺癌特異的腫瘍の腫瘍選択性についてさらに研究を進め、in vitroだけでなくin vivoにおいてもSLPI分泌非小細胞肺癌で複製されていることをその抗腫瘍効果と同時に観察した。SLPIプロモーターのはたらきをその下流にレポーター遺伝子をつなぎマウスの静脈に投与を行うと、肝臓での発現は僅かにしか認められず、気管内投与でも発現する正常細胞は太い気管支に少数の細胞が認められるのみで当ベクターの安全性が期待できる。次に、非複製アデノウイルスであるAdCMV.NK4(NK4はHGFの分子内断片でありHGFのアンタゴニストとしてのはたらきとHGFに依存しない強力な血管新生阻害作用御もつ)とAdSLPI.E1AdBの併用療法を行った。二つのウイルスが同一SLPI産生腫瘍内に感染したとき、AdSLPI.E1AdBより発現したE1A蛋白がAdCMV.NK4にはたらき、単独では複製しないAdCMV.NK4に複製と発現増強が認められた。また、この併用療法を腫瘍に対し試みると単独療法を凌ぐ効果があり、なおかつ通常の遺伝子治療では効果を発揮することが難しい径が1cmを超える腫瘍に対しても十分な効果を発揮することが出来た。腫瘍組織の分析では、AdCMV.NK4の作用である血管新生阻害の増強が認められた。この二つのウイルスベクターの併用療法は非小細胞肺癌特異的な強力な遺伝子治療として期待できる。
著者
押元 信幸 三澤 一実 大成 哲雄 小野寺 和子
出版者
東京家政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、造形ワークショップの教育・指導プログラムを「アウトリーチ活動」(学校における文化・芸術の普及活動)することにより、将来の美術教師養成のシステムを構想するものである。
著者
室田 保夫 今井 小の実 倉持 史朗 原 佳央理 佐野 信三 竹林 徑一 大野 定利 水上 妙子 鎌谷 かおる 片岡 優子 新井 利佳 蜂谷 俊隆
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

3年間の共同研究の成果を終えて、第一に大きな成果は社会福祉史のみならず近代日本史、大阪の近代史にもきわめて貴重な博愛社の史料整理とその保存が出来たことである。具体的には史料目録(仮)の完成とおよそ90箱にも及ぶ資料の保存である。研究の方では創立者小橋勝之助の日誌の翻刻といった研究が進捗した。そして機関誌の複製の作成、また史料が整理されたことによって研究への道がついた。さらにこの作業をとおして研究仲間同志の博愛社研究についての共有するところが大になったことも付け加えておこう。
著者
下田 慎治
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

原発生胆汁性肝硬変(PBC)は慢性非化膿性破壊性胆管炎を病理学的特徴とする臓器特異的自己免疫疾患である。今回胆管上皮細胞破壊におけるToll様受容体(TLR)リガンドとNK細胞の役割を明らかにした。TLR3リガンド刺激で単球から産生されるIFN-aの存在下で、TLR4リガンドで刺激されたNK細胞が、自己の胆管上皮細胞を破壊する事が明らかになった。実際に肝臓由来の単球からのIFN-a産生はPBCにおいてその他の疾患対照群と比較して亢進していた。また免疫染色の結果から破壊された胆管周囲にCD56陽性のNK細胞がPBCでより多く散在している事が明らかとなった。次にマウスモデルを用いて、病初期の免疫誘導にNK細胞のような自然免疫攻撃細胞の果たす役割を明らかにした。NK細胞を除去すると抗ミトコンドリア抗体の産生や自己抗原反応性T細胞からのサイトカイン産生が抑制された。しかし門脈域の炎症は対照群と比較して大きな差は認め得なかった。これらの結果は、PBCの病因病態は多段階あり、NK細胞は免疫寛容の破綻に関与している事が示唆された。
著者
二宮 啓子 内 正子 辻 佐恵子 丸山 浩枝 庄司 靖枝
出版者
神戸市看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

家族参加を強化した学童の生活習慣改善のための一年間の介入プログラムを行い、その効果を明らかにした。参加者は22組の親子であった。介入直後の変化としては、22名中17名の子どもに改善した生活習慣があり、自己管理能力が高まっていた。7家族では、子どもと親の生活習慣の管理に対する意識が高まり、行動変容が見られた。また、介入前、直後、1年後の3時点の調査結果が得られた10組中4組の子どもは介入直後に生活習慣や肥満度が改善し1年後もそれを維持できていた。5組は介入直後に改善したが、介入1年後にはそれを維持できていなかった。1組は改善しなかった。
著者
内田 雄造
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本年度の研究成果は次の通りである。1.なぜ仮設市街地が必要とされたか-阪神淡路大震災後の仮設住宅計画の失敗(1)住民がコミュニティから引き離され、孤立し、無気力になったり孤独死が続出(2)住民がバラバラとなり復興まちづくりに際してコミュニティとしての意見が集約できなかった2.中越震災被災者・山古志住民のための陽光台仮設市街地の実態把握を行った(1)住戸タイプと住戸割当て計画の実態(2)仮設市街地の配置計画3.陽光台仮設市街地における菜園計画と仮設住宅団地内の空地における野菜や花卉の栽培の実態(1)生きがい健康農園の計画と利用実態(2)仮設住宅団地内空地における野菜や花卉の栽培の実態4.陽光台仮設市街地におけるボランティアなどのより住民への生活支援活動の実態把握(1)ボランティアセンターの活動報告書にみる生活行事(2)ボランティアセンターの活動報告書にみる住民への生活支援活動の実態(3)ボランティアによる住民への生活支援に活動の延長としてのLIMOの復興支援員活動5.関東大震災時の(財)同潤会による仮設市街地の建設事例調査(1)仮設市街地建設の経緯(2)仮設市街地の住宅計画と施設計画(3)仮設市街地の「処分計画」と実態
著者
宇津宮 孝一 西野 浩明 吉田 和幸 賀川 経夫
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

いつでも,どこでも,何にでもつながるユビキタスなネットワーク環境において,モノとモノとの実物系センサネットワークとインターネットとを相互接続し,複合現実感技術を用いて実空間と仮想空間とを融合した新たなユビキタス環境内で,移動体が協調しながら作業をしていくことを可能にするためのアドホックセンサネットワークの構築法を考案した。
著者
前野 譲二 原田 康也 楠元 範明 原田 康成 楠元 範明
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

携帯電話端末上で語彙学習を行うため、インターフェースについて携帯電話の特性を考慮したプロトタイプを作成した。語彙学習に付いて、語彙の難易度に関する検討を行い、約10,000語の語彙について辞書や難易度データーが公表されている指標に基づいて難易度分類を行った。また、学習個別化のために項目応答理論に基づいた出題の自動化に関する検討を行った。
著者
渡邊 晃
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

移動透過性とアドレス空間透過性の機能を統合し実装を完了した. FreeBSDで開発済みのGSCIPの基本部分をWindowsへ移植し, 安定動作することを確認した. 管理装置の実装を行い基本部分の動作を検証した. CVS(Concurrent Versions System)を用いて管理を実施中であり, ソースコード公開に向けての準備をほぼ完了した. 国内学会の口頭発表13件, 国際会議口頭発表2件, 論文誌掲載2件を達成した.
著者
蓑原 隆
出版者
拓殖大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では広大なアドレス空間を持つIPv6通信を対象としてアドレスに関するプライバシーを高める方法として,複数の中継ノードを利用するアドレス変換,および, Mobile IPv6におけるホームエージェントの多重化による位置プライバシーの保護の方法を提案した.また, Linux上に提案手法を実装し,そのオーバヘッドがネットワークの遅延速度に比べて許容範囲内であることを実験ネットワークで確認した.
著者
吉田 典子
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は19世紀後半のフランスの自然主義小説、とりわけエミール・ゾラの作品の分析を通じて、近代の資本主義社会の形成と、そこにおける階級やジェンダーの問題を検討するものである。『ルーゴン=マッカール叢書』第8巻の『愛の一ページ』は、その前後に位置する『居酒屋』および『ナナ』と一種の3部作を構成する。『居酒屋』は性的規範の曖昧な労働者階級の世界を描くのに対し、『愛の一ページ』は家庭に閉じこめられた貞淑なブルジョワ階級の女性を描く。そして『ナナ』では、階級とジェが交錯し、金銭に基づく性的交換がおこなわれるモダニティの空間(グリゼルダ・ポロック)が舞台となる。ゾラはこれら3つの領域をパリの都市空間の中に位置づけるとともに、それぞれの領域における女性のセクシュアリティの様相と、遺伝に基づく精神疾患の様々な発現を探求している。一方『ボヌール・デ・ダム百貨店』はモダニティの最前線というべきデパートを舞台にした小説である。ここでも階級要素は混交し、客であるブルジョワ女性と女店員として働く労働者階級の対立があるが、ゾラによれば日々贅沢に接している女店員は、労働者とブルジョワの中間に位置する曖昧な階級を形成する。彼女たちの多くは低賃金であったため、愛人を持たざるを得なかったり、売春をおこなうものもいたが、それに拍車をかけたのは、陳列される商品と売り子の関係の曖昧性である。交換価値が使用価値に取って代わる消費社会においては、あらゆるものが商品となる。そうした状況下で、誘惑に抵抗し、忍耐強く賢明な「女性性」によって経営者のムーレを征服するヒロインのドゥニーズは、資本主義社会における理想の女性像として提示されており、そこにある種の人間味と倫理性を付与する役割を果たしていると思われる。本研究の特色は、これらゾラの小説におけるさまざまな女性のモチーフを、同時代の印象派画家たち-マネ、モネ、ルノワール、ベルト・モリゾなど-との共通性において提示したことである。
著者
米村 典子
出版者
九州芸術工科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

グリゼルダ・ポロックの1998年の論文「モダニティと,女性性の空間」はフェミニズム美術史の中でも,男性/女性,見る/見られるの二項対立構造を脱構築しようとした画期的論文であった.だが結びに至ってポロックは,同性の間でのみ女性は見る主体として自由になれるととれる論調に転じ,二元論に回帰している.本研究では,画家とモデルの見る/見られるの関係が最もむき出しで立ち現れるアトリエという遮蔽された空間に注目し,アトリエにおける女性画家の眼差しの性格を明らかにすることと,それによりポロックのいう「女性性の空間」に従来とは別の角度から批判と展望を加えることを目的とした.・平成9年度1)文献資料収集:印象派の女性画家ベルト・モリゾやメアリ・カサットだけでなく,19世紀後半によりアカデミックな作風で描いた女性画家たちの書簡集,画集などの資料を収集し,検討した.2)視覚資料の収集とデータベース化:個人のアトリエおよび美術学校の教室としてのアトリエの写真を収集し,検討した.女性画家たちの作品やアトリエ内を描いた絵画や写真資料については,スライドに撮影し,コンピュータに画像として取り込みデータベース化した.・平成10年度1)引き続き資料収集の解読・検討,入手した資料のデータベース化を順次行った.2)女性画家の自己イメージをその表像から検討する.この点で興味深い画家として,日本では未紹介のマリー・バシュキルツェフを発掘し,その生涯と作品について調査を行った.・平成11年度バシュキルツェフについては,「「描/書く」女――マリー・バシュキルツェフとフェミニズム美術史」というタイトルで論文集『女性たちの近代』(勁草書房2000年出版予定)においてまとめた.また,研究成果報告書では,ポロックが『女性性の空間」を示しているとしたアトリエのモリゾとモデルの写真の再検証を出発点として,アトリエという空間にいる女性画家という視点からポロックの二元論を回避する新視点を提起した.
著者
寺尾 美子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

アメリカの内部告発者保護に関係した法制度につき、連邦法・州法、制定法・判例法、一般法・個別法につき、総合的考察を行いアメリカ法の特徴を明らかにしたとともに、アメリカにおいて内部告発者保護法制発達の社会的背景を探りつつ、内部告発者保護法制の目的や、内部告発に孕む諸種の問題点に関する考察も行った。
著者
西山 功一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

これまで血管内皮細胞にHLH転写因子Id1を過剰発現させることにより、増殖能、遊走能が増強され、in vitroおよびin vivoでの血管新生作用が亢進することを解明してきた。本研究においては、Id1の血管新生作用に関与する分子メカニズムに関し検討を行った。H18年度の研究において、1)マトリゲル上でのin vitro血管新生評価系において、血管形態形成過程ではId1は核から細胞質に局在を変化させ(核-細胞質移行)、2)この核-細胞質移行にはcAMP-protein kinase A (PKA)系にて制御されるCRM-1/exportinシステムが関与しており、3)Id1の5番目のセリンのリン酸化が重要である可能性があることを示した。これにより血管新生におけるId1の新規制御メカニズムの一つとして、血管形態形成過程にけるId1の上流の調節機構を見出し得た。平成19年度の研究においては、特に、Id1結合ターゲット分子、下流分子とその生理的意義に焦点を絞り研究を行った。その結果、1)マウス大動脈片のタイプ1コラーゲン内3次元培養系による血管新生評価系にて、新生血管内皮細胞におけるId1の核内発現強度は均一でなく、その発現には空間的周期性があることが解った。血管形成過程にてのこのような制御を受ける分子としてNotch/Hey経路が示されていた為、Id1とNotch/Hey経路のクロストークを推定し培養細胞系にて検討を行った結果、2)Id1はHLH転写因子Hey2を含めたいくつかの重要なNotch下流分子を負に制御していることが解った。3)さらに、その制御にはHey2の発現上昇が関与していた。これらの結果はId1とNotchシグナル経路のクロストークによる新規血管新生制御メカニズムの可能生を示唆するものである。また、Notch/Hey2経路は動脈内皮細胞分化にも重要であることが解っており、Id1が同経路を制御することで動静脈分化機構にも関与する可能生をも示唆するものであり大変興味深い知見であると考えられる。
著者
五十嵐 治一 黒瀬 能聿 五百井 清
出版者
芝浦工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

ロボット・フィールド上方に般若したビデオカメラ(グローバルビジョン),ホストPC1台(画像処理サーバ,通信中継サーバ,リモートブレイン用プログラム),ホストPCに内蔵された画像キャプチャーボード,ロボット5台から構成されるロボットシステムを構築し,次の4つの研究を行った.第1に,ロボットのマーカ認識において,照明条件に頑健な色抽出法の研究を行った.この目的のために,背景色(床画の緑色)とマーカの色(黄と青の2色),ボールの色(オレンジ)の閥値データベースを利用した方式を考案し,評価実験を行った.特に,濃い影の領域を人工的に生成し,影の存在するロボット・フィールド上での3色の抽出も試みた.実験では,商い正抽出率と,低い誤抽出率が得られ,提案方式の有効性を確認することができた.第2に,ロボス社製の4輪全方向走行型ロボットを使用して,走行制御の学習法に関する研究を行った.学習法としては強化学習の一種であるQ学習を用いた.具体的な例題として,ロボット1台が静止状態から目標点へ直進するタスクを取り上げて学習実験を行った.実験の結果,直線軌道の角度誤差を半減させるという効果を得ることができた.第3に,マルチエージェント・システムにおける行動学習法として,方策勾配法を用いた学習方式を考案した.応用例として,獲物と複数ハンターとによる「追跡問題」,カーリングにおける簡単な2体力学問題の逆間題,サッカーエージェントにおけるキッカーとレシーバとの協調行動問題を取り上げて,学習実験を行い,その有効性を検証した.第4に,移動ロボットの誘導制御に用いるために指示位置情報が取得可能な小型ポインティング装置を開発した.
著者
平田 豊
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

運動学習の中核を担う小脳内情報処理機構を魚類を用いた神経生理学実験により明らかにした.また,その知見を数理モデルとして集約し,計算機内に実装して,ロボットアーム等に用いられる実機モータの制御に応用することに成功した.
著者
赤塚 若樹
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-10-20

本研究のテーマは、20世紀チェコの視覚芸術における文学的想像力のはたらきを、美術史的・文学史的・文化史的観点からだけでなく、歴史的・社会的・政治的文脈においても検討することにあった。絵画、写真、グラフィック・デザイン、コラージュ、映画、アニメーションといったさまざまなジャンルをあつかいながら、20世紀に開花したチェコの視覚芸術が、表現の点でも思想の点でも、文学と密接な関係を取り結びながら発展してきたことをあきらかにした。
著者
中村 香子 ホルツマン ジョン
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、民族文化観光が、ホストである地元の人びとにとって、どのような経済的資源・文化的資源となっているのかを解明し、地域社会の開発=発展のために民族文化観光が果たしうる役割を探究することを目指している。本研究では、アフリカの「マサイ」を事例に、現地の人びとがみずからの「伝統的な文化」(ダンス、儀礼、装身具、衣装、家屋など)を外国人観光客に提供する民族文化観光が、地元の人びとの経済を支え、自文化に対する誇りを高めるために果たしうる役割に関する情報基盤を提出する。
著者
高橋 進 元田 結花 安井 宏樹 小舘 尚文
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1.政権交代の政治学の狙いは、主として2つあった。一つは戦後西欧諸国の政権交代の事例研究を実証的に行なうこと。2つめは、政権交代に関する政治理論を考察することであった。2.第1の目的については、「東京大学COE先進国における《政策システム》の創出」と協力し、試論的に考察した(本プロジェクトの研究分担者以外にも協力者も求めた)。その成果は、COEのOccasional Paper「政権交代の政治学」として刊行済みである。その後研究会を重ね、修正の後、今年度又は来年度に東京大学出版会から本として刊行される。扱う国は、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、オランダであり、それに理論編が加わる予定である。3.2つ目の目標は、現在研究代表者である高橋 進が、その理論モデルを研究中であり、先の東京大学出版会から刊行予定の本に収録する。内容は、レジーム変動と政権交代の中間にあるセミ・レジーム変動といえる政権交代を抽出することにある。そのため分析レベルを3つに区別し、第1のレベルとして、政治的思潮の変化(例えばサッチャリズムから第3の道へ)がどのように生起するのかに焦点をあてる。第2のレベルとして政党システムの再編成を扱う(例えば日本の55年体制の崩壊とそれと同時に起きた政党システムの再編)、第3のレベルは政策の問題であり、与野党間の政策距離の違いが政権交代にどのような影響を与えるのかというのが具体的内容である。4.以上の研究に付随して、先のCOEとも協力して、COEのOccasional Paperとして「変調するヨーロッパ政治」を刊行。加えて、これもCOEと協力してEUに関するシンポジウムも開催(2005年9月)し、それもCOEのOccasional Paper, EU Symposium : The EU Constitutional Treaty and the Future of Projectを刊行した。〔以上〕