- 著者
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幸田 正典
宗原 弘幸
渡辺 勝敏
- 出版者
- 大阪市立大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2004
協同的一妻多夫魚(J.transcriptus)を用い,(1)体サイズが婚姻形態形成にもたらす影響2)トリオ内でのαとβ雄での精子競争の実態,(3)協同繁殖トリオでの雌の父性の操作,(4)さらに雄による自分の子供の父性の認知様式の,主に4点について飼育実験を行った。特に本研究(3),(4)について集中的に検証研究を実施した。(3)については,ペアとトリオでの比較から,効果的に実験成果として示す事ができた。まず巣場所選択をみると,ペアの場合は幅広巣とくさび巣ともに選好性はないが,トリオの場合雌は明らかに楔巣を好む。これにより,卵の受精は大型のα雄と小型のβ雄の両雄がクラッチを受精させている。この際,巣の奥の狭い場所に産む事でβ雄が,手前の幅広い場所に産むことで,大型のα雄がより多く受精に成功している。すなわち,雌は巣の奥あるいは手前にと産卵場所を変更する事により,二雄の受精率を操作する事ができる。その際,β雄に受精させる事により,雌は自分自身の保護量を減らしていると考えられる。このような,雌による受精の操作ははじめて検証されたものであり,また魚類での雌の父性操作としてもはじめての例である。(4)のために,我々は,摺ガラスで作った半透明巣を用意した。この巣を使うことにより巣の内部での雌雄の関係をビデオに納めることができる。結果はまだ流動的ではあるが,今の所以下の点が示唆されている。β雄は飛び込み放精をするが,その飛び込み頻度と父性に優位な相関があり,β雄は飛び込み回数で父性を評価している可能性がある。逆にα雄は飛び込みを阻止する頻度と父性が相関しているようであり,これにより雄は父性を判定している可能性がある。また今後雌はこれらの雄の父性の指標を操作し,より多くの保護を雄からひき出している可能性も有る。このような視点での研究はまったくなく,これら一連の経緯は今後さらなる実験による検証が必要である。