著者
安野 正明
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

西ドイツの建国は1949年だが、当初は権威主義的で反民主主義な1933年以前からの政治文化との連続性が強く、戦後民主主義の定着は自明だったのではなかった。政治文化の本質的変化を伴いつつ民主主義が根付いた「第二の建国期」と言うべきは1960年代で、そのテーゼを裏付ける様々な社会分野の変動と近代化プロセス、また1968年の抗議運動のインパクトを分析した。また、ドイツでの未刊行一次史料の発掘を行いつつ、1960年代ドイツ社会民主党史の実証研究を進め、「研究成果」に記すようにいくつかの不適切な定説を修正した。
著者
長嶋 俊介 野田 伸一 日高 哲志 河合 渓
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

前年度チューク環礁での予備調査に続き、本予算で2度の現地調査を行った。特に小島嶼における環境変動に絞った調査で、チューク環礁本島のウエノ島の他、ピス島、ロマヌム島、ファラパゲス島で、海岸部陸域、海域、環境衛生、社会変動、社会不安、生産基盤と文化・社会の持続可能性問題について調査を行った。社会面では、グローバリゼーションの与える変動は主島のみでなく、属島部でも顕著で、グアム・ハワイ・米国本土への出稼ぎ・送金、また金銭経済的消費習慣の村落経済への浸透が食生活面に及びつつある。今後の情報化・電化・耐久消費財浸透の始動以前の2006年段階の諸事実を、現地で補足しておけたことは意義深い。またかかる社会変動に関わる不安感も、文化・ライフスタイル面で観測されたが、島のアイデンティティ面にまでは及んでいない。生産面での、持続可能性に関わる危機意識は強く、人口過剰意識・自然環境危機意識もみられた。後者では、台風、海進、異常高温に関して強い経験に裏打ちされた危機意識であり、その近年における諸事実を確認した。海進でのタロパッチ被害(未回復)箇所、海岸部浸食箇所、磯焼け被害等について精査し、その現状捕捉も行った。例えば、温暖化に伴い珊瑚礁の白化した場所は各所に観察され、温暖域に棲息する貝類(シャコガイ類やカサガイ類)も多く分布しており、何らかの影響が起こっていると考えられる。エルニーニョ被害時の高温・磯焼け、ラニーニャ被害時の海進、異常台風時の塩害は、甚大且つ加速化しつつある。それら事実のさらなる、体系的・総合的・現地との協働による記録化体制の確立は急務である。現地での危機管理対応や、関係機関共同での研究体制の確立、センサゾーン確立に向けての話し合いを、グアム大学ミクロネシア地域研究センタースタッフなどとグアム大学で行うと共に、鹿児島大学で韓国海洋研究院(チューク環礁に調査研究所を保有する)、グアム大学上述スタッフ及び気候専門家、南太平洋大学漁村海岸域資源管理専門家と共に、今後の体制確立について話し合い、その上で国際シンポジウム、Climate Changes and Globalization-Environment and People's Life in the Pacific Islands-を、一般にも公開にして行った。その成果は、南太平洋海域調査研究報告No.48(総頁78)として英文で刊行し、現地関係者並びに関係機関に配布した。
著者
小野里 好邦 山本 潮 河西 憲一
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

多様な事象が生起しても情報の流れに対して大きな影響を及ぼさないためには、情報ネットワークの機能を損傷しない仕組みが大切である。想定外の事象が生じたとき情報ネットワークが生き延びる為の対処法として、情報ネットワーク構成に冗長性を持たせ高い結合度を確保する仕組みを内包しておき、多様な状況変化に迅速に対応し情報の流れを大域的及び局所的に制御する研究を行った。
著者
後藤 順久
出版者
日本福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

1.対象地域での実証実験災害発生(地震)直後において、聴覚障害者が自宅(職場・学校)から避難所までの第一次避難を、安全かつ最適に実行するための支援ツール(避難支援情報システム)の有効性を確認することを目的とし、半田小学校を避難所と想定し、聴覚障害者及び見守りネットワークの役割を持つ被験者を割り当て、実験シナリオに基づき実証実験を実施した。2.システムの有効性評価実証実験を通じて、おおむね、以下の有効性が確認できた。(1)文字情報で伝わるため、情報の誤解が少ない。(2)Web連携機能によりメッセージの返信が可能であり、到着確認が確実に行える。(3)返信には、メッセージの候補が登録でき、聴覚障害者にも操作が容易である。(4)余裕のある聴覚障害者からは、災害情報も返信され、システムの危険エリアの追加等に利用できる。今後の課題として、以下のことが確認できた。 (1)災害時にはメール遅延等の影響が懸念される。 (2)メール送信時にGPSの位置検索のメッセージが表示されると、誤って位置検索をキャンセルするケースがあった。結果、その回の位置登録が行えないことが発生した。 (3)GPSについては、普段とは違う携帯機種を使ったため、メール確認等に手間取るケースがあった。 (4)今回の被験者である聴覚障害者は、携帯電話によるメールを普段使い慣れている点で、メールによる情報提供は有効な方式であることを確認した。ただし、障害タイプにより違いが発生するため、音声や手話テレビ電話等の併用を検討する必要がある。
著者
花渕 馨也
出版者
北海道医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

マルセイユのコモロ系移民のコミュニティでは、90年代から、同じ村出身者による同郷組合の組織が急激に増加した。同郷組合の活動の中心は、故郷村への援助活動であり、「援助文化」として新たに創造された、資金を集めるためのイベントを頻繁に開催している。本研究では、同郷組合活動の実態の分析を通じ、移民と故郷は村の伝統的社会構造を再編成するトランスナショナルなコミュニティを形成する一方で、援助をめぐる威信競争による新たな社会関係が生じることで位階的な社会構造に変化が起こりつつあることを明らかにした。
著者
田中 耕太郎
出版者
山口県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

育児の領域では、児童手当が政党間の理念の対立と制度変更を経て税の体系に一元化され、育児期間の年金算入と年金分与も女性の老後保障をめぐる立場の違いを超えて社会に定着してきたが、そこでは連邦憲法裁判所判決が決定的な影響を与えた。これに対して、若い親世代に対する育児手当と育児休業、保育所等の整備については、大きな流れはできつつあるものの、なおそのあり方をめぐって意見の対立と政策の模索が続いている。
著者
川野 因 樫村 修生 田中 越郎
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

平成16年度は大学男子陸上長距離選手41名を対象に選手の希望と5月期のヘモグロビン濃度をもとに鉄剤非摂取(N、13名)群と鉄剤摂取群に、さらに鉄剤摂取群はランダムにヘム鉄摂取(H、14名)群とクエン酸鉄摂取(C、14名)群に分けた。市販の鉄剤は5月期から7月期までの2ヶ月間に一日7mgの鉄量を摂取させ、調査期間は5月から9月までの4ヶ月間のうち、5月から7月が鉄剤摂取期、7月から9月期の2ヶ月間は鉄回復期とし、血液状態及び栄養素等摂取量を調査した。一日あたりの食事由来の鉄摂取量は5月期、7月期、9月期において、時期および鉄剤摂取の有無による有意な差は見られなかった。5月期の体内鉄状態は低ハプトグロビン濃度(hp)で示される「溶血」発現選手が41名中21名であり、すべての群で同様に出現していた。貧血発現者は5月期から7月期での期間中でそれぞれ4名、9月期に7名が観察された。H群とC群で9月期の増加が認められた。鉄飽和率はN群で5月期に比べ7月、9月に低下したものの、H群、C群では有意な変動が見られなかった。H群でhp濃度の増加が見られ、低hpを示す選手の割合も減少した。鉄補足なしのN群で貧血出現者が最も少なかったことから、体内鉄状態の良い選手は少ない鉄摂取を効果的に活用できる可能性が、一方、体内鉄状態が不足する者は鉄剤を使って摂取量を増やしても十分な赤血球合成ができない可能性が示唆された。平成17年度は食教育に力点を置き、パフォーマンス向上に向けた選手の日常食生活の気づきを促すことを目的として、半年間に渡る栄養教育を実施した。期間は5月から9月までの4ヶ月間であり、月2回の講義による食・栄養知識の提供、月1回の食物摂取状況調査、月1回の間食や日曜日の食事の取り方調査を実施するとともに、栄養教育の結果評価には食・栄養テスト、食事摂取実態調査を行った。その中でも、5月の調査時に最も摂取不足が見られた牛乳・乳製品と果物、野菜類摂取に焦点を当てて、教育・指導した。5月期に比べ6月期、7月期と選手の栄養・食品に関する知識は増加し、牛乳・乳製品の選択頻度も増加した。しかし、9月期の食品選択状況は5月期にまで低下した。意識や習慣の定着には3ヶ月間という教育期間・時間が短い可能性が考えられた。
著者
藤腹 明子 得丸 定子 清水 茂雄 田宮 仁
出版者
飯田女子短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的としては、まず日本的「いのち」教育の必要性と意義、さらにはその教育の在り方について、仏教を基調として論拠をもって明確にすることであった。そのために、日本における「いのち」教育の歴史的な系譜の整理と確認、あるいは欧米のみならずアジア各国の義務教育レベルでの実情を把握し、その上で、幼児、義務、専門、生涯等の各教育段階に即したカリキュラム、テキスト、教材等を、指導時期・場所(媒体)・方法論と併せて作成することを当初の目的とした。研究分担者の田宮や得丸らが粗織した「新潟大・上越教育大 いのちの教育を考える会」で、13年度に「いのち教育実践のための研修講座」を上越教育大で開催し、学校教育現場における「いのち教育」の実態や問題点、教員の抱えているニーズを把握することができた。また、医学や看護学教育に携わる教員、仏教者、ビハーラ僧、患者や一般の方から「いのち教育」に対する期待やニーズ等を知り得たことは、今後の研究に向けての課題や示唆となった。3年間の研究を振り返ってみると、当初の目的をすべて果たすまでには至らなかった。しかし、当初の目的であった、本研究の成果を形にするということでは、上記の公開講座の企画・実施、さらには学校教育における小学生高学年向けの「いのち教育」の教材作成等について、それなりの成果を得たのではないかと考えている。今後は、本研究を通して知り得た「いのち教育」に関する知識・情報・技術・教育方法等を、研究分担者それぞれが、看護教育、学校教育の場において活用していくとともに、今後は、家庭や社会における「いのち教育」のあり方や必要性の検討についても取り組んでいきたいと考えている。
著者
幸田 正典 宗原 弘幸 渡辺 勝敏
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

協同的一妻多夫魚(J.transcriptus)を用い,(1)体サイズが婚姻形態形成にもたらす影響2)トリオ内でのαとβ雄での精子競争の実態,(3)協同繁殖トリオでの雌の父性の操作,(4)さらに雄による自分の子供の父性の認知様式の,主に4点について飼育実験を行った。特に本研究(3),(4)について集中的に検証研究を実施した。(3)については,ペアとトリオでの比較から,効果的に実験成果として示す事ができた。まず巣場所選択をみると,ペアの場合は幅広巣とくさび巣ともに選好性はないが,トリオの場合雌は明らかに楔巣を好む。これにより,卵の受精は大型のα雄と小型のβ雄の両雄がクラッチを受精させている。この際,巣の奥の狭い場所に産む事でβ雄が,手前の幅広い場所に産むことで,大型のα雄がより多く受精に成功している。すなわち,雌は巣の奥あるいは手前にと産卵場所を変更する事により,二雄の受精率を操作する事ができる。その際,β雄に受精させる事により,雌は自分自身の保護量を減らしていると考えられる。このような,雌による受精の操作ははじめて検証されたものであり,また魚類での雌の父性操作としてもはじめての例である。(4)のために,我々は,摺ガラスで作った半透明巣を用意した。この巣を使うことにより巣の内部での雌雄の関係をビデオに納めることができる。結果はまだ流動的ではあるが,今の所以下の点が示唆されている。β雄は飛び込み放精をするが,その飛び込み頻度と父性に優位な相関があり,β雄は飛び込み回数で父性を評価している可能性がある。逆にα雄は飛び込みを阻止する頻度と父性が相関しているようであり,これにより雄は父性を判定している可能性がある。また今後雌はこれらの雄の父性の指標を操作し,より多くの保護を雄からひき出している可能性も有る。このような視点での研究はまったくなく,これら一連の経緯は今後さらなる実験による検証が必要である。
著者
松原 豊
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、太陽表面で加速された陽子により生成された高エネルギー(>100MeV)中性子を地上で観測することにより、太陽表面における高エネルギー粒子加速機構を解明することを目的とする。中性子は磁場の影響を受けず、加速時の情報を保持しているので粒子加速の研究には最適である。しかし、大気中では減衰してしまうので、名古屋大学太陽地球環境研究所を中心とするグループは、世界7箇所の赤道付近の高山に太陽中性子検出器を設置し、太陽中性子の24時間観測網を実現している。本科研費の申請は、その中で最も太陽中性子観測に最適な場所に設置されながら、最も旧式のデータ収集を行っていたボリビア・チャカルタヤ(高度5,250m,南緯16度)の太陽中性子観測システムを最新のものにおきかえ、2007年から始まる第24太陽活動期での太陽中性子観測に備えることを目的としていた。2年間の科研費使用の結果、チャカルタヤのデータ収集系は最新のものに置き換わり、無人の状態で停電してもその復帰時には自動的にデータ収集が再開できるシステムとなった。その間、観測網で2番目に好条件に位置するメキシコ・シェラネグラ(高度4,600m,北緯19度)側の研究者から同様システムを渇望され、本科研費の余力でシェラネグラのシステムも最新のものになった。従って、次期太陽活動期に備えて非常に強力な観測体制ができあがったと言えよう。科研費によるこの整備が進行中の2005年9月7日に大規模太陽フレアが発生した際、これまで我々が観測した中で最もきれいな太陽中性子イベントがチャカルタヤとシェラネグラの両検出器で検出された。これは、まさに本科研費で狙った通りのことである。このイベントは、チャカルタヤとメキシコ市にある我々の検出器ではない、中性子モニターでも検出されており、現在詳細な解析を行っている。
著者
勝呂 尚 浅野 正岳 浅野 正岳
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

歯髄細胞は数種類の異なる細胞から構成されていることが知られている。 しかしながら, その活性は低く, 長期にわたる継代培養は困難である。そこで本研究では, 歯髄細胞の性質をより詳細に検索するためにヒト歯髄由来細胞の樹立と解析を行った。 本申請期間では, 9種類のクローン細胞を樹立し, 樹立したクローン細胞間の遺伝子発現の違いをDifferential Displayにより検索し, 8種類の遺伝子を検出した
著者
城戸崎 和佐 仲 隆介 松本 裕司
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

外部と内部の明快な境界を持たず環境として連続する概念としてのに着目して、オフィスデザインに外部環境を直接的・概念的に取り入れるための基礎的な調査と実践を行い、オフィスデザイン上の要点とその効果を明らかにした。
著者
松原 好次 塩谷 亨
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

<研究成果の具体的内容>1 ハワイ語再活性化運動の核とも言うべきクラ・カイアプニ(ハワイ語を教育言語とする小・中・高校)におけるイマージョン教育の進展状況(カリキュラム及び教材の開発、学校数の増加など)を明らかにした。同時に、ハワイ語イマージョン教育の抱える課題(高学年の理数系科目担当者及びハワイ語教材の不足など)も明らかにした。2 ハーラウ・フラ(ハワイ伝統舞踊「フラ」の道場)が伝統文化及びハワイ語の保持・継承に果たす役割を明らかにした。特に、alohaの精神など伝統文化に対する尊敬の念を育成することによってハワイ人としての誇りを涵養できるという意味で、ハワイ語再活性化にとって不可欠な存在である点が明らかにされた。3 テレビ・ラジオ・新聞だけでなく、インターネット上で人気の高いコミュニティサイトにおけるハワイ語使用状況を調査することによって、ハワイ語再活性化に果たす新旧メディアの役割を明らかにした。<研究成果の意義・重要性>少数言語としてのハワイ語を再活性化するためには、学校教育以外にもさまざまな場が保障されなくてはしけないことを探ることによって、わが国において近年浮上してきたアイヌ語や琉球語の再活性化、あるいは外国籍児童生徒のための母語保障に関する新たな視点を提供することができた。特に、公教育における少数言語再活性化支援の具体例を提示しただけでなく、イマージョン教育を受けて卒業した若者が、獲得したハワイ語を家庭や職場等で活用していくための施策について明らかにした点は本研究の特筆すべき意義であろう。
著者
神田 千里 白川部 達夫 渡辺 尚志 黒田 基樹
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究の成果の第一としては、井戸村氏関係史料として知られる現存の原文書六〇点の殆ど、及び『歴代古書年譜』と題される家譜に収録された三三三点の総てが翻刻され、活字によって解読可能になった点である。残り約一〇点の解読により、井戸村氏関係史料全体の刊行が実現可能な段階に至っている。また関連する『嶋記録』『妙意物語』などの記録類の翻刻にも着手しており、井戸村氏関係史料に関する基礎研究はさらに進展することが期待できる。
著者
佐渡島 紗織 太田 裕子 冨永 敦子 ドイル 綾子 内田 夕津
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

早稲田大学における「学術的文章作成」授業(主に初年次生対象、領域横断内容、e ラーニング、大学院生が個別フィードバックする、全8 回1 単位)の成果調査を行った。三観点五段階の学術的文章評価ルーブリックを開発し、授業を全回視聴し課題をすべて提出した履修者707 人の、初回提出文章と最終回提出文章を評価し差を調査したところ、文章作成力が有意に伸びていることがわかった。また、付与されたコメントを分類するためのコードも開発し、コメントを分類した。文章作成力を伸ばした履修者とあまり伸びなかった履修者との間で、付与されたコメントの種類に有意差を認めることはできなかった。
著者
上山 義人 山口 奈緒子 窪田 泰夫
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

ヒト頭髪in vivo実験系を確立する目的で、単離ヒト頭髪毛包の凍結保存法を検討した。採取したヒト頭皮から眼科用ハサミ、ピンセットにて機械的に毛包を単離し、そのままSCIDマウスに移植する群と一旦凍結してから移植する群に分けた。直ちに移植する群は、その場で移植し、凍結群はDMSO添加細胞凍結用保護培地に浸漬して凍結用チューブに入れ、ドライアイスにて凍結し、液体窒素中に一週間以上おいて、BALB/cA-nu,scidマウス背部皮膚へ移植した。両群(凍結保存群92本、未凍結群58本)で毛包の生着率を比較したところ、凍結群27.2%、未凍結群27.9%で、凍結保存による差は認められなかった。組織学的にも差違は認めなかった。このように、単離ヒト頭髪毛包は通常の細胞凍結技術の応用で比較的簡単に凍結保存が出来ることが判明した。そのため、上記の方法で凍結保存しておけば、計画的な移植実験が可能となる。移植成功率が1/4-1/3と考えると、一匹に10本程度の移植をしておけば、ほぼ2本のヒト頭髪を持った免疫不全マウスが得られるということになり、十分、実用に耐えうる。以上の結果が得られたため、年齢、性、部位、疾患別に整理して、“単離ヒト頭髪バンク"を作ることを試みた。しかしながら、最近の剖検率の低下、特に、頭部の剖検体数の低下、臨床におけるインフォームド・コンセントの難しさなどの問題があり、現在までのところ、総数11例に止まっている(いづれも健常人の頭髪、男女ほぼ同数、部位別には側頭部が多い)。次に、この実験系を用いてヒト頭髪に対すエナント酸テストステロンの影響を調べたところ、投与群5本の内2本において毛幹の脱落を認め、生着した毛包にも組織学的に退行変性の像を認めた。しかし、変化の全くなかった毛包も認められたため、今後の検討が必要である。
著者
高橋 めい子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

癌の臨床症例において、PROX1の発現や変異の調査: 肝癌症例でPROX1の発現と癌の分化度や患者の生命予後との間に相関関係があり、PROX1の発現が低い程分化度が低く、また生命予後も悪い事が有意に示された。膵癌でも未分化のものであるほどPROX1の発現量が低いことが示された。癌細胞株でPROX1のゲノムDNAの変異は指摘されなかったが、同じ細胞株のRNAを回収し逆転写反応を行って得たcDNAで特定の4カ所でアデノシンからグアノシンへの同じパターンの変異が起きていることを証明した。細胞培養・臨床検体におけるRNA変異の検出システムの確立:SNP研究に利用されている多塩基プライマー伸長法を応用して、多数の細胞培養・臨床検体を対象としたRNA変異のスクリーニングシステムを確立した。このシステム確立により、多検体から目的のRNA変異を起こしているサンプルの抽出が効率的に行えるようになった。Clinical Research分野においても、RNA変異が及ぼす影響を患者の予後や腫瘍の進展形式等の観点から、網羅的・系統的に解析可能になり、大きな進歩をもたらすことが期待できる。PROX1の機能解析:まずsiRNAの実験系でPROX1の発現を抑えると細胞の増殖能は亢進し、逆にプラスミドを導入してPROX1を強制発現させると増殖能が低下することを証明した。次にTet-off/Tet-on Gene expression systemを用いて、野生型PROX1には増殖抑制作用があり、それがmutant PROX1では失われていることが示された。マウスを用いたin vivo実験でも同じ結果が得られ、野生型では腫瘍縮小効果が認められたがmutant PROX1では腫瘍のサイズはほとんど変化を認めなかった。PROX1は細胞増殖を抑制し、変異によってその機能が失われることが、vitroとvivo双方の実験で証明された。
著者
内田 恵理子 山口 照英 永田 龍二 石井 明子
出版者
国立医薬品食品衛生研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

ウイルスベクターの製造過程で混入する可能性のある増殖性ウイルスの検出は、遺伝子治療用ウイルスベクターの品質、安全性確保上重要な課題である。本研究ではウイルスベクターに混入する増殖性アデノウイルス(RCA)及び増殖性レトロウイルス(RCR)を、ウイルスの指向性細胞への感染性とリアルタイム定量PCRの迅速性、高感度性、定量性を組み合わせた感染性(R7-)PCR法により検出する方法を開発した。RCAは、HeLa細胞に感染させ、一定期間増幅後、細胞中のRCAのゲノムDNAをガラスビーズ法により簡便で効率よく抽出し、リアルタイム定量PCRで測定する感染性PCR法を確立した。感染性PCR法では、10^9 particlesのアデノウイルスベクターにスパイクした1pfuのRCAを感染3日目で検出可能であり、従来法の細胞変性効果(9日目で10,000pfuを検出)による検出と比較して、より短時間の培養で10,000倍も高感度にRCAを検出可能であることを明らかにした。RCRは、M.dunni細胞に感染させ、一定期間増幅後、上清中のRCRをポリエチレンイミン(PEI)結合磁気ビーズで濃縮し、ビーズ画分からRCRのゲノムRNAを抽出してリアルタイム定量RT-PCRで測定する感染性RT-PCR法を確立した。感染性RT-PCR法では、従来法のフォーカスアッセイと比較してより短時間の培養で10倍以上高感度にRCRを検出可能であった。また、上清中のRCRの替わりに細胞内に増幅したウイルスRNAをガラスビーズ法で抽出後に測定すると、より短時間の培養でウイルス検出が可能であった。さらに、RCRをPEI磁気ビーズと混合後に磁場の上で強制感染させる高効率ウイルス感染系を確立した。この感染系を利用して感染性RT-PCR法を行うと、さらに10倍以上高感度にRCRを検出できることを明らかにした。
著者
戸田 年総 中村 愛 芝崎 太
出版者
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

二次元電気泳動と質量分析に基づくプロテオーム解析技術を用いて、髄液中の酸化修飾蛋白質の網羅的探索を行った。その結果、アルツハイマー病の患者の髄液中では、それ自体がアミロイド病の原因となる一方でβアミロイドとの結合性を有し、βアミロイドのオリゴマー形成を阻害することによりアルツハイマー病の発症に対して抑制的に働いている可能性が示唆されているトランスサイレチンが特に強く酸化を受けていることがわかった。
著者
皆川 昌広 黒崎 功
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

Auto-Fluorescence Imaging(AFI)は表層型の腫瘍描出に有効であることがわかった.特に血流の多い肝臓に関してはよいコントラストが得られることより,肝硬変など表面凹凸の強く腫瘍の触知が難しい臓器に対する鏡視下手術において有用な技術であることを確認できた.また,fluoroscein sodiumと呼ばれる蛍光剤を使うと,肝胆膵においける細径の脈管部を強く蛍光させることが可能であり,このシステムを使った術中ナビゲーションの可能性を示唆できた.