著者
田中 規夫 湯谷 賢太郎
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は(1)ヒメガマとマコモの刈取り後の生長特性の比較と、(2)ダメージを受けたヨシとオギの競合優位性の変化の解明、の2点に大きく分けられる。ヒメガマの地上器官に対する水面上時期別刈取りを2003年5,7,8月に,マコモの7月刈取りを2003年に実施した。刈取りの影響は刈り取った後の葉の再成長特性,地上部・地下部バイオマス,芽の特性,地上部・地下部中のTNC含有率の動態により,両種の戦略の相違を把握した。2003年7月刈取りの影響を同年12月における地下茎量で調査したところ,ヒメガマは刈取らない場合より約30%減少したのに対し,マコモはほとんど減少しなかった。ヒメガマは茎の根元に形成される芽の構成率を拡大に関連する芽に比して大きく減少させたのに対し,逆にマコモは増加した。刈り取られたシュートを急激に再成長させるヒメガマとは対照的に,マコモは一次シュートの再成長に加え,その場の占有を高める二次シュートを多数成長させ地下茎量を維持している。生長モデルの応用に関連して、ダメージを受けたヨシとオギの優位性の変化を解析した.オギ・ヨシともに折れる規模の洪水を導入した場合,洪水導入間隔1年であれば両種とも群落の維持が危うくなる.洪水導入間隔が2〜5年程度であれば,混成群落が続く可能性があり,洪水間隔が大きくなると,オギの優位性が回復しヨシはオギに駆逐される可能性がある.そして自然再生を図る上で洪水導入を検討するのであれば,洪水間隔2〜5年が適当であり,ヨシのみが折れる規模の洪水導入は避けるべきであるといえる.
著者
忠 和男 川西 直樹
出版者
豊田工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

既設橋脚の耐震補強には、水平耐荷力の増加を抑え、変形性能のみを向上させることが必要とされる。本研究では、既設の円形断面鋼製橋脚について、従来までの縦リブ追加による補強に対して、縦リブの下端と橋脚底面との間にわずかなすき間を設ける耐震補強法(接触縦リブ補強)を提案し、その耐震補強効果について検討した。これらの結果、提案した耐震補強により補強前の橋脚に対して水平耐荷力の増加をごく僅かに抑え、変形性能の向上を図ることができることが確認された。
著者
村上 英樹
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1.貨物航空会社の提携による規模の経済と範囲の経済に関する分析本研究は、インテグレーター化する航空会社が、従来型の航空会社に対し、垂直的差別化行動をとると仮定し、そのための投資が、航空会社の利潤にどのように影響するかを経済理論モデル化した。その上で、モデルの現実妥当性を部分的に実証した。理論モデルによると、垂直的差別化を行う航空会社は出来るだけ支出を抑えながら差別化のための投資をする。実証分析では、費用関数を推定することにより、近年高度なサービスを提供するインテグレーターが費用削減行動をとっていることが実証された。2.国内便・国際便提携による乗り継ぎ利便性の要因分析次に、国内線を経由して海外に出国しようとする旅客に対してアンケート調査を行い、国内線運航航空会社と国際線運航航空会社が提携して、乗り継ぎの接続の利便性を図ろうとする場合に、どのようなスケジューリングを行えば旅客の利便性が向上するのかを統計的に計測したとともに、利便性の判断基準となる旅客の時間価値をビジネス旅客と旅行客とについてそれぞれ算出した。ビジネス旅客にとっては、時間が有効に活用されないという理由から、早めに到着する場合に利便性が低いということが判明した。従って、旅客サービス向上のためには、国内線運航航空会社と国際線運航航空会社が密に提携することが必要であるとした。3.非提携・独立系航空会社の市場行動と市場成果独立系航空会社である米国のLCCによる単独参入の経済効果を測定した。それによると、LCCの参入は、市場価格を引き下げると共に輸送量を増大させ、消費者余剰を増加させること、その効果は大手との同一空港における直接的競争のほうが、近隣空港への参入よりも効果が大きいこと、またサウスウエスト航空の参入によるプラスの経済効果は長期間持続するのに対し、それ以外の航空会社のプラスの参入効果は2〜3年で終息し、やがてマイナスの経済効果に転じることが明らかとなった。4.LCCによるアライアンスの経済効果大手航空会社に対するLCCの強みは「無駄なサービス」を廃止したという意味での垂直的製品差別化、低費用性、及び輸送密度の経済性であることに着目し、LCCアライアンスがプラスの国民経済的効果を持つためのこれら3つのパラメータの範囲を確定した。
著者
兼村 晋哉
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

標準模型を超えたテラスケール新物理学模型と拡張ヒッグス模型の様々な様相に関する理論的研究と、LHC実験や線形加速器実験での現象論を研究した
著者
恒川 和久 松岡 利昌
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

過去の日経ニューオフィス賞応募資料によるコンセプトとオフィス空間の分析から、近年のオフィスでは「コミュニケーション」がより重視され、その活性化を促すことが、場の形成の大きな動機となっている。インフォーマルコミュニケーションから、打合せなどをさまざまな場で行えるような空間の増加・多様化に焦点が向けられていることがわかった。また、観察調査から、業務の指向性に基づくワークスタイルによって、ワーカーの行動は異なり、オフィス空間の違いと同様に行動に影響を及ぼしていることがわかった。ワーカーに高い自主性が求められるオフィスでは、行動の自由度がより高い場が求められている。
著者
住吉 太幹 松井 三枝 川崎 康弘 田仲 耕大 倉知 正佳
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

非定型抗精神病薬(AAPD)の統合失調症患者における認知機能各領域に対する効果の検討を行った。結果として、olanzapine(OLZ)あるいはperospirone単剤投与による治療を行った患者群では、注意機能やQOLを表す諸指標が改善した。5-HT_<1A>受容体への作用を示すziprasidone(AAPD)ならびにOLZの統合失調症患者における記憶の体制化に対する効果を検討した。方法として、語流暢性課題のひとつであるカテゴリー流暢性課題より得られる動物名から、多次元尺度法(Multidimensional Scaling, MDS)法により、長期意味記憶の体制化の度合いをcognitive mapへ変換することにより可視化し、各薬物による治療への切替えによる変化を検討した。結果として、各薬物による治療前には、MDS法による動物名の産出される順番に意味的なまとまりは認められなかった。一方、治療6週間後には、「野生性vs.家畜性」という意味的なまとまりが出現し、対象とした患者のQOLが有意に改善されることが見出された。OLZによる治療を受けた統合失調症患者における事象関連電位P300成分の変化を、Low Resolution Electromagnetic Tomography(LORETA)法を用いて解析した。その結果、健常者に認めるような側頭葉におけるP300発生源電流密度の左>右の側性が、OLZ投与前には認められなかったのが、治療後には明らかとなった。また、これらの患者において、言語学習記憶、QOLおよび精神病症状が治療後に改善した。以上の結果は、AAPDによる記憶機能の改善に、電気生理学的神経活動の脳画像的な変化が関与していることを初めて示すものである。
著者
永田 英治
出版者
宮城教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は,1880年代に初等・中等学校での科学教育が開始された時,ニュートン科学とその粒子論的な物質観の教育がおこなわれたことを,実験教材の追跡をとおして明らかにした。当時使用された,英国,米国の教科書の多くが,それらの科学をとりあげていたからだけではなかったのである。また,明治初期に,そのような科学の教育が実現できた背景には,江戸時代末期に移入された科学があったとこを明らかにした。つまり,オランダ経由で,移入された物理科学は,ニュートンの力学と同時に,ニュートンの粒子論的な物質観(『光学』第二版,1717)にもとづく実験をふくむものだったことである。つまり,ス.グラーフェザンデや,P.v.ミュッセンブルックらの科学書が,J.T.デザギュリエを筆頭とする18世紀ニュートニアンになる科学と同じ内容をもっていたのである。そのことを,力学実験,凝集力実験などについて追跡した。この研究では,同時に,J.T.デザギュリエによる科学の公開講座が,ヨーロッパ,ことにオランダに波及していった歴史を追跡する必要があった。その調査によって,ヨーロッパに広がった科学啓蒙活動では,ニュートン力学,ニュートンの粒子論だけでなく,火力,蒸気機関や気球の可能性を追求する活動と無縁ではなかったことが明らかになった。そのことが,日本の科学教育の思想にあたえた影響は無視できないが,それが,教材にまであたえた具体的な影響については,今後の研究課題として残すことになった。その成果は,国際科学機器シンポジウムでの発表'The Reception of Newtonian Corpuscularism in Japan -A case study of Experiments on Cohesion of Matter -.','The Introduction and diffusion of Atwood's machine in Japan',および『理科教室』誌上での連載「たのしい科学を切り開いた科学者たち」として報告したが,最終的に『たのしい科学の講座を開いた科学者たち』(星の環会,2004)にまとめることができた。
著者
吉田 健一 橋本 光靖 伊藤 由佳理 渡辺 敬一 坂内 健一
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1.ヒルベルト・クンツ重複度の下限について研究代表者と渡辺敬一(分担者)は本研究に先立ち、ヒルベルト・クンツ重複度が1の局所環が正則局所環であることを証明した。この結果は正標数において、永田による古典的な結果を拡張したものになっている。本研究では正則でない局所環に対するヒルベルト・クンツ重複度の下限を求める問題について考察した。結果として、平方和で定義される超平面の場合に下限を取るという予想を得て、4次元以下の場合にそれを証明した。本結果における最小値は(代数幾何学的にも)大変興味深いものであるが、現在の所それをサポートする理論は得られていない。このような理論を見出すことは今後の研究課題である。また、我々の予想は完全交叉の場合にエネスク・島本により証明された。2.極小ヒルベルト・クンツ重複度の理論極小ヒルベルト・クンツ重複度はF正則局所環の不変量として導入した概念である。この量は0と1の間の実数値を取りうるが、アーベルバッハらの研究により、F正則であることと、極小ヒルベルト・クンツ重複度が正の値を取ることが同値であることが知られている。本研究においては、F正則環の代表的なクラスである、アフィントーリック特異点と商特異点の場合にその値を求めた。3.極小重複度を持っブックスバウムスタンレー・リースナー環の特徴付け研究代表者は佐賀大学の寺井直樹氏の協力に基づき、ブックスバウムスタンレー・リースナー環の極小自由分解、重複度、h列などに関する研究を行った。特に、そのようなクラスにおける重複度の下限を決定し、下限を取るスタンレー・リースナー環の特徴付けを行った。
著者
山口 しのぶ
出版者
中京女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究においては、インド、マハーラーシュトラ州で現在行われているヒンドゥー教儀礼「マンガラーガウリー女神供養」(mangalagauripuja)を取り上げ、現地調査と文献研究よりその構造と特色を明らかにした。デカン高原の歴史においては、古くからさまざまな王朝が交替するにしたがってヒンドゥー教が広まっていった。特にマハーラーシュトラ州においては、13世紀以降バクティの運動が盛んとなり、バクティはマラータの民族運動と結びついていった。現代のマハーラーシュトラ州第二の都市であるプネー市は、マラータの伝統とともに、バラモンの伝統が根強く残る地域であり、前述のマンガラーガウリー供養も、新たに結婚したバラモンの女性により行われる儀礼である。マンガラーガウリー女神供養は、1)口すすぎおよびヴィシュヌ神への敬礼、2)諸神への敬礼、3)儀礼執行の宣言、4)準備的儀礼、5)中心的儀礼(マンガラーガウリー女神の供養)、6)バラモン僧のもてなし、7)結びの敬礼文、8)マンガラーガウリー女神供養にまつわる話の朗読、9)灯火をまわす行為、の9つのプロセスよりなる。1)、2)のプロセスにおいて、儀礼をおこなうメンバーの身体を浄化し、3)において儀礼執行の宣言がなされる。4)においては、儀礼に使用される道具や供物の浄化が行われる。5)においてはマンガラーガウリー女神と夫シヴァ神の供養が行われ、オーソドックスな「16のもてなしからなる供養」の他に、神像の沐浴等がなされる。一連の供養が終了した後、この供養に関わるマラーティー語での話を女性のみが聞き、讃歌を唱えて灯火を回す行為(arti)でこの供養は終了する。マンガラーガウリー女神供養は新たに結婚した女性が幸福な結婚生活を願って行うもので、行為の中心となるのはほとんど女性であり男性は副次的な役割を担っているのみである。またこの供養においては、中心的儀礼において、16のもてなし中の沐浴の他に「大いなる聖別の沐浴」「吉祥の沐浴」等繰り返して女神像に水が供えられる。以上のことからこの供養では、水が重要な役割を担っていると考えられる。
著者
都築 伸二 山田 芳郎
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

従来の電力線通信(PLC)は100ボルトの電力線間に通信用信号を重畳する方式である。一方本研究では100ボルトの線とグランド間にも同時に注入(ファントムモード注入と呼ぶ)する新しい通信方式を検討した。ファントムモードで注入した高周波信号は、空間に微弱ながら信号を放射する。従って、複数の電力線が配線されている閉空間では微弱電磁界で満たされ、無線通信が可能となる。こうした形態で行うPLCを"有線・無線融合型PLC"と呼ぶ。本研究では、室内の移動体の位置を高精度に特定できる、つまり通信と測位を同時に実現できるような有線・無線融合型PLC方式を検討した。主な成果は以下の2点である。(1)微弱無線通信技術:本研究では、ファントムモード信号の注入・抽出器、及び効率良くアンテナとして励振するために必要なアンテナカプラを開発した。また電力線の配線形態によってアンテナ効率が著しく変動する問題に対しては、PLCモデムに使用されるACコードをシールド付きのものにすることによって解決した。これらの成果は特許としても出願した。(2)高精度位置特定技術:ホームロボットのナビゲーションを行うことを想定し、可聴音DS-CDMによる屋内高精度位置推定法およびその精度を検討した。(1)の微弱無線により、マイクとスピーカを同期させ、室内のように障害物の多い環境下でも数cmの精度で測位できる技術を開発した。ただし、(a)障害物に隠れていても回折波で測定できるものの精度が劣化すること、及び(b)移動体の測定においてはドップラー効果の影響が懸念された。(a)については測定精度の検定方法を提案した。(b)に対しては、チップ長1023チップのM系列を用いる場合、許容される移動体速度は1m/sec以下であることを明らかにした。本研究で得られた成果は国際会議で3件発表し、招待論文や解説記事としても出版した。
著者
永持 仁 石井 利昌 軽野 義行
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

・最大隣接順序によるグラフ疎化法を利用して,O(n^2(1+min{κ^2,κ√n}/δ))時間,O(n+m)領域の計算量で,点連結度κに対する2倍近似の点カットを計算するアルゴリズムを得た(δはグラフの最小次数).提案するアルゴリズムはδがκと比べて大きい場合には従来よりも高い性能を発揮する.・グラフにソース,シンクと呼ぶ2点s,tが与えられたとき,ソースシンク間の最小(s,t)-カットを求める問題に対しては,有向グラフに対し,無向グラフへの「近さ」を表す指標μを導入し,有向グラフDの最小(s,t)-カットをO(min{m+ν(ν+μ)^<1/2>n,(ν+μ)^<1/6>nm^<2/3>}})時間で計算するアルゴリズムを設計した(νは最小(s,t)-カットの値).この計算量は小さなμを持ちかつ密であるような有向グラフに対しては従来法よりも優れた性能を発揮する.・与えられた単純連結グラフG=(V,E)および2点対の集合Rに対して,何本かの新しい枝をグラフGに付与してRの各2点対間の局所点連結度を2以上にする問題を考える.このとき加える枝の本数を最小にすることが目的である.問題に対する下界の導き方を精密化することで最適な付加枝集合の大きさの高々4/3倍の解を求める線形時間アルゴリズムを設計した.・ネットワーク連結度問題に対する最近の進展についてサーベイを行った.多くのネットワークの連結度問題は最大流最小カットの定理に基づく考察から最大流アルゴリズムを利用したアルゴリズムにより解くことができるが,最近,最大隣接順序と呼ばれる節点の順序付けを利用することで無向ネットワークにおいてはさらに効率の高いアルゴリズムが設計できることが示されている.特に,n,mをネットワークの節点数,枝数としたとき,極値節点集合問題,カクタス表現問題,枝連結度増大問題,供給点配置問題と呼ばれる問題に対してはO(mn+n^2log n)時間のアルゴリズムが設計できることを示す.この計算時間はネットワークの最小カットの値を決定する現在最良の計算量に等しい.これらの多くのアルゴリズムに対して研究代表者により現在最良の計算時間が達成されている.
著者
太田 孝子 福田 須美子 福田 須美子
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

植民地下朝鮮にあった高等女学校を卒業後、内地に留学した経験を持つ7名の朝鮮人女性にインタビュー調査を実施し、留学の経緯及び内地での留学生活に関する具体的証言を得た他、11校分の高等女学校史の翻訳、主要人物の伝記等の翻訳により、高等女学校毎の内地留学の実態を把握した。また、「鴻嬉寮」(主に李王妃が創設した淑明高等女学校と進明高等女学校からの内地留学生のために、李王家が東京市渋谷区若木町に開設した寮)に関する文献や入寮者2名に対するインタビュー調査により、鴻嬉寮の概要を究明した。
著者
甲斐 敬美
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

一酸化炭素と水素からガソリンを製造するような反応は体積が減少する反応であり、このような反応を流動触媒層反応器で行うと、体積減少により非流動化が起きて安定な操作が不可能となる。本研究ではモデル反応として二酸化炭素の水素化反応を行い、安定な操作が行える方法について反応器モデルと実験によって検討した結果、一方の原料である二酸化炭素を2段に分割して供給することによって、非流動化を避けることができることを明らかにした上で、二段目の供給位置やガスの分割比について、最適な操作条件を明らかにした。
著者
好井 裕明
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

「ヒロシマ」をめぐる一般映画、アニメーション、ドキュメンタリー作品などを、可能なかぎり入手し、その映像のなかで被爆やその後の情景など「ヒロシマ」に関連することがどのように描かれているのかを解読した。その結果、「ヒロシマ」の具体性の稀少と一般的な核イメージの過剰を確認した。つまり、被爆した瞬間、直後の惨状など歴史的な時間に依拠された「ヒロシマ」を表現する映画が稀少である一方で、より一般的に原水爆の恐怖、悲劇を利用する作品が過剰であったのである。そのうえで、いわば「ヒロシマ」表現の原点である映画における表現のありようを詳細に解読した。具体的にとりあげたのは『原爆の子』(新藤兼人監督、1952年)、『ひろしま』(関川秀雄監督、1953年)、『はだしのゲン』(真崎守監督、1983年、アニメーション)である。3作品はそれぞれ独自の「ヒロシマ」表現を持っている,ことを例証した。他方、こうした作品は製作後半世紀がすぎたものであり、古い映像と言える。原点としての「ヒロシマ」映画が、現代の若者にとってどのような意味があるのかを例証するために、これらの映画を見せ、感想レポートを作成させた。レポート内容を整理し解読を試みた結果、原点としての映画は、現代においても、十分に「ヒロシマ」を理解するうえで意義あることが確認された。過去の作品として整理するのではなく、こうした映画を今後どのように活用するのかを考えることは「ヒロシマ」理解において極めて重要な作業であることも確認した。他に、今後の課題として、強大な破壊力の象徴としての核イメージの解読、「ヒロシマ」をめぐるTVドキュメンタリーの詳細な解読などをあげることができた。
著者
服部 勝憲 齋藤 昇 秋田 美代
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

学部学生の算数科カリキュラムのとらえ方は,「各学校の算数科教育計画・指導計画」が31.8%,「算数教育の計画,授業,評価の総体」が30.8%,「学習指導要領に示された算数科の内容」が15.6%,「算数科の授業内容の全体」が14.2%である。以下「算数教育により子ども達が身につけたもののすべて」3.3%,「算数科の教科書に示された内容」1.9%と続く。また開発したカリキュラム編成の重点に関する尺度,評価実施の場面と時間に関する尺度,編成段階の評価と改善に関する尺度の評価尺度得点において,学部学生の得点が現職教員より高い結果が出ているが,単純に学部学生の方の認識が高いとは考えられない。今後これらの調査項目に対する理解の広さ・深さ,さらに学校現場におけるそれらの実施の困難さ等についての検討が必要である。さらに授業観を評価する10個の調査項目を用いて,授業観についての3つのタイプ,(1)教師主導・説明練習評価尺度得点が高いType-A,(2)2つの評価尺度得点がともに平均的な位置にあるType-B,(3)生徒主体・活動支援評価尺度得点が高いType-Cを抽出した。これらの観点から考察すると,小学校教員の場合は39.4%が,中学校教員の場合は,36.9%がType-A, B, Cとして抽出された。それに対して学部学生の場合は28.4%(全211名中)とかなり少なく,タイプとして見られるような明瞭な授業観を持つに至っていないといえる。また学部学生の場合,現職教員の場合に比べて,拡散的である。特に評価の場面や時間,及び評価の改善に関する評価尺度では現職教員の場合に比べて,かなり高い得点を示している。このことから評価とそれによる改善に関しての可能性についての期待を示している。このことからも,教員養成系学部において,望ましいカリキュラム観や授業観を育てていくための考え方やその展開のための教員養成カリキュラム(教育計画・シラバス)の開発とともに,一貫性のある教科カリキュラムに関する教育のあり方が重要なものになる。
著者
代田 健二
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,弾性波動場における係数同定逆問題の実用問題例である周波数データを用いた鉄とコンクリートによる合成梁の欠陥同定問題に対して,反復型数値解法を開発した.変分法的定式化によりチコノフ型正則化項を持つ汎関数による制約条件付き最小化問題を導出し,その問題へ射影勾配法を基礎とした反復アルゴリズムを適用した.数値シミュレーションによる周波数データおよび実測データを用いた数値実験を実施し,一定精度で同定できることを明らかにした.
著者
田嶋 淳子 鄭 暎慧 高 鮮徽
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、日本国内および中国東北地方における移住者調査を通じ、以下の点が明らかとなった。1)中国系移住者の日本への流入は1980年代以来就学生、留学生が中心だが、日本人配偶者、研修生およびIT技術者としての来日が増加傾向にある。また、在日中国人の2割はすでに永住権をもつ。このことから定住化傾向が指摘できる。定住化は中国系移住者が送り出し地域への再投資を可能とする資力を持ち始めていることを示す。2)遼寧省大連および藩陽における調査から、研修生の来日が主には日系企業の工場設置と不可分に進んでいることが示された。また、IT関連では日本への派遣労働者としての導入も同時に進んでおり、日本語と技術を併せ持つ人材への需要とそれに応じた中間組織(派遣業者および付随するシステム)の形成が進んでいる。3)吉林省延辺朝鮮族自治州における海外出稼ぎ経験者調査からは、彼らの出国が親族関係(8割が韓国内に親族関係をもつ)により、可能となっており、比較的容易と考えられている。ただし、彼らの出国は地域経済に一定の影響を与えており、残された子どもの教育問題など今後の影響が懸念される。4)黒竜江省では、残留日本人孤児および残留婦人らの出身地域の一つであるF県を対象とする聞き取り調査をおこなった。彼らは帰国したが、地域にはその関係が埋め込まれている。このことから、周囲の人々と日本への移住者とが独自の社会空間を作り上げていることが明らかとなった。以上の結果から、中国系移住者の移動と定着が地域レベルで周囲の人々の目を日本社会へと向ける要囲となっており、さらなる日本への流入が継続していく社会的基盤ができあがってきていることが示された。
著者
青江 誠一郎
出版者
大妻女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1.C57BL/6Jマウス(ワイルド型;+/+マウス)の食餌応答性:ob/+マウスのバックグランドデータを把握する目的で+/+型マウスの食事応答性を検討した。その結果,ワイルド型(+/+)マウスにおいて、高脂肪食負荷は内臓脂肪蓄積を増加させるが、脂肪細胞の機能への影響は弱いと考えられた。2.レプチンノックアウトマウスのヘテロ型(ob/+)とワイルド型(+/+)マウスの食餌応答性の比較:ob/+および+/+雄マウスを評価した結果、いずれのマウスも感度良く飼料の影響が評価できた。本マウスでは遺伝子の因子よりも高脂肪食の影響が強いことが示された。3.ヘテロ型(ob/+)とワイルド型(+/+)マウスを用いた食品素材の評価:大豆リン脂質、卵黄リン脂質を評価した結果,両リン脂質は脂肪細胞の肥大化を抑制した。4.レプチン受容体ノックアウトマウスのヘテロ型(db/+)とワイルド型(+/+)マウスの食餌応答の比較:C57BL/6Jのバックグランドを持つdb/+マウスを作成し、食餌応答性を比較した。その結果、db/+マウスの方がヘテロ型とワイルド型との差が大きく、高脂肪食においてその差が大きかった。5.新規な肥満モデルマウスとしてのSTR/Ortマウスの評価:自然発症変形性膝関節症モデルであるSTR/Ortマウスを評価した結果、通常食においても太りやすく、高脂肪食に対する感度も良かった。6.C57BL/6JマウスとKK/Taマウスを用いた機能性食品素材の評価:C57BL/6JマウスとKK/Taマウスを用いて,機能性食品素材の評価を行った。C57BL/6JマウスとKK/Taマウスが効果の感度がそれぞれ違うため,目的に応じて系統の違うマウスを選定するべきであると考えられた。
著者
池田 潤 乾 秀行 竹内 茂夫 IZRE'EL Shlomo
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

紀元前2-1千年紀の北西セム語文書がXML でマークアップされ、個々の言語データが位置情報を有する言語データベースを検索し、検索結果を地理情報システムに送って地図化するプログラムのパイロット版を作成し、それを用いて事例研究を行った。一例として、動詞語尾-(n)naや定形動詞として用いられる不定詞の地理的分布を可視化し、それらがフェニキア以北から南へ伝播した言語的改新であったという新たな知見を得た。
著者
牧 泰史
出版者
大阪医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

バクテリアが増殖停止から増殖再開に至るメカニズムを解明することを目的として、様々な生育状態にある細胞を使ったmicroarray解析を進めた。研究には大腸菌をモデル生物として使用した。本研究の結果、増殖再開の初期に多くの遺伝子が発現していること、栄養環境の違いによって増殖停止期の適応状態が異なり、増殖再開期の遺伝子発現プロファイルも互いに違っていること、などが明らかとなった。