著者
川口 太郎 中澤 高志 佐藤 英人
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

高齢化がすすむ大都市圏の郊外住宅地の持続可能性を住民特性の面から検討し,内郊の「街なか化」する住宅地,外郊の「地元化」する住宅地,アッパーミドルの「孤立化」する住宅地を見出した。また,第二世代の居住地選択は,働き方や家族の在り方が多様化するなかで,単線的・画一的にとらえることが難しくなったものの,そのなかで実家との関係性が選択に際して大きな位置を占めていることが明らかになった。
著者
吾郷 眞一 柳原 正治 野田 進 中窪 裕也
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

国際労働法の分野においてある程度市民権を持ちつつある「企業の社会的責任」(CSR)が実定法として機能する余地はあるのかどうか、という問題意識を出発点とし、国際公法と国内労働法の二つの観点から実態を分析し、帰納的手法を用いてCSRの法的位置づけを行った。国際公法の視点からソフトローの一つとして、あるいはまた実定法を補完するものとして一定の役割を果たすと同時に危険性もはらむものであることがわかった。
著者
西野 仁
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

6校の中学生から4,536場面、5校の高校生から4,470場面の日常生活経験標本が収集できた。1、学校週5日制の実施で中学生の日常生活経験とゆとり感は変化したか?同じ公立中学校の同じ学年から、完全学校週5日制実施前の2000年と実施後の2003年に、同じ方法で収集したデータの比較。中学生の日常生活経験は、活動では外出と部活動が、場所ではレジャー・スポーツ・レクリエーション施設、学校施設が、同伴者では友人、先生が有意に増加した以外は大きな変化は認められなかった。また、気分は平日、休日ともに、制度実施前よりネガティブな方向へ変化し、「ゆとり感」は増加してはいなかった。2、学校週5日制を以前から実施していた高校では生徒の日常生活経験とゆとり感は変化したか?完全学校週5日制をすでに導入していた同じ私立高校の同じ学年から、新学習指導要領移行前の1996年と移行後の2003年に、同じ方法で収集したデータの比較。高校生の日常生活経験は、活動では学習行動が減り、アルバイト、生活維持行動が増えた。場所は、学校・その他の学習施設が減り、自宅、レジャー・スポーツ・レクリエーション施設、アルバイト先が増えた。同伴者では家族が増加、友人は減少、先生は増加した。気分は、制度導入前よりポジティブな方向へ大きく改善され、「ゆとり感」も有意に増加した。3、ゆとりを感じる経験とは?「ゆとり」の構造化に向けての分析中学生、高校生ともゆとりを感じやすい経験はテレビ・ラジオの視聴、睡眠うたた寝、娯楽、テレビゲーム、食事、音楽活動、外出、スポーツなど多岐にわたるが、実際にゆとりを多く感じている経験はテレビ・ラジオの視聴や食事、睡眠・うたた寝などであった。「ゆとり感」と「気分」に正の相関がみとめられること、「ゆとり感」に日内リズムと週間リズムのパターンが存在することが再確認できた。
著者
南雲 道彦
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

高強度鋼の遅れ破壊が環境変動によって促進されることをプリストレスドコンクリート(PC)鋼棒について明らかにした。環境因子として荷重及び水素添加ポテンシャルを取り上げ、最大荷重あるいは電解電流値を一定にして変動させた。環境変動の効果は、低歪み速度の引張り試験と定荷重の遅れ破壊試験の両方で確認した。環境変動の効果は水素の吸収速度や吸収量には影響を与えず、荷重変動の効果が試料表面の保護被膜の破壊によるとする従来の考えでは説明出来ない。水素添加ポテンシャル変動の場合も水素の吸収及び放出速度の解析から水素の拡散速度を求め、水素添加ポテンシャル変動の効果は受けないことを示した。環境変動の効果を水素の存在状態から調べるために、鋼中に吸収された水素の加熱放出特性を測定した。約100℃に放出ピークを持つ弱くトラップされている水素には、塑性変形に伴なって増加する水素と、もとの組織中の析出物などにトラップされている水素とがある。塑性変形跡に200℃での低温で回復処理を与えた試料に水素を吸蔵させて放出特性を調べることにより、塑性変形に伴なって増加する水素のトラップサイトは点欠陥であり、昇温過程で点欠陥が消滅するために水素が放出されることを明らかにした。荷重変動の効果は、回復処理で消滅する点欠陥密度を増加させることにあることを見出した。これらの結果から、水素脆性の機構は塑性変形によって導入される点欠陥を安定化してその密度を増加させるためであり、環境変動はこの効果を強調するものであるという新しい考えを提出した。
著者
長橋 純男
出版者
千葉工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

首都圏の如き中枢機能都市圏においては集中の度合が益々増大傾向にある。地震災害の様相は時代による社会変化の影響を強く受け、人口減少や少子高齢化による人口構成の変化、都市構成の変化等により、都市は時代がもたらす新たな地震災害を生む可能性がある。したがって、都市の地震脆弱性評価や被害想定に当たっては、現在の都市の実態を対象とした被害想定ばかりでなく、未来都市の動向を予測した被害想定が肝要である。そこで本研究は、以下の手順によって、25年後の日本の未来都市の動態を推定し、都市の地震災害脆弱性評価が現代社会と未来社会とではどの様に変容するものであるのかを定量的に予測する手法の開発を試みたものである。(1)人的危険及び建築物被害等の直接被害、帰宅困難やライフライン被害による生活支障等の間接被害を対象として、都市の地震脆弱性に関わる諸要因を過去の被害地震の実態から抽出した。(2)主成分分析により、上記各要因の地震被害に対する影響度を定量的に評価する。(3)各要因を用いた地震脆弱性評価手法を作成し、その妥当性を実被害事例によって証した。(4)これら各要因について、現代から25年後への変容動態を、各種統計項目のデータの性質や動態傾向を考慮した線形回帰・重回帰分析等の手法を用いて定量的に推定した。(5)日本の3大都市圏を対象に、25年後の未来都市の地震脆弱性を評価するとともに、その地域特性について考察した。(6)中枢機能都市としての東京湾岸域における具体的な地震危険度評価として、京葉臨海中部地区の石油タンクを対象に、イベントツリー解析による被害予測の試みを提案した。(7)地震脆弱性評価の前提である地震ハザードマップの作成に関連して、地震動の位相特性を考慮した強震動予測手法に関する一連の研究を更に発展させ、併せて、その研究成果を免震構造の応答性状に関する一連の研究に活用する。
著者
堀内 孝次
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

山間山地地域を対象とした現地栽培調査から、作物栽培の生産基盤である地力維持方式として、対象全域で堆肥など多様な有機肥料に加えて化学肥料が補完的に施用されている。他方、"緑肥、野草、わら"の利用には地域差が存在しており、これらの地域特殊性は経営耕地規模や耕地の地形条件が大きく影響している。また、土壌の地力維持として微生物資材を用いることで有機性廃棄物である生ゴミ堆肥素材等の施用効果が高まった。
著者
石田 俊正 南部 伸孝
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

大次元系になると、量子化学分野では、ab initio法と分子力学と組み合わせた、いわゆるQM/MM法が展開され、反応についても、数本のトラジェクトリ計算を追いかけるなどによって追跡されているが、統計学的に有意なトラジェクトリを得るのはひじょうに困難な状況であり、現在の数本のトラジェクトリから予測されていることとは大きく異なる現象・描像が将来得られることも十分考えられる。レチナールのモデル分子の直接動力学を計算し、励起状態から基底状態への遷移をZhu-Nakamura公式で評価して動力学を記述した。モデル分子については、小さい系と現実分子とほぼ変わらない系との2通りを考え、比較した。この系の小数次元に対してIMLS/Shepard法のポテンシャル面フィッティングを行い、次のステップとしてMM法との結合を考えていたが、研究期間中には終えることができなかった。そこで、IMLS/Shepard/MM法の適用可能性をさぐるため、まずは古典軌道法に非断熱遷移を考慮した、ホッピングトラジェクトリ法により、ポテンシャル面の性質を調べた。また、今まで開発したプログラムを用いて応用を進めた。0+HC1系に対するポテンシャル面表現に、IMLS/Shepard法を用い、3状態を含めた大規模なトラジェクトリ計算を行い、反応微分断面積などを見積もった。結果は、実測とよい一致をみた。励起状態が比較的低いエネルギー領域にもかかわらず、ほとんど寄与せず、ほぼ基底状態での動力学で決まっていることを見いだした。
著者
土井 正
出版者
麗澤大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究における「不利益情報」とは、自らにとって必ずしもプラスにならないネガティブな事象、事件や事故の経緯・状況等についての情報のことで、会社(組織)やステークホルダーに対し、近い将来損失を与えかねない事実についての情報すべてを含む、きわめて広範な概念である。本研究では、組織内外の「情報と伝達」(必要な情報が組織や関係者に適切に伝えられること)に焦点を当て、「不利益情報」の開示、共有、および管理の現状と組織体制等について、1.企業(組織)外のステークホルダーとのコミュニケーションの重要性、2.企業(組織)内部における適切な情報と伝達(のための組織体制および風土、意識)、という2つの視点から組織マネジメントの実態を調査し、現状における諸問題を実証的に検討することとした。さらに、管理可能な「見える」測定指標づくりを指向した。本年度の研究は、次のとおり実施した。1.研究協力企業の絞り込みと予備調査・20社程度の訪問調査対象企業とテーマ(課題)の絞り込みを行う具体的には、以下の企業のCSR/広報担当者との面談調査を行った・東京電力、三菱重工業、日本オラクル、日本商工会議所、鹿島建設、富士テレコム、日本ハム、、NECネッツエスアイ、出光石油、アサツーディ・ケイ、新日本監査法人2.調査ならびに分析のためのフレームワークの決定・企業人(10名)をメンバーとした研究会を組織し、定期的、継続的な会合を持った3.次年度以降の課題を明確化を図った・現状の視察、各企業の資料収集などのため、各社のCSR担当者だけでなく社員各層への聞き取り調査に取り組む。・日本版SOX法導入後の内部統制の実施状況について整理する。以上
著者
和田 万紀
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

1.香りのイメージについて。(1)等感覚刺激で一定濃度の4種類の香りについて、103名の女子大学生がSD法によるイメージ評定を行った。因子分析の結果、快-不快、緊張-弛緩、活力-静止という3次元が抽出された。(2)香りからイメージする色を日本色研配色体系PCCS37より選択させた。しかし香りの種類による特定の色選択は認められなかった。以上より、香りと対人認知に関する研究の基礎データと展望が与えられた。2.香りと感情制御について。(1)不安や緊張感などは、安静にするだけでも主観的に低下するが、好きな香りが加わることによって、さらに低下させ、明晰感を高めることができることが明らかになった。(2)スピーチ前後での連続的脈圧記録から、心収縮周期と血圧の時系列解析を行った。その結果、スピーチ前にLF/HF比が大きくなり、血圧と心拍数が上昇したことが明らかになった。しかしBRSは変化がなかった。スピーチストレスに関する心機能変化の指標として、心収縮周期の周波数解析が適することが明らかになった。以上より、心収縮周期の周波数解析を指標として、香りが感情制御過程に与える効果についての研究の展望が得られた。3.対人場面での香りの効果について。見知らぬ女性同士が、30cmと260cmの距離で討議する場面で、好きな香りの有無が、相手との距離感覚、心地よさ、話しやすさに影響する傾向を認めた。好きな香りが対人不安、コミュニケーション不安に与える効果についての研究の展望が得られた。
著者
高橋 ユリア
出版者
大妻女子大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

目的 摂食障害者の毛髪中含有微量元素の変動、特異的な食概念・食行動、健常者の食概念との比較、家族環境との関係、食によるストレス情報伝達方法などについて今までに研究してきた。今回は摂食障害者の「調理」という観点から「食」と「ストレス」のかかわり方を分析する事を目的とした(日本家政学会第55回大会発表.2003.5.24.お茶の水女子大学)。方法 摂食障害者60名に食概念とストレスについて、調理を中心にアンケートおよび聞き取り調査を行った。また、調理が好きであると回答した摂食障害者のなかから、調査協力を得られた20組の母親および家族に、摂食障害者から受ける調理・食・ストレスとの関係についてのアンケートおよび聞き取り調査を行った。さらに、過食症女子短大生の手記95件(1992年7月〜11月)、拒食症の娘を子供に持つ母親の手記15件(1995年〜1999年)から、調理・食・ストレスに関係する表記を抽出し分析を行った。この両者についても聞き取り調査を行った。結果 摂食障害者60名中46名が調理をすると答えた。この46名中32名が調理をすることが好きであると答えた。好きな理由として、食べる事はしないが味見による満足感、家族への強制摂食要求、自分の調理したものを相手が食べる事の支配感、調理は誰にも邪魔されない時間・空間、自分の思い通りにできるなどであった。しかし、作った料理を強制的に大量に摂食させられる母親、家族にとっては食べる事もストレスであり、また食べない事も摂食障害者のストレスの原因となり、この事が自分達のストレスへとつながっていた。摂食障害者は調理条件へのこだわりも強く、自分自身のストレスにもなっていた。
著者
池田 正浩
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

Aquaporin (AQP)分子種とは、疎水性の脂質二重膜である生体膜を水分子が透過する通路として同定されたタンパク質分子種で、現在では、200以上のAQP分子種が、微生物から脊椎動物に渡って存在することが明らかにされ、生命を維持する上で根本的なタンパク質分子の一つであると見なされるようになった。申請者のグループは、最近新しいAQP分子種であるAQP11を世界に先駆けて発見した。しかしながらAQP11が細胞のどこに局在するのか、どのような分子形態で存在するのか、AQP11の生理学的意義付けは何かなどについては、全く明らかにされていない。本研究では、これらの点を明らかにすることを目的とした。(1)AQP11の細胞内局在GFPやmycなどのタグをAQP11に融合させて細胞に発現させ、イメージング法により細胞内の局在を調べた。その結果AQP11は主として小胞体に局在すること、そして少ないながら一部は核膜および細胞膜にも局在することを観察した。次に、小胞体局在に関係するアミノ酸配列について部位特異的突然変異法などの手法を用いて検討した結果、AQP11のC末端側に存在しているNKKEモチーフ、およびCys-101は、AQP11の小胞体局在には関係していないことが明らかとなった。また、AQP11のC末端側に存在しているNKKEモチーフが、ER exitシグナルとして働いている可能性を見出した。(2)AQP11の分子構造現在までに分子構造が明らかにされているAQP分子種は4量体を形成して、細胞膜に存在することが知られている。この点について、pull-downアッセイ法やタンパク質架橋法などを用いて検討した結果、AQP11が4量体を形成すること、この多量体形成にCys-101が関わっていることなどを見出した。(3)小胞体ストレスが生じた場合のAQP11の役割についてAQP11発現量が減少したマウスに、虚血再灌流による小胞体ストレスを負荷したところ、そのマウスの表現型には、変化は認められなかった。しかし、今回の系は、AQP11の発現を完全に抑えた系ではなかったため、小胞体ストレスが生じた場合のAQP11の役割については、今後も検討する必要がある。以上の成果の一部は論文としてまとめ、現在投稿中である。
著者
高木 裕 鈴木 孝庸 佐々木 充 番場 俊 平野 幸彦 佐々木 充 鈴木 孝庸 番場 俊 平野 幸彦
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

「声とテクストに関する比較総合的研究」グループは、フランスのボルドー第3大学との共同研究を推進し、平成19年度には、エリック・ブノワ教授による講演会を開催し、研究の打ち合わせを行った。平成20年度には、国際シンポジウムを開催し、フランスのボルドー第3大学の研究グループ「モデルニテ」から、エリック・ブノワ教授とドミニク・ジャラセ教授が参加し、共同研究の成果を確認した。最終的に研究成果を国内に問いかけるために、平成21年3月に、公開シンポジウム「声とテクスト論」を開催し、日本で声とテクストの問題をさまざまな角度から研究している明治学院大学の工藤進教授の基調講演とともに、同時に「<声>と身体の日本文学」と題して、ワークショップも開催し、日本文学をテーマにプロジェクトメンバーによる研究報告が行われ、活発な質疑応答があった。
著者
岩崎 正弥 三原 容子 伊藤 淳史 舩戸 修一
出版者
愛知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

農本思想とは、農に特別の価値を認め、その価値を社会の中で追求・実現しようとする思想である。本研究を通して以下のことを明らかにした。1)農本思想は1945年で終息したのではなく、戦後の農村教育や農政にその一部が継承され、帰農や地域づくりにおいて現代にもその影響がみられる。2)日本固有の思考様式だったのではなく、中国の村治運動やアメリカのアグラリアニズムにも認められるように、一種の普遍性をもつ哲学であった。また「社稷」概念は現代においてこそ再評価されるべきである。
著者
川住 隆一 早坂 方志 石川 政孝
出版者
独立行政法人国立特殊教育総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は、重い運動障害と知的障害を併せ有し、家庭や施設で訪問教育を受けている児童生徒のためのコミュニケーション手段と探索手段(移動手段)の開発を行うことを目的とした。本研究で取り上げた対象児は、国立特殊教育総合研究所教育相談センターへの来談児5名と、重症心身障害児施設において訪問教育を受けている重度・重複障害児9名であった。いずれの子どもに対しても、継続的な教育指導を通して、個々に応じたコミュニケーション補助・代替手段が考え出されたり、市販の音声表出補助装置(商品名「ビックマック」「ステップバイステップ・コミュニケーター」等)を利用するための工夫が行なわれた。また、探索のための移動手段として、電動式スクーターボードの有効性も検討された。さらに、運動障害が重い子どもが機器を操作し易くするための入力支援装置や姿勢介助の工夫も重要な課題となった。最終報告書においては、教育相談来談児に対する取り組みとして、(1)探索活動の促進がコミュニケーション内容を豊かにした事例、(2)コミュニケーションの意欲と伝達手段の向上が図られた事例、(3)人の動きを選択的に見ることから探索活動を促した事例、(4)探索活動の促進に電動式スクーターボードの活用を図った3事例が紹介された。また、2つの養護学校の訪問教育の場での取り組みについても、グループ活動場面(「朝のつどい」)と個別指導場面を取り上げ、上記の検討課題の観点から教育実践経過を整理した。
著者
大角 玉樹 多賀 寿史
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

わが国の産学官連携政策の焦点は、単なる技術移転から総合的な知的財産マネジメントに移行しており、沖縄においても、沖縄TLOの設立や沖縄地域知的財産戦略本部の設置など、数多くの施策が実施されている。しかし、本土と比較して、高度知財人材が不足しており、今後、沖縄の地域特性である亜熱帯島嶼資源及びIT施策の戦略的マネジメントを迅速に確立し、地域イノベーションを創出することが期待されている。
著者
谷 昌親
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

ロジェ・ジルべール=ルコントとアンドレ・ブルトンは、合理主義に支えられた西洋の近代文明に対して異化作用をもたらす〈他者〉の働きに敏感であったが、この2 人の詩人=思想家についての研究を主におこない、前者については、日本では初めてとなる著作を上梓してその全貌を明らかにしようと試み、後者については、特にマルチニック、ハイチ、そしてアメリカのインディアンから受けた影響についての論文を継続的に発表した。その他、ミシェル・レリスとレーモン・ルーセルについては、その著作の翻訳に取り組みつつ、それぞれの作品に見られる独特の異化作用のメカニズムの解明についての研究を進めた。また視覚芸術、とりわけ映画や写真といったメディア特有の異化作用にも注目し、一方、以上の研究の理論的基盤を作るべく、精神分析や文化人類学の観点からも異化作用について考察した。
著者
谷口 泰造
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

<具体的内容>1:認知症モデルマウス(SJLB)海馬の発現蛋白プロファイリング認知症モデルマウス(SJLB)とコントロールマウスの海馬より抽出した蛋白を2次元電気泳動で展開し、発現蛋白のプロテオーム解析を行った。解析は、発現〓の比較のみならず、蛋白のリン酸化程度を指標として行った。両者でリン酸化の程度に差がある蛋白分子を多数見出し、質量分析法で同定した。その成果についてはNeuro2007にて発表した2:薬物投与による蛋白プロテオームの変化の解析認知症モデルマウス(SJLB)において、塩酸ドネペジル投与の有無による蛋白発現の変化、及び蛋白リン酸化程度の変化を検討した。塩酸ドネペジル投与で発現量、リン酸化程度が変化する蛋白分子を多数見出し、その幾つかについては質量分析法で同定した。成果については、第81回日本薬理学会に発表した。3:行動変化につながるタウ蛋白の物性解析タウ蛋白の凝集が行動変容を含めた病態発現に強く関与している。タウ蛋白の微小管結合部位に注目し、その凝集のメカニズムを検討した。さらには、凝集を阻害する物質の探索を行った。<意義・重要性>1-2で見いだされた蛋白分子は認知症発症に関与することが考えられ、認知症の病態解明に寄与するのみならず、認知症治療薬の開発のターゲットとして有望であることが期待される。3で見いだされた阻害物質についても認知症治療薬の開発につながる可能性が期待される。
著者
富澤 一弘
出版者
高崎経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

群馬県勢多郡黒保根村の水沼製糸所(現桐生市黒保根町水沼、平成17年6月、合併にて黒保根村より移行)は,明治7年創業の県下最初の民間の洋式器械製糸場であり、社長星野長太郎、実弟新井領一郎の連繋のもと,本邦初の生糸直輸出を敢行した人物として知られている。従ってこの生糸直輸出に焦点をあわせて、行われた研究等は、報告者のものも含めて少なくない。しかしながら、明治35年、組合製糸甘楽社加盟以降、昭和17年、戦時統制化の営業停止に至るまでの、水沼製糸所経営史を総合的に見通すような研究は絶無である。それ故、報告者は,明治7年以降、昭和17年に至る水沼製糸所の経営に関する原史料を体系的に蒐集,以って明治前期一昭和前期までの全期間の経営史を明らかにすることを課題として、平成15年度以来、4ヵ年にわたり研究を継続してきた。この間の研究実績として、報告者は星野長太郎文書(現桐生市黒保根町水沼・杉崎静代氏所蔵)の調査を実施、水沼製糸所経営関連の史料を抽出して複写を行うと同時に、未整理史料の整理・複写に従事してきた。それらの概要は、日誌、日記、帳簿類、商用書翰、領収書等、きわめて多岐にわたるが、未整理商用書翰の大量出現を前に、これら史料の整理・複写に重点を置いて、作業を行ってきた。また史料の永年的保存の見地から規格性を有する文書箱を活用、史料の機能的配置や、防虫的措置にも努めてきた。さらに複写した史料の翻刻・活字化にも精力的に取り組んできた。かかる成果をうけて、別紙のような業績も生み出している。もとより万余の近代文書群故に、作業・研究ともに途上であるが、平成19年度以降、論文執筆、単著化を目指していく積りである。
著者
佐々木 泰造
出版者
独立行政法人物質・材料研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、電池材料・不動態膜などで重要な固体酸化物中の金属イオンや酸素イオンの原子拡散ついて電子論的手法(密度汎関数法)により、理論的研究を行った。Al2O3中のAlの拡散については、SiやTiを添加した場合についてこれら元素の近傍で2eV程度エネルギーが低下し、拡散において非常に重要であることが示唆された。一方、LaSi酸化物中の酸素拡散について、従来の測定結果をよく説明する拡散障壁値が得られ、その拡散機構を明らかすることができた。
著者
川添 愛 戸次 大介 片岡 喜代子 齊藤 学 崔 栄殊
出版者
津田塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

自然言語のテキストには事実のみではなく、書き手にとって真偽が不明な情報や、反事実的な仮定など偽であることが明らかな情報も含まれる。この研究では、機械による情報の確実性判断の基盤とするため、様相・条件・否定表現などの言語学的な分析に基づき、人間が普段情報の確実性を認識するのに利用しているテキストの意味特性をアノテーション(タグ付け)するスキーマを設計し、それに基づいてアノテーション済みコーパスを構築した。