著者
澤木 賢司 佐々木 裕明 堀内 弘司 宮田 順之 藤代 夏純 小菅 葉子 北尾 泉 松本 裕子 吉村 幸浩 立川 夏夫
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.93, no.5, pp.655-658, 2019-09-20 (Released:2020-04-03)
参考文献数
13

Although biosafety in laboratories is very important, the risk of laboratory-acquired infection is usually undervalued. We report herein on two cases of laboratory-acquired infection caused by enterohemorrhagic Escherichia coli (EHEC) during student training in our hospital. We have to recognize laboratories are at risk of infection and reconsider the infection control rule.
著者
林 俊誠 吉田 勝一
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.93, no.3, pp.306-311, 2019-05-20 (Released:2019-12-15)
参考文献数
8

腸球菌感染症が想定される場合,バンコマイシンが初期治療に用いられる.ペニシリン感受性と後日報告された場合でもバンコマイシンは数日間投与されるので,耐性菌の選択や不要な副作用の出現につながる.なかでも,ペニシリン感受性のEnterococcus faecalis 菌血症ではペニシリン系抗菌薬に比較してバンコマイシンなどのグリコペプチド系薬での治療は30日後総死亡率が高いことが報告されている.このような背景から,E. faecalis などのペニシリン感受性腸球菌を迅速に判定できる方法が必要であるが,質量分析法や遺伝子検査法による菌種同定は高額であるため導入は容易ではない.そこで我々は,グラム染色所見で「落花生サイン」の有無を観察することで,ペニシリン感受性腸球菌を推定する手法を考案し,その検査特性を検討した. 血液培養陽性検体のグラム染色標本の顕微鏡検査(以下,鏡検と略す)で,莢膜を有さない,両端が尖った楕円形で長軸方向に連鎖しているグラム陽性双球菌のうち,あたかも落花生の殻のように菌体の中央両側に連鎖軸と直行する対称性の切痕が確認できる所見を「落花生サイン」ありと定義し,これとペニシリン感受性試験結果を比較した. グラム染色の鏡検所見で,ペニシリン耐性腸球菌を「落花生サイン」ありとする感度と特異度は,それぞれ臨床医で78%,96%,臨床検査技師で94%,78% であった.この推定法の普遍性を確認するために,日常的に鏡検を行っている臨床検査技師と,そうでない臨床医のグラム染色所見の一致度を見たカッパ係数は 0.62 で検者間での推定結果の一致度は「Substantial agreement」と評価できた. 「落花生サイン」なしのグラム染色所見からペニシリン感受性腸球菌を推定できるこの手法は最大の治療効果と最小の副作用リスクを両立させ,薬剤耐性対策にもつながると期待できる.
著者
烏谷 竜哉 黒木 俊郎 大谷 勝実 山口 誠一 佐々木 美江 齊藤 志保子 藤田 雅弘 杉山 寛治 中嶋 洋 村上 光一 田栗 利紹 藏元 強 倉 文明 八木田 健司 泉山 信司 前川 純子 山崎 利雄 縣 邦雄 井上 博雄
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.36-44, 2009-01-20 (Released:2016-02-15)
参考文献数
19
被引用文献数
3 6

2005 年6 月~2006 年12 月の期間,全国の循環系を持たない掛け流し式温泉182 施設を対象に,レジオネラ属菌等の病原微生物汚染調査を行い,29.5%(119/403)の試料からレジオネラ属菌を検出した.採取地点別の検出率は浴槽が39.4%と最も高く,貯湯槽23.8%,湯口22.3%,源泉8.3%と続いた.陽性試料の平均菌数(幾何平均値)は66CFU/100mL で,採取地点による有意差は認められなかったが,菌数の最高値は源泉,貯湯槽,湯口でそれぞれ180,670,4,000CFU/100mL と増加し,浴槽では6,800CFU/100mL に達した.陽性試料の84.7%からLegionella pneumophila が分離され,血清群(SG)別ではSG 1,5,6 がそれぞれ22,21,22%と同程度の検出率であった.レジオネラ属菌の汚染に関与する構造設備及び保守管理の特徴を明らかにするため,浴槽と湯口上流側とに分けて,多重ロジスティック回帰分析を行った.浴槽での汚染リスクは,湯口水がレジオネラに汚染されている場合(OR=6.98,95%CI=2.14~22.8)及び浴槽容量が5m3 以上の場合(OR=2.74,95%CI=1.28~5.89)に高く,pH 6.0未満(OR=0.12,95%CI=0.02~0.63)では低下した.同様に,湯口上流ではpH 6.0未満(OR=0.06,95%CI=0.01~0.48)及び55℃以上(OR=0.10,95%CI=0.01~0.77)でレジオネラ汚染を抑制した.レジオネラ属菌以外の病原微生物として抗酸菌,大腸菌,緑膿菌及び黄色ブドウ球菌を検査し,汚染の実態を明らかにした.
著者
川名 明彦 工藤 宏一郎
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.429-436, 1999-05-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
18
被引用文献数
4 4

上気道に定着した潜在的病原菌を誤嚥することが細菌性肺炎の主要な原因とされている. われわれは, 上気道からこれらの菌を除去するのにポビドンヨード (Povidone-iodine: PVP-I) 経鼻吸入が有用ではないかと考え検討を行った. 対象として, 気道に通常は常在しない菌, すなわち緑膿菌や腸内細菌科に属する好気性グラム陰性桿菌, およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (以下潜在的病原菌と略す) が無症候性に咽頭から繰り返し検出される外来患者63人を選択した. これらの症例にPVP-I含嗽を2週間施行し, 対象菌を除菌できなかった30例を無作為にPVP-I経鼻吸入・PVP-I含嗽併用群 (以下併用群と略す) とPVP-I含嗽単独群 (以下単独群と略す) とに分け, 2週間の処置の前後で咽頭の細菌学的検索を行った. 併用群は16人で, うち9人 (56%) は慢性的な肺合併症 (気管支拡張症, 慢性気管支炎など) を有していた. 単独群は14人で, うち6人 (43%) は同様の肺合併症を有していた. 治療期間終了時に, 併用群では44%, 単独群では14%で咽頭から潜在的病原菌が消失した. 特に, 肺合併症を有さない患者においては, 併用群では86%で除菌し得た. PVP-I経鼻吸入と関連した有害事象はみられなかった. 上気道から潜在的病原菌を除去するのに, PVP-I経鼻吸入は安全で, 特に肺合併症のない症例において有用な方法と考えられた.
著者
佐久川 廣
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.14-21, 1992-01-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
20
被引用文献数
2 2

沖縄県の献血者におけるHBs抗原陽性率は3.5%で, 全国平均 (1.5%) の2倍以上を示し, 全国-高い.一方, 肝硬変, 肝癌の死亡率は全国平均の約半分で, 全国で最も低い.今回著者は沖縄県のHBV感染と慢性肝疾患との関連におけるこの疫学的特異性を解明するために疫学調査を含めた臨床的検討を行った.先ず, 血清疫学的調査から次のような成績が得られた.1) 沖縄県の肝硬変, 肝細胞癌患者におけるHBs抗原の陽性率はそれぞれ15.2%, 24.4%で, 全国平均の陽性率 (肝硬変;23.4%, 肝細胞癌;31.4%) より低い.2) 無症候性キャリアにおける年齢別のHBe抗原陽性率は20歳以下の年齢で50%で, 年齢と共にその陽性率は低下し, 20代で15.7%で, 30歳以上では2~3%あるいはそれ以下の陽性率を示した.また, 肝外来を受診した無症候性キャリアの内, 6.3%が慢性肝炎, 1例 (0.2%) が肝硬変であった.一方, HBe抗原陽性B型慢性肝炎24例の検討では, 2年間の観察期間中に56.3%の症例にHBe抗原の自然消失を認め, これらの症例の年間の消失率は25.6%であった.このように, 沖縄県のHBs抗原キャリアにおいて, 若い時期にあるいは慢性肝炎の初期の段階でHBe抗原を陰性化させていることがその予後に良好な結果をもたらし, B型慢性肝疾患の有病率を低下させていると推定された.
著者
菅原 民枝 杉浦 正和 大日 康史 谷口 清州 岡部 信彦
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.427-433, 2008-09-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
8
被引用文献数
3

[目的]新型インフルエンザの対策計画が各国で策定されているが, 未知の感染症であるため, 感染の拡大については数理モデルを用いて検討されている. しかしながら, 数理モデルで検証するためのパラメーターがわからない. そこで本研究は第一に新型インフルエンザを想定して, 個人がどの程度の割合で外出を控える行動をするのかを明らかにし, 第二に外出を控えない行動をする要因を明らかにして, 新型インフルエンザ対策に役立てることを目的とした.[方法]調査はアンケート調査とし, 2007年4月に, 調査会社の保有する全国25万世帯が無作為抽出されているパネルから地域年齢群で層別抽出した2,615世帯とした.調査内容は, 新型インフルエンザ国内発生の場合の外出自粛の選択, 在宅勤務体制, 食料備蓄等とした. 解析は, 外出選択を目的変数とし, 多変量解析を行った.[結果]回答は1727世帯, 有効回答者数は5,381人であった. 新型インフルエンザ国内発生の場合の外出自粛の選択は, 勧告に従わず外出すると思う人が6.7%, 様子を見て外出すると思う人が47.1%, 勧告が解除されるまで自宅にとどまると思う人が46.1%であった.現在災害用に食料備蓄をしている世帯は, 3日分程度が29.9%, 1週間程度が58%, 2週間程度が1.5%, していないが628%であった. また, 今後2週間程度の食料備蓄をする予定の世帯は, 29.6%であった.多変量解析では, 30歳代, 40歳代, 男性, 高齢者の就業者, インフルエンザワクチン接種歴の無い者は, 有意に外出する選択をしていることが明らかになった.[考察]本研究により, 新型インフルエンザを想定した一般市民の外出の選択によって, 数理モデルによる外出自粛の効果が検討できるようになった. 30歳代, 40歳代の「外出する」選択確率が高く, この年齢層に大きな影響を与える要因のひとつとして, 職場の対応があると考えられた. 就業者が外出自粛を選択するような対策として, 企業の経営戦略人事管理面での対策が必要であると示唆された.
著者
髙山 直秀 斉加 志津子 一戸 貞人
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.519-524, 2009
被引用文献数
6

これまで臨床現場では,麻疹に対する免疫の程度を知るための簡便な方法として,赤血球凝集抑制(hemagglutination inhibition : HI)抗体価が測定されてきたが,近年酵素抗体(enzyme-immunoassay : EIA)法による麻疹EIA-IgG 抗体価が用いられている.HI 法は,麻疹ウイルスが細胞に結合するために必要なH 蛋白に対する抗体を測定しているので,感染防御能を反映すると考えられるが,麻疹EIA 法は,ゼラチン粒子凝集(particle agglutination,PA)法と同様に,感染防御に関与しない抗体も含めて測定するため,EIA-IgG 抗体価は必ずしも麻疹に対する発症防御の程度を反映しないと考えられる.同一検体につき,HI 法,PA 法,中和法により麻疹抗体価を測定し,得られた抗体価との相互関係から,デンカ生研製測定キットを用いた場合,EIA-IgG 抗体価が12.0 以上であれば,麻疹発症防御レベル以上と判断できるが,EIA-IgG 抗体陽性であっても4.0 以上8.0 未満では麻疹ワクチンの追加接種が必要であり,8.0 以上12.0 未満でも追加接種が望ましいと考えられた.
著者
永井 勝次
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.111-115, 1973-04-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
5
被引用文献数
1 2

It has been popularly circulating in half legendary way among laymen that those who habitually eat garlic would rarely catch cold in winter time. The authors took it up rather seriously and undertook experiments to see the effects of garlic extracts against infections with influenza and Japanese encephalitis viruses in mice.Viruses used were influenza virus AO/PR 8 strain, Japanese encephalitis virus Nakayama strain and JaGAr Ol strain. Mice used in the case of influenza were ddYS strain weighed 15g, in Japanese encephalitis, the same strain weighed 8-10g regardless the sex. Garlic extracts were prepared by alcohol extraction using low percent alcohol. The extracts were administrated per os to the mice. Further, to see the effects of the combination of garlic extracts and vitamines and liver extracts, we prepared the following solutions as: Solution A-garlic extracts without any additives; Solution B-garlic extracts plus VB1; Solution C-garlic extracts plus VB12; Solution D-garlic extracts plus VB1 and VB12; Solution E-garlic extracts plus VB1, VB12 and liver extracts. Infections of influenza and Japanese encephalitis were made by pernasal and intracerebral inoculations, respectively. The inoculated mice were observed for three weeks. LD50 was measured by Reed and Muench method. Influenza infected mice were all autopsied and the consolidation of the lungs was comparatively observed.The results were summarized as follows:1. In group in which daily administrations of the solutions were begun 15 days previous to pernasal influenza virus inoculations, the effects were significant. In our data, solution A and E were best. In group in which the solutions were begun being given at the same time to the virus inoculations, the effects were hardly appreciable.2. In Japanese virus inoculated cases, the results were against our expectation. Any solution given even 15 days previously to the inoculations displayed no effect at all.
著者
成田 光生
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.149-154, 2007
被引用文献数
2 6

マイコプラズマ感染症診断における血清IgM抗体検出法 (イムノカードマイコプラズマ抗体, 以下IC, Meridian-テイエフビー) の有用性と限界につき検討した.小児マイコプラズマ肺炎70例の検討において, 微粒子凝集 (PA) 法あるいはELISA法 (<I>Mycoplasma pneumoniae</I>-ELISA medac, medac Diagnostika, 今後保険収載予定) にても感染を確定できない時点でIC法が陽性であった場合が4例有り, IgM抗体検出法としての感度は実用に耐えると考えられた. 一方, 経時的に抗体価の変動を追跡し得た例においては感染後最長527日目でPA法あるいはELISA法では非感染と判断される時点においてもIC法は陽性を持続している場合が有った. また健常成人血清124検体中PA法では320倍が最高値で3例 (2.4%) のみ存在したのに対し, IC法では検索した25例中9例 (36.0%) が陽性であり, そのうちELISA法にては少なくとも6例が急性感染は否定的であった. IC法はあくまでも定性法であり, その陽性結果はIgM抗体の存在を意味するものではあるがそれが急性感染の存在を確定するものではないことを念頭に置いて, 他の検査所見とも合わせて総合的に判断する必要が有る. 近年の感染症動向調査ではマイコプラズマ肺炎の増加が問題となっているが, このような場合こそ診断法の精度に留意すべきである.
著者
田中 真奈実 入江 勇治 安羅岡 一男 佐藤 章仁 松本 繁 白田 保夫 中村 尚志 河合 美枝子 海老原 誠
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.156-163, 1988

関東地方利根川流域で感染した慢性日本住血吸虫症について, 茨城県内診断例12例を中心に, その診断法・病態・治療適応について検討した. 患者は, すべて海外渡航歴・利根川以外の本症流行地への旅行歴はなく, 取手市戸頭, 稲敷郡河内村, 筑波郡谷和原村等かつて本症の流行が報じられた地域の在住者である. 血中抗住血吸虫抗体及び糞便中の虫卵は検査したすべての症例で陰性であった. 8例の患者の確定診断は, 本症とは異なる基礎疾患で摘出された臓器 (胃・十二指腸等上部消化管及び肝・胆道系) 中の日本住血吸虫虫卵の病理学的検索によってなされた. しかし, 茨城県取手市戸頭の3症例と筑波郡伊奈町の1症例は, 人間ドックで画像診断学的に診断されており, 流行地における本症患者のスクリーニングには, 肝エコーにおける魚鱗状パターン, 肝CT像における被膜石灰化像・隔壁様石灰化像等特徴的所見も有用であることが示された. また, その病態は, 基礎疾患によって異なっており, 胃癌・肝癌等悪性腫瘍との合併例は4例であった. プラジカンテルによる治療適応の判定には, 虫卵排出の有無及び虫卵の孵化能の検索が必要であるが, 疑わしい症例には生検材料による孵化試験をすることが必要である. 病理組織学的検索だけでは, 感染時期及び孵化能の判定は困難である.
著者
武内 可尚 富樫 武弘 砂川 慶介 加藤 達夫 神谷 齊 中山 哲夫
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.56-62, 2002-01-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
14

麻疹・風疹二混 (HF) 生ワクチンを12-90カ月の小児442名に接種し抗体反応と副反応調査をおこなった. 368例で接種前後のペア血清を採取し, 接種前麻疹赤血球凝集抑制 (hemagglutination inhibition; HI) 抗体陰性者363例のうち抗体陽転例は343例 (94.5%) であった. 接種前風疹HI抗体陰性者361例のうち抗体陽転例は349例 (96.7%) であった.副反応調査は406例が対象となった. 37.5℃ 以上の発熱は102例 (25.1%), 39.5℃ 以上の発熱は2例 (0.5%) に認められた.発熱出現日の平均は6.7日で, 平均有熱期間は2.2日間であった発疹は87例 (21.4%) に認められ, 発疹の平均出現日は接種後7.1日で平均4.8日間発疹が持続し, リンパ節腫脹は12例 (3.0%) に認められた. 麻疹・風疹二混生ワクチンは各単味ワクチン接種と同等の効果と安全性が確認され, 二混生ワクチンは臨床的に有用である.
著者
具 芳明 岡本 悦司 大山 卓昭 谷口 清州 岡部 信彦
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.85, no.5, pp.494-500, 2011-09-20 (Released:2017-08-11)
参考文献数
20
被引用文献数
1 2

薬剤耐性菌に対する対策として抗菌薬適正使用が強調されている.しかし,抗菌薬使用量とくに外来での抗菌薬使用量を地域単位で把握する試みはこれまでになされていない.そこで,長野県諏訪地域における 2009 年 12 月から 2010 年 5 月の国民健康保険電子レセプトから抗菌薬処方情報を集計するとともに,同地域の主要病院における薬剤耐性菌の頻度を集計し,外来での抗菌薬使用量との関連について検討した. 同地域における国民健康保険被保険者数は 31,505 人(人口の 27.1%)であり,レセプト電子化率は医科 77.4%,調剤 96.0%であった.外来での抗菌薬総使用量は 9.34 Defined Daily Dose(DDD)/1000 被保険者・日であり,MLS(マクロライドなど),ペニシリン以外の β ラクタム系,キノロン系の順であった.海外における先行研究と比べ,外来抗菌薬使用量は少なく,その内容も特徴的であった.大腸菌のキノロン耐性は外来でのキノロン系抗菌薬の使用量から予想される範囲であったが,マクロライド非感受性肺炎球菌の割合は外来での MLS 使用量から予想されるよりも高かった. 国民健康保険電子レセプトを用いて地域での抗菌薬使用量を算出することが可能であった.抗菌薬総使用量およびその内容は,抗菌薬適正使用を含めた薬剤耐性菌対策を推進する上で有用な基礎情報になるものと考えられた.
著者
川崎 幸彦 細矢 光亮 片寄 雅彦 鈴木 仁
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.104-109, 1999-02-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
19
被引用文献数
4 12

近年, 麻疹やRSウイルス (RSV) 感染症に対するビタミンA補充療法 (本療法) の有効性が報告されているが, 本邦のようにビタミンA欠乏が問題にならない国における本療法の治療効果に関する報告は少ない.今回, 私達は, 基礎疾患を有さず栄養状態の良好な麻疹患児108例とRSV感染症患児95例を臨床症状の重症度により中等症と重症の2群に分類し, 各群についてビタミンA投与群と非投与群で, その主要臨床症状の持続期間, 入院期間, 合併症の有無を比較検討した.ビタミンAは入院第1, 第2の両病日に各々10万単位を経口投与した.麻疹患児群ではビタミンA投与群において重症度にかかわらず咳噺の持続期間が有意に短縮したが, 発熱期問や入院期問および合併症の出現率に有意差はみられなかった.RSV患児では重症度においてビタミンA投与により陥没呼吸や瑞鳴の出現期間が短縮した.すなわち, ビタミンA補充療法は本邦における麻疹やRSV感染症において, 特に重症例ではその臨床症状を改善するものと考えられた.
著者
雨宮 一彦 田口 文章
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.177-182, 1994-02-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
13
被引用文献数
2 4

業務用に使用されているシャンプーとリンスの細菌汚染の実態を知ることを目的に, 無作為に抽出した理容店と美容店17施設から分与して貰った39検体の洗髪液について, 血液寒天培地を用いて, 細菌の分離試験を実施した. 原液を希釈して用いるシャンプーやリンス (希釈型, 21検体) と, ボトルから直接使用するもの (ポンプ型, 18検体) の細菌検出率は, 各々76.2%と33.3%であった. 細菌が検出されたシャンプーとリンス中の総細菌数は最少1.0×102CFU/mlから最大7.0 ×107CFU/mlであった. 分離菌は, Serratia marcescensが43.3%と最も多く, 他にEnterobacter aerogenes, Klebsiella pneumoniaeなどの腸内細菌とPseudomonas aeruginosaやPseudomonas cepacia などのブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌等日和見感染の原因となりうる細菌であった.<BR以上の結果は, 業務用シャンプーとリンスが細菌に汚染されている実態と, 洗髪剤の衛生的な取り扱いの必要性を明らかにした.
著者
荒木 和子 篠崎 立彦 入江 嘉子 宮澤 幸久
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.305-310, 1999-04-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
12
被引用文献数
1 3

Bifidobacterium breve YIT4064 (B.breve YIT4064) はマウスにおいて抗ロタウイルスIgA産生を増強し, ロタウイルス感染を防御することがすでに報告されている.今回は乳幼児にみられるロタウイルス感染に対する同菌体の防御効果の可能性について検討した.某乳児院内の乳幼児10例を投与群として, 1日1回, 50mg (菌数: 5×1010) のB.breve YIT4064を2日間連続投与し, 同室に在室していた乳幼児9例を対照群とした.試験期間中, 対照群の9例中2例からロタウイルスの排出が認められたが, 10例のビフィズス菌投与群からはロタウイルスの排出は認められなかった.試験期間を7日間ごとに4分割し, 両群のウイルス排出頻度とロタウイルス特異的IgA抗体陽性比率を比較した.その結果, days8~14において, 対照群のウイルス排出検体数は32検体中4検体であるのに比べ, 菌体投与群は38検体中0検体であった.ビフィズス菌投与群ではdays8~14において抗ロタウイルスIgA陽性例が増加しているのに対し, 対象群では調査期間を通じてIgA陽性数の有意な増加はみられなかった.以上のことからB. breve YIT4064の投与によりIgA抗体産生が増強され, ロタウイルスの排出頻度が有意に減少したと考えられた.
著者
山下 裕之 上田 洋 高橋 裕子 三森 明夫
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.306-309, 2012-05-20 (Released:2013-04-12)
参考文献数
17
被引用文献数
2 5 1

The patient was a 74-year old male who presented with a skin rash, cough, and impaired consciousness. Adiffuse, systemic, dark red rash was observed and he was admitted. Varicella infection was diagnosed based on the varicella-zoster virus (VZV)-IgM levels. The extremely high VZV- IgG levels observed were unlikely to be present inaninitial infection and the infection was thought to be a reoccurrence. Diffuse nodular shadows measuring ≤5mm indiameter were observed on chest computed tomography (CT) ; this was consistent with the typical imaging findings of varicella pneumonia. The cerebrospinal fluid (CSF) was positive for CSF VZV-IgM antibody, CSF VZV-PCR, and CSF antibody titer index. A diagnosisofvaricella meningitis was made. When both respiratory and neurological symptoms are observed inpatients with varicella infection, it is necessary to consider a combined diagnosis of varicella pneumonia and varicella meningitis/encephalitis and perform chest imaging and a CSF examination. Repeated asymptomaticre-infection isconsidered necessary in order to maintaina life long immunity to varicella ; however, the opportunities for asymptomaticre-infection are decreasing with the declining birth rate and trend toward small families. As a result, reoccurrences of varicella infection in the elderly are expected to increase with rapidlyincreasing longevity.
著者
明石 祐作 鈴木 広道 竹内 優都 上田 淳夫 廣瀬 由美 今井 博則 石川 博一
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.95, no.1, pp.9-16, 2021-01-20 (Released:2021-08-01)
参考文献数
29
被引用文献数
1

日本ではインフルエンザの診断に,迅速抗原検査が広く用いられている.しかし,40~50% で偽陰性が見られるとされ,正確に結果を解釈するためには,検査性能に影響する要因を把握する必要がある.今回,インフルエンザ様症状(37℃以上の体温上昇,寒気・体熱感,咳,喀痰,倦怠感,咽頭痛,筋肉痛・関節痛,頭痛,鼻汁・鼻閉のいずれか)の発症から検査までの時間経過により,インフルエンザ迅速抗原検査の感度・特異度が異なるか,単施設前向き研究で調査した.当施設がある地域のインフルエンザ流行期間に(2017年12月~2018年2月および2018年12月~2019年3月),臨床的にインフルエンザの疑いがあり,担当医がインフルエンザ迅速抗原検査を必要と判断した患者を対象とした.基準検査法はリアルタイムPCR法とした.期間中の累計322名(2017年度:159名,2018年度:163名)のうち,313名を最終対象者とした.リアルタイムPCR法を用い129名(41.2%)でインフルエンザウイルスを検出した(A型:88名,28.1%;B型:41名,13.1%).インフルエンザ迅速抗原検査の感度は,全体で54.3%(95% 信頼区間(CI):45.3~63.1),特異度は100%(95%CI:98.0~100)だった.感度はインフルエンザ様症状の発症からインフルエンザ迅速抗原検査までの時間の経過により有意な上昇を示した(p=0.03):12時間未満,38.9%(95% CI:17.3~64.3);12~24時間,40.5%(95% CI:25.6~56.7);24~48時間,65.2%(95% CI:49.8~78.6);48時間以降,69.6% (95% CI:47.1~86.8).本検討より,インフルエンザ迅速抗原検査の感度は,インフルエンザ様症状の発症から時間が経過するに連れて上昇する可能性が示された.
著者
太田 玲子 範 瑀軒 網谷 英樹 飯塚 拓巳 山田 夏鈴 加藤 陽佳 石栗 広志 深瀬 真由美 村木 靖 西村 秀一
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.96, no.2, pp.34-38, 2022-03-20 (Released:2022-03-29)
参考文献数
14

手指消毒薬の開封後の使用期間は施設により異なるが,開封から半年と定める所が多い.しかし,アルコール製剤の開封後の殺菌効果については明確な指標はなく,情報も少ない.我々はその根拠となるデータを得るために当院の医療現場で実際に6カ月間使用され残ったゲル状アルコール製剤(ゲル状製剤)を回収し,そのまま室温で保存した後(開封直後から開封後34カ月,残量60から350 mL),その主成分であるエタノール濃度をガスクロマトグラフィー法で測定した.その結果,経過時間,残量に関わらずエタノール濃度はすべて開封直後と同等であった.この結果を検証するためにStaphylococcus aureusとPseudomonas aeruginosaを用いて各製剤の殺菌能を測定し,開封直後の製剤と比較検討した.殺菌能測定ではゲル状製剤の対照剤として液状製剤についても測定した.方法は製剤と菌液を30秒と5分間反応させた後に生菌数を求め,精製水を用いた対照実験に対する減少率とlog10 reduction(対数減少値)で評価した.その結果,殺菌能も経過時間,残量に関わらずすべて開封直後と同等で,エタノール濃度と同様な結果であった.今回の検討でゲル状製剤は開封後半年,あるいはそれ以上経過しても開封直後と同等のエタノール濃度とS. aureusとP. aeruginosaに対する殺菌能を保持している可能性が示唆された.
著者
戸田 宏文 古垣内 美智子 江口 香織 山口 逸弘 吉長 尚美 森田 泰慶 上硲 俊法 田中 裕滋 吉田 耕一郎
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.93, no.3, pp.326-329, 2019-05-20 (Released:2019-12-15)
参考文献数
19

We report herein on two cases of bacteremia caused by daptomycin-resistant Corynebacterium striatum. In these cases, daptomycin-resistant C. striatum was detected after receiving daptomycin for the treatment of multidrug-resistant C. striatum bacteremia, and ERIC-PCR band patterns were identical among the isolates of C. striatum before and after daptomycin therapy. We performed an in vitro assay to determine whether daptomycin resistance is induced in nine clinical isolates of C. striatum, including our two cases, after exposure to daptomycin in broth culture, and seven isolates showed emergence of daptomycin resistance. To our knowledge, this is the first reported case of daptomycin-resistant C. striatum bacteremia in Japan. The use of daptomycin for the treatment of C. striatam infections should be avoided, considering the risk for rapid emergence of daptomycin resistance.