著者
長濱 澄 渡邉 文枝 重田 勝介
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.601-616, 2023-02-02 (Released:2023-02-11)
参考文献数
101

COVID-19の感染拡大の影響により,オンライン学習が広範かつ大規模に実施される中で,その利点が広く周知されるようになった.それに伴い,オンライン学習と対面学習を,あるいは,同期型学習と非同期型学習を効果的に組み合わせたブレンディッドラーニングは,「教育のニューノーマル」として改めて注目されている.ブレンディッドラーニングにより教授過程を最適化し学習効果を向上する教育実践は国内外で多数行われており,その多様な効果が認められている.一方,ブレンディッドラーニングを設計し効果的に実施することは必ずしも容易でない.本論では,ブレンディッドラーニングに関する教育工学研究の動向を整理し,COVID-19以降における展望を述べる.
著者
石川 奈保子 石田 百合子
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.641-652, 2023-02-02 (Released:2023-02-11)
参考文献数
33

本研究では,大学生対象に,2020年度後期にオンライン授業を受講しての自己調整学習の状況を尋ねた.その結果,以下の3点が明らかになった.(1)「e ラーニングでは計画的に一人でじっくり学習できるところがよい」と考えている学生ほど学習を工夫する方略を使用し,「e ラーニングは単調な感じがするので物足りない」と考えている学生ほど学習とそれ以外の時間にめりはりをつけることで学習意欲の維持をはかる方略を使わない傾向が示された.(2)学習の相談ができる友人の有無によって,e ラーニング指向性や自己調整学習方略使用に違いはなかった.(3)時間割などをベースに学習時間を固定していた学生と,課題の期限などをベースに学習時間を流動的に取っていた学生がおり,いずれでも自己調整していた学生はうまく学習を進めていた.うまく学習を進めるには,時間割ベースの学習計画を立てるとともに,タスクを把握・可視化し,やり残した課題に取り組む日や休息日を設定することが有効であることが示唆された.
著者
廣松 ちあき 尾澤 重知
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.363-380, 2020-03-20 (Released:2020-03-30)
参考文献数
46
被引用文献数
3

内省支援が必要な中堅社員を対象に,仕事観や信念を形成した経験を半構造化インタビューで調査し,TEA によって分析した.その結果,中堅社員は<仕事の大変さ,難しさに直面する>,<異動・配置換えにより新しい仕事に就く>,<一人で完結させる責任の重い仕事を任されるが,予想外のトラブル対処に追われる>という経験を通じて,上司や同僚,顧客などの【周囲の期待・要望】と,【業績達成を求める組織風土】の対立の中で葛藤し,成功経験のみならず失敗経験からも「自分の仕事への取組み方」の理解を深め,仕事観や信念を自覚することが分かった.それらの仕事観・信念は,企業人の仕事観・信念として提唱されていた<社会人としての役割規範>,<自律的に仕事をする>,<他者への貢献>に加えて,<公私ともに充実させる>が新たに示された.最後に,中堅社員の仕事観・信念の確立と熟達者への成長に向けた上司からの内省支援を検討した.
著者
大﨑 理乃 大島 純
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.13-29, 2019-07-10 (Released:2019-07-10)
参考文献数
44
被引用文献数
4

本研究は,アクティブラーニングとして今後発展が期待される知識創造型学習に焦点をあて,新たな評価方法を提案するものである.提案方法では,知識創造型学習のデザイン原則に対して,CSCL 研究をはじめとして成果を挙げつつある社会意味ネットワーク分析と,テキストマイニングの混合法による可視化に基づく評価を行なった.具体的には,知識創造型学習を目指して設計された課題解決型学習(Project Based Learning)で利用されたCSCL システム上の学習者による書き込み内容を分析し,最終成果物の質が異なるグループの知識創造プロセスの違いが評価できることを確認した.その上で,提案した評価方法の有用性と限界を検討した.
著者
畑野 快
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.Suppl., pp.81-84, 2013-12-20 (Released:2016-08-10)
被引用文献数
10

本研究の目的は,内発的動機づけと主体的な学習態度を媒介する変数として自己調整学習方略(Self-Regulated Learning Strategy: SRLS)に着目し,主体的な学習態度に対する内発的動機づけ,SRLSの影響を明らかにし,大学生に主体的な学習態度を獲得させる方策を検討することであった.大学1年生266名を対象とした質問紙調査から,内発的動機づけがSRLSを媒介し,主体的な学習態度に影響を与えるモデルを仮定した上でSRLSの間接効果の検証を行ったところ,SRLSの下位尺度である「認知調整方略」,「動機づけ調整方略」の間接効果が有意であった.以上の結果を受け,大学教員が大学生に主体的な学習態度を身につけさせる方策について内発的動機づけ,SRLSの視点から考察した.
著者
小倉 光明 佐藤 和紀 森下 孟 村松 浩幸
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S46043, (Released:2022-10-17)
参考文献数
6

GIGA スクールプロジェクトに基づく情報端末の運用および活用に対する課題意識(以下,GIGAスクールP における課題意識)について,初期・中期・後期段階の質的変遷を把握した.その結果,小・中学校では初期,中期で運用と活用に関する課題意識が5割程度であり,後期から活用に関する課題意識が6〜7割程度に高まっていた.教育委員会では,中期から活用に関する課題意識が7割程度に高まっていた.運用に関する課題はネットワーク環境やセキュリティに関する内容も多く,教員での解決は難しい.このような内容を踏まえて,主体的・対話的で深い学びの実現に向けてGIGA スクールP における課題意識に合わせた支援が必要であると考えられる.
著者
高橋 薫 鈴木 道代 佐々木 さくら
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S46087, (Released:2022-10-20)
参考文献数
7

本実践では創価大学の「学術文章作法Ⅰ」を履修する留学生を対象に,文章診断ソフト「文採」を活用して文章の言語形式へのフィードバックを試み,意見文を自己推敲させた.本研究の目的はフィードバックを手がかりに,学習者が適切に日本語の誤用を自己推敲できるか否かを確認することである.フィードバック前後の意見文を比較したところ,「副詞率」「話し言葉」「助詞の誤り」において,問題箇所の出現頻度が有意に減少した.次に,効果量の大きかった「話し言葉」「助詞の誤り」について修正の適切さを確認したところ,「話し言葉」の約8割,「助詞の誤り」の約7割は適切に修正できていた.しかし,フィードバックの適切性を見ると,「話し言葉」の約9割が適切であったのに対し,「助詞の誤り」へのフィードバックは4割程度に過ぎず,「助詞の誤り」については教師の介入が必要であることがわかった.
著者
森 裕生 網岡 敬之 江木 啓訓 尾澤 重知
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.415-426, 2018-03-01 (Released:2018-03-16)
参考文献数
20

大学教育における学期を通した振り返り活動を促進するために,学生個人の各授業回と学期末の理解度の自己評価点の「ずれ」に着目し,「ずれ」の理由を記述させることで振り返りを促す「時系列自己評価グラフ」を開発した.本研究では大学授業2実践を対象に,学生が作成した時系列自己評価グラフを質的に分析した.その結果,(1)全体として学期末の自己評価点が各授業回の自己評価点より10点程度低い「ずれ」が生じること,(2)学生は「ずれ」を認識することで,学期を通して学習内容を関連付けた振り返りや,理解不足だった内容についての振り返りを行ったことなどが明らかになった.
著者
山野 大星 小林 猛 井庭 崇
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.45127, (Released:2022-07-26)
参考文献数
18

本研究では,専門学校の建築専門職教育における住宅設計課題において,パターン・ランゲージを用いた評価作成と指導の有効性を明らかにすることを目的に研究授業を実施し,その効果を検討した.研究授業前に教員グループによってグループ設計課題「バイオクライマティックデザインによる住宅設計」のパターン・ランゲージ及びルーブリックを作成した.パターン・ランゲージを用いて設計演習の授業内でワークショップを行なった処置群と通常の設計演習の授業を行った対照群とを比較した.処置群,対照群ともに事前に提示していたルーブリックによる教員の作品評価および質問紙調査による学生の授業で「身につける力」の自己評価においても,処置群が高いことを確かめ,パターン・ランゲージを用いた指導の有効性を明らかにした.また,処置群の中でもパターン・ランゲージの内容を理解して,積極的に活用するグループの作品の評価が高いことも確認した.
著者
稲木 健太郎 泰山 裕 三井 一希 大久保 紀一朗 佐藤 和紀 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S46058, (Released:2022-07-26)
参考文献数
7

本研究は,児童が学習方法を自己選択する授業の経験と学習方法のメタ認知の関係を調査し,学力の高低ごとに検討することを目的とした.調査対象の授業を週15コマ程行った学級を高頻度群,週3コマ程行った学級を低頻度群とし,学習方法のメタ認知に関する振り返りの記述数と学力との関係を分析した.結果,経験頻度と学力の二要因が,学習方法のメタ認知的活動に関係する可能性が示唆された.一方,学習方法のメタ認知的活動を適切に行うには,学習方法を自己選択する経験だけでなく,学習方法に合わせたメタ認知的活動を適切に行うための支援や,学力下位群への支援が必要となる可能性が示唆された.
著者
上野 雄己 日高 一郎 福留 東土
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.419-423, 2022-05-20 (Released:2022-06-22)
参考文献数
18

本研究の目的は,中等・高等教育での議論経験と市民性の関連を検討することである.分析対象者は都内中等教育学校の卒業生392名である.カテゴリカル因子分析の結果から,市民性尺度は政治への関与行動とコミュニティへの関与行動の2因子9項目から構成された.次に,社会人口統計学的要因を共変量とした媒介分析の結果から,市民性の下位尺度である政治への関与行動,コミュニティへの関与行動ともに,中等教育での議論経験が直接的に関連する経路と,高等教育での議論の成功経験を介して,間接的に関連する経路が確認された.
著者
畑野 快 溝上 慎一
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.13-21, 2013-05-20 (Released:2016-08-10)
参考文献数
27
被引用文献数
14

本研究の目的は,大学生の学習を態度と時間の2側面から捉えた上で主体的な授業態度に着目し,その測定尺度(Active Class Attitude scale;ACA尺度)の妥当性の検討を行い,主体的な授業態度と授業内,外学習時間に基づいて学生タイプを作成することで,大学生の学習を量・質の両方の側面からサポートする視点を検討することであった.そのために大学1年生204名を対象とした質問紙調査を行い,まず主体的な授業態度と学習に対する積極的関与との弁別性を因子分析によって検討したところ,主体的な授業態度と積極的関与の項目が異なった因子に負荷することが確認された.次に主体的な授業態度と授業内学習時間,授業外学習時間,自主学習時間との相関関係を検討したところ,主体的な授業態度は全ての学習時間と有意な正の関連を示すことが確認された.最後にクラスタ分析によって主体的な授業態度と授業内,外学習時間に基づく学生タイプを作成したところ,5つの学生タイプが得られた.以上の結果を踏まえ,ACA尺度の弁別的,収束的妥当性及び学生タイプに基づいたサポートの方策について議論を行った.
著者
藤本 徹 荒 優 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.267-273, 2019-12-31 (Released:2020-02-14)
参考文献数
33

近年の大規模公開オンライン講座(MOOC)の進展により,世界規模で受講者を集めるグローバルなオンライン教育プラットフォームが普及した.その一方で,学習意欲の向上や継続的な学習支援の仕組みの不足が指摘されている.本稿では,MOOC の学習支援の手法としてゲーミフィケーションに着目し,MOOC のコースデザインにゲーミフィケーションを取り入れた先行研究をレビュー調査した結果をもとに,ゲーミフィケーションの構成要素やそのコースへの導入のための基本的なモデルや理論的枠組みの研究動向を検討した.MOOC のコースデザイン上の課題に対し,ゲーミフィケーションを試行的に取り入れた研究が見られ,デザインフレームワークを体系化する取り組みも見られるが,ポイントやバッジなどの実装しやすい要素の導入が多いことが確認された.
著者
加地 雄一
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, no.Suppl., pp.1-4, 2012-12-20 (Released:2016-08-09)
参考文献数
8

本研究の目的は未知漢字の記憶における書字動作の効果を検討することである.漢字の自由再生と手がかり再生について2つの学習条件(書字,目視)間で比較した.学習リストはJIS第4水準から選定した12の漢字の形態・意味ペアで構成されていた.参加者は大学生47名であった.形態,意味の自由再生成績は,学習条件間で有意な差は見られなかった.一方,手がかり再生(形態を手がかりにした意味の再生,意味を手がかりにした形態の再生)成績では,目視条件が書字条件よりも有意に高かった.これらの結果から,書字動作は未知漢字の記憶を促進させず,むしろ干渉的な効果をもたらす場合があることが示唆された.
著者
手塚 和佳奈 佐藤 和紀 三井 一希 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S45067, (Released:2021-10-21)
参考文献数
8

本研究は,GIGA スクール構想の標準仕様にしたがってICT 環境が整備された学校で1人1台の端末を活用した実践を先行実施していた小学校教師の情報モラル指導に対する負担感・困難さを検討することを目的に,半構造化インタビューを実施した.その結果,【A 情報モラル指導のタイミングの難しさ】【B 情報モラルの指導形態に関する迷い】【C 端末の活用場面に即した指導だけでは補えない指導内容】【D 情報モラル指導に対する教員間の考え方や進度の調整】【E 情報モラルに関する個別指導】【F 児童間のオンラインでのやりとりの観察】の6種類が確認できた.
著者
向居 暁
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.Suppl., pp.41-44, 2021-02-20 (Released:2021-03-08)
参考文献数
20

本研究では,都道府県(以下,県)の形とその名称の対連合学習において,素朴理論に基づいて考案された2種類の指導方法の有効性が検討された.その方法の一つは,学習教材にあるように県の形をイラスト化するものであり,もう一方は,県の形を利用して奇異性の高い,すなわち,面白おかしいイラストを付加したものであった.その結果,これらの2つの学習条件では,県の形をそのまま提示した条件よりも県名の記憶成績が低いことが明らかになった.つまり,県の形をイラスト化しても,そのイラストを面白おかしくしても,県名の記憶は促進されないことがわかった.素朴理論ではなく,科学的知識に基づいた指導方法の重要性が示唆された.
著者
佐藤 和紀 三井 一希 手塚 和佳奈 若月 陸央 高橋 純 中川 哲 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.45019, (Released:2021-09-14)
参考文献数
24

GIGA スクール構想の標準仕様にしたがってICT 環境が整備され,1人1台の端末を活用している学級へのICT 活用に関する児童と教師への調査から,導入初期の児童によるICT 活用と教師の指導の特徴を検討した.その結果,児童は1人1台の情報端末を日々の活動の中で,さまざまなアプリケーションを組み合わせて活用しながらクラウド上でコミュニケーションを取っていたこと,教師は学校内の情報端末の活用については指導できるが,家庭学習については自治体のルールや情報モラルの観点から指導できていないことが特徴として挙げられた.
著者
三保 紀裕 本田 周二 森 朋子 溝上 慎一
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.40, no.Suppl., pp.161-164, 2017-01-15 (Released:2017-03-06)
参考文献数
10
被引用文献数
4

本研究では,反転授業をアクティブラーニングの一形態として捉えた上で,授業における予習の仕方と対面授業でのアクティブラーニングの関連について検討を行った.反転授業を採り入れた3大学7授業に協力を頂き,プレ・ポスト調査を実施した.結果,アクティブラーニングを通じた認知プロセスの外化が生じている度合いが高い授業では,深い学習アプローチや学習意欲の上昇がみられ,予習の仕方にも内容理解を深めるような形での変化が生じていた.内容理解を深めるための予習の仕方が,授業内でのアクティブラーニングをより活発なものとする役割を担っているようであった.このことは,反転授業における予習の仕方の重要性を示す結果であった.
著者
三井 一希 佐藤 和紀 渡邉 光浩 中野 生子 小出 泰久 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S45052, (Released:2021-09-07)
参考文献数
5

本研究は,児童同士の交流に着目したプログラミングの学習の場を,休み時間等の授業時間外に設定した実践を行い,その有効性と交流の実態を調査した.結果,提示した課題を教師が介入することなく,児童だけで達成することが概ね可能であることが示唆された.また,教師が指導する学習形態よりも児童だけで学ぶ学習形態を好む児童が有意に多いことが示された.さらに,児童同士の交流の実態を調査したところ,児童は事前のプログラミング技能の差に関わらずに他者と交流を行い,課題を達成している可能性が示唆された.
著者
山本 朋弘 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.45011, (Released:2021-08-31)
参考文献数
19

児童1人1台の情報端末の活用に関する児童向け意識調査等を行い,学校の端末環境や学年等で学習者用基本ツールの操作スキルの習得がどの程度異なるかを比較分析し,児童が情報端末を身近な学習の道具として活用できるかを考察した.9自治体14校の4学年から6学年までの児童1095人の回答を分析した結果,【表計算】,【プレゼンテーション】,【プログラミング】,【交流ツール】の操作スキルへの評価は低く,校内での活用場面も少なく,操作スキルを向上させるための指導の工夫が必要であることが示された.情報端末環境や学年の違いによる比較では,基本ツールの操作スキルに関する回答結果において,5カテゴリー全てで,1人1台環境にある児童が,情報端末を共用する児童より有意に高く,特に【表計算】,【プレゼンテーション】,【交流ツール】では,学校のICT環境や指導,学年の違いが影響することが示され,教科横断的に習得できるよう指導することが重要であることを明らかにした.また,家庭での利用頻度も操作スキルの習得に影響することが考えられ,学校が家庭への持ち帰りをどのように進めるかが今後検討すべき課題として挙げられる.