著者
安斎 勇樹 益川 弘如 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.287-297, 2013-11-20 (Released:2016-08-10)

本研究の目的は,協同制作を課題とした大学生向けのワークショップにおいて,創発的コラボレーションを促すプログラムの活動構成の指針を示すことである.本研究では,ジグソーメソッドと類推の効果を組み合わせた「アナロジカル・ジグソーメソッド」という活動構成を仮説として設定した.アナロジカル・ジグソーメソッドのほかに,ジグソーメソッドと類推の有無によって合計4群の活動構成を設定し,それぞれ2回(各6-7グループ)の実践を行い,各グループの制作プロセスを質的に分析した.その結果,アナロジカル・ジグソーメソッドによって活動を構成すると,創発的コラボレーションが促されることが示唆されたほか,視点の相違から類推が活用され,さらにそれが異なる視点から再解釈されたり,複数の概念を結びつけたりする可能性が示された.
著者
瀬戸崎 典夫 鈴木 滉平 岩崎 勤 森田 裕介
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.253-263, 2017-02-20 (Released:2017-03-23)
参考文献数
28
被引用文献数
2

本研究は,TUIを有するタンジブル天体学習用AR教材を開発した.また,開発したタンジブル天体学習用AR教材の教育現場における教材としての適性およびインタフェースについて評価した.次に,協同作業における学習者特性を観点として教材を評価した.さらに,本教材を使った協調学習における発話を分析することで,本教材の利点および改善点を明らかにし,本教材を用いた授業実践に向けての示唆を得ることを目的とした.その結果,本教材は学習者の興味を引きつけるとともに,月の満ち欠けのしくみの理解を促し得ることが示された.また,学習意欲を高める上で有用であることが示唆された.さらに,協同作業に対する意識が低い被験者においても協調学習を支援する教材として有用である可能性が示された.発話分析の結果,TUIやARを実装することにより,仮想環境内で現実環境のオブジェクトを関連付けることでき,学習者間の知識共有に有用であることが明らかになった.
著者
阿部 裕子 楠本 誠 久保田 善彦 舟生 日出男 鈴木 栄幸 加藤 浩
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.141-144, 2012
参考文献数
6

本研究は,「ごんぎつね」のクライマックス場面のマンガを,Voicing Boardで作成した.マンガ作成による視覚化と,児童の情景及び心情理解との関連を明らかにすることが,研究の目的である.その結果,以下のことが示唆された.物語の語り手の視点にある登場人物の心情は,マンガ作成の有無にかかわらず,理解しやすい.語り手の視点にない登場人物の心情は,マンガの作成を通してその視点が獲得できるため,理解が向上しやすい.複数の構図を想定できる場合は,情景理解が曖昧になり,マンガ作成による心情理解の効果を得にくい.
著者
常田 将寛 椿 美智子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.259-270, 2016-03-31 (Released:2016-03-23)
参考文献数
24

本研究では,批判的思考力に関わる3つのスキルに基づき大学生を対象にタイプ分けを行い,タイプ毎に批判的思考に関する態度や行動と能力の関係を分析するとともに,能力を高めるために態度や行動を通して寄与している要因を分析した.その結果,3タイプに分類することができ,批判的思考力に関わるスキルが比較的高いタイプでは小中学生時からの経験の積み重ねが現在の行動に影響を与えており,能力が身に付いていることが分かった.また,スキルが全体的に高くないタイプでは,過去からの積み重ねと結びついておらず,現在の行動が能力に影響を与えていること,文章コミュニケーション力のみ高いタイプでは,態度がその能力に影響を与えていることが分かった.そして,条件付き確率分布を考察することにより,批判的思考力に関わるスキルが高いタイプと低いタイプで,必要な行動や態度の強さによる能力向上の変化に違いがあることが分かった.
著者
藤原 康宏 大西 仁 加藤 浩
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.125-134, 2007
被引用文献数
7

近年の教育評価の研究では,学習の場面と独立した評価ではなく,学習の場面に埋め込まれた評価が試みられている.その方法の1つとして,学習者同士が評価を行うことが有用であることが知られている.相互に学習コミュニティメンバー全員の評価をすることは,メンバーの人数が多くなるにつれて困難になるため,評価すべき相手を選択する必要が生じる.その選択方法を考えるために,評価する学習者が,評価対象となっている学習者からも評価されるか否かにより評価が変化するかについて実験を行った.その結果,お互いに評価しあう方が甘い評価を行う傾向があり(「お互い様効果」),お互いに評価しあわない方が教員の行った評価に近いことが分かった.そこで「お互い様効果」を除去し合理的に評価すべき相手を選択し,相互評価を容易に実施できるツールを開発し,その評価を行った.学生と教員による評価の結果,相互評価をさせる場合に有効であることがわかった.
著者
尾澤 重知 森 裕生 江木 啓訓
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.41-44, 2012

Wikipediaは誰もが編集に参加できる世界最大の百科事典である.本研究では,大学教育の授業実践において,日本語版Wikipediaの編集を目指す活動を取り入れた授業をデザインした.授業ではWikipediaの編集方針でもある「中立的」「検証可能」な項目の検討を含め,研究活動で必要なスキルの育成を目指した.量的・質的分析の結果,学生の約半数が実際にWikipediaに投稿したこと,文献による根拠づけなど研究活動でも必要なスキルの習得につながったこと,投稿にあたって授業内BBSでのメンターや教員からのコメントや,学生間のやりとりが有用だったことなどを示した.一方,既存記事の削除を伴う編集の少なさなど課題も明らかになった.
著者
野上 俊一 丸野 俊一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1-11, 2008
参考文献数
14

本研究は大学生が自己の学習状態と達成すべき学習目標の達成困難度を考慮に入れて,限定された学習時間の範囲内で,学習活動をどのように調整するかを検討した.実験の結果,学習目標の違いに関わらず,学習状態の悪い項目群より良い項目群を多く学習することが明らかになった.この結果は階層的システムモデル(学習目標が難しい場合は学習状態の悪い項目群を,容易な場合は学習状態の良い項目群を多く学習する)からの予測とは一致しなかった.しかし,達成困難度の高い条件での学習行動は最近接学習領域モデル(学習目標の達成困難度に関係なく,学習状態が中程度の項目群を多く学習する)からの予測と一致した.また,時間経過に伴った学習活動の変化と被験者の内省報告の分析から,どの学習目標条件においても,学習の初期段階では学習状態の良い項目群の学習を優先し,その後,残りの学習状態の悪い項目群の学習に移行する2段階の学習調整が示された.
著者
向後 千春 冨永 敦子 石川 奈保子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.281-290, 2012
参考文献数
14

eラーニングと教室でのグループワークを週替わりで交代に行うブレンド型授業を設計し,3年間に渡って実践した.1年目は通信教育課程向けのeラーニングコンテンツを流用し,2年目以降はブレンド型授業用に新規に開発した.ブレンド型授業導入以前の対面授業,ブレンド型授業の1年目,2年目,3年目の成績分布を比較したところ,1年目はほかに比べて成績高群が有意に少なく,成績中群が有意に多かった.しかしながら,2年目以降は,対面授業と有意な差はなかった.また,学習者のブレンド型授業に対する好みは,1年目よりも2年目以降が有意に高くなった.このことから,ブレンド型授業用に授業を設計すれば,対面授業と同程度の学習効果を上げることができ,かつ受講生からも受け入れられることが示唆された.しかしながら,一方で,対面授業に比べて,ブレンド型授業は不合格者が有意に多く,ブレンド型授業に馴染めない学習者が一定の割合で存在していることが示唆された.
著者
今満 亨崇 松村 敦 宇陀 則彦
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.109-112, 2011

本研究は,集団に対する読み聞かせ(お話会)のための絵本選択支援を目的とする.そのために,読み聞かせ時の子どもの様子を活用することの検討を行った.具体的にはまず,子どもの様子をお話会の記録から収集し,現在出版されている絵本リストと組み合わせることで,子どもの様子付き絵本リストを作成した.次に,被験者にお話会を想定した絵本選択を行ってもらい,子どもの様子がどのように参考にされるのかを見た.その結果,子どもの様子は絵本の内容と同程度に参考にされ,絵本選択支援に有効であることが分かった.さらに,絵本選択時に参考にする情報の傾向を記録することで,個人にあった絵本選択となる可能性が示された.
著者
鈴木 雅之 田中 瑛津子 村山 航 市川 伸一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.35-43, 2010

本稿は,自発的な計算の工夫を促進させるために,「式全体をよく見て計算する」という抽象的方略のもとに,いくつかの具体的な工夫方法を教授し,その転移効果について検証するものである.研究1では工夫速算問題にはどのようなものがあるのかを検討するために,工夫速算問題の工夫方法の類似度評定から,多次元尺度法とクラスター分析を用いて工夫速算問題の構造を示し,工夫速算問題を8つの群に分類した.研究2では,研究1の分類結果をもとに,どのような問題に効果がみられたのかを検討した.その結果,小学5年生は教えられた問題と同型構造の問題に対しては工夫を加えることが可能であるのに対し,小学2年生は指導された方略をある程度自発的に応用させることが可能であるということが示された.特に,もともと基本計算能力が備わっている生徒ほど,工夫して計算ができるようになるということが示唆された.
著者
向後 千春
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.207-214, 2019-12-31 (Released:2020-02-14)
参考文献数
11
被引用文献数
2

教育工学は,心理学,工学,教育実践といった領域が複合したものである.教育工学研究もまた複合的になる.教育工学研究の特徴は,(1) 領域フリーであること,(2) 教育の方法に注目していること,(3) 教育の現場に制約されること,の3点である.そして,その指向性は,(1) 現場を改善すること,(2) 同種の実践に還元すること,(3) 理論に寄与すること,である.インストラクショナルデザインは,この教育工学の中心部分をカバーするものである.インストラクショナルデザイン研究を進めるためには,単なる実践報告を越えるために創造的な技術や工夫に焦点をあてること,教育工学として意味のあるリサーチクエスチョンを立てること,デザインベースによって研究を進めること,研究の段階によって適したデータ分析手法を選ぶこと,データを臨床的に解釈し意味づけることが重要であることを指摘した.
著者
竹田 琢 亀岡 恭昂
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S47091, (Released:2023-10-27)
参考文献数
14

大学の授業でワークショップ実践者を育成する際,学生が読み手である教員を強く意識することで,多様なリフレクション記述が阻害される可能性がある.そこで本研究では,初心者を対象にワークショップ実践者育成を行う短期大学の授業において,仮想の読み手として「過去の自分」を設定することでリフレクションを支援し,その効果を検討した.その結果,単に経験を「報告」する記述が減り,自分自身が取り組んだ経験について省察する「応用」の記述が増え,多様な観点から批判的で将来の行動に繋がるリフレクションができるようになる可能性が示唆された.
著者
上田 勇仁 半田 純子
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.543-556, 2022-09-10 (Released:2022-09-15)
参考文献数
21

プロジェクト学習における学習をKOLB の経験学習モデルに則して捉え,経験を概念化し他の状況に応用可能な知識などを構成するプロセスである抽象的概念化に着目した.高等教育の初年次教育科目で実施されたプロジェクト学習において,受講者が各回の授業終了後に記述する振り返り課題の記述内容を抽象的概念化とし先行実践を実施した.先行実践の結果を踏まえて抽象的概念化を支援する内省支援として振り返り課題を記述する際の記述指示を改善した.振り返り課題を評価するルーブリック評価表をもとに解釈と分析を促す記述指示を準備し,教育実践を通じて受講者からの評価,記述量,抽象的概念化の種別を検証した.その結果,改善した記述指示に対して9割以上の肯定的な意見があり, 授業の後半から改善した記述指示を取り入れた実践において記述量に有意な差が見られた.抽象的概念化に該当する記述については,「報告」の記述が減少し,「解釈」に関する記述が増加する傾向があったが「分析」については有意差を確認することはできなかった.
著者
中川 哲 齋藤 玲 板垣 翔大 佐藤 和紀 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.141-156, 2023-01-20 (Released:2023-02-01)
参考文献数
27

本研究では,テスト採点支援システムの利用経験を持つ初等中等教育の教員に対して,テスト採点業務の意識や実態に関するアンケート調査を行った.調査の結果,手採点との比較で,小学校,中学校・高等学校のいずれの学校種における教員においても,今後,採用したい採点手法としてシステム採点が選好された.調査結果の分析から,システム採点の作業面で,採点時間の削減と作業負担の軽減,採点全体の正確さの特性が明らかになった.また,学習指導面では,クラス全体の理解状況の把握についての特性が明らかになった.中学校・高等学校においては,教員自身の指導の振返りについての特性も見られた.一方,学習指導面において,システム採点を行った場合,学習者一人ひとりの理解状況の把握が難しくなるという課題が一部でみられた.この課題については,システム採点において,印刷後の紙の解答用紙を確認するなどの紙とデジタルを併用する解決策がみられた.
著者
城戸 楓 池田 めぐみ
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.46013, (Released:2022-07-04)
参考文献数
31

昨今,これまで多くの研究分野において最も強力なツールの一つとして研究のエヴィデンスを支えてきた帰無仮説有意性検定に疑問が投げかけられている.本稿では,こうした帰無仮説有意性検定の際に信頼性を高めるために報告が求められる効果量を取り上げ,『日本教育工学会論文誌』において過去10年間でどの程度効果量が論文に記載されていたのかについて調査を行った.この結果,『日本教育工学会論文誌』では,2016年ごろより効果量について論文内で掲示される比率が増加していたが,海外での掲載比率ほど高まってはおらず,また近年では少し下落している傾向が見られた.また,教育システム論文では特に効果量が記載されない比率が高かったことが分かった.
著者
大山 牧子 畑野 快
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.217-228, 2023-06-20 (Released:2023-07-14)
参考文献数
31

大学生のリフレクションと学習成果との関係は,専門教育課程や体験・実習型科目で主に検討されており,また,リフレクションの測定も精緻になされていなかった.本研究では,リフレクションのプロセスモデルの特徴を整理し,講義・演習科目でも適応可能なリフレクションを測定する尺度を開発した上で,リフレクションと学習成果としての成績,能力の獲得感との関係を検討することを目的とした.大学生942名のデータをもとに因子分析を行った結果,「内容の想起・分析」「活動の想起・分析」「活用」の3次元からなるリフレクション尺度が開発された.さらに,クラスタ分析によって,それら3下位次元から6つのタイプを同定した.積極的にリフレクションを行うタイプの学生が,他のタイプよりも能力の獲得感が高い傾向にあることを示した.
著者
加藤 走 木村 充 田中 聡 中原 淳
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.207-216, 2023-06-20 (Released:2023-07-14)
参考文献数
51

大学のリーダーシップ教育プログラムが増加することに伴い,大学生の個人的要因と大学生のリーダーシップ行動との関係についての検討が求められている.本研究の目的は,大学生のリーダーシップ行動とリーダー・アイデンティティの関連を定量的データに基づき明らかにすることである.本研究では,大学生291名を対象にweb による質問紙調査を実施し,取得したデータに対してパス解析を行い仮説の検証を行った.分析の結果,大学生の関係水準のリーダー・アイデンティティならびに集団水準のリーダー・アイデンティティがリーダーシップ行動と正の関係があること,集団水準のリーダー・アイデンティティが関係水準のリーダー・アイデンティティよりも率先垂範,挑戦,目標共有,目標管理のリーダーシップ行動と強い正の関係があることが明らかになった.最後に,以上の結果から考えられる本研究の意義や教育実践への示唆,今後の課題について考察した.
著者
藤木 大介
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.Suppl., pp.21-24, 2021-02-20 (Released:2021-03-08)
参考文献数
8

教師の学習に関するメタ認知的知識の不正確さは不適切な指導へとつながる.例えば効果があるなら体罰もやむなしとする考えもある.しかし罰を用いて行動傾向を変容させることは非常に困難であることが知られている.したがって児童・生徒の不適応行動への指導に罰を用いることは倫理的にも科学的にも不適切である.そこで本研究では,教員養成課程の学生や現職教員が体罰についてどのように考え,その効果についてどのような知識を持っているか検討した.その結果,いずれの者も体罰が有効でないことを完全には否定できなかった.また教職課程での学習や現場での経験が体罰に関する倫理的な態度の形成や体罰の有効性の否定につながる可能性が示された.
著者
安斎 勇樹 森 玲奈 山内 祐平
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.135-145, 2011-11-01 (Released:2016-08-08)
参考文献数
23
被引用文献数
2

本研究の目的は,協同制作を課題とした大学生向けのワークショップにおいて,創発的コラボレーションを促すためのプログラムデザインの指針を示すことである.本研究では,創発の源泉としての「矛盾」の効果に着目し,「作品の制作課題に,相反するイメージを持ちながら多様な解釈の可能性を持った2つの条件を設定する」というデザイン原則を仮説として設定した.デザイン原則に基づく実践を4回(全15グループ),比較対象としてデザイン原則に基づかない実践を4回(全11グループ)行い,各グループの制作プロセスを質的に分析した.その結果,デザイン原則に基づく実践においては,制作中に提案されたアイデアや制作物に対する視点に揺さぶりがかかり,創発的コラボレーションが促されることがわかった.ただし,参加者が設定した2条件を「相反するもの」として解釈しなかった場合は,視点の揺さぶりがかからないために創発的コラボレーションは起こりにくいことがわかった.その点に留意すれば,本研究で提案したデザイン原則は有効であることが示された.
著者
安斎 勇樹 塩瀬 隆之 山田 小百合 水町 衣里
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.Suppl., pp.97-100, 2013-12-20 (Released:2016-08-10)

本研究の目的は,視覚障害者をリードユーザーとしたインクルーシブデザインワークショップにおいて,障害者に対する晴眼者の先入観を取り除き,共感的理解を持ちながらコミュニケーションを取ることができるようなアイスブレイク手法を提案することである.「視覚が奪われた状態で,リードユーザーが日常経験するような生活作業に取り組み,リードユーザーから支援を受ける」というアイスブレイク手法を考案し,この手法に基づく場合とそうでない場合の参加者の発話を比較したところ,考案した手法に一定の効果があることが示された.