著者
兵頭 正浩 入江 将考 濱田 和美 花桐 武志
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A-79_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【背景】肺癌患者の筋肉量減少は予後不良因子と報告されているので,体重減少のみでなくサルコペニアの評価は臨床的に有用である.しかし,身体組成と予後との関連は不明な点が多い.本研究の目的は,早期肺癌患者と比較することで,進行肺癌患者の身体組成の特徴を明らかにすることである. 【方法】 2017年4月から2017年12月までに当院において,肺癌に対し胸腔鏡下肺切除術を施行した症例と進行肺癌に対する薬物療法の初回導入時にリハビリ介入を行った症例のうち,身体機能・組成評価を実施出来た症例を対象とした.身体機能は,6分間歩行距離(6MWD)と等尺性膝伸展筋力(下肢筋力)を,身体組成は,生体電気インピーダンス法を用いて四肢骨格筋量(SMI),細胞位相角(PA),体水分均衡(ECW/TBW)を測定した(何も手術前,化学療法開始前).早期肺癌群(早期群)と進行肺癌群(進行群)において,臨床データ,身体機能・組成を比較した.統計分析は,Fisherの正確検定またはt検定を用い,有意水準は5%とした. 【結果】 研究期間内の呼吸リハ実施例の80例中,51例が解析対象となった(早期群:40例,進行群:11例).2群間の比較の結果,有意差があったのは,Performance Status(p<0.01),6MWD(p<0.01),下肢筋力(p=0.01),PA(p=0.01),ECW/TBW(p<0.01). 一方, 年齢,BMI,SMIには有意差を認めなかった. 【結論】 早期群と比較して進行群は,予後不良因子とされているPS,PAが有意に劣っていた.一方,SMIやBMIは有意差を認めなかった.これは進行群でECW/TBWが有意に高いことから分かるように,筋の過水和がその一因であったと考えられる.身体機能が有意に低かったことからも,進行群における筋質の低下が結果に影響を及ぼしていた可能性がある.肺癌患者におけるサルコペニア評価には,単に筋肉量だけに着目するだけでなく,ECW/TBWも考慮することが重要であった.また,身体機能を併せて測定することで身体組成が正しく評価できることが示唆された. 【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に沿い研究計画書を作成し,当院の研究審査委員会(登録番号:15000-161)の承認(承認番号:2015-0005)を得ている.対象者全員に十分な説明を行い,同意を得て評価及び呼吸リハビリテーションを実施した.なお,ヘルシンキ宣言に準じ倫理的配慮に基づきデータを取り扱った.
著者
稲吉 直哉 白倉 祥晴
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H2-166_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに】頸椎症性筋萎縮症(以下Keegan型頚椎症)は上位近位筋の筋力低下を主症候とし、感覚障がいがないか軽微なことが多い。Keegan型頚椎症は自然回復の報告も多いが、高齢になるほど、回復率も下がるとする報告や徒手筋力テスト(以下MMT)2以下では手術の方がよいという報告などがあるが、手術療法、保存療法のどちらが良いか一定の見解は示されていないことが現状である。また保存療法の報告はあるが、運動療法の報告は特に少ない。そこで今回、Keegan型頚椎症に対する運動療法により症状が改善されたので報告する。【症例紹介】84歳代男性。左利き。鍋の焦げを取るためスポンジで強く擦り、翌日より右肩痛と挙上困難感出現。2週間ほど様子を見たが、疼痛は緩和したが右肩挙上困難感が残存し、当院受診。手術の希望はなく、外来リハビリテーション開始した。X線、MRI所見では、C3/4、C4/5、C5/6、C6/7に椎間板の軽度膨隆を認めた。棘上筋の変性は認めたが連続性は保たれていた。神経内科診察により、他の運動ニューロン疾患は否定された。【介入方法】初期理学療法時、主訴は右肩挙上困難のみで疼痛・しびれ・感覚障がいの訴えはなかった。Shoulder36V.1.3:45点、MMT右肩屈曲1、肘屈曲4、ほかの筋群には著明な筋力低下なし。右肩関節可動域(以下ROM)屈曲Active10°、Passive160°、肘屈曲Active・Passiveともに制限なし。頚部のROMは左側屈・左回旋制限が認められた。右肩屈曲動作時には右肩甲帯の挙上が認められ、右僧帽筋上部線維、右肩甲挙筋に圧痛が認められた。また座位姿勢はHead Forward姿位であった。介入当初より右肩屈曲Passive ROM制限予防のため、右肩関節のROM-ex、僧帽筋上部線維、肩甲挙筋に対し、横断伸長法を実施した。右肩三角筋の萎縮を認めたため、三角筋に対し低周波療法(Inter Reha社)を実施した。低周波療法実施肢位は背臥位、redcord(Inter Reha社)を使用し、頸椎はNeutral position位になるよう、頸椎牽引を行い、右上肢は自重を免荷した。低周波が流れるタイミングで自動介助運動を行った。刺激強度は疼痛のなく三角筋の収縮が確認できる強度で5秒間通電し、5秒間休息を1セットとし、20分間実施した。また頚椎のHead Forward姿位改善のため、頚部深部屈筋群のエクササイズを行った。リハビリテーション介入5週目から徐々に右肩関節屈曲可動域Activeが徐々に改善が認められ、介入10週目で右肩関節屈曲可動域Active 90°まで回復。また右肩屈曲90°保持も可能となった。頚部のROMも側屈、回旋ともに左右差はほぼなくなった。この週より自動介助運動の肢位を背臥位から右肩上の側臥位へ変更し、三角筋の収縮が触知できるようになったので低周波療法から中周波療法へと変更した。介入13週目Shoulder36V.1.3 :116点、MMT右肩屈曲3、右肩ROM屈曲Active120°であった。【結論】乾は1)Keegan型頚椎症の予後予測では発症期間が6ヶ月未満、MMT3以上が予後良好であり、また、年齢も高齢になればなるほど予後不良となると報告している。齋藤2)は罹患期間が長く、筋萎縮が顕著であれば筋萎縮から手術により圧迫が解除されても筋が線維化し回復が望めない可能性があると報告した。そのため筋萎縮から線維化を防ぐため低周波・中周波療法を実施した。また、安藤3)は保存的治療・予防には頚椎の良い姿勢を保持することが重要と報告している。今回はHead Forward姿位改善のため、緊張筋である僧帽筋上部線維、肩甲挙筋に対し、筋緊張緩和を行い、頚部深部屈筋群の促通を実施し、良肢位保持へと誘導した。Keegan型頚椎症は筋萎縮から線維化防止と頚椎良肢位保持のため、電気療法と運動療法の併用は検討の余地があると考えられる。【参考文献】1)乾義弘 新原著レビュー:頚椎症性筋萎縮症に対する保存的および手術的治療の臨床成績とその予後予測因子 20122)齋藤貴徳 近位型頚椎症筋萎縮症 20163)安藤哲朗 頚椎症の診療 2012【倫理的配慮,説明と同意】本研究は、当院倫理委員会にて承認を得た。患者にはヘルシンキ宣言に基づいて文書と口頭にて意義、方法、不利益等について説明し同意を得て実施した。
著者
笠井 健治 水田 宗達 清宮 清美 板垣 卓美
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.E-134_1, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに・目的】パーキンソン病(Parkinson's Disease:以下PD)患者の死因の第1位は肺炎であり誤嚥性肺炎の予防は重要である。PD患者の嚥下障害は疾患の進行と必ずとも相関せず、嚥下スクリーニング検査による嚥下障害の検出も難しいとされる。近年、誤嚥のリスクを検出するための咳嗽機能評価が注目されている。本研究の目的はPD患者について嚥下障害に関連するスクリーニング検査結果と咳嗽機能について後方的に検討し、嚥下障害等の関係を明らかにすることである。【方法】対象は当センターにH27年8月からH30年5月までの間に入院したPD患者のうち摂食・嚥下障害看護認定看護師に嚥下機能評価の依頼があり、検査可能であった18名(72.7±4.0歳、男性10名)。評価項目は疾患重症度としてHoehn&Yahr分類とPD統一評価尺度第3部の総合得点(unified Parkinson’s disease rating scale‐Ⅲ:以下UPDRS-Ⅲ)、嚥下スクリーニング検査として反復唾液嚥下テスト、咳嗽機能評価として咳嗽時最大呼気流量(cough peak flow:以下CPF)と咳テスト、呼気機能評価として最長発声持続時間を評価した。誤嚥の発生有無は聖隷式嚥下質問紙のA項目に1項目以上該当する場合もしくは嚥下造影検査において嚥下障害が確認された場合に嚥下障害ありと判断した。嚥下障害あり群となし群に大別し各評価項目における群間の差の検定を行った。連続変数に対しては対応のないt検定もしくはMann-Whitney検定を用い、他の変数はχ2検定を用い、有意水準は5%とした。【結果】嚥下障害あり群は7名、なし群は11名で群間比較ではCPFのみ有意な差を認めた(あり群218.6±115.0m/s、なし群368.2±127.0m/s、p=0.023)。またCPFはUPDRS-Ⅲ(r=-0.67、p=0.04)、最長発声持続時間(r=0.57、p=0.02)と有意な相関を認めた。【考察】嚥下障害を有する群では有意にCPFが低下し、CPFは疾患重症度および呼気機能と有意に相関していた。このことから、PDでは重度化とともに咳嗽機能が低下しやすく、咳嗽機能には呼気機能が影響すると考えられた。したがってPD患者の嚥下障害に対する理学療法においては咳嗽機能を改善することが重要であり、呼気機能を改善するアプローチの重要性が示唆された。【倫理的配慮,説明と同意】研究参加者には入院時に臨床において得られた情報が後方視的に学術目的に用いられることについて口頭および書面にて説明し、同意を得られた場合にのみ同意書への署名を依頼した。また、本研究は埼玉県総合リハビリテーションセンター倫理員会の承認(H30-002)を得ている。
著者
鵜川 浩一 古田 亮介 愛甲 雄太 銭田 良博
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H2-227_1, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】仙腸関節痛について村上らは、主病変は靭帯領域に存在すると報告している。また仙腸関節痛に対する運動療法においても後仙腸靭帯、骨間仙腸靭帯に対しアプローチすることで疼痛緩和を認めるという報告も散見できる。しかし、その靭帯の状態の違いついての報告は、我々が渉猟しえた限りで無かった。よって仙腸関節痛患者の靭帯が占める面積比から特徴を調査することを目的とした。【方法】対象は、仙腸関節ブロックの効果が7割以上の者で仙腸関節症と診断され、仙腸関節痛鑑別テストが陽性の者を仙腸関節痛群(以下、SIJ群)とした。その他の除外基準は、手術既往のある者とした。また、腰痛が無く仙腸関節痛鑑別テストが陰性の者を正常群(以下、N群)とした。SIJ群10名20関節(男性2名、女性8名、平均年齢41.2±8.8歳)、N群11名22関節(男性6名、女性5名、平均年齢27.2±4.2歳)が比較対象となった。測定肢位は、被験者を側臥位とし股関節膝関節は90°屈曲位とした。後仙腸靭帯と骨間仙腸靭帯(以下、靭帯領域)を超音波画像診断装置にて描出した。描出方法は、第1仙椎棘突起のレベルで、腰部多裂筋の短軸像を正中仙骨稜へ垂線となる位置で描出した。この位置の腰部多裂筋の深層に、靭帯領域が存在する。描出した画像に、腸骨稜と第1仙椎棘突起とを結ぶ線を引いた。その線と骨縁からなる領域を総面積とした。総面積と靭帯領域の面積をimage Jにて計測し、総面積に対する靭帯領域の割合の平均値の差をSIJ群とN群とで比較した。統計処理はMann-Whitney U検定を用い、有意水準を5%未満とした。【結果】総面積に対する靭帯領域の割合は、SIJ群38.9±11.6%、N群29.4±7.7%であり、SIJ群の方が正常群より優位に靭帯領域が広かった(P<0.05)。【結論(考察も含む)】SIJ群の靭帯領域はN群と比べて優位に面積が広かった。よってSIJ群は後仙腸靭帯、骨間仙腸靭帯が肥厚している可能性と、靭帯領域周囲の軟部組織が変性している可能性が示唆される。仙腸関節ブロックが有効な点も加味して考えると、仙腸関節痛患者に対する運動療法として、靭帯領域に着目することは有用である可能性が示唆された。今後の課題として、組織学的に検討することが必要である。【倫理的配慮,説明と同意】対象者に本研究の目的と意義について十分に説明し同意を得た。またヘルシンキ宣言に沿って本研究を進めた。
著者
平岡 浩一
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.I-15-1, 2019 (Released:2019-08-20)

歩行などのリズミカル運動では中枢パターン発生器(central pattern generator; CPG)が駆動される。左右異なる速度で動くトレッドミル上で乳児を歩行させると左右異なるリズムのステップで対応するという知見などから,CPGは左右独立して存在すると考えられている。また,胸髄レベルで離断した除脳動物において,上・下肢のリズミカルな筋収縮をそれぞれ個別に誘発できるという知見から,上肢と下肢のCPGもそれぞれ独立しているとされる。各肢の制御を目的に独立して存在するCPGであるが,それらは固有脊髄路を介して互いに協調している。除脳動物において薬物を投与すると上下肢の協調したリズミカル運動が生じるが,その後胸髄レベルでも脊髄を離断するとこの協調は消失することから,固有脊髄路が上下肢のCPGを協調させていることがうかがえる。ヒトにおいても上肢の歩行様の腕振りにより,歩行時のパターンに合致したヒラメ筋H反射の相依存的な変調が同側と対側双方に出現する。これは,ヒト歩行時における上下肢CPG間の協調を裏付ける知見である。固有脊髄路は対側へ分岐した経路を介して左右肢の協調にも関与する。たとえばヒトにおいて,片側足関節のリズミカル運動をすると,安静している側のヒラメ筋H反射がtonicに抑制される。つまり,片側CPGの駆動は安静にある対側伸筋に対して持続性の強い交差性抑制をもたらす。これに対して両側足関節の交互運動をしている時には反対側に対しては位相依存的な抑制が生じるが,両側足関節の同位相性運動をするとその抑制は生じない。これは,両側を交互にリズミカルに活動させる歩行などに特化して位相依存的な抑制が生じることを示唆する。さらに重要なのは,リズミカルでない運動中は固有脊髄路を介した上下肢の協調を示唆する皮膚反射が消失することから,固有脊髄路を介した四肢運動協調は課題依存的に柔軟に回路を開閉できるという知見である。
著者
村田 尚寛
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.G-88_1, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに・目的】 地域包括ケア病棟における機能としてポストアキュート、サブアキュートがある。現在、ポストアキュート、サブアキュートそれぞれの身体機能や在宅復帰における傾向を述べた文献は少ない。そこで当院の地域包括ケア病棟におけるポストアキュート、サブアキュートそれぞれの身体機能、在宅復帰についての傾向を明らかにする。【方法】 対象は平成29年10月から平成30年3月に当院入院した疾患別リハビリテーションの処方があった死亡退院を除くポストアキュート群121名、サブアキュート群64名とした。処方率は85.9%であった。今回この2群それぞれの入院時と退院時のFunction Independence Measure(FIM)の比較、そしてポストアキュート群、サブアキュート群2群間の年齢、入院時退院時それぞれのFIMとFIM利得、FIM効率、在院日数を比較した。統計はT検定、X2検定を用いて有意水準を5%未満とした。【結果】 まずポストアキュート、サブアキュートのそれぞれの入院時退院時のFIMの比較ではどちらも入院時より退院時の方がFIMは高い値を示しており有意差が認められた。 次にポストアキュートとサブアキュート2群間の比較では入院時FIMがポストアキュート群67.7±30.8、サブアキュート群58.4±30.4とポストアキュート群が高い値であり有意差が認められた。一方で在院日数、在宅復帰率はポストアキュート群38.8±30.7日、63.6%、サブアキュート群29.1±15.9日、78.1%とサブアキュート群の方が在院日数は短く、在宅復帰率は高く有意差が認められた。その他の項目では有意差は認められなかった。 また在宅復帰患者に限定したFIMにおいても退院時FIMがポストアキュート87.7±32.8、サブアキュート73.6±35.7と有意差が見られた。【結論】 地域包括ケア病棟の入院患者に関しては一様にリハビリテーションの介入により身体機能の向上が図れることが示唆された。ポストアキュートの方が入院時退院時ともにFIMは高い一方で在院日数や在宅復帰率はサブアキュートより低値であり在宅復帰が困難となる事例が多い事がわかった。これは他医療機関で身体機能の向上が図れているものの全身状態とは別の要因が大きく影響していることが考えられ、家屋環境や社会的背景にて在宅復帰困難となる事例が多い。一方でサブアキュートでは元々介護保険サービスの利用といった社会的資源を活用されている事例が多くFIMが低値であっても一定の身体機能に達することにより在宅への意志が強く早期在宅復帰となる事例が多いと思われる。 ポストアキュートの患者は早期に自宅環境、社会的要因の確認を行い在宅復帰に向けた多職種、地域との連携がサブアキュートより必要である可能性が示唆された。【倫理的配慮,説明と同意】 本研究は当院倫理委員会の承認を得て実施した。
著者
天米 穂 松本 大夢 荻原 勇太 井元 淳
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C-49_1, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】内部疾患患者におけるバルサルバ現象は、リスク管理の面から避けるべきであると、さまざまな研究で指摘されている。しかしながら、バルサルバ効果と瞬間最大筋力との関連性を示した研究は乏しい。よって本研究では、バルサルバ効果の有無がバイタルサインに及ぼす変化と瞬間最大筋力にどのような影響を与えるかを検証することを目的とした。【方法】被験者は年齢18~22歳の健常人31名(男性 16名、女性15名)とした。バルサルバ法時と呼気時の等尺性膝関節伸展筋力(以下、筋力)をそれぞれ2回ずつ測定し、バイタルサインとして血圧、脈拍および経皮的酸素飽和度(以下、SpO2)の測定を安静時、筋力測定直後、筋力測定後5分経過時の3回実施した。【結果】筋力、収縮期血圧では呼気時に比べバルサルバ法で高い値を示した。バイタルサインの変化において、筋力測定直後にバルサルバ法では収縮期血圧上昇、SpO2低下を認めた。呼気時では収縮期血圧上昇と脈拍増加を認めた。【結論】瞬間最大筋力増強の要因として、胸腔腹腔内圧上昇によって腹筋群の緊張や体幹の安定性が向上したことが考えられる。収縮期血圧は両方法とも筋力測定直後に高い値を示し、バルサルバ法では呼気時と比較して有意に上昇していた。これは圧受容器反射による影響が考えられる。脈拍は呼気時において筋力測定直後で高い値を示した。これは循環応答に加えてベインブリッジ反射による影響が考えられる。いずれの項目でも安静時‐筋力測定5分後において有意差は認められず、バイタルサインの変化は緩徐であったため、健常人ではリスクになりうる強度ではなく、バルサルバ法による瞬間最大筋力の増強は可能であることが示唆された。今後の課題として、中高年者や高齢者などに対しても検証を行い臨床応用に繋げる必要がある。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は、ヘルシンキ宣言を遵守し個人情報の取り扱いに配慮し、被験者の同意を得て実施した。
著者
筒井 優 中俣 恵美 有末 伊織 酒井 菜美 糸乘 卓哉 中村 達志 峯林 由梨佳
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.G-62_1, 2019 (Released:2019-08-20)

【目的】 超高齢社会を迎える日本では、在宅医療・介護が推進され地域包括ケアシステムの構築や健康日本21(第二次)に代表される疾病・介護予防など予防施策に力が注がれている。先行研究において、機能維持と身体活動量には密接な関係があると指摘されており、身体活動量を把握し、維持・向上を目指すことで、生活習慣病や自立度の低下など将来的な疾病の予防も可能であると考える。現在、身体活動量を評価する指標としてLife space assessment(以下LSA)や歩数計が広く用いられている。本研究では、LSAと腕時計型歩数計を用い身体活動量を評価し、両者のメリット・デメリットを検証するとともに両者を補填できる新たな評価指標の検討を目的とした。 【方法】在宅脳卒中患者12名(男性9名・女性3名、平均年齢68.1±9.9歳、発症後の経過年数15.6±7.5年)を対象に、LSAによる身体活動量の調査に加え、腕時計型測定装置ChargeHR(fitbit社製)を使用し、1週間装着(入浴時除外)を依頼、1日の歩数を調査をした。LSAと歩数の関連性は統計解析ソフトSPSSを用い、Spearmanの順位相関係数による解析を行った。さらに、アンケートを作成し、移動手段・活動内容・歩行時間を個別調査し身体活動量との関係を検討した。 【結果】LSA平均値が59点±29、歩数平均値が6367±3994歩であった。LSAと歩数に関する解析結果では相関係数r=0.618、有意確率p=0.043となり中等度の正の相関が認められた。しかし、LSAが51点と同得点の対象者間でも歩数に約5000歩の差異があるなど、LSAの得点と歩数に大きな差が生じた対象者もいた。LSAと歩数に差がみられた対象者3名をアンケートにて個別分析すると、歩行時間が長くその主な内容は近隣の散歩であった。  【考察】LSAと歩数には相関がみられるが対象者間で差異が生じていることが明らかとなった。その要因として①LSAは歩行補助具を用いると点数が低値となる②LSAが同程度であっても介助者による車での送迎より公共交通機関を利用する事で活動量が高値となるなど移動手段により歩数に差異がでる③日課として近隣を散歩しているなど移動先での活動内容や活動習慣が影響した事が考えられた。これらの事よりLSAは、生活の広がりを把握する事が可能だが、歩数には歩行時間・移動手段・活動内容が影響する為、実際の身体活動量とするには課題がある事が明らかとなった。一方腕時計型歩数計は、詳細な身体活動量の調査をする事が可能であり具体的な数値としてフィードバックが可能である為、意欲向上に繋がるメリットがあったが、アプリとの連動など管理が複雑なうえ機器が高価であり、データ収集には人的・時間的・金銭的に負担が大きく、個別調査には有用だが大規模調査を行うのは困難である。今後大規模調査を行うには、LSAで把握できない身体活動量に影響を及ぼす因子である歩行時間・移動手段・活動内容を聴取し点数化できる評価指標を検討する必要がある。 【倫理的配慮,説明と同意】本人に十分な説明のうえ、研究協力の同意を文書で得た。また、研究に参加しなくても何ら不利益を受けないこと、一旦承諾してもいつでも中断できることを保証した。関西福祉科学大学倫理審査委員会の承認を得た。承認番号【1601】
著者
新井 健司 池田 雅名 大森 豊
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.G-86_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに・目的】平成26年度における厚生労働省の調査によると民間企業における身体障害者の雇用は43万人を超え、毎年増加傾向にある。介護保険分野で高齢者を主な対象にしている理学療法士は機能回復や日常生活活動動作の獲得、活動参加に向かったアプローチといった医学的なリハビリテーションに偏りがちであるが、リハビリテーションの概念は職業復帰・就労といった部分も含めた広範囲なものである。特に比較的年齢が若い第2号被保険者などの場合にはそのような観点が必要であると考える。また、介護保険サービスの充実に伴い、そのような対象者も増えてきている現状である一方、必ずしも成功するとは限らないのも現状である。障害者の就労支援には、対象者の身体的側面、精神的側面、知的側面、社会的側面、職業的側面の視点からのアセスメントを要する。そして、職業訓練や適正に応じた職場の開拓、職場定着のための相談などを担う就労移行支援事業の活用が推進されている。しかしながら、就労移行率が低い事業所が多く、その背景には対象者の選定に無理があるという報告が散見される。(朝日、2016)また、これらのアセスメントはリハビリテーション職種が専門職として評価すべき点が含まれている。 したがって、理学療法士が対象者のアセスメントを行い、就労移行支援事業への適切な選定されることは障害者の雇用促進に資すると考えた。今回、訪問看護ステーションにおける理学療法士として、症例を通して、職業復帰・就労を望む障害者が就労移行支援事業の活用に至る要因を分析した。【方法】 平成24年から平成29年に当事業所から訪問理学療法を受けた、職業復帰・就労を希望する身体障害がある者5名を対象とした。まず、対象者の基本属性、家族構成、経済状況、就労移行支援事業への活用の有無を調査した。就労支援に必要な身体的・精神的側面のアセスメントとしてFunctional Independence Measure(FIM)、知的側面として自己決定と判断力に関わる障害の有無、Mini Mental State Examination、社会的側面としてLawtonの尺度、職業的側面として職歴を後方視的に調査し、就労移行支援事業の活用に至る要因を分析した。【結果】 対象者は日常生活・屋外活動が自立されており、職業的側面を除くアセスメント項目に大きな差は見受けられなかった。対象者のうち、就労移行支援事業の活用に至ったものは、独居や未婚などの家族・経済状況を有している3名であった。その他2名は、主婦の専従・生活保護受給といった経済状況の変化に伴い、就労自体を断念していた。【結論】障害者の就労に関して、家族構成や経済状況等の要因が大きく関わる傾向が捉えられた。訪問理学療法士は、障害者の就労支援に関わるアセスメントを理解し、就労移行支援事業への適性を検討していくべきである。【倫理的配慮,説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき、本研究の目的を説明し、書面にて同意を得た。
著者
佐藤 成 中村 雅俊 清野 涼介 高橋 信重 吉田 委市 武内 孝祐
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.I-52_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】スタティックストレッチング(SS)は関節可動域(ROM)などの柔軟性改善効果が期待でき,臨床現場やスポーツ現場で多用されている.しかし近年では,特に45~90秒以上のSSにより筋力やパワーなどの運動パフォーマンスが低下することから,運動前のウォームアップにおいてSSを行うことは推奨されていない.しかし,実際のスポーツ現場では20秒以下のSSが用いられる場合が多いと報告されており,20秒以下のSSは運動パフォーマンス低下を生じさせない可能性がある.しかし20秒以下のSSの即時効果を検討した報告は非常に少なく,さらにその持続効果を検討した報告はない.そこで本研究では,柔軟性改善効果の指標としてROMと弾性率,運動パフォーマンスの指標として求心性収縮筋力(CON)と遠心性収縮筋力(ECC)を用いて20秒間のSSの即時効果と持続効果を明らかにすることを目的とした.【方法】対象は健常成人男性20名の利き足(ボールを蹴る)側の足関節底屈筋群とした.足関節底屈筋群に対する20秒間のSS介入前後に足関節背屈ROM(DF ROM),弾性率,CON,ECCの順に各々測定した.先行研究に従ってSS介入後の測定は,①介入直後に測定する条件,②介入5分後に測定する条件,③介入10分後に測定する条件の計3条件を設けた.対象者は,無作為に振り分けられた条件順にて3条件全ての実験を行った.DF ROM,CON,ECCの測定は多用途筋機能評価訓練装置(BIODEX system4.0)を用いて行った.なお,CONとECCの測定は足関節底屈20°から背屈10°の範囲で,角速度30°/secに設定して行った.弾性率の測定は超音波診断装置(Aplio500:東芝メディカルシステムズ株式会社)のせん断波エラストグラフィー機能を用い,腓腹筋内側頭(MG)に対して行った.統計学的検定は,SS介入前後および条件(直後条件,5分条件,10分条件)間の比較は繰り返しのある二元配置分散分析(時期×条件)を用いて検討した.さらに,事後検定として,SS介入前後における条件間の比較はBonfferoni法,各条件におけるSS介入前後の比較は対応のあるt検定を用いて検討した.【結果】DF ROMに有意な交互作用(p=0.004, F=6.517)と,時期に主効果を認めたが,MGの弾性率,CON,ECCには有意な交互作用及び主効果を認めなかった.事後検定の結果,DF ROMは全条件において介入前と比較して介入後に有意に増加した.またDF ROMは介入直後と比較して介入10分後に有意に低値を示した.【考察】本研究の結果より,20秒間のSSはDF ROMを即時的に増加させるために有効であり,その効果は10分後まで持続するが,5~10分の間で減弱することが明らかとなった.また,20秒間のSSは弾性率,CON及びECCに影響を及ぼさないことが明らかとなった.【結論】20秒間の短時間のSS介入は等速性筋力を低下させずにROMを増加させるが,弾性率を変化させることが出来ないことが明らかとなった.【倫理的配慮,説明と同意】本研究は本学の倫理審査委員会も承認を受けて実施された.また,本研究はヘルシンキ宣言に則っており,実験開始前に対象者に本研究内容を口頭と書面にて十分に説明し,同意を得た上で行われた.
著者
溝口 靖亮 赤坂 清和 乙戸 崇寛 服部 寛 長谷部 悠葵
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H2-197_1, 2019 (Released:2019-08-20)

【目的】 バレーボール競技における腰痛は障害の多い部位の一つである.またスポーツ実施者における腰痛発生率は18歳以降で上昇するとされており,予防対策は18歳未満より始める必要がある.本研究では高校バレーボール選手に対するフィジカルチェック(FC)の結果を基に腰痛予防のための選択的トレーニングを行い,その効果について検討することを目的とした.【方法】 対象は2017年7~10月に埼玉県大会に出場する県立高校8校でバレーボール部に所属する18歳未満の男女123名であり,全例にFCを実施した.FCとして船橋整形外科式Kraus-Weber test,Ito test,heel-buttock distance,finger-floor distance(FFD),Side-FFD,フルスクワット,トーマステスト,胸腰椎回旋ROM,肩ROMを実施した.各FCに基準値を設け,かつ先行研究を基に各FCに対応する腰痛予防トレーニングを設定した.除外基準は現在腰痛を認める者,FCの基準を満たしている者とした.高校毎に封筒法を用いて,トレーニングを行う群(I群;36名)と通常の部活動を行う群(C群;40名)の2群に群分けした.I群はFCのフィードバックとFCに対応するトレーニングとして最大2種類を本人が選択し,部活動の一環(週4~5回)として実施した.C群は通常の部活動を実施した.介入期間は4週間であり,期間内のI群におけるトレーニング遵守率と両群の腰痛発生数,腰痛発生時期,腰痛誘発方向および腰痛強度(NRS),腰痛発生後に部活動を休んだかについて調査した.腰痛関連項目について記述統計ならびに群間比較を行い,腰痛発生数における群間の相対危険度(RR)をSPSS statistics25を用いて検討した(有意水準5%).【結果】 I群のトレーニング遵守率は100%であった.腰痛発生数はI群3名(8%),C群11名(28%)であり,I群で腰痛発生数が有意に低く(p=0.03),全例練習中に発生し,部活動を休むことはなかった.またRRは1.26(95%CI:1.02~1.57)であった.また,腰痛強度は2群間で有意差はなかった(p=0.09).腰痛誘発方向・部位では,I群で屈曲1例,伸展2例で全例真ん中と回答し,C群では屈曲3例,伸展7例,左回旋1例で真ん中5例,右3例,左2例,左右1例と回答した.【結論】 トレーニング遵守率が高かった理由は,FCにより選手が自分の身体機能を認識し興味を深めたこと、選手が希望するトレーニングを選択できるようにしたこと、トレーニング内容が簡単であったこと等が要因と考える.一般的な腰痛予防トレーニングにおいては教育と並行して運動を実施することが効果的であるとされている.本研究においてもFCよるフィードバックとFCの基準に満たない高校バレーボール選手に対して選択的トレーニングを行うことで腰痛発生の減少に寄与できる可能性が示唆された.一方で,腰痛発生者においては疼痛を抱えながら競技を継続しており,かつ腰痛誘発方向や部位が異なるため,重症化する前に的確に問診した上で治療を行う必要がある.【倫理的配慮,説明と同意】埼玉医科大学保健医療学部倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号: M-73)
著者
若林 由羽 荒井 朗 宇津木 笑香 篠崎 陽一 白井 貴之 竹内 良太 平林 克仁 真壁 理沙 新谷 益巳
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C-49_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】日本人のストレスについて国民生活基礎調査(厚生労働省2016年)では、国民(12歳以上)の47.7%の人が日常生活でストレスを感じていると報告されている。ストレスは蓄積されることで生体防御機構である内分泌系、免疫系、自律神経系のバランスが崩れ、ストレス性疾患を発症する可能性がある。そこで、このストレスを軽減する試みの1つとして運動によるストレス軽減効果の検証が進められている。本研究では、ストレス軽減効果を目的とした運動処方において、運動習慣形成因子に着目し、この因子が運動強度の決定に影響を及ぼすか検証を行った。 【方法】A大学健常男子学生6名を被験者とし、厚生労働省の基準に基づき運動習慣の有無によって2群(運動習慣群3名・非運動習慣群3名)に設定した。運動強度は、6分間運動負荷試験を実施し、Astrand-Ryhmingノモグラム変法を用いて推定VO2max算出した。被験者には中3日空けた2日間を設定し、推定VO2max40%(1日目)と推定VO2max70%(2日目)の運動強度で自転車エルゴメータを使用した20分間の定負荷運動を実施した。この定負荷運動によってストレス軽減効果が得られているかを判定する指標には、POMS2(Profile of Mood States Second Edition)日本語版(以下:POMS2)を用いた。POMS2は「AH-怒り・敵意」「CB-混乱・当惑」「DD-抑うつ・落ち込み」「FI-疲労・無気力」「TA-緊張・不安」「VA-活気・活力」「F-友好」の7尺度とネガティブな気分状態を総合的に表す「TMD-総合的気分状態」から被験者の気分状態を評価することができる。また、統計はSPSS(.Ver22)を用いて「運動習慣群」と「非運動習慣群」の2群間の比較においてt検定を使用した。各群の運動強度別の比較及び運動強度別の運動前後の比較においてrepeated measuer ANOVAを使用した。 【結果】「運動習慣群」と「非運動習慣群」の2群間の比較においてPOMS2の結果に有意差は認められなかった。「運動習慣群」では推定VO2max40%の運動前後でTAに有意差を認め、運動後に減少した。「非運動習慣群」では、推定VO2max40%と推定VO2max70%の運動後を比較したところ、VA、TMDに有意差を認め、VAは推定VO2max40%の運動で高値を示し、TMDは推定VO2max70%の運動で高値を示した。また、推定VO2max70%の運動前後のVAで有意差を認め、運動後で減少した。その他の統計結果からは運動習慣形成因子が運動強度別のストレス軽減効果に影響を及ぼすことを示唆する結果は得られなかった。 【結論】「運動習慣群」と「非運動習慣群」は双方とも推定VO2max40%の運動の方が、ストレス軽減効果が大きく、運動習慣形成因子が運動強度別のストレス軽減効果に影響を及ぼす可能性は低いことが示唆された。このことから、新たに運動習慣の有無ではなく個人の身体的能力因子が運動強度別のストレス軽減効果に影響を及ぼす可能性が考えられた。 【倫理的配慮,説明と同意】本研究は群馬医療福祉大学の倫理委員会の承認を得て行なわれた(承認番号 16B-10)。被験者には、研究内容を口頭と書面にて十分に説明をし、同意書に同意を得た上で実施した。
著者
芦田 雪 檜森 弘一 舘林 大介 山田 遼太郎 小笠原 理紀 山田 崇史
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.I-95_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】伸張性収縮(Ecc)は他の収縮様式に比べ,効果的に筋肥大を誘引すると考えられている.ただし,その根拠となる報告の多くは,ヒトの随意運動を対象としており,収縮様式の違いによる運動単位の動員パターンの差異が,筋肥大効果に影響を及ぼす可能性を否定できない.一方,実験動物の骨格筋では,最大上刺激の神経-筋電気刺激(ES)を負荷することで,すべての筋線維が動員される.さらにESでは,刺激頻度により負荷量を調節することが可能である.そこで本研究では,刺激頻度の異なるESを用いて,収縮様式の違いが筋肥大効果に及ぼす影響を詳細に検討することを目的とした.【方法】Wistar系雄性ラットを等尺性収縮(Iso)群とEcc群に分け,さらにそれらを刺激頻度10 Hz(Iso-10,Ecc-10),30 Hz(Iso-30,Ecc-30),100 Hz(Iso-100,Ecc-100)の計6群に分けた.実験1では,ESトレーニングが筋量に及ぼす影響を検討するために,各群(n=5)のラット左後肢の下腿三頭筋に表面電極を貼付し,ES(2 s on/4 s off,5回×4セット)を2日に1回,3週間負荷した.なお,Iso群は足関節底背屈0°で,Ecc群は足関節を20°/sで背屈させながらESを負荷した.右後肢は,非ES側とした.実験2では,単回のESが筋タンパク質合成経路である mTORC1系に及ぼす影響を検討するために,各群(n=6)に実験1と同じ刺激条件のESを1回のみ負荷した.その6時間後に腓腹筋を採取し,mTORC1系の構成体であるp70S6KおよびrpS6のリン酸化レベルを測定した.【結果】すべての刺激頻度において,ESによる発揮トルク及び力積はIso群に比べEcc群で高値を示した.体重で補正した腓腹筋の筋重量(MW/BW)は,Ecc-30,Iso-100,Ecc-100群において,非ES側と比較しES側で増大するとともに,Ecc-30およびIso-100群に比べEcc-100群で高値を示した.p70S6Kのリン酸化レベルは,30 Hzおよび100 Hzの刺激頻度において,Iso群と比較しEcc群で高値を示した.また,全ての個体における発揮トルク及び力積と,MW/BWの変化率,p70S6KおよびrpS6のリン酸化レベルとの間には高い相関関係が認められた.【考察】本研究の結果,EccはIsoに比べ,筋に対して強い物理的ストレスが負荷されるため,タンパク合成経路であるmTORC1系がより活性化し,高い筋肥大効果が得られることが示された.また,この考えは,刺激頻度を変化させ,負荷強度の異なる群を複数設けたことにより,より明白に示された.【結論】筋肥大効果は,収縮様式の違いではなく,筋への物理的な負荷強度および負荷量により規定される.【倫理的配慮,説明と同意】本研究におけるすべての実験は,札幌医科大学動物実験委員会の承認を受け(承認番号:15-083)施設が定める規則に則り遂行した.
著者
峯田 真悠子 新井 康弘 野本 真広 横山 敦子 稲葉 晶子 木村 泰 橋元 崇
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H2-212_1, 2019 (Released:2019-08-20)

【目的】椎体骨折は高齢者の代表的な骨折であるが、明確な安静臥床期間が定まっておらず、安静にて椎体変化や偽関節の予防が困難と報告されている。そのため、早期離床による活動量の確保が重要であるが、体動痛のために身体機能の詳細な評価が困難な場合が多い。椎体骨折の予後不良因子として、椎体の後壁損傷や骨密度低下といった骨要因による報告は多いが、骨要因以外の報告は少ない。近年、椎体骨折を始めとする骨折患者のサルコペニアの有病率が高く、骨折の危険因子であると報告されている。サルコペニアの評価はCTの大腰筋面積から診断する研究が散見されるが、対象は消化器や循環器疾患であり、椎体骨折患者の大腰筋面積とリハビリテーションの関連は明らかになっていない。大腰筋は、歩行能力と密接に関係することが明らかとなっており、大腰筋面積は椎体骨折患者の身体機能を予測する一助になると考える。そこで本研究では、椎体骨折患者の大腰筋面積を基にしたサルコペニアとリハビリテーションの関連性を検討することを目的とした。【方法】当院に入院した椎体骨折患者233名のうち、死亡と入院前歩行不能例、骨折合併例、転移性骨腫瘍による骨折例、陳旧性骨折例、手術施行例、データ欠損例を除いた130名(平均年齢79.7±9.6歳、男性42名、女性88名)を対象とした。サルコペニアの指標はCTの第3腰椎レベル横断像で大腰筋面積を算出し、身長の2乗で除した値をPsoas muscle index(以下PMI)として用いた。PMIを各性別における下位1/4をサルコペニア群と定義し、2群に分類した。調査項目は基本情報(年齢、Body Mass Indexなど)、医学的情報(既往、椎体骨折数、椎体圧潰率、血液データ、geriatric nutritional risk index(以下GNRI)など)、リハビリ経過(入院から離床開始までの日数、各歩行補助器具による歩行練習開始まで日数、入退院時歩行様式、Functuonal independence measure(以下FIM)など)とし、2群間で比較検討した。また、PMIと各調査項目の相関関係を検討し、そこで有意な相関関係を認めた項目を独立変数、従属変数を退院時歩行FIMとする重回帰分析を実施した。統計学的有意水準は5%未満とした。【結果】非サルコペニア群(年齢:81.7±9.8歳、男/女:11/21名、PMI:6.20±1.54cm2/m2)は、サルコペニア群(年齢:79.1±9.5歳、男/女:31/66名、PMI:3.49±0.62cm2/m2)と比較してBMI、GNRI、退院時独歩の割合、退院時歩行FIMは有意に高値を示し、椎体骨折数と椎体圧潰率は有意に低値を示した(それぞれp<0.05)。またPMIと年齢、GNRI、椎体圧潰率、退院時独歩の割合、退院時歩行FIMは有意な相関関係を示した(p<0.05)。さらに重回帰分析の結果、抽出された因子は年齢、入院時独歩の割合、大腰筋面積を基としたサルコペニアの有無であった(p<0.05、R2=0.31)。【結論】椎体骨折患者の大腰筋面積は退院時の歩行能力に関連することが示唆された。【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に基づき、調査から得られたデータは個人が特定されないよう統計処理を行った。
著者
堤 真大 二村 昭元 秋田 恵一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.I-146_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】近年、股関節外側部痛の潜在的原因として中殿筋腱断裂が着目されているが、その腱成分の形態学的特徴に関する報告はあまりみられない。一般に、筋骨格系の障害は、付着幅が周囲よりも狭い、といったような一様でない構造、すなわち不均一な構造に起因することが示唆されている。中殿筋腱の断裂においても、腱内の不均一な構造が関与しているのではないかと考えられる。本研究の目的は、中殿筋停止腱の3次元的構造を明らかにすることである。【方法】本学解剖学実習体15体25側を使用し、肉眼解剖学的(21側)・組織学的(4側)手法を用いて解析した。全標本でマイクロCT (SMX-100CT、島津製作所)を用い、3次元立体構築像で大転子の骨形態を観察した。肉眼解剖学的解析を行った21側中10側では、中殿筋腱を大転子から切離した後、マイクロCTで再び撮像・3次元再構成し、厚みの分布をImageJを用いて解析した。組織学的解析ではMasson trichrome染色を行った。【結果】中殿筋腱は、筋束が起始する腸骨の面により後部・前外側部の2部より構成されており、大転子へ停止していた。後部は厚く、長い腱により構成され、扇形のように一か所へ集中する形態で、大転子の後上面の狭い領域に集束して停止していた。前外側部は薄く、短い腱により構成され、後下方へ走行し、大転子の外側面に停止していた。中殿筋腱の厚みの分布を解析すると、厚みのある領域が前外側部に比して後部で広がっていた。それぞれの領域の厚みの平均値は後部が1.7±0.4mm、前外側部が1.4±0.4mmであった。厚みの最大値は、後部が8.0±1.8mm、前外側部が5.3±1.2mmであった。また、後部と前外側部の間の領域に、周囲に比して薄い領域が観察された。組織学的解析では、後部・前外側部が共に線維軟骨を介して大転子へ停止している様子が観察された。【考察】中殿筋腱は、後部・前外側部の2部より構成され、それらは腸骨と大転子の面によって区別された。後部は前外側部に比して厚く、その間の領域は周囲に比して薄かった。以上より、中殿筋腱内には不均一な構造が存在すると考えれられた。中殿筋腱の断裂好発部位に関しては、様々な報告があるものの、後方に比して前方に断裂が多いという点では一致している。これらは、本研究における前外側部に相当すると考えられる。後下方へ一様に走行する前外側部は、一カ所へ集束する後部に比して様々な方向からの応力には弱い可能性がある。また、厚みという点からも、前外側部の方が後部より脆弱である可能性がある。さらに、後部と前外側部の間の領域が薄いため、断裂が前外側部の範囲を超えて後部に至ることは稀であると思われるのも断裂が前外側に多い理由の一つと想定される。以上の形態学的特徴から、前外側部が中殿筋腱断裂と密接に関与する可能性が示唆される。【結論】中殿筋腱内には不均一な構造が存在し、それらは中殿筋腱断裂に関与する可能性が示唆された。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は、本学の倫理審査委員会の承認を得た(M2018-044)。また、「ヘルシンキ宣言」および「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を遵守し、日本解剖学会が定めた「解剖体を用いた研究についての考え方と実施に関するガイドライン」に従い、実施した。
著者
廣瀬 綾 山下 真人 欅 篤
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H2-149_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【症例紹介】 今回、妊娠後期に両大腿骨萎縮症を疑われる骨密度低下を呈し、転倒により両側大腿骨頸部骨折を受傷した症例に対し理学療法を行った。症例は30歳代女性で2か月ほど前より両股関節痛あり、X日転倒され両側大腿骨頸部骨折を受傷し、妊娠30週目だったが胎児に問題はなかった。X+4日胎児心拍数陣痛図(以下CTG)にて定期的な持続的張りを認めリトドリン内服開始。X+5日張りが治まらず、持続点滴開始。X+6日腰椎麻酔にて観血的骨接合術施行。X+7日理学療法開始。X+35日張りは落ち着いており頸管長短縮も認めなかったため、持続点滴終了し内服へ変更。X+45日選択的帝王切開術施行。X+48日3分の1荷重開始。X+54日全荷重開始。X+60日回復期病院へ転院となった。【評価とリーズニング】 理学療法開始時の安静度は整形外科としては両下肢免荷、産婦人科としては制限無いが切迫症状に注意する必要があった。初回介入時端座位まで行ったが、下肢下垂にて大腿前面の伸張痛が強く、それに伴い息こらえが出現し腹部の張りにつながる様子が見られた。関節可動域は股関節屈曲40/60°、外転15/20°、膝関節屈曲30/60°、伸展0/0°。伸張痛の原因は両大腿部の腫脹に加え、安静時より両大腿四頭筋・大腿筋膜張筋の過緊張を認めていたことが影響していると推測した。 強い疼痛が持続すると切迫症状増悪につながる可能性もあるため、リスク管理として毎日助産師にて測定されるCTGの結果を確認後に理学療法介入し、介入中も張りの自覚症状のみでなく、触診にて張りの有無を確認しながら運動療法を実施した。 また、ベッド臥床期間が長くなっていることや今後への不安から精神的に不安定になっており、全身状態は安定していたため医師・助産師と相談の上、まずは離床機会を確保し活動範囲を広げることで全身調整および抑鬱状態の予防を図っていくことを目標とした。【介入と結果】 初回介入後、両大腿四頭筋・大腿筋膜張筋の過緊張緩和目的に、ベッド臥床時のポジショニングを検討し助産師とも共有した。X+9日より並行移動にてリクライング車椅子乗車開始し、同時に関節可動域運動や筋力増強運動を開始。初めは下肢完全伸展位、リクライング30°程度で乗車していたが、日を重ねるごとに疼痛軽減したため、徐々に車椅子のリクライング角度を上げ、下肢下垂していき、X+20日垂直座位で30分以上経過しても疼痛増強や腹部の張りを認めなくなり、翌日より普通型車椅子乗車開始。X+23日スライディングボードを用いて1人介助にて車椅子移乗可能となり、理学療法実施時以外も助産師や家族と離床機会を確保できるよう指導した。 帝王切開後は翌日より車椅子乗車再開し、3分の1荷重許可後よりティルトテーブル40°設定にて荷重開始し、疼痛出現なく可能。全荷重開始後も起立・歩行練習時に両股関節痛は無いものの、歩行距離延長に伴い両膝関節痛・足関節痛を認めたため、疼痛増悪のないよう慎重に評価しながら行った。また、並行して育児参加できるような環境設定や動作確認・指導、産後ケアとして腹式呼吸や骨盤底筋運動、骨盤ベルトの装着方法などの指導も行った。病棟内は車椅子移動にて概ねADL自立、松葉杖歩行見守りで30ⅿ程度可能な状態で回復期病院へ転院となった。 出産前よりベッド上や車椅子でできることは増えADL向上につながっていたが、歩行獲得に向けての不安や出産・育児への不安により、精神的に不安定になる場面も認めた。そのため、助産師とともに傾聴する時間は確保するようにし、聴取した内容はカルテまたはカンファレンスの中で共有することで不安軽減に努めていった。【結論】 本症例では入院後定期的な子宮収縮を認めるようになり、術前より切迫早産として治療が開始されていた。しかし、助産師と協力してリスク管理を行いながら介入したことで、切迫症状増悪なく手術翌日よりスムーズに離床を進めることができたと考える。また、妊娠中や出産後は抑鬱状態になるリスクが高いという報告もあり、本症例ではその時期に骨折や手術といったストレス因子が加わったことでさらにリスクが高い状態になっていたと考える。そのため精神面も考慮しながら術後早期より安静度に応じて離床を進め活動範囲の拡大を図り、出産後は助産師と協力しながら可能な限り育児参加できるよう関わった。そのことで荷重・歩行練習などに対するモチベーション維持にもつながったのではないかと考える。【倫理的配慮,説明と同意】本症例報告においては対象者に向けて、ヘルシンキ条約に基づいて口頭での説明と同意を得た。
著者
岩下 知裕 清田 大喜 小林 道弘 荒川 広宣 槌野 正裕 高野 正太
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H2-149_1, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに】 便秘とは,「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態(慢性便秘症診療ガイドライン2017)」と定義されている.また,慢性便秘症患者の6割程度にうつ,不安などの心的異常を認め,心理検査では心理的異常を示すスコアが健康対照者に対して有意に高いことが報告されている.厚生労働省の平成28年度国民基礎調査による便秘の有訴者数は65歳以上の男性で6.50%,女性で8.05%となっており,80歳以上では男女平均にて約10.8%と高齢になるにつれ増加する傾向にあることが分かる.これらの報告より,便秘は身体機能の障害のみならず二次的に心的な障害を受け、QOLが低下する疾患であり,適切な介入が必要であると考えられる.当院では,排便障害患者に対して必要であれば直腸肛門機能訓練を実施している.日々の診療のなかで排便障害を有する患者の中には,体幹や骨盤,股関節機能に問題がある症例がみられることがある.今回,両股関節内旋可動域制限が生じている排便障害(機能性便排出障害)の症例に対して,股関節へのアプローチを行い,骨盤底機能が改善したことで主訴が軽減した症例を経験したため以下に報告する.【症例紹介】 80歳代の男性.既往歴はS状結腸癌術後,狭心症(カテーテル留置),前立腺癌.主訴は便意があるが排便しにくい,いつもウォシュレットを強く当てて排便を行っていた.患者のニードはウォシュレットを使用せずに排便出来るようになりたい.【評価とリーズニング】 入院初期評価時には両股関節内旋可動域5°,徒手筋力検査(MMT)にて両股関節内外旋筋力3,直腸肛門機能検査の直腸肛門内圧検査では最大静止圧(Maximum Resting Pressure:MRP)43mmHg,最大随意収縮圧(Maximum Squeeze Pressure:MSP)242mmHg.便秘の評価であるConstipation Scoring System(CSS)は16点.【介入内容と結果】本症例に対して,最初に排便姿勢の評価を行った.理学療法プログラムは1.両股関節内旋可動域訓練,2.体幹筋筋力増強訓練(腹部引き込み運動),3.腸の蠕動運動促進を目的とした体幹回旋訓練,4.トレッドミル歩行訓練を実施した.また,5.バルーン排出訓練を2回/週の頻度で初回を含め計5回介入した.バルーン排出訓練は伸展性の高いバルーンを肛門より挿入し,50mlの空気を挿気し,偽便に見立てて排出する.その際に肛門の弛緩や息み方を学習出来るように指導したが,肛門の収縮・弛緩の動きが不良であった.理学療法開始2週間後,両股関節内旋可動域は30°,両股関節内外旋筋力は4に改善.MRP:50mmHg,MSP:352mmHgで肛門の収縮が可能, 50mlのバルーン排出可能,CSSは8点と改善し,ウォシュレットを使用せずに排便が可能となった.【結論】 慢性便秘症診療ガイドライン2017によると,便秘の発生リスクとしてはBMIや生活習慣,腸管の長さ,関連疾患の有無(逆流性食道炎,過敏性腸症候群,機能性ディスペプシア,下痢症),加齢などが挙げられるが,本症例では,原因の一つとして骨盤と股関節の可動性低下が考えられた.股関節内旋可動域を拡大したことで,外旋筋の柔軟性が向上し,肛門挙筋の起始部と連結している内閉鎖筋の柔軟性が向上したと考えられる.解剖学的に肛門挙筋は恥骨直腸筋,恥骨尾骨筋,腸骨尾骨筋の3筋から構成され,恥骨直腸筋の一部は外肛門括約筋と連結している.恥骨直腸筋は肛門直腸角を構成し,外肛門括約筋は収縮することにより遠位で肛門を閉鎖・固定する.骨盤底筋群の柔軟性が向上したことにより,排便時の恥骨直腸筋と外肛門括約筋の随意的な弛緩が可能となった.恥骨直腸筋が弛緩することで,肛門直腸角は鈍角し,外肛門括約筋が弛緩することで,排便時に肛門が緩み,機能性便排出障害が改善したと考えられる. 今回,機能性便排出障害を主訴とする症例を経験した.理学療法士として,股関節内旋可動域の図ったことで直腸肛門機能の改善につながったと考えている.今回は1症例の経験を報告したが,今後も継続して機能性便排出障害の症例に対して,股関節や骨盤の運動機能の改善に伴う排便障害の改善効果について検討していきたい.【倫理的配慮,説明と同意】臨床研究指針に則り同意を得,個人が特定されないように配慮した.なお,利益相反に関する開示はない.
著者
奥野 修司 工藤 枝里子 杉岡 辰哉 額賀 翔太 森 拓也 川原 勲
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.F-57, 2019 (Released:2019-08-20)

【目的】 近年,筋の柔軟性向上に対しスタティックストレッチ(SS)に振動刺激(VS)を加えることが効果的であると報告されているが,それらが筋硬度に与える影響については明らかにされていない。本研究の目的は超音波エラストグラフィー(UE)を用いてSSとVSの併用が筋硬度に与える影響を明らかにすることとした。【方法】 対象は,健常成人24名(27.8±5.8歳)とし,対照群(Cont群),SS群,VS群の3群に無作為に振り分けた。標的筋をハムストリングス(Hamst)とし,課題はSS群長座位姿勢にて体幹を前傾するSS,VS群はSSに携帯型振動刺激装置(タカトリ社製)にて40Hzの振動刺激を加えた。介入時間は2分間とした。柔軟性の指標としてFinger Floor Distance(FFD),Aplio300(Canon社製)にてHamst近位,1/2,遠位のUEで筋硬度を介入前後で測定した。各3回測定し,統計解析処理した。【倫理的配慮】 本研究はヘルシンキ宣言に則り,対象者に十分な説明と同意を得て実施した。【結果】 FFDの変化量は,VS群,SS群で有意に増加した(P<0.01)。UEの結果はHamst近位のみSS群,VS群で低値を示し(P<0.01),SS,VS間でVSで低値を示した(P<0.05)。【考察】 ShinoharaらによるとVSはIb求心性線維の活動による脊髄前角細胞の興奮性抑制にてストレッチ効果があると報告している。本研究ではSSに対し,VSを加えることで,それらの効果が加味され,よりストレッチ効果が得られる可能性が示唆された。
著者
宇治村 信明 大森 貴允 冨岡 真光 滝野 佑介
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H2-3_1, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】中殿筋は股関節外転筋として周知されており、基本動作や日常生活動作時の骨盤安定性に重要な役割を果たす。股関節術後患者では中殿筋速筋線維の顕著な萎縮が認められ、中殿筋の質的機能向上の必要性が報告されているが、中殿筋速筋線維に対する治療手段は、限られた手段しか報告がなされていない。よって本研究の目的は、股関節外転運動速度を変化させることで、中殿筋速筋線維に対する質的トレーニングとなり得るかを表面筋電図を用いて検証した。【方法】対象は整形外科学的疾患及び神経学的疾患の既往歴を有さない健常男性30人(年齢29.3±5.9歳、身長171.1±5.2㎝、体重65.1±8.1㎏)とした。方法は、測定肢位は側臥位、股関節屈曲伸展角度中間位、骨盤帯での代償予防のためベルトにて骨盤を固定した。股関節外転運動は0°から20°への運動とし、運動開始のタイミングを把握するためフットスイッチを用いた。なお運動課題遂行前に無負荷にて練習を行った。負荷量は股関節外転最大筋力の10%の負荷量とした。運動課題はメトロノームを使用し1分間に60拍、40拍、20拍のリズムでの3条件とし、各1条件10人の3群にて中殿筋速筋線維の発火頻度量を比較した。解析した波形の中央部より前半を求心性、後半を遠心性とした。発火頻度量はwavelet変換を用いて表面筋電図周波数解析(EMGマスター小沢医科器械)にて測定を行った。統計学的解析は、各群及び求心性、遠心性収縮時における中殿筋速筋線維の発火頻度量を一元配置分散分析を用いて比較した。統計学的有意水準は5%未満とした。【結果】各群での中殿筋速筋線維の発火頻度量の結果は60拍群(173.7±63.9Hz)、40拍群(92.9±52.5Hz)、20拍群(74.9±40.6Hz)であり、運動速度を速めるにつれ有意に高い値を認めた(p<0.05)。求心性収縮時の中殿筋速筋線維の発火頻度量の結果は、いずれも有意差を認めなかった。遠心性収縮時の中殿筋速筋線維の発火頻度量の結果は、60拍群(477.0±191.9Hz)が40拍群(227.5±99.6Hz)、20拍群(179.4±111.3Hz)と比較し、有意に高い値を認めた(p<0.05)。【結論】股関節外転運動速度を速めることは、中殿筋速筋線維の発火頻度量の増大へ寄与することが示唆された。さらに中殿筋速筋線維の発火頻度量は、運動速度が速く、遠心性収縮にて高い値を示した。これは運動速度を速めることで遅筋線維に比べ速筋線維の方が発火頻度に有利であると報告されており、本研究においても運動速度を速くしたことで運動単位の動員と運動ニューロンの発火頻度量増大に繋がったと考える。求心性と遠心性を比較し、遠心性ではエネルギー消費量が少なく、強い力を出すことができる収縮様式と報告されており、本研究においても遅筋線維に比べ速筋線維の方が発火頻度に有利であったと考える。本研究の結果から股関節外転運動における運動速度や収縮様式を変化させることは、中殿筋の質的トレーニングの一助となり得ることが示唆された。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は松山リハビリテーション病院倫理委員会の承認を得て実施した。対象者には口頭にて研究の趣旨を説明し、その内容について十分に理解を得た。
著者
齋藤 梨央 井所 和康 三上 紘史 仲島 佑紀
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.G-109_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに・目的】当院では、転倒予防の観点から運動器疾患を有する通院患者を対象とした歩行年齢測定会を実施している。転倒関連自己効力感は、高齢者において身体機能やADL能力の低下、QOLにも影響を与えるとされており、我々は先行研究で運動器疾患を有する患者の転倒歴は転倒関連自己効力感を低下させると報告した。しかし、転倒関連自己効力感の向上に関して有意性のある評価項目は明らかになっていない。本研究の目的は、転倒関連自己効力感に影響を及ぼす評価項目を調査し、その評価項目における具体的な目標値を算出することである。【方法】対象は2017年の歩行年齢測定会に参加した計58名(男性5例、女性53例、平均年齢74±7.6歳、平均身長153.6±6.6cm、平均体重54.8±9.9kg)とした。先行報告より、国際版転倒関連自己効力感尺度(FES-I)は64点満点中24点以上で転倒との関連性が報告されている。歩行年齢測定会にてアンケート調査より日本語版FES-I 24点以上と24点未満の2群に群分けした。調査項目は体組成3項目(身長、体重、骨格筋量)、身体機能10項目(握力、片脚立位予測値・計測値、立ち上がりテスト予測値・計測値、2ステップテスト、Timed Up & Go Test (TUG)、ファンクショナルリーチテスト(FRT)、5m歩行、5mタンデム歩行テスト)の計13項目とした。予測値は、片脚立位5秒保持が可能か、両脚または片脚で何cmの台から立ち上がれるかをテスト実施前に聴取した。統計学的解析は日本語版FES-Iの2群間比較において各調査項目の差をMann-WhitneyのU検定を用いて検討した。さらに、有意差が認められた因子を説明変数としROC曲線分析を用いてカットオフ値を算出した(R2.8.1)。有意水準は5%とした。【結果】日本語版FES-I 24点以上群で有意差が認められた項目は、片脚立位計測値(p=0.02)、立ち上がりテスト予測値(p=0.00)、立ち上がりテスト計測値(p=0.00)の3項目であった。有意差が認められた3項目のROC曲線から得られたカットオフ値、感度、特異度は、片脚立位計測値では26.5秒、62%、76%、立ち上がりテスト予測値では両脚10cm、76%、68%、立ち上がりテスト計測値では両脚10cm、90%、59%であった。【結論】本研究より転倒関連自己効力感の低下した高齢者は、自己効力感低下の原因とされる筋力やバランス能力を反映する片脚立位と立ち上がりテスト予測値・計測値ともに有意に低値を示した。また、予測値は自身の身体機能に対する自信を示し、予測値の低下に伴う転倒関連自己効力感の低下は不必要な活動制限やそれに伴う生活機能低下を招く可能性があることから、実際の身体機能とともに介入が必要である。転倒関連自己効力感に対して運動介入が効果を示すとされ、本研究で算出されたカットオフ値を目標とした評価・運動療法の実施は、身体機能向上による転倒関連自己効力感向上に有用であると考える。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は、ヘルシンキ宣言に基づき対象者へ研究の目的・内容を十分に説明し同意を得たうえで行った。