著者
平井 志伸
出版者
公益財団法人東京都医学総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

サブプレートニューロン(SPn)は、人では疾患の種類によりその数が増減していることが知られている(アルツハイマー病患者では減、自閉症や統合失調症患者では増)。そこで、マウスを用いて、SPnの数が脳機能に及ぼす影響を検証した。まず我々は、今まで困難だった、SPn特異的な遺伝子操作の系を確立した。具体的には、アデノ随伴ウイルス(血清型9)を用いて、胎児期の適切なタイミングで脳室にウイルスを投与するという手法である。現在、この系を用いてSPn数を人工的に増減させた際の脳機能の変化を、組織学的、行動学的に解析中である。
著者
富川 光
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

中国地方には海峡や大地質構造線のような大きな地理的障壁がないにもかかわらず,多くの生物種で遺伝的・形態的な分化が集中して生じている.本研究では,移動分散能力が低く,生物地理学的研究材料として最適であるヨコエビ類,ヒル類,マイマイ類を材料として,分子系統解析・形態解析・飼育実験を行い,中国地方の生物地理学的重要性を検証した.
著者
北野 慎一
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

漁業・漁村の多面的機能を発揮していると思われる日本国内の事例をピックアップし、一般市民の方が景観に対して持つ様々なイメージに基づいて、その類型化を試みた。空間的特性、歴史文化的特性から4類型が可能であることが明らかとなった。その類型から特に歴史文化的特性を持つ事例(岐阜長良川鵜飼)をピックアップし、経済評価を試みた。伝統漁法が創出するレクリエーション効果(価値)が確認された。
著者
山口 典之
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

(a)雄の配偶者防衛行動は雌の受精期にあたる、産卵日の数日前にピークを迎える。雌は、喉部の赤い羽毛の面積が小さい雄(=遺伝的に優れていない)とつがった際に、雄による配偶者防衛行動からよく逃げ出し、つがい外配偶行動を求めることが明らかとなった。また、このような雌は実際に多くのつがい外子を残していた。しかし喉部の羽毛面積や雌の浮気強度は雄の配偶者防衛行動と関連が見られなかった。一方で、雌が積極的につがい外配偶を求めたつがいの巣では、雄が養育投資を削減することが明らかとなった。(b) 2つがいからホルモンを採取し、変動を調べたところ、受精期前に高いレベルを示していたテストステロンレベルが、初卵日の数日前をピークに減少することが明らかとなった。配偶者防衛行動などの行動と関連することが示唆された。
著者
小枝 壮太
出版者
近畿大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ボリビア原産のトウガラシNo.3341は果実に辛味成分カプサイシノイドをまったく蓄積せず,その原因は既知の情報では説明できない.本研究では辛味品種Habaneroと既知の遺伝子変異により辛味を呈さない非辛味品種としてNo.2,No.80,NMCA30036を供試した.これら品種の交雑後代を調査したところ,No.3341は単一の劣性遺伝子により辛味を呈さず,新規因子が関与していることを明らかにした.また,Comtの変異が原因である可能性についても棄却した.そこで,Rad-seq解析を行ったところ,No.3341の非辛味性に強く連鎖するマーカーを作成することに成功した.
著者
廣部 祥子
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究課題では、従来の注射投与型ワクチンと比較して高い有効性を発揮しうる経皮ワクチンの免疫誘導機構の解明を目指した。独自に開発した2種類の経皮ワクチンデバイス(ハイドロゲルパッチと皮膚内溶解型マイクロニードル)を用いた経皮ワクチンと注射投与(皮下および皮内)における免疫応答を比較検討した。その結果、皮膚を標的とした経皮ワクチンでは、皮膚組織内での遺伝子発現変化、所属リンパ節内での細胞ポピュレーション変化やT・B細胞の活性化など、注射投与ワクチンとは異なる反応が生じていることが判明し、これらの反応の違いが経皮ワクチンの優れた抗体産生誘導能に寄与していることが示唆された。
著者
吉村 征浩
出版者
神戸学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

近年、腸内細菌叢が産生した短鎖脂肪酸(SCFA)が宿主の健康状態に非常に重要な役割を担うことが明らかとなっている。SCFAのうち、酢酸を摂取すると生活習慣病の予防に役立つことが示されており、そのような酢酸の機能性は、酢酸代謝および受容体を介したシグナル伝達により発揮されると考えられている。本研究では、酢酸摂取が宿主の腸内細菌叢構成に与える影響を明らかにすることを目的とした。酢酸をSDラットに摂取させると、腸内細菌叢構成が明確に変化することが細菌の16SrRNAのPCR-DGGE法による解析で明らかとなり、メタゲノム解析によって、ある種の乳酸菌が酢酸摂取によって有意に増加することが分かった。
著者
廣瀬 丈洋
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

地震活動によって断層から発生した水素が、その水素をエネルギー源にして有機物をつくり出す地下微生物圏を育んでいるという仮説を検証するため、地震時の高速断層すべり運動を再現できる摩擦実験によって地震時に発生する水素量を見積った。その結果、 地震によって含水断層帯で生じうる水素ガス濃度は大変高く(数mmol/kg)、地震断層起源の水素ガスを「えさ」とする地下生態系が存在しうる可能性があることがわかった。
著者
吉田 卓矢
出版者
静岡県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

低たんぱく食は慢性腎臓病(CKD)患者における食事療法であるが、CKD患者の筋萎縮に関与していることが考えられる。そこで、本研究では、筋蛋白の合成を促進することが知られている分岐鎖アミノ酸の摂取や運動がCKDの腎機能や筋蛋白合成に与える影響をCKDモデルラットを用いて基礎的に検討した。その結果、CKDでは運動による筋蛋白合成の活性化が低下していることが明らかとなった。また、運動とともに分岐鎖アミノ酸を少量摂取することで、CKDモデルラットにおいて腎機能を低下させずに運動による筋蛋白合成を促進することが明らかとなった。
著者
矢野 裕介
出版者
神戸医療福祉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、大日本帝国剣道形増補加註(1933年)の制定に向けた討議の様相が克明に記された近藤知善筆の討議記録の解読を通して、その内容を把握するとともに、討議の対象となった大日本帝国剣道形加註(1917年)の構成項目ごとに分析を加え、関係各氏21名のうちの誰が、どの箇所に、どのような意見を述べているのかを明らかにするものであった。分析対象とした範囲では合計131の意見が出されていた。加えて、解読した131の意見の内容と1933年の大日本帝国剣道形増補加註を比較した結果、合計40の意見がそれに反映、継承されていることが解明された。
著者
河村 英将
出版者
群馬大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

線維芽細胞株や軟骨肉腫細胞株に放射線照射を行い、その照射した細胞と照射をしていない非照射細胞を共培養を行うことで放射線に対する細胞応答反応を解析した。特に共培養した非照射細胞の細胞応答反応におけるセラミドの関与を解析するため、蛍光免疫染色の手法を用い、画像解析を行うことでDNA損傷やセラミドの定量的な評価を行った。非照射細胞の放射線応答反応(バイスタンダー効果)を確認し、セラミドの影響について検討する基礎的な検討を行った。
著者
清水 健一
出版者
芝浦工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

(a) 2017年度まではテンソル圏における『随伴代数』および随伴代数を用いて構築されるテンソル圏における積分理論について研究を行っていた. 2018年度は, 柴田大樹氏との共同研究として, これらの理論の準ホップ代数への応用を与えた. 具体的には, (1) 有限次元準ホップ代数 H の表現圏の随伴代数 A が Bulacu, Caenepeel, Panaite の構成した Yetter-Drinfeld 圏におけるある可換代数と同じであることを示した. (2) H がユニモジュラーである場合に A はフロベニウス構造を持つことが知られているが, その構造を H の積分および余積分を用いて明示的に表示した. (3) m を H 上のモジュラー関数とするとき, H の表現圏における m-twisted modified trace を H の余積分などを用いて明示的に表示した. 以上の結果は arXiv:1812.03439 として公開中であり, 学術雑誌に投稿中である.(b) Fuchs, Schaumann, Schweigert は, 有限テンソル圏 C 上の完全 C-加群 M に対して M の双対セール関手を定義した. これは有限テンソル圏の様々な問題に対して有効であることが知られていたが, C が有限次元ホップ代数の表現圏の場合でさえも具体的な表示は良くわかっていなかった. 2018年度は C が有限次元ホップ代数 H の表現圏, M が H 上の余加群代数の表現圏の場合に M の双対セール関手と関連する同型射を H の積分などを用いて具体的に表示した. さらに, この結果を用いて, M のピボタル構造などについても調べた. 以上の結果は, アメリカ数学会などで発表し, arXiv:1904.00376 として公開中であり, 学術雑誌に投稿準備中である.
著者
江口 祐輔
出版者
麻布大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

我が国においてイノシシによる農作物被害が各地で発生している。被害を防ぐためには、対象となる動物の行動を把握し、新たな防除技術の開発や総合的対策の展開を図る必要がある。本研究は、超音波による音刺激に対するイノシシの行動を調査し、誘因性と忌避製について検討し、イノシシの行動制御技術開発のための基礎的知見を得ることを目的とした。音刺激試験:飼育イノシシにおける試験では1頭ずつ音を提示した。提示音は音圧波形をサイン波に設定し、周波数を中-高周波数領域で10k〜80kHzの8段階、中-低周波数領域で2k〜5Hzの9段階に設定し、超音波発生装置を用いて発生、イノシシの反応を記録した。周波数が40kHzの音に対して、「静止」、「スピーカー定位」、「スピーカー探査」の反応を示す個体が認められた。このことからイノシシは超音波を聞くことができると推察されるが、すべての超音波に対して忌避反応を示さず、超音波を嫌がらないと推察された。しかし、ヒトの可聴域内である500Hzの音に対して忌避反応と思われる「逃避」、「身震い」の反応を示す個体が認められた。500Hzで忌避反応と思われる反応が確認できたため、新たに200Hzの試験を行ったところ、「逃避」、「身震い」の反応を示す個体が認められた。野生個体の試験では群れに対して同時に音を提示したところ、飼育個体と同様の傾向を示し、新たな防除技術開発の可能性が示唆された。しかし、試験中に群れが移動してしまうなど、十分なデータを得るには至らず、試験を継続する必要がある。豚の尿に対する試験:雌ブタの発情期の尿と非発情の尿および、対照として蒸留水をイノシシに嗅がせた結果、発情尿に対する雄イノシシの反応が大きく、嗅ぎ行動が多く発現した(P<0.05)。また、捕獲おりに発情尿を入れた試験では、反応試験と同様、雄の反応が大きく、檻に侵入後、フレーメン様行動が認められ、誘因物質として実用化の可能性が示唆された。(特許申請を行うため、成果の公表を見合わせる必要アリ)
著者
高野 佐代子
出版者
株式会社国際電気通信基礎技術研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

歌声や発話に関わる声の高さの調節には声帯の長さと張力が深く関わっており、声を高くする際には甲状軟骨の声帯付着部と輪状軟骨の声帯付着部が互いに離れる方向へ運動が生じている。この変化は輪状甲状関節の運動によることが知られているが、この関節運動が回転運動のみなのか、滑走運動も行っているのかについては一致した見解が得られていなかった。また上下方向の滑走運動により声の高さに影響を与えるという理論モデルもあるが、実際の計測結果の報告はない。これまでに輪状甲状関節の運動を詳細に調べるために、MRIを用いて十分な解像度を得られるように撮像装置の改良や撮像方法の開発を行ってきた。本年度は特に3次元パターンマッチングプログラムを作成し、得られたMRIデータから半自動的に正確な位置を推定した。その結果、甲状軟骨はhighでは上方への移動に加え、前方への移動が見られ、また左右方向への移動回転も確認された。輪状軟骨はhighで上昇し、後方への回転に加え、後方への移動も見られた。輪状甲状関節の上下の滑走は0.5mm以下と小さく、前後方向の滑走に比べると影響は小さいと考えられる。前後方向の滑走には左右差が見られ、最大約1.2mmの運動が確認された。以上の結果から、関節の滑走が起こらないとする従来の報告と異なり、中音域における輪状甲状関節の運動は、輪状軟骨の回転と滑走からなると考えられた。これらの結果をMaveba2005において発表した。今後は被験者の数および発声の範囲を増やして関節運動を計測し、、雑誌論文に投稿する予定である。
著者
神沢 英幸
出版者
名古屋市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

男性不妊症は我が国の喫緊の課題である。私たちはこれまでに精子幹細胞活性が将来の精子形成に影響を及ぼす可能性について報告してきた。本研究では将来に造精機能障害のリスクがある停留精巣をモデル疾患として幼少期精巣および男性不妊症精巣における精子幹細胞活性およびセルトリ細胞機能の変化を検討した。その結果、男性不妊症には先天的な精子幹細胞機能低下が生じている症例群がいることが明らかとなり、またそのような精巣では精子幹細胞活性の低下の原因としてセルトリ細胞の成熟異常により発現亢進する一連のカスケードにより精子幹細胞のアポトーシスが進行することが一因と推察された。
著者
新沼 史和
出版者
盛岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本調査によって、ケセン語の「サル表現」のサルの機能が明らかになった。意味的には、自発・状況可能・結果状態という3つの意味を有し、自発が基本的な意味である、ということである。そして、統語的には、サルがMiddle Voiceという機能範疇であり、補部にはいかなる動詞句を要求し、その指定部には、音を持たない内項を要求するということである。この内項により、時には原因項や経験者となり様々な意味を有する、ということが明らかになった。それに加え、ar自動詞の特性を検討し、ar自動詞とサルとの関係が日本語の使役における語彙的使役・統語的使役との関係に対応することが明らかになった。
著者
山田 広幸
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

土壌の性質や植生の状態は、大気に放出される熱と水蒸気の比率を左右するため、雲の性質にも影響を与えると予想される。このような影響を定量的に評価するため、雲解像数値モデルを用いて地表状態を変えた実験を複数実施し、陸面に対する降水雲の応答を調べた。中国大陸上の集中豪雨の事例を用いた実験の結果、陸面状態の変化によって大気境界層の特性が変化し、それに応じて降水システム全体としての形態や降水分布が変化するという結果が得られた。
著者
加藤 智朗
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

当研究室で作成した前脳神経で変異型polymeraseγを発現するトランスジェニックマウスは双極性障害と類似した表現型を示す。このマウスは視床室傍核等の領域において欠失したミトコンドリアDNAを多く蓄積する。視床室傍核がどういった特徴を持つかを明らかにするために、視床室傍核やその他に双極性障害との関連が示されている脳領域を含めてRNAを抽出しマイクロアレイを用いて遺伝子発現解析を行った。その結果、視床室傍核は他の領域よりもミトコンドリア関連、特に酸化的リン酸化に関わる遺伝子の発現が高いこと、コレステロールの合成に必要な酵素をコードする遺伝子の発現レベルが高いことが明らかになった。
著者
阪上 辰也
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は,英語学習者のコロケーション知識がどのように保持され,また運用されているかを明らかにすることである。平成22年度には,ライティングの過程を記録できるシステムを開発・導入し,平成22年度後半から平成23年度前半にかけて, 1時間程度で産出されたライティングのデータを収集した。データを産出過程・産出時間・産出された表現といった観点から分析した結果,コロケーション知識をまとまりとして保持し運用していることが分かり,ひとまとまりとしてコロケーションを処理している可能性が示された。
著者
水口 智江可
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

農業害虫であるアザミウマは、蛹の過程を経ずに幼虫が成虫へと変態する「不完全変態昆虫」として分類されているものの、成虫になる前にほとんど動かない「蛹のような時期」が存在する。これは他のどの昆虫種とも異なったユニークなものであるが、ホルモンによる制御機構は不明であった。本研究では、アザミウマの幼若ホルモンシグナルを伝達する2つの転写因子を特定するとともに、アザミウマのユニークな変態様式がどのような進化を遂げて出来上がったのか考察を行った。