- 著者
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北口 公司
- 出版者
- 岐阜大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2016-04-01
食物繊維を摂取することでアレルギー疾患を予防できる可能性が示唆されている。これまでに我々は,水溶性食物繊維の一種であるペクチンを摂取することで腸管免疫担当細胞の炎症応答を抑制し,敗血症や大腸炎に対して保護的に働くことを明らかにした。さらに,その抗炎症作用には,ペクチンの側鎖が重要であることも見出している。一方,ペクチンが腸内で資化された結果生じる短鎖脂肪酸が血中に移行することで,腸管局所のみならず全身の炎症応答を調節できる可能性も示唆されている(プレバイオティクス効果)。しかしながら,ペクチンの化学構造とプレバイオティスク作用との関係には不明な点が多い。そこで,化学構造の異なる2種類のペクチン(シトラス由来ペクチン,オレンジ由来ペクチン)をマウスに給餌し,遅延型過敏症である接触性皮膚炎の病態と盲腸内の短鎖脂肪酸の産生に及ぼす影響を調査した。オレンジペクチンは,中性糖の割合がシトラスペクチンに比べて約3.5倍高く,側鎖を多く含んでいることが示唆された。シトラスペクチンとオレンジペクチンを含有する飼料をマウスに給餌した後,ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)溶液を除毛した腹部に塗布することで感作を行い,感作から5日後にDNFB溶液を再度左耳に塗布して接触性皮膚炎を耳介に惹起した。その結果,オレンジペクチン含有飼料摂取群では,DNFB塗布により惹起された耳介の腫れが有意に抑制されたが,シトラスペクチン含有飼料摂取群では,耳介の腫れは対照飼料摂取群と同程度であった。また,オレンジペクチン含有飼料摂取群では盲腸内容物中の短鎖脂肪酸量が有意に増加し,とりわけ酢酸の増加が顕著であった。以上の結果より,ペクチンの接触性皮膚炎抑制効果は,側鎖の含有量が重要であり,短鎖脂肪酸を介している可能性が示唆された。