著者
中島 直樹 杉村 隆史 小野 恭裕 江崎 泰斗 柳瀬 敏彦 梅田 文夫 名和田 新 本村 正治
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.8, pp.521-529, 1997-08-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
16

副腎アンドロゲンは抗糖尿病作用を有すとされるが, その詳細な機序は明らかでない. 今回, 非インスリン療法中の成人男性糖尿病患者59名および非糖尿病者32名の計91名について早朝空腹時に血中dehydroepiandrosterone (以下DHEA), DHEA-sulfate (DHEA-S), testosterone, estradiol, cortisol, 空腹時血糖, HbA1c, IRIを測定した. 全対象において, 血中DHEA-S濃度はHbA1c (p<0.05) や空腹時血糖値 (p<0.05) と有意の負相関を示した. 比較的高IRI血症群 (IRI10μU/ml以上群, n=25) では, 正IRI血症群 (n=66) に比して血中DHEA濃度が有意に低下していた (1.91±1.32ng/ml vs. 2.42±1.12ng/ml, p <0.01).糖尿病群から抽出した28名で6カ月後に再検をしたところ, HbA1c値1%以上改善群 (n=6) では血中DHEA-S濃度は有意 (p<0.05) に増加した. また, 血中IRI低下群 (n=12) では血中DHEA濃度が有意に (p<0.05) 増加した. 以上, 成人男性においては, 糖尿病コントロール状態と血中DHEA-S濃度が関連し, 一方血中IRI値と血中DHEA濃度が関連することが示唆された. これらの関連は経時的観察においても認められた.
著者
村田 敬 伊藤 佳代子 高木 洋子 森 栄作 安藤 理子 中川内 玲子 阿部 恵 河野 茂夫 山田 和範 葛谷 英嗣
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.845-848, 2008 (Released:2009-05-20)
参考文献数
6
被引用文献数
1

症例は2型糖尿病の男性(49歳),前医にてインスリンおよびエパルレスタットの処方を受けていたが,歩行障害悪化を主訴に来院.BMI 14.9 kg/m2, 下肢優位で左右対称な軽度筋力低下,下肢優位の小脳失調症状を認めた.HbA1c 15.6%, 糖尿病網膜症なし,神経伝導速度は運動・感覚ともに低下.入院後,次第に筋力低下と歩行機能が改善.入院時の残血清中ビタミンB1濃度は0.6 μg/dlと低値.フルスルチアミン100 mg/日の点滴を行ったところ,筋力回復し,軽快退院した.管理栄養士による聞き取り調査では白米中心の偏食傾向があり,ビタミンB1の推定摂取量は0.5 mg/日と所要量(1.2 mg/日)の半分程度であった.以上のような検査結果・臨床経過から総合的に判断して,本症例の歩行障害の主因はビタミンB1欠乏症による脚気神経炎であった可能性が高いと診断した.脚気神経炎は糖尿病性多発神経障害と症状が似ており,つねに鑑別診断として念頭におく必要がある.
著者
赤沼 安夫 繁田 幸男 井村 裕夫 七里 元亮 垂井 清一郎 馬場 茂明 堀野 正治 兼子 俊男 三村 悟郎 清水 直容 内藤 周幸 中川 昌一 工藤 守 久保田 奉幸 阿部 祐五 王子 亘由 鍋谷 登 河原 啓 安東 千代 陣内 冨男 小坂 樹徳 後藤 由夫 葛谷 健 平田 幸正 伊藤 徳治 梶沼 宏 堀内 光 坂本 信夫
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.9-18, 1984

ブタインスリンの化学的修飾によつて酵素学的畔合成されたHuman Momcomponent Insuliれの安全性, 有効性および免疫学的推移を精製ブタインスリンを対照薬剤とした二重盲検法にて検討した. 用いた製剤はいずれもActrapidおよびMonotard製剤である. 治験は96週間の予定にて実施進行中であるが, 今回は24週間まで投与し得ている症例を対象とした中間成績である. 対象は, 精製ブタインスリン製剤のみで治療されているType IおよびType II糖尿病患者153例であった. 解析は除外症例8例を除いた145例にて実施された.<BR>患者の年齢, 糖尿病病型, 肥満度, 糖尿病発症年齢, 糖尿病罹病期間および糖尿病性合併症など背景因子に明らかな偏りはなかった.<BR>全般改善度, 有用度とも精製ブタインスリン群の方で改善および有用と判定する傾向があった (0.05<p<0.1).<BR>インスリン1日用量, 空腹時血糖値およびヘモグロビンAiでは両薬剤群間に有意な差は認められなかった. 体重, 抗インスリンIgG抗体およびインスリン特異性IgE抗体でも両薬剤群間に差を認めなかった. インスリンアレルギーが治験開始1ヵ月頃に, リポアトロフィーが12週間頃に各1例ずつ認められたが, いずれも治験はそのまま継続し得た. これら以外に副作用は認めなかった. 臨床検査成績に治験薬剤によると思われる直接的な影響は認められなかった.<BR>以上より, Human Monocomponent Insulinは, 精製ブタインスリンとほぼ同様の安全性, 有用性を有しており, 糖尿病治療上, 有用なインスリンであると判断された. しかしながら両者間には作用特性に多少の差異がみられる可能性は残る. この点に関しては今後さらに検討される必要があろう.
著者
山田 祐一郎
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.10, pp.643-645, 1997-10-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
5

血中のグルコースは, 膵β細胞内で代謝を受け細胞内ATP濃度の上昇となって表れる. 細胞内ATP濃度の上昇をATP感受性カリウムチャネルが感知しチャネルを閉鎖することにより, 膜電位が上昇し電位依存性カルシウムチャネルが開口し, 細胞内カルシウム濃度が上昇し, インスリン分泌が惹起される. したがって, ATP感受性カリウムチャネルは糖代謝の変化をカルシウムイオン濃度の違いに変換する上で鍵となる蛋白と考えられる.
著者
古賀 正史 村井 潤 曽我 純子 斎藤 博
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.841-848, 2013

異常ヘモグロビンはHbA1cが異常値を示すために血糖コントロール状態の判断を誤る危険性がある.今回,人間ドック受診者でHbA1c(NGSP値)の異常低値(4.2 %未満)を契機に発見した異常ヘモグロビンの5例を報告する.HPLC法で測定したHbA1c(HPLC-HbA1c)の異常低値例に対して,グリコアルブミン(GA)および免疫法によるHbA1c(IA-HbA1c)を測定した.HPLC-HbA1cがGAおよびIA-HbA1cと乖離した非糖尿病の5例全員に<i>β</i>鎖グロビンのヘテロ変異(Hb Shizuoka 1例,Hb Moriguchi 2例,Hb G-Szuhu 2例)を認めた.HPLC-HbA1cが異常低値を呈し,GAおよびIA-HbA1cとの乖離を認めれば,異常ヘモグロビンが強く疑われる.HPLC-HbA1cが異常低値を示す例に対して我々が用いている診断のためのフローチャートを併せて提示する.
著者
日本糖尿病学会糖尿病関連検査の標準化に関する委員会 桑 克彦 岡橋 美貴子 佐藤 麻子 難波 光義 前田 士郎 村上 正巳 目黒 周 西尾 善彦
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.336-339, 2021

<p>HbA1cの測定を外部の検査機関に委託した場合,測定値が低値になることがある.その理由として,全血の検体を冷蔵で搬送,保存した場合に,老化した赤血球ほど溶血しやすいことが挙げられる.全血の検体を長時間にわたって冷蔵保存した後に採血管を遠心し,その赤血球層を用いてHbA1cを測定する方法(HPLC法の一部,免疫法の一部および酵素法の一部)では,溶血の影響を受けにくいEDTA採血管を使用することが推奨され,血糖検査用のNaF入り採血管の使用は望ましくない.</p>
著者
具志堅 美智子 小宮 一郎 小林 潤
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.333-335, 2021

<p>isCGM(intermittent-scanning continuous glucose monitoring)の糖尿病者の心理的負担感を評価する目的で,46名にisCGM使用前後でPAID(problem areas in diabetes survey)を実施した.Wilcoxon matched pair signed rank test, logistic regression analysisにて解析した結果,PAID総得点はisCGM後に有意に低下した(p<0.0001). 問題領域別では'治療'(p<0.0001),'疾患'(p<0.01),'社会的サポート'(p<0.05)に有意な減少が認められた.isCGM後のPAID総得点減少と関連した予測因子に'年齢''男性''網膜症'が抽出された(p<0.05).</p>

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出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.Suppl, pp.S-131-S-135, 2016-04-25 (Released:2016-05-17)
著者
野村 卓生 池田 幸雄 末廣 正 西上 智彦 中尾 聡志 石田 健司
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.227-231, 2006 (Released:2009-01-19)
参考文献数
20
被引用文献数
10

2型糖尿病患者におけるバランス障害の成因を明らかにするために,閉眼片脚立位時間と定量的な膝伸展筋力の関連を検討した.糖尿病患者では片脚立位時間の減少と膝伸展筋力の低下が認められ,単変量および多変量解析の結果,いずれにおいても片脚立位時間と膝伸展筋力との間に有意な関連が認められた.糖尿病患者のバランス障害の原因として,多発性神経障害による感覚障害の関与が強調されるが,今回の検討より,下肢筋力低下も関与することが明らかとなった.糖尿病患者のバランス障害に適切な対応をするためには,感覚検査に加え,筋力を定量的に捉えることが必要と考えられた.
著者
伊藤 有史 伊藤 春見 中島 千雄 三宅 隆史
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.765-772, 2018-11-30 (Released:2018-11-30)
参考文献数
34

【目的】75gOGTTの男女差を調べる.【方法】2008年11月~2015年5月に当院で75gOGTTを行いHbA1c値が6.0~6.4 %の375名(男性146名,女性229名)について血糖値を男女間で比較した.【結果】男性は0,30,60,120分血糖値のすべてで女性よりも有意に高値を示した.各血糖値を目的変数とした重回帰分析は,性別,Insulinogenic index(II),HOMA-IRが4点の血糖値で,身長が60,120分値で有意な独立変数であった.判定区分別では,境界型の0,30,60分値で男性が,120分値で女性が有意に高値を示した.正常型は境界型と同じ傾向を示したが有意差を認めなかった.糖尿病型は120分値で男性が高い傾向を示したが有意差を認めなかった.各区分のHbA1c値に男女差はなかった.【結語】糖尿病型では境界型で見られた血糖値の男女差が消失した.
著者
大濱 俊彦 佐藤 愛 田中 聡 石塚 恒夫 勝盛 弘三
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.34-39, 2012 (Released:2012-02-09)
参考文献数
8

20年前に1型糖尿病と診断されインスリン加療中の54歳の男性が,全身倦怠感,脱力感にて当院救急室を受診した.受診3日前より食後の心窩部痛を自覚し,摂食すると嘔気嘔吐がみられたため,食事摂取もできず,受診2日前からインスリン注射を中断していた.受診当日,コーヒー残渣様嘔吐を認め,その後全身脱力感,意識レベル低下を認めたため救急車要請となった.救急車内でモニター上10秒程度のVT波形となり,血圧も低下した.到着時意識障害を認め,心電図波形で高カリウム血症性変化を認めた.血液検査にて血糖値1435 mg/dl, K 8.6 mEq/l,アシドーシスを認め糖尿病ケトアシドーシス(Diabetic ketoacidosis,以下DKAと略す)と高カリウム血症にて緊急入院となった.その後の集学的治療にて病態をコントロールすることができた.翌日の上部消化管内視鏡にて上部消化管に出血性潰瘍を認めた.DKAから高カリウム血症を認めることはあるが,K 8.6 mEq/lという著明な高カリウム血症はあまり報告例をみない.本症例は消化管出血や腎前性腎不全も併発していたために致死性不整脈が生じるほどの血清カリウムの上昇につながったと思われる.糖尿病罹病期間の長いDKAで著明な高カリウム血症を認めた場合,背景に消化管出血を合併している可能性があり,本症例のように早急な治療が求められることが多いため注意を要する.
著者
上垣 正彦 高杉 佑一 杉江 広紀 辻 和之 林 憲雄 粂井 康孝 並木 正義
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.8, pp.683-689, 1992-08-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
15

ガス産生化膿性肝膿瘍を合併したNIDDMの1例を経験した. 症例は84歳, 男性. 嘔吐, 発熱で発症し, 当院に入院した. 高血糖, CRP陽性, 白血球増多, 胆道系酵素の上昇を認め, ただちにインスリン治療と抗生剤の投与を開始した. 腹部の超音波検査とCT像で少量のガス産生を伴う孤立性化膿性肝膿瘍 (CT上72×92mmのSOL) に特徴的な所見を認めたので抗生物質を変更し, ドレナージを行うことなく順調に治癒した. 肝動脈塞栓術後やエタノール局所注入療法後などにみられる医原性のガス産生症例を除外して集計すると, (非医原性) ガス産生化膿性肝膿瘍の本邦報告例は自験例を含め23例で, このうち糖尿病合併例が20例 (87%) と極めて高率である. 本症の報告例は少ないが, 糖尿病者に多い特徴があり, 早期の診断と治療効果判定には, 腹部超音波や腹部CTによる画像診断が有用と思われ報告した.
著者
松田 文子 斎藤 公司 高井 孝二 坂本 美一 葛谷 健 吉田 尚
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.10, pp.943-950, 1978-10-30 (Released:2011-08-10)
参考文献数
18
被引用文献数
1

大腸菌, 変形菌, 黄色ブドウ球菌の感染により皮下にガス産生を来した糖尿病性壊疽の2例を報告した.症例1は42才女性, 糖尿病治療不十分の状態で左足背を火傷.2月後足背の壊疽, 蜂窩織炎が拡大し全身感染による中毒症状におちいった.蜂窩織炎は大腿から側胸まで上行し, 皮下に特有の気腫を触知し, X線上皮下ガス像を著明に認めた.壊疽部からは黄色ブドウ球菌と変形菌, コリネバクテリウムを検出した.糖尿病治療はインスリンで効を奏したが, エンドトキシンショックで死亡した.Scott丑の網膜症, び漫性, 結節性腎糸球体硬化症を合併した.下肢の全知覚鈍麻があり高度の神経障害も合併していたが末梢動脈の閉塞狭窄は認めなかった.症例2は56才男性, 20年前より糖尿病で経口剤治療下にあった.靴ずれの後左足第4趾が壊疽化し感染を合併した.X線で病巣周辺皮下にガス像を認め, 病趾切断を行ったが, 炎症が上行し全身感染による中毒症状でショック状態となった.直ちに膝下下腿切断術を行い救命し得た.壊疽部の培養から大腸菌と黄色ブドウ球菌を検出した.本症例は眼底出血続発による失明, 高度の神経障害と蛋白尿を合併していた.欧米および本邦を通じて, 糖尿病性壊疽に大腸菌, 好気, 嫌気性連鎖球菌, クレブシェラなどの感染が合併して類ガス壊疽様症状を呈した報告が21例ある.高度の神経障害を素地とし緩慢に進行するため診断が遅れがちで極めて予後不良であり, 適切な抗生剤の投与と外科的治療が必要とされ
著者
井坂 吉宏 森脇 恵美子 沼口 隆太郎 日浦 義和
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.277-283, 2021-04-30 (Released:2021-04-30)
参考文献数
14

通院加療中の2型糖尿病患者の長期的な血糖コントロール不良に関連する因子を明らかにするために後ろ向き観察研究を行った.1年以上通院しているHbA1c 8 %以上の患者62例を抽出し,主治医にアンケート調査を行い不良要因の項目を作成,HbA1cの推移を予測する因子について解析を行った.2年間通院を継続していた53例のうち,2年後HbA1cが8 %未満に改善したのは23例(43 %)で,ロジスティック回帰分析にて調査開始時HbA1c高値,通院年数が長い,若年が2年後HbA1cの非改善に,独立して有意に関連していた.また通院しているが血糖コントロール不十分な患者の多くは心理行動面の問題を抱えており,複数以上の問題を有する患者では,そうでない患者と比べて有意に年齢が若く,HbA1cの改善も乏しかった.こういった患者に対してどのような援助ができるのか,議論が必要である.
著者
中川 幸恵 石川 祐一 渡辺 啓子 朝倉比 都美 西村 一弘 藤井 文子 林 進 今 寿賀子 井上 小百合 貴田岡 正史 増田 創 米代 武司
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.813-819, 2014-11-30 (Released:2014-12-01)
参考文献数
17

栄養指導の糖尿病改善効果は指導頻度を高めるほど得られやすいと考えられている一方,糖尿病罹病期間が長くなるほど得られ難くなることも知られている.本研究では,栄養指導の糖尿病改善効果に対する指導頻度の影響が罹病期間に依存するか否かを調査した.281病院に通院する2型糖尿病患者725名を対象とし,管理栄養士による栄養指導の開始時と6ヶ月後の臨床データを収集した.HbA1cは罹病期間が長い者に比べ短い者の方が(P<0.001),指導頻度が低い者に比べ高い者の方が(P<0.001)改善した.指導頻度依存的なHbA1c改善効果は長期罹病患者でも認められた(P<0.05).ロジスティック回帰分析を用いて年齢,性別,糖尿病家族歴,糖尿病薬の変更,HbA1c初期値,罹病期間で補正したところ,指導頻度はHbA1c改善の有意な規定因子になった(P<0.001).高頻度な栄養指導は,糖尿病患者の罹病期間に係わらず病態改善効果を高めることが判明した.
著者
雨森 正記 西垣 逸郎 荻野 賢二 山下 滋夫 馬場 道夫 小杉 圭右 繁田 幸男 上田 恵一
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.547-551, 1989-07-30 (Released:2011-08-10)
参考文献数
11
被引用文献数
4

ケトアシドーシスにて発症したインスリン依存型糖尿病 (以下IDDM) に, インスリン持続皮下注入療法 (以下CSII) を施行中, 色素性痒疹を合併した症例を経験したので報告する.症例. 44歳男性. 糖尿病性ケトアシドーシスにて入院第3病日より, CSIIを開始した. 第5病日頃より, 著明な掻痒を伴う痒疹様発疹が出現, 血糖コントロールの増悪に伴い発疹も増悪し, CSIIを中断せざるを得なかった. 血糖コントロールの改善に伴い顔面及び四肢の痒疹は軽快した. 皮膚所見及び皮膚生検より色素性痒疹と診断した. 色素性痒疹は本邦において第1例が報告されて以来, 主として本邦で症例報告がなされているが, IDDMと合併した症例は国内外を通じ, いまだ報告をみず稀な症例と考えられた.
著者
坊内 良太郎 手納 信一 塚原 佐知栄 田中 伸枝 菅野 宙子 石井 晶子 中神 朋子 川島 眞 岩本 安彦
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.27-33, 2006 (Released:2008-07-24)
参考文献数
25
被引用文献数
1

後天性反応性穿孔性皮膚症(acquired reactive perforating collagenosis; ARPC)は皮膚表皮への変性膠原線維の排出を特徴とし,糖尿病や慢性腎不全に合併する稀な皮膚疾患である.われわれは血液透析導入後の1型糖尿病に本症を合併し,厳格な血糖コントロールとアロプリノール投与が奏効した症例を経験した.症例は26歳,女性.1986年(9歳)に1型糖尿病を発症.2001年頃から背部と両下肢伸側に〓痒感の強い丘疹が多数出現し,ARPCと診断された.ステロイドおよび抗ヒスタミン薬による局所治療を4年間受けていたが難治性であった.2002年4月慢性腎不全のため血液透析を導入,2004年3月膵腎移植登録目的で入院した.1,800kcal,蛋白40gの食事療法および強化インスリン療法を行い,アロプリノール100mgを開始したところ,約2週間で〓痒感が軽減し,2カ月後には皮疹も減少した.ARPCの発症機序は十分に解明されておらず難治性であることが多いが,本症例では血糖の厳重な管理に加えアロプリノールが奏効したと考えられた.