著者
高橋 ユリア 下村 道子 長野 美根 吉松 藤子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.111-120, 1990-02-20
被引用文献数
1

文献から抽出した郷土料理,行事食の煮物254種において,主な材料,調理終了時の煮汁の量,材料の種類の数,主な調味料,主な材料の状態およびだしの使用の有無について分類し,全国の各地域で作られている煮物の特徴を知ろうとした。分析には,数量化分析II類,III類およびクラスター分析を用いた。1.地域による煮物の特徴に,最も寄与しているのは主な材料で,クラスター〔北海道・東北,北陸〕,〔関東,関西〕,〔中国〕,〔四国〕,〔中部,九州〕,〔沖縄〕に類型化できた。〔北海道・東北,北陸〕では魚類が最も多く,ついで野菜類,エビ・カニ・イカ・貝類であり,これらが全材料の89%を占めていた。〔関東,関西〕では,魚類と野菜類が多く,次に豆類が多かった。〔中国〕では,魚類,野菜類,エビ・カニ・イカ・貝類に獣鳥肉類が加わっていた。〔四国〕では,野菜類が最も多く,ついでいも類,魚類であった。〔中部,九州〕では,魚類,獣鳥肉類が多く,野菜類が少なかった。〔沖縄〕では,獣鳥肉類が非常に多く,また海藻類,特に昆布の煮物が多かった。2.調理終了時の煮汁の多少によるクラスターは,〔北海道・東北,関西,関東,中国,九州,四国〕,〔北陸,沖縄〕,〔中部〕に類型化できた。〔北陸,沖縄〕では,煮汁のある鍋物類が少なかった。〔中部〕では,煮汁の少ない佃煮,甘露煮類が全国のなかでも最も多い地域であった。3.材料の種類の数では,クラスター〔北海道・東北,四国,中国,沖縄,九州〕,〔北陸,関東〕,〔中部〕,〔関西〕に類型化できた。〔中部〕,〔関西〕では,材料の数が少なく,これらの地域から南の方と北の方に向かって,いずれも材料の数は,増加する傾向であった。4.主な調味料については,各地域ともしょうゆで味つけした煮物が最も多かった。クラスターは〔北海道・東北,北陸,中部,九州〕,〔中国,沖縄〕,〔関東〕,〔関西,四国〕に類型化できた。〔北海道・東北,北陸,中部,九州〕と〔中国,沖縄〕はともにしょうゆの次にみその煮物の多い地域であるが,〔中国,沖縄〕の方が塩の煮物の割合が高い。〔関東〕,〔関西,四国〕は,みその煮物が非常に少ない地域である。〔関東〕はしょうゆの次に塩の煮物が多いが,〔関西,四国〕には塩の煮物はほとんどなかった。5.主な材料が加工食品か生鮮食品かの分類では,クラスター〔北海道・東北〕,〔北陸,関東,中部〕,〔関西,九州,中国,沖縄,四国〕の3つに類型化できた〔北海道・東北〕は加工食品の使用が最も多く,これより南の地域へ向かうにつれ,加工食品の使用が減少し,生鮮食品が増加する傾向であった。6.だしの使用の有無と地域との偏相関係数は非常に低かった。だしの使用の有無と主な材料との関連についての相関は高く,魚介類を使用した煮物では,だしを使用しない傾向であり,植物性の材料を使用した煮物ではだしを使用する傾向にあった。
著者
小川 宣子 田名部 尚子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.140-146, 1989-06-20
被引用文献数
1

卵を3℃と25℃に35日間保存し、1.5倍の希釈卵白を加熱して、その加熱卵白について弾性率、粘性率、応力緩和時間を調べた。3℃貯蔵の場合の弾力率(E_<M1>)は、11日目までは減少し、その後は一定であり、E_<M2>、E_<M3>は3℃貯蔵と25℃貯蔵のいずれの場合も4日目で急激に減少した。粘性率は、3℃貯蔵の方が25℃貯蔵の方に比べて高く、いずれの貯蔵温度の場合も、保存するにつれてしだいに小さくなり、η_<M3>は、4日目に急激に減少した。緩和時間は、貯蔵日数による影響はみられなかった。卵白ゲルの硬さ、弾性力の変化は、緩和曲線からの弾力率や粘性率の変化の時期よりやや遅れて、3℃に貯蔵した卵は21日目から急激に減少し、25℃に貯蔵した卵の場合は、14日目から変化がおこった。
著者
和辻 敏子 宮本 悌次郎
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.213-218, 1988-11-20

植物たん白に対するKFプロテアーゼの作用と、調理への応用を検討するために、プロテアーゼ処理した植物たん白からの遊離アミノ態窒素の定量、KF汁入りのクッキー、揚げボールと対照の官能検査、クッキーの硬さ、グルテンにプロテアーゼを作用させた場合のグルテン残存率の測定と、電気泳動等を行い以下の知見を得た。1.植物蛋白に対するプロテアーゼの作用は、KFでは木綿豆腐、高野豆腐、小麦粉に強く、きな粉に弱かった。パパインでは小麦粉に強く、きな粉に弱く、パンクレアチンでは、高野豆腐、豆乳に強く、うずまき麩、小麦粉に弱かった。2.調理へのKF利用として、KF汁入りクッキーは官能検査により、バター、卵が減量できると考えられた。又ドリュールなしでも良い焦げ色が付き、焼く時間も短く、歯ざわりの良いクッキーが出来たが、焼き上がりの形はシャープさに欠けていた。3.KF汁入りクッキーとコントロールのクッキーの硬さは、硬度計により有意水準0.5%でコントロールのクッキーが硬かった。4.揚げボールの官能検査結果からKF汁入り揚げボールは、BPを使用しなくても統計的に有意においしく、又さっくりとして、砕けやすかった。5.グルテンに対する作用をKF汁としょうが汁のプロテアーゼについて調べた結果、KF汁の方がしょうが汁よりも、グルテンに対する作用が強く、官能検査結果と一致した。6.電気泳動結果から、KFとグルテンとの反応〓液では、標準牛血清アルブミンの2量体付近及び標準アルドラーゼ付近にバンドが見られた。
著者
渋川 祥子 鈴木 咲枝
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.58-63, 1985-03-20

圧力鍋によってじゃがいもを加熱した時のいもの特性及び加熱条件等について, 同一条件のいもを圧力鍋と蒸器で比較, 検討した結果, 次のことが明らかになった。1. いもの中心部を刺して, ほぼ同様の硬さとなる加熱条件は, 約150gのいもについて蒸器では25分加熱, 圧力鍋では, 蒸らし時間5分とした時には, 蒸気噴出まで5分, 蒸気噴出後加熱継続3分の計13分であった。2. 中心部の硬さが蒸器, 圧力鍋ともほぼ同じになっても部位別の硬さには差があり, 圧力鍋では, はしの部分が過度に柔らかく, くずれやすかった。3. マッシュポテトにしてみると, 圧力鍋の方がねばりが強く, その加熱時間が少し長くなると, ねばりはより強くなった。4. つぶしたいもを水に懸濁すると, 溶出でんぷん量や水溶性ペクチン量は圧力鍋の方が多く, 顕微鏡観察でも細胞の崩壊が見られた。5. 加熱時のガス消費量及び調理時間とも, 圧力鍋では蒸器のほぼ1/2であった。
著者
春日 敦子 荻原 英子 青柳 康夫
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.329-336, 2007-10-20

低濃度の食塩水を用いた脱塩は"呼び塩"と言われ,多くの料理本では数の子の塩抜きに塩を用いることを薦めている。塩漬け数の子の脱塩中に,拡散による味成分の溶出のみが数の子の味に影響する要因であるのか,またどのような味成分が影響を及ぼされるかを明らかにするために,数の子を水と食塩水を用いて脱塩し,ナトリウム,カリウム,マグネシウム,遊離アミノ酸,5'-ヌクレオチドの分析を行った。ナトリウム,マグネシウムは,水よりも食塩水を用いた脱塩の方が溶出量は少なかったが,カリウムは食塩濃度とは関係がなかった。脱塩中に浸漬液中の遊離アミノ酸は時間と共に増加し,数の子中の遊離アミノ酸は減少した。水で15時間脱塩した時の,数の子と浸漬液中の総遊離アミノ酸含量の合計は,脱塩前の塩漬け数の子の総遊離アミノ酸含量より1.8倍多かったが,3%食塩水を用いて脱塩した時は全く増加していなかった。さらに,水で15時間脱塩した時の数の子中の総遊離アミノ酸含量は,3%食塩水を用いて脱塩したときより2倍多かった。これらの遊離アミノ酸の中では,味が苦いと言われる疎水性アミノ酸が70%占めていた。これらの結果は,遊離アミノ酸が水を用いた脱塩中にプロテアーゼによって生成されたことを示唆している。
著者
木村 友子 福谷 洋子 菅原 龍幸 佐々木 弘子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.24-31, 1995-02-20
被引用文献数
1 1

干し大根(割り干し)の迅速な水戻し法を見出す目的で, 超音波照射を取り入れた水戻しを行い, 水温5, 25及び40℃設定での好適条件を探索し, 更に煮物にした製品の理化学的性状と食味変化に及ぼす超音波照射の影響について検討し, 次の結果を得た。1) 干し大根は水戻し時間経過と共に吸水量が増加するが, 照射した方が短時間で膨潤し組織は速く軟化した。2) 水戻し時間が長くなると, 一般成分の全糖・遊離糖, 粗蛋白質, 遊離アミノ酸, 灰分, 無機質の含量は著しく減少する傾向を示したが, 超音波照射有無の差はわずかであった。3) 干し大根の水戻しの好適条件は水温25℃設定の15分照射と対照の照射なしの30分浸漬で, 両試料の一般成分値はほぼ同等値を示し, 無機成分の残存率もCa81%, Fe70%, Mg69%以上で良好であった。4) 煮物調理では照射した製品は照射なしの製品に比しテクスチャー特性の破断歪率が有意に大きく, 歯応えがあり, 調味液の浸透割合がやや高く, 干し大根の特有の臭気も多少緩和され, 食味評価も優れていた。以上の結果から, 干し大根の水戻し法に超音波照射を行うことは水戻し時間が短縮でき, 嗜好にも関与し効果的であると考えられた。
著者
高橋 ユリア 福田 真由美 下村 道子 吉松 藤子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.222-227, 1991-08-20
被引用文献数
2

新流通魚のテクスチャーを知ることにより,各々の魚に適した調理方法を探ることを目的とした。新流通魚13種と従来から日本人が食べている魚3種の魚肉について機器測定を行い,得られた測定値を多変量解析で分析し以下の結果を得た。1)カツオのテクスチャーに似ているものはチリマアジ,シマガツオ,アロツナスで,これらは加熱により身がしまり硬くなり,みずっぽさが少なくぱさぱさした口ざわりのものと考えられた。2)マアジのテクスチャーに似ているものはアカダラ,ホキ,ミナミダラ,オレンジラフィーで,これらは硬さ,口ざわりともにカツオとマコガレイの中間にあるものと考えられた。3)マコガレイのテクスチャーに似ているものはテラピア,ギンダラ,メルルーサでこれらの加熱魚肉は柔らかく,みずっぽく,ぱさぱさしていない口ざわりのものと考えられた。4)カツオ,マアジ,マコガレイのテクスチャーに該当しないものは3種あった。オキメダイ,シロサワラの加熱魚肉の硬さは,カツオとマアジの中間であるが,マコガレイよりもみずっぽく,ぱさぱさしていないものと考えられた。ギンブカの加熱魚肉は非常に軟らかくなるものと考えられた。5)魚肉のテクスチャーを知ることにより,各々に適した調理方法を推測できた。
著者
瀬戸 美江 澤田 崇子 遠藤 金次
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.219-224, 2003-08-20
被引用文献数
5

A comparison of the salt concentration in miso soup made by the families of female students in Nagasaki and Osaka showed that it was higher in Nagasaki (1.25%) than in Osaka (0.83%). This low salt concentration in Osaka is considered to be due to the quantity of miso used, being about half that used in Nagasaki, although the salt content of the powdered stock used in Osaka was higher than that used in Nagasaki. We next studied whether the use of more concentrated stock led to a lower salt concentration in miso soup or not. The salt concentration in miso soup decreased with increasing concentration of the stock, and it was reduced by 0.16% by preparing the stock with 2〜3%, rather than 0.5%, of dried bonito shavings. We found that miso soup with a salt concentration of 0.8〜1.0% could be prepared by extracting 1 cup of dried bonito shavings with 1 cup of water and dissolving 2 teaspoonfuls (10cc) of miso per person.
著者
高橋 真美 森高 初惠 池山 豊
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.302-309, 2006-10-20

アンケート結果から学年間において市販飲料水に対する意識の違いが異なることが判明した。官能評価の結果,どの学年においてもカルシウム,マグネシウム,ナトリウム,硫酸イオンなどの溶存物が低含量である国産市販飲料水の試料1,2が有意に好まれた(P<0.05)。試料1と試料2の水質の識別は,3,4年生では正解率が高く,1,2年生では低く得られ有意差が認められた(P<0.05)。試料1で抽出した水出し煎茶溶液が他の試料より有意に好まれた(P<0.05)。カリウム,重炭酸イオン,シリカ,硝酸イオンなどが高含量である試料3で1時間抽出した水出し煎茶溶液は3,4年生は1年生よりも有意に高く識別した(P<0.05)。
著者
山崎 小万 土屋 治美 朴 載玉
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.104-109, 1983-06-20

12種類のフランクフルトソーセージのテクスチャーを知る目的で,テクスチュロメーターを用い,硬さ・もろさ・剪断力・弾力性の一部である腰の強さを測定し,併せて官能検査を実施し,次のような結果が得られた。1)機器測定による硬さと官能検査による硬さの評点との間に,高い相関が得られた。 2)機器測定による剪断力と官能検査による硬さの評点との間にも高い相関が得られた。3)好まれたソーセージの硬さは,2〜2.5kg T.U.・剪断力は1〜1.5kg T.U.・弾力性の一部である腰の強さは,3.3〜4.0であった。
著者
和田淑子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.88-98, 1978
被引用文献数
4

マルチトールを主成分としたマルチットシラップを蔗糖のかわりに用いて,スポンジケーキ,エンゼルケーキを試作し,次の結果を得た。(1)マルチットシラップの甘味度はグラニュー糖100に対し45.5である。したがって蔗糖とほぼ同甘味とするには,蔗糖の2.2倍量用いるとよい。(2)スポンジケーキにおいて,蔗糖の30%,50%を固形物換算で同量のマルチットでおきかえ,いずれも生地水分量が同一となるよう加水量で調節したケーキを比較すると,マルチット添加ケーキは蔗糖ケーキに比べ,甘味は若干劣るがスポンジ生地がやわらかく,口あたりが良好となる。(3)マルチットスポンジケーキの良好な材料配合比は,小麦粉:卵:マルチットが30:35:56,または35:30:56である。このケーキのカロリーは蔗糖で良好な配合比をもつケーキカロリーにくらべ45%前後のカロリー低下となる。(4)マルチットエンゼルケーキの最も良好な材料配合比は卵白100,小麦粉50,マルチット132である。このケーキのカロリーは蔗糖で良好な配合比をもつケーキカロリーにくらべ50%程度のカロリー低下となる。(5)卵白の起泡性におよぼすマルチトールの影響を検討するため,卵白アルブミン溶液に蔗糖,マルチトール,マルトースをそれぞれ30%および80%添加して攪拌し,得られる泡の性状を比較した。攪拌温度30℃の場合,マルチトール添加は蔗糖よりも良好な起泡力を示した。また泡の安定度も高く,かたくてこしのある泡が得られる。終りに本研究につき御指導いただきました大妻女子大学教授山崎清子先生,国立栄養研究所応用食品室長高居百合子先生に厚く御礼申し上げます。また本稿をまとめるに当り,御助言を賜わりました国立栄養研究所応用食品部長岩尾裕之先生に深謝いたします。
著者
坂元 明子 山本 信子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.130-135, 1998-05-20
被引用文献数
1

毎年授業開始時に, 5味識別テストを行って来たが, 最近正解率に低下傾向がみられるため, '93年から'96年の4年間における結果を比較し, 学生の味の識別能力を検討したところ, 以下のことが明らかとなった。1) 6試料を識別出来た者, 即ち6点正解率は'93年では, 40%であったが, '96年には, 26%と低下し, '93年を100とすると'96年は65%にすぎなかった。4点正解率は, 6点正解率に次いで高く, 年度による差はなかった。しかし, 3点以下は'93年では全体の30%以下と少ないのに対し, '96年では47%と高く, 年度とともに増加する傾向であった。6試料の識別能力の低下傾向が認められた。2) 6点満点の正解率と有意な正の相関を示した単一味正解率は, 甘味, 無味, 酸味であり, うま味も有意ではないが, 同様の傾向であると考えられた。3) 6試料のうち, 甘味, 塩味, 苦味では正解率が高く, 年度間の差は少なかった。一方, 酸味, うま味, 無味の正解率は低く, 年度と共に低下した。うま味正解率低下に対しては, 酸味誤答率が, 有意な上昇を示し, 次いで酸味正解率低下に対しては, 無味誤答率が, 無味正解率低下に対しては, うま味誤答率が, それぞれ上昇傾向を示した。以上の結果より, 酸味, うま味及び無味, の3者間相互の, 識別が困難なために誤答率が高くなり, 成績低下に結びつくものと判断された。
著者
高橋 史人 山口 和子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.259-268, 1985-12-20
被引用文献数
10

本報においては, 1, 2節において年齢階層と嗜好の関係を論じ, その中で加齢と共に嗜好が変わる中で, 嗜好の分岐年齢が存在することを示した。即ち, (1) 10代は「洋風」「こってり」「甘味」好き, そして, 「和風」「スパイス」「アルコール」嫌いである。20代は「和風」嫌いを除けば, 他は全て好きである。この年代の嗜好の幅が一番広いといえる。30代は「こってり」「酸味」「スパイス」「アルコール」好きであるが, 10代, 20代で好まれた「甘味」が嫌いとなり, 次の40代が「和風」好みになる間隙に位置している。40代は「和風」好き, 「洋風」嫌いといった嗜好の変化が顕著に現われ, 次の50代, 60代に近い嗜好になる。50代, 60代は「和風」好みの点を除くと他の嗜好因子が全て嫌いとなる。(2) 食品に対して「好む」「好まない」の関係から嗜好の分岐年齢を検討した。嗜好の分岐年齢は「好まない」から「好む」に変化する際と, 「好む」から「好まない」に変化する際の2つ存在する。前者は20代から30代の間に多く存在し, 後者は30代から40代の間に多く存在する。そして, これらの分岐年齢に最も大きく関係するものとして, 前者においては, 和風因子を構成する食品, 及び, 和風イメージの強い食品, 後者においては, 洋風因子を構成する食品, 及び, 洋風イメージの強い食品をあげることができる。次に, 3, 4節においては地域と嗜好の関係を論じ, 嗜好因子からみた地域の特徴を捉え, 又, 嗜好因子を構成する42食品の地域間の「好む」「好まない」の関係から地域間の嗜好の類似を捉えた。即ち, (3) 北海道は「アルコール」好き, 東北は「アルコール」「酸味」好き, 関東は「洋風」「スパイス」好き, 北陸は「洋風」「スパイス」嫌い, 東海は「洋風」「スパイス」「こってり」のいずれも嫌いな地域, 近畿は「甘味」「スパイス」好きであり, 中国・四国は「洋風」「甘味」「スパイス」「アルコール」と嫌いなものの多い地域である。興味のある点としては, 地域では「好き」で特徴を示す北海道, 東北, 関東, 近畿と, 「嫌い」で特徴を示す北陸, 東海, 中国・四国とに2分されたことである。このことは, 筆者らが前報において, 地域別の好みの偏り度から, 関東は積極的な好み傾向をもつ地域, 北陸, 中国・四国は好きな食品が少なく, 嫌いな食品の多い比較的保守的な好み傾向をもつ地域, と述べたことに当然一致し, その内容を嗜好因子から捉えたことになる。(4) 地域間の嗜好の類似性を見るために, 2地域間共, 全国平均に比較して「好む」又は, 「好まない」とされた食品の数を算出し, その数の多い地域を嗜好の似ている地域, 数の少ない地域を嗜好の似ていない地域とした。嗜好の似ている地域として, 北海道-東北, 北陸-東海があげられた。嗜好の似ていない地域としては東北-東海, 関東-東海, 関東-中国・四国があげられた。
著者
浅川具美
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.57-61, 1983
被引用文献数
1

1.市販の削り節は購入時から酸化が相当進んでおり,PVはかつお節41,さば節62,いわし節88を示した。保存条件により酸化速度も異なり,冷蔵庫で保存した場合が一番遅く,室温や37℃で保存すると1ヵ月もたつと約2倍近く進んだ。2.脂質の酸化に伴って,煮出汁中の総窒素量は減少し,濁度や色度も増加する。酸度およびTBA値も高くなり,煮出汁中にも脂質の酸化2次生成物が抽出されるようである。3.官能検査の結果,酸化した削り節を使って煮出汁を取った場合,煮出汁の風味は明らかに低下することがわかった。冷蔵庫に保存した場合は比較的影響も少なく,37℃に保存すると1%危険率で有意差が認められた。市販の削り節を買っておいしい煮出汁を取る場合は,新鮮なものを買って出来るだけ早く使い切ってしまうこと,保存する場合には必ず冷蔵庫におくことが肝心のようである。
著者
堀江 秀樹 平本 理恵
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.194-197, 2009-06-20
被引用文献数
1

野菜の消費拡大のためには,おいしく味わう工夫が重要である。予備試験の結果ニンジンを蒸し加熱することで甘味が増強する可能性が示された。そこで,蒸し時間を変えたニンジン片について,官能評価と理化学評価を行った。蒸し時間が増すにつれて,官能的には,軟らかさ,ジューシーさと甘味が増加した。蒸すことによる甘味は糖含量によって説明できなかった。それはニンジン片中の糖含量は蒸し加熱によって変化しないからである。30秒間一定の低圧で加圧したときに蒸したニンジン片から滲出するエキスの量を比較した。より長時間蒸したニンジン片から,より多量のエキスが集められた。エキス中の糖類の濃度は約10%であった。容易に滲出するエキスの量が感覚的な甘さやジューシーさに関係するものと考えられる。
著者
大家 千恵子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.15-23, 1998-02-20
参考文献数
5
被引用文献数
2

日本料理, 西洋料理, 中国料理の概念イメージについて, SD法と因子分析法をもとに考察した結果は次のようになった。(1) 日本料理の概念イメージの基本的因子として「品質性と親近感」「嗜好性」「重厚感」「郷愁感」「性別と甘味性」, 西洋料理は「品質性と親近感」「重厚感と味覚」「明るさと爽快感」「甘味性」「センス」のそれぞれ5因子が抽出された。中国料理の基本的因子は「品質性」「嗜好性」「重厚感」「郷愁感」の4因子が抽出された。また, 日本, 西洋, 中国料理を合わせた基本的因子は「品質性」「嗜好性」「重厚感と温涼感」「郷愁感」「性別と甘味性」の5因子が抽出された。(2) 日本料理・西洋料理・中国料理および日本・西洋・中国料理の合わせたそれぞれの基本的因子に対して, 各日本・西洋・中国料理がどのような関係にあるかが明らかになり, 日本料理・西洋料理・中国料理の類別が可能である。
著者
米田 千恵 笠松 千夏 村上 知子 香西 みどり 畑江 敬子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.339-345, 2012-10-05
参考文献数
25

北海道厚岸産シングルシード方式による養殖マガキ成分の季節変化について調べた。産卵期後の2004年8月および2005年9月の試料は軟体部重量ならびに軟体指数ともに最低となった。タンパク質は産卵期前後の試料で最高になった。グリコーゲンは産卵期前後の試料で10%以下(乾重量換算)であったが,秋から春にかけては20%以上となった。ATPおよび関連化合物の総量は,11月に最高となり9月に最低となった。遊離アミノ酸総量は,6月に最高となり,9月に最低となった。主要なアミノ酸はタウリンが最も多く,次いでアラニン,プロリン,グリシン,グルタミン酸の含量が高かった。9月および11月のマガキから調製したエキスの官能検査の結果,11月のエキスは,まろやかさが強く,苦味が弱いことが示された。