著者
松田 晧 山田 知代子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.241-244, 1965-09-30 (Released:2010-03-26)
参考文献数
5

ゼラチンは, 動物の皮および骨の結合組織の重要成分であるコラーゲンから非可逆的加水分解過程により作られるタンパク質である。ゼラチンに深く接したことのない人の中にはゼラチンを一定の組成, 単一な性質を有するタンパク質と考えている人が多いが, 実際に食品に用いられているゼラチンは, 上記の実験結果より明らかなように化学組成は一定せず, また物理的性質も一様でない。温湯に溶解したとき, 無臭で透明度のよいゼラチンは, 粘度, ゼリー強度とも概してよいが, 水分, 灰分が少なくタンパク質含量が多いとはいえない。ただ一般に物理的性質の中ではゼリー強度, 化学組成の中では灰分含量が品質を示す目安になるといえる。pHの影響は, 粘度とゼリー強度とで多少異なり, 粘度はpH 4.7より7の間, ゼリー強度はpH 6より8の間において最も高い。フルーツゼリーなどのように酸性域でゼラチンを使用することが多いが, 酸度が強まると粘度もゼリー強度も急速に低下する点は特に注意を要することである。
著者
一色 賢司 桃園 裕子 衛藤 修一 津村 周作
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.481-486, 1988-12-10 (Released:2010-03-01)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

縮合リン酸塩類の摂取原因となる食品を明らかにするために, まず分析法を迅速簡易化した。すなわち均質化した試料5.00gを遠心管に秤り入れ, あらかじめ氷冷した10%トリクロロ酢酸35mlを加えて3分間振とう抽出した。必要に応じて遠心分離を行い, 上清を綿栓ろ過してろ液を50ml容メスフラスコに集めた。1試料につき2本のイオン交換樹脂カラムを用いて, リン酸塩類の定性試験と分画を行った。オルトリン酸 (OP) は, モリブデン錯体として酢酸ブチルで抽出し, 310nmの吸光度を測定して定量した。各縮合リン酸塩 (CP) 分画は, 加水分解後, 発色させ830nmの吸光度を測定して定量した。OPは, 全試料から検出された。各種のCPが, いも類豆類加工品, 肉類・魚介類加工品, 油脂類・乳類加工品およびその他の加工食品等から検出され, これらの食品がCPのおもな摂取原因食品であると推定された。
著者
原田 理恵 田口 靖希 浦島 浩司 佐藤 三佳子 大森 丘 森松 文毅
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.73-78, 2002-04-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
22
被引用文献数
12 16

トリ胸肉より, ヒスチジン含有ジペプチドであるアンセリン・カルノシンを豊富に含むチキンエキスを調製し, マウスに投与した場合の体内動態および運動能力への影響について検討した。チキンエキスをマウスに経口投与すると, アンセリン・カルノシンは分解されずにジペプチドのまま吸収されて血流に乗り, その血中濃度は投与約30分後に最大に達した。また, チキンエキスを10% (固形分換算) 配合した飼料を継続投与することにより, 大腿四頭筋内にアンセリン・カルノシンの有意な濃度増加がみられた。このチキンエキスを投与したマウスは, 投与開始6日目以降, 速い水流 (10L/min) のあるプールにおける疲労困憊までの遊泳持久時間が対照群に比べて有意に向上していた。この持久運動能力向上効果の一因として, チキンエキスの経口摂取により, 生体緩衝能力をもつアンセリン・カルノシンが血流を介して骨格筋内に蓄積されることによって, 骨格筋内の緩衝能が高まったことが推察された。
著者
谷口 歩美 武智 隆祐 福嶋 厚 渡邊 敏明
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.27-37, 2008 (Released:2008-12-19)
参考文献数
18
被引用文献数
4 2

ビオチンは,種々の食品に広く分布している。しかし,ビオチンは五訂日本食品標準成分表には収載されておらず,食品中の含量をはじめとして,食品中での存在状態,調理や加工による変化,生体内での利用率などについて,ほとんど明らかにされていない。そこで,日常的に摂取している食品から代表的な330品目のビオチン含量を分析し,諸外国の食品中のビオチン量と比較した。今回,ビオチン分析を行った食品の中では,らっかせい,とうがらし,ぶた肝臓,にわとり肝臓,卵黄(生),インスタントコーヒー(粉末状),パン酵母(乾燥),ローヤルゼリーで50 μg/100 g以上の高値であった。また,食品群ごとでは,種実類やきのこ類,肉類(内臓を含む)で,ビオチン含量は高値であり,果実類や油脂類などにはビオチンは,ほとんど含まれていなかった。食品中のビオチン含量は,食品の種類や状態によって差異がみられたが,諸国間においても類似した結果が得られている。
著者
山田 幸二 中村 延生蔵
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:00215376)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.466-471, 1972
被引用文献数
2

白ネズミに野沢菜漬, タカ菜漬を投与し食飼性の光過敏症について検討した。<BR>(1) 野沢菜漬, タカ菜漬を投与しTL, FLを照射すると死亡, 体重減少, 耳や背の部分の壊死の現象, すなわち光過敏症がみられた。<BR>(2) 漬物から分離した光過敏症原因物質の投与による生物試験の結果は, 経口投与で10mg/体重100g以上, 腹腔内投与で5mg/体重100g以上で致死効果がみられた。<BR>光過敏症原因物質はPC, 吸収スペクトル等からヘオホーバイドaと推定した。
著者
田原 モト子 岸田 恵津 三崎 旭
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.111-118, 2000-06-10
参考文献数
28
被引用文献数
1

北アメリカ原産のイネ科マコモ属の単子葉植物, ワイルドライス (<i>Zizania palustris</i>) は, その独特の風味が好まれている。我々はその特異なテクスチャーに関連する成分としてデンプンおよび細胞壁多糖に着目し, ワイルドライス製品の多糖成分の分画を行い, 特にデンプンの性状を調べた。<br>1) ワイルドライス粉末からアルカリ浸漬法によりデンプンを分離し, この上清からエタノール沈澱により水溶性多糖を分離した。ふるい上の残渣を脱脂・除タンパク後再度デンプンを分別し, 不溶性残渣から細胞壁標品を得た。<br>2) ワイルドライスからのデンプンの収量は30.5%であり, ウルチ米の半分以下であった。ワイルドライスの細胞壁標品の収量 (3.54%) は, ウルチ米 (0.12%), モチ米 (0.3%) と比較すると, 細胞壁の含量が著しく高いことを示唆している。<br>3) デンプン画分の走査電子顕微鏡写真から, ワイルドライスのデンプン粒の形はウルチ米と類似の多面体で, サイズはやや小さく, 1.5-6μm程度の粒径であった。細胞壁標品の走査電子顕微鏡像から, ワイルドライスの細胞壁はウルチ米に比し相当厚く強固な様子が観察された。<br>4) デンプンをイソアミラーゼおよびプルラナーゼで完全に分枝切断し, ゲルろ過により鎖長分布を調べた結果, ワイルドライスのFr. I (アミロース) の比率は23.8%で, ウルチ米よりかなり高かつた。一方, Fr. III (アミロペクチンの短鎖長, DP 10-30) とFr. II (長鎖長, DP 30-60) の比は3.5で, ウルチ米 (2.6) よりも大きかった。<br>5) 上記の枝切りデンプンの精密鎖長分布を, 陰イオン交換高速液体クロマトグラフィーにより解析した結果, 短鎖部分の鎖長分布はワイルドライスでは11糖が最多で, またウルチ米, モチ米と比べて10-14糖部分の含量 (モル%) が高く, アミロペクチンの微細構造も米とは異なることが示唆された。
著者
北川 雪恵
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.139-143, 1973

前報に続いて果菜類のトマト, ピーマン (ナス科), イチゴ (バラ科) を用いて生育時期別, 上下部位別, 組織別のV. C量の変化について観察した。<BR>1) トマトの果実の生育に伴うV. C量 (mg%) の変化は総C, 還元型Cでは生育につれて増加し, いわゆる収穫期に最高になるが, 完熟期には逆に減少した。 細かく上下部位別の差異を果肉部でみると, 全期間を通じて基部に最も多く, 先端部がこれにつぎ, 中部が最も少なかった。 また組織別では全期を通じて胎座・種子部が果肉部より多く, とくに種子を含むゼリー状部に多かった。<BR>なお, 酸化型Cについては未熟期ほど多く, 生育につれて減少したが, 部位別, 組織別には総Cとほぼ同様の傾向がみられた。<BR>2) ピーマンの果実の生育に伴うV. C量 (mg%) の変化は総C, 還元型Cでは生育につれて漸増し, とくに完熟期に著しい。 上下部位別の差異を果肉部についてみると, 幼果期には中部に多いが, 収穫期以後は果頂部に最も多かった。 組織別にみると, 全期間を通じて果肉部にとくに多く種子部, 胎座部には少なかった。 また果肉部, 胎座部は完熟期に著しく増加するが, 種子部では反対に減少した。<BR>なお, 酸化型Cについては幼果期に多く, 収穫期にやや減少するが過熟期になると再び増加した。また果肉部よりは種子と胎座部に多かった。<BR>3) 可食適期のイチゴの場合を上下部位別にみると総C, 還元型Cは果頂部に近いほど多く含まれ基部に最も少なかった。また組織別では皮部にとくに著しく, ついで果肉部に多く含まれ芯部は最も少なかった。<BR>酸化型Cについても総Cの場合と同様の傾向が認められた。
著者
高畑 尚之 颯田 葉子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.131-135, 2007-06-10 (Released:2009-01-30)
参考文献数
14

アミノ酸の合成や代謝に関与する遺伝子は, 生物の食性や生息環境を反映して進化というより退化してきた。動物における必須アミノ酸の種特異性は小さく, 基本的なセットは動物の起源とともに決定されたと思われる。必須アミノ酸の出現は, 環境との関係で冗長となった遺伝子が退化した結果である。遺伝子退化の好例として, 宿主 (アリマキ) と共生細菌 (ブフネラ) の間にみられる相補的な必須アミノ酸の関係を概観する。また, 神経伝達物質や味覚刺激としてのアミノ酸に関わる酵素や受容体分子の進化学的特徴を述べ, ヒトの進化との関わりを論じる。
著者
下田 真利子 香川 芳子 西村 薫
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.385-389, 1973-12-29 (Released:2009-11-16)
参考文献数
17

Measurement of body fat contents is essential for a judgement of obesity, which is defined as an abnormal increase of the fat content in the body. The fat content estimated from skinfold thickness was compared with the value calculated from the whole body potassium content which was obtained by the counting of whole-body radioactivity. The obese and non-obese women were chosen as subjects for this study. It became clear that the fat value estimated from the potassium content is higher than from the skinfold thickness. The relation between two calculated values were investigated by regression lines. It was obvious that the regression line of obese woman group vary with age, but not of nonobese group.
著者
田中 一成 西園 祥子 加瀬 綾子 巨椋 澄子 栗田 翠 村上 智子 久木野 憲司 松本 仁 池田 郁男
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.175-179, 2003-06-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
21
被引用文献数
9 10

一般に食用とされていないクロナマコの有効利用を図ることを目的として, クロナマコ摂取がラットの脂質代謝に及ぼす影響を検討した。生のクロナマコの可食部をフードカッターで粉砕し, 凍結乾燥後粉末状にしたものを試料としてラットの餌を調製した。タンパク質レベルを20%とし, クロナマコを用いた食餌ではタンパク質源としてカゼインとクロナマコを窒素含量で3:1の割合にした。対照として, タンパク質源にカゼインのみを用いたコントロール群を設けた。コレステロール (Chol) を0.2%添加したこれら飼料をSD系雄ラットに4週間自由摂食させた。クロナマコは血清および肝臓Chol濃度をコントロール群より有意に低下させ, HDL-Chol/総Chol比を上昇させた。クロナマコ摂取ラットで糞中への中性および酸性ステロイド排泄は促進した。これらの結果より, クロナマコは糞中へのステロイド排泄促進によりChol低下作用を発現することが明らかとなった。
著者
小西 良昌 吉田 精作
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.375-380, 1987

有機リン農薬のマラチオンとフェニトロチオンの1日摂取量について; 30歳代の女性6名の1週間の全食事陰膳法により採取し測定した。マラチオンの検出率は26.2%, 1日摂取量は最大値7.72μg, 平均値0.88μgであった。フェニトロチオンの検出率は21.4%, 1日摂取量は最大値3.89μg, 平均値0.47μgであった。<BR>小学校給食からのマラチオンとフェニトロチオンの摂取量を23日間にわたって測定した。マラチオンの検出率は73.9%, 摂取量は最大値3.58μg, 平均値1.11μgであった。フェニトロチオンの検出率は47.8%, 摂取量は最大値2.92μg, 平均値0.51μgであった。<BR>マラチオンとフェニトロチオンの汚染源は, 小麦粉であり, 陰膳においてマラチオン, フェニトロチオン摂取量の多い日には, お好み焼き, うどん, マカロニグラタン, フライ, 天ぶら等小麦粉を多く喫食していた。小学校給食において, パン食の日からはつねにマラチオン, フェニトロチオンが検出されたのに対し, 米飯食8回のうち6回はどちらも検出されなかった。また, マラチオン, フェニトロチオンの高かった日にはパンの他にも小麦製品を喫食していた。<BR>玄小麦, 小麦粉, 小麦製品について実態調査を行ったところ, 輸入 (アフリカ産) 玄小麦4検体からは, マラチオンとフェニトロチオンの両方が検出された。小麦粉をはじめ, 麺類, ビスケット等の小麦製品にも汚染がおよんでいることがわかった。
著者
坂本 秀樹 森 啓信 小嶋 文博 石黒 幸雄 有元 祥三 今江 祐美子 難波 経篤 小川 睦美 福場 博保
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.93-99, 1994
被引用文献数
1 23

トマトジュースの連続飲用による血清中のカロテノイドの濃度の変化を調べた。また同時に飲用による血清中のコレステロール濃度の変化も調べた。65名の被験者を1日1本, 2本, 3本のトマトジュース飲用区と対照のリンゴジュース1本の飲用区の4区分に分け, 連続4週間の摂取を行った。<BR>1) リコペン濃度は飲用本数の増加に従い有意に増加し, 2本以上の区分では飲用後の飲用前に対する血清中濃度は3倍以上となった。<BR>2) β-カロテンは, トマトジュース中の含有量はリコペン量の約1/30であるにもかかわらず, 血清中において有意な増加を示し, 3本の区分では飲用後の飲用前に対する血清中濃度は約2倍近くとなった。<BR>以上の結果より, トマトジュースの飲用は血清中のリコペンとβ-カロテンの濃度上昇に有効であることが明らかとなった。<BR>3) トマトジュース中のリコペンはall-<I>trans</I>型がほとんどであるのに対して, 飲用後の血清中ではcis型の増加も見られたことから, 体内ではリコペンの異性化起きていることが示唆された。<BR>4) いずれの試験区においても, 血清中のLDL-コステロールをはじめとする脂質の増加は見られず, トマトジュースの飲用によるカロテノイドの血清中の濃度上昇は, 血清脂質濃度の上昇を促さないと考えられた。
著者
石井 智美 小長谷 有紀
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.281-285, 2002-10-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
7
被引用文献数
7 13

馬乳酒 (kumiss) は, モンゴル国の遊牧民の間で長い間大切にされてきた飲みもので, 乳酸菌と酵母によってウマの生乳を発酵させてつくられる伝統的な飲料である。遊牧民の成人男子においては夏季に毎日3Lの馬乳酒が飲まれていた。食生活において馬乳酒が, エネルギー摂取量に示す割合を調べた。調査世帯では, 成人男子における1日のエネルギー摂取量のうち, 約50%を馬乳酒によって摂っていることが明らかになった。さらに調査の結果, 1999年の旱魃, 2000年, 2001年の雪害によって, 多くの家畜が死んだ。このことで夏季に新鮮な乳製品が摂れなくなっていた。馬乳酒は遊牧民のエネルギー摂取に大きな役割を持っている。伝統的な発酵乳製品が摂取できなくなることによって, 食生活が変化すると, 遊牧民の食形態と健康に大きな影響をもたらすものと考える。
著者
佐藤 伸一 井本 精一 小島 正明 神 勝紀 唐澤 豊
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.227-233, 1994-06-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
19

10および20%寒天飼料と20%セルロース飼料をラットに3カ月間自由摂取させ, 食品としての寒天の栄養生理効果を検討し, 以下の結果を得た。1) 10および20%寒天群で飼料摂取量の増加がみられたが (10%p<0.05, 20%p<0.01), 飼料効率およびエネルギー消化率には低下がみられ (10%p<0.05, 20%p<0.01), 20%寒天群では体重増加に抑制傾向が認められた。また, 20%寒天群では摂水量の増加が認められた (p<0.01)。2) 10および20%寒天群で盲腸を除く全腸管の湿重量に増加傾向が認められた。3) 10および20%寒天群で排糞重量に増加がみられ (p<0.01), とくに20%寒天群では顕著であった。また, 10および20%寒天群では盲腸内のアンモニア濃度に減少が認められた (10%p<0.05, 20%p<0.01)。4) 20%寒天群で血漿中のグルコースおよび尿素窒素に減少がみられ (p<0.05), 中性脂肪にも減少傾向が認められた。5) 動物の外観, 行動および呼吸などの一般状態, 血液学的検査, 盲腸内容物のpH, 揮発性脂肪酸濃度および腸内細菌叢, 腸管の長さ, 解剖ならびに肝臓, 腎臓, 食道, 胃, 十二指腸, 空腸, 回腸, 盲腸, 結腸および直腸の病理組織学的検査には寒天の影響は認められなかった。6) 20%セルロース群では, 以上の点について20%寒天群とほぼ同様の変化がみられたが, 摂水量, アンモニア濃度, 尿素窒素には変化は認められず, 排糞重量の増加も20%寒天群ほど顕著ではなかった。
著者
中村 美知子 緒方 順子 吉植 庄平
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.78-81, 1992-02-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
14

MM, MLおよびCRF患者の血漿中NEAAは健常者の値に比べ高値である。しかし, MMおよびML患者のEAA値は健常者と類似し, CRF患者のEAAは著しく低値であるために, 3疾患患者のE/N比は健常者の値と比べ有意に低値である。健常者のFischcr比は高値, ついでCRF患者, ML患者, MM患者の順であり, MMおよびML患者のFischer比は低値で健常者の値と有意差を示している。栄養状態の改善策として, CRF患者は必須アミノ酸摂取量を増加してE/N比を, MMおよびML患者は分枝鎖アミノ酸の摂取量を増加してFischer比の改善をはかる必要が示唆された。
著者
中原 経子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.36-38, 1974-02-28 (Released:2010-02-22)
参考文献数
2
被引用文献数
1 1

1) 緑茶中の蓚酸含量をBergermanとElliotのインドール比色法により測定した。その結果可溶性蓚酸を多く含むものは玉露, 粉茶, 芽茶であり, 次に抹茶, 煎茶, くき茶にも多く, 番茶は少なく玉露の1/2, ほうじ茶はさらに少なく玉露の約1/5であった。2) 緑茶浸出液中の蓚酸含量は, 3gの葉に100℃, 180mlの蒸留水を加えて1分間浸出したが, その結果, 粉茶, 抹茶はとくに多く, 100ml中17mg前後, 玉露では8.5mg煎茶は4.7mgであった。これも番茶, ほうじ茶が少なく, 蓚酸の点からは番茶やほうじ茶をのむほうが好ましい。しかし煎茶でも180mlを茶わん1杯として約8.5mgの蓚酸であり, とくに多く摂取しなければ心配するほどの量ではないものと思われる。3) 浸出時間による蓚酸の溶出量では初めの5分に7.7mgでこれは15分の約73%であった。4) 浸出回数による蓚酸の溶出量では, 初めの2回に合わせて全溶出量の76%と多くが溶出された。5) 浸出温度による蓚酸の溶出量では, 80℃において100℃の場合の81%が溶出された。
著者
木村 善行 奥田 拓道 毛利 和子 奥田 拓男 有地 滋
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.223-232, 1984-06-12 (Released:2010-02-22)
参考文献数
13
被引用文献数
6 7

1) コーンオイルに酸素を注入しながら180℃, 1時間加温して過酸化させた後, ラットに強制的に1週間経口投与すると血清中のGOT, GPT中性脂肪の遊離脂肪酸および過酸化脂質の上昇, 肝臓中の総コレステロール, 中性脂肪および過酸化脂質の蓄積が認められた。2) 過酸化コーンオイルとともに緑茶の各分画エキスを日常摂取量の約10~20倍量投与した場合, 体重の増減は見られず, 血清中のGPT, 遊離脂肪酸および過酸化脂質の上昇が軽度抑制され, 肝臓中の中性脂肪の蓄積も軽度抑制された。血清中の総コレステロール, 中性脂肪, 動脈硬化指数, GOTおよび肝臓中の総コレステロール, 過酸化脂質については過酸化コーンオイル投与群に比較して有意な差は認められなかった。3) 過酸化コーンオイル投与ラットにウーロン茶の各分画エキスを日常摂取量の約10~20倍量投与すると, 体重には変化はなく, 血清中の遊離脂肪酸および中性脂肪の上昇が軽度抑制され, 肝臓中の総コレステロールおよび過酸化脂質の蓄積が軽度抑制された。血清中の高比重リポタンパクコレステロール, 過酸化脂質, GOT, GPTおよび肝臓中の中性脂肪については過酸化コーンオイル投与群と比較して有意な差は認められなかった。4) 過酸化コーンオイル投与ラットに紅茶の各分画エキスを日常摂取量の約10~20倍量投与すると, 体重の変化は認められず, 血清中の遊離脂肪酸および過酸化脂質の上昇が軽度抑制された。血清中の高比重リポタンパクコレステロール, 総コレステロール, 中性脂肪, GPTおよび肝臓中の過酸化脂質については過酸化コーンオイル投与群に比較して有意な差は認められなかった。
著者
寺崎 衛 藤田 栄一郎 和田 正三 竹本 常松 中島 正 横部 哲朗
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.172-175, 1965-09-30 (Released:2010-02-22)
参考文献数
7

It was reported previously that tricholomic acid and ibotenic acid (new flycidal amino acids isolated from Tricholoma muscarium KAWAMURA and Amanita strobiliformis (Paul) Quel, respectively) have a very good taste.The characteristics of the taste were examined in details, and the followings were observed:1. Taste potency of the new amino acids are much stronger than that of sodium inosinate and sodium glutamate.2. There are synergistic actions between new amino acids and 5′-ribonucleotides.3. DL-erythro-tricholomic acid (synthesized) has an extremely strong delicious taste, but its threo isomer has not.