著者
松本 美佐子 瀬谷 司
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

エンドソームに局在するToll-like receptor 3(TLR3)はウイルス由来の二重鎖RNA(dsRNA)を認識し、タイプI インターフェロンや炎症性サイトカイン産生の誘導、樹状細胞の成熟化を介して抗ウイルス応答を誘起する。しかしながら、どのように細胞外dsRNAをエンドソームで認識するか不明である。本研究では合成dsRNAのpoly(I:C)によるTLR3活性化機構を解析し、poly(I:C)の取り込みとエンドソームTLR3への配送に細胞質タンパクRaftlinが必須であること、RaftlinはクラスリンーAP-2複合体と協調してdsRNAの取り込みに働くことを明らかにした。
著者
山下 幹雄 森田 隆二 勝呂 彰
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

10^<-15>秒域の光電場波束の発生・計測・制御を中心に研究を行った。その結果、自己位相変調(SPM)法により、可視域で世界最短のフーリエ変換限界単一パルス2.8fs・1.5サイクル光の発生に成功した。さらに、独自な誘起位相変調 (IPM) 法により、2.6 fs・1.3サイクル・1.4 GW光の発生に成功した。また、搬送波・包絡波位相 (CEP) を安定化したl kHz繰り返しの、3.3 fs・1.7サイクル光電場波束発生に成功した。加えて、フォトニッククリスタルファイバー (PCF) 法を用いた光パルス圧縮法としては、最短のサブ5 fsの光パルス発生が可能であることを実証した。これらは、一オクターブを越える帯域を有しかつ準実時間動作する、独自な自律型フィードバックチャープ補償システム(スペクトル位相を操作する空間位相変調器(SLM)+4f光学配置、スペクトル位相信号を高感度測定をするM-SPIDER、作成したプログラムによるスペクトル位相解析とSLM駆動のための計算機から成っている)の構築により可能となった。また、スペクトル位相解析にウェーブレット変換法を用いることにより、フィードバック補償の自動化と高精度スペクトル位相解析が可能であることを示した。さらにこのシステムの帯域を、紫外にまで拡げるため、新しい液晶を用いた空間光変調(SLM)素子を試作し、その位相変調特性の詳細な解明と有用性を確認した。一方、10^<-15>秒光電場波束の石英ファイバー非線形伝播について包絡波近似などのない厳密な非線形波動方程式を数値解析した。その結果、入射光CEPに著しく依存する第3高調波発生が見いだされた。これは、簡便なCEP計測法として利用できる現象である。
著者
佐治 健太郎
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

この研究により得られた結果は以下の通り。1,平面間の写像に関して余次元1の特異点の認識問題を研究し、有用な判定法を得た。この判定法を応用して、微分方程式の特性曲面の特異性を調べ、特異点の分類や微分方程式の形作用素と呼ぶべき物を発見した。三次元空間内の曲面の平面への射影についても研究し、射影する方向と射影に現れる特異点との関係を明らかにした。2,三次元空間内の波面のA型特異点の有用な判定法を作り、超幾何微分方程式のシュワルツ写像の特異点を佐々木武氏、吉田正章氏と共同で研究した。シュワルツ写像から作られる曲面には三個のスワローテイルが一つになる現象が起こるが、これがA5特異点であることを示した。3,梅原雅顕氏と山田光太郎氏と共同で高次元空間内の波面のA型特異点の有用な判定法を作り、波面の大域的な不変量であるジグザグ数と曲率写像との関係を明らかにした。4,双曲空間内の曲面に関して、泉屋周一氏と共同で擬球面内の曲面の双対曲面を様々な場合に研究した。特異点相互の関係や微分幾何学的特徴と特異点の性質を明らかにした。5,光錐内の曲面に関して、泉屋氏、カルメン・ロメロフスター氏と共同で研究し、ジェネリックに現れる特異点の分類を得た。締活線を定義し、柱面的な光錐内の曲面を定義する方法が解った。
著者
吉野 悦雄 弦間 正彦
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は,東欧10か国が2004年5月1日にEU(当時15か国)に加盟した時点から3年間の間に,市民(労働者)・消費者・農民の経済行動カルチャーにどのような変化が生じたかを研究することを目的としている。研究対象国は,上記10か国中で最大の経済規模を持つポーランドと,一人当たりGDPが最低水準であったリトアニアの2か国に限定した。研究領域は3分野から構成された。第一は,農民の意思決定メカニズムの変化である。土地所有面積の両極分解,作付け作物の選定に際しての利益追求志向への転換を調査した。第二は,消費者金融に対する消費者の意識転換である。マクロ的家計統計の観点と同時に,住宅ローンに限定したミクロ的行動の変化を調査した。第三は,西側への国外出稼ぎ労働である。私たちは,この三分野で,2004年以降,市民(労働者)・消費者・農民の経済行動カルチャーに大きな変化が生じると予想して,研究を開始したが,研究の結果は,この研究成果報告書が明らかにするように,予想をはるかに上回る劇的な変化が生じていたのである。農民は,EU経済での利益商品の生産に特化した。作物の種類と生産高は毎年,3倍増にも5割減にも激しく変化した。消費者は住宅ローンに走り,住宅建設バブルがポーランドでもリトアニアでも生じた。住宅ローン融資は,ほとんど毎年,倍々ゲームのように拡大した。労働者は失業者でなくとも西側に出稼ぎに行くようになった。とりわけ医師など高学歴者の国外出稼ぎが急増し,ポーランド国内では医師不足・熟練技術者不足という現象が深刻になった。以上の三つの研究領域は,我が国ではまったくの未開拓領域であり,多くの研究者に多少なりとも有意義な情報を提供することができたと考えている。
著者
魚崎 浩平 SHEN Y.R. OCKO Benjami DAVIS Jason DOBSON P. HILL H.A.O. 佐藤 縁 水谷 文雄 叶 深 近藤 敏啓 中林 誠一郎 YE Shen DAVIS Jason.
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

まず研究開始時に2年間の研究を効率的に実施するために、国内側のメンバーの間で研究方針を十分検討し確認した。ついで、研究代表者がオックスフォード大学を訪問し、研究方針の確認を行った。以後、これらの打ち合わせで決定した内容に基づき、以下の通り研究を実施した。なお、2年目には新規メンバー(オックスフォード大Jason J.Davis、ブルックヘブン国立研究所Benjamin Ocko、カリフォルニア大Y.R.Shen)を加え研究をより効率的に実施した。初年度1.オックスフォード大における生物電気化学研究のレベルを十分に理解するために、北大において、オックスフォード大研究者による情報交換セミナーを実施した。2.本研究では自己組織化法のセンサーへの応用を念頭に置いており、そのために最適な構造をもったマイクロ電極の設計とその形成法の検討を行った(オックスフォード大)。さらに、このようにして形成したマイクロ電極の電子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy:AFM)による評価を行った。さらに、より高度な評価をめざして、新しい走査プローブ顕微鏡を考案、設計、製作を行い、性能確認を行った(北大)。3.また、本研究では生体機能を念頭においており、チトクロームcと電極との間の電子移動を促進するための界面構造の設計を目標に、種々の混合自己組織化膜表面での電気化学特性を調べた(生命研)。4.界面機能の動的評価を目的に、自己組織化分子層の電気化学反応に伴う構造変化をその場追跡可能な反射赤外分光システムを構築し、生体機能との関連でも重要なキノン/ヒドロキノン部位を持つ自己組織化単分子層に適用した。酸化還元に伴う構造変化を明確に検出できた(北大)。2年度1.新しい界面敏感な手法である和周波発生分光法(Sum Frequency Generation:SFG)および表面X線回折法(Surface X-Ray Diffraction:SXRD)の本研究への導入の可能性を各々Shen教授、Ocko教授の研究室への訪問と討論を通して検討し、その有用正を確認した(カリフォルニア大、ブルックヘブン研究所)。2.水晶振動子マイクロバランス法(Quarts Crystal Microbalance:QCM)および走査型トンネル顕微鏡(Scanning Tunneling Microscopy:STM)によるアルカンチオールの自己組織化過程の追跡を行った(北大)。3.STMによるプロモータ分子の自己組織化過程の追跡をオックスフォード大Jason J.Davis氏が北大の装置を用いて行い、世界で初めて当該分子層の分子配列をとらえた(北大、オックスフォード大)。4.昨年度に引き続き、生体機能を念頭において、チトクロームcと電極との間の電子移動を促進するための界面構造の設計を目標に、種々の混合自己組織化膜表面での電気化学特性を調べた。また、この時の界面構造を詳細に調べるために、アルカリ溶液中での還元脱離およびSTMによる表面構造観察を行った(北大、生命研)。5.以上の成果を国際学術誌をはじめ、国内外の学会で発表した。
著者
高岸 治人
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

2010年度は6月に京都市内にある私立小学校にて、小学生を対象とした分配ゲーム(独裁者ゲーム)を実施し、他者が見ている状況と他者が見ていない状況という2つの状況における分配行動を比較するという実験を行った。参加者は2年生から6年生までの児童約210名であり、自身とお友達の間で10枚のコインチョコレートをどのように分けるかという課題を行った。その結果、他者から見られている状況では、男女ともに学年が上がるにつれて友達への分配個数が増加するというパタンを見せた。特に、小学校低学年では、他者が見ている状況でも友達にお菓子を渡さない傾向が見られたが、小学校中学年以降では、友達にお菓子を渡す傾向が見られた。しかし、他者が見ていない状況では、女児は他者が見ている状況と同様のパタンを示したが、男児はいずれの学年においても友達に対してお菓子を渡さない傾向を示した。これらの結果は、他者が見ている状況では、小学校中学年以降になると他者の目を意識するようになるために、友達に対して利他的になること、そして、少なくとも男児においては他者が見ていない状況では、友達に対して利他的にはならないことが明らかになった。この結果を踏まえて、現在、何故、利他行動における他者の監視の効果に性差が見られたのかを調べる実験、そして、利他行動における他者の監視の効果を支える認知発達的な基盤(例えば心の理論の発達)を調べる追加実験を計画している。
著者
堀口 郁夫 松岡 延浩 松村 伸二 谷 宏 町村 尚 内藤 成規 今 久
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1994

誰にでも使用できることを目標に、衛星赤外データ解析のシステム化の研究を行って一応の完成をみた。解析ソフトは、気象衛星ノア(NOAA)のAVHRRデータと気象衛星ひまわり(GMS)データについてである。これらはMicrosoft Windows 95のパソコン上で作動するようになっている。CPUはPentium 90MHz以上、メモリ16MB以上、ディスク50MB以上のハードウエアが必要である。また、光磁気ディスクなどの補助記憶装置を備える必要があり、表示装置としては256色以上のディスプレイが必要である。これらは最近価格が安くなっており、誰でも容易に備えることが出来る。気象衛星ノア(NOAA)のAVHRRデータについては、タンジェント補正、幾何補正、プロファイルの表示、植生指数の計算、表面温度の計算、これらの印刷、ファイル保存などの処理をするソフトで構成されている。また、気象衛星ひまわり(GMS)については、画像の切り出し、地図投影、海岸線や緯度経度の表示、ピくセルの情報、拡大縮小表示、大気補正、画像出力、などのソフトが組み込まれている。試作段階のソフトとデータをインターネット上で配布するため、千葉大学にfitサイトを設置した。同時に12名のモニターを選び、配布方法とソフトも使用感に関するアンケート調査をした。1997年1月30日からデータ配布用サーバの運用を開始した。試験配布の結果から、基本的にはfitソフトとデータの配信を行うこととした。なお、申請などはネットワーク上で行うこととし、WWWサーバを利用した。
著者
長谷川 千尋
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

連歌作品を研究する上で、作品に付された古注釈(江戸時代以前に執筆されたもの)は、すこぶる有益で欠くべからざる資料であるが、すべての本文が学会に提供されているわけではない。そこで本研究では、連歌の百韻・千句の古注釈の伝存状況を網羅的に調査した。その結果、『伊勢千句』『牡丹花宗碩両吟百韻』『宗牧独吟何人百韻』に関わる新出の古注を発見したのを始め、既存の古注にも新たな伝本を補い、未翻刻の古注を全翻刻し、基礎的研究を行った。
著者
中辻 隆
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

冬期路面における渋滞時交通特性に関し、1)凍結路面での追従特性を実走行試験データに基づき、反応時間、潜在衝突性などの追従挙動特性、あるいは衝撃波特性について夏期路面との相違を定量的に明らかにした。2)市販の交通シミュレーターのAPI機能を用いてUnscentedカルマンフィルターを用いて交通需要や交通状態を逆推定する手法の開発を行い、3)上の成果を用いてフィードバック手法に基づく旅行時間予測モデルの開発を行った。
著者
鈴木 敏正 大沼 義彦 宮崎 隆 椎名 恒 木村 純 YOSHIHIKO Ohnuma シャナハン ピーター クィールド ジョン
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

いわゆる「第三の道」をめざしてヨーロッパ諸国の生涯学習政策は、社会的排除を克服し社会的結合を推進しようとし、とくに辺境地域におけるプロジェクトを強化している。本協同研究では、ヨーロッパと日本の辺境である北アイルランドと北海道を対象とした実証的研究をとおして、「社会的に排除された人々とともにある教育」としての「地域社会発展教育または地域づくり教育community development education」の実態と課題を明らかにした。第1に、現段階の日英両国における生涯学習政策の比較検討とイギリス・北アイルランドにおけるその展開、革新的な地域社会教育の国際的・歴史的発展と諸モデル、成人教育の資源としての「社会的資本social capital」の役割を明らかにし、新たなモデルとしての「エンパワーメントのための地域社会発展教育」を提起した。第2に、北アイルランドを中心として、アイルランド北西部で展開されている地域社会発展とそれにかかわる成人教育の実践分析をした。それは、地域社会とアルスター大学のパートナーシップ活動、コミュニティケア、「社会的経済」、女性グループ活動、内発的スポーツ、農村地域社会発展、ヨーロッパ11大学協同による地域活動家・関連諸専門職の教育訓練プロジェクト、の諸領域にわたる。第3に、上記と比較した北海道における地域調査研究であり、不安定就労者・失業者の統計的検討、労働者協同組合活動、市民演劇活動とくに対人関係職員・労働者に対するワークショップ、および市民活動としての環境保護運動の展開過程の分析、そして地域づくりにかかわる大学の役割の解明をした。
著者
長沼 正樹
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

本年度の研究は、フィールド調査を継続しつつ昨年の博士論文の内容をもとに、地域間の比較検討に着手しながら、研究成果の一部を国内外の学会に公表した。昨年までのアムール下流域でのフィールド調査の成果の一部を『北海道旧石器文化研究』10号および世界考古学会議(WAC)中間会議で公表した。本年度のフィールド調査は、同じ地域で新石器より下層に包含されると予測した旧石器の検出を目的として、アシノーヴァヤ・レーチカ地区で実施した。しかし調査地点では旧石器遺物を確認できなかった。そこで極東の内陸部や極北地域も含めた後期旧石器に相当する遺跡を、ロシア側で調査された文献資料上で検討して、アムール下流域には、両面調整石器を中心とする旧石器文化が更新世に展開した可能性を見出し、『考古学ジャーナル』誌No.540号に公表した。また博士論文の一部に、新たな情報を加えて書き直し、日本列島の更新世終末期の学説史として『論集忍路子』第1号に公表した。同じく博士論文の一部、両面調整石器のリダクションモデルに関する部分は、国際誌Current Research in the Pleistoceneに投稿した。比較地域の一つとして昨年度着目していた北海道島について、更新世終末期石器群として忍路子石器群と落合モサンル石器群を対象に、先行研究の検討と新資料の実地観察を実施した。忍路子石器群が石刃運搬型リダクション戦略で環境に適応していたことに対し、落合モサンル石器群は、両面調整石器リダクション戦略を中心とした石材利用であり、両者の行動形態は大きく異なるとの見通しを得た。しかし年代学的情報と古環境復元の検討が不十分であることから、まとまった成果として公表してはいない。なお本年度公表した実績の他にも、今後の作業と展開次第で公表可能な状態にもっていける蓄積内容はある。これらについても、国内・外に随時公表する予定である。
著者
覚知 亮平
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本年は昨年の研究成果を存分に活用し、引き続きDNAセンサーの開発を行った。昨年の経過より、DNAやRNAがポリアニオンであることに着目した分子設計を試みた。具体的には、ポリフェニルアセチレンの側鎖にアニオンレセプターとして働くスルホンアミド基の導入を行った。その結果、得られたポリアセチレン類にアニオンセンシング能を付与できることが分かった(PPA-Sulfonamide)。また、側鎖官能団に電気吸引性基を導入することで、ポリマーのアニオンセンシング能を自在に調節可能であった。重要なことに、強力な電気吸引性基であるp-ニトロフェニル基を用いることで、DNAの構成要素であるリン酸アニオンを目視により判別可能であった。さらに、得られたポリマーの水/ジメチルホルムアミド(DMF)混合溶液に、ゲストアニオンを添加することで、ポリマー溶液の明らかな色調変化が観測された。この結果は、現在でも困難を極める、水中におけるアニオンセンシングを達成した点で意義深い。従って、以上の結果より、ポリフェニルアセチレンを応答部位として用いるDNAセンサーの実現に向けた礎を築けたと考えている。
著者
鳥山 まどか
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、貧困・低所得世帯への貸付に際して行う相談支援のあり方を議論するための資料を提供することを目的としている。日本およびフランスで実践を行っている民間団体・機関へのヒアリング調査から、継続的できめ細やかな相談支援活動を合わせて行うことではじめて貸付が効果を発揮することが明らかになった。また、日本の公的福祉的貸付制度のひとつである母子寡婦福祉資金において相談支援活動の中心的役割を担っている母子自立支援員を対象としたアンケート調査を実施した。各支援員は、多岐にわたる業務で多忙な中でも、「継続的な相談支援」を行うためにさまざまな工夫をしていた。さらに、相談者の相談内容、面談時の状況に関する詳細な相談記録をとることを重視していた。こうした実践を通して、各支援員の中に「効果的な相談支援の方法」といったものが形成されていることが示唆された。
著者
中沖 靖子 佐野 英彦 野田 守
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

カリエス治療に汎用されるレジン系充填材料は、健全歯質の保存という観点からその長期耐久性も重要と考えられる。申請者らは、この長期耐久性を阻害する接着界面のバイオデグラデーションの本態を解明するため、抗酸化剤の機能を有するプラチナナノコロイドを用い、劣化をとどめる方策を考えた。それに際し、接着界面の分子レベルでの超微細構造の情報を得るため、非常に高分解能であるが生体、特に軟組織観察に不向きとされてきた超高圧電子顕微鏡を、生体観察に応用する手技を確立した。
著者
小林 大二
出版者
北海道大学
雑誌
低温科学. 物理篇 (ISSN:04393538)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.405-407, 1970-03
被引用文献数
2
著者
石井 吉之 小林 大二
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

(1)北海道北部の多雪山地流域では、精度の良い水文・気象観測が十数年間にわたり継続されている。これらのデータを用いて各年の流域水収支を計算し、流域貯留量の年々変動を調べた。また、気温を変数とした積雪・融雪ルーチンとタンクモデルを用いた流出・貯留ルーチンからなる流域水収支モデルを構築し、積雪貯留量の変動が流減水収支に及ぼす効果を検討した。近年、日本各地に暖冬少雪傾向があると言われるが、この地域ではそのような傾向が見られるのか、また、その場合には流減水循環にどのような影響が現れるのかを、このモデルを用いて考察した。モデル計算の結果、積雪貯留量の大きな年々変動は単に冬期降水量ばかりに依存するのではなく、積雪期や融雪期の気温にも大きく依存することが示された。また、積雪貯留量の大小が夏期渇水期の河川流出高に及ぼす影響は小さいことが明らかになった。(2)上と同じ流域において、全融雪期間にわたって流域内における水及び化学物質の収支を明らかにし、その上で地中での流出過程を考察した。融雪水・混ざり水・地下水から成る3成分モデルによってハイドログラフ分離を行なった結果、地下水の流出寄与分は全融雪期間にわたって約40%とほぼ一定に保たれ、このために、融雪期における流域内での化学物質収支は流出過多になることが明らかにされた。(3)隣接する2つの森林小流域において融雪期の流出特性を比較した。2つの流域は面積・形状・地質・植生・土壌特性がよく類似しているにもかかわらず、土壌層に顕著な違いがあるために流出特性にもその影響が明瞭に現れた。また、土壌層が特に厚い内部小流域が流出の非ソースエリアとなるため、見かけ上は同じ流域面積でも実質的には異なることが明らかにされた。
著者
泉 典洋 渦岡 良介 風間 聡
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

表面流によって侵食と堆積を受ける平坦な斜面上に,規則的な間隔で発生する水路群(ガリ群)の形成理論を提案するとともに,理論を任意形状の斜面に拡張し,形状に関わらず水深の1000倍程度の間隔で水路群が形成されることを示した.また水路分岐の物理モデルを提案し,周囲から集まる流量が減少すると,水路頭部は擾乱に対して不安定となり分岐することを明らかにした.この結果は宗谷丘陵における現地観測によって裏付けられ,水路形成には地下水や斜面崩落も重要であることが判った.浸透流によって斜面下流端に発生する水路群の形成過程を明らかにするために模型実験を行い,水路間隔を決定する要因は流量および斜面勾配,浸透層厚であり,それらが大きくなると水路間隔も大きくなることを明らかにした.地震で発生した斜面崩壊について現地調査および室内土質試験を実施し,地すべり発生時の地盤状況,崩壊土の物理的・力学的特性が明らかとなった.また,流体解析を用いて崩壊土砂の移動量を再現した.斜面のような不飽和地盤における3相系(土骨格・間隙水・間隙空気)の動的・大変形挙動を解析的に明らかにするために,多孔質・有限変形理論に基づいた有限要素解析手法を提案し,不飽和地盤の自重・圧密・浸透・動的解析を行い,不飽和地盤である斜面の外力による崩壊過程を明らかにした.Dev確率分布を用いて求めた極値降雨再現期間の空間分布から東北地方を例に斜面災害発生確率の空間分布を求めた.さらに土砂災害実績を利用して融雪に起因する土砂災害発生確率モデルおよびリスクモデルを構築するとともに結果を分布図として示し,実績と良好に整合することを示した.また多雪年および小雪年,温暖化の場合について,時系列的な融雪変化による土砂災害のリスク変化を示した.さらに,土砂崩壊発生確率モデルと経済損失額モデルを用いて,土砂災害リスクの地域分布を明らかにした.
著者
秋田谷 英次 白岩 孝行 成瀬 廉二
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

平成6、7の2年間で札幌市内の雪氷路面の調査を実施し、目視による新たな路面雪氷分類を作成した。これはスタッドレスタイヤと凍結防止剤の普及に伴って頻繁に発生する様になった路面状態に対応した分類である(つるつる路面に主眼)。路面状態は積雪量・気温の気象要素と交通量、及び道路の維持管理作業によって常に変化する。2冬期の観測結果から路面状況を定量化し気象要因と比較した。その結果、車の走行にとって問題となる「光る(すべる)路面」と「こぶ氷」の発生動態が解明された。この結果は、最悪な雪氷路面が発生する前に的確な維持管理作業を開始する指針となるものである。表層雪崩の原因である弱層の調査を本州の多雪山岳域まで広げた。放射冷却に起因する「表層しもざらめ雪」と「表面霜」からなる弱層は北海道以外でも表層雪崩の大きな原因となることが明らかとなった。雪崩災害を防ぐためには登山者・スキーヤへの啓蒙が重要である。普及活動として例えば、平成8年度全国山岳遭難対策協議会(文部省、岐阜県、警察庁等の主催)に招かれ講演した。平成7年は12月末から北海道では近年にない豪雪となり、やがて本州も豪雪に見舞われた。札幌圏ではこれまでの道路管理システムでは対応できず、あらゆる交通網は大混乱を引き起こした。大都市では、これまでのハード中心の対策には限界があり、新たな交通規制、きめ細かな情報公開、住民、ユーザーと行政との責任分担などソフト面での対応が不可欠な事が明らかとなった。10年以上にわたり豪雪がなかったため、住民、行政、マスコミとあらゆる機関の自然に対する危機意識が低下したこと、地方、国などの横の連携が不十分な事も災害要因となった。
著者
吉田 邦彦 早川 和男 亘理 格 人見 剛 遠藤 乾 藤谷 武史
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

第1は、平成大合併の動きとの関連での中山間地の動向調査で、とくに合併を拒否した基礎自治体に留意して、(1)平成大合併の経緯ないし(2)その理由の検討(日米で合併が説かれる際の相違)、(3)居住福祉に及ぼす影響、(4)合併が拒否される場合の根拠、ないしその際の苦境などを含めて、成果報告をした。空洞化する農林業、地方都市の再生のあり方も併せて検討した。また第2に、それと関連して、自治体の財政破綻・貧困地区の再生と「新たな公共」の担い手としての非営利団体の研究を行い、破綻自治体問題の居住福祉に及ぼす影響、今後の対策(その際の各種非営利団体の役割)などにつき、シンポを企画し、労働者協同組合とも連携して、草の根の居住福祉のための非営利団体の活動の調査を通じて、成果も発表し、さらに、「新たな公共」を担う小規模非営利団体の活動を基礎付ける立法化(「協同労働の協同組合法」)に着目して、それを学問理論的・実践的な検討を行った。さらに第3に、財政難の中山間地がこの時期も被災したことに鑑みて(能登震災、中越沖地震)、そこからの再生のあり方を検討した。すなわち、阪神大震災と比較した中山間地の震災の特性、近時の平成大合併の影響、住宅補償の進捗度、コミュニティ維持の確保の検証、商店街の復興の展望など調査しており、今後の課題として残したい。最後に第4として、グローバリズムと地方自治との交錯(補完性原理との関係)を扱い、本研究が注目する補完性原理は、EUの統治システムであり、それに倣う広域行政のシステムの構築をも、本研究は目的とした。そして、グローバリズムの進行とともに、地方自治と国際法ないし国際的取り決めとの交錯現象が、注目されるに至っており、そうした「国際地方自治論」と言われる問題に関する学会に参加して示唆を得ており、その成果をまとめたい。