著者
二宮 浩彰
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、都市型市民マラソンを調査研究の対象とし、経済価値評価手法であるトラベルコスト法(TCM)および仮想評価法(CVM)を援用することによって、スポーツイベントの経済価値について評価することを目的とした。都市型市民マラソンのランナーを対象として、インターネット調査を実施した。その結果、スポーツイベントの経済波及効果、消費支出傾向、および支払意思といった経済価値について実証することができた。
著者
鈴木 絢女
出版者
同志社大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、開発志向国家における財政と民主主義の関係をテーマとしている。1990年代に高度経済成長や健全な財政政策に成功したとして称揚されたマレーシアにおいて、アジア通貨危機以降、財政赤字が持続し、政府債務が拡大している。この背景として、①通貨危機時に景気浮揚策として拡大した財政が、長期政権を担う与党国民戦線の指導者の政治的資源となることで、財政の出口の改革が困難になったこと、他方で、②与党が有権者の支持を失うことを恐れ、増税による歳入基盤の強化が遅れたことが指摘できる。出口改革の遅れは有権者の増税に対するさらなる抵抗感の拡大をもたらしており、財政赤字や累積債務の解消はさらに困難になりつつある。
著者
上北 朋子
出版者
同志社大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

豊かな社会性をもつ齧歯類デグーを対象とし、そのコミュニケーション能力を支える脳機構の解明を目的とした。動作を正しい順序で行い、他者の行動の順序性を理解することは、円滑なコミュニケーションに不可欠な能力である。本研究は、脳の特定領域の損傷実験により、コミュニケーションの第1段階である他者認知の神経基盤を明らかにした。これまで社会行動への関与については注目されなかった海馬が他者認知に関与することが明らかになった。
著者
浅野 健一
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

表現の自由と個人の人格権は共に、憲法で保証された基本的人権であり、その対立の調整は極めて慎重でなければならない。刑事事件報道における被疑者・被告人の人権と表現(報道)の自由との衝突に関する事例研究を行った。ケーススタディとして、1981年に逮捕され95年に無罪が確定した大分・みどり荘事件の輿掛良一さんの報道被害、94年6月の松本サリンでの河野義行さんに対する捜査とメディアによる人権侵害、米国アトランタ・五輪公園爆弾事件の第一通報者リチャード・ジュエルさんの事例を取り上げた。日米の犯罪報道を比較研究した。また、神戸市須磨区で起きた連続児童殺傷事件、東京電力社員殺人事件などでの被害者のプライバシー侵害問題も調査した。少年事件での実名・顔写真の掲載、文藝春秋の少年供述調書の掲載などが相次いだことで、これらの少年法違反の取材・報道に関して、現場記者、捜査当局者、一般市民などから聞き取り、アンケート調査を実施した。その結果、取材記者は警察情報にほぼ依存しており、捜査当局の監視機能は働いていないことが分かった。報道現場で犯罪報道の構造を改革を求める声が強いことも分かった。人権と報道のテーマは、97年8月末に起きたダイアナ元英皇太子妃の事故死で、世界的な問題となった。ジュエルさんと対メディア訴訟の代理人であるワトソン・ブライアント弁護士が97年10月に来日、二人から詳しく当時の事情を聞いた。さらに北欧、英国など諸外国の事例との比較も検討した。放送界でもNHKと民間放送連盟が97年6月に苦情対応機関、「放送と人権等権利に関する委員会機構(BRO)を設置.BROは98年3月に米サンディエゴ教授妻娘殺人事件報道に関して初の見解書を発表。プレスにおいては新聞協会が協力しないために、新聞労連が独自で98年3月に報道被害相談窓口をスタートさせた。日本に生まれつつあるメディア責任制度の問題点を明らかにして、その解決方法を提示した。
著者
鯵坂 学 上野 淳子 堤 圭史郎 丸山 真央
出版者
同志社大学
雑誌
評論・社会科学 (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
vol.105, pp.1-78, 2013-05

日本の大都市では,1990年代後半から都心部の人口が減少から増加に転じる「都心回帰」現象が起きている。本研究では,2つの方向から人口の都心回帰が大都市の都心コミュニティにもたらす変化を探った。(1)既存研究が少ない札幌市,福岡市,名古屋市を対象として,自治体等へのイン タビュー調査と行政資料の分析を行った。その結果,3都市ともに都心回帰を経験しているが都心回帰の担い手や都心を取り巻く状況は異なることが明らかになった。都市自治体の対応は都市計画分野に限定されており,都心コミュニティの再編に直接対応する制度がないため,地域住民組織は対応に苦慮している。(2)札幌市と福岡市に絞った都心マンション住民へのアンケート調査からは,東京や大阪における都心回帰の担い手と相違点が示された。また,マンション内外の付き合い方は住居の所有形態,世帯構成,年齢による違いが大きいとともに,都心による違いがあることが分かった。
著者
向 正樹
出版者
同志社大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究課題は、中国沿海部と東南アジア島嶼部のイスラーム史蹟における現地調査を行い、そこに残されたイスラーム碑文(おもにアラビア語墓碑)の相互の比較研究を行い、それによって、歴史的に海上交易によって結びつけられた当該海域におけるアラブ・ペルシャ系移民の通婚と文化接触の結果形成されたイスラーム系集団間の連環を探るものであった。当該地域出土のイスラーム石刻のテキストから得られる年代的・地理的情報の収集、および、関連する漢語・アラビア語・ペルシャ語文献資料の網羅的分析を行った結果、12~16世紀前後において、南シナ海域・東南アジア海域に広く分散するイスラーム系集団の連動性や関係性に迫ることができた。
著者
河島 伸子 佐々木 亨 小林 真理 山梨 俊夫
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究により、まず、ミュージアムが今後ますます地域社会づくり、地域経済の再生に向けて大きな役割を果たすことができることを確認した。このような役割への期待は、従来、収蔵品の収集、保存、修復、管理といった業務を中心においてきたミュージアム組織にとって新たな挑戦をもたらすともいえる。 地域経済の疲弊、人口減社会といった深刻な問題を抱える日本において、ミュージアムが美の殿堂たる地位に安住していてはならないことは明らかである。美の殿堂ではなく、コミュニティの寄り合い場、市民の文化活動のハブ、拠点となることに今後のミュージアム経営はかかっていると思われる。
著者
櫻井 芳雄 金子 武嗣 青柳 富誌生
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、多様な記憶情報の活用を担う機能的神経回路、すなわちセル・アセンブリの活動を神経科学的に実証することを目的とした。様々な記憶課題を考案し、それらを遂行中のラットからマルチニューロン活動を記録し解析した。その結果、時間弁別課題、報酬確率予測課題、順序弁別課題など多様な記憶課題の遂行中に、海馬、扁桃体、前頭前野などでニューロン活動が変化することがわかり、さらにそれらの部位間で同期的に活動するニューロン集団、つまりマクロなセル・アセンブリの活動を検出することができた。
著者
森 宣雄
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、戦後70年にわたる沖縄現代史をトータルに把握する歴史叙述・哲学をまとめるとともに、それを理論的に〈下から〉のグローバル・ヒストリーとして位置づけ、さらにそこで見出された歴史上の社会思想を現在のグローバルな社会実践へと展開する新たな方法論を開拓した。その成果は専門的研究に裏打ちされた学術一般書をふくむ8件ほどの著書、国内外での多数の講演、多くの新聞雑誌での論考によって社会発信することができた。
著者
ハージ ガッサン 水谷 智[訳]
出版者
同志社大学
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.11-37, 2010-02

論説本稿の議論の対象は多文化主義的な統治性の限界である。とりわけ,現代オーストラリアにおいて,「統治不能なもの」がなぜ,いかにレバノン系のムスリム移民像に具現化されているかを検証する。This essay is concerned with the limits of multicultural governmentality. It investigates the spaces where this governmentality fails: the spaces where it comes face to face with the `ungovernable'. In particular, the essay examines how this `ungovernable' has become embodied in the figure of the Muslim immigrant in contemporary Australia.翻訳:水谷智
著者
清瀬 みさを
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は「関西近代建築の父」と称されながら、建築史学の分野で「代表作がない」「没個性的である」「様式的一貫性がない」と評されがちであった京都大学工学部建築学科初代教授・武田五一(明治5?昭和13年)の建築作品とその思想を、「京都都市景観の形成」という観点から再評価することにある。そして、京都近代の都市形成の原点である武田の事例を考察することで京都市の景観施策の是非を検討することを目的とした。本研究では、まず武田が設計(設計指導あるいは競技の審査をつとめた)した橋梁、官庁、大学、商業ビルなど公共性が高く近代都市のランドマークとなった建造物と同時代の建築家のよるそれとの比較検討を行い武田作品の特質を考察した。武田建築の基本的な特色として陰影の浅い、グラフィカルな外観の構成とベージュや灰色の押さえた色彩が指摘された。そのため種々雑多な色柄形の建造物が入り交じる現代都市において埋没した印象を与えることが確認された。ついで、武田自身の著作、論文、建築作品、競技設計の審査を行った評価の観点に、時代を先取りした、単一の建築作品を越える「周囲(環境)との調和」への志向が確認された。武田の時代に描かれた風景画作品を分析することで建造物の「地」となる京都のイメージを抽出した。その上で都市景観を構築する建造物として武田作品の再評価を試みた。しかし、洋画黎明期の画家たちが描いた京都の街のイメージ、つまり淡く明るい土の色、陰影の浅い東山の山並み、浅瀬の鴨川、そこに点在するランドマークとしての歴史的建造物を背景に置くとき、逆にその「没個性」が現代の京都市景観施策を先取りする環境との調和を目指した結果であると評価される。そして、橋梁が建築物よりいっそう景観構築の規矩となるという武田の思想は、都市内の水運が廃れ、橋梁が道路の延長になってしまった現代都市において看過されてきたが、京都市景観施策に是非とも考慮すべき点であることを主張したい。
著者
野口 久美子
出版者
同志社大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

本研究では、2カ年にわたる現地調査と文献調査の結果、19世紀末から20世紀初頭のトュール・リヴァー保留地において、複数部族からなる先住民部族集団が単一の政治形態を形成する過程と、それに伴う部族内経済格差の構築過程について歴史的分析を加えた。結果として、現代の部族社会と経済発展の基礎となる再組織法型部族政府(トュール・リヴァー部族政府)が、いかにして構築されたのか、その歴史的背景が明らかになった。
著者
佐藤 龍子
出版者
同志社大学
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.78, pp.81-96, 2007

本稿では,高等教育政策の量的緩和の最たるものとして「期間を限った定員増」(臨時的定員)とその後の臨時的定員の5割恒常定員化を取り上げる。1992年をピークとした第2次ベビーブームの18歳は,205万人に達した.大学・短大の志願者は122万人にものぼった。当時の受験生にとっては,まさに地獄であったが,大学にとっては黙っていても受験生が集まる時代であり,1986年から1992年の7年間は「ゴールデンセブン」 (輝く7年間)であった。大学にとっては天国であり,「バブルの時代」でもあった。 当初の臨時的定員計画は44,000人であったが,最終的には112,443人になった。恒常的定員も当初計画は42,000人であったが,78,173人になった。その後,臨時的定員は5割恒常定員化されることになった。 「ゴールデンセブンの時代」と臨時的定員政策は,高等教育にどのような影響を及ぼしているのだろうか。大学大衆化の進展と関わりはどうなのか。今,改めて臨時的定員政策を振り返ってみたい。
著者
植田 知子
出版者
同志社大学
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.82, pp.1-20, 2008-11

大黒屋又兵衛は、江戸後期から明治初期にかけて主に古手・呉服問屋として江戸で活躍した商人である。店舗は江戸富沢町に設けていたが、住居は一貫して江州高島郡霜降村に定め、当時の商人番付にも名を連ねた富商の一人である。しかし、その活躍に比べて商人としては未詳の部分が多く、又兵衛の出自や商人となった経路等についての解明はほとんど進んでいない。本稿は、杉浦大黒屋関連諸史料の検討と、大黒屋又兵衛の菩提寺における聞き取り調査から、大黒屋又兵衛が京都商人杉浦大黒屋の別家の一人であることを明らかにしたものである。
著者
戸政 佳昭
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.307-326, 2000-12
被引用文献数
1

研究ノート本稿は、政治・行政学や公共政策論において一種の流行語となっているガバナンスという言葉が、流行のゆえに混乱をもたらしていると認識し、ガバナンスという言葉そのものについての整理・検討を行っている。言葉が引き起こす混乱は、その言葉が登場することとなった背景が整理されないままに使われることが原因になっていることが少なくないので、まずはガバナンスという言葉が日本の政治・行政学や公共政策論において浸透するに至った背景を6 つに分けて整理している。さらにこれらから、政治・行政学や公共政策論においてガバナンス概念を用いる意義・意味は「ガバメントからガバナンスへ」という文脈で発揮しうるものであるとしている。次 に、ガバナンスという言葉の具体的な使われかたとしては、辞書的用法、規範的用法、分析的用法の大きく三つに分けることができるとしたうえで、規範的用法については、共通点とでもいうべき5 つのキーワードがあることを指摘し、さらにこの用法においての問題点および今後注意すべき点などを整理している。分析的用法については、さらに包括的アプローチ、サード・セクターからのアプローチ、政府からのアプローチ、の三つにわけることができるとした上で、それぞれにつき簡単な説明を加え、さらにこの用法においての問題点および今後注意すべき点などを整理している。なお、本稿は今後作成する予定の論文の一部分に相当するものとして執筆したものである。