著者
横井 和彦 高 明珠
出版者
同志社大学
雑誌
經濟學論叢 (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.103-143, 2012-07

研究ノート(Note)清朝政府は,19世紀半に開国を余儀なくされるとともに西洋技術導入政策を展開した.その1つが留学生派遣であった.1872年,最初にアメリカに派遣したのちは,イギリス・フランスに派遣した.日清戦争後,派遣先は日本に転換した.日本留学生数は1906年には1万人を超え,隆盛期を迎えたが,両国で各々留学生の質や日本留学の質が問題となり,隆盛期は終焉した.こうした留学生派遣政策の展開を検証し,さらに日本の留学生派遣政策との比較によって問題点とその原因を検討した.Between the 1860s and 1890s the Qing government felt compelled to implement a series of open-door policies in order to introduce western intelligence into China, one of which was to send students overseas. The Qing government intermittently sent approximately 200 students to the United States, Britain, and France between 1872 and 1890. However, the main destination for overseas students shifted to Japan after China's defeat in the Sino–Japan war of 1895. The number of Chinese studying in Japan peaked at 10,000 in 1906, but then plummeted because of the Qing government's tight policy on retaining the quality of overseas students. This article describes the background and problems of these policies by means of a comparison with Japan in the Meiji period.
著者
米崎 克彦
出版者
同志社大学
雑誌
經濟學論叢 (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.329-356, 2011-12

論説(Article)本稿では,国際政治経済学の分野で発展した2レベルゲームモデルに交渉代表者を選ぶ過程を追加することにより,国内の意思決定が,交渉代表者に影響を与えるモデルを考察する.先行研究において,2レベルゲームは様々な形で拡張や応用が研究されている.理論面ではPutnamの2つの仮説に対し様々な形で検証が行われている.本モデルでは,Iida-Tararモデルの結果に対し,両仮説について違う含意が得られた.第1仮説について,複数均衡が存在する条件が導かれ,より交渉が成立するケースが増えるという可能性の点から,この仮説を支持する可能性が導かれた.また,第2仮説について,交渉のアドバンテージはウインセットの大きさではなく誰を選ぶかという部分に変化している.ただし,ウインセットの変化が均衡の集合のサイズに影響を与え,自分らのとり分が相対的に少なくなる可能性のある均衡の集合範囲がなくなる場合があり,間接的に交渉力に影響を与える可能性は残されている.I examine the two-level games model with a negotiation process for the selection of representatives. Putnam (1988) has proposed two-level games and has advanced hypotheses on international bargaining with domestic constrains. Iida (1993/1996) and Tarar (2001) have examined the hypotheses using a game-theoretic model. They stressed that asymmetric information plays an important role in the hypotheses. Even if complete information is available, our model leads the conditions of the hypotheses.
著者
菊池 静香
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.45-60, 2006-07

論説(Article)本稿は、学位論文「明治以降における河川にかかわる地域組織の成立と変遷に関する研究」のうち、明治期から現在までの河川にかかわるNPO活動の変遷を把握するため、基礎調査としてとりまとめた一つの章について、一部加筆したものである。一般に、NPOについては様々な分野において研究がなされている。しかし、河川にかかわるNPO活動については既往研究が限られており、明治期から現在までの組織活動を通史的に論じたものはほとんど見られない現状にある。そこで、河川をフィールドに公益活動を行なう市民活動や住民活動について、時代を象徴するような組織活動や全国的に影響を与えた運動などを整理し、時系列的な類型化を試みた。はじめに研究の目的、既往研究、考察の対象などについて述べる。次に、河川にかかわる環境運動について、運動内容により(1)河川改修促進運動、(2)反対運動、(3)自然環境保全運動の3つに大別し、それぞれ時代を象徴するようなNPO活動や全国的に影響を与えた運動などについて、その概要を整理する。そして、社会や河川施策に果たした意味を把握した上で、明治期から昭和初期、第二次世界大戦後から昭和40年代、昭和50年代から現在について類型化を行い、その特徴を明らかにした。
著者
長澤 勢理香
出版者
同志社大学
雑誌
經濟學論叢 (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.195-222, 2009-07

研究ノート(Note)イギリスの奴隷貿易の場合、その決済に際しては為替手形が用いられていた。この為替手形の信頼性向上のため、コミッション・エージェントと呼ばれるロンドン在住の金融業者が引受け(保証)を行っていた。本稿では、奴隷貿易に関する研究を回顧のうえ、奴隷貿易におけるコミッション・エージェントの重要性を指摘するとともに、コミッション・エージェントの研究を進めるに際しての方向性を明らかにする。The purpose of this study is to emphasize the importance of London commission agents as guarantors of slave bills. Bills of exchange were used as a means of settlement in the British slave trade. Commission agents played a key role in this system by accepting slave bills drawn in the West Indies. This financial system made for a more secure and assured means of slave payment than before. This paper presents accumulated studies on British slave trade and also examines the perspective of these researches with regard to the commission agents.
著者
ストウ デイヴィッド[著 坂下 史子(訳)
出版者
同志社大学
雑誌
同志社アメリカ研究 (ISSN:04200918)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.33-44, 2000-03

論説, Article訳:坂下史子
著者
吉村 直樹
出版者
同志社大学
雑誌
文化情報学 (ISSN:18808603)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.29-38, 2009-03

講演記録現代ではラジオは若者の間でかつてのような人気がなくなってしまったが、聴覚的想像力は万葉の昔から江戸の俳諧を経て現在にいたるまで日本文化の特質であり、マスメディアとしての量的な優位は他のメディアに比べて下がったものの、ラジオ文化にはまだまだ魅力と有用性が残っている。阪神淡路大震災の際にラジオが情報伝達に役立ったのは確かだが、それ以上にひとりひとりに話しかけるというメディアとしての要素の強いラジオは聴取者になりよりも安堵感を与えたと言われる。テレビとラジオの決定的な違いは映像が伴うかどうかにある。ラジオにとって一見不利に見える映像の欠如は、制作と報道の仕方によっては逆に映像では表現えできないような内面を伝えることもできるし、またその比較的シンプルで安価な制作の性質を利用して機動的な、また地域に密着した番組を提供できるという利点もある。Radio is not so popular today among young people as it used to be. But auditory imagination has been one of the Japanese cultural tradition since the times of Man'yoshu. In Edo period we had haikai which also featured auditory imagination. Although radio is not influential as TV in terms of mass communication, it played a very important role during the Great Hanshin Awaji Earthquake giving crucial infrastructural information to the listeners who had no access to home electricity and the other mass media. What is more, since radio program tends to address itself to individual listeners rather than to mass audience, it can give a great deal of intimacy and reassurance. In addition, radio can play another major role as a local media based in local communities because of its relatively inexpensive production cost and its mobility.
著者
麻田 貞雄
出版者
同志社大学
雑誌
同志社アメリカ研究 (ISSN:04200918)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.59-65, 1967-11-16

資料, Note
著者
麻田 貞雄
出版者
同志社大学
雑誌
同志社法學 (ISSN:03877612)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.92-121, 1998-03-10

論説
著者
大矢根 聡 山田 高敬 石田 淳 宮脇 昇 多湖 淳 森 靖夫 西村 邦行
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本の国際関係理論は海外の諸理論の輸入に依存し、独自性に乏しいとされる。本研究は、過去の主要な理論に関して、その輸入の態様を洗い直し、そこに「執拗低音」(丸山真男)のようにみられる独自の問題関心や分析上の傾向を検出した。日本では、先行する歴史・地域研究を背景に、理論研究に必然的に伴う単純化や体系化よりも、現象の両義性・複合性を捉えようとする傾向が強く、また新たな現象と分析方法の中に、平和的変更の手がかりを摸索する場合が顕著にみられた。海外の理論を刺激として、従来からの理念や運動、政策決定に関する関心が、新たな次元と方法を備えたケースも多い。
著者
柿本 昭人
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.1-12, 2014-09

論説(Article)「安全神話」という成句は、奇妙な成句である。安全と神話という相容れない基盤に立つ用語が、同じ土俵で渾然一体となった有様なのである。しかも安全神話は、巨大システムにおけるトラブルのたびに否定されると同時に、その安全神話の再構築や継続を誓う際に用いられ続けている。原発が潰えた安全神話の代表であるなら、新幹線はいまだ命脈を保ったままの安全神話の代表である。しかし新幹線システムの開発・運営の歴史そのものは、事象の発生確率の大小と無関係に安全バリアの機能が無条件に喪失するという極端な想定に立ち、危険の顕在化プロセスを防止するために、発生防止の層だけでなく、それに続く拡大抑制、影響緩和という三層に及ぶバリアを設定する「深層防護」と呼ばれる考え方に立ってきた。この新幹線システムの開発・運営の歴史そのものと新幹線を取り巻く安全神話との同居が、科学理論の裏づけに基づく個別の具体的な技術的前進ゆえに被害を最小限に抑えるのに成功した時でさえ、それを我々に失敗と把握させ、「安全神話が揺らいだ」と言いつのらせ、経営トップに「安全神話を守り抜く」と決意表明をさせる。安全神話とは、安全運行に関する経験や勘に基づく人間の判断の排除によって達成された安全の実績を熟考することなく、安全への人間の意志と注意力こそが安全を実現するとする、安全についての反射的思考の絶対化である。
著者
早川 勝
出版者
同志社大学
雑誌
同志社法學 (ISSN:03877612)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.2101-2156, 2006-11

EU加盟国は、2004年に成立したEU第13会社指令を2006年5月までに国内法化する義務を負っている。本稿は、ドイツがどのように指令を国内法化しようとしているのか、公表された政府草案について検討する。ドイツは、指令が認める選択権を行使して、取締役の中立義務や透視ルール(ブレークスルー・ルール)についてはオプト・アウトし、国内企業にオプト・インすることを認めていることが大きな特徴である。わが国で参考になるものとしては、公開買付法でも残留株主に株式買受請求権を定めたこと、および新たに規定した商法上の開示規制であることを指摘している。
著者
高田 太
出版者
同志社大学
雑誌
基督教研究 (ISSN:03873080)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.40-57, 2006-12

神学と哲学との間の境界線はいかに画定されるのか。本論文の目的は、『純粋理性批判』の「超越論的方法論」における哲学体系の叙述と1783年の神学講義を中心にして、その時期のカントの哲学体系において定められうる神学と哲学の境界線について考察すると同時に、カント自身が両領域をいかに画定したのかを究明するところにある。カントは常に神学を形而上学として哲学体系の中に位置づけており、そういった位置を持たない宗教論と区別していた。形而上学としての神学は、超越的形而上学として内在的形而上学と区分されている。しかし哲学はあくまで両形而上学を包摂する。形而上学としての神学は合理神学と称され、カントはこれに啓示神学を対置している。しかしこの合理神学と啓示神学の間の境界線は、本来は哲学部と神学部という大学行政上の区分に過ぎない。合理神学はその行程の終わりに高次の啓示や神秘といったものに行き当たる。ここに哲学としての合理神学が越えることのできない境界線が存する。その境界線は本来の合理神学と啓示神学との、また合理神学と宗教論との境界線である。
著者
太田 裕之
出版者
同志社大学
雑誌
同志社法學 (ISSN:03877612)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.1119-1168, 2005-11

本稿は、日本国憲法改正のための国民投票法について、検討するものである。2005年秋の時点において、与党側が国民投票法案の基礎とするものは、2001年のいわゆる「議連案」であると考えられる。本稿は、この議連案を対象に、国民主権の下で主権者国民が持つ表現の自由及び知る権利の観点から、国民投票法案の中で、主権者国民の表現の自由と知る権利の規制に直結する国民投票運動に関する規制部分を取り上げ、それを批判的に検討するものである。主権者である国民は、直接その主権的判断を下す機会である憲法改正国民投票において、憲法改正案についてのあらゆる情報を知り、賢明な判断を下すことが可能である必要がある。この観点からは、議連案はきわめて不十分なものでしかない、というのが結論である。
著者
宮木 康博
出版者
同志社大学
雑誌
同志社法學 (ISSN:03877612)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.49-91, 2006-01

平成16年7月12日、おとり捜査に関する最高裁決定が出された。本決定では、おとり捜査の許容性や適法性の判断基準について、最高裁の考え方がある程度示された。しかしながら、本決定によってもおとり捜査が許容される範囲については、明確にされたとは言い難い。その意味で、おとり捜査の適法性の判断基準や判断方法を精緻することは、依然としてわが国の刑事訴訟法上の重要なテーマである。こうした検討にあたって有益と思われるのが、ドイツにおけるおとり捜査の考察である。ドイツでは、1970年代以降、国際的犯罪組織によって麻薬犯罪を始めとした組織犯罪が顕在化し、その対策の一環としておとり捜査が積極的に用いられるようになった。そうした中で、おとり捜査の許容範囲、要件、判断基準などについては、判例において幾度となく検討が加えられ、その中で興味深い変遷をたどってきた。また、学説においてもこうした判例の動向をふまえ、激しい議論が戦わされてきた。ドイツでは、こうした判例・学説の展開の中で、おとり捜査をめぐる議論が精緻化されてきたのである。 そこで、本稿では、わが国のおとり捜査の許容性や適法性の判断基準について検討する足がかりとして、同様の問題についてのドイツの対応につき考察を加えた。具体的には、まず、ドイツにおけるおとり捜査の基本的な枠組をおさえておくために、おとり捜査の担い手と投入類型を整理し、おとり自身の不可罰性について確認する。そのうえで、次に、おとり捜査の許容性についての判例と学説を概観する。そして最後に、以上の考察をふまえ、おとり捜査をめぐるわが国における今後の議論の方向性について、若干の考察を加えた。研究ノート
著者
樊 紀偉
出版者
同志社大学
雑誌
同志社法學 (ISSN:03877612)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.1458-1428, 2011-07

研究ノート(Note)中国における裁判独立は、中国の特色がある。それは、裁判所と中国人民代表大会(その常務委員会)、政府、上級裁判所、共産党及び社会世論との外部関係に反映されている。また、裁判所内部における裁判官と院長・副院長・庭長、裁判委員会との内部関係は中国の裁判独立にある程度の影響を及ばしている。本稿は、2009年中国最高裁判所が公表した「裁判所改革網要」をめぐって、中国における裁判独立と判決書に関する改革を検討するものである。The judicial independence of china has its own characteristics. These characteristics are expressed by the relationship between the courts and the people's congress, the courts and the government, etc. And the judicial independence is partly influenced by the relationship among the interior of courts, such as the relationship between judges and the chief judge, judges and the court adjudication committees. The Supreme People's Court of China issued the "Third Five Year Reform Program for the People's Courts (2009-2013)" in 2009. The article examined the reforms of the indicial independence and judgment around the Reform Program.
著者
中村 康雄
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

アーチェリーのシューティング動作における肩甲骨運動の無侵襲測定は,皮膚の動揺による誤差が大きく,その手法は未だ確立されていない.そこで,本研究は,モーションキャプチャ・システムを用いた肩甲骨運動の無侵襲測定法の開発を目的とした.反射マーカを肩甲骨周辺の体表面に100個貼付することで体表面形状を測定し,その形状変化から肩甲骨運動を推定した.結果から肩甲骨運動を推定できることを示した.また,アーチェリーのシューティング動作における肩甲骨運動を計測した結果から,アーチェリーのシューティング動作にともなう肩甲骨運動を測定できることを明らかにした.