著者
宮岡 剛
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

塩酸ミノサイクリンの抗精神病薬効果に関する研究塩酸ミノサイクリンは、テトラサイクリン系の抗生物質であるが、強力な神経保護作用を有することも明らかになりつつある。そのため、本研究では、統合失調症の治療薬としての塩酸ミノサイクリンの有用性とその治療効果を明らかにすることを目的とした。統合失調症患者に塩酸ミノサイクリンと抗精神病薬を用いて二重盲検試験を行い、また、統合失調症モデル動物でも同様に薬物を投与して検討を行った。その結果、ミノサイクリンが抗精神病薬様作用を有し、統合失調症の治療における増強療法の一つの手段となりうることが明らかになった。また、その効果機序に脳内における抗炎症作用の機序が想定される。
著者
淡野 将太 磯部 美良
出版者
島根大学
雑誌
島根大学教育学部紀要. 教育科学・人文・社会科学・自然科学 (ISSN:18808581)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.39-42, 2014-12-25

This study examined the effect of a psychoeducational intervention on displaced aggression with a university student sample. We predicted that separating the activation of the aggressive network evoked by provocation from a trigger would decrease displaced aggression. We conducted diary study consisted of psychoeducation about empirical studies and the theoretical model regarding triggered displaced aggression, and the efficiency of separating the activation of the aggressive network and the trigger, and asked participants to engage in distraction when they experienced a provoking event. As expected, aggression decreased through psychoeducational intervention and this decrease was maintained at the same level one week later.
著者
秋吉 英雄 井上 明日香 濱名 昭弘
出版者
島根大学
雑誌
島根大学生物資源科学部研究報告 (ISSN:13433644)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.7-16, 2001-12-20
被引用文献数
1

Background/Aims: Teleost livers are classified into two groups by histochemical properties in hepatocytes. One group contains the abundant glycogen, and the other contains the lipids in hepatocytes. The hepatic metabolism is in intimate connection of hepatic blood circulation and biliary pathway. We have studied on the correlation between behavior and histological components in livers by histochemical technique. Methods: Fifty species marine teleosts were collected from the local coasts of Shimane Peninsula and Oki Island. Livers were fixed by perfusion with paraformaldehyde, and observed by light microscopy in Osmium staining for lipid and PAS staining for glycogen. Sinusoids and vascular beds in blood capillaries were identified by immunohistochemistry for α-smooth muscle actin. Results: The lipid-rich livers had 13 fishes, the glycogen-rich livers had 33 fishes and both glycogen and lipid livers had 4 fishes. Hepatopancreas had 26 fishes. The glycogen-rich livers were well developed both the sinusoidal blood system and the bile ductal system. In contrast, the lipid-rich livers were poor developed of the sinusoidal capillaries. Conclusions: The present study indicates that there were differences in the pattern of hepatic histochemical components with different moving habits. A group of streamlined and well move fish has glycogen-rich liver, and a stocky body and poor move fish that live in the bottom of the sea, has lipid-rich liver.13;13;肝臓は生体を維持する上で中心的な役割を担う臓器で,身体へのエネルギ−供給と様々な消化吸収物質の処理を行う等,多様な代謝機能を有している.また,身体を構成するタンパク質の合成,糖原および脂質の貯蔵等の有機物質代謝,鉄・カルシウム等の無機物質代謝,ビタミンおよびホルモン代謝,胆汁産生,解毒排出など,その働きは多岐に渡っている.13; 一般に動物の運動能力は生体におけるエネルギ−産生系で作られたエネルギ−量に左右されており,常に遊泳している魚種は,海底にじっとしている魚種に比べ,消費エネルギ−量は大きい.このエネルギ−供給源となる糖・脂質の貯蔵様式はそれぞれの魚種の食性に直接影響をうけている可能性が高く(1−3),エネルギ−産生系に関連した肝細胞内における貯蔵物質の生化学的組成の質・量的な変異が各魚種間で存在することが推察される.一方,この貯蔵物質の質・量的変異は,成長過程(4)および繁殖(5,6),越冬(7)など魚の生活サイクルの中でも変動することが知られているが,その変動の幅と肝臓機能との相関関係は未だよく解っていない.13; 脊椎動物の肝臓は,一般に糖代謝すなわちグリコ−ゲンを主体としたエネルギ−代謝系を構築しているが,魚類から哺乳類に至る動物の中には,積極的に糖質から脂質転換を行って,トリグリセリド(TG)の形で肝臓に貯蔵し,このTG がβ−酸化を経てTCA サイクルに取り込まれて,エネルギ−代謝系を構築しているグループが存在する(8,9).このTG を主体とした貯蔵様式をとっている脂肪性肝臓は,病態時(10−12)におけるいわゆる脂肪肝(Fatty change)または脂肪変性(Fatty regeneration)とは明らかに異なっており,その成立要因はほとんど解明されていない.13; 脂肪性肝臓を有する代表的な動物種は軟骨魚類,硬骨魚類の一部であり,両棲類幼生であるオタマジャクシをはじめ,ヒト胎児期のある一定時期においても脂肪性の肝臓を有している(13).特に魚類の肝臓は,組織学的に主としてTG が貯蔵された脂肪性肝臓とグリコ−ゲンの貯蔵を主体としたグリコ−ゲン肝を有する群に2分され,それぞれの代謝系は肝内微小循環系(14)および胆管系(15−18)と密接に連動して機能している.13; 今回,海水産硬骨魚類50種の肝臓を用いて,魚類の行動と肝臓の組織生化学的特性の相関関係を解明することを目的に,光学顕微鏡によって形態学的に観察した.焦点は,肝臓内の生化学的特性とコレステロ−ルおよび脂質代謝に関与した胆道系と微小血液循環系の形態学的特徴に注目し,魚の生態および行動に関連した若干の考察を加えたので報告する13;
著者
作野 広和
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は集落が極端に小規模・高齢化し,コミュニティの維持・存続が不可能となる限界化過程の実態を明らかにした。また,最終的に集落の居住者が不在となる無住化のメカニズムも解明した。しかし,集落の居住者が皆無であっても,土地の所有権は残るため,農地を活用し,家屋等も継続して使用される例が多く見られた。以上のことから,集落機能が消滅する前後において,集落の終末を見据え,土地所有や土地利用のあり方等を検討する「むらおさめ」の必要性があるとの結論に至った。
著者
国井 秀伸 瀬戸 浩二 野中 資博 森 也寸志 相崎 守弘 石賀 裕明 野村 律夫
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

高度汚水処理法・直接浄化法の開発と,底質処理法(無害化・資源化)の開発を行い,流域統合管理の視点を加えて,流域の管理の違いが水文循環過程に与える影響を評価した.さらに,科学的・普遍的な立場もふまえて,汽水域生態系モニタリングのシステムを研究・開発・構築し,さらに地域と一体となった汽水域の生態系保全活動を行うことを目的に,地域住民との連携による汽水域長期モニタリング法を検討した
著者
河野 美江 西村 覚 荒川 長巳
出版者
島根大学
雑誌
島根大学教育学部紀要. 教育科学・人文・社会科学・自然科学 (ISSN:18808581)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.41-45, 2009-12-25

近年、喫煙・飲酒・性行動は青少年の健康リスクといわれている。我々は今後の健康教育の手掛かりとするために、A大学1年生に対し精神健康度調査票12項目・日本版(GHQ)、喫煙・飲酒・性行動に関する質問紙調査を行った。質問紙の回収率は93.4%(499/534)、有効回答率は79.4%であった。対象の背景は、平均年齢18.5±0.5歳(18~19歳)で、男子49.7%(197/396,平均年齢18.6±0.5歳)、女子50.3%(199/396,平均年齢18.5±0.5歳)であった。13; 10代の1年生におけるGHQの平均値は2.5±2.9で、精神不健康率は38.9%(154/396)であった。喫煙率は3.0%(12/396)、飲酒率は49.0%(194/396)、性交経験率は19.7%(78/396)で、喫煙率は男子において有意に高かった(p<0.005)。精神不健康と喫煙、飲酒、性交経験について関連は認められなかった。喫煙・飲酒・性交経験の関連では、男子において飲酒と喫煙、性交経験と喫煙が、男女において性交経験と飲酒に関連を認めた(p<0.001,p<0.005,p<0.001)。以上より、大学内敷地内禁煙などの環境要因を整えるとともに、これらのリスク行動を防止するためにA大学の特性に対応した全員参加型の健康教育を検討・試行する必要性が示唆された。13;
著者
岩瀬 峰代 奥本 素子
出版者
島根大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

近年、アートを用いた科学コミュニケーションはこれまで科学に興味がなかった潜在的関心層への伝達ツールとして注目を集めている。しかし、その効果やツールとしてのアートの特性を分析が十分になされていない。本研究では科学者とアーティストが協働して作成した2作品を用いてアートの印象効果と伝達効果を分析した。その結果、アート作品が人々に目新しさを認識させる傾向があること、アートによる大胆な翻訳表現であっても、市民に理解しやすい表現であれば伝達効果が期待できることが明らかになった。アートは高度な概念の表現だとされているが、本事例によって科学的概念の表現にも適している可能性が示された。
著者
三瓶 良和 松本 一郎 大平 寛人
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

近年,蛇紋岩化作用に伴って発生する水素の意義が見直され,地球有機物圏は下部地殻~上部マントル域に飛躍的に広がろうとしている。その発見は生物地球化学的視点から始まったが,メタンおよびプロパン以上の無機起源中~長鎖炭化水素も見つかり地球内部炭素循環の理解の変革が求められている。それら超深度炭化水素・有機物は濃度的には希薄だが地球規模での総量は膨大であり,また炭化水素は移動して集積することができるため新たな炭化水素資源域として見直される可能性も高い。本研究では新たな未解明フロンティアである地下超深部での有機物の特徴と組成,その濃度,炭素の起源,炭化水素生成プロセス等についての解明を行う。
著者
武田 信明
出版者
島根大学
雑誌
島大国文 (ISSN:02892286)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.108-118, 1993-03-01
著者
中川 政樹
出版者
島根大学
雑誌
島根大学社会福祉論集 (ISSN:18819419)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.57-69, 2008-03

イタリア理想主義の代表的思想家として広くその名を知られているベネデット・クローチェ(Benedetto Croce, 1866-1952)とジョヴァンニ・ジェンティーレ(Giovanni Gentile, 1975-1943)は、相互協力によって新しい観念論哲学の体系を構築して当時の思想的諸潮流に論戦を挑み、イタリア思想史上他に例をみない影響力を獲得したのであった。しかし、両者がそれぞれの思想体系を確立していく過程で、さまざまな理論的相違が顕現することになった。そして、相対立する二つの理想主義理論が展開されることになったのである。しかし、両者の友愛と知的協力関係は、理論的対立の深化にもかかわらず、ファシズム台頭期まで続いた。そこには何があったのか。本稿は両者の連帯が辿った1910 年代の複雑な過程の詳細を明らかにし、その理論的意味を考察する。
著者
京 俊輔
出版者
島根大学
雑誌
島根大学社会福祉論集 (ISSN:18819419)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-19, 2015-03-31

島根県は社会福祉法人南高愛隣会(長崎県)の研究事業の一環として、起訴された高齢者や障害者に対し、福祉的視点からかれらの更生支援を検討する、いわゆる入口支援に取り組み始めている。島根県では2013年10月に社会福祉法人島根県社会福祉協議会内に障がい者調査支援委員会が立ち上げられて以降、これまでに4事案において入口支援を実施してきた。13;本研究は、そのうちこの研究事業全体として初の試みとなった、在宅起訴(控訴)時点で入口支援を実施したB氏の事案を取り上げた。本研究では、この事案のなかで取り組まれた入口支援について、ソーシャルワークの事例として整理を試みた。また、勾留中と在宅起訴(控訴)時点の入口支援の比較を通じて、在宅起訴(控訴)における入口支援の可能性を検証した。その結果、入口支援の実施期間は勾留中とほぼ同じ約2ヶ月であったものの、在宅起訴(控訴)の場合は時間的制約、物理的制約が少なく、本人の障害特性等によって面会回数等を柔軟に調整することができていたことが分かった。その一方で、判決後により福祉サービスとつながった場合に誰が再犯防止の責任を担うのか、弁護人との連携をどのように構築していくか等が課題として見えてきた。
著者
久松 昌範
出版者
島根大学
雑誌
島根大学教育学部紀要. 人文・社会科学 (ISSN:02872501)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.24-39, 1967-12-28

政治意識研究の一環として,日本に於ける各政党の支持層が,いかなる人生観(広い意味での「社会的性格」)をもつかを探索することが本研究の目的である。 日本人の政治的性格(広義の「社会的性格」)をいくつかの類型にわけて考える研究の代表的なものには,日高(1960),塩原(1962),田中(1964),飽戸(1965)などの研究がある。 日高(1960)は,歴史的,社会的な形成過程から,「庶民的」「臣民的」「市民的」「大衆的」「人民的」の5つの性格型を基本的なものと考えた。 塩原(1962)は「庶民的指向」「市民的指向」「大衆的指向」「前衛的指向」の4つの類型をあげている。 田中(1964)は,日高,塩原に類似の5つの基本型を用いて,自民党員,革新党員,創価学会信者,労働学校生徒,進歩派学生,カソリック信者,高校生の各集団に態度調査を行ない,「革新系集団ほどその態度構造には論理的整序が行なわれ,いわゆるイデオロギー的因子とよべるものがみられるのに対して、保守系集団の態度構造には論理的連関性が少なく,イデオロギーとよべるものはみられないであろう」という仮説を因子分析によって検討している。 飽戸(1965)は,「保守−革新」「関心−無関心」「革新批判−保守批判」の3つの次元を組合わせた類型を,多次元解析から導き出している。 一方,政党支持態度を中心に政治意識を分析しようとする研究には,牧田,林,斉藤(1959)池内(1960),山本,久松(1965),加留部(1966),三宅,木下,間場(1967)などの研究がある。 これら2つの流れを統合的に考えようとする筆者は,現実の政党支持と「社会的性格」の基本的要素である「人生観」との関係を,日高(1960),塩原(1962)の類型を参考にしながら探索しようとするものである。
著者
團 琢磨
出版者
島根大学
雑誌
島根大学論集 (教育科学)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.30-39, 1962-03-15

New Leisure或はMass Leisureとかいわれるように,レジャーをめぐっての間題が最近大きくとりあげられるようになってきた。1959年秋の英国の総選拳では、保守、労働両党は政治,経済,外交政策とともに「余暇(レジャー)」についての宣伝戦をはなばなしく展開して注目をひいた。わが国においても、今日的余暇状況についてその問題意識はようやく成熟しつつあるとみてよい。しかし,レジャーの問題をめぐって大衆娯楽が研究の対象としてとりあげられるようになったのは新しいことではない。たしかに,大衆娯楽という概念で研究されるようになったのは大正中期以後のことである。13; 大衆娯楽,レクリェーションがどのような過程をへて今日めように発展してきたか,それに関する研究の動向や論壇の思潮がどんなものであったか,そのあとすけをすることによって現代的課題を探究することも大切である。小論では,わが国においてレジャーに関する文献にはどんなものがあり,その中でレジャーをめぐって娯楽,レクリェーションの問題をどのような視角からとりあげているかを分析することにした。13; わが国における大衆娯楽,レクリエーション研究は今日にいたるまでの歴史があったことは見逃せないが,その多くは娯楽的側面に比重がかけられ,それが断続的な姿をとりながら今日に至っているといえよう。戦後,大衆娯楽,レクリエーションは学問のアバンギャルド領域として活発な研究がなされるようになってきているが,今目の状況はなお問題提起の段階にあるとみてよかろう。研究の流れとしてこれを年代的に見たばあい,大まかに三つの時期が指摘できる。すなわち,大正9年頃から昭和6年に至る民衆娯楽論の時期,満州事変勃発から第二次大戦に至る戦時協力娯楽論の時期,第二弐大戦後から今日に至る大衆娯楽,レクリェーション論の時期である。13; 第一期は,第一次大戦を契機と.して独占資本の成熟にともなう郡市化現象の肥大を背景として,映画に代表される新興民衆娯楽が大きくおこってくるが,これの肯定,否定が中心的な問題としてとりあげられ,ついで都市娯楽の繁栄と対比させて貧困な農村娯楽の問題に焦点が移った時期である。第二期は,満州事変以後時局の潮流にそって「国民精神作興」,「勤労文化の確立」の一環として,戦争協力のかけごえに統合された娯楽が論じられた時期である。第三期は,大衆娯楽,レクリェーション論の時期である。戦後間もなくこの方面の研究が活発となってきたが,これにはレクリエーション運動の高まり,マス・メデァ研究の活発化が作用したのであった。
著者
長束 勇 小林 範之 石井 将幸 上野 和広 長谷川 雄基 佐藤 周之 佐藤 嘉展
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

初年度(2017年度)の成果を踏まえ,本年度は日本国内で実施する実験・解析の課題について取り組むこととした。一方,ブータン王国側のカウンターパートである農林省農業局(DOA)との共同研究の推進(とくにVisa取得,計測機器や資材のブータン王国内への搬入)に,日本の大学との関係の明文化が求められたことに加え,ブータン王国の国政選挙から政権交代(2018年12月)があり,現地調査等の進行を止めざるを得なかった。その中で,佐藤が2018年6月に単独で渡航し,DOAのチーフエンジニアと面談をし,現地実証実験のフィールドの確認と今後の工程を確認している。本研究課題のゴールは,開発途上国で容易に応用可能で経済性に優れ,耐震を含めた安定性を有する小規模ため池の工法開発である。本年度は,各研究分担者によって,実験室内レベルで設定した研究課題をそれぞれ進めた。根幹となるため池築造技術に関する研究としては,ベントナイトを利用する研究を進めた。ベントナイト混合土によるため池堤体内の遮水層構築は,理論的には可能である。しかし,ベントナイトの膨潤特性の管理や強度特性など,安定した貯水施設の利用には課題が残っている。本年度は,ベントナイトの種類,ベントナイト混合土を室内試験にて一定の条件で確認するための母材,ベントナイト添加率と物理的・力学的特性の評価を行った。本実験で確認した条件下でのベントナイト混合土に対して,透水性の評価までを行い,十分に実用に耐える配合条件を確保できることを確認した。今後,最終年度には,耐震性および浸透特性の解析を国内で進めながら,ブータン王国内における現地実証試験の具体化を進める予定である。具体的には,現地で確保できるベントナイトならびに母材を用いたベントナイト混合土の特性評価,ならびにため池堤体の建造技術への応用を進める予定である。
著者
清水 英寿 萩尾 真人 吹谷 智 岡野 邦宏 宮崎 均 石塚 敏
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、腸内細菌代謝産物であるスカトールが、ラット個体、培養腸管細胞、培養肝ガン細胞、それぞれに与える影響について解析を行った。結果としてスカトールは、ラット個体においては、胆汁酸代謝の撹乱を誘発させ、肝臓や回腸での遺伝子発現、そして腸内細菌叢を変動させる事が明らかとなった。また、腸管細胞を用いた解析では、スカトールがAhRを介して細胞死を導く事が確認された。さらに培養肝ガン細胞では、スカトールはERKの活性化を介して細胞増殖を導く事が示唆された。以上の本研究結果から、腸内におけるスカトールの産生は、消化管機能の異常を誘発させ、さらに消化管疾患の発症・進展へも関与する可能性が示された。
著者
福島 晟 武田 育郎 森 也寸志
出版者
島根大学
雑誌
島根大学生物資源科学部研究報告 (ISSN:13433644)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.41-46, 2001-12-20

This study aims to propose a procedure of a flood runoff analysis by the distributed runoff model using point rainfall data which are observed by the rain gages of tipping-bucket type . The previous study proposed two runoff routing models. The first one is a modfied model from the Long- and Short-Terms Runoff Model(LST-II model). The other is developed for the Kinematic Wave Storage Model(KiWS model). The proposed models have the advantage of possibility as a practical one to analyze a runoff phenomena considering the spatially distributed precipitation measured by radar rainfall measurement system. The present study is taken into acount for the input rainfall sequence calculated at the the grid cell, in which the observed ground raifall data in the watershed are converted to mesh data on the plane constructed by triangle network. In the same manner as the runoff analysis by the distributed model using radar rainfall data, it is shown that the runoff analysis is possible by applying the proposed input rainfall sequence to the previous runoff model proposed as the distributed type of KiWS model.13;13;従来の分布型流出モデルによる洪水流出解析では、流域平均雨量を入力降雨として雨水流モデルあるいは貯留関数法の適用が行われてきたが、現在では集中豪雨のような局地的な上に短時間に急変する降雨情報を分布型流出解析法に組み込むことの検討が可能となってきた。すなわち、レーダ雨量計情報を活用した水文観測システムが日本全国すべてを覆うように整備され、流域内の降雨域の移動、成長、減衰の様子が定量的に把握できるようになったことから、いわゆる降雨の時空間的分布特性を分布型流出モデルへの入力情報として反映させうる洪水流出解析法の開発・検討が可能となる環境が整ってきたといえる。13; そして、レーダによる観測降雨情報を活用した洪水予測システムの構築が注目されている。たとえば、気象庁では、山崩れ、がけ崩れの予測精度を向上させるために、「タンクモデル」と「レーダ・アメダス解析雨量」を組み合わせ、土壌水分量から土砂災害の危険度を見積もる「土壌雨量指数」を開発し、これを大雨注意報・大雨警報の発表基準に活用している。また、レーダ雨量データを活用し、国土地理院発行の数値地図に基づく疑似河道網と修正合理式を用いた流出解析法が検討され、洪水予測支援システムの開発が進められている。13; 前報では、こうした背景を踏まえ、レーダ雨量計で観測される流域内の降雨情報を活用した中小河川流域、あるいは河川上流域での洪水予測システムを構築することを基本目標に着手した検討の一部を報告した。もっとも、レーダ雨量計によるレーダメッシュ時間雨量値は、メッシュ直下の単独の地上転倒ます時間雨量値と比較した場合、平均雨量値に対して、±50% 程度の平均的な差異を有しているのが一般的とされている。したがって、現時点では、レーダ雨量計による面積雨量評価精度に問題が残されているといえ、この点は洪水流出予測精度に関係することにもなる。13; そこで、本報告では分布型流出モデルへの入力降雨系列の算定に流域内での地点雨量データを活用した手法を導入した流出解析を行い、入力降雨系列にレーダメッシュ雨量値を用いた流出解析との比較検討を行うための基礎入力降雨系列の算定的資料を得ることを目的に若干検討したことを述べる。