著者
立野 清隆
出版者
慶應義塾大学
雑誌
哲學 (ISSN:05632099)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.99-149, 1953-03

四. 時間性よりする存在の構成(脱我的思惟Ek-statisches Donkenによる存在の論理学の展開の試み)Die eigentliche Zeitlichkeit, die durch die Entschliessung der vorlaufenden Entschlossenheit erreichte wurde: d.h. der Dialog des Seins mit dem Nichts erlautert, indem er sich selbst als eine reine, Schemabildliche und selbstaffizierende Anschauung betrachtet, wie die Zeitigung der Zeitlichkeit die raumliche Vorstellung hervorbringen und das Sein im Anblickcharakter konstruieren kann, so dass wir sunachst den Begriff der transzendentalen Dynamik erreichten. Und die fundamentale Ontologie wird als die dialektische Entfaltung einer Anblick-bildlichen transzendentalen Dynamik, die die Zeitlichkeit als solche zeitigt, gefasst; und es zeigt, dass die Zeitigung der reinen selbst-affizierenden und Schema-bildlichen Zeitlichkeit die bildliche Fassung der reinen Idee der Zeitigung als solcher der Zeitlichkeit ist, und da gewinnen wir den Sinn des Daseins, der in die Zeitlichkeit reduziert ist: die Idee des Ek-sistenz. Damit wird das menschliche Seiende als solches von dem Ursprung der Selbster-schaffungen aus, (wir verstehen unter ihr das Werden des geschichtlichen Wesens des Seins) schopferisch wiedergewonnen; und dann zeigt sich zugleich auch die Philosophie der Geschichte des Seing, das systematische Ganz der reinen Erkenntnis, und konstruktiv entfalten wir den Ort des Ek-sistenz, den ek-sistenzlichen Raum, in dem ein menschliches Dasein zur Ek-sistenz wird und sich als Ek-sistenz vollendet, und versuchen wir, indem wir die dem jetzt und hier, stehenden und bleibenden Ich notwendig bestimmende Richtung der Transzendenz scharf erschliessen, die Losung des Grundproblems der Philosophie auf einen Schlag zu geben: wie man zu solch einem werden kann, das ein Mensch eigentlich gewesen ist.
著者
長谷川 博俊
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、高機能性蛍光・磁性ビーズ(FFビーズ)に上皮細胞で発現している抗原に対する抗体を固定し、血液中や便中の上皮細胞を効率よく磁気回収を行い、回収した細胞を用いての診断を行うことを目的とした。抗EGFR抗体固定化FFビーズとA431(EGFR高発現株)を用い、細胞回収率の検討を行った。回収した細胞を用いてのタンパク質発現や遺伝子異常の検索、癌細胞の同定は臨床検体を用いるには至らなかった。また、大腸癌担癌患者における血清bFGFと、大腸癌細胞の上皮細胞および血管内皮細胞に発現しているPLGFの検討を行った。静脈侵襲および術前CEA値との間に有意な相関を認めた。
著者
高山 哲朗
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

腸管NK細胞にはNKp44とNKp46の細胞表面分子により大きく二つの集団に分類され、正常腸管においてはこれらの細胞集団が均衡により腸管免疫の恒常性が保たれていることを示した。一方、クローン病においてはこれらの著しい不均衡が生じており、病態に関与している可能性を示した。また、腸管NK細胞の活性化には腸管マクロファージとの相互作用が重要であることを見出し、ここにかかわる因子としてIL-23とTL1Aの存在を見出した。これらの結果はNKp46+NK細胞がクローン病の病態に関与する可能性を示唆するものと考えられた。
著者
三上 洋平
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

申請者らは、炎症性腸疾患の炎症部位で腸炎惹起性CD4+メモリーT細胞のクローン間競合(clonal competition)により病態形成がなされていると仮説し、以下の項目を示した。(1)炎症惹起性メモリーT細胞間のTh1/Th17干渉現象の存在と病態形成への寄与(2)腸炎状態で、腸管内でTh17→Th17/Th1→Th1(Alternative)という分化経路の存在(3)制御性T細胞はこのAlternative pathwayを抑制する事以上よりAlternative pathwayの阻害が新規治療標的の候補であると考えられた。
著者
石河 晃 舩越 建 石井 健 大内 健嗣 清水 篤
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

落葉状天疱瘡は全身の皮膚に水疱、びらんをきたす自己免疫疾患であるが、自己抗体が抗原に結合してから水疱発生までの機序は明らかではない。本研究では正常ヒト皮膚器官培養にクローン化した抗体を局所注射し、経時的に超微細組織変化を観察した。病原性抗体注射後2時間後にはデスモソームの減少が見られ、22時間後にはデスモソームの消失と細胞離開が見られた。デスモソームの数が減少することによる細胞離開の経路が存在することが推察された。
著者
梅澤 一夫 池田 洋子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

1)NF-κB阻害剤DHMEQの抗癌活性と接着因子発現阻害NF-κBの阻害剤は抗炎症剤、抗癌剤として期待され、私達はepoxyquinomicinの構造をもとにNF-κB阻害剤DHMEQをデザイン・合成した。前年度DHMEQがNF-κB活性化シグナルを核移行阻害という比較的下流で阻害していることがわかったので、今年度、恒常的にNF-κBが活性化しているヒト膀胱癌由来KU-19-19細胞を用いてEMSAを行ったところ、DHMEQは処理後2-6時間で阻害作用を示し、さらに今年度KU-19-19細胞でもNF-κBの核移行を阻害していることがわかった。さらにDHMEQはNF-κBが恒常的に活性化しているヒト前立腺癌JCA-1細胞においてもNF-κBを阻害することがわかった。またJCA-1腫瘍の増殖をヌードマウスで腹腔内投与により顕著に抑制することがわかった(Cancer Res.63,107-110,2003)。一方、NF-κBは血管内皮細胞の機能にも動脈硬化や転移の原因として作用している。DHMEQをヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に作用させると、NF-κBの活性化を阻害し、ICAM-1,VCAM-1,E-selectinなどの接着因子発現を阻害した。さらにDHMEQはHUVECと初代培養ヒト白血球およびHUVECと固形癌細胞や白血病細胞の接着をshear stress(流れ)条件下でも阻害した。以上のことからDHMEQは動物実験で抗癌硬化を示し、さらに動脈硬化や転移への抑制効果が期待される。2)放線菌由来アポトーシス誘導物質IC101の生合成経路二次代謝産物生合成の研究は、遺伝子レベルの研究への発展や、新しい生理活性物質の発見に有用である。アポトーシス誘導物質IC101は異常アミノ酸を含む環状ヘキサデプシペプチド構造を有し、生産菌からどのようにIC101がつくられるのか興味深い。そこで13Cラベルアミノ酸等を用い、IC101の生合成経路の解析を行った。面白いことにC5 side chainはイソプレンの形をしているがLeuが取り込まれ、前駆体になっていることがわかった(J.Nat.Prod.65,1953-1955,2002)。
著者
伊香賀 俊治 堀 進悟 鈴木 昌
出版者
慶應義塾大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

被験者実験を行い、入浴時の高齢者に対応した体温予測モデルを開発した。そして本モデルが高齢者の入浴時の体温が精度良く再現されていることを検証した。またインターネットアンケート調査と入浴事故に関する症例データを基に、体温と熱中症リスクの関係の定量化を行った。さらに住宅仕様の改善による熱中症リスク低減効果を明確にすることを目的とし、"住宅仕様"、"入浴方法"、"体温上昇"、"熱中症リスク"の各関係を定量的に把握し、高齢者の入浴時の熱中症リスクを評価した。
著者
鈴木 諒一
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.1-8, 1996-12-25

平成時代に入ってから,関東地方のように大平野があり,気候も温和な地区を商工業の発展地区にしたいと云う開発計画が聞かれた。但し,京浜工業地帯や神奈川県の海岸地帯は過密地帯でこれ以上,人ロを増やすことは好ましくないし,房総半島のような小高い丘のある場所は開発計画から外してある。又,開発拠点としては,人口20万人以上の都市を中心として開発を進めれば,自らその周辺を潤おすであろうとの観察も成り立つ筈である。かくして開発拠点としては, (1)八高線より東,(2)千葉-成田を結ぶ線及び常磐線より西,(3)相模原市, (4)北は,水戸-高崎を結ぶ線より南,の地区に集中させる。そこで,先ず小売業の売上金額を考察すると,人口の大小と売上高との取引はある筈であるが,その相関を大きく乱しているのは,宇都宮市と水戸市であって,いずれも人口の割に,販売高が多い。この原因を小売業の内部構造に求める。千葉県船橋市は各種商品小売業の販売額が大きく,北関東の都市では,各専門店の売上高の割合で大きい。又,人口増加率と売上高の伸び率が大きいのは,川越市と所沢市である。第2に製造業との相関をとると,高崎市は小売業の割に製造業の出荷額が大きく,船橋市はその逆である。前者は電気機械,輸送用機械等のシェアが大きく,後者は化学工業,一般機械等の消費財のウエイトが大きい。第3にサービス業と小売業の相関を見ると,船橋市では宿泊所のウェイトが低く,自動車等の修理業のウェイトが大きい。これに対して高崎市では,宿泊所のウェイトが高く,「その他の修理業」のウェイトが低い。そして千葉県の方が群馬県より零細経営の事業所が少ない。
著者
大杉 八郎
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.98-128, 1976-08-30
著者
河合 正朝
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

日本刀の学術的価値を明確にするためには、その表面形態解析が不可欠である。これまで表面形態解析は刀剣研究者に依存しており、刀剣研究者がいう日本刀表面形態の特徴を刀剣愛好家が視覚的に理解することは困難であった。本研究では株式会社リコーと、従来の日本刀鑑識法を踏襲した多色拡散撮像装置を共同開発し、日本刀100口のデジタル画像を作成した。その結果を解析し、日本刀五大流派の地鉄の特徴をまとめた資料集を作成した。併せて、研究成果の一部を平成23年度「名物刀剣」展、平成25年度「清麿」展で公開し、日本刀の地鉄の美とその変遷を一般に認識させるよう努めた。
著者
前田 淳
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.1-27, 1996-04-25

信託公社の解体直後,1995年1月1日,同運営評議会議長(Vorsitzender des Treuhandanstaltsverwaltungsrat)マンフレッド・レーニングス(Manfred Lennings)は,「東独はヨーロッパ有数の成長地域に数えられるであろう」と述べ,信託公社の4年半に及ぶ業績を最大限に自負した。さらに,「『かつての手を焼かせる子供』であった東独工業は1995年も昨年同様,20%の高い成長率を示すであろうし,そのことで旧東独時代の生産水準に到達するであろう」(傍点は引用者)と付言している。しかし,彼の主張を冷静に判断するならば,信託公社が1990年6月17日, 旧東独で産声を上げ,1994年12月31日,その任務を終了し,解体されるまで,旧西独連邦政府,企業,就中,銀行の全面的バックアップを受容したにもかかわらず,4年半の時間を消費しても尚,旧東独の経済水準には到達しえなかったことになる。我々はこの客観的事実を率直に認識すると同時に,その過程及び東独地域経済の苦境の原因の究明を分析の目的として措定する。特に本稿では,信託公社の中核業務である民営化の準備過程-1990年代-に注目し,同過程整備の方法及び特質を詳らかに考察し,その論点を明確にした。その際,通貨同盟締結が同過程に多大なるインパクトを与えている点を強調した。具体的には,信託公社による(1)人民所有企業から資本会社への転換業務,(2)通貨同盟締結を直接的契機とする財務的支援,(3)取締役会・監査役会の設置の3点を中心に検討した。(2)に関しては,さらに第3階梯に分割し,各々の内実と意義を明確にした。(3)については,両機関の機能を支援する意味での経営コンサルティング会社と銀行の役割と重要性も同時に強調した。
著者
小田原 宏行
出版者
慶應義塾大学
雑誌
共立薬科大学研究年報 (ISSN:04529731)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.11-20, 1998-06-25

D_n symmetry is represented by the rotations about the center of the D_n and an axis of symmetry. In this paper, I introduce symmetrical mapping using four parameters on the plane with D_n symmetry. Under this mapping, I show how the chaos is created, and the characteristic features of chaos are shown for several values of n. We can see that the symmetry breaking in the symmetrical mapping is possible associated with less symmetrical figures in the case n=8.
著者
東畑 隆介
出版者
慶應義塾大学
雑誌
史学 (ISSN:03869334)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.339-360, 1980-03

本稿は、ハノーファー国王エルンスト・アヴグストによる憲法廃止を契機として生じたハノーファー王国の憲法紛争の一環として、ゲッティンゲン大学の七教授が王の憲法廃止に抗議し、罷免された「ゲッティンゲン七教授事件」を考察しようとするものである。この事件に関しては、既に千代田寛教授が大部の論文を発表していられる。千代田教授は主として大学史の観点からこの事件を考察しておられるが、事件の憲法史的側面をも詳細に記述しておられる。従って、この事件に関して、私が付け加えることの出来る余地は殆んどないように思われる。しかし、この事件は、ドイツにおいても有名な割りに本格的な研究書に乏しいため、事実的な経過に関して必ずしもよく知られていないように思われるので、本稿では、事件の事実的な経過を出来るだけ詳細に記述することに留意した。
著者
首藤 恵
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.55-70, 1994-04-25

この研究の目的は,1980年代後半に急成長を経験したアジアNIESおよびASEAN地域の主要な8株式市場を対象として,この時期に各国で進められた需給両面への市場育成政策が価格形成に与えた影響を,市場制度デザインと市場構造の適合性という視点から実証分析することにある。分析の方法は,日別株式収益率および週別株式収益率を用いた分散比テストによって短期株価形成の歪みを検出し,さらにその結果をもとに,市場構造要因と関連する証券市場政策が短期株価形成に与えた影響を,パネル・データを用いた重回帰分析によって検証する。主なファクト・ファインディングは次の3点である。(1)証券投資需要の活発化は,時価総額の増大と売買の集中をもたらし,短期的な株価変動を増幅した。積極的な株式公開政策が実質的な株式供給に必ずしも結びつかず,投資需要の拡大に十分に対応できなかったからである。(2)取引所売買システムの機械化は,取引の迅速化と売買量の増加に寄与したとしても,市場の厚みと広さなど流動性供給に寄与したとはいえない。これらの市場で短期的な株価変動が大きい一つの理由は,流動性供給とリスク負担を担う,情報力と資本力を装備した証券業者が十分に存在しないままに,売買システムの効率性と市場規模の拡大が追求された点にある。(3)NIES市場では日々の株価変動が高まるほど短期株価は過剰反応し,ASEAN市場では逆に価格調整が遅れる煩向かある。それぞれの市場の価格形成プロセスの課題が指摘される。
著者
菅野 博史
出版者
慶應義塾大学
雑誌
哲學 (ISSN:05632099)
巻号頁・発行日
vol.93, pp.223-248, 1992-01

0. はじめに1. 意味という現象2. ダブル・コンティンジェンシー3. 出来事としてのコミュニケーション4. コミュニケーションのオートポイエシス・システム5. 行為の接続と構造6. 基礎概念の検討The basic concept of sociology has been regarded as "action". This kind of thought, has long theoretical accumulations after Max Weber and holds a central position in social theory. Against this tradition, however, Niklas Luhmann suggests that the concept of meaning should be basic. According to him, meaning is more suitable to describe the contingent possibility of the "world". And he introduces phenomenological insights into his framework of system theory, building it up into the theory of autopoietic systems of communications. In this paper, the author tries to summerize his discussions on meaning and communication in the first place, and examines his most important conception like self-reference (Selbstreferenz) and self-observation (Selbstbeobachtung) in the next. In conclusion, the author (1) critisizes the ambiguity of his concept "self-reference" and (2) points out theoretically fruitful possibilities of observing self-observational systems which always deparadoxize its own paradoxes.
著者
権丈 善一
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.24-46, 1992-06-25

ここでの関心は,これまで日本の社会保障政策がスカンジナビア諸国に代表されるヨーロッパの小国よりも消極的であった原因を探るとともに,現在の高福祉国家がこれからも高福祉政策を継続する蓋然性,および,今後の日本の社会保障政策が急激に積極化する蓋然性を確かめることにある。分析にはキャメロン・モデルを発展させた"社会保障と経済政策"モデルを利用する。キャメロン・モデルは,先進資本主義諸国のなかでもヨーロッパの小国の多くが,他の先進資本主義諸国よりも公共経済の規模の大幅な増加を経験した現象を説明するものであり,"社会保障と経済政策"モデルは,キャメロン・モデルを社会保障と経済政策との関係に引きなおしたものである。そして,この社会保障と経済政策モデルにもとづく限り,現在の高福祉国家群はこれからも高福祉政策をとり続ける可能性が高いこと,および,今後の日本の社会保障政策が急激に積極化する可能性は低いことを,本稿では予測する。