著者
廣津 昂 村田 伸 斎藤 正一 永友 知子 河端 博也
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.167-172, 2022-02-28 (Released:2022-03-25)
参考文献数
22

本研究の目的は,上肢骨折患者21名(平均年齢63.6±14.6,男性5名,女性16名)を対象に,ペットボトルキャップテスト(PET bottle cap test;PCT)を縦断的に評価し,PCT が上肢機能の回復過程を反映するか否かを検証することである。その結果,PCT とHand20は初回と比べて1週後,および1週後に比べて1ヶ月後に有意差を認めた。また,ペグテスト,握力,ピンチ力の患側は初回と比較して1週後に有意差を認めたが,1ヶ月後に有意差を認めなかった。一方で,ボタンの留め外し時間と更衣時間は,初回と比べ1 週後には有意差が認められなかったが,1ヶ月後に有意差が認められた。以上より,PCT は上肢骨折患者の患側機能および両手の上肢操作能力の経時的変化を評価できる有用な評価法であることが示された。PCT は特別な測定機器を必要とせず,ペットボトルとストップウォッチのみで計測できる汎用性の高い評価法であり,臨床現場で使用できることが示唆された。
著者
大杉 紘徳 本塚 貴裕 佐久間 崇 横山 茂樹 村田 伸
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.129-133, 2013-10-01 (Released:2014-03-18)
参考文献数
18
被引用文献数
3 4

要旨:[目的]本研究は短時間の足底感覚刺激介入が足底感覚および足趾把持力に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。[方法]若年健常成人22名を介入群(12名,平均26±3歳)と対照群(10名,平均25±3歳)の2群に振り分け,足底感覚刺激介入前後の足底二点識別覚,足趾把持力,Functional reach test(FRT)を測定した。介入方法は,介入群には中敷に突起がついた履物の上に3分間立位を取ることとし,対照群では平らな床面の上に裸足で3分間立位保持をすることとした。[結果]介入前後で,介入群では二点識別覚およびFRT に有意差を認め(p<0.05),対照群では二点識別覚のみに有意差を認めた(p<0.05)。[考察]短時間の足底感覚刺激介入は動的バランスを向上させるが,FRT に影響を及ぼすと考えられる足底感覚や足趾把持力に対しては,足底感覚刺激介入による課題特異的な効果を示さないことが明らかとなった。
著者
白岩 加代子 村田 伸 堀江 淳 大田尾 浩 村田 潤 宮崎 純弥
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.103-107, 2013-10-01 (Released:2014-03-18)
参考文献数
27
被引用文献数
2 2

睡眠は,脳や身体機能を健常に保つために必要不可欠であり,生活の質(QOL)を向上させるための基本的役割を担っている。本研究では,地域在住高齢者256名の睡眠状況(睡眠時間と主観的睡眠感)を調査し,QOL に及ぼす影響について検討した。その結果,睡眠時間良好群(7~8時間)142名と睡眠時間不良群(7時間未満や8時間以上)114名の主観的健康感,生活満足度,生きがい感,人間関係に対する満足度,活動能力には有意差は認められなかった。一方,主観的睡眠感良好群161名と主観的睡眠感不良群95名のQOL を比較すると,活動能力には有意差は認められなかったが,それ以外の4項目には有意差が認められ,主観的睡眠感良好群の方が良好な値を示した。これらの知見から,高齢者の睡眠状況は睡眠時間という量的な因子よりも質的な因子である主観的睡眠感の方がQOL への関与は大きい可能性が示唆された。
著者
相馬 正之 村田 伸 甲斐 義浩 中江 秀幸 佐藤 洋介 村田 潤
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.73-77, 2021-07-31 (Released:2021-08-11)
参考文献数
23

[目的]本研究では,体幹垂直位と体幹前傾位で測定した足趾把持力と下肢の筋活動量を比較し,体幹の肢位変化が足趾把持力に及ぼす影響を明らかにするため,測定値の再現性および最大筋力の発揮の観点から検討した。[対象・方法]健常成人男性18名を対象とした。足趾把持力の測定は,体幹垂直位と体幹前傾位の2条件で行った。測定項目は,足趾把持力および足趾把持力発揮時の大腿直筋と大腿二頭筋長頭,前脛骨筋,腓腹筋内側頭の筋活動量とした。[結果]分析の結果,級内相関係数(1,1)は,体幹垂直位がr =0.921,体幹前傾位がr=0.950であった。足趾把持力は2条件間には有意差を認めなかったものの,体幹垂直位における腓腹筋内側頭の%IEMG は体幹前傾位より有意に高値を示した。[結語]本研究結果から,体幹垂直位と体幹前傾位による体幹変化は,足趾把持力の再現性や最大筋力に影響を及ぼさないものの,腓腹筋内側頭の%IEMG に影響を及ぼすことが示された。
著者
村田 伸 甲斐 義浩 安彦 鉄平 中野 英樹 松尾 大 川口 道生 松本 武士 吉浦 勇次 角 典洋
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.19-22, 2018-04-30 (Released:2018-08-12)
参考文献数
17

本研究の目的は,変形性膝関節症患者20名(全て女性:64.0±7.0歳)を対象に,通常歩行と最速歩行時の歩行パラメータを比較し,歩行の特徴を明らかにすることである。その結果,最速歩行時には有意(p<0.01)に速度が速まるが,その他ストライド長と歩幅は有意(p<0.01)に広がり,足角と歩行角は有意(p<0.05)に狭まった。また,立脚時間と両脚支持時間が有意(p<0.01)に短縮した。ただし,歩行速度を高めるためのパラメータの効果量を算出すると,ストライド長と歩幅は中等度(ともにΔ=0.69)であったが,立脚時間と両脚支持時間の短縮の効果(Δ=-1.62と-1.14)は大きかった。これらのことから,変形性膝関節症患者はストライド長や歩幅を広げるよりも,立脚時間や両脚支持時間を短縮させて,速く歩こうとすることが示唆された。
著者
中川 明仁 堀江 淳 江越 正次朗 松永 由理子 金子 秀雄 高橋 浩一郎 林 真一郎
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.1-5, 2019

<p>慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease; COPD)患者の心理特性について,病期の違いという観点から検討した。COPD 患者38名を対象とし,エゴグラムを用いてパーソナリティを評価して,Ⅰ期群とⅡ期群の差異について比較検討した。その結果,Ⅱ期群はⅠ期群と比べてFC(Free Child)が有意に低い値となり,病期が進行すると感情の表出性が乏しくなることが示唆された。また,病期を統合してCOPD 患者全体のパーソナリティを検討した結果,CP(Critical Parent)とNP(Nurturing Parent)が同程度に最高値となり,続いてA(Adult)とFC が同程度の値となり,AC(Adapted Child)が最も低い値を示した。COPD 患者のパーソナリティの特徴として,頑固さや自己への甘さが強まり,周囲の意見やアドバイスへの傾聴の姿勢を示しにくいことが示唆された。</p>
著者
久保 温子 村田 伸 平尾 文 小渕 可奈子
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.77-81, 2014-07-01 (Released:2014-09-12)
参考文献数
20

【目的】本研究の目的は、幼児における開眼片足立ちと幼児運動能力調査項目値との関連性から、幼児期の開眼片足立ち測定の妥当性を検討した。【対象】健常年中、年長児173名とし、平均月齢は66.9±6.8カ月であった。【方法】開眼片足立ち時間を測定した後、文部科学省の示した幼児運動能力調査より、25m走、立ち幅跳び、ボール投げ、両足跳び越し、体支持時間を評価した。開眼片足立ち時間と各運動能力測定値との関連をピアソンの相関係数から検討した。【結果】開眼片足立ち時間は、25m走、立ち幅跳び、両足跳び越し、体支持時間で有意な相関が認められた。【結語】幼児の開眼片足立ちは多くの運動機能を反映する評価であり、幼児期における開眼片足立ち測定の妥当性が示唆された。
著者
中村 直樹 伊藤 一也 蒲田 和芳 秋山 寛治
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.91-95, 2015-07-31 (Released:2015-09-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1

目的:“チェストグリッピング”は上部腹筋群の緊張による下位胸郭拡張制限を指し,腰痛の一因とされている。本研究はチェストグリッピングの拮抗筋と考えられる下後鋸筋に関して,健常者の体幹運動中における筋活動を検証することを目的とした。対象:健常男性1名を対象とした。方法:①端座位でのプッシュアップ,②端座位での体幹右回旋,③端座位での体幹左回旋,④端座位での胸椎伸展,⑤腹臥位での体幹伸展,⑥左下側臥位での体幹右側屈,⑦左下側臥位での体幹右回旋,⑧四つ這い位での右上肢挙上,の8試技における右下後鋸筋の筋活動を表面電極およびワイヤー電極を用いた筋電計にて測定した。結果:端座位での体幹右回旋,四つ這い位での右上肢挙上,左下側臥位での体幹右回旋時において右下後鋸筋は高い活動を生じた。結語:下後鋸筋は体幹回旋時に片側性の活動を示すことから,下位肋骨を後方へ引く能力を有すると推測される。
著者
村田 伸 合田 明生 中野 英樹 安井 実紅 高屋 真奈 玻名城 愛香 上城 憲司
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.67-71, 2020-07-22 (Released:2020-08-04)
参考文献数
23

本研究の目的は,デイサービスを利用している34名の女性高齢者を対象に,30秒椅子立ち上がりテスト(30-sec Chair Stand test; CS-30)と虚弱高齢者用10秒椅子立ち上がりテスト(10-sec Chair Stand test for Frail Elderly; Frail CS-10)を併せて行い,大腿四頭筋筋力とともに各種身体機能評価の測定値との相関分析から,デイサービス事業所で実施しやすい下肢機能評価法を検討することである。相関分析の結果,大腿四頭筋筋力と有意な相関が認められたのは握力のみであったが,CS-30とFrail CS-10はともに握力・最速歩行時間・Timed Up Go Test·Trail making test Part A との間に有意な相関が認められた。さらに,Frail CS-10のみ通常歩行時間とも有意な相関が認められた。これらの結果から,特別な機器を必要とせず,簡便に短時間で実施できるFrail CS-10は,デイサービス利用高齢者の歩行能力や動的バランスを反映する下肢機能評価法であることが示唆された。
著者
山下 裕 古後 晴基 西上 智彦 東 登志夫
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.101-106, 2018-10-16 (Released:2018-10-19)
参考文献数
32

【目的】慢性頸部痛患者における破局的思考や運動恐怖感が能力障害に関連する因子かどうか検討した。【方法】3ヶ月以上頸部痛を有する外来患者99名(外傷性35名,非外傷性64名)を対象とした。評価項目は,Neck Disability Index(NDI),安静時・運動時疼痛強度,疼痛持続期間,破局的思考,運動恐怖感とした。Mann-Whitney U 検定を用いて発症起点の有無における評価項目を比較した。また,Stepwise 法による重回帰分析を用いてNDI に関連する項目を検討した。【結果】外傷性頸部痛患者と比較して非外傷性頸部痛患者は年齢,疼痛持続期間において有意に高値を示したが,その他の項目に有意な差は認められなかった。NDI と関連する項目は,破局的思考と安静時・運動時疼痛強度であった。【結論】慢性頸部痛患者においては,外傷性か非外傷性に関わらず破局的思考が能力障害に関連することが明らかとなった。
著者
廻角 侑弥 久保 峰鳴 幸田 仁志 福本 貴彦 今北 英高 藤井 唯誌 稲垣 有佐 田中 康仁
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.61-65, 2020-07-22 (Released:2020-08-04)
参考文献数
17
被引用文献数
1

[目的]人工膝関節全置換術後患者の杖歩行が自立するまでの日数(歩行自立日数)に影響を及ぼす要因を術前項目より検討した。[対象]片側の人工膝関節全置換術を施行した99名とした。[方法]測定項目は歩行自立日数,自己効力感,痛みの破局的思考,安静時痛,歩行時痛,膝関節屈曲可動域および伸展可動域,等尺性膝伸展筋力,歩行速度とした。統計解析はピアソンの相関係数を用いて歩行自立日数との関係性を分析し,また歩行自立日数を目的変数,他項目を説明変数とした重回帰分析を行った。[結果]歩行自立日数は,自己効力感(r=-0.40),痛みの破局的思考(r=0.27),等尺性膝伸展筋力(r =-0.24),歩行速度(r=-0.25)との間に有意な相関関係を認めた。重回帰分析の結果,歩行自立日数に影響を及ぼす要因として自己効力感のみが抽出された。[結語]人工膝関節全置換術後の杖歩行の自立には筋力や歩行速度だけでなく,自己効力感が影響すると示唆された。
著者
岩瀬 弘明 村田 伸 宮崎 純弥 大田尾 浩 堀江 淳
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.101-108, 2012 (Released:2012-12-05)
参考文献数
33
被引用文献数
3 3

本研究の目的は,床から立ち上がる動作の過程で,四つ這いをとるか否かに影響を及ぼす要因を明らかにすることである。方法は,地域在住の女性高齢者47名を対象に,握力,大腿四頭筋筋力,足把持力,上体起こし,長座体前屈距離,片足立ち保持時間を評価した。床から立ち上がる動作の過程で四つ這いをとる要因について,ロジスティック回帰分析を用いて検討した。その結果,立ち上がり動作の過程で四つ這いをとる要因として,上体起こしが選択された。これらの知見から,高齢者が床から立ち上がる際,四つ這いを経由するか否かには,体幹筋力が関係しており,体幹筋力が強いものほど四つ這いをとらずに立ち上がれる可能性が示された。
著者
桐野 耕太 安彦 鉄平 川添 里菜 小澤 美奈 和田 真紀 白岩加代子 堀江 淳 阿波 邦彦 窓場 勝之 村田 伸
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.65-69, 2015-07-31 (Released:2015-09-01)
参考文献数
14

本研究の目的は,登山前後における大腿四頭筋の筋疲労について,筋力および筋活動量を用いて検討することである。対象は健常成人15名であった。測定は,登山前と登山後に最大努力下(100%MVC)での等尺性膝関節伸展時の筋力および筋活動量を計測した。さらに,4種類の負荷量(10%,30%,50%,70%MVC)別の筋活動量を測定した。測定値は,ハンドヘルドダイナモメーターを用いた筋力値と,筋電図を用いた大腿直筋,内側広筋および外側広筋の筋活動量とした。その結果,登山後に大腿四頭筋,特に内側広筋と外側広筋に筋疲労が生じる可能性が示された。この要因は,単関節筋である内側広筋と外側広筋が登山において繰り返し使用されたためと考えられた。
著者
林 勇樹 窓場 勝之 村田 伸 安彦 鉄平 井上 遼一 岡本 雄輝 澤田 貴大 村山 寛和 白岩 加代子 阿波 邦彦 堀江 淳
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.13-17, 2017

<p>登山前のスクワット運動が,登山後の大腿四頭筋の筋疲労耐性に与える効果を検討した。対象は健常成人20名とした。登山2週間前に,登山と類似したスクワット運動を行う介入群(10名)と介入を行わないコントロール群(10名)に分類した。大腿四頭筋の筋活動をより強調させるため片脚にて実施した。登山前後に最大随意収縮の50%に相当する大腿四頭筋筋力を91秒間持続させたときの中間周波数を用いて筋疲労を評価した。測定筋は内側広筋,外側広筋,大腿直筋の3筋とし,コントロール群と介入群を比較した。その結果,コントロール群では,登山後に測定したすべての筋が登山前と比べ中間周波数の低下が早期に起こり,筋疲労が確認された。介入群は,単関節筋である内側広筋,外側広筋の中間周波数の低下は早期に起こらず,筋疲労は軽減された。これらのことから,登山前にスクワット運動を行うことで,筋疲労が軽減する可能性が示された。</p>
著者
藤本 貴大 田中 繁治
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.65-71, 2016-07-29 (Released:2016-09-28)
参考文献数
24
被引用文献数
1

高齢女性腰椎圧迫骨折患者を対象に,腰部多裂筋(以下;LM)および脊柱起立筋(以下;ESM),大腰筋(以下;PM)の脂肪浸潤率を定量的な方法で計測し,筋肉の脂肪浸潤程度に特徴が見られるかを検討した。計測には,MRI 画像を利用した。MRI 画像は,第1腰椎から第1仙骨上縁までの椎体上縁と椎体中間位計11箇所を利用した。脂肪浸潤率は,各筋の横断面積とその面積に占める脂肪浸潤面積の比率とした。計測には,Image J1.47を利用した。結果,全11箇所のLM およびESM の脂肪浸潤率は,13.9~26.5%であった。PM は0.4~2.0%であり,LM およびESM と比較し有意に低値であった(p<0.01~0.001)。各筋の脂肪浸潤率とBMI とは,有意な相関関係は認められなかった。同一筋内全11箇所における脂肪浸潤率の多重比較では,有意差は認めなかった。また,骨折部と非骨折部に分け比較した場合の結果も有意差は認めなかった。以上のことより,本研究の高齢女性腰椎圧迫骨折患者におけるLM およびESM の脂肪浸潤率は,限局的ではなく腰椎全域で10%以上生じていることが明らかとなった。
著者
末廣 忠延 石田 弘 小原 謙一 藤田 大介 大坂 裕 渡邉 進
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.29-33, 2018

<p>【目的】目的は健常者と慢性腰痛者における腹臥位での股関節伸展運動時の筋活動量を比較することである。【対象】対象は健常成人20名と慢性腰痛者20名とした。【方法】筋活動の測定は表面筋電計を使用し,被験筋は対側の広背筋,両側の脊柱起立筋,多裂筋,同側の大殿筋,ハムストリングスとした。被験者は腹臥位となり膝を伸展位で股関節を伸展10°に保持した際の筋活動量を測定した。群間の筋活動量の比較にはMann-Whitney のU 検定を使用した。【結果】大殿筋の活動は,健常者に比較して慢性腰痛者で有意に高値を示した。他の筋については有意差を認めなかった。【考察】慢性腰痛者は股関節伸展時に健常者よりも高い大殿筋の活動を示すことが明らかとなった。この原因としては,大殿筋の筋力低下や股関節伸展側の骨盤の水平面上での腹側への回旋が生じた状態で股関節を伸展したことが要因として考えられた。</p>
著者
幸田 仁志 森原 徹 甲斐 義浩 来田 宣幸 松井 知之 東 善一 平本 真知子 瀬尾 和弥 宮崎 哲哉 木田 圭重
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.127-131, 2018

<p>〔目的〕投球肩・肘障害を有する高校野球投手の特徴を,関節可動域や筋力の非投球側差より分析した。〔方法〕京都府下の野球検診に参加した高校野球投手76名を対象とした。測定項目は,投球肩・肘障害の判定,関節可動域および筋力とした。関節可動域および筋力は両側に対して実施し,投球側から非投球側の値を減算することで非投球側差を算出した。統計解析には,投球肩・肘障害ごとに,対応のないt 検定を用いて陽性群と陰性群の関節可動域および筋力の非投球側差を比較した。有意水準は5%とした。〔結果〕投球肩障害では,陽性群の肩関節内旋可動域の非投球側差は陰性群と比較して有意に低値を示した(p<0.05)。投球肘障害では,陽性群の肩関節外旋可動域の非投球側差は,陰性群と比較して有意に低値を示した(p<0.05)。〔結論〕肩関節外旋可動域や内旋可動域の非投球側差による分析は,野球選手の機能低下や障害予測を判別する一助となる可能性がある。</p>
著者
古後 晴基 山下 裕
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.187-193, 2020

<p>[目的]本研究は,野球選手を対象とし,超音波画像を用いて回旋腱板の筋厚特徴を検討することを目的とした。[対象]被験者は大学生で,硬式野球経験が高校で3年間あり,軟式野球経験を含めた野球経験が5年以上ある男性30名(60肢)を対象とした。[方法]調査項目は,質問紙による調査と超音波画像による腱板筋群(投球側および非投球側)の筋厚とした。[結果]各筋厚を投球側と非投球側で比較した結果,棘下筋は投球側が有意に低値であり,肩甲下筋は投球側が有意に高値であった。投球肩障害の既往歴あり群と既往歴なし群で比較した結果,ポジション歴や各筋厚に有意差は認められなかった。しかし,ポジション歴に関して,既往歴なし群は野手経験のみの者が多く,既往歴あり群は投手もしくは捕手経験の者が多い傾向であった。さらに,投球側の各筋厚を従属変数とし,身長,体重,野球歴,ポジション歴,既往歴を独立変数として重回帰分析を行った結果,棘下筋と小円筋の筋厚は,野球歴に有意な負の関連が認められた。[結語]これらのことから,野球経験が5年以上ある野球選手において,棘下筋の筋厚は投球側が薄く,肩甲下筋は投球側が厚いことが示唆された。投球障害肩の既往歴がない者は野手経験のみの者が多く,既往歴がある者は投手もしくは捕手経験ありの者が多い傾向であった。また,経験年数は棘下筋と小円筋の筋厚に負に影響することが示唆された。</p>
著者
岩瀬 弘明 村田 伸 日沖 義治 北尾 沙友里 中村 純子 中井 良哉 村上 貴士 窓場 勝之
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.1-4, 2013 (Released:2013-09-12)
参考文献数
16
被引用文献数
3 2

本研究の目的は,TMT-A が認知機能低下を識別するための有用な評価法となり得るのか否かについて検討することである。方法は,入院中の高齢患者31名を対象にTMTA を測定し,MMSE,FIM-C との関連について検討した。その結果,MMSE,FIM-C との間に有意な負の相関が認められた。また,TMT-A の所要時間が5分未満の対象者は,そのすべてがMMSE のカットオフ値である24点以上であり,認知機能低下の疑いが低かった。一方,TMT-A の所要時間が5分以上の対象者は,その多くがMMSE23点以下であり,認知機能の低下が疑われた。本研究の結果から,TMT-A の施行時間に5分以上を要する患者には,MMSE を行う必要性が示唆された。すなわち,TMT-A はMMSE を行うか否かのスクリーニングテストとして有用である可能性が示された。
著者
古後 晴基 村田 潤 東 登志夫 村田 伸 鳥山 海樹 山下 裕 今村 純平
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.29-33, 2016-04-30 (Released:2016-07-29)
参考文献数
20
被引用文献数
1

本研究の目的は,浮腫における圧痕深度計測法の妥当性と圧痕性浮腫の判別が可能な評価法であるかを明らかにすることである。22名44肢の浮腫有と診断された患者と,30名60肢の地域在住の健常高齢者を対象とした。被験者の足底を床面に付けた端座位とし,第3中足骨骨頭の足背部の圧痕深度をエデゲー?にて計測した。また,同一部位の皮下軟部組織厚を超音波画像診断装置にて計測した。統計解析には,圧痕深度値と皮下軟部組織厚値をPearson の相関係数にて分析した。また,圧痕深度値は,対応のないt 検定を用いて患者と健常者間で比較した。その結果,圧痕深度値と皮下軟部組織厚値との間に,極めて強い相関関係を示した。また,患者群は健常者群と比較して圧痕深度値が有意に高値を示した。本研究より,圧痕深度計測法は妥当性ある評価法であり,圧痕性浮腫の有無を判別可能な評価法である可能性が認められ,圧痕性浮腫における有用な評価法であることが示唆された。