著者
竹内 亮介
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.43-55, 2020-06-30 (Released:2020-06-30)
参考文献数
22

パーソナライズ広告は,個人情報の収集と活用を伴うがゆえに,消費者のニーズに関連した情報を提供する可能性だけでなく,彼らのプライバシーを侵害してしまう可能性もある。パーソナライズ広告を視聴する消費者は,(1)関連性をプライバシー侵害の懸念より高く知覚したり,(2)前者より後者を高く知覚したり,(3)両者を同程度に知覚したりするであろう。これら3種類のパターンの内の特定の1種類で消費者がパーソナライズ広告を知覚するのはいかなる状況においてであるかを識別することが,本研究の目的である。研究1においては,促進焦点傾向の消費者が,利得が生じる点(/損失が生じない点)を訴求するパーソナライズ広告を視聴する場合に第一(/第三)のパターンが生じること,および,私的事実に関して予防焦点傾向の消費者が,パーソナライズ広告を視聴する場合に第二のパターンが生じることを示す。また,広告主やウェブサイトの信頼が高い状況に着目する研究2~研究3においては,製品の消費に関して予防焦点傾向の消費者が,利得が生じる点(/損失が生じない点)を訴求するパーソナライズ広告を視聴する場合に第三(/第一)のパターンが生じることを示す。
著者
岩井 琢磨 牧口 松二
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.107-117, 2020-06-30 (Released:2020-06-30)
参考文献数
4
被引用文献数
1

このケースでは,年間4億本という売上本数を誇る氷菓「ガリガリ君」に注目する。「ガリガリ君」は,赤城乳業から1981年に発売されたロングセラーブランドである。赤城乳業は2004年から,同商品のパッケージ・キャラクター「ガリガリ君」のマーケティング活用を積極化している。以降,新味追加などの契機に話題を発信し,氷菓「ガリガリ君」の売上本数を,2004年の1億本台から2013年の4億本台へと成長させている。この間の「ガリガリ君」のマーケティングを担当したのが,現在は赤城乳業株式会社 執行役員 開発本部本部長代行である萩原史雄である。荻原は1995年に赤城乳業に入社,営業として販売現場に立ち,販売企画課を経て2004年に営業統括部(マーケティング担当)を設立した。さらに2006年にはキャラクター「ガリガリ君」をマネジメントする「ガリガリ君プロダクション」を設立し,2013年にはマーケティング部を設立した。正に「ガリガリ君」を核とした取り組みによって多くの生活者による語りを生み出してきた人物である。このケースでは,萩原に対する2018年の取材および2020年の講演に基づき,赤城乳業が氷菓「ガリガリ君」を成長させたマーケティング活動のプロセスについて見る。
著者
寺本 高 三坂 昇司
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.18-28, 2020-09-29 (Released:2020-09-29)
参考文献数
27

本稿では,「コスパの良い」という小売店舗の価格イメージ情報が消費者の口コミや購買に与える影響について明らかにした。実証分析では,消費者生成型コンテンツを実験的に作成し,小売店舗の価格イメージ情報に関する異なる刺激提示の状況下での口コミ行動の差異を捉えるのに加え,口コミ行動前後の被験者の購買行動の差異についても捉えた。その結果,「コスパの良い」に関する投稿情報に接触した消費者は,「安い」に関する投稿情報に接触した消費者に比べて①返信回数が多い,②「品質」を通じての「価格」という話題に多く接触している,③「品質」を通じての「楽しい」という話題に多く接触している,④対象店舗での購買量や購買商品単価が増加した,の4点が明らかになった。本稿の成果は,小売店舗に関する口コミや購買を喚起するうえで,「コスパの良い」というキーワードの有効性を示している。
著者
間島 羽奈子
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
pp.2023.030, (Released:2023-05-16)

サービス品質を測定する尺度として有力なSERVQUALは,図書館においても適用され始めている。LibQUALは,SERVQUALに基づき開発された,3次元から成る図書館サービス品質測定尺度である。しかし,公立図書館においても3次元から構成されるのかは十分検討されていない。本研究の目的は,①LibQUALの3次元が公立図書館においても抽出されるのかを検討し,②公立図書館のサービス品質と総合評価の関係における利用者の性別の調整効果を検証することである。LibQUALを参考に開発された尺度を用い,公立図書館利用者(n=97)を対象に質問紙調査を実施し,分析した結果,次の3点が明らかになった。第1に,公立図書館においても「情報管理」「場としての図書館」「サービスの姿勢」の3次元が抽出された。第2に,「情報管理」は年齢や性別を問わず総合評価を高めていた。第3に,性別が「サービスの姿勢」と総合評価の関係に影響を与えていた。本研究は,公立図書館においてもLibQUALの3次元が抽出されたことを実証し,性別が公立図書館のサービス品質と総合評価の関係に影響を与えている点を明らかにした。
著者
北澤 涼平 小野 晃典
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.29-41, 2023-06-30 (Released:2023-06-30)
参考文献数
23

本研究は,ファン(コンテンツの自己関連性が低い消費者),マニア(コンテンツの自己関連性が高く,社交性も高い消費者),オタク(コンテンツの自己関連性が高いが,社交性は低い消費者)の3種のコンテンツ消費者を検討する。4つの実験の結果,ファンは,個人的所有感も集団的所有感も低く,レンタル=サブスク型リキッド消費を選択し,マニアは,個人的所有感も集団的所有感も高く,経験価値型リキッド消費とソリッド消費を選択し,オタクは,個人的所有感は高いが集団的所有感は低く,ソリッド消費を選択するという知見を提供する。そうすることによって,本研究は,コンテンツビジネス研究,リキッド消費研究,経験消費研究,心理的所有感研究の発展に貢献する。
著者
須田 孝徳 石井 裕明 外川 拓 山岡 隆志
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.60-71, 2021-09-30 (Released:2021-09-30)
参考文献数
26

消費者が使用するデバイスの多様化とともに,デバイスが消費者行動に及ぼす影響に注目が集まっている。本研究では,デバイスの違い(スマートフォン/PC)が消費者の解釈レベルに及ぼす影響を検討するとともに,デバイス特性と解釈レベルの一致が,消費者の評価や行動に及ぼす影響について検討する。本研究では3つのオンライン実験と,1つのフィールド調査を通した検証を試みる。研究1では,スマートフォン(vs. PC)で対象を見たとき,消費者はその対象をより近いと知覚することを明らかにする。研究2では,スマートフォン(vs. PC)を使用した場合,消費者の解釈レベルが低次になることを確認し,研究3では,スマートフォン(vs. PC)の使用が,低次の解釈レベルに対応した広告の評価に正の影響を及ぼすことを確認する。最後に研究4では,実際の購買データを分析することで,研究1~3で得られた知見の実務への応用可能性を検討する。
著者
平木 いくみ 外川 拓
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.35-46, 2019-03-29 (Released:2019-03-29)
参考文献数
28

身体化認知理論への注目により,感覚が消費者行動に及ぼすさまざまな影響が明らかになっている。本稿では,製品の希少性知覚に対して視覚的重さが及ぼす影響を検討する。製品パッケージのカラー(実験1)と製品画像の掲載位置(実験2)を操作した2つの実験を通して,視覚的重さの経験は,当該製品に対する希少性知覚へ影響を及ぼすことが明らかにされた。さらに,視覚的重さが希少性知覚へ及ぼす影響は,製品間の陳列スペースが広いときのみ生じることも示された。希少性は消費者を製品に惹きつける強力な要因である。重さという感覚経験と希少性知覚との関係を明らかにした本研究は,製品開発に携わるマーケターや店頭マーケティングに携わる小売業者に対して多くの示唆を提供している。
著者
根来 龍之 足代 訓史
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.19-32, 2021-09-30 (Released:2021-09-30)
参考文献数
32

本稿は,マーケティング機能を対象に,媒介型プラットフォーム(Platform: PF)におけるPFと補完者(個別事業者)との関係の相互作用的進化について論じる。その目的は,既存のPF研究が基本的に依拠する,「PFを中心に据えて,PFとその補完者との間の関係を論じる見方」とは異なる関係モデルと一般化仮説を提示することである。そのために本稿では,飲食店チェーン業界において,PFと個別事業者との間で,顧客接点機能を相互発展させている現象を事例分析する。事例研究の結果として,以下の命題を主張する。媒介型PFと個別事業者のマーケティング機能は,相互的機能拡張競争によって発展する。また,個別事業者は媒介型PFのネットワーク効果を活用するために,協業的にPF機能の開発を行うことがある。
著者
高尾 義明 江夏 幾多郎 麓 仁美
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.68-81, 2021-06-30 (Released:2021-06-30)
参考文献数
12

本稿の目的は,COVID-19の流行に伴う職務環境の変化を営業・マーケティング職がどのような形で経験し,それにどう適応しようとしたのかを明らかにすることである。本稿では,2020年4月中旬から7月下旬にかけて,3,073名の就労者を対象に実施した質問票調査の分析を行った。その結果,営業・マーケティング職は,他の職種に比べ,①心理面では,4月調査では差が見られなかった不安感が7月調査では緩和され,差が拡大していること,②職務特性では,職務遂行プロセスの他者依存性(近接性)が4月から7月にかけて低下していること,③適応行動については,両利き行動の探索的行動は両方の時点で積極的に行えているものの,深化的行動は4月から7月の間で低下していることが明らかとなった。また,営業・マーケティング職の適応行動には,役割明確性や職務の裁量性,職務成果の他者依存性といった職務特性やその変化とリモートワークの実施が影響を与えていることも示された。
著者
遠藤 剛史
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.80-88, 2020-01-11 (Released:2020-01-11)
参考文献数
40
被引用文献数
1

永年の間,多くの革新的なアイディアによって発展してきた日本料理業界において,日本人の食嗜好も変わっていくなか,その技術を将来に効果的な方法で普及・伝承していくことが必要とされている。また,グローバリゼーションの進展により,海外へ向けて普及させていく方法論も確立が急務である。経営学において,伝統的な日本料理を取り上げた研究は多くはないが,その研究は「食べる」という行為の性格上,多くの学問分野に広く渡っている現状がある。本論では日本料理産業内の職業料理人の組織という視座に基づき,料理の構造化,組織と技術伝承,必須食材の供給という3つの視点から先行研究のレビューを行っていき,日本料理の普及・再現について検討すべき課題の抽出を試みるものである。
著者
本庄 加代子 栗木 契
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.63-72, 2022-09-30 (Released:2022-09-30)
参考文献数
14

企業が不祥事を起こした時,どのように信頼と業績を回復させるのだろうか。ITエンジニアの派遣企業であるアクサス株式会社は,2018年労働局から行政処分を受けた。危機に瀕した同社であったが,インターナルブランディングの取組みにより,リストラをせずに組織の体質改善を図り,長年懸案であったビジネスモデルを抜本的に変えながら,事業の成長基調を取り戻した。2022年現在の同社は,理念・ビジョンの浸透が進み,業績の拡大が続く。本稿では,アクサスの取り組みを時系列で追う中で,Kotter(1995, 2012)の企業変革における段階的プロセスが見出された。とりわけ意図せざる不祥事そのものが,インターナルブランディングを更に加速させていたことを確認した。結論として,(1)組織文化を変革するためのツールとしてインターナルブランディングは有効であり,アクサスでは(2)組織に短期的成果を見せつつ(3)危機を逆手に,求心力を高め(4)現場に理念・ビジョンの解釈の余地や裁量など自由度を与えながら(5)ビジネスモデルの転換による新たな成長機会の獲得へと至っていたことが確認される。
著者
六嶋 俊太
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.58-66, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
37

本論文は,秘密消費に関する既存研究を整理し,それらの貢献と限界を提示した上で,今後の研究の方向性を検討する。秘密消費とは「他者に対して情報を隠そうとする意図を持っている状態での消費」のことを指し,本論文では特に,そこで意図的に隠される情報を指す「秘密内容」概念について議論する。具体的には,まず,既存研究を「秘密消費の動機」「秘密消費が消費者に与える影響」「秘密消費の実践的側面」の3つに分け,それらの貢献と限界を整理する。次に,これらの限界を克服することを妨げる可能性のある,「秘密内容」概念の概念的混同という課題について説明する。そして本論文では,その解決のために2つの下位概念「個人的秘密内容」と「集団的秘密内容」を区別した上で研究を進める必要があることを述べる。最後に,上述した2つの下位概念を峻別することによって発展が見込まれる,今後の研究の方向性を提示する。
著者
林 真輝人
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.82-89, 2021-06-30 (Released:2021-06-30)
参考文献数
24

近年,キャッシュレス決済が急速に普及したことによって,消費者が使用可能な支払方法は多様化している。支払方法に関する既存研究においては,多様化する支払方法が消費者行動にどのような影響を与えるのかということに関して,盛んに議論が行われている。そこで,本論では,支払方法に関する既存研究を,(1)特定の支払方法の使用意図に関する研究群,(2)支払方法の違いが消費者行動に及ぼす影響に関する研究群,(3)支払方法の違いの影響を媒介する要因に関する研究群に分類したうえで,概観する。そして,支払方法に関する研究が今後検討するべき課題として,(1)消費者の過剰な支出を抑制する要因の探究,(2)感覚マーケティング領域における知見の応用,(3)新たな調整変数の識別を指摘する。
著者
片野 浩一 石田 実
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.70-95, 2017-09-29 (Released:2020-02-25)
参考文献数
26

オープン・メディアの代表である動画共有サイト「YouTube(ユーチューブ)」の利用ユーザーが世界的に拡大している。YouTubeは,他のソーシャルメディアのように,当初はユーザーが生成するコンテンツ(UGC)の投稿と視聴の場として成長してきたが,ここにきて企業も公式チャンネルを相次いで開設しており,企業主導型コンテンツ(FDC)を公開するようになった。YouTubeは今や最もユーザーに影響力のあるオープン・メディアとして,従来のマス・メディアをしのぐ勢いを見せている。オープン・メディアという共通の土俵の中でFDCとUGCは競争・共存する時代となった。しかし,YouTubeのコンテンツ情報の仕組みには不明な点が多い。そこで,音楽コンテンツを取り上げ,レコードレーベル(FDC)と,ボーカロイド楽曲(UGC)がYouTubeというオープン・メディアを通じて市場にどのように受容され,普及しているのかを探索的に研究する。音楽業界における企業主導型とユーザー生成型というコンテンツ特性の違いが視聴にどのように影響するのか。また新規の投稿コンテンツの普及プロセスについて,YouTubeのAPIデータを用いて実証研究を行った。そこから得た知見は,FDCのチャンネルには所属アーティスト間で関係をつくる互恵的なネットワーク構造があり,それが視聴成果にプラスに影響していた。一方のUGCチャンネルではそうした関係が見られず,その自律的なネットワークは視聴成果に影響を与えない。一方で新規に投稿される新作コンテンツの普及はFDC,UGCともにピークが垂直型に立ち上がるプロセスであり,その逓減はUGCでゆるやかになる傾向がみられた。
著者
松井 剛
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.16-26, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
55

本論文の目的は,米国ニューヨーク市(New York City,以下NYC)における日本料理レストラン(Japanese restaurant)の歴史的発展の経緯を明らかにすることにある。主要な発見事実は2つある。第1に,戦後の日本企業の対米進出にともない,接待など法人需要が高まったため,高級日本料理レストランの発展を促した。日本のレストランのNYC進出に日本企業が出資するケースも見られた。第2に,かつて米国人に知られた日本料理は,すき焼き,天ぷら,テリヤキぐらいしかなかったが,企業家の努力を通じて,寿司やラーメンのような未知の日本料理が定着した。さらに近年では,居酒屋,焼き鳥屋,カレー専門店,モツ鍋料理店,お好み焼き屋,洋食レストランなど,日本料理の細分化が進んでいる。この集合的な努力がゆえに,NYCは米国の他の都市には見られない日本料理の多様化が実現している。
著者
今井 紀夫
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.65-73, 2020-09-29 (Released:2020-09-29)
参考文献数
43
被引用文献数
1

近年のデジタルテクノロジーはエコシステム環境下でのデジタル企業の隆盛と,新たな脅威と機会につながっている。一方で既存企業はその対応に苦戦している。デジタルトランスフォーメーションは,近年の複合的デジタルテクノロジーによる新しいビジネスモデルを活用するための全社変革である。デジタルビジネスはプラットフォームや複数のプレイヤーから成るエコシステムを特徴とし,プラットフォームでの価値創造にはビジネス視点と技術視点のものがあり,新しい軸での競争を生みだしている。またトランスフォーメーションには複数のアプローチがあり,段階的な取組により成功率が高まる可能性がある。今後のマーケティング視点からの研究の方向性として(1)業績への影響とその条件,(2)補完製品提供者も含めた価値創造のプロセス,(3)情報システム部門とのテクノロジーケイパビリティ構築,(4)デジタル関連組織の役割の特定が提示された。
著者
藤本 淳也
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.6-16, 2022-09-30 (Released:2022-09-30)
参考文献数
42

スポーツマーケティング研究は,国内外のスポーツマネジメント学の主要研究分野として,スポーツビジネスを対象としたマーケティング研究として経営学や商学においても取り組まれている。これらの学問分野はオープンイノベーション的に考えると共創相手であり,スポーツマーケティング研究の発展のためには,共に「スポーツマーケティングとは何か」について問い続けることが重要である。本論では,その一助とすることを目指し,スポーツビジネスと学問としてのスポーツマーケティングの発展の背景を示し,日本のスポーツ界の現状を考慮したスポーツマーケティングの定義について議論する。そして,スポーツマーケティングの特徴はスポーツプロダクトとスポーツ消費者にあることを指摘し,それぞれの特異性について論じ,今後のスポーツマーケティング概念の発展の方向性について述べる。
著者
川上 昌直
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.18-28, 2022-03-31 (Released:2022-03-31)
参考文献数
24

本誌 Vol. 41, No. 4(2022 年3 月31 日発行)pp. 18–28 に掲載された本論文を,撤回させていただきます。 取り下げ理由 読者より,本論文が著者による著書(川上昌直(2021).『収益多様化の戦略 ― 既存事業を変えるマネタイズの新しいロジック ―』東洋経済新報社,2021年11月26日発行)からの自己剽窃,および同著書との二重投稿であるという指摘を受けた。本誌投稿規程に則り,編集委員長が,出版倫理委員会(COPE)のフローチャートに基づき,調査を進めた。著者からは,2022年以降に発行する予定であった同著書の発行が事情により早まったために生じた問題であり,指摘内容を認め、論文を撤回したいという回答を得た。編集委員長は,検討の結果,その裁量により,本論文の撤回を決定した。
著者
太宰 潮
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.18-29, 2022-01-07 (Released:2022-01-07)
参考文献数
19

本論は近年影響力を増している,サブスクリプション・サービスにおける顧客満足の特性を知ることを目的とし,オリコン社の顧客満足度調査から利用の程度と満足度の関係を探索的に調査した研究である。利用が少ないにもかかわらず契約を続けてしまう現象などを踏まえて,利用の程度と満足との関係が線形であるか,満足度が大きく減る,もしくは増える閾値と思われる点などを調査した。その結果,日次・週次といった習慣的な利用に満足度が動く閾値があること,週1回といったラインを下回ると満足度に与える影響が大きいことなどが判明した。その他にもサービスタイプによって理想の利用にも閾値があること,長期的継続は満足に強く影響していないこと,単価と満足度が関係しないことを示し,日次・週次の習慣的利用の重要性や閾値の存在という利用の特性を明らかにした。