著者
小島 一生 村松 浩幸 室岡 聡也 小松 裕貴
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.169-172, 2011

中学生にネットトラブルに関して保護者への相談を意識させるために,ゴールベースシナリオ(GBS)理論に基づいたシナリオゲーム教材を開発することを目的とした.教材は,主人公を女子中学生とし,母親と関わりながら「不当な請求」,「個人情報」,「著作権」,「掲示板トラブル」の各内容に関する情報を収集し,その対応法を選択する構成とした.開発は,Flashによるゲーム制作ツールでおこなった.1年生64名を対象にした授業実践での評価から,1)中学校の授業で使用可能なこと,2)シナリオゲーム型や親子の設定により,本実践の範囲内において保護者への相談の意識が一定程度向上したこと,が確認できた.
著者
池谷 のぞみ
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.189-192, 2011

ワークのエスノメソドロジー研究は,理論に依拠しないで「リアリティの中の業務」を理解することをめざす.その結果,1)特定の文脈における学習機会をワークの詳細と関係づけて明らかにすると共に,2)その機会が誰に向けて,その人のワークとの関係でいかにデザインされ,実現されているのかを明らかにすることが可能になる.これを救急医療のカンファレンスとプロジェクト評価会議のフィールドワークに基づく研究事例を通じて示した.従来OJTと一括りにされてきたことを,こうした分析の対象とすることの意義を,職場における学習の再考,特に学習を業務の効果的な遂行と関係づけながら実現を考える上での示唆を提示した.
著者
長尾 尚 小林 直行 市川 隆司 黒上 晴夫 稲垣 忠
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.125-128, 2004-03-05
被引用文献数
1

本論文の目的は,「匿名性」と「即時一覧性」機能のある電子掲示板システムを活かした授業方法を開発し評価することにある.高校の学級という比較的規模の小さな日常空間においても「授業中」には,自由闊達に発言できない状況が生じる.その克服には,複数の相手に対面した状態で自分の意見を表現しやすい環境の支援が必要となる.そこで上述した2つの機能を備えた電子掲示板を開発しそれを組み込んで授業設計をすることで議論を活発にし新たな意見を導けないかと考えた.2回の授業実践の結果,匿名の電子掲示板上では,匿名性によって少数意見を導き出しやすく,即時一覧性により議論が活性化されるという2つの効果が明らかになった.
著者
三島 知剛 安立 大輔 森 敏昭
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.69-72, 2009
被引用文献数
2

本研究の主目的は,教育実習生が必要と感じている学習内容を実習前後の変容の可能性と合わせて検討することであった.そのため,学習を大学講義で扱われることが多い理論的内容と,大学講義では扱われにくい実践的内容に大別し,実習生135名を対象に調査を行った.その結果,(1)教科の指導法や心理学的な背景を必要とする理論的学習や,学習指導や授業作りに直結した学習内容を必要と感じていること,(2)実習経験により,実践的な学習内容より理論的な学習内容を必要と感じるようになること,の2点が主に示唆され,実習経験による実習生の求める学習内容への意識の比重の変化の可能性や大学カリキュラム構築に関する示唆と合わせて検討された.
著者
中澤 明子 松河 秀哉 奥林 泰一郎 森 秀樹 前迫 孝憲
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.85-88, 2010
被引用文献数
2

日本とシンガポールの学校間において,通常のインターネット回線と低帯域高精細映像伝送方式を用いたところ,2Mbps程度で高精細映像による国際間遠隔学習を行うことができた.映像の遅延は約1秒あったため,生徒からは遅延が気になるという意見も聞かれた.その一方,高精細映像により遠隔地の細かな文字等を含む発表資料がはっきりと見え,高精細映像利用の意義が示唆された.
著者
中山 迅 牛島 克宏 山口 悦司 都築 章子 武田 一則 竹内 慎一 後藤 大介
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.93-96, 2005
被引用文献数
3

観察と実験の実施が重視される教科としての理科では, 授業へのICT導入が順調とは言えない.本研究では, 電子掲示板を利用した理科の学校間協同学習によって, 児童による観察や実験を中心とした学習を促進できる事例を示そうとした.電子掲示板の対話分析や児童を対象とした質問紙調査の結果から, その可能性が示唆された.
著者
瀬下 仁志 田中 明通 丸山 美奈 鈴木 英夫 高橋 時市郎
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.359-369, 2006
被引用文献数
1

学習活動におけるITの利用が進むなかで,学習者主導の学習活動が盛んになってきた.加えて,そうした学習をより深めるための情報として,各学習者の学習履歴を豊富に取得することも可能となっている.しかしながら,豊富で詳細であるがゆえに取り扱いも難しく,収集された履歴を各学習者への適切なフィードバックに活用することは困難であった.そこで我々は,多量な学習履歴をより手軽に活用することを目的として,各学習者の学習履歴を,想定される学習活動の段階に基づいて抽象化することで,活動の変遷や特徴を端的に表現する可視化手法を提案する.本可視化手法は,学習者の活動状況や活動の特徴を,意味内容に立ち入らず,定量的に俯瞰することを可能にする.本論文では,提案する可視化手法の概要と,我々がこれまでに開発した,調べ学習支援システムを用いた授業実践結果への適用とその分析について述べる.
著者
光原 弘幸 森山 利幸 山田 佳幹 金西 計英 矢野 米雄
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.191-200, 2010
被引用文献数
4

本研究では,ノートテイキング支援として,AR(Augmented Reality)技術を用いてノートとデジタル教材を融合するPaper-Top Interface(PTI)を設計・開発する.PTIは,ノートの各ページに貼付したビジュアルマーカをビデオ映像から検出・認識し,対応するデジタル教材をプロジェクタでノートに投影する.これにより,学習者は授業中に教材内容を書き写さなくてよくなり,学習内容をアノテーションとしてノートに書き留めることが促進される.比較実験から,PTIがノートテイキングの負担を軽減し,学習者に受け入れられることが示唆された.
著者
大山 牧子 村上 正行 田口 真奈 松下 佳代
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.105-114, 2010

本論文では,構造の異なる大学生対象の中国語e-Learning教材を用いて,学習者特性と学習行為の関連性を明らかにすることを目的とする.学習者特性としては,FELDERによってモデル化された学習スタイルのうち<活動-内省>の軸に着目し,協力者を選定した.その上でケーススタディを行い,学習行為のプロセスを詳細に分析し1面で見られるように可視化した.その結果,学習スタイルの違いが学習行為を決定付ける1つの要因としてあげられることが示唆された.
著者
森田 健宏
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.159-164, 2000
参考文献数
6
被引用文献数
1

幼児向け教育テレビ番組(NHK教育)を対象に, ショットの種類と構成比率, 注視対象の提示様式についての調査を行った.その結果, 幼稚園教育要領の「環境」領域を主なねらいとした番組では, 他番組よりもショットの構成数が少なく, 特にクローズアップやミディアムショットの継続時間が長く構成されていること, また, 「うたっておどろんぱ」や「たっくんのおもちゃ箱」などショー的に展開されるジャンルの番組では, ロングショットの比率が高く, クローズアップされたショットの継続時間が短いことが明らかになった.また, 注視対象の提示様式については, ショットの構成パターンなど番組ジャンルの影響を受けて, 構成比率が異なっていることが明らかになった.
著者
岡本 竜 矢野 米雄
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.61-71, 1995-09-20
参考文献数
11
被引用文献数
10

従来の会話シミュレーションに基づく英会話学習システムでは,典型的なモデル会話を繰り返すスキット学習が多く,教育的支援は会話中断による教育的対話への切り替え方式が中心であった.この方式は,学習者は受動的な学習を余儀なくされ動機付けの面からも好ましくない.また,会話文脈が固定的であるため,システムのシミュレーション介入による積極的な教育支援も困難である.我々は明示的な教育的対話への切り替えを行わず,学習者に試行錯誤による現実感を伴った学習を行わせる対話グラフによる知識表現を提案する.本知識表現によるシミュレーションでは,学習者主導の対話進行のなかで,システムによる対話進行制御による教育的支援が可能である.本論文では,英会話学習を対象とした環境型知的CAIシステムにおける会話シミュレーションの実現のための,会話の構造化と知識表現について論ずる.
著者
福田 洋
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.29-35, 1988-04-20

言語がわかりやすく,子供にも理解できるということぱ,その言語が次の世代に伝わってゆくための必須の条件である.コンピュータ言語についても同様のことがいえる.PROLOGは非常に強力かつすぐれたコンピュータ言語なのだが,子供にはほとんど使えない,といってもよい.それは,難かしい数学の述語論理の知識が必要なこと,また,子供が学んでゆくための,簡単な導入部分をもっていない等の理由からである.一方,LOGOでは,数学的な基礎は,記述のわかりやすさの下に隠れ,またタートルグラフィクスという言語を学んでゆくための良い導入部分をもっている.LOGOが4,5歳の子供でも使える,ということには既に多くの報告例がある.本稿は,LOGOシステムの中で書いたPROLOGの報告である.従来のPROLOGに記述をわかりやすくするための"キーワード",またPROLOGへの簡単な導入部分としての"つみ木のグラフィクス"等を追加した.