著者
望月 秀樹 青木 正志 池中 建介 井上 治久 岩坪 威 宇川 義一 岡澤 均 小野 賢二郎 小野寺 理 北川 一夫 齊藤 祐子 下畑 享良 髙橋 良輔 戸田 達史 中原 仁 松本 理器 水澤 英洋 三井 純 村山 繁雄 勝野 雅央 日本神経学会将来構想委員会 青木 吉嗣 石浦 浩之 和泉 唯信 小池 春樹 島田 斉 髙橋 祐二 徳田 隆彦 中嶋 秀人 波田野 琢 三澤 園子 渡辺 宏久
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001695, (Released:2022-05-28)

日本神経学会では,脳神経内科領域の研究・教育・診療,特に研究の方向性や学会としてのあるべき姿について審議し,水澤代表理事が中心となり国などに対して提言を行うために作成委員*が選ばれ,2013年に「脳神経疾患克服に向けた研究推進の提言」が作成された.2014年に将来構想委員会が設立され,これらの事業が継続.今回将来構想委員会で,2020年から2021年の最新の提言が作成された.この各論Iでは,遺伝子研究,トランスレーショナルリサーチ,核酸医薬,iPS研究,介護・福祉など,多様性を増す脳神経内科領域の臨床と研究について,最新トピックスを交えて取り上げる.*提言作成メンバー水澤 英洋,阿部 康二,宇川 義一,梶 龍兒,亀井 聡,神田 隆,吉良 潤一,楠 進,鈴木 則宏,祖父江 元,髙橋 良輔,辻 省次,中島 健二,西澤 正豊,服部 信孝,福山 秀直,峰松 一夫,村山 繁雄,望月 秀樹,山田 正仁(当時所属:国立精神・神経医療研究センター 理事長,岡山大学大学院脳神経内科学講座 教授,福島県立医科大学医学部神経再生医療学講座 教授,徳島大学大学院臨床神経科学分野 教授,日本大学医学部内科学系神経内科学分野 教授,山口大学大学院神経内科学講座 教授,九州大学大学院脳神経病研究施設神経内科 教授,近畿大学医学部神経内科 教授,湘南慶育病院 病院長,名古屋大学大学院 特任教授,京都大学大学院臨床神経学 教授,国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科 教授,東京大学医学部附属病院分子神経学特任教授,国立病院機構松江医療センター 病院長,新潟大学脳研究所臨床神経科学部門神経内科学分野,新潟大学脳研究所フェロー,同統合脳機能研究センター産学連携コーディネーター(特任教員),順天堂大学医学部神経学講座 教授,京都大学大学院高次脳機能総合研究センター 教授,国立循環器病研究センター病院長,東京都健康長寿医療センター研究所 高齢者ブレインバンク,大阪大学大学院神経内科学 教授,金沢大学大学院脳老化・神経病態学 教授)
著者
藤原 悟 吉村 元 西矢 健太 大嶋 圭一 川本 未知 幸原 伸夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.785-787, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

症例は67歳男性.全身麻酔下での開心術後1日目の抜管直後より,嗄声,構音障害,舌の左側偏倚を認めた.頭部MRIでは原因病変を認めず,軟口蓋麻痺はなく,耳鼻科診察で左声帯不全麻痺を認めたため,Tapia症候群(反回神経麻痺と舌下神経麻痺の合併)と診断した.神経症状は緩徐に改善し,発症4ヶ月後にはほぼ完全に回復した.Tapia症候群は稀ではあるが,全身麻酔時の気管内挿管の合併症等として報告されている.本例では左口角から挿入していた経食道超音波のプローブが左咽頭後壁を圧迫したことが原因と考えられた.本例は術中の経食道心臓超音波検査によって生じたTapia症候群の初めての報告である.
著者
柳下 章
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.1-5, 2021 (Released:2021-01-29)
参考文献数
17
被引用文献数
1

Kumarは硬膜,特に脊柱管前部硬膜に欠損あるいは損傷があり,髄液漏出を呈する疾患群に対してduropathiesという概念を提唱した.脳表ヘモジデリン沈着症(superficial (hemo) siderosis,以下SSと略記)と多髄節性筋萎縮症(multisegmenal amyotrophy,以下MSAMと略記)はduropathiesである.SSの硬膜欠損は,脊柱管内および頭蓋内手術時の不完全な硬膜閉鎖による例と,原因不明例がある.後者は大多数がC7/Th1~Th2/Th3の前部硬膜にある.MSAMの自験7例全例に,C3脊髄前角にT2強調像にて高信号を認めた.その内6例に硬膜欠損が判明し,C7/Th1~Th2/Th3の前部硬膜にあった.SSと同様な部位であり,同部位のFIESTA(fast imaging employing steady state acquisition)横断像が必須である.
著者
宮尾 暁 久保田 有一 梛野 尚人 江川 悟史 中本 英俊 福地 聡子 川俣 貴一
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.466-470, 2021 (Released:2021-07-30)
参考文献数
9
被引用文献数
1

てんかん診療における不整脈の出現は突然死へとつながる可能性を有する.今回,致死性不整脈から心停止に陥り蘇生した1例を経験し,外来,急変前後,蘇生後,回復期まで,経時的な心電図変化を捉えた.心電図の経時的変化では,QT延長やブルガダ型波形が確認された.心電図変化を誘発する可能性を持つNaチャネル遮断薬,向精神薬との薬理作用,及び薬物動態的相互作用の認識の重要性に注目し,てんかん診療における心電図の重要性を強調した.
著者
松井 太郎 中川 慶一 山﨑 啓史 和田 大司 角谷 真人 海田 賢一
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001085, (Released:2017-12-22)
参考文献数
23
被引用文献数
1 3

症例は19歳女性.本人,母親にレイノー現象の既往がある.咽頭炎でロキソプロフェン(Loxoprofen; LP)を内服後,頭痛,悪心,発熱を生じ,その後意識障害,項部硬直が出現した.脳脊髄液検査にて単核球優位の細胞増多,蛋白上昇,Q albumin,IgG indexの上昇を認め,培養で病原体を認めなかった.血液・髄液で抗RNP抗体陽性.薬剤リンパ球刺激試験陰性.上記症状のLP中止後の速やかな改善から非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs; NSAIDs)誘発性無菌性髄膜炎と診断した.本例は抗RNP抗体等の自己免疫異常を背景としてLP投与が無菌性髄膜炎を誘発したと考えられた.若年女性の無菌性髄膜炎の鑑別では自己免疫異常の検索に加え服薬歴の聴取が重要である.
著者
下畑 享良 久保 真人 饗場 郁子 服部 信孝 吉田 一人 海野 佳子 横山 和正 小川 崇 加世田 ゆみ子 小池 亮子 清水 優子 坪井 義夫 道勇 学 三澤 園子 宮地 隆史 戸田 達史 武田 篤 日本神経学会キャリア形成促進委員会
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001533, (Released:2021-01-26)
参考文献数
24
被引用文献数
1

医師のバーンアウトに関連する要因を明らかにし,今後の対策に活かすため,2019年10月,日本神経学会はバーンアウトに関するアンケートを脳神経内科医に対して行った.学会員8,402名の15.0%にあたる1,261名から回答を得た.日本版バーンアウト尺度の下位尺度の平均は,情緒的消耗感2.86/5点,脱人格化2.21/5点,個人的達成感の低下3.17/5点であった.また本邦の脳神経内科医のバーンアウトは,労働時間や患者数といった労働負荷ではなく,自身の仕事を有意義と感じられないことやケアと直接関係のない作業などと強く関連していた.これらを改善する対策を,個人,病院,学会,国家レベルで行う必要がある.
著者
加納 裕也 井上 裕康 櫻井 圭太 吉田 眞理 三浦 義治 中道 一生 西條 政幸 湯浅 浩之
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.750-755, 2018 (Released:2018-12-21)
参考文献数
14
被引用文献数
1 5

75歳男性.構音障害,左口角下垂で受診.頭部MRIで右中心前回に拡散強調画像で高信号病変を認め,脳塞栓症として入院したが,症状は悪化し画像でも病変の拡大も認めた.髄液JCウイルス(JCV)-DNA PCR検査は4回施行し陰性だったが,進行性多巣性白質脳症(progressive multifocal leukoencephalopathy; PML)に矛盾しない経過と画像であり,初診から2ヶ月後に脳生検を行いdefinite PMLと診断した.基礎疾患は特発性CD4陽性リンパ球減少症のみで,非HIV-PMLとしてメフロキンとミルタザピンの併用療法を行い,初診から約29ヶ月という長期生存の転帰であった.髄液JCV-DNA PCR検査が繰り返し陰性でも,脳生検が診断に有用なことがある.
著者
永石 彰子 田邊 洋 上野 正克 松井 大 松井 真
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.202-204, 2008 (Released:2008-04-15)
参考文献数
10
被引用文献数
1 3

症例は67歳の男性で,飲酒歴・偏食はない.2004年9月,早期胃癌に対し,術後の栄養管理にすぐれるとされる噴門側胃切除術・空腸嚢間置再建術を受けた.2006年3月より下痢,露出部の皮疹が出現し,また,約2カ月の経過で,歩行障害・意識障害・ミオクローヌス・幻覚が出現した.皮疹・下痢・精神神経症状の三徴よりペラグラと診断し,ニコチン酸アミドと混合ビタミン薬の投与で軽快した.消化管手術後に神経症状を呈する症例では術式を問わず栄養障害を念頭におく必要がある.
著者
清水 利彦 柴田 護 鈴木 則宏
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.103-109, 2011 (Released:2011-02-17)
参考文献数
43
被引用文献数
4 4

Cortical spreading depressionは片頭痛の前兆への関与に加え三叉神経血管系を活性化させ頭痛発生のtriggerとなる可能性が示されている.脳硬膜および三叉神経節にはcalcitonin gene-related peptide(CGRP)に加え,侵害刺激受容体transient receptor potential cation channel, subfamily V, member 1(TRPV1)の存在が明らかにされ片頭痛の病態への関与が考えられている.本稿では片頭痛における基礎研究の進歩およびCGRP受容体アンタゴニストをふくむ最近の治療について概説する.
著者
渡邊 修
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1067-1070, 2013-11-01 (Released:2013-11-29)
参考文献数
10
被引用文献数
1 4

Isaacs症候群では,血液神経関門が脆弱な神経終末や神経根で自己抗体によりVGKCの機能異常が惹起され,過剰興奮がおこる.有痛性筋けいれん,ミオキミア,ニューロミオトニアなどの運動症状に加え,complex regional pain syndrome様の激しい痛みで発症する例もある.Morvan症候群は,Isaacs症候群の症状に,大脳辺縁系の異常(不眠,記銘力障害など)と自律神経障害(不整脈,便秘など)をともなう.圧倒的に男性に多く,「足が焼けつくような」疼痛をみとめる.VGKC複合体の構成分子であるLGI-1抗体陽性例は,近時記憶障害やてんかんなど辺縁系症状を呈し,高頻度にSIADHを合併する.
著者
和田山 智哉 伊藤 絢 大坪 亮一 大谷 恭子 森川 雅史 上田 直子
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001289, (Released:2019-07-23)
参考文献数
19

症例は48歳,男性.全身痙攣発作後に左顔面,上肢の間代性痙攣が持続し入院.ジアゼパム,ホスフェニトイン,レベチラセタム投与で止痙したが,再び部分てんかん重積状態となり全身麻酔下で管理した.右前頭葉に皮質を含む拡散強調画像,T2強調画像で高信号の病変を認め,造影MRIで病変の中心部とその近傍の皮質が増強された.第6病日に開頭腫瘍摘出術を施行.増強された中心部で退形成性乏突起膠腫を認めた一方,近傍の皮質には腫瘍組織は認めず,増強効果はてんかん重積によるものと考えられた.てんかん重積に伴う造影MRI異常信号は,臨床的に脳腫瘍などの他疾患との鑑別が困難な場合があり,慎重な判断が必要と考えられた.
著者
目崎 高広
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1068-1070, 2012 (Released:2012-11-29)
参考文献数
10

Primary dystonia is believed to be rare, and its estimated prevalence is roughly around 10-20 per 100,000 in the general population. In middle-aged or elderly people, the prevalence is much higher, reported to be over 700 per 100,000. Dystonia also occurs secondarily in various conditions, as drug-induced (acute or tardive) dystonia or in association with neurological disorders. Reported prevalence values may be underestimate. The diagnosis of dystonia tends to be delayed for several years after the onset of symptoms, or the symptoms may be left unrecognized or misinterpreted. "Dry eye" is common in the modern society and is a frequent misdiagnosis of blepharospasm. "Stiff sensation of the neck", a ubiquitous symptom among Japanese, may actually be a phenotype of cervical dystonia. A subset of "essential tremor" and tremor in SWEDDs (Scans Without Evidence of Dopaminergic Deficits) reportedly have similar pathophysiology to dystonia. Occupational dystonia is common within a specific population. About 1% of musicians may suffer from musician's dystonia, and about one-third of professional or highly skilled golfers may have "yips", possibly a representation of dystonia. Dystonia is common against a general belief, and should be included among the differential diagnosis in patients with muscular hyperactivity and impaired voluntary movements.
著者
瀧山 嘉久
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1009-1011, 2014 (Released:2014-12-18)
参考文献数
7
被引用文献数
3

遺伝性痙性対麻痺(hereditary spastic paraplegia; HSP)は下肢の痙縮と筋力低下を呈する神経変性疾患群である.現時点でSPG1~72の遺伝子座と60を超す原因遺伝子が同定されているが,全国多施設共同研究体制であるJapan Spastic Paraplegia Research Consortium(JASPAC)により,本邦HSPの分子疫学が明らかになってきた.さらに,JASPACにより,はじめてC12orf65遺伝子変異やLYST遺伝子変異がHSPの表現型を呈することが判明した.今後,JASPACの活動がHSPの更なる新規原因遺伝子の同定,分子病態の解明,そして根本的治療法の開発へと繋がることが望まれる.
著者
江川 斉宏 井上 治久
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1020-1022, 2013-11-01 (Released:2013-11-29)
参考文献数
7
被引用文献数
2 3

われわれは,transactive response DNA binding protein 43 kDa(TDP-43)遺伝子変異を有する家族性筋萎縮性側索硬化症(familial amyotrophic lateral sclerosis; FALS)患者由来の人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell; iPS細胞)を樹立し,それらから分化誘導した運動ニューロンをもちいてALSの病態解析をおこなった.FALS由来iPS細胞の運動ニューロン分化能は正常であり,神経細胞へ分化後,TDP-43タンパク質は生化学的に不溶性を獲得していた.純化したFALS運動ニューロンでは,神経細胞骨格関連の遺伝子が低下し,神経突起が短縮していた.さらに,酸化ストレスに対する脆弱性をみとめ,アナカルジン酸投与によりこれらの表現型は改善した.iPS細胞由来の運動ニューロンをもちいて,ALSの新規治療薬シーズの発見が期待できる.
著者
Kuzuhara Shigeki
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.968-971, 2009 (Released:2009-12-28)
参考文献数
4
被引用文献数
1 2

The first medical society of Japanese neurologists and psychiatrists was founded in 1902, but psychiatrists gradually dominated in number. New "Japanese Society of Neurology" (JSN) was founded in 1960. The number of members was only 643 in 1960, while it rose up to 8,555 in 2009, including regular, junior, senior and associate members. JSN contributed much to solve the causes and treatment of the medicosocial and iatrogenic diseases such as Minamata disease and SMON (subacute myelopticoneuropathy) at its early period. In undergraduate education at medical school, neurology is one of the core subjects in the curriculum, and almost all the 80 medical schools have at least one faculty neurologist. The Board of neurology of JSN was started in 1975, as the third earliest of the Japanese Medical Associations. It takes at least 6 years' clinical training after graduating from the medical school to take the neurology Board examinations. By 2009, 4,000 members passed the Board examinations. In 2002 JSN published evidence-based "Treatment Guidelines 2002" of 6 diseases: Parkinson's disease, stroke, chronic headache, dementia and ALS. As to the international issues, JSN hosted the 12th World Congress of Neurology in 1981, and international activities markedly increased after that. The first informal meeting with JSN and Korean Neurological Association (KNA) was held at the 48th JSN Annual Meeting in Nagoya in May 2007. In May 2008 the KNA-JSN 1st Joint symposium was held at the 49th Annual Meeting of JSN in Yokohama on "International comparison of neurological disorders: focusing on spinocerebellar atrophies (SCA) and epilepsies". In May 2009, KNA-JNS 2nd Joint Symposium was held at the 50th JSN Annual Meeting in Sendai, inviting a speaker from Taiwan Neurological Society, on the subject "History and Education of Neurology in Japan, Korea and Taiwan". In this symposium, a strategy to make up the Northeast Asian Neurological Association was discussed.
著者
福武 敏夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001820, (Released:2023-03-29)
参考文献数
47

運動失調は小脳由来の小脳性だけでなく,大脳から末梢神経に至るいずれかの病変によることがある.小脳由来ではない非小脳性運動失調は感覚性運動失調や後索性運動失調と総称されてきた.しかし,前頭葉病変で小脳性と区別しにくい運動失調が現れるので,小脳性運動失調を含めて小脳型運動失調と呼び,後索由来の後索性運動失調も後索ではない頭頂葉病変などによることがあり,後索性運動失調を含めて後索型運動失調と呼ぶことが提唱された(平山,2010).この提唱に従って,脊髄癆や感覚性ニューロパチーなどを概観するが,Miller Fisher症候群の運動失調は自己免疫性運動失調の国際的コンセンサス(2016)にて臨床-生理学的に小脳型とされており,感覚性運動失調に後索性/型運動失調だけでなく,Ia群線維から小脳への感覚入力障害による小脳型運動失調がありうることを強調したい.
著者
平賀 陽之
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.305-313, 2023 (Released:2023-05-27)
参考文献数
30

症例報告は,臨床医の個々の経験を共有し,日常診療の洞察と落とし穴という有益な情報を提供してくれる.症例報告には,適切な症例の選択,十分な文献の検索,正確な症例の記述,投稿,査読への効果的な返答が必要である.この一連の過程が若い医師に学びの経験をもたらし,彼らの科学者キャリアを始動させる.症例報告の第一歩は,日常診療で常に患者の病態生理と解剖に注意し,典型的ではない点を考えて,文献を検索する習慣を持つことである.症例報告は稀さのみを重視するべきではない.報告に値する症例には明確な「学ぶ点」が必要である.よい症例報告は,明確,簡潔で首尾一貫しており,歯切れのよいメッセージを読者に伝えるべきである.
著者
園生 雅弘
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.135-144, 2023 (Released:2023-03-29)
参考文献数
61
被引用文献数
1

日本の神経学は諸外国と異なり精神神経学の精神科と神経科への分離から出発したのではなく,それが現在の脳神経内科のあり方に陰を落としている.機能性神経障害(functional neurological disorders,以下FNDと略記,ヒステリー)は脳神経内科と精神科をまさに繋ぐ疾患だが,古代から存在し,神経学の源流ともなったcommon diseaseである.FNDの診断は,除外診断によって行うのではなく,精神科的原因・心理学的特徴から診断するのでもなく,神経症候そのもの(=FNDの陽性徴候)を元に,検査は最低限としてなるべく早期に積極診断すべきである.この考えは最新の精神科の疾病分類DSM-5においても支持された.様々な陽性徴候が記載されている.脳神経内科医の診療そのものが治療ともなる.
著者
黒羽 泰子 高橋 哲哉 荒井 祐生 吉野 美穂子 春日 健作 長谷川 有香 松原 奈絵 小池 亮子 池内 健
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.532-540, 2022 (Released:2022-07-29)
参考文献数
24

軽度認知障害を伴うパーキンソン病(Parkinson’s disease with mild cognitive impairment,以下PD-‍MCIと略記)の神経心理所見と後部帯状回,楔前部,頭頂領域の脳血流変化を検討した.認知機能低下のない群と比較し,PD-MCI群は,言語,注意,実行,記憶,視空間認知すべての機能が低下していた.SPECT解析では,後部帯状回,楔前部,頭頂領域の血流はPD-MCI群で低下していた.特に,処理速度,実行,記憶評価尺度と同領域の血流は相関した.PD-MCI群で見られたこれらの所見は,認知症を伴う例の所見と類似し,認知症移行の早期像を反映している可能性がある.