著者
増田 真祐美 江原 絢子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.333-342, 2005-08-05
参考文献数
14

The traditional Japanese wedding banquet called "honzen" was codified in the Muromachi period (1336-1573), and spread to the rural areas in the Edo period. The typical wedding banquet began with a sake ceremony, before the honzen meal (typically rice, soup, and some side dishes presented on zen, individual tray-like tables) was served, this being followed by the shuen (drinking party). This original style seemed to change in the Meiji period (1868 onwards). We have clarified the time of this change and its impact on the style of the wedding banquet. Wedding menus preserved by several mainline rural families, like the Huruhashi, Chiaki and Omae, were used as the investigation materials. In total, 40 menus were reviewed for the period from 1729 to 1917. There were two distinct wedding banquet styles, the original comprising sake, honzen and shuen in that order. All menus created in the Edo period, bar one, follow this style. The other style became common in the Meiji period, especially after 1900, its particular characteristic being that shuen preceded honzen. Shuen thus became more central to the wedding banquet program, and honzen was simplified with fewer dishes and smaller scale.
著者
木村 久江 大村 省吾
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】日本の伝統的な和食文化である正月料理が現在の食専攻学生のなかでどのように根付いているのかを調査することにより、調理教育の参考に資することを目的とする。【方法】西南女学院短大食専攻84名を調査対象とした。参考として大学3、短期大学1、専門学校3、計7校の食栄養・食生活指導専攻学生560名を比較対象とした。(地域別には、仙台・埼玉・長野・奈良・北九州各1、東京3校)「年末および年始の料理内容」、「正月料理への参画状況」、「おせち料理への関心」「誰から教わり誰と食したか」などの質問内容についてアンケート調査を行った。【結果】当学院生では、年末年始の伝統的な食材である蕎麦、餅(雑煮)を食したと回答した者がそれぞれ62%、60%であった。おせち料理を食べたものは85%(和風67%)と伝統的な食習慣が継承されており、調査全大学の平均79%(和風65%)をやや上回った。おせち料理作りに参画したと答えた者は40%いたが、参画は部分的との回答が9割を占めた。71%がおせち料理に関心のあると回答し、関心のある献立としては、栗きんとん、数の子、黒豆が上位3つを占めた。家族から教わった者46%に対して、39%が授業などからと答え、世代間の伝承が少なくなってきていることが分かった。
著者
須川 妙子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成28年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.70, 2016 (Released:2016-08-28)

講演番号が     入ります   『東亜同文書院大旅行誌』の食の記述にみる近代日本青年のアジア観     ―台湾の例を中心にー     ○須川 妙子     (愛知大短大)       【目的】1907~1944年に中国の現地調査を目的として行なわれた東亜同文書院生の大調査旅行の記録として、書院生が日誌として記した大旅行誌がある。行程中の書院生の心情が縷々記述され、特に食に関する記述からは、現地に対する心情や外地における母国への郷愁等を読みとることが出来る。植民地支配下にあったアジア各地においては中国内陸部とは異なる心情をもっていたことに着目し、書院生が「植民地アジア」の中でみた現地の生活文化について探る。本報告では日本統治下にあった台湾を主に取り上げる。 【方法】『東亜同文書院大旅行誌』を史料とした。大調査旅行行程に台湾が含まれる班の記録から食に関する記述を抽出し、前後の行程や現地での待遇、当時の世情などと照らし合わせて東亜同文書院生の現地に対する心情を導きだした。  【結果】台湾における書院生は、「台湾の中の日本」をみることで心身の安定を保ち、過酷な内陸部行程への英気を養う、もしくは内陸部行程中の労苦を癒していた。日本植民地下で開発発展した北投温泉では、立ち並ぶ飲食店に日本的な温泉街の風景を見出し、知識人の居住地区(青田街)に卒業生らを訪ね、日本家屋にて日本料理のもてなしをうけていた。また、台北を「小巴里」と表現し、生育期に日本で見聞きしてきたいわゆる「ハイカラ文化」も享受していた。近代日本の文化の様相である「和洋の折衷文化」を台湾で満喫する様子からは、現地本来の文化を直視せず、その「支配者層の文化」を享受する地と捉えていたといえる。
著者
片平 理子 池田 とく恵 橘 ゆかり
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

【目 的】 管理栄養士養成教育内容が高度化する中で、食事の基本について学ぶ調理学等の科目の割り当て時間は限られる現状にある。本研究では、食事作りの理解のために「調理を習慣化させる」ことを最終目標として、「野菜を切る操作を含む料理を作る」という条件のみを設定し、学生が自宅で行う実技課題を課した。昨年度の本大会では、課題が学生の食生活に対する関心、調理に対する意欲や自己効力感に及ぼした影響について報告した。今回は、課題実施内容の傾向を分析し、課題の妥当性、難易度、実行可能性を考察し、調理初学者に対する効果的な指導方法を検討した。【方法】管理栄養士養成課程1年生前期の開講科目「調理実習」において、自宅で「野菜を切る操作」を含む調理をする課題を出した。課題は週に1度のペースで前期授業終了までに合計5回課した。全課題終了後に各課題後に提出した料理のレシピを元に、実施内容の詳細と感想・意見をまとめ、ファイル書式で提出させた。提出物から課題の実施状況と課題に対する学生のとらえ方を整理した。【結果】学生が一度の課題に費やした時間は、「30分以内~2時間以上」(頻度が高かったのは、30分~1時間)、使用した野菜は「1~8種類」(同、2~4種類)、行った切り方の種類は「1~6種類」(同、1~3種類)の範囲であった。一方、作った料理は「家の定番」の中から「食べたい料理」を選択する頻度が高く、調理法別では、炒め物・汁物が高く、蒸し物・揚げ物は低い傾向があり、カレー、丼物のような主食・主菜一体型の料理の調理頻度が高かった。調理習慣の無い学生が調理行動を学習するきっかけを提供するという点では、意義のある課題であったと考えられる。調理を学び始めた学生に、効果的に食材や調理法等の知識を広げさせ、様々な技術を習得させるためには、課題各回の目標を設定し、系統的に学ぶ流れを提示する必要があることが示唆された。
著者
津田 淑江 堂薗 寛子 小池 恵 瀬戸 美江 大家 千恵子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.313-318, 2008-10-20
参考文献数
9
被引用文献数
4

CO_2排出量削減に向け持続可能な消費の取り組みが行われている。国や自治体などによる規制や規則が必要となる一方で,家庭においても資源を考えた行動を起こすことが重要となってきている。しかし消費者に対して家庭で調理することによって排出されるCO_2量に対する情報が少なく,具体的なCO_2削減の評価方法が示されていない。本研究では,家庭における食事作りに焦点を当て,その中で,炊飯と保存方法の違いによるCO_2排出量を算出した。さらに,環境家計簿の調査を行い,現状の把握とCO_2排出量の抑制方法の検討を行った。その結果,炊飯時のCO_2排出量は,食べる飯をその都度炊飯することにより低減できた。それに対し電子ジャーで保温した場合のCO_2排出量は増加した。飯を冷凍保存した場合,電子レンジ解凍に要する時間,CO_2排出量は,飯量が増えるごとに増加していた。
著者
山田 直史 太田 晴子 岡本 紗季 小橋 華子 榊原 紗稀 秋山 史圭 植田 絵莉奈 郷田 真佑 正 千尋 妹尾 莉沙 中村 宜督
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】食品に含まれる抗酸化活性が注目される中、食品の相互作用による抗酸化活性の変化について研究を進めてきた。本研究では、キュウリによるトマトの抗酸化活性の低下作用を、抗酸化活性、ビタミンC含有量およびポリフェノール含有量の測定から解明を試みた。また、サラダの盛りつけを意識して接触状態での影響についても検討を行った。【方法】キュウリホモジネート、トマトホモジネートを1:1で懸濁し、抗酸化活性をDPPHラジカル捕捉活性法で、ビタミンC含有量をヒドラジン法で、ポリフェノール含有量をフォーリンチオカルト法で測定した。また、輪切りにしたキュウリをトマトの断面に接触させたのちに、トマトの抗酸化活性を測定した。【結果】キュウリホモジネート、トマトホモジネートを1:1で懸濁させることで、抗酸化活性およびポリフェノール含有量が、総和から期待される値よりも小さくなった。一方で、総ビタミンC含有量はキュウリとトマトの総和から期待される値とほぼ等しくなったが、酸化型ビタミンCの割合が大幅に増加していた。この結果から、キュウリに含まれるアスコルビン酸オキシダーゼがトマトの抗酸化活性の低下に大きく関与すると考えられた。また、トマトとキュウリを5分間の接触によって、トマトの抗酸化活性はわずかながら低下した。これらの結果から、キュウリにってトマトのアスコルビン酸の酸化が敏速に起こることが示唆された。
著者
岡本 洋子 吉田 惠子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】日本のだしを中心とした薄味の和食には,健康維持とおいしさが両立できる世界でも希な食事体系である。さらに,和風だしを用いた食事を実践することは,生活習慣病のリスクを低減する一要因となると考えられている。そこで,本研究では和風だしの代表的素材である,かつお節とコンブを用いただしについて好ましく受容できることが重要と考え,それらの天然素材だしならびに風味調味料だしを用いた調理食品を調製し,識別ならびに嗜好性を調べることを目的とした。【方法】天然だしおよび風味だしを用いた調理食品の識別と嗜好性については,官能評価法(3点識別試験法,2点嗜好試験法,3点嗜好試験法)によって行った。評価者は年齢18~20歳の健康な女子学生27~32名である。試料として,だしを用いた調理食品7種(主食:醤油味飯,汁かけうどん,主菜・副菜:高野豆腐煮物,だし巻卵,サトイモの煮物,ゴボウの煮物,汁物:味噌汁)を調製した。データは,有意差の検定(2項検定)により解析した。【結果】① 7種のだしを用いた調理食品では,天然だし食品と風味だし食品の「おいしさ」が異なることを有意に識別できた(p<0.01, p<0.05 )。 ② 7種のだしを用いた調理食品では,天然だし食品と風味だし食品の嗜好性に有意差はみられなかった。しかしながら,7種のうち6種において,天然だし食品と比べ,風味だし食品を好む傾向がみられた。③ おいしさを評価する際の背景要因として食体験があげられるが,今回は食経験と官能評価の関係については明らかにできなかった。本研究の評価者は,これまでに,天然素材のだしではなく,日常的に風味調味料だしを調理のときに使用していたのかもしれない。
著者
三浦 加代子 今西 あみ 西川 有香 坂内 綾乃 藤井 千紗 守山 由佳理 杉原 正治
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】手動の泡だて器や電動ハンドミキサーで撹拌した場合、ホイップクリームの含気率(オーバーラン)には限界がある。しかし、撹拌器「キスワン」は、圧力を調節しながら撹拌ができ、通常よりも大きなオーバーランが得られ、通常の器械ではいくら撹拌しても泡立たないものでも泡立てることができるという特徴をもっている。この器械を用いて新規食品開発を行うための基礎的なデータを得ることを目的として研究に着手した。今回は、生クリームを試料として圧力をかけて撹拌し、どのような特性をもったホイップクリームができるのかを検討した。また、ホイップクリームの保存性についても調べた。【方法】ステンレス製ボールに生クリームを一定量入れ、圧力を加えて5℃で撹拌した。撹拌回数は70回転/minとし、圧力は0.2MPa, 0.4MPaで行った。同様に常圧で撹拌したものを対照とした。生クリームの種類を変え、撹拌時間とオーバーランの変化を調べた。また、調製したホイップクリームの保存性をオーバーランおよび色調の変化等で検討した。【結果】生クリームの種類により、撹拌時間ごとのオーバーラン値は大きく異なった。例えば、乳脂肪分47%(種類別名称:乳等を主要原料とする食品)では、最高オーバーラン値が、常圧では撹拌時間6分で146%となったが、0.2MPaにすると105秒で約330%、0.4MPaでは105~120秒で約400%となった。即ち、1/3の時間で2倍以上の最大オーバーラン値が得られることがわかった。また、乳脂肪分35%(種類別:クリーム)の生クリームを圧力(0.2MPa)を加えて撹拌し、250%のオーバーランになったホイップクリームを調製し、その泡の安定性を経時的に調べた結果、保存温度が重要であることがわかった。
著者
小平 将太
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】ホイップクリームは、調製に時間と手間がかかり、水と油の分離が起こりやすい事が作製上の注意点である。レモン果汁はpH変化やクエン酸のキレート作用により多様な調理機能を発揮することが知られている。そこで本研究では、レモン果汁を生クリームへ添加することで、調製時間や、物性の変化におよぼす影響について報告する。【方法】ホイップクリームは、生クリームに適宜レモン果汁を加え、ハンドミキサーを用いて調製した。ホイップは最大オーバーランを終点とした。ホイップクリームの物性は、離漿量、気泡径、テクスチャーアナライザーの変形応力およびレオメーターの貯蔵粘弾性、損失粘弾性で評価した。また、レモン果汁を添加した際の理化学変化としてエマルジョンのζ-電位、粒子径、pHを測定した。さらに、評点法で官能評価を行った。【結果】レモンの添加量に比例して、調製時間が短縮されると共に、エマルジョンの粒子径が大きくなりやすい傾向を示した。これはpHの低下によるζ-電位の絶対値の減少で、粒子が凝集しやすい荷電状態となったためと推察された。また、レモン添加量に比例して離漿量と、経時による気泡径の拡大が低減した。さらに、レモンを1%添加した際に、経時による変形応力の低下が減少したことから、保型性が向上していることが示唆された。貯蔵粘弾性、損失粘弾性に有意差は認められなかったが、最大オーバーランは、1%レモン添加で最大化した。さらに官能評価でも食感の軽いホイップクリームになる傾向を示した。以上の結果から、ホイップクリーム調製時にレモンを添加することで、短時間で保型性や食感の良いクリームが調製できることが分かった。
著者
四宮 陽子 夛名賀 友子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】一般的に嚥下困難者の食事は、外観、味共に好ましくない料理が多く、「えん下困難者用食品」の市販品も少ない。高齢化が進行する社会的なニーズからも嚥下困難者の食事をおいしく調製することは大きな課題となっている。消費者庁の定める「えん下困難者用食品」許可基準3は、やわらかいペースト状又はゼリー寄せのように複数の食材や不均質の物を含んでも良い。そこでこの基準に該当するおいしい食事を調製することを目的とし、公開されている流動食のレシピを調査して調製法を検討、食事つくりとテクスチャー測定を行った。 【方法】調査はインターネットや文献、またホテルメトロポリタンエドモンドのフレンチレストラン「フォーグレイン」で流動食フルコースを体験した。これらを基に鮭のムース(以下Aとする)、パンのムース(以下Bとする)、比較としてヨーグルトナチュレ恵(日本ミルクコミュニティ(株)以下Cとする)を調製した。テクスチャーはクリープメーター(RE2-3305B、(株)山電)、テクスチャー解析Ver.1.3で消費者庁の基準に準じて測定し、消費者庁の「えん下困難者用食品」許可基準3、嚥下食ピラミッド、ユニバーサルデザインフード(以下UDFとする)と比較検討した。 【結果】好まれる流動食は色が美しく、色の混濁を避けるため食材は単一でミキサーにかけてピューレにする、食材の味、旨味、風味を引き出す為にじっくり煮込む、食感をなめらかにするためにミキサーで粉砕、裏ごすなどを行っていた。この結果を参考にAは主材料の鮭、はんぺん、豆腐にコンソメスープを加えミキサーで粉砕、Bはパンのクラムと牛乳を煮詰め、蜂蜜を加えミキサーで粉砕を繰り返した。Cはヨーグルトに砂糖を加え攪拌した。テクスチャーは許可基準3の範囲に入り、嚥下食ピラミッドではL2~L3、UDFかたさ区分では3~4の範囲であった。
著者
永塚 規衣 木元 幸一 長尾 慶子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成16年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.99, 2004 (Released:2004-09-09)

【目的】昨年の調理科学会大会において、煮こごり調製時、特に煮汁に溶出したコラーゲンの可溶化と調味料との関係に注目し、各種調製条件の違いが煮こごりの物性に及ぼす影響について報告した。今回はコラーゲンの可溶化と加熱時間及び加熱温度との関係に注目し、煮こごりの物性変化を微視的に追跡・検討を行った。【方法】試料の鶏手羽先を約1cm角切りにし、50gに全面が水に浸る水量30gを加え600Wの電熱器で加熱、沸騰後火力を300Wに調節して、10分から120分までの定時間加熱した後、各試料をろ過し、煮汁が30mlとなるように調製した(100℃加熱試料)。同様に加熱温度を90℃に保持しながら加熱した試料を調製した(90℃加熱試料)。各試料ゾルの動的粘弾性、17O-NMRによる緩和時間(T1)、動的光散乱による粒度分布、GPC及び電気泳動による分子量分布を測定した。次いで各試料を内径32mm、高さ15mmのペトリ皿に分注し、冷蔵庫で24時間保存してゲル化させ、破断特性を比較した。【結果】鶏手羽先は加熱を続けるほど動的弾性率が増加し、硬いゲルを形成した。緩和時間も加熱時間の経過と共に短くなる傾向がみられ、水分子の活動が抑制されていることが推測された。また、動的光散乱、電気泳動結果より、加熱時間と共に粒径及び分子量が小さくなる傾向がみられた。肉中のコラーゲンは加熱すると熱変性しゼラチンとなるが、溶出された成分のうち、α成分が特異的にゲル形成能が高い傾向にあると示唆されており、本GPC結果から加熱時間の経過と共にα成分が増加している傾向が認められた。また、100℃加熱ゲルが90℃加熱ゲルよりもゲル強度の高いゲルを形成していた。
著者
東根 裕子 上村 昭子 八木 千鶴 山本 悦子 渡辺 豊子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】食事の簡便化等に伴い、行事食の伝承が難しい時代になってきている。平成21年・22年度の日本調理科学会特別研究として実施した「行事食」の調査結果のうち、雑煮の手作り度と他の行事食との関連を明らかにすることを目的とした。【方法】平成21年12月から平成22年3月、日本調理科学会特別研究の全国統一様式の調査用紙を用いて調査を実施した。今回は、大阪府に10年以上住み、40歳以上で調理担当者である301人を分析対象とした。正月料理の雑煮は家での手作り度が高く、雑煮の手作り度と他の行事との関連を検討した。調査を行った17行事のうち、行事食を家庭で作っている割合が高い正月、節分、上巳の節句、クリスマス、冬至を検討対象とした。【結果・考察】調査対象者の年齢は40・50歳代が79.7%、60歳代以上20.3%であり、同居の家族構成は2世代が65.8%、職業は専業主婦が46.2%、次いでアルバイト・パートが34.6%であった。行事食の影響は、58.1%の人が母方から受けていると答えた。雑煮を手作りする人は、79.7%であり、正月料理の煮しめ・なます・魚料理、節分のいわし・巻きずし、上巳の節句のちらしずし・潮汁、クリスマスの鶏肉料理の手作り度が、雑煮を手作りしない人に比べて高く、有意差が認められた(p<0.05)。雑煮を手作りしない人は、他の多くの行事食においても手作り度が低かった。また、手作り度と喫食状況は必ずしも同じ傾向ではなく、節分の巻きずしやクリスマスケーキの手作り度は低い(21.3%と16.4%)が、ともに60%以上の人が毎年食べていると答えた。食の簡便化・外部化の流れを受け止めつつ、行事食伝承の方策を探っていきたい。
著者
金親 あつ美 古家 夏絵 藤井 恵子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成24年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.61, 2012 (Released:2012-09-24)

【目的】大豆は古くから日本人の重要なたんぱく源として食され、近年は豆乳の機能性成分が注目されている。本研究では、豆乳の起泡性に着目し、豆乳の泡沫特性を明らかにし、米粉と複合化させスポンジケーキを調製し、その特性を検討した。【方法】10~60℃に調整した豆乳をハンドミキサーを用いて起泡させ、その泡沫の起泡力、安定性、および力学特性を調べた。併せて豆乳の表面張力を測定した。また、豆乳泡沫にショ糖を添加し米粉と混合してスポンジケーキを調製した。生地の特性としてバッターの粘度、ケーキの特性として比容積、力学特性について検討した。【結果】12~55℃に調整した豆乳を撹拌すると、均質な泡沫を形成させることができた。豆乳は、温度が高いほど表面張力が小さくなり、起泡力は増大した。しかし撹拌温度55℃を超えると一部が凝集した。また、撹拌温度が高いほど豆乳泡沫の粘度が高く、45℃で撹拌し調製した豆乳泡沫が、最も粘度が高かった。泡沫安定性は、撹拌温度が高いほど高くなり、卵白とは逆の傾向となった。豆乳泡沫を用いたスポンジケーキの調製について検討したところ、撹拌温度12~28℃で起泡させた豆乳泡沫を用いた場合ケーキは膨化した。ケーキの比容積は、糖濃度40%までは大きくなったが、50%では減少した。焼成可能であったスポンジケーキは、用いた豆乳泡沫の粘度が100~480mPa・sの範囲であった。以上の結果より、米粉スポンジケーキを調製する際は、起泡性および安定性の高い豆乳泡沫を用いるとよいというわけではなく、豆乳泡沫の粘度が100~480mPa・sの範囲内にある場合のみ、スポンジケーキが得られることが明らかとなった。
著者
橋場 浩子 根本 勢子 高木 史恵
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成15年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.36, 2003 (Released:2003-09-04)

[目的]日本の米消費量は年々減少し、農林水産省をはじめ多くの機関で米の消費拡大を目指す活動がされている。その一環として超微粒粉末の米粉が開発され、これにグルテンを添加したものが市販されている。この米粉を小麦粉の代替として調製したマフィンは、小麦粉マフィンよりも膨化率が小さく硬かった。そこで小麦粉マフィンの膨化および硬化抑制に効果のあったトレハロースを添加し、その影響をみることを目的とした。[方法]マフィンの配合割合は米粉100gに対して、砂糖30g、ベーキングパウダー4g、食塩0.8g、牛乳50g、バター50gとし、砂糖の0_から_15%をトレハロースで置換して同等の甘味を持つマフィン生地を調製した。これらを50gづつマフィン型に秤取し焙焼し、膨化率、水分、水分活性、テクスチャー、色差を測定し、あわせて官能評価も行った。[結果]米粉マフィンの膨化率はトレハロースの添加に伴って増加する傾向がみられた。米粉マフィンの水分および水分活性は保存日数が増すにつれ、低下していった。また保存日数が増すにつれ、米粉マフィンは硬くなっていったが、トレハロースを10%添加したものは硬くなりにくかった。
著者
香川 実恵子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】少子化・小家族化が進んでいる近年,保育施設や学校教育機関は,子育て支援の拠点として,家庭や地域への食情報の初受信の場としても期待されている。そこで,本研究では,保護者のニーズを捉えた子育て支援食育活動として English Kitchenの企画・運営を行い,その成果と課題を検証することにした。【方法】子どもに習わせたい習い事ランキングで常に上位にあげられている英語を取り入れ,英語と調理の両方を楽しみながら体験するという多目的な食育活動を企画した。対象は5~6歳児とその保護者とし,本学教員の2名のネイティブ講師と一緒に3回シリーズの講座を企画実践した。1回目の英語遊びでは「果物」や「色」,「はいどうぞ」の学習を絵本を取り入れながら学習した後,それらの英語を用いてカラフルフルーツ白玉をつくるというクッキングを行った。最後に保護者アンケートおよび子どもへの聞き取りを行った。【結果】英語遊びでネイティブ講師とやり取りを行った子どもたちは,「ドキドキした」,「楽しかった」と感想で答えるなど,適度な緊張と興奮とともに達成感を味わっていた。英語遊びで学んだA(Apple),B(Banana),C(Cherry)が,実際にその後のフルーツ白玉の調理に出てくるように工夫したり,絵本「はいどうぞ(Here you are)」の後に,デモンストレーションしながら食材のやり取りを子どもたちにも行ったりするなど,英語遊びとクッキングを関連づけながら流れのある展開が実現できた。また,家庭でも親子で簡単に実践できるヘルシーな調理を提案し,実践することができた。保護者の満足度も高く,質の高い英語を取り入れた子育て支援食育講座を提供できたことが示された。
著者
後藤 葉子 中村 眞理子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成25年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.107, 2013 (Released:2013-08-23)

【はじめに】入院期間の短縮等に伴い、医療機関でのリハビリテーションは終了しものの退院後、実際の生活機能の獲得に至っていない在宅障害者が多い。我々は2004年11月より、このような在宅障害者を対象に調理を通しての在宅支援活動を実施しており、現在は当事者主体のサークル団体として登録し、公的福祉施設を利用して調理活動を継続している。今回はこれまでのサークル活動の経緯から、在宅障害者にとって調理活動のもたらす効果について紹介する。 <BR>【サークルの内容】サークル登録メンバーは在宅障害者6名、家族メンバー3名、支援者(作業療法士)2名である。サークル活動は月1回の3時間半、身体障害者福祉センター調理室にて調理,会食、後片付けといったスケジュールで行い、材料費は実費負担としている。 <BR>【経過】自炊を必要する独居の女性1名からのスタートであったが、徐々に参加者が増え、現在は障害のため家事の役割を喪失した主婦、車椅子の重度障害者、コミュニケーション障害をもつ失語症の独居者、さらに家族の支援も含めた活動へと展開している。当初は身体機能を考慮しながら,我々が意図的にメニュー、調理方法・行程を決定していたが、次第に参加者の自主性を重んじるように心掛け、運営形態も当事者主体のサークル団体とした。現在はメニュー選択や役割分担など参加者間で決定し、料理レシピを自宅で再現する等、各々の役割や責任感、参加者同士の連帯感や協調性を養う場となってきた。 <BR>【まとめ】当事者主体のサークル活動を通じて、食べる楽しみや調理できる喜びの再獲得、また、できないと諦めていたことへの挑戦、障害者同士の交流の機会となっており、意欲的な在宅生活継続に繋がるっているものと考える。
著者
小林 三智子 岡田 幸雄 戸田 一雄
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成17年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.16, 2005 (Released:2005-09-13)

【目的】利尿剤として用いられるアミロライドには、塩味抑制効果があることがマウス1)やハムスター2)では確認されている。しかし、ヒトにおいてもアミロライドに塩味抑制効果があるかは明らかにされていない。本研究では、アミロライドの塩味味覚感受性の影響について検討した。【方法】19歳から21歳の健康な非喫煙者の女性をパネルとし、測定の際には口腔内に口内炎やう歯による痛みのないこと、食後1時間以上経過していることを確認した。味覚感受性の測定には、上昇系列の全口腔法を用いた。塩味のコントロール溶液にはNaClを用い、Na+とCl-の影響を調べるために対象としてCH3COONaとLiClの検討を行なった。あわせて、5基本味の他の4味スクロース、DL-酒石酸、硫酸キニーネ及びグルタミン酸ナトリウムについても同様にアミロライドの効果を検討した。【結果】全口腔法上昇系列で求めた塩味NaClの認知閾値は、1.25mMであった。事前にアミロライドを味わった後の認知閾値は2.5mMとなり、アミロライドによる塩味抑制効果が認められた。それに対して、他の4つの基本味では、甘味・苦味・うま味ではアミロライドの抑制効果が認められなかったが、酸味には抑制効果が認められた。アミロライド処理は、ヒトにおいて、塩味と酸味の応答はともに抑制されることが認められた。1)Miyamoto,T.,Miyazaki,T.,Okada,Y.and Sato,T.:J.Neurosci.Methods,64,245-252,19962)Gilbertson,T.A.,Roper,S.D.andKinnamon,S.C.:Nesron,10,931-942,1993
著者
久保田 賢 山本 悠 山岡 耕作
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

【目的】キューバでは食糧確保の目的で1999年に繁殖力の高いアフリカヒレナマズを導入した。2001年11月に到来したハリケーンにより、世界自然遺産候補であるサパタ湿地をはじめとする自然の淡水域および汽水圏への流出が起こり,貴重な固有種の駆逐が懸念されている。これらの環境保全策の一つとして、移入種の漁獲と利用が効果的であると考え、ヒレナマズ肉を原料とした製品のキューバ人に対する嗜好性を知ることを本研究の目的とした。 【方法】キューバの首都ハバナ市内およびサパタ湿地地区の住民に対して魚食の習慣や嗜好について聞き取りおよびアンケート調査を行なった。ヒレナマズ肉製品の嗜好調査には,ハバナ市内で販売されていた養殖ヒレナマズの冷凍フィレーまたはサパタ湿地で漁獲されたヒレナマズを用いた。フードプロセッサーまたはすり鉢を用いて調製したすり身からフィッシュボールや野菜を入れたさつま揚げを作製して食味試験を行なった。また,煉り製品をはじめとした日本で市販されている様々な水産加工食品についても嗜好性を調べた。 【結果】魚食を好むキューバ人が多かった一方で,半数以上は摂食頻度が2回/月以下と回答した。魚種としては海産の魚や魚介類が,料理法としては主に揚げ物料理やソース料理が好まれていた。板付けかまぼこやちくわなど、食経験のない一部の製品を苦手とする回答はあったものの、日本の加工食品の評価は決して低くはなかった。しかしながら、現地で調達したヒレナマズ肉で作製したフィッシュボールやさつま揚げに対する評価はさらに高かった。