著者
中澤 弥子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.21, pp.2024, 2009

<BR>【目的】長野県松本市梓川地区(旧梓川村)では、平成15年に第三セクターによる発芽玄米の加工場が設立され、農村女性グループを中心に発芽玄米による米の消費拡大と健康な地域づくりが行われてきた。既報<SUP>1) </SUP>において、梓川地区全戸を対象とする発芽玄米の摂取に関するアンケート調査の結果を報告した。本研究では、発芽玄米を長期摂取している梓川地区住民を対象とし、日常的な発芽玄米の長期摂取が健康に及ぼす影響を検討することを目的とした。<BR>【方法】松本市梓川支所および農村女性グループの協力を得て、梓川地区内で中高年を対象とし、留め置き法によるアンケート調査を平成20年2~3月に行った。梓川特産発芽玄米の摂取期間、摂取量、摂取頻度、摂取方法、調理上の工夫、健康への影響および基本健康診査結果等について調査した。<BR>【結果】アンケート配布数は91、有効回答数72、有効回答率は79.1%であった。回答者は、性別では女性が多く73.6%を占め、平均年齢は67.4±7.9歳であった。発芽玄米の摂取頻度は、「ほとんど毎日食べる」が68.1%、ご飯として食べる場合の白米:発芽玄米の割合は2:1~4:1が72.2%、加水量は白米と同様が62.5%、通常の水加減より多めが37.5%だった。摂取による体調(健康状態)の変化については、「よい変化があった」の回答が54.2%、その内容は「便通がよくなった」が89.7%(N=39)でその多くから回答された。基本健康診査においては、高血圧症・高脂血症の改善傾向、総コレステロール値の減少傾向などを示す対象が存在した。<BR>1)中澤弥子:日本家政学会第59回大会、岐阜(2007)
著者
近藤(比江森) 美樹 新家 大輔 長尾 久美子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.71, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】シカ肉は、牛肉や豚肉に比べて低脂肪、鉄分やビタミンB群が豊富であり、栄養面で高い価値を有する食材である。そのため、近年深刻化する有害野獣問題の対策の一環として実施されている害獣駆除において、捕獲されたシカを食肉資源として有効利用する取り組みが行われている。一般に畜肉は、屠体を低温下で一定期間保存し、プロテアーゼ等の作用により保水性や旨味成分が増加して軟らかく美味しい肉質に変化した熟成肉として流通している。現在徳島県では、シカ肉は指定の加工所で解体後、3℃で2~3日の熟成後に真空包装して冷凍販売されているが、その熟成条件の設定は経験等によるものである。本研究では、熟成期間中の物理変化や旨味成分の挙動を解析することにより、シカ肉に適する熟成条件を検討した。【方法】徳島県で冬期に捕獲された野生のシカ(雌)、3頭を処理加工施設で屠殺後、直ちに左右のロースを採取した。ロースを約6 cm幅に分割して真空包装後、3℃で一定期間(0~24日間)熟成させた。熟成後、試料の重量変化、遠心保水性、クッキングロス、色調を測定した。さらに、一部の肉片を成分分析用の試料として-30℃で冷凍保存した。解凍してミンチ状にした試料から核酸関連化合物および遊離アミノ酸を抽出後、HPLC-PDAおよび自動アミノ酸分析装置により定量し、旨味成分の挙動を確認した。【結果】熟成11日目に遠心保水性の上昇とクッキングロスの低下が認められた。旨味成分の挙動では、核酸系の旨味成分である5’-イノシン酸は熟成初期に増大し、その後減少した。一方、アミノ酸系の旨味成分であるL-グルタミン酸は11日目以降に著しく増加した。これら理化学的性質および旨味成分の挙動を指標にシカ肉の熟成条件を検討した結果、真空包装下3℃で保存した場合、おおよそ11日間の熟成期間が必要であることが示唆された。本研究は、徳島文理大学「平成28年度 特色ある教育・研究(課題番号TBU2016-3-1)」の助成を受けて実施した。
著者
石川 由花 市川 智美 内山 けい子 熊谷 美智世 工藤 裕子 小西 雅子 峯木 真知子 茂木 美智子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成23年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.81, 2011 (Released:2011-08-30)

【目的】近年、料理は食味、エネルギーともに軽いものが好まれる傾向にある。料理店格付けで高い評価を得ている天ぷら専門店の食味の軽さは、衣調製方法と加熱温度管理が主因であろうとの仮説で検討を行った。天ぷらの技術情報は、教育機関のテキスト、一般料理書、メディア情報を含め記述幅に大きな差はないが、衣調製方法や加熱温度管理の細部情報はない。本報告では、特に衣の配合、卵水の攪拌方法、衣付着方法、加熱温度について、熟練者(職人)と非熟練者(一般情報を得てきた人)を比較解析し、好ましい食味の天ぷらを再現性高く作ることができる調理技術情報としたい。 【方法】工程解析は、熟練者として「てんぷら近藤」店主 近藤文夫氏と、非熟練者3名の計4名から得た。材料、揚げ油、油量、鍋の材質と形状は熟練者の方法に統一した。調理工程及び所要時間、加熱中の油温度の変化、加熱開始から引き上げ後の揚げ種内部の温度変化を測定した。天ぷら試料のテクスチャー特性・重量変化率・衣試料の吸油量を測定、食味判定はプロファイル法により官能評価を行い、衣の性状は組織観察を行った。 【結果】熟練者の衣は(水+卵):薄力粉が容積比換算で(10+1):11の配合であった。卵水の卵の割合が低く、攪拌方法に特徴があり、また衣付着前に揚げ種に薄力粉をまぶした。熟練者は天ぷら試料投入による低下を加味して、油温をほぼ一定に保持する火力調節を行った。非熟練者は油温低下による火力調節の結果、油温の変動幅が大きかった。熟練者の加熱時間には、繰り越し余熱を計算にいれた終点決定がみられた。以上、熟練者の技術解析から、組織観察、官能評価も総合し、天ぷら技術の要点情報が示唆された。
著者
明神 千穂 安藤 真美 伊藤 知子 大塚 憲一 久保 加織 露口 小百合 中平 真由巳 原 知子 水野 千恵 村上 恵 和田 珠子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成23年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.80, 2011 (Released:2011-08-30)

【目的】中学校、高等学校の家庭科担当教員に調理実習の現状について実態調査を著者らが行ったところ、揚げ調理を実施している中学校、高等学校はともに20%で、授業時間数の減少や補助者の問題などが関係し減少傾向にあることが分かった1)。そこで、油の処理も含めた揚げ調理の一連の操作を学ぶことができる教材の開発が必要であると考えた。本研究では、まず天ぷらを取り上げ、生活体験レベルが異なる生徒にも対応可能な教育媒体としてリーフレットを作成した。多くの教育現場で活用してもらうため、このリーフレットを高校家庭科担当教員へ送付し、揚げ調理の実施状況およびリーフレットの評価についてアンケート調査を行った。 【方法】<リーフレット> 天ぷらの作り方について、油の種類・必要な調理器具・食材の準備・衣の作り方・油の温度管理・揚げ操作・油の処理方法までをカラーのイラストと写真を用いて説明した。<アンケート調査> 2010年8月に近畿二府四県の高等学校家庭科教員を対象とした郵送法による質問紙調査を行った。有効回答数は110部、回収率42.3%であった。 【結果】揚げ調理の実施状況では「天ぷらを作ったことがある」は15%であった。リーフレットに関しては「内容、説明、写真、デザイン」は高い評価を得られた。また、「補助教材として使いやすい」、「高校生の天ぷらについての理解が深まる」、「授業の資料として活用したい」と答えたのがそれぞれ76%、88%、78%となり高い評価が得られた。リーフレットへの評価は高いが、学生への配布希望は34%だった。今後は実際に授業で用いた際の生徒からの評価も検討を予定している。 1)日調科誌, 41, 196 (2008)
著者
嶋田 さおり 岸田 太郎 坂田 香代子 森田 君香 平岡 祥子 改野 芙美 松本 愛 中村 紀子 渋川 祥子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成28年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.110, 2016 (Released:2016-08-28)

【目的】家庭で一般的に行われている揚げ物料理の吸油率については、すでに調べられ文献等で公表されている。しかし、大量調理機器によって測定された吸油率のデータは見られない。学校給食の場合、厨房設備や作業工程などの事情から、一般的な揚げ物料理とは、食材やその切り方が異なることもある。そこで本研究では、学校給食で提供頻度の高い揚げ物料理について、吸油率を明らかにし、児童生徒に提供している給食の栄養価を正確に把握することを目的とした。【方法】愛媛県松山市において、平成22~24年度の学校給食献立3年分をもとに、提供頻度の高い揚げ物料理を、素材別、揚げ形態別、揚げ衣別に整理した。次に、提供頻度の高い揚げ物料理について、2か所の共同調理場で、ガス回転釜とフライヤーの2種の調理機器を使用して実際に調理し、調理前後の水分率、吸油率を測定した。各試料は、20人分で調整し、揚げる前と揚げた後の試料の全量をそれぞれホモゲナイズし、その中から1gを取り出してクロロホルム・メタノール法で2分抽出して測定した。【結果】提供頻度の高い揚げ物料理に使用されている素材は、魚が最も多く次に肉、甲殻類が続いていた。揚げ方の調理形態別では天ぷらと唐揚げが多く、揚げ衣別ではでん粉を主としたものが44%、小麦粉等が39%、衣なしが17%であった。これらの結果から素材は使用頻度の高い鯛を使用しその唐揚げと天ぷらについて吸油率を測定した。170℃で3分揚げた鯛の唐揚げは、ガス回転釜の吸油率が8.6%、フライヤーの吸油率が4.6%であった。これはガス回転釜投入時の平均油温がフライヤーよりわずかに高く、そのため取り出し時の油温と試料中心温度も高くなったことから、ガス回転釜の方の水分蒸発が多くその分吸油したことが原因と考えられた。鯛の天ぷらについては差がなく両機器とも約5%であった。
著者
野坂 隆文 石原 佑希子 藤江 未沙 池野 潤 永瀬 敬顕 上田 恭己
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2019年度大会(一社)日本調理科学
巻号頁・発行日
pp.165, 2019 (Released:2019-08-26)

【目的】天ぷらは一般に人気の日本料理であるが,大量調理においては,作業工程の複雑さや,栄養管理面,さらには時間経過により衣の状態が変化し,品質が低下するという問題が知られている。この劣化現象は温蔵による適温保存の際にも発生するため,出来たての提供が難しい大量調理では敬遠されることが多い。本研究では,適温保存により劣化した天ぷらをより質の高い状態で提供するための調理方法を考案し,給食で提供される料理の質の向上を目指す。【方法】えび・さつまいも・なすを検討試料とし,衣には市販の天ぷら粉を用いた。170℃に設定したフライヤーで調理後,2時間温蔵保管した各試料をコントロールとした。調査対象として,同様の温蔵保管後にスチームコンベクションオーブンを用いて(1)コンビ180℃湿度100%5分,(2)コンビ180℃湿度100%2分,(3)コンビ150℃湿度100%5分の加熱処理をそれぞれ実施し,官能検査による比較を行った。対象者は当校教員7名とし,6項目において採点法による評価を行い,合わせて固さ・テクスチャー・品質についての質問も実施した。【結果および考察】えびでは(1)が全体を通して高評価が多く,質問より全員が天ぷらとしての品質を保っていると返答した。風味においては,全方法で評価が高く,加熱処理によってより香ばしく感じられたと考えられる。さつまいもではえび同様(1)が高評価で,食感・風味・ぱさつきが改善され柔らかく感じたとの評価が多かった。なすでは高評価は(1)の食感のみで,(2)(3)では低評価も多数見られた。全試料において加熱処理により余分な油が一部排出していたが,なすは構造上油を吸着しやすく,(2)(3)では加熱不十分で油っぽさが改善されなかったことが示唆された。
著者
小林 由実 上田 善博 加藤 邦人 石田 康行 小川 宣子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成28年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.99, 2016 (Released:2016-08-28)

目的 天ぷらの「おいしさ」は素材の旨味が保持され、さくさくした衣に覆われたものとして評価できる。天ぷらを揚げている過程での素材および衣から蒸発している水分の様子(油の表面情報)を画像処理分析から評価し、水分の蒸発状況が出来上がり(おいしさ)に影響を及ぼすことを澱粉性食品のさつまいもを用いて明らかにした1,2)。そこで、本研究は揚げている時の素材や衣の水分挙動と油の表面からの水分蒸発状況(油の表面情報)との関連について検討し、揚げている時の油の表面情報が天ぷらのおいしさに及ぼす影響につい考察を行った。 方法 天ぷらの素材としてさつまいもを用い、揚げている時の水分蒸発は、油表面の泡の発生状況を高速度カメラで撮影し、油のゆらぎによる画像処理のcontrast値と秤の上で天ぷらを揚げた時の重量減少量の両者から経時的に調べた。さつまいもの出来上がり評価はレオロメーターによる硬さ、グルコアミラーゼ法による糊化度、走査電子顕微鏡像から調べた。また、素材および衣の水分挙動は18H2Oを用い、GCMSにより測定を行った。 結果 油の表面情報は水分蒸発量ともほぼ一致していた。さつまいも投入直後に主として衣から水分蒸発が生じ、その後、さつまいもの水分量から衣からさつまいもへの水分移動が推定でき、合わせてさつまいもの細胞破壊が見られたことから、この時期に糊化が始まるのではないかと推定した。これらの推定した水分の挙動は18H2Oを用い、GCMSにより測定を行った結果、推定を裏付ける傾向であった。 [文献]1)小林他:日本家政学会第66回大会研究発表要旨集、p70(2014) 2)小林他:日本家政学会第67回大会研究発表要旨集、p49(2015)
著者
坂本 千秋 会田 知菜津 伊東 沙樹 寺島 香織 小林 三智子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成26年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.198, 2014 (Released:2014-10-02)

【目的】心理的ストレスにより苦味、酸味および甘味の感受性が低下するという報告があるが、自律神経活動との関係を述べている報告はない。そこで心理状態および自律神経活動が味覚感受性に及ぼす影響を研究するために、有用な実験プロセスを確立させる。【方法】(1)内田クレペリン精神検査(以下クレペリン検査とする)を心理的ストレス負荷の方法として用いることの妥当性、(2)味刺激が自律神経活動に及ぼす影響 以上2点を検討した。被験者は本学食物栄養学科の学生とし、測定前1時間は食事をしないよう指示した。(1)心理的ストレス負荷としてクレペリン検査による計算問題を30分間実施させ、その前後で測定を行った。ストレスマーカーには唾液アミラーゼ活性を用いて心理的ストレス負荷の妥当性を検討した。(2)味刺激として閾上濃度の5基本味溶液5mlを1分間、あるいは10mlを10秒間口に含んだ後、吐き出させた。その直後から定時的に測定を行った。測定項目は唾液アミラーゼ活性、自律神経活動および血圧とし、それぞれ酵素分析装置 唾液アミラーゼモニター、加速度脈波測定システム アルテットおよびデジタル自動血圧計 HEM-1040により測定を行った。【結果】(1)クレペリン検査実施後においてLFパワー値(交感神経および副交感神経の活動性の指標)および唾液アミラーゼ活性で有意な上昇が認められた。よってクレペリン検査は心理的ストレス負荷の方法として有用であるという知見が得られた。(2)1分間の0.65%塩化ナトリウム溶液の刺激において心拍変動係数(CVaa%)および全パワー値で時間の経過による低下がみられた。よって塩味による自律神経活動の減弱が認められた。
著者
小宮 麻衣良 豊満 美峰子 松本 仲子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 創立40周年日本調理科学会平成19年度大会
巻号頁・発行日
pp.156, 2007 (Released:2007-08-30)

【目的】 計量カップ・スプーンによる食品の計量値は、食品の性状の変化に応じて、数値の改定がなされてきた。米についても変化していると推察されるが、精白米については1カップ(200ml)=160gのまま、50年以上ものあいだ改定されずにきた。そこで、計量カップおよび自動炊飯器に付属する1合カップ(180ml)を用いて、精白米の生産年度、品種を変えて計量した。また、炊飯に際しては、カップと合カップの使用区分が曖昧で、家庭や教育現場での調理でも長く混迷が続いている。そこで、炊飯における計量器の統合を期待して、家庭における米の計量器、計量の方法などについて教職課程に在籍する大学生の家庭を対象に調査した。 【方法】 精白米の計量については、計量カップ(200ml)と1合カップ(180ml)とを用い、品種(コシヒカリ、ササニシキ)や生産年度(平成17年,平成18年)を変えた4種類の米を5回ずつ計量し、その平均値を求めた。アンケート調査については、米の計量器具、1回の炊飯量、水加減の方法、計量カップと1合カップの容量の違いの認知度などについて質問した。 【結果】 精白米の計量値については、4種の米の1カップあたりの平均値は167.1±5.94gで160g以上であり、一般に通用している計量値の変更が必要であると考えられた。また、アンケート調査結果については、家庭で使用する計量器は1合カップ69.0%、米びつ16.7%、計量カップは4.8%であった。家族と同居の場合1回平均炊飯量は3.6合となった。計量カップと1合カップの容量の違いについては、57.1%の学生が「知らない」と回答し、この計量実験によって容量の違いを初めて知ったとしている。
著者
圓口 智子 湯川 夏子 中西 洋子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】近年、「万能調味料」として塩麹が注目を集めており、塩麹を利用した料理レシピ本が数多く出版されている。塩麹には食材に塩味を付けるだけでなく、麹の持つタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)やデンプン分解酵素の作用による栄養素の吸収促進や素材のうま味を引き出す効果が期待されている。塩麹は家庭において、麹に食塩と水を加え、約1週間室温で発酵・熟成させて作ることができる。また、購入後すぐ使える塩麹も市販されている。これら塩麹を効果的に利用するためには、含まれる酵素の性質を理解する必要がある。本研究の目的は、自前で調製した塩麹および市販塩麹の持つプロテアーゼの諸性質を明らかにすることである。<br>【方法】塩麹は、乾燥米麹「みやここうじ」((株)伊勢惣)を用いて調製した。また、メーカーの異なる市販塩麹を購入し、使用した。プロテアーゼ活性は、カゼイン消化法(37℃)により測定し、1分間に280nmの吸光度を1.0増加させる活性を1unitとした。<br>【結果】塩麹10倍希釈液を用いた測定では、少なくとも反応時間4時間までは反応時間に比例してカゼインの分解が進行した。しかし、10倍希釈液を50℃30分間放置することで、プロテアーゼ活性(カゼイン分解活性)は42%に低下した。発酵・熟成前(調製0日目)のプロテアーゼ活性は0.15&plusmn;0.017unit/g原液であり、24℃、7日間の発酵・熟成で0.12&plusmn;0.011unit/g原液(残存活性84%)となった。以後、冷蔵庫保存1ケ月間、同レベルの活性を維持した。一方、食塩無添加の場合、24℃、7日間でプロテアーゼの残存活性は20%に低下した。市販塩麹の中にはプロテアーゼ活性の検出できないものがあった。
著者
阿部 愛波 大河原 悦子 柳澤 幸江 中島 肇
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.28, 2016

<br><br>【目的】千葉県の郷土食である「性学もち」は粳米から作られる。特徴として粘り気が少なく喉に詰まりにくい、汁物の中でも溶けにくいということが挙げられるが、製造過程においてどのような科学的変化が起きているのかは明らかになっていない。そこで本研究では性学もちを様々な条件で作成し、通常のレシピにある工程の意義や、性学もちの望ましい水分量等を明らかにすることを目的とした。<br><br>【方法】現在に伝わる性学もちの製造方法は、一晩浸水し10分程度蒸し、芯が残った状態で一度水洗いをし、再度芯がなくなるまで蒸し上げ、搗くというものである。本実験では伝承されている性学もちの製造方法と、対象群として一度蒸した後の水洗いの工程を30分浸水に変更したものとで、水分量と保形成について検討した。<br><br>【結果】通常の製造法で作成した性学もちは、水分量が50.24%~58.89%であったのに対し、水洗いを浸水に変更した群では、55.03%~64.41%であった。保形成は通常の製造方法群が高く、食感も好ましかった。対照群である水洗いを浸水へ変更した群では保形成は低く、食感はべたつきを感じる結果となった。これは浸水させたことにより吸水が高まり、その結果水分量に違いが出たからと考えられるが、アミロース、アミロペクチンの含量についても今後検討する必要がある。水分量やアミロース・アミロペクチン量を明らかにすることで、伝承されている製造方法にある二度蒸しや、水洗いの理由を明らかにすることができると考える。
著者
大河原 悦子 高梨 萌 阿部 愛波 中島 肇 柳澤 幸江 龍崎 英子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成28年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.68, 2016 (Released:2016-08-28)

【目的】】千葉県の東総地区(現在旭市)に江戸時代から伝わる粳米を用いた独特の製法で作られる性学もちがある。本研究は、粳米で作る性学もちが餅に比べ付着性が低く飲み込みやすいと言われている点に着目し、その性質及び物性を分析し飲み込みやすさを科学的に検討した。高齢者向け食品開発として、また、千葉県郷土食の伝承と米消費拡大という側面からの活用も目的とした。【方法】咀嚼機能の観点から女子大生による性学もちと市販切餅の官能評価検査及び .XTplusTEXTUREANALYAER(StableMicroSystens)を用いて性学もちと市販の切餅の硬さ・付着性・凝集性を測定し性学もちの郷土食歴史的背景の観点から地域住民による認知度アンケートを実施した。【結果】官能評価検査では、市販の切餅に比べ飲み込みやすいという項目で有意な差がでたが、おいしさについては差がみられなかった。テクスチャーアナライザー分析した結果、硬さと付着性には、性学もちと切餅には有意な差はみられなかった。一方、見かけの凝集性は性学もちには切餅には統計的な有意な差がみられた(p<0.05)。この結果から、性学もちは市販の切餅と比較して飲み込みやすいことが示唆された。一方、郷土史研究の視点から、千葉県市川市民10~70歳代(n=181)の認知度アンケート調査を行った所、性学もちを知っていると答えた人は全体の5.5%と低くかった。江戸時代の道学者大原幽学が考案した性学もちは農民の困窮生活の中で餅文化への強い信仰心から誕生した。大原幽学の特異かつ不幸な歴史的背景から性学もちに関する資料は少なく、認知度の低さにつながるのではないかと推察される。
著者
福島 祐里 水田 美咲 高村 仁知
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成25年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.182, 2013 (Released:2013-08-23)

【目的】熱帯に位置するインドネシアは日差しが強く、ここで生育する植物は紫外線による酸化を防ぐため、強い抗酸化性を有しているとされる。インドネシア産メリンジョ(Gnetum gnemon L.)は高い機能性を有し、現地ではメリンジョチップス(ウンピン)などとして食用とされているが、口内に残る特徴的な苦みが国外における普及を妨げている。本研究ではメリンジョの有効利用を目指し、メリンジョ粉末を用いた菓子の開発を試みた。【方法】メリンジョ粉末を用いた焼き菓子としてパウンドケーキ、揚げ菓子としてドーナツ、生菓子としてプリンの3種を作成した。メリンジョ粉末量はそれぞれ0~20%とした。官能評価により嗜好性を評価するとともに、機能性成分であるgnetin C含量をHPLCにて定量し、抗酸化活性をOxygen Radical Absorbance Capacity (ORAC) 法で評価した。【結果】生菓子であるプリンでは、gnetin Cおよび抗酸化活性が保持されていたのに対し、焼き菓子であるパウンドケーキではプリンの約1/2に、揚げ菓子であるドーナツでは約1/4に減少した。しかし、プリンでは苦味が強く感じられたのに対し、パウンドケーキやドーナツでは苦味が減少した。また、弱い苦味を有する方が嗜好的には好まれる傾向にあった。
著者
鷲見 裕子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成30年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.190, 2018 (Released:2018-08-30)

【目的】近年の生活環境やライフスタイルの多様化、中食・外食の利用率の高まりにより、日常的に家庭での調理機会は減少している。そのため、調理過程や食材を知らない食事を摂ることが多く、学生が調理実践への関心や意欲を持ちにくい現状がある。しかし、調理行動はバランスのとれた食生活につながり、食育のめざす「健全な食生活を実践することができる」ためには調理能力を高めることは重要といえる。本研究は学生の料理に対する認知と調理の状況の把握を目的とした。【方法】2017年9月に短大生162名を対象に、質問紙調査を行った。有効回答は150名(有効回答率92.5%)であった。調査内容は属性、調理実践頻度、家庭料理とされる110品について「知らない(無認知)」、「知っているが作れない(調理否)」、「作ることができる(調理可)」で回答を求めた。【結果】対象者全体では、無認知料理数は平均16.3±8.14品(14.8%)であった。調理可料理数は最小1品、最大95品と幅があり、平均は33.6±19.78品(30.5%)であった。調理実践のある者は無認知料理数が少なく(p<0.05)、調理可料理数が多かった(p<0.001)。料理で検討すると、認知では料理構成(p<0.01)、主食材(p<0.01)に有意差がみられた。認知率の低い(50%未満)料理は15品で「いり豆腐」「わけぎのぬた」など和食、副菜、野菜料理が多くみられた。調理可否と料理構成(p<0.01)、主食材(p<0.001)、調理法(p<0.05)で有意な差があった。調理可率は主食の穀類料理が高く、主菜・副菜料理で豆・野菜料理、和えるや煮る調理が低い傾向であった。調理可率が高い料理は認知率も高いが、調理可率の低い料理では「シューマイ、ビビンバ、酢豚」など認知率は高いが調理可率は低い料理もみられた。
著者
田尻,明日香
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, 2000-08-20

低脂肪スプレッドは多量の乳化剤、安定剤が添加されているため、口どけ、フレーバーリリースが好ましくない。本研究では、スプレッドの解乳化を評価する客観的な測定方法を確立し、乳化の安定性が良く口中で解乳化が生じる脂肪率20%スプレッドを調製するために、有機酸モノグリセリドを中心とした乳化剤の組み合わせの影響について検討を行い、以下の結果を得た。1.スプレッドの電気伝導度を経時的に測定することでスプレッドの解乳化を評価することができ、電気伝導度の平衡値により解乳化の度合いを推定できることが確認された。2.乳化剤としてPGPRとMG、さらに有機酸モノグリセリドを添加することにより、脂肪率20%の低脂肪スプレッドの口中温度36℃付近における解乳化が促進された。3.PGPRの濃度が高くなる程、解乳化に必要な有機酸モノグリセリドの濃度は増加し、有機酸モノグリセリドとPGPRとの相互作用により解乳化を引き起こすことが推定された。4.PGPRとMGに、さらに有機酸モノグリセリドを添加し乳化剤の総HLB値を3〜6にすることにより、乳化が不安定となり解乳化が促進されることが判明した。
著者
渡部 真子 鈴木 彩日 松村 知歩 水 梨恵 石橋 ちなみ 岡田 玄也 杉山 寿美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2019年度大会(一社)日本調理科学
巻号頁・発行日
pp.36, 2019 (Released:2019-08-26)

【目的】戦国期毛利氏の食に関しては,1549年に毛利元就が元春,隆景を伴い大内義隆を訪問した際に毛利氏が用意した6回の饗応献立が「元就公山口御下向の節饗応次第(以下,饗応次第)」に記されている。また,毛利氏の家臣,玉木吉保が当時の食材や調理法を「身自鏡」に記している。我々はこれまでに「饗応次第」において,雁や雉に加え,白鳥や鶴,獺が供されていたこと,「身自鏡」において調理法のみでなく,青黄赤白黒の視点が記されていること等を報告している。本研究では,「饗応次第」の献立再現を通して,当時の食について考察した。【方法】「饗応次第」の献立再現では,料理のレシピ(食材量,調理法,盛り付け,器等)の決定が必須である。そこで「饗応次第」「身自鏡」をさらに読み解くとともに,吉川元春館跡発掘調査(記録,出土遺物),同時期の料理書である「大草家料理書」,「明応九年三月五日将軍様御成雑掌注文」からの再現事例等を確認し,「饗応次第」に記された6回の饗応食のうち折敷や器が記された三月五日の饗宴献立の再現を試みた。【結果および考察】「饗応次第」には十二文あしうち,三度入り,小中等と記され,上記発掘調査において側板0.5cm程度の足付折敷,6〜8cmの土師器皿が多く出土されていることから,食材量は器の大きさに併せて決定した。また,当時の饗宴は食さないとの解釈もあるが,白鳥や鶴等の渡り鳥や,鷹のものと思われる獺等,極めて貴重な多様多種の食材が30〜35人分が用意されていることから食されたと解釈した。再現した献立にはぞうに等の儀礼的な料理がある一方,料理の組み合わせや順序への配慮がうかがえた。今後,当時の人々の食への価値観等も含め,検討したい。
著者
松本 憲一 柳澤 宙 田中 九平
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成15年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.91, 2003 (Released:2003-09-04)

【目的】そばのスプラウトは「そばもやし」「そば苗」などと呼ばれ、江戸時代の料理書「料理早指南」(1804)にその栽培法が記されているように、以前から利用されていたが、近年健康志向によりそばに含まれるルチンが注目され、そのスプラウトは新野菜として脚光を浴びている。かいわれだいこんと同様にいろいろな料理に幅広く使えることもあって、現在ではさまざまな商品が市販されるようになった。そこで、我々はそのルチン、ケルセチン含量を調べた。また、ダッタンそばのスプラウトとその若葉、宿根ソバの若葉、及びそれらを用いた試作品についても検討した。【方法】試料には、市販品及び試作栽培した普通そばとダッタンそばのスプラウト、ダッタンそばと宿根ソバの若葉、普通そば粉にそれら若葉の乾燥粉末を添加した生麺、乾麺、その他加工品を用いた。ルチン、ケルセチンはメタノール抽出後、HPLCにより測定した。水分は赤外線水分計を用いて測定した。【結果】ルチンは、普通そばスプラウトで約40_から_80mg/100g、ダッタンそばスプラウトで約50_から_280mg/100g 含まれていた。ケルセチンは、普通そばスプラウトにはほとんど含まれておらず、ダッタンそばスプラウトには約20_から_45mg/100g 含まれていた。水分量は、94_から_96%であり、ほとんど差がなかった。宿根ソバ若葉とダッタンそば若葉には同じくらいのルチンが含まれており、茎よりも葉のほうがより多く含有していた。また、それらの乾燥粉末を2%ほど添加すれば、1人前(150g)で1日のルチン所要量を摂取できるそば切りを作製することができた。
著者
角田 香澄 伊藤 正江 柵木 嘉和 坪内 美穂子 徳留 裕子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.18, pp.164, 2006

【目的】近年、放課後の児童の生活習慣は、塾に通うなど以前に比べて大きく変化してきた。また、食の欧米化や生活習慣の変化にともない児童の嗜好性も変化してきた。食環境については、スナック菓子摂取量の増加、外食や調理済み食品、レトルト食品の使用等により、児童の嗜好性も変化してきたと思われる。学校給食の残食率は、嗜好性と同様に食環境と密接に関係しているといわれている。そこで、本研究では、主食に重点をおき、残食率と喫食環境との相互的な関係を知ることを目的にアンケート形式による、嗜好等の調査および喫食状況(残食率)を調査した。<br>【方法】現在の児童の嗜好を知るために愛知県一宮市の小学生3040名(男子1537名、女子1503名)を対象にアンケート形式による嗜好等の調査を行った。また、小学校給食の残食率の調査を行った。<br>【結果・考察】嗜好等の調査を「全国児童生徒の食生活等の実態調査」と比較した。全国調査の結果では、最も好まれる献立は、カレーライスであった。一宮市の児童も同様に、カレーライスを最も好むと答えた。嫌いな食品については、全国調査の上位10品目の結果は、その中の8品目が野菜であったのに対し、一宮市の児童も全国同様、野菜が上位をしめる結果であった。また、嫌いな料理の傾向も同様の結果が得られた。全国調査の嫌いな献立の1位は、野菜サラダであり、一宮市の児童も野菜の入った献立を好まない結果であった。2.米飯の月別残食率は、6月から9月にかけて高い傾向を示した。真夏などの暑さや湿度の影響を強く受けていると思われる。嗜好と残食率の関係については,好まれる献立である「カレーライス」について比較した。特にカレーライス時の残食率は5%と低いが,湿度が高く蒸し暑い時期には,8.7%と高い傾向を示した。給食の献立と気候は喫食状況に大きく関係する傾向が示唆された。
著者
冨岡 佳奈絵 佐藤 佳織 阿部 真弓 鈴木 惇
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成26年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.95, 2014 (Released:2014-10-02)

【目的】安納イモは,水分が多く粘性の食感や甘味が強いことで知られ,熟成させると糖度が上がりおいしくなる。サツマイモは,加熱によりデンプンの糖化が進み,加熱方法の違いが味覚に影響を強く与える。異なる加熱方法で調理した安納イモの糊化デンプンの性状の違いをみるために組織化学的方法により調べた。【方法】サツマイモ(安納イモ、ベニアズマ)を3cm厚の輪切りにし,茹で,蒸し,オーブン(140℃と200℃)および電子レンジで加熱した。加熱した試料を室温に下げてから,ドライアイス・アセトンで急速に凍結し,コールドミクロトームで薄切(厚さ:16μm)した。薄切した切片をヨウ素液および過ヨウ素酸・シッフ液で染色して糊化デンプンの性状を観察した。【結果】安納イモの内部では,糊化デンプンで満たされたデンプン貯蔵細胞が少なかった。糊化デンプンで満たされたデンプン貯蔵細胞は,茹で,蒸しおよびオーブン200℃,オーブン140℃の順に少なかった。ヨウ素染色による糊化デンプンの色調は,茹でと蒸しでは褐色から青色を呈し,オーブン200℃ではほとんどが褐色であった。オーブン140℃では,糊化デンプンは褐色を呈し,貯蔵細胞を完全に満たすことはなかった。電子レンジでは,糊化デンプンが青色に染まり,多くのデンプン貯蔵細胞を満たしていた。オーブンで加熱したものの甘味が他のよりも強かった。ベニアズマでは,加熱方法の違いにより色調の差異があり,糊化デンプンで満たされたデンプン貯蔵細胞が多かった。安納イモは,ベニアズマより非常に甘かった。糊化デンプンの性状の違いが,甘さの違いと関連すると考える。
著者
島田 沙織 石田 一晃 石田 亘
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2019年度大会(一社)日本調理科学
巻号頁・発行日
pp.39, 2019 (Released:2019-08-26)

【目的】近年,自然解凍冷凍食品の需要が高まっている。しかし,根菜類は凍結すると解凍時に離水を伴って食感が軟化,スポンジ化し品質が悪くなる。これは凍結により生成した氷結晶が成長し,組織を損傷することが原因だと知られている。我々は,これまでに液体窒素凍結が根菜の離水抑制や自然解凍後の食感の維持に効果があることを報告した。本研究では冷凍根菜の品質向上を目的に,液体窒素凍結より簡便なブライン凍結の有用性について検討した。【方法】根菜類(ニンジン,ゴボウ,ダイコン,ジャガイモ)を用いて凍結速度による品質の違いを評価した。各食材を一辺30mmの立方体形にし,喫食可能な硬さになるまでボイルした。放冷した食材をエアブラスト凍結(-40℃),ブライン凍結(-10,-20,-30℃)液体窒素凍結(-196℃)し,0〜-10℃に達する時間を測定した。10℃に設定した恒温機でサンプルの解凍を行い,食味,ドリップ量,破断強度を未凍結品と比較した。【結果および考察】ニンジンの凍結時間は,エアブラスト凍結では17分,ブライン凍結(-30℃)では3分であり,ブライン凍結の方がより凍結速度が速かった。しかし,ドリップ量,破断強度に差はみられなかった。食味においても差はなく,未凍結品と比較して食感の軟化とスポンジ化がみられた。凍結時間が数秒である液体窒素凍結では,食味,ドリップ量,破断強度ともに未凍結品に近い品質が維持された。自然解凍後の根菜類の品質向上のためにはブライン凍結以上の凍結速度が必要であると考えられた。