著者
川崎 寛也 赤木 陽子 笠松 千夏 青木 義満
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1029, 2009

<BR>【目的】中華炒め調理は、鉄製の中華鍋を用いた高温短時間加熱にあおり操作が加わり、一般人には制御が難しい技術である。我々は、中華炒め調理中の鍋温度、具温度の経時変化を赤外線サーモ動画像により取得するシステムを構築した。本研究では、中華炒め調理中の温度変化に及ぼすあおり、攪拌操作の影響を知るために、熱画像と可視画像から得られた特徴量の有効性を検討した。<BR>【方法】調理専門者(中国四川料理店料理長)に回鍋肉(豚肉200g、キャベツ300g、ピーマン40g、長ネギ30g、市販合わせ調味料)を調理してもらい、赤外線サーモグラフィ(TVS-500、Avio社製)により熱動画像と可視動画像を撮影した。画像の炒め領域から以下3通りの解析を行った。(1)鍋底領域と縁領域を指定して温度変化を取得し、(2)鍋、お玉の動き、具の重心の動きをグラフ化、(3)鍋に占める具面積の時間的推移を求めた。さらにあおりのみでお玉を使用しないモデル調理を行い、温度変化を比較した。<BR>【結果】(1) あおり前後では鍋底、縁、具すべて温度変化が大きく、領域別温度変化のタイミングは鍋縁領域、具、底領域の順に高温となった。(2)鍋とお玉の動きは交互に現れた。具はあおり時に大きく移動し、続くお玉による攪拌により、常に動いている状態であった。(3)鍋における具の占有率は、あおりにより下がり、お玉による炒めで上昇した。あおりのみでお玉を使用しない調理では、調理途中の具温度のばらつきが大きく、仕上がり温度も低かった。中華炒め調理におけるあおり操作は高温の鍋縁に具を移動させ、焦げる前に反転させる役割、お玉はあおりによりかたまった具を広げ、高温の鍋底に接触させて温度を上昇させる役割であることが本システムを活用することで明らかになった。
著者
秋吉 澄子 小林 康子 柴田 文 原田 香 川上 育代 中嶋 名菜 北野 直子 戸次 元子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】地域に残されている特徴ある家庭料理を、聞き書き調査により地域の暮らしの背景とともに記録し、各地域の家庭料理研究の基礎資料、家庭・教育現場での資料、次世代へ伝え継ぐ資料などとして活用することを目的とし、(一社)日本調理科学会の特別研究「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」が実施された。<br /><br />【方法】熊本県内を6地区(阿蘇、県北、熊本近郊、県南、天草、球磨)に分類し、11名の協力者を対象に聞き書き調査を行った。その調査結果や参考文献を基に、おやつの特徴を検討した。<br /><br />【結果】おやつは農繁期の小昼(こびる=熊本弁でおやつのこと)としてよく食べられ、小麦粉を使用したものが多かった。熊本近郊では小麦粉の団子に大豆を混ぜた「豆だご」や、輪切りにしたからいもを包んだ「いきなり団子」が挙げられた。県北ではその土地で採れる里芋や栗を小麦粉の団子で包んだ「里芋団子」や「栗団子」、米の粉にゆずの皮、味噌、砂糖、水を加えて練り、竹の皮に包んで蒸した「ゆべし」があった。県南では夏場に「みょうがまんじゅう」が作られ、八代地区では神社の祭りで「雪もち」が食べられていた。天草では特産であるからいもを使った「こっぱ餅」や﨑津名物の「杉ようかん」があった。球磨では3月の神社の祭りで作られる「お嶽まんじゅう」や、からいもともち米を一緒に炊いてついた「ねったんぼ」が食べられていた。その他、小麦粉を使って簡単にできるおやつとして「あんこかし」や「べろだご」、「焼きだご」が県内各地で作られていた。
著者
吉田 達郎 小笠原 靖 岡田 千穂 押賀 佐知子 赤野 裕文 畑江 敬子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.20, pp.60, 2008

<BR>【目的】<BR> 食酢を用いた減塩調味は実際の料理で広く利用されているが、どの程度の食酢の添加が減塩に効果があるのか詳細な検討は為されていない。本研究は実際の料理において食酢の添加が塩味に及ぼす影響を官能評価によって調べ、食酢を用いた減塩調味に関する知見を得ることを目的とした。本研究では、食塩濃度が異なり塩味強度が有意に識別される2種の料理が、食酢の添加で塩味強度が有意には識別されなくなることを減塩効果と定義した。<BR>【方法】<BR> 1)具材を含む中華スープ;酸度0.01~0.04%となる量の食酢を食塩濃度の低いスープにのみ添加し、食塩濃度の高いスープと塩味強度を2点識別法で比較した。2)サンラータン;両方のスープに酸度0.135%となる量の食酢を添加した場合を同様に調査した。3)豆腐;醤油に食酢を加えた酢醤油を豆腐にかけた場合の塩味強度を醤油単独の場合と比較した。また、食酢の代わりに水で希釈した醤油の評価も実施した。<BR>【結果】<BR> 1)では米酢で酸度0.01%、穀物酢で0.02%、米黒酢で0.04%分の食酢の添加で減塩率12.5%の減塩効果が確認された。2)では3種の食酢で減塩率12.5%および25%の減塩効果が確認された。3)では減塩率12.5%の減塩効果は確認できなかったが、同じ食塩濃度での比較では希釈した醤油よりも酢醤油の方が塩味が有意に強かった。1)3)で食酢の添加による塩味の増強効果が確認されが、その場合の食酢の濃度範囲や減塩効果は限定的であった。一方、3)で酸味を感じるために塩味が弱くても嗜好されたことや2)で酸味を強く利かせた場合に塩味の差が識別されなくなったことから、塩味の不足を酸味で補う調味法もまた有効な減塩法であると考えられた。
著者
三田 有紀子 大島 千穂 續 順子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

[目的] 平成21・22年度日本調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学:行事食・儀礼食」の一環として実施したアンケートから、本研究では東海地域を中心とした年中行事および行事食について調査し、五節句(人日、上巳、端午、七夕、重陽)の行事食に注目をしてその現状と継承の実態を世代間別に明らかにすることを目的とした。[方法] 対象者は、東海三県である愛知県、岐阜県、三重県在住の女子学生492名とその家族400名(親338名、祖父母62名)、合計892名を対象にアンケート回答者の属性と年中行事及び行事食の認知・喫食状況についてアンケート調査を実施した。[結果]五節句における行事では、人日、上巳、端午、七夕で各世代80%以上の高い認知度がみられたのに対し、重陽で各世代20%以下と非常に低い認知度であった。各世代間では、人日、上巳、七夕で学生世代の認知度が親世代と比べて有意に高くなり、七夕では祖父母世代とも同様の結果となった。一方、行事の経験は上巳で学生世代が親世代より有意に高くなり、各世代とも認知度の低い重陽では祖父母世代が他世代と比較して経験度が高くなった。また、各行事食の喫食経験では学生世代と他世代で経験度の違いがみられ、その多くは学生世代の喫食経験が他世代と比べて低下していた。しかし、人日の七草粥、上巳のもち・菓子およびすし、端午のちまきと柏餅では学生世代で60%程度の喫食経験が認められたことから、行事の認知が行事食の喫食経験を維持していると推察され、行事の認知度の高い七夕では同様の傾向がみられなかったためこのような関連性が確立されていないと考えられる。
著者
三浦 さつき 太田 暁子 喜多野 宣子 志垣 瞳 島村 知歩 冨岡 典子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.22, pp.199, 2010

【目的】近年、伝統的な行事食の伝承が少なくなっているといわれる。本報では、平成21、22年度の日本調理科学会特別研究として実施した「行事食調査」から、年末年始の行事食を中心に、奈良県の現状を把握し、世代間による認知度や喫食経験などの違いについて明らかにすることを目的とする。<BR>【方法】平成21年12月~平成22年3月、日本調理科学会「行事食調査」の全国統一様式による調査票により、大学生およびその家族にアンケート調査を実施した。そのうち、奈良県在住者251名(学生157名、家族94名)を対象にして、正月、人日・七草、大晦日の行事の認知度、行事食の喫食経験や調理状況について検討を行った。<BR>【結果】行事の認知・経験については、正月と大晦日は学生・家族ともほぼ100%であったが、人日・七草の認知は学生83%、家族90%であり、経験は学生57%、家族83%であった。年末年始の行事食においては、学生・家族とも喫食経験が90%以上と高かった料理は、雑煮、黒豆、かまぼこ、年越しそばであり、毎年食べている人がほとんどであった。正月の赤飯、大晦日の祝い料理やいわし料理は、喫食経験が低かった。雑煮、七草粥、年越しそばは、家庭で作って食べる割合が高かったが、昆布巻き、きんとん、だて巻き卵、かまぼこは、作って食べる割合よりも買って食べる割合のほうが高かった。学生と家族で比較すると、屠蘇、煮しめ、なます、七草粥の喫食経験に違いがみられ、家族よりも学生のほうが、年末年始の行事食の喫食経験や家庭で作って食べる人の割合が低い傾向がみられた。
著者
太田 暁子 志垣 瞳 冨岡 典子 福本 タミ子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.22, pp.150, 2010

【目的】近年、食生活の変化から野菜の摂取不足が指摘されている。日本調理科学会近畿支部食文化分科会では近畿2府4県の家庭における野菜の利用について調査を実施した。奈良県では前報(20年・21年度大会)に続き、本報では行事食における野菜の利用について報告する。【方法】調査時期は2007年10月~2008年1月。奈良県在住の家庭の調理担当者を対象に、留め置き又は聞き取り調査を実施した。奈良市(以下、都市部)73件、奈良市周辺・山間部(以下、農村部)57件の回答から行事における野菜の利用について、地域別、年齢別に検討した。【結果】行事で利用する野菜は55種類あった。行事別に野菜の利用をみると、正月ではにんじんが22.6%と最も多く、次いで、ごぼう、れんこん、だいこんの根菜類が上位にあがり、この4種で正月に利用する野菜の69.2%を占め、煮しめ・なます・たたきごぼう・雑煮に利用された。七草では七草パックを使った七草粥、節分では巻きずしに三つ葉・かんぴょう、ひな祭りではちらしずしににんじん・れんこん、盆には供物になす、冬至では煮物にかぼちゃ、クリスマスではサラダや付け合せににんじん、大晦日では年越しそばに青ねぎの出現頻度が高かった。地域別で比較すると、都市部では正月・ひな祭りに野菜の利用が多かったが、一方、農村部では正月・端午の節供・春祭り・秋祭り・七夕・盆・祝い事など種々の行事に野菜が利用され、供物に不可欠なものとしても野菜は多く用いられたことから、都市部とは異なった食習慣の地域性が示唆された。年齢別にみる野菜の利用は、調理担当者が50歳以上の家庭では、正月・七草・盆の行事に野菜を多く利用し、50歳以下ではクリスマスにおける利用が多かった。また、冬至にかぼちゃを食べる習慣は地域・年齢・就業の違いに関わらず健康を願って食べられていた。
著者
金丸 芳 遠藤 千鶴 高橋 啓子 松下 純子 後藤 月江 武田 珠美 長尾 久美子 有内 尚子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

【目的】前大会で、徳島県における行事食・儀礼食の認知と経験、料理の喫食の状況を年齢区分別で比較した。そこで今回、県を地形の特徴で4区分した地域の現状を比較した。 <br>【方法】調査は留め置き法で行い、10年以上徳島県在住者240名を、徳島市105名・北部(平野部)49名・西部(山間部)47名・南部(沿岸部)39名に4区分し、行事の認知と経験、料理の喫食についてクロス集計(有意差:&chi;<sup>2</sup>検定)をした。 <br>【結果】<u>徳島市は</u>人日の経験度、お節の黒豆・昆布巻・きんとん・魚料理、人日の七草粥、上巳の潮汁の喫食度が高く、百日祝の経験度は低いが、行事全体でみると高い傾向にあり、豊かさが伺えた。<u>北部は</u>土用の丑、百日祝、結納の経験度、お節の田作り・煮しめ・蒲鉾、上巳の潮汁、結納の各種料理の喫食度が高いが、お節の魚料理の喫食度は低かった。他地域より結納、土用の丑の行事を重んじている傾向があった。<u>南部は</u>クリスマスの経験度が高かった。一方、経験度の低い行事は、秋祭り、冬至、土用の丑、結納であり、喫食度の低い料理はお節の黒豆・田作り・昆布巻・きんとん・煮しめ、節分の鰯料理、上巳の潮汁、冬至の南瓜煮物、お七夜の尾頭付魚、初誕生の餅、葬儀の精進料理、結納の各種料理であった。漁業が盛んな沿岸部にも関わらず、魚料理の喫食が低かった。<u>西部は</u>秋祭り、冬至の経験度、節分の鰯料理、冬至の南瓜煮物、お七夜の尾頭付魚、初誕生の餅、葬儀の精進料理の喫食度が高く、人日、クリスマスの経験度、お節の蒲鉾・肉料理、人日の七草粥の喫食度は低かった。他地域では経験度・喫食度の低い行事が西部では高い傾向にあった。以上、地域間に有意差があり、重視する行事に特徴が認められた。&nbsp;
著者
加藤 和子 成田 亮子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

<b>幼稚園教諭・保育士養成専門学校学生の行事食に対する意識調査<br></b><b></b>○&nbsp; 加藤和子<sup>1)</sup>,成田亮子<sup>1)<br></sup><sup>1)</sup>東京家政大<br><br>&nbsp;【目的】発表者らは今まで、本学栄養学科に所属する学生に対して、行事食・儀礼食について調査を行ってきた。その結果、親世代より学生世代の方が行事食の喫食経験が少ない傾向がみられた。本来なら、各家庭や地域において伝承される行事食であるが、今後教育の現場においての役割も重要になると考え、幼児期の「食育」を担当する幼稚園教諭・保育士養成の専門学校生に、アンケート調査を行ったので報告する。【方法】日本調理科学会特別研究‐行事食・儀礼食‐におけるアンケート用紙に基づいた調査用紙を配布し、その場で回答してもらい回収した。(回収率100%) 調査期間は平成25年5月。都内幼稚園教諭・保育士養成専門学校生126名を対象とした。東京・埼玉・千葉・神奈川県より通学の学生である。調査内容は、祖父母との同居経験、年中行事におけるそれぞれの行事食の認知と喫食経験、喫食状況についてである。【結果】年越しそば、雑煮、黒豆・数の子などのおせち料理とクリスマスの鶏肉料理を、行事食としてほとんどの学生が認識をしていた。雑煮、かまぼこ、クリスマスの鶏肉料理とケーキは100%の喫食率であった。行事食としての認知度が低かったのは、屠蘇、重陽の節句の菊料理などであった。喫食状況において、外で食べるとの回答の中に少数ではあるが、七草粥・蛤の潮汁・ちまきや柏餅・菊ご飯などを「給食で食べたことがある」との回答がみられた。このことより、保育園や学校においての給食指導や、行事食のメニューによって、次世代に行事食を伝承していることがわかった。
著者
土岐 信子 山内 睦子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

<b>目的</b>:本研究は、平成21~23年度に日本調理科学会で行なわれた行事食の全国調査に参画したものである。今回はその中で、筆者らが担当した部分において、大学生の五節句に関して検討を行なった。<b><br>方法</b>:栄養士養成課程の学生89名を対象とし、全国統一調査用紙を用いて2009年12月に実施し、SPSSを用いて分析を行なった。<br><b>結果・考察</b>:コレスポンデンス分析の結果、端午と七夕との間で関連性が示され、端午の行事食の喫食経験者は、七夕の行事食の喫食経験もあることが示された。各節句においては、人日では七草粥の喫食経験者は49.4%と半数を下回った。上巳では、喫食経験の最も高い物はちらしずしの73.0%、最も値の低い物は押しずしの3.4%であった。また、ちらしずしの喫食経験者は、あられも食べていることが示された。端午では、喫食経験の最も高い物はちまきの69.7%、最も低い物は菖蒲酒0.0%であった。また、ちまきの喫食経験者は柏餅も食べていることが示された。七夕では、喫食経験の最も高い物はそうめんの46.1%、最も低い物は煮しめ・ところてんの4.5%であった。また、煮しめの喫食経験者は、ところてんも食べていることが示された。重陽ではいずれも喫食経験率が非常に低く、重陽の行事食は一般的に食されていないと考えられる。今後の課題として、本学が所在する岐阜県東濃地域の行事食について調査を行なって行きたいと考える。
著者
橘 ゆかり 三浦 加代子 石崎 千賀 川原崎 淑子 青山 佐喜子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.22, pp.189, 2010

【<B>目的</B>】伝統的な祝いや祭りの行事では、風土に根ざした食べ物が先人の知恵で作られ、行事食として日本各地で様々な形で伝承されてきた。しかし、生活様式が変化すると共に稲作にかかわる行事そのものが廃れてきた。家庭で行事食を作る機会が減り、伝統的な行事食が親から子へ伝承されない傾向にあると考えられる。今回の調査は日本調理科学会の平成21・22年度の特別研究の一環として、行事食の認知状況や摂食状況などを調査することにより、和歌山県の調理文化の現状を把握し、行事食の伝承の状況を明らかにすることを目的とした。<BR>【<B>方法</B>】平成21・22年度の日本調理科学会特別研究の全国統一様式の調査用紙を用いて調査を行った。近畿に在住する大学・短期大学の学生およびその親に調査への協力を依頼した。和歌山県の調査対象者は調査に同意した学生およびその親の中で、和歌山県に10年以上在住している人を対象とした。今回は調査項目の中で、大みそか、正月および人日(七草)における行事食の現状を分析した。<BR>【<B>結果および考察</B>】学生と親世代の行事食の喫食経験や認知度を比較した。「屠蘇」、「昆布巻き」、「田作り」「煮しめ」「なます」や「七草粥」などの喫食経験が親子世代間で異なる傾向が認められた。親子世代間で喫食経験に差があまり認められなかった行事食は、正月の「雑煮」「黒豆」、大みそかの「年越しそば」などであった。喫食状況においても同様の傾向が認められた。さらに同一家庭内での学生と親の喫食状況を比較した。家庭内で同じ行事食が供食されていると考えられるが、親子間で喫食状況が異なる行事食が認められ、家庭内での行事食の伝承力が低下していることが推測された。
著者
本多 佐知子 林 利恵子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.22, pp.123, 2010

【目的】野菜は季節及び地域の影響が大きく、行事食に使われる際には、言い伝えもあり、食文化が反映されやすい食材である。日本調理科学会近畿支部食文化分科会では、2007年10~12月に、近畿2府4県の家庭における野菜の利用状況、調理方法、料理、行事食などを把握する為の調査を行った。一昨年、昨年に引き続き、本年度は野菜に特化した家庭で行われている行事食や使われる野菜の種類、年齢の違い等、兵庫県の現状を報告する。【方法】 調査時期:2007年10~12月、調査対象者:兵庫県在住者(県庁所在地とそれ以外の地域)の調理担当者、調査方法:直接記入法(留置法)による、有効回答数140部、回収率83.3%であった。その内、行事食の有効回答数129部、回答率92.1%であった。調査内容:17に分類した行事の料理名や供物、使用する野菜名、その野菜を用いる理由・由来等を記載する質問項目によった。【結果】 アンケート調査から兵庫県在住者が実施する主なものとして、80%の家庭で正月の行事食があげられる。正月の行事食は50歳以上、50歳未満の年代に限らず実施している。冬至も全体として54%となったが、正月と同様に年代に限らず半数以上が行っている。続いて七草47%、ひな祭り45%、節分41%、盆25%、大晦日19%、クリスマス17%となる。七草と盆は50歳以上の年代の方が実施している割合が多いが、節分とひな祭りは50歳未満の方が多い傾向になった。料理件数でも正月が多く、冬至、ひな祭り、七草、節分、盆の順に続くが、正月の行事食に使われている野菜の種類は32種類もあげられた。盆でも使われる野菜の種類が多く29種類になった。正月に使われる野菜としてくわいは上位6位に入っている。このように行事特有に使われる野菜に、七草粥の「七草」や節分の巻き寿司の「かんぴょう」、盆の「なす」「きゅうり」「かぼちゃ」があげられる。かぼちゃは、夏より12月の冬至の煮物として、代表的な野菜になっている。日本料理である正月の節句料理や盆の精進料理には、野菜が多く使われている。野菜の言い伝えもあり、健康にいいという理由からよく利用されているといえる。節分の巻き寿司は、毎年恵方に向かって丸かじりするという行事食であるが、宣伝効果もあり、根づいてきている。
著者
石田(坂根) 千津恵 藤江 未沙
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.26, 2014

【目的】伝統的な郷土の家庭料理が次世代へ伝え継がれることを目指し、日本調理科学会の平成24~25年度特別研究の一環として、島根県における家庭料理の継承の現状把握と地域住民が伝え継ぎたいと考えている料理を調べることを目的にアンケート調査および聞き書き調査を行った。<br>【方法】「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」島根県アンケートおよび聞き書き調査を実施した。調査期間は平成25年9月から平成26年1月であった。アンケートは島根県在住の一般男女20~80歳代の計90名を対象に自記式アンケート調査を行い、聞き書き調査は日本調理科学会のガイドラインに従い島根県で生まれ育ち、その地域で30年以上居住している40~80歳代の女性13名を対象に現地に赴き調査を行った。<br>【結果】アンケート調査より、「作ったことがある料理」としてしじみの味噌汁、赤貝を用いたのっぺ汁や赤貝ご飯の他に、ちまきや雑煮などの行事食が上位10品に挙がった。ちまきは端午の節句に作られる料理で、平成22年度の「年中行事食」の調査結果からも認知度が高いことが報告されており、実際に多くの人が作っていることが明らかとなった。しかし、雑煮や赤貝料理は60~70歳代では約8割が作ったことがあると回答した一方で、特に20歳代では約2割しか作った経験がなく20歳代と60~70歳代との回答結果には有意な差が認められた。聞き書き調査では、「昔は作っていた」と半数以上の人が回答した料理は、島根県西部5品(のべだんご、芋だんご、ぬり餅、こうせん、おまん寿司)、東部7品(クジラ汁、七草粥、松茸ご飯、こうせん、ゴズ・セイゴの干物、ふき餅)であった。
著者
湯川 夏子 桐村 ます美 河野 篤子 坂本 裕子 米田 泰子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.22, pp.190, 2010

【目的】行事食の現状を明らかにするため、平成21、22年度の日本調理科学会特別研究として近畿2府4県において、行事食の認知状況および摂取状況等の調査を行った。本報では、京都府出身学生家庭における年末年始の行事食の現状と、学生とその親世代の食経験の比較を行った結果を報告する。<BR>【方法】2009年12月~2010年4月、近畿2府4県の大学に在籍する学生およびその家族を対象として質問紙調査を行った。日本調理科学特別研究の全国統一様式の質問紙を使用し、集合自記法および留置法にて行った。京都出身者の学生182名とその家族(親世代)90名を解析対象とし、「正月」「人日」「大みそか」の行事食に関して集計・解析した。<BR>【結果】正月料理の食経験は学生・親世代ともに全体的に高かった。しかし、屠蘇、数の子、田作り、昆布巻き、煮しめ、なますについて、有意に学生の食経験率が低かった。親世代は、お節料理9品目のうち、8品目は「毎年食べる」と回答した人が6割以上いたが、なますは「食べなくなった」と回答した人が多かった。その他に、棒だら、たたきごぼう、くわいがよく食べられていた。お節料理は全体的に、家庭で作る割合が減少し、購入する割合が増加していた。雑煮は、約6割が白味噌、約3割がすましであり、ほかに赤味噌や小豆の雑煮が見られた。七草は、行事の認知度は高いものの、七草粥の食経験は学生で約6割であり、親世代との有意差がみられた。年越しそばは多くの家庭で喫食率が高かった。<BR> 以上の結果より、年末年始の行事食は、親子の世代間において食経験の較差がみられると共に、家庭で作る行事食が減少しつつある現状が明らかとなった。
著者
藤本 千鶴 上村 昭子 東根 裕子 山本 悦子 渡辺 豊子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.22, pp.209, 2010

【目的】平成21、22年度の日本調理科学会特別研究として、行事食についての全国調査を現在行っている。本報告では、大阪府在住の大学生とその親の年末年始に関わる行事食について、現状を明らかにすることを目的とした。<BR>【方法】2009年12月~2010年3月、近畿地方の大学・短大生とその親を対象に質問紙調査(留め置き法)を実施した。正月(屠蘇、雑煮、小豆飯・赤飯、お節料理9品、魚料理、肉料理)、七草(七草粥)、大晦日(年越しそば、年取りの祝い料理、尾頭付きいわし料理)の各料理に関する喫食経験、喫食状況、調理状況を調査した。対象者は学生404名、親239名である。<BR>【結果】雑煮、年越しそばは、学生・親共に98%以上が喫食経験を持ちほぼ毎年食べられていた。その他の料理については学生と親の間に差があり、学生の喫食経験が少なくなっていた。喫食状況では屠蘇、七草粥で学生と親の間に差があり、食べる学生は少なく、食べなくなった親の割合が多い状況であった。大阪で食べられている雑煮は、白みそが54%、丸もちが84%、もちを焼かないが58%であった。お節料理9品の親の喫食経験は94%と多いが、毎年食べる人は74%(学生70%)であり、昆布巻き、きんとん、なます、だて巻きを毎年食べる人は、学生・親共60%台であった。雑煮、七草粥、年越しそばは、家庭で作る割合が多く、以前と現在で変化はなかった。しかし、黒豆、田作り、きんとん、煮しめ、なますは、家庭で作るから買うへの変化が認められた。正月の魚料理にはえび、ぶり、たい、肉料理には鶏肉、牛肉が多く使用されていた。
著者
坂本 裕子 桐村 ます美 河野 篤子 湯川 夏子 米田 泰子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.26, 2014

<b>【目的】</b>平成21,22年度日本調理科学会特別研究で「行事食・通過儀礼食」の全国調査をおこない、京都府において行事や儀礼の認知度や経験度、またそれらに関わる食の喫食状況について世代間や地域差の検討をおこない報告した。またハレの食事にかかせない赤飯・餅・寿司・団子について調べ、行事食・通過儀礼食における米の利用状況の違いを明らかにした。今回はこれまでの結果をふまえ、行事や通過儀礼における家庭での食の調理状況や入手方法の解析から、行事食・通過儀礼食の伝承について比較検討することを目的とした。<br><b>【方法】</b>平成21年12月~22年3月に日本調理科学会特別研究の全国統一様式の質問用紙を用い留置法で調査を実施した。10年以上京都府に在住する者を調査対象とし、行事食では調理状況や食べ方について以前と現在の状況、子世代(10・20歳代)191名と親世代(40・50歳代)115名について世代間の比較をおこなった。また京都市内とその南北で地域差がみられるため地域の状況も比較検討した。<br><b>【結果】</b>両世代で「家庭で作る」と答えた者の割合が高いものは、雑煮、七草粥、上巳の寿司、冬至のかぼちゃ、年越しそばであった。以前と現在の入手方法をみると、「家庭で作る」から「買う」への増加がみられるものがある一方で、差がないもの、減少する割合に比べ「買う」の増加がわずかのものがみられ、全体に喫食自体が減る中、調理技術の伝承が難しい傾向がうかがわれた。行事食、通過儀礼食ともに最も「家庭で作る」割合が高い傾向にあるのは北部地域であったが、3地域ともに現在は「家庭で作る」割合が減少傾向にある。三世代同居家庭の方が認知度、経験度が高い結果にあったが、核家族化の進行もありさらに次世代へ伝承されにくい状況が進むと考えられる。
著者
宇都宮 由佳 伊尾木 将之 瀬尾 弘子 江原 絢子 大久保 洋子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】日本人の食文化は年中行事と密接に関わって育まれてきた。2015年度農水省「「和食」の保護・継承推進検討会」が実施した「食生活に関するアンケート調査」(10,235人)データを分析した結果、「正月・大みそか」が最も実施され、行事食を食べていることが分かった。そこで本研究では、和食の保護・継承のため正月行事及びその食について、より詳細な現状を把握することを目的に、2017年の正月に関するアンケート調査を実施した。<br /><br />【方法】調査は2017年1-2月全国の和食文化国民会議のメンバーおよび本研究に賛同を得た大学教員・学生を対象に実施した。調査票2047件回収しデータクリーニングをしたのち統計分析を行った。世代別、性別、地域別、子の有無でクロス分析、相関分析等を行った。<br /><br />【結果】正月への準備は、大掃除が最も多く、次いで年越しそば、年賀状、雑煮、おせち料理であった。食関連では祝箸、鏡餅、お屠蘇が、年齢の高い世代ほど準備をしており有意な差がみられた。2017年正月、雑煮とおせち料理は8割以上の人が食べていたが、お屠蘇は全体で約2割、世代差があり50歳以上で4割弱、20歳未満は約1割であった。子の有無による違いをみると雑煮やおせちは、子有または子の年齢が若い方が喫食する率が高い傾向がみられた。雑煮の餅、調理法、調味料については地域差があり、特に餅の形状は東側(角餅)と西側(丸餅)で明確な違いが見られ、地域の食文化継承の様子が伺えた。一方、お屠蘇や祝箸は若年層で準備や実施率が低く、薄れつつある現状が明らかとなった。学校の授業では雑煮やおせちは取り上げることが多いが、今後は屠蘇や祝箸、鏡餅などについても意味等伝えていく必要があろう。
著者
宮原 葉子 北原 詩子 金子 美帆子 三成 由美 徳井 教孝 印南 敏
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.22, pp.86, 2010

【目的】管理栄養士が特定健診・特定保健指導で栄養指導をする際には、個々人に対応した献立や調理品を提案し、行動変容につながる継続可能な指導をしなければならない。本研究では、長期食生活調査における食物繊維と食塩に寄与する調理品について検討した。<BR>【方法】1999年~2000年の夏季、冬季の各2週間、福岡県志免町在住の一般主婦28名を対象にした。調査内容は、食事評量記録法を用い、食事区分、献立名、食品名、可食量が記録されたものである。食事記録票の調理品は、三成らが開発した6桁の調理品コードを用いて入力し解析した。食品の栄養価計算はエクセル栄養君Ver.4.5を用いた。<BR>【結果】夏季、冬季の食事記録日数は総計784日、調理品出現回数は11,646回、全調理品数は1,110品であった。食物繊維摂取に寄与する上位2品は2季節ともに1位が味噌汁で夏季8.4%、冬季8.8%、2位が飯で夏季4.2%、冬季4.0%であった。寄与率50%の夏季28品、冬季30品中共通のものは、味噌汁、飯など13品であった。夏季のみ、そうめん、冷やし中華などであり、冬季はみかん、鍋物であった。食塩摂取に寄与する上位1品は2季節ともに1位が味噌汁で夏季8.1%、冬季は8.4%であった。寄与率50%の夏季32品、冬季36品中共通のものは、味噌汁、梅干しなど15品であった。夏季のみ、冷やし中華、冷奴などであり、冬季は漬け物、鍋物であった。<BR>【考察】食物繊維の寄与率の高い調理品は味噌汁、飯などであり、食塩の寄与率の高い調理品も味噌汁であった。飯を美味しく食べることのできる献立の提案、また味噌汁を減塩し、食物繊維を増やす方法の提案が今後の課題であると考えられた。
著者
佐藤 靖子 鈴木 惇
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】採卵を終えた廃鶏の肉は、膠原線維が発達して硬いため市場に流通することはなく処分されている。しかし、この硬い肉を軟化させて美味しく食する方法を見出すことは、タンパク質の有効な供給源として望ましいと考える。本研究では、食酢およびすりおろしたキウィの25%希釈液で前処理した廃鶏の肉について、好ましい肉の軟化状態を見出すことを目的とした。【方法】材料には、廃鶏のムネ肉を用いた。試料は、縦2.5cm&times;横2.5cmに切り出し、食酢およびすりおろしたキウィの25%希釈液に、5時間および24時間浸漬した後10分間茹でた。組織構造の観察は、10%ホルマリン液で固定後パラフィンに包埋して薄切し、ピクロシリウス染色を行った。官能評価は、10項目の評価項目について東北生活文化大学健康栄養学専攻の学生40人でおこなった。軟化度の測定は、クリープメーターにより破断荷重および破断歪率を測定した。【結果】食酢で前処理した肉では、膠原線維が部分的に大きく切断された、キウィで前処理した肉では膠原線維への影響は小さかった。破断荷重は、食酢で前処理した肉では、破断荷重および破断歪率ともに低下したが、キウィで前処理した肉では、破断歪率が低下しなかった。官能評価により最も好まれた肉の軟化は、食酢25%液に5時間浸漬した肉であった。この肉は、軟らかく歯ごたえが適度にあり、酸味が殆ど残らなかった。廃鶏の肉は、食酢25%液前処理後の調理への展開が期待できると考える。
著者
南 アイコ 橋本 明子 佐藤 真実 岸松 静代 谷 洋子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 創立40周年日本調理科学会平成19年度大会
巻号頁・発行日
pp.12, 2007 (Released:2007-08-30)

【目的】 すでに食品特性にはテクスチャーおよびフレーバーの次に食品の色が強い影響を示すことがいわれ、さらには食欲の増進や減退には色が関わることが報告されている。前報ではコロッケの盛り付けについて色と嗜好の関係について報告した。本研究においては、ハンバーグを盛り付ける際の付け合せの色と嗜好の関係について検討を行った。【方法】 日常的に食べられる料理としてハンバーグを選んだ。料理本などにある盛り付け方をまとめ、実際に盛り付けと写真撮影を行った。その写真を提示しながら、視覚情報による盛り付けのイメージ調査を行った。調査対象は本学学生181名の女子とした。調査項目は、(1)ハンバーグのイメージ、(2)料理本にみる付け合せの色と嗜好、(3)付け合せの色と組み合わせによる嗜好についてである。因子分析を行い、盛り付けによる色と嗜好に関するイメージについて検討した。【結果】 料理本にみるハンバーグの盛り付けは、皿が白、テーブルクロスが洋風であると緑系色、和風であると青系色が多く使用され、付け合せとしては、洋風であるとブロッコリー(緑)、にんじん(赤)、じゃがいも(白)の3品、和風であるとブロッコリー(緑)の1品が多くみられた。ハンバーグのイメージとしては、ハンバーグの種類によって異なり、洋風ハンバーグの場合には「家庭食」、煮込みハンバーグの場合には「外食」のイメージであった。ハンバーグの付け合せとしては、付け合せの種類が3種類まで増えると高級感や濃厚さが強調されることがわかった。料理の盛り付けにおいては、家庭の食習慣による盛り付けの色や嗜好によるイメージを配慮していかなければならないことが示唆された。
著者
古谷 彰子 大西 峰子 三星 沙織 米山 陽子 平尾 和子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】ワラビの根から抽出されるワラビ澱粉は、高価で保存性も悪い。わらび餅の調製に用いるわらび粉の市販品には安価な甘藷澱粉やクズ澱粉が混合されているもタピオカ澱粉を利用したものが多い。しかし、これらの澱粉は安価であるという利点はあるものの、ワラビ澱粉で調製した本わらび餅とは食味・食感がかなり異なっていた。本報告では、加工タピオカ澱粉を用いて、本わらび餅に近い食感のわらび餅の調製法を検討した。<br />【方法】澱粉は、未加工タピオカ澱粉(NT)、リン酸架橋タピオカ澱粉(P)、Pの酵素処理澱粉(PE)、アセチルリン酸タピオカ澱粉(AP)、APの酵素処理澱粉(APE)の5種(グリコ栄養食品(株))とし、上白糖(三井製糖)と蒸留水を用いてわらび餅を調製した。加水量は各澱粉の水分量を求めて調整した。またシェッフェの単純格子計画法を用い、NTと2種の加工タピオカ澱粉(PE、APE)を3成分として配合割合の異なる9つの格子点を設定した。物性測定はクリープメータ((株)山電)、官能評価は本わらび餅を対照として、つり合い不完備型ブロック計画法を用いて行った。<br />【結果】官能評価の嗜好では、PEとAPEを用いたものが総合評価の項目で有意に好まれたが、どちらも本わらび餅の食感とは異なっていた。そこで、シェッフェの単純格子計画法を用いて3種澱粉(NT、PEおよびAPE)の配合割合の影響を検討したところ、格子点⑦のNT:PE:APE=1:1:1の配合割合のわらび餅が本わらび餅に最も近い物性値を示した。官能評価の特性評価においても、弾力と口どけの項目で有意にあると評価された。嗜好においても、本わらび餅と同様に「好き」「非常に好き」と評価され、有意に好まれた。