著者
奥田 玲子 武田 香織理 岩崎 初音 白杉(片岡) 直子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.26, 2014

<b>【目的】</b>アーモンドは洋菓子に特有の好ましい風味や質感を付与する特性から,製菓に欠かせない材料として特に粉末状で汎用されている。一方で,近年,アーモンドに反応するナッツアレルギーの症例も増えている。そこで,ナッツアレルギー対応策として,洋菓子におけるアーモンド代替の可能性を検討することにした。アーモンド菓子の代表であるマカロンに着目し,アーモンドパウダー不使用のマカロン様菓子の試作を試みた。 <br> <b>【方法】</b>官能評価では,二元配置法により7段階評価尺度を用いて,食感や風味を問うた。卓上型物性測定器(山電,TPU-2DL)によりプランジャ-(接触面直径3mm),ロ-ドセル20N,クリアランス1.0mm,測定速度 2.5mm/secでマカロンの破断特性を測定した。<br> <b>【結果】</b>薄力粉や米粉,食用油,香料などを用いて,マカロン様菓子を調製した。配合条件を検討し,物性において,アーモンドを使用した標準マカロンの荷重-歪曲線に近づけることができた。ところで,香料には,アーモンド抽出物を含む製品と合成品のみを調合した香料とがある。標準マカロンと,前者の香料を添加したマカロン様菓子とを,ナッツアレルギーを持たない大学生らに供して官能検査を実施したところ,両試料に対するプロファィルは似たパターンを示した。どの項目においても得点の平均値は標準マカロンの方が高かったが,マカロン様菓子も一定水準でパネルに評価された。一方,ナッツアレルギーに対応させるために,後者の香料を用いたマカロン様菓子を調製したところ,官能検査で低く評価された。品質を標準マカロンにより近づけるために必要な要素をいくつか見出したが,特にアレルゲンを含む懸念のないアーモンド香料の開発が必要である。
著者
坂本 薫 森井 沙衣子 井崎 栞奈 小川 麻衣 白杉(片岡) 直子 鈴木 道隆 岸原 士郎
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】日本の市販グラニュ糖やザラメ糖のスクロース純度は,99.9%以上と大変高くスクロース結晶とみなすことができるため,製品間で品質に差はないと考えられてきた。しかし,グラニュ糖の融点にはメーカーによって異なるものがあり,融点の異なるグラニュ糖は加熱熔融状況が異なり,示差走査熱量分析(DSC 分析)において異なる波形を示すこと,さらに,スクロース結晶を粉砕することにより,その加熱特性が変化することをすでに明らかにした。焼き菓子の中には,マカロンや焼きメレンゲなど粉砂糖の使用が通常とされるものがある。そこで,グラニュ糖と粉砂糖を使用して焼きメレンゲを調製し,焼き菓子における砂糖の粒度の違いによる影響を検討した。<br><br>【方法】3社のグラニュ糖(W,X,Z)およびそれぞれを粉砕した粉砂糖(Wp,Xp,Zp)を用いた。砂糖のみについて,焼きメレンゲと同条件で加熱し,色差測定,HPLC分析を行った。また,焼きメレンゲを調製し,外観観察および重量減少率測定,密度測定,色差測定,破断強度測定を行った。<br><br>【結果】砂糖のみの加熱では,グラニュ糖のほうが色づきやすく,粉砂糖のほうが着色の度合いは小さかった。また,加熱により,W,Xでは顕著に還元糖が生成していた。砂糖のみと焼メレンゲでは,加熱後の色づき方の逆転現象が認められ,粉砂糖メレンゲのほうが色が濃い結果となった。外観では,粉砂糖メレンゲでは表面はなめらかであったが表面が硬い傾向が認められ,表面に亀裂や気泡が見られた。グラニュ糖メレンゲは,色が白くきめが粗かった。本研究により,砂糖の粒度の違いにより,焼き上がりの外観,色調やきめ,テクスチャーが大きく左右されることが明らかとなった。
著者
金城 みなみ 佐藤 瑶子 香西 みどり
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成26年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.74, 2014 (Released:2014-10-02)

【目的】煮物調理のおいしさを決定する上で味付けの状態は重要な要因であり、品質一定の調理品を得るには調味料成分の拡散過程の予測が必要である。本研究では調味の中でも甘味と塩味に着目し、両者の変化を同時にシミュレーションすることで実際の加熱調理における両者の関係を把握することとし、予測に必要なショ糖の拡散係数の測定も行った。 【方法】20、50、70℃の0.15 M(5.13%)ショ糖溶液に浸漬した2cm角ダイコンのショ糖濃度の経時変化をフェノール硫酸法により測定した値を用い、三次元拡散方程式に基づくプログラム計算より各温度における拡散係数を求めた。試料を1mm3の体積要素の集合体とみなし、試料中の各体積要素のショ糖濃度を得られた拡散係数を用いて予測し、全ての体積要素の平均値を試料全体平均ショ糖濃度の予測値とした。2cm角ダイコンを0.15Mショ糖水溶液で室温から99.5℃で1時間加熱後のショ糖濃度の予測値と実測値を比較した。ショ糖及び食塩1)の拡散係数を用い、20種以上の料理書等のレシピを参考にし、実際の調理におけるダイコン中のショ糖及び食塩の拡散過程を予測した。 【結果】ダイコン中のショ糖の拡散係数は、20℃:0.38×10-5 cm2/s、50℃:0.73×10-5 cm2/s、70℃:1.48×10-5 cm2/sであり、それらの温度依存性をアレニウスの式で表した。温度変化を伴う調理におけるショ糖濃度の経時変化の予測値と実測値は概ね一致した。料理書等の煮物調理における調理過程をシミュレーションした結果、調味液中のショ糖濃度が4~6%、食塩濃度が1~5%の時、ダイコン中の食塩濃度は0.6±0.1%とほぼ適度であり、この時のショ糖濃度は2~4%であった。 1)遠藤ら,日調科誌,46,8-14(2013)
著者
島村 知歩 太田 暁子 喜多野 宣子 志垣 瞳 冨岡 典子 三浦 さつき
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.26, 2014

【目的】近年、伝統的な行事食が親から子へ伝承されない傾向にあるといわれる中、奈良県における年中行事の認知と経験、それに関連する行事食の状況について、学生世代、親世代、祖父母世代の三世代間で比較を行い、世代間での伝承状況についての現状を把握することを目的とした。 <br>【方法】平成21~23年度日本調理科学会特別研究で実施した「調理文化の地域性と調理科学:行事食と儀礼食」の全国統一様式の調査票により、大学生およびその家族にアンケート調査を実施した。そのうち、奈良県内で10年以上居住経験のある子世代(10・20歳代)150名と親世代(40・50歳代)114名、祖父母世代(60歳以上)32名について、調査項目17行事の年中行事の認知度、経験、行事食の経験、調理状況について検討を行った。<br> 【結果】17行事中、11行事はいずれの世代も認知度85%以上と高かったが、春分・秋分の日、春・秋祭り、重陽の節句の認知度は低く、世代間で違いがあった。80%以上が経験している行事は、祖父母10行事、親9行事、子は正月、クリスマス、大晦日、節分、上巳の5行事と少なかった。祖父母と親の行事の経験率は似ているが、重陽の節句と春祭りの経験は祖父母(21.9%・37.5%)親(9.6%・14.9%)子(5.3%・15.3%)と親は子に近かった。行事食では3世代共に90%以上が経験している料理は正月の雑煮・黒豆・かまぼこ、クリスマスケーキと年越しそばであった。行事食も祖父母と親の喫食経験は似ているが節分の炒り豆、月見だんご、冬至の南瓜は世代間に差がみられた。春祭り・秋祭りの行事食は祖父母でも約30%と経験は低く、親・子は約10%とさらに低かった。
著者
山本 直子 大内 和美 哥 亜紀
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成25年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.68, 2013 (Released:2013-08-23)

【目的】 塩麹は、米麹に食塩と水を加え醗酵熟成させたもので、独特の風味とうまみのある調味料である。この塩麹に漬けた肉や魚はうまみが増し、軟らかくなると言われている。これは米麹が産生する酵素が関係していると考えられる。そこで、本研究では塩麹の熟成する過程でのα‐アミラーゼ、グルコシダーゼ、プロテアーゼ、カルボキシペプチダーゼについて、その酵素活性の変動を調べることとした。【実験方法】 塩麹は、米麹に10%の食塩(市販品に準ずる)を加え、しっとりなじむまでよく混ぜ、水を加え懸濁させて調製した。調製後は20℃で7日間熟成させ、その後4℃で冷蔵保存した。調整0日から経時的に酵素活性を測定した。α‐アミラーゼ、グルコシダーゼ及びカルボキシペプチダーゼの活性測定はキッコーマン(株)醸造分析キットを用いた。プロテアーゼ活性は基準みそ分析法に準じて測定を行った。また、pH測定および塩分を測定した。市販塩麹については開封後直ちに、各酵素活性、pH、塩分測定を行った。【結果】 調製した塩麹は0日から熟成完了の7日までの間で、酵素活性に大きな変動は見られなかった。調整後60日においてもほぼ同程度の酵素活性を有していた。市販塩麹は酵素活性があるものとないものに分けられた。活性のあった製品は今回調べた4つの酵素とも活性が見られ、活性のなかった製品は4酵素とも活性が見られなかった。すなわち市販塩麹では酵素が失活している製品も見受けられた。pHは調製および市販塩麹とも5.2~6.1と微酸性で、塩分は8.0~12%であった。
著者
中村 喜代美 新澤 祥恵
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成14年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.49, 2002 (Released:2003-04-02)

今日の食生活の変化のなかでの郷土食の位置づけを考えるため、アンケート調査により石川県の郷土料理の調理実態を検討した。調理状況では調理しているが多いのは、なすのオランダ煮、なすのそうめんかけで、少ないものは鯛の唐蒸し、鮒の甘露煮であった。また、以前は調理していたが、今は作らないというものが多いのは押しずし、えびすが、調理したことはないが、食べたことがあるでは蕪ずしがあげられた。調理法の情報源では、どの料理も母親が上位を占めているが、一部、家庭外からの情報によるものが過半数を超えるものもあった。調理しない理由として、家族が好まないからが多い料理には太きゅうりのあんかけやつる豆の煮つけがあげられ、市販調理品の利用が多い料理には蕪ずしなどがあげられた。
著者
平島 円 Hirashima Madoka
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.47-51, 2007-04-01

平成18年度日本調理科学会奨励賞受賞記念論文
著者
竹下 温子 勝又 真里奈 高林 由佳
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.26, 2014

【目的】昨今、食育は日本の教育の中で重要視され、地産地消によって食文化を守ることも重要な役割とされている。その中で食育の一環として、鹿児島の管理栄養士らが地産地消と地場の活性をテーマに「川内きびなご鮨」を考案した。その製造工程にきびなごの昆布締めがあり、保存期間の違いによってうまみが増し、爽やかな酸味が生まれるという。 我々はこの味の変化について保存期間の違いによる微生物の動態変化、および微生物の関与が人の味覚に影響を及ぼすか、遊離アミノ酸量を押さえながら比較・検討することを目的とした。【方法】保存法の異なった4種のサンプルを用い、菌数測定に、標準寒天培地(T)およびGYP白亜寒天培地(G)を用いた。全サンプル200の菌について高分子DNAを抽出(Benzyl chloride法)、グループ分け(RAPD法)、16S rDNAのPCR増幅、塩基配列決定後DDBJの相同検索にて同定した。遊離アミノ酸測定はOPAプレラベル法を用いた。【結果】菌数はT・G培地ともに冷蔵保存期間が長いものほど多かった。次に22グループに分かれた代表菌株はすべて<i>Stapylococcus</i>属と100%の相同性を示した。遊離アミノ酸の総量は保存期間の長い順で増加していた。この結果は菌数増加量と一致しなかった。官能試験の総合評価は遊離アミノ酸の増加量に比例せず、最も遊離アミノ酸量が多かったサンプルについては、熟成からさらに腐敗に進んでいる可能性があると考えられた。その他、微生物が関わるとされている酸味・香気は嗜好調査との相関は見られなかったが、菌数と総合評価の傾向が近く、やはり何らかの形で美味しさに影響を与えていると考えられた。
著者
福田 翼 三田 理香 古下 学 原田 和樹
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成27年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.163, 2015 (Released:2015-08-24)

【目的】さつま砂糖漬け鯛は、江戸時代の料理集「鯛百珍料理秘密箱」(1785年)に記載されている薩摩地方の保存食である。さつま砂糖漬け鯛は、一夜干しにした鯛を三年味噌漬けにした後、砂糖に漬け込んで作られる。本研究では、各製造プロセス、特に三年味噌への漬け込みの有無がさつま砂糖漬け鯛の保存性ならびに風味に及ぼす影響を明らかにする事を目的とした。 【方法】さつま砂糖漬け鯛の製造は次の様に行った。まず、三枚におろしたタイに食塩を添加し、25˚Cで一昼夜干した。干したタイは3 mm程度にカットした。カットしたタイは、滅菌ガーゼに包み、三年味噌に漬け込んだ(20˚C・48時間)。味噌漬けにしたタイを滅菌済みガラス容器に入れ、0-50%の範囲で砂糖を添加した。これを20˚Cで保存した。適宜、サンプリングを行い、一般生菌数を測定した。また、保存1ヶ月の試料については、嗜好性評価を実施した。 【結果】一般生菌数の経時変化を調査した結果、時間経過と共に減少した。さらに、砂糖の添加割合が高い程、減少傾向が見られた。保存1ヶ月目において、砂糖添加割合0%では5.2×104 CFU/g、50%では6.8×103 CFU/gであった。一方、味噌漬けを行わない場合、保存1ヶ月目において、砂糖添加割合0%では2.1×107 CFU/g、50%では5.3×107 CFU/gであった。したがって、味噌漬けを行った場合、一般的な食品の腐敗レベル106 CFU/g以下となる事が明らかとなった。嗜好性評価を行った結果、砂糖添加割合が同等の場合、全ての場合において味噌漬けを行った「さつま砂糖漬け鯛」の方が高い評価となった。さらに、砂糖添加割合0%を基準とし評価を行った。その結果、砂糖添加割合25%もしくは50%が高い評価となった。
著者
間宮 貴代子 阪野 朋子 松本 貴志子 小出 あつみ 山内 知子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】愛知県は中京圏の中心である名古屋市を含む尾張と、八丁味噌で知られる三河の2地域に大別できる。どちらの地域も長年にわたり独特で豊かな食文化を育くんできた。本研究では両地域における雑煮に関する摂取状況調査を実施して比較検討した。【方法】調査の対象はN女子大学の学生401名(21歳)である。方法は質問数15問の自記式質問紙を使用して留め置き法で行い、配布3週間後に回収した。期間はH23年12月31日~H24年1月3日で、回収率は92%であった。得られたデータはエクセルで集計してχ⊃2;検定を行い、統計的有意水準を5%で示した。【結果】雑煮の摂取頻度では、「元旦に食べる」に地域差はなかったが、二日目と三日目では、尾張地域(OA)が三河地域(MA)より多く食べていた。元旦の具ではOAは餅菜と小松菜、蒲鉾と鳴門、鰹節、青菜類の順で多く、MAは白菜、蒲鉾と鳴門、餅菜と小松菜、鶏肉の順で多かった。この内、餅菜と小松菜、白菜、人参、鶏肉、豆腐と油揚げの摂取経験の地域間に有意差を認めた。正月二日および三日の具は元旦より具の種類が減る傾向を示した。だしの種類のOAでは鰹節だしが多く、MAでは鰹節だしと同程度にだしの素が使われており、だしの素の使用頻度に有意差を認めた。味付けは両地域ともにすましの味付けが約90%であったが、MAでは味噌味の割合がOAより高かった。餅では角餅が両地域で80%摂取されており、加熱法では共に「煮る」が最も多かったが、OAでは「焼く」と「焼いた後煮る」の両方を用いる割合が高かった。以上の結果から、尾張と三河地域の雑煮の摂取経験、味付け、餅の形に地域差を認めなかったが、具とだしの種類で有意な地域差を認めた。
著者
吉田 里緒 佐藤 瑶子 飯島 久美子 辻 ひろみ 香西 みどり
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成28年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.53, 2016 (Released:2016-08-28)

【目的】スチームコンベクションオーブン(以下、スチコン)は、大量調理施設等で広く利用され、ゆでる、蒸す等の調理も可能である。加熱時には温度、時間、蒸気量の設定が必要であるが、これらを考慮した根菜類の加熱時間の設定に関する報告は見られない。そこで本研究では、スチコンでジャガイモを蒸し又はゆで加熱する際の中心温度及び硬さの予測から試料が適度な硬さになるまでの最適加熱時間を算出し、実験により検証した。【方法】スチコン(tanico,TSC-10GB)を用いて、設定温度100℃、設定蒸気量100%で試料を加熱した。試料は2cm角ジャガイモとし、加熱中の庫内温度、水温、試料中心温度を測定した。蒸し加熱は穴あきホテルパンを使用し、ゆで加熱はホテルパンに水と試料を合計3kg(重量比1:1)入れた。蒸し加熱では庫内温度、ゆで加熱では水温に基づき、試料中心温度及び硬さの変化をプログラム計算により予測し、適度な硬さになるまでの最適加熱時間を算出した。実際に試料を加熱し、硬さの測定(テクスチャーアナライザー)及び官能評価(5段階評点法)を行った。【結果】スチコンでの蒸し及びゆで加熱中の試料中心温度の実測値は予測値と概ね一致した。2cm角ジャガイモの最適加熱時間は、蒸し加熱で10.2分だった。ゆで加熱は16.2分であり、その内訳は水温上昇11.4分、沸騰継続4.8分だった。実際に加熱した試料は官能評価によりいずれも適度な硬さと評価された。ゆで加熱では、ホテルパンの枚数が多くなるほど水温上昇が緩慢になり、水温が99℃になるまでの時間はホテルパンの枚数と直線関係が認められた。そのため、最適加熱時間もホテルパンの枚数が増えるほど長くなり、ホテルパンを10枚使用したときは1枚使用したときよりも加熱時間を9.2分延長する必要があった。
著者
石井 克枝 竹之内 美香
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

【目的】わが国においては飯を主食として位置付けてきた。米の摂取量は1962(S37)年をピークに減少している。そこで本研究では大学生を対象に食意識と実態を把握し、現代の食生活において米飯を主食としてどのようにとらえているのかを明らかにすることを目的とした。【方法】1)主食に注目した食事実態調査は千葉大学の学生19名を対象として、連続した7日間の食事の写真を対象とした。2)千葉大学の学生100名を対象とし、米の摂取に関する意識及び実態、複数の主食からなる食事に関するアンケート調査を行った。【結果】7日間の食事調査(19名)結果から、主食は米飯、パン類、麺類の順に多かった。朝食ではパン、昼食では、米飯、夕食では、米飯が多かった。一食あたりの品数を主食別にみると、米飯食では平均3.46品と最も多く、パン食では2.33品、麺食では1.57品であった。米飯の摂取量は、一食当たりの平均は160.3gであった。一週間の米飯摂取量はおよそ600~2675gと、個人差が大きくみられた。米飯摂取のアンケート調査結果では、80.0%の者が毎日米飯を食べたいと回答し、86.0%の者が主食として最もよく食べるもの、75.0%の者が主食として米飯を最も好むと回答した。複数の主食の組み合わせ15種類について、摂食の実態と主食意識の結果では、多くの者が食べると回答したラーメンとチャーハン等は外食の割合が高く、複数の主食からなる食事は外食を通して普及、定着していると考えられた。複数の主食の食事をよく食べる者は主食を副食として捉えるなど、主食に対する意識が低いと考えられた。
著者
小瀬木 一真 友竹 浩之
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成28年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.202, 2016 (Released:2016-08-28)

【目的】長野県は様々な山菜が食べられている地域である。長野県で採れる山菜には、ナズナ、フキノトウ、ノビル、タラ ノメ、コシアブラ、コゴミ、ゼンマイ、ワラビ、ウド、ギョウジャニンニク、オオバギボウシ、ウコギなどがある。その中 でもウコギは、長野県南部の飯田・下伊那地方を中心に消費されており、地域性のある山菜である。地元では「ウコギ」の ことを「オコギ」と呼び、昔から人々に親しまれている。ウコギの調理法としては、おひたしが最も一般的である。本研究 では、地域食材としてのウコギの価値を高め、普及を行うことを目的とし、ウコギの抗酸化活性及びポリフェノールの解析 を行った。また、ウコギの地域性を確認するために、アンケートを行った。【方法】ウコギに 70%メタノールを加え、75℃の湯浴中で 30 分間抽出を行った。得られた抽出液及びポリフェノール標品を薄層クロマトグラフィーに供し、n-ブタノール:酢酸:水(62.5:12.5:25,v/v/v)で展開した。発色剤には 0.04%DPPH エタノール溶液及びフォーリンチオカルトフェーノール試薬:水:エタノール(1:1:2,v/v/v)を用いた。抗酸化活性は DPPH 法、総ポリフェノール量はフォーリンチオカルト法で測定した。また、I 短期大学の学生 81 名に対し、(ウコギを知っ ているかどうか、ウコギを食べたことがあるかどうか)アンケート調査を行った。【結果】薄層クロマトグラフィーの結果から、ウコギにはケルセチンやケンフェロールは含まれていなかった。また、アン ケートの結果から、ウコギを知っている人の割合は、上伊那地方 25.0%、飯田・下伊那地方 70.6%であった。ウコギを食べ たことがある人の割合は、上伊那地方 25.0%、飯田・下伊那地方 55.9%であった
著者
菊地 和美 菅原 久美子 木下 教子 酒向 史代 坂本 恵 高橋 セツ子 土屋 律子 芳賀 みづえ 藤本 真奈美 村上 知子 村田 まり子 山口 敦子 山塙 圭子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

【目的】年中行事や通過儀礼を行うハレの日には、食事も日常とは区別され、各家庭や地域で独自の習慣がみられている。食生活が多様化する中、地域における年中行事や伝統食を大切にし、次の世代への継承にむけた取り組みが推進されるようになってきた。そこで、本研究は北海道の行事食と儀礼食について、親子間(学生とその親)からみた認知状況や摂食状況などの実態把握を行い、地域性を明らかにすることを目的として検討した。【方法】調査は日本調理科学会特別研究(平成21~23年度)に基づき、北海道に居住する親181名と子181名(計362名)を対象として、調査時期は平成21年12月~22年8月に実施した。データは単純集計および親子間によってクロス集計を行い、χ2検定により分析した。【結果】親子間で認知・経験が一致する回答は、行事食が74.0%、儀礼食は49.8%であった。行事食と儀礼食を認知している割合は親が子よりも多く、親子間で有意差がみられたのは盂蘭盆、お七夜、百日祝い、初誕生、厄払いであった(p<0.01)。行事食と儀礼食の経験がある割合も親が子よりも多く、有意差がみられたのは春分の日、端午の節句、盂蘭盆、土用の丑、お月見、秋分の日、出産祝い、お七夜、百日祝い、初誕生、成人式、結納、婚礼、厄払い、長寿であった(p<0.01)。北海道の正月料理のうち、親子間で「現在、家庭で作る」という回答が一致していたのは、たこ刺身が7組(親子間一致なし12組)、くじら汁が2組(親子間一致なし3組)、いずしが2組(親子間一致なし2組)であった。今後はさらに、北海道における特徴的な行事食・儀礼食の親子間による伝承を検討する必要性が示唆された。
著者
伊藤 直子 高久 明美 山崎 貴子 堀田 康雄 村山 篤子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成15年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.63, 2003 (Released:2003-09-04)

【目的】昨年度の調理科学会において、我々は、低温でのスチーミング調理により、「茹で」と比較して、サツマイモにおいて糖濃度が高くなり、ビタミンの損失も少なく、官能検査ではより美味しく、かつ食べやすくなることを報告した。今回は、根菜類について同様の試験を行ない、さらに、調味液の浸透などについても調べたので報告する。【方法】試料として、ニンジン、ダイコンを用いた。低温スチーマーを用いて、70_から_90℃で一定時間「スチーミング」を行ない、「茹で」、「生」と比較した。調味液として10%ショ糖を用い、その浸透度を調べた。同時に内在する糖をHPLCで定量した。破断強度測定にはクリープメーターを用いた。【結果及び考察】ニンジン、ダイコンとも「茹で」15分が破断強度が最も弱く、90℃30分の「スチーミング」がそれに次いで弱かった。これに対して、70℃60分の「スチーミング」では、「生」に近い破断強度を示した。それにもかかわらず、スチーミング後調味液に漬け込んだ場合、調味液とともにスチーミングを行なった場合共に、「茹で」とはほぼ同等の浸透を示した。「生」はほとんど浸透がなかった。ダイコンにおいて、内在性のブドウ糖、果糖は、「茹で」は「生」と比較して減少していたが、「スチーミング」では、同等かそれより多く存在していた。ニンジンは70℃のスチーミングにより、色が鮮やかになり、分光光度計により537nmの波長が増大しているのが見られた。さらに、真空調理と併用したものについても同様に実験を行ない、これらによる調理法は、根菜類において色よく仕上がり、栄養分の損失が少なく、かつ調味液の浸透がすぐれていることから、その特徴を活かした煮物料理及びその下ごしらえに有効であると思われる。
著者
大坂 佳保里 蓮沼 良一 チェン メイ フェイ 青木 正敏 福永 淑子 高橋 良佳
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成24年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.44, 2012 (Released:2012-09-24)

【目的】米粉は様々な調理分野において利用されているが、乾式製粉法では米粉を微粒子化するための設備が高額で、米粉の値段も高い。しかしタイ、台湾の水挽き製粉法を利用すると、安価な微粒子米粉を製造することができる。著者らは水挽きに先だって浸漬する水温(5℃、10℃、15℃、25℃)により、製造できる米粉の微粒子径を制御できることを明らかにしている(2011年発表)。本研究では、日本米の浸水温度を同様に4段階に設定し、その粒度分布を詳細に調べるとともに、これを日本で販売されている微粒径乾式製粉米粉、タイおよび台湾の米粉の粒度分布と比べることを目的とした。さらに米粉の製品に関わる米粉の損傷度合などについての特性を明らかにすることも目的とした。【方法】まず、日本米を上記4種類の水温の水に12時間に浸漬した後、水挽き法により製粉し、水分を赤外線水分計によって12%前後に調整した。次いで、4種類の浸水温度の米を水挽きした日本米粉と一般に市販されている日本の乾式微細米粉、タイ米粉と台湾の米粉との粒度分布をレーザー回折式粒度分布機と測色色差計で測定した。さらに、米粉のデンプン粒の損傷状態を調べた。【結果】5℃の米粉の粒度分布ではもっとも細かい粒径が得られ、メジアン径は18μmであった。米粉のメジアン径は水温が高いほど粗くなり、25℃の場合は64μmであった。タイの米粉は37μm、台湾米粉は18μmであった。色相については浸漬水温の差は認められなかった。デンプン粒の損傷状態によって生地の様子は異なり、低温の浸漬水温の米粉ほどコシの強い米麺ができることが明かになった。
著者
中島 君恵 橋爪 博幸 田中 景子 関﨑 悦子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

【目的】昨年度の本学会において生活科学科として「環境目的」を掲げた2つのプロジェクト「ダイズプロジェクト」と「トマトプロジェクト」の活動及び食と農についてのライフスタイルアンケート調査を報告した。今回は平成23年度に継続して行われた「ダイズプロジェクト」と「トマトプロジェクト」の2年間にわたる活動報告と、この活動に加わった栄養士養成課程学生40名を対象にしてアンケート調査を実施したので報告する。【方法】1.平成22年度から継続して学内で作られた腐葉土を野菜作りに利用し有機肥料の入った土壌にダイズやトマトを作付けする「ダイズプロジェクト」と「トマトプロジェクト」を行う。特にダイズについては1年生はダイズを春蒔きして7月に枝豆として収穫したのち学内実習の授業において「ずんだ」を作り、白玉団子ととともに試食した。2年生については前年度の秋に収穫した大豆を冬に味噌に加工して、2年生の秋に調理実習でシルバーランチ(みどり市社会福祉協議会との連携事業)の授業において調味料として用いた。2.「ダイズプロジェクト」と「トマトプロジェクト」に2年間関わった栄養士養成課程学生40名に対して食と農に関するアンケート調査を実施した。【結果】食と農に関するアンケート調査結果から、2年間の野菜づくりプロジェクトを中心とした農業について実践的に学ぶ体験から農業や農作物への高まり、卒業後も継続したいと考える学生が80%を超えていた。今後、これらの活動を継続することにより、食教育、環境教育、食農教育をさらに連携させたプログラムづくりに発展させていきたいと考える。
著者
上部 光子 秋山 舞子 西成 勝好
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.336-343, 2004-11-20
参考文献数
18

白玉粉調理の生地作りでは,水を白玉粉の80~90%加えて捏ねる。この混捏時は,水分の多少により,生地のひび割れやだれを生じ,生地の捏ね操作上で扱い難い欠点がある。白玉粉生地の調理操作性改善方法としては,捏ねた生地の一部をゆで,元の捏ね生地に戻し、加えて混捏する方法が考えられる。そこで,ゆで生地量の違いによる生地の取り扱いやすさや,生地のレオロジー特性値を検討した。さらに,元宵と白玉団子の食味の官能検査について検討し,以下のような結論を得た。1)生地作り操作上の難易度の評価,および、ゆで後の食味の官能検査については,ゆで生地5%混入試料が捏ね時に操作しやすく,ゆで後の食味の官能検査結果から美味しいと認められた。2)円柱形に成形した生地についてテクスチャー・プロフィールアナリシスの結果,(1)ゆで生地無混入試料は硬く,多少べたつき,ぼそぼそとまとまりが悪い生地で,圧縮応力が最高値を示し,硬かった。また,ゆで生地混入試料は,混大量が多くなるにつれ圧縮応力が小さくなり,生地が柔らかく,捏ね操作がやりやすくなった。しかし,ゆで生地7.5%以上の混入試料は生地が柔らかすぎて扱い難いことが示された。(2)ゆで生地5%混入試料ではゆで生地2.5%混入試料に比べ付着量が少なく,触感から見て粘り気をおびて扱いやすかった。3)円盤形の生地の周縁を保持し,中心部を球形プランジャーで圧縮して引き伸ばす測定において,ゆで生地が増すにつれ,生地が柔らかく,粘り気が加わり伸びやすいことがわかった。ゆで生地5%混入試料は,荷重-変形曲線から見ても,生地作りの操作上で扱いやすい生地であることを見出した。
著者
飯島 久美子 小西 史子 村上 知子 香西 みどり 畑江 敬子 小西 雅子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成15年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.107, 2003 (Released:2003-09-04)

【目的】寒い時期に家族あるいは仲間とともに鍋物を囲む光景は、日本の代表的な食卓風景の1つである。鍋物の歴史はそれほど古くはないが、冬の代表料理といってよいくらい浸透しているようである。そこで、本研究ではどのような鍋物がどのように食べられているのか、また地域的な特徴について、実態を知ることを目的とした。【方法】北海道から沖縄にいたる各地の大学、短大に所属する学生および職員1013名を対象とし、2002年12月にアンケート用紙を配布し、2003年1月に回収した。【結果】よく食べる鍋物の名前を尋ねたところ、63種類が挙げられた。そのなかでもっとも多くの人が挙げた鍋物はすき焼きであり、次いで寄せ鍋、キムチ鍋であった。地方別にみると東北ではキムチ鍋が、九州ではおでんがもっとも多く挙げられていた。鍋物に使われる食材は、豆腐類がもっとも多く、次いでハクサイ、ナガネギ、エノキ、白滝、シイタケ、シュンギク、ダイコンの順であった。豆腐類は74.9%の鍋物に使われ、おでんにも29.9%の割合で使われていた。またハクサイはおでんを除く70.7%の鍋物に使われていた。食べる頻度は月に1_から_2回がもっとも多く、次いで週に1_から_2回であった。誰とどこで食べるかという質問では、圧倒的に家庭で家族と一緒にという答えが多かった。鍋物とともにお酒を飲む割合は42.1%でその内訳はビールがもっとも多く、次いで焼酎・チューハイ、日本酒の順であった。年代別では、50代まではビールが多く、60代以降は日本酒が多かった。本調査から鍋物は、好きだから、暖まるからという主に2つの理由により3人以上集まって月に1から2回、主に家庭で食されており、もっともよく食されるのはすき焼きであるということが明らかになった。
著者
吉田 真美 高橋 恵美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.358-361, 2008-10-20
参考文献数
14

世界の料理書を資料として,豆を使用した料理を検索し,その内容から各国の豆料理の豆の種類,調理法,調味法,完成料理の種類などを精査した。世界には,国民1人当たりに日本よりも多量の豆類が供給される国が多く存在し,それぞれの国に伝統的な特徴のある豆料理が存在し,食文化の一端を担っていた。その中から,インド,トルコ,メキシコ,ヨーロッパ(イタリアとフランス)を選択し,豆料理の特徴について記し,その特徴をもったレシピを紹介した。