著者
石神 優紀子 山﨑 薫 奈良 一寛 南澤 瞳 綿貫 仁美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成28年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.195, 2016 (Released:2016-08-28)

【目的】神奈川県相模原市緑区城山地域は境川の上流域に位置し,当地域では季節の自然と触れ合えるイベントの一つとして「小松コスモスまつり」が行われており,地場産物販売とコスモスの摘み取りが人気を博している。地域活性も兼ね,コスモスを使用した産品開発相談を同地域より受けたことから,本研究では新たな地場産物販売品の検討を行うため,食用コスモスの特性を捉えた後,利用法含め,地元の方々に受け入れて頂ける産品提案を目的とした。 【方法】食用コスモスが入手可能となる旬期までは同じキク科である食用菊等を代用し,花の特徴やイメージを掴み,コスモスを使用した産品開発アイディアに繋げることも行った。次いで,食用コスモスの花弁(濃ピンク,桃色,白,黄色)を用い,試作を行い,最終提案として7品に絞り込んだ。また,平成27年度「小松コスモスまつり」スタッフを対象に花弁色が濃ピンク色の食用コスモスでソースを作成したブラマンジェの試食会を行い,その他の試作品については写真を用い,アンケート調査も実施した。 【結果】食用花の花弁を利用したシロップ漬けは花種によりシロップ液が青臭く,渋みが目立った。しかし,食用コスモスで作成したシロップは青臭さや渋みが認められず,特に濃ピンク花弁使用シロップ液を煮詰め作成したソースは色鮮やかで凡庸性の高いものに仕上がった。男性20名,女性13名の総計33名から得たアンケート調査結果は試食結果含め,総体的に高評価を得ることができ,クラッシュゼリーやピクルス等,いずれも商品化を進めて欲しいとの結果を得た。食用コスモスの調理・加工特性を捉えることにより,更なる産品提案や家庭での利用可能なレシピ提案も計画している。
著者
水田 晴野
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.37, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】減塩食などおいしさに満足できない食をおいしくすることは、摂食量を増加させ、低栄養を防止するうえで重要である。シジミの味噌汁はコクがありおいしいことから、シジミに多く含まれるオルニチンを減塩味噌汁に添加することにより嗜好性が高まる可能性を動物の行動実験により検討した。【方法】C57BL/6雄性マウスを用い、減塩味噌汁とオルニチン添加減塩味噌汁をそれぞれボトルに入れ、2ビン選択実験を行った。24時間ごとに左右のボトルを入れ換え48時間の摂取量を測定し嗜好度を求めた。水とオルニチン水溶液の2ビン選択実験も同様に行い、オルニチン単独の味の嗜好性を調べた。また、味噌汁の好ましい味を構成すると考えられる甘味、うま味、塩味のいずれにオルニチンは影響を及ぼすのかを調べるため、ショ糖、グルタミン酸ナトリウム(MSG)、食塩の混合溶液、単独溶液につきオルニチンを添加し、2ビン選択実験を行った。さらに、コクの受容体とされるカルシウム感知受容体のアンタゴニスト(NPS2143)を用い、嗜好性増強効果がコク発現によるものかを検討した。【結果】減塩味噌汁の2ビン選択実験において、マウスはオルニチン添加の方を有意に好んだ。水の2ビン選択実験ではオルニチン単独の嗜好性は認められなかった。甘味、うま味、塩味の混合溶液にオルニチンを添加すると、3種混合溶液とMSG単独溶液にオルニチンを添加したとき有意に嗜好性が増大し、MSGとショ糖、MSGと食塩の混合液についてもオルニチン添加により嗜好性は増大する傾向を示した。NPS2143の作用によりオルニチンの嗜好性増大効果は消失した。減塩味噌汁に添加されたオルニチンは、味細胞のコク受容体に結合することによりうま味を強め、おいしさ増強効果を生じるものと考えられる。
著者
駒田 聡子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2019年度大会(一社)日本調理科学
巻号頁・発行日
pp.13, 2019 (Released:2019-08-26)

【目的】家庭科は,「日常生活に必要な基礎的知識および技術を身につける」ことを目的としているが,大学生の様子を見ると「缶切りが使えない」「(青菜ゆで)お湯の沸騰が分からない」「親指を使って桂むきができない」など,小学校から始まる家庭科で学ぶべき内容が定着していないと感じる場面が多い。そこで将来小学校教員となる教育学部学生を対象にアンケートを採り,これまでの学びの中で食に関わる基礎的・基本的知識がどの程度身についているのかを知り,そこから課題をみいだし教科教育に活かすことを目的とした。【方法】二大学の教育学部学生を対象として家庭科教育の初回授業時に,衣食住に関わる基礎的知識を問うアンケートを実施した。回答者数202名。【結果および考察】各項目の正解率は,1カップの容量 43%,大さじ1 55%,小さじ1 64%,水からゆでる食材 40%,食品群 約55%,1合 9%,消費・賞味期限 92%,食糧自給率語句の意味 54%・数値 11%,密度の違い 63%,廃棄率計算 36%だった。この結果より,実生活に必要な各教科での学びが知識として定着していないことが示唆できた。今後は各教科での学びを「実生活の具体的などの場面にどう活かすのか」,「どう活かせるのか」をより実感を伴って理解されるように教え,小学校での教科教育に活かせる教員養成を行っていく必要性を強く感じた。
著者
山本 淳子 森山 三千江
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成30年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.40, 2018 (Released:2018-08-30)

【目的】日本近海の砂地に生息する貝であるツメタガイは、アサリの繁殖時期と同じで、潮干狩りの際に見かけるがアサリの天敵である。アサリは愛知の地産であるが年々漁獲量が減っており、その原因の一つとされている。ツメタガイは、独特の粘りと臭い、硬い肉質が嫌厭される。そこで、ツメタガイの調理法を開発し、嗜好性が高く多く食べるようになれば、アサリの漁獲量増加の貢献となる。本研究では、ツメタガイの利用を進める基礎データを得ることを目的とし、加熱方法の検討を行った。【方法】ツメタガイは、愛知県水産試験場(蒲郡)の提供品を用いた。加熱方法は、水・酒・茶を用いてゆでる・蒸す・圧力鍋・レンジ・真空調理の5つを比較検討した。測定項目の、破断応力・テクスチャー測定は、クリープメーター(山電)を、組織構造観察は、走査電子顕微鏡(日立S-4200 SEM)を、色調は、色差計(日本電色)を用いた。官能評価は、評価項目「色」、「香り」、「食感」、「味」、「総合」について嗜好型官能検査を5点評点法で行った。【結果】加熱方法により、食感は大きく異なった。破断応力は、真空調理加熱の硬さが低く、柔らかくなることが分かった。電子顕微鏡観察では、真空調理の組織構造のみ、他の変化と異なり、組織の破壊における亀裂がなく平滑であった。色調は、水では色が暗く、茶ではあくが付き、明度が下がったが、酒を用いると明度が最も高いものとなった。官能評価において、水でゆでたものが硬く、においも強く好まれないものとなった。評価の高かった加熱方法は、レンジ加熱と真空調理であり、茶・酒を用いることで嗜好性は上がった。特に酒は、見た目、硬さにおいて嗜好評価が高かった。以上のことから、酒を用いてレンジ加熱、真空調理が適していた。
著者
川村 昭子 請田 芳恵 粟津原 理恵 新澤 祥恵 中村 喜代美 嶋田 靖子 張江 和子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.19, pp.133, 2007

<BR><B>【目的】</B><BR> 2003~4年にかけて、石川県を金沢を中心に南部の加賀、北部の能登の三地域に区分して、調査を行った特別研究「調理文化の地域性と調理科学-魚介類の調理-」より、各地域の調理文化と魚介類の調理の地域性については既に報告した。今回は、三地域において出現している魚介類がどのような行事に食されているかの比較検討を行った。<BR><B>【方法】</B><BR> 三地域において、自記式留置法により調査し集計した143世帯(能登:78 金沢:42 加賀:23)の結果から、今回は行事に用いられる魚介類をとりあげ検討した。<BR><B>【結果】</B><BR> 三地域で出現率の高かった行事は、正月、春・夏・秋の祭り、祝い事、ひな祭り、土用丑の日、誕生日などであり、三地域間では、能登は金沢・加賀に比べ行事は少なかった。しかし、能登では、他の二地域ではみられない「あえのこと(田の神)」という行事が出現していた。行事で食されている魚介類の料理については、金沢では、正月にはタラやサワラ(カジキマグロ)の昆布じめ(刺身)、甘露煮、棒ダラの煮物、かぶらずしなど、祭りや祝い事にはタイの唐蒸し、タイの塩焼き、鉄砲イカなどがあった。加賀では、祭りにシイラやサバを使った柿の葉ずし、押しずしなどであり、能登では、正月や祭りにはイモダコ、なます、麹漬け、昆布巻き(身欠きニシン)などであった。また、能登の「あえのこと」では、メバルの塩焼きをお供えし、家族も同様の料理を食する。今回の調査で出現している魚介類のほとんどは日常で食され、行事又は日常と行事の両方で食するとした割合は少なかった。また、行事に食するとしても行事名が記載されていない魚介類も多くみられた。しかし、三地域間には、魚介類の調理と行事におけるそれぞれの特徴がみられた。
著者
川原﨑 淑子 青山 佐喜子 橘 ゆかり 三浦 加代子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

〈目的〉平成21.22年度日本調理科学会特別研究として実施された「行事食」の調査結果を平成22年から24年度までの3年間に渡り報告してきた。今回は前報告の結果から行事食の喫食経験の高かった40歳以上の方のデータを基に地域間の比較を行った。地域比較を行うことで地域を顧み、伝統食、郷土料理の良さを考える一助となればと考えている。〈方法〉平成21.22年度日本調理科学会特別研究として全国統一様式の調査用紙を用いた。対象は和歌山県に10年以上在住している大学生・短大生とその親、また和歌山県福祉保健部、教育委員会関係機関の協力を得て、更には食生活改善推進協議会会員を中心に食育関係団体会員、地域の研究会に参加した市民とした。これらのデータから40歳以上の方504名を対象とし、和歌山を紀南(126名)、紀中(95名)、紀北(283名)の3地区に分けSPSS(Ver.18)でχ2検定を行った。〈結果〉40歳以上の行事の経験90%以上はお正月、節分、大みそか、クリスマス、土用丑の日、お月見、で低いのは春祭り28%、重陽11%であった。行事食の喫食経験が地域別で有意差が認められたのはお正月、節分、上巳、端午、七夕、盂蘭盆、お月見、冬至、クリスマス、大みそか、春祭り、秋祭りであり、お正月の屠蘇の喫食経験は紀中が低かった。雑煮における地域の違いとしては紀北、紀中は白みそ雑煮で丸餅使用、紀南はすまし雑煮で角餅使用であった。おせち料理の料理類にはほとんど差はなったが、魚料理と肉料理に有意差が認められた。その他の行事でも紀北の経験が高く、紀南は祭りでの寿司やご飯、だんごに特徴がみられた。紀中は盂蘭盆のもちやお月見のだんごに有意差が認められた。
著者
阿久津 敦子 大武 亜弓 中村 邦男
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.17, pp.142, 2005

<br>【目的】市販の鶏卵から取り出した卵白および卵黄について、一定の温度に急加熱したときの粘弾性率の時間発展(凝固曲線)および一定の昇温速度で加熱したときの粘弾性率の温度変化(温度分散)を測定し、卵黄および卵白のレオロジー特性におよぼす加熱時間・温度の影響を調べてきた。今回はゆで卵について、そのレオロジー特性におよぼす加熱時間・温度の影響を調べた結果について報告する。<BR>【方法】産卵後約一週間の市販の鶏卵を共試卵とし、室温に戻した後、所定の温度および時間で温浴加熱した。その後、直ちに流水で充分冷まし、目視によるテクスチャーの観察および粘弾性率の測定を行った。測定にはレオメトリックス社製RDA_II_型レオメータを用いた。<BR>【結果】25℃における生の卵黄は絶対弾性率が約7Pa(ω=6.28rad/s)、損失正接10程度の粘弾性液体である。90℃におけるゆで卵では、卵黄は凝固し、弾性率が10,000Pa、損失正接0.03程度の粘弾性固体に熱変性する。卵黄の凝固反応が生じる最低温度はほぼ58℃であった。他方、生の濃厚卵白は弾性率0.1Pa、損失正接0.3程度の柔らかいゲルであるが、液卵の場合、90℃における凝固曲線は強度、1Pa、10Paと2,000Pa程度の3段階の時間発展を示した。3段目の反応が硬いゆでた卵白に対応する反応であり、その最低温度が70℃付近にあった。50-65℃の温度範囲では弾性率が10Pa程度の柔らかい不透明なゆで卵白となる。したがって、温度範囲65>加熱温度>58では、柔らかい卵白に包まれた固まった卵黄をもつゆで卵が得られる。温度範囲58>加熱温度>50では、卵白中の卵黄は、生の状態に近いことが分かった。
著者
名倉 秀子 藤田 睦
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】平成24,25年度特別研究「次世代に伝え次ぐ日本の家庭料理」に基づき,昭和30~40年頃の家庭料理を含めた食生活の様子,家庭料理を聞き書き調査し,次世代に伝え継ぐ家庭料理における間食の特徴を検討した。<br />【方法】栃木県内の那須野ヶ原,日光山間,両毛山地,渡良瀬流域,鬼怒川流域2か所の全6地域について,家庭の食事作りに係わってきた19名を対象に面接調査を行った。対象者はその地域に30年以上居住している60歳以上とし,地域での暮らしと食生活の特徴と概要,印象に残っている食と暮らし,伝え継ぎたい家庭の料理を聞き書き調査した。その内容から,間食に関係する料理を抽出して,特徴をまとめた。<br />【結果】昭和30年~40年頃における栃木県内の農家数は約125,000戸,昭和16年~平成27年の農林センサスにおいて最も農家戸数の多い期間で,現在の2.3倍であった。調査対象者も農家(自給的農家を含む)であるため,間食の位置づけは農作業の空腹を満たす小昼飯(こじはん,こじゅはん)であった。料理では,芋類のさといもを「いも串」,じゃがいもを「いもフライ」,さつまいもを「かんそう芋」,「ふかし芋」,米類のもちを「揚げもち,のりもち,豆餅」,もち米とうるち米を使用して「かんごろし」,小麦類の「炭酸饅頭」などが挙げられた。芋類,小麦類,米類の他にトウモロコシを茹でるかまたは蒸したり,「そばがき」や「甘酒」などに加工するなど,収穫された農産物や屋敷回りにある生柿,干し柿などを間食に利用していることが明らかになった。また,お茶と一緒にぬか漬け,たくあん漬けなどの漬物(こうこ)を一緒に食べている事が特徴として挙げられた。
著者
佐藤 真実 村上 亜由美 岸松 静代 谷 洋子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.17, pp.159, 2005

<br>【目的】福井県における魚介類の利用状況と調理について調査を行い,とくに県内で使用される地方独特の魚の種類や行事などに利用する魚の調理方法について明らかにすることを試みた。<BR>【方法】越前(海岸部,主に漁業)10名,奥越(山間部,主に農業)10名,坂井(海に面した平野部,農業と漁業)11名,福井(地方都市)12名,嶺南(海岸部,漁業と商業)9名の5地域,計52名の20歳代から70歳代の居住者を対象に,アンケート調査及び聞き取り調査を行った。とくに地方独特の魚の種類や調理方法についてまとめ,写真撮影を行った。<BR>【結果】福井県で食べられる地方独特の魚の種類としては,みずべこ,がまえび,みずだこ,せいこがになどがある。みずべこはかに漁の底引き網にかかる深海魚であるが,吸い物や味噌汁に,がまえびは味が甘えびに類似しており刺身やフライに,みずだこは刺身に,せいこがにはゆでて卵やかにみそをそのまま食べる。行事などで食べられる地方独特の調理法としては,まさばの丸焼き(越前や嶺南では浜焼き鯖,奥越では半夏生の鯖と呼ばれる),へしこ(さばやいわしの糠漬け),まがれいの塩焼き(天神講に食べられる),身欠きにしんの昆布巻き(正月,盆,祭りに食べられる),にしんの麹漬け(12月から正月にかけて食べられる),だだみ(たらの精巣)の味噌汁,かつお節をもりつける雑煮などがみられた。
著者
橘 ゆかり 青山 佐喜子 川島 明子 川原﨑 淑子 千賀 靖子 三浦 加代子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】日本調理科学会特別研究である『次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理』において、1960~1970年頃までに定着していた家庭料理について聞き書き調査を行った。本研究では、主に和歌山県の家庭で伝承されてきたおやつと年中行事や季節の農産物との関係について報告する。<br />【方法】平成25年12月~27年3月に、和歌山県の12地域(橋本、那賀、和海、上富田、大塔、田辺、勝浦、太地、熊野川、有田川、由良、日高)で聞き書き調査を行った。調査対象者の平均年齢は72.3±6.3歳で、合計38名の女性の聞き書き調査を行った。また地域でまとめられた資料や文献の調査を行った。<br />【結果】和歌山県の家庭で伝承されてきたハレの日のおやつとしては、菱餅(雛祭り)、柏餅、ちまき(端午の節句)、だんご、おはぎ(お盆や月見)、亥の子餅、くるみ餅(秋祭り)、よもぎ餅(秋祭り、正月)などがある。ケの日のおやつとしては、かきもち、あられやせんべいなどの餅の加工品、ふなやき、しゃなもち、小麦餅(半夏生他)や蒸しパンなどの小麦粉を使ったおやつの他に、はったい粉(あんぼ)、さつまいものおやつ(焼きいも、蒸しいも、干しいもなど)、炒り豆や果物や果物の加工品が食べられていた。和歌山県のおやつの特徴の一つとしては、季節の農産物と深いかかわりがあると考えられる。亥の子餅は、亥の日の行事食として古くから各地で伝承されている。一般的に亥の子餅はもち米だけで作る地域が多いが、和歌山県の亥の子餅の材料は、もち米だけではなく秋に収穫した里芋を使用する。また、端午の節句の行事食である柏餅は、和歌山県では、柏餅を包む葉は柏の葉ではなくサンキライの葉を使う地域が多く見られた。
著者
成田 亮子 加藤 和子 長尾 慶子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.19, pp.137, 2007

<BR><B>【目的】</B><BR> 3年前に行った女子大生の家庭での餅の摂取状況結果を基に、今回は特に鏡餅について取上げ、正月における家庭でのその現状把握と、"餅"に対する女子大生の意識とイメージ観を知るために詳細なアンケート調査を行った。<BR><B>【方法】</B><BR> 調査対象は、本学家政学部栄養学科並びに同短期大学部栄養科学生200名である。調査期間は、2007年4月から5月とした。<BR><B>【結果】</B><BR> (1)鏡餅について:正月に鏡餅を供える家庭は80%以上と、3年前の調査結果とはあまり差がなかった。「供える場所は何か所か」については、1か所との回答が65%と多く、供える場所はリビングが多かった。「複数ヶ所供える」との回答では、供える場所は、トイレ・神棚・仏壇がみられた。鏡餅の種類としては、真空パックの鏡餅を供えている家庭が約80%と多くみられ、杵と臼・家庭用電気製品で搗くなど、家庭で餅を作ることが少なくなっていた。そのために、「飾り方」は大小の丸い餅を重ね、ダイダイやユズリハ、昆布、裏白の葉などで飾る伝統的な体裁であっても、真空パック鏡餅についている飾りを用いるという回答となっていた。供えない家庭の理由としては、面倒である・餅を食さないからもったいないであり、鏡餅を知らないという回答もわずかながらみられた。<BR>(2)餅に対する嗜好とイメージ:女子大生の餅に対するイメージとして、素朴、煮るよりは焼く、白くてもちもちとした食感、常備食としてよりは行事食が頻出していた。これらのイメージを回答した学生のほとんどが餅を好んでいた。餅を嫌いと回答した学生のイメージとしては、飲みこみにくい、ねちねち、太る、など好ましくない表現がみられた。
著者
森永 八江
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成30年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.133, 2018 (Released:2018-08-30)

【目的】昆虫食の試食会を行い、昆虫食の課題について検討することを目的とした。【方法】昆虫食試食会は2014年12月に山口大学の食堂で行われ、アンケート調査を行った。昆虫食試食会のメニューはジョロウグモ入りかき揚げ、バッタ入り豆腐ハンバーグ、セミの親子串揚げ、スズメバチのかき揚げ、カマキリの南蛮漬け、コオロギのクリームチーズカナッペ、タイ風バッタの春雨サラダ、タイ風セミの炒め物、カイコの串揚げ、ズメバチのから揚げ、イコのトマトスープ、モンクロシャチホコ(桜毛虫)の素揚げ、イナゴの揚げ物であった。【結果】アンケートは99枚回収した。1番気に入った料理の1位はセミの親子串揚げで全体の27%だった。次いで、クモと玉ねぎのかき揚げ13%、コオロギのクリームチーズカナッペ12%であった。1番苦手だった料理の1位はタイ風セミの炒め物で全体の33%だった。次いでバッタ入り豆腐ハンバーグ12%、セミの親子串揚げ7%であった。1番気に入った料理で上位のセミの親子串揚げ(27%)やクモと玉ねぎのかき揚げ(13%)は、1番苦手だった料理ではそれぞれ7%と3%と低かった。反対に1番苦手だった料理で上位のタイ風セミの炒め物(33%)やバッタ入り豆腐ハンバーグ(12%)は、1番気に入った料理ではそれぞれ3%と4%と低かったことから、気に入ったものと苦手だったものの割合は味・食感・見た目が対照的であると分かった。また、昆虫の原形が残っているとまだまだ食べることに抵抗があると考えられた。そこで、ほかの食材に昆虫を挟み、昆虫が見えないようにする、少し刻んで小さくし、昆虫だと分からないようにするなどの工夫をすることで、昆虫を食べることへの抵抗を少しでも小さくできるのではないかと考えた。
著者
関本 美貴 大橋 きょう子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.28, 2016

【目的】演者らは先に、大正末期から昭和初期におけるジャガイモ調理の実態を調査し、農村部ではジャガイモが里芋の代替として広く和風料理の材料に用いられていたことを報告した。本研究では東京近郊の一農村を取り上げ、近現代における都市近郊農村の食生活の実態、およびその変化と要因について、イモ類を中心に検討することを目的とした。 【方法】調査対象地域は、旧神奈川県都筑郡中川村周辺(現横浜市都筑区・港北区の一部)とした。明治後期の食生活の実態を知る資料として「中川村村是報告書」、大正期~昭和40年代の実態を知る資料として「港北ニュータウン地域内歴史民俗調査報告(7巻)」を用いた。両資料よりイモ類の入手方法・調理法・料理に期待する事柄、および食事全般の内容・材料を精査し、これらに関与する地勢、交通、農業、流通等についても調査した。 【結果】①ジャガイモは明治後期にはまだ新しい作物であり、単独で小昼等に食べられていた。大正期以降には一般的な自給作物となり日常の煮物や汁物の材料に用いられていた。両資料ともに洋風料理は出現しなかった。一方里芋は明治後期から常に一定量が栽培され、晴れ食に欠かせない食品として行事の際食べられていた。両者の位置づけには明確な差が見られた。②明治後期、当該地域では麦混合飯と野菜類を中心とした自給自足の食生活が営まれていた。大正以降はさまざまな園芸作物を東京・横浜方面に出荷し、得られた現金収入をだし素材や魚、ごくたまに肉類等の購入に充てていた。しかし食事の内容は明治後期から大きな変化はなく、麦混合飯が昭和30年代まで食べられていた。 一農村の約60年の食生活を調査するなかで、ジャガイモが新しい食品から日常の和風料理の材料へと浸透していく過程を確認することができた。この結果は先の調査結果を裏付ける知見のひとつと考える。
著者
石川 伸一 吉成 愛未 濟渡 久美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】<br><br>低温調理は食材を一般的な調理温度より低い55℃~90℃程度の温度帯でじっくり加熱する調理法である。長時間加熱することで軟らかくなり,また真空包装して調理することにより様々な長所を有する。近年この真空低温調理が注目され,種々の食事提供の場で幅広く活用されているが,長時間調理の報告はほとんどされていない。そこで,真空低温調理によるリンゴへの長時間加熱の影響を検討することを目的とした。<br><br>【方法】<br><br>リンゴは8等分にし、30%濃度のシロップを添加後、真空パックし、それぞれ60,70,80,90℃の湯浴中で1,12,24,48時間加熱調理し、色差測定とテクスチャー測定を行った。70℃で加熱したリンゴを用いて,18歳~23歳の男女66名をパネラーとした官能評価を行った。「かたさ」「甘さ」「酸味」「香り」「色」「総合評価」の6項目をそれぞれ7段階評価で行った。<br><br>【結果】<br><br>色差測定では60℃調理と70℃12,24時間のサンプル間を除いたほとんどのサンプル間で,同じ温度条件で時間経過に伴い明度が有意に低下した。加熱時間が長くなるほど,褐変が進行すると考えられる。テクスチャー測定では70℃サンプルでは時間の経過に伴い有意にかたさの値が減少した。70℃調理では調理時間が長くなるほどペクチンの分解が進むと考えられる。官能評価では,理化学試験の結果と同様に,硬さと色は時間の経過とともに値が有意に減少した。しかし,甘さ,酸味に関して,理化学試験ではみられなかった有意差がみられた。
著者
山岸 好子 立屋敷 かおる 今泉 和彦
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.15, pp.115, 2003

<B>【目的】</B>小・中学生の箸の持ち方は、個人差が大きいこと、多様性があること、伝統的に正しいとされる持ち方(くの字持ち)が少ないこと、が知られている。一方、箸の持ち方と類似している字を書く際の鉛筆の持ち方にも多様性のあることが知られているが、それらの実態については十分明確にされていない。そこで、私達は現在の小・中学生における箸と鉛筆の各々の持ち方をしらべ、さらにそれらの持ち方の関連性を明らかにするため検討した。<BR><B>【方法】</B>公立の小学校2年生(小2)、5年生(小5)および中学校2年生(中2)の計160名を対象とし、給食時の箸の持ち方、平仮名をなぞる時の鉛筆の持ち方をDigital video cameraで撮影した。対象者の各動作を分析した後、各自の箸と鉛筆の各持ち方を類型化した。箸と鉛筆の各持ち方のパターンの人数とその割合を学年別、性別および対象者全体で比較・検討した。さらに、箸の持ち方と鉛筆の持ち方との関連性をしらべた。<BR><B>【結果】</B>箸がくの字持ちと判定された割合は、小2で約11%、小5で約26%、中2で約35%であり、学年が高くなると共に明らかに増加した。一方、鉛筆の正しいとされる持ち方(普通持ち)は学年に関係なく約42%であった。また、各学年共に鉛筆の普通持ちと判定された割合は箸のくの字持ちの割合より高く、全対象者における正しいとされる持ち方は箸が鉛筆の約1/2であった。また、箸と鉛筆が共に正しいとされる持ち方と判定された割合は、中2が小2および小5に比べて約3倍高かった。以上の結果から、箸の持ち方は鉛筆の持ち方より遅れて確立される可能性、および箸の持ち方がくの字持ちへと変化するのは小学校高学年から中学生であることが示唆された。
著者
杉山 寿美 水尾 和雅 今岡 麻奈美 都留 理恵子 水馬 義輝
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1080, 2009

<BR>【緒言】近年,電磁調理器(IH)による調理が増加している。これまでに,IH加熱が鍋底からの加熱のみであるのに対してガス加熱では鍋側面からも加熱されること,入熱量が同じ場合にはIH加熱の対流速度が速いことが示されている。このことはガス加熱とIH加熱で料理の仕上がりが異なることを推察させる。本研究ではぶり大根をモデルとして煮熟調理時の影響を検討した。<BR>【方法】大根は中央部を2cmの輪切りにし,NaClの浸透量・破断強度の測定用にはその中央から1辺が2cmの立方体を,官能検査用には半月切りを調製した。加熱機器はIH加熱はリンナイ製RHS71WG7V,ガス加熱はナショナル製KZ-VSW33Dを用いた。ステンレス製鍋を用いて,ぶりの煮汁中で10-40分加熱した。加熱条件はIH加熱時と鍋への入熱量が同じになるようガス加熱(ガス量を調節)したもの,あるいは,IH加熱と煮汁のゆれ具合が同じになるようガス加熱したものとし,それぞれ強火,中火で加熱開始した。官能検査は訓練された管理栄養士課程の大学生をパネルとし,20分加熱した大根を試料とした。<BR>【結果】強火で入熱量が同じ場合はIH加熱で,中火で煮汁のゆれ具合が同じ場合はガス加熱で,NaClの浸透量が多く破断強度が低く,破断強度の低さとNaClの浸透量が関係していることが示唆された。一方,官能検査の結果、強火で入熱量が同じ場合にIH加熱が「軟らかい・味の浸み込みがよい」と判断されなかった。また,鍋内の加熱では内部より表面部で破断強度が低くビーカー内加熱とは異なっていた。これらのことから,対流速度の破断強度への影響が示唆され,IH加熱とガス加熱で料理の仕上がりが異なることが示された。
著者
河北 雄一郎 新居 早也佳 橋本 博子 永谷 基浩 村井 一人 竹田 博幸
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】国立循環器病研究センターの減塩食「かるしおレシピ」は素材のうま味を引き出す京料理の考え方をベースとして、美味しく食べられるように工夫されている。レシピの基本はだし汁1.3Lに淡口醬油50ml、砂糖30g、塩6gを合わせた八方だしで、煮物から下茹でなど様々な調理に利用できる。一般的な八方だしには淡口醤油が多用されるが、かるしお八方だしにも淡口醤油が必須の調味料として使用されている。そこで本研究では、かるしお八方だしに淡口醤油を使う意義を解明することを目的とした。【方法】減塩調理に醤油が及ぼす影響を評価するため、淡口醤油と濃口醤油各々で調製した八方だしで、長芋の煮物、大根とうす揚げの煮物、ぶり大根、鯛の煮付け、治部煮、筑前煮を同条件で調理し、SD法による官能評価を行った。既に我々は塩味とだし風味について、淡口醤油中の方が濃口醤油中に比べ低い濃度で識別できることを報告してきたが、甘味は検討できていなかったため、本報告では甘味を識別できる濃度を調査した。淡口醤油と濃口醤油を用いてうどんだしを調製し、砂糖濃度1%を中心としてその濃度差を変えて2点識別試験片側検定にて甘味の閾値を比較した。【結果】減塩調理時の官能評価では全てのメニューで淡口醬油が濃口醤油よりも「素材の味が生きる」項目で有意差が見られた(P<0.001)。また、淡口醤油では砂糖濃度1%と1.25%の差を有意水準0.1%で識別できたが、濃口醤油では識別できなかった。以上より、淡口醤油は、塩味やだし風味に加えて、甘味を感じやすいことが明らかとなり、素材の味を引き立て、料理を低塩で美味しく仕上げることができる点で、かるしお八方だしに必須であることが示唆された。
著者
深井 康子 守田 律子 原田 澄子 稗苗 智恵子 中根 一恵
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】富山県に伝承されている家庭料理のなかで、主菜の特徴を明らかにすることを目的とした。<br>【方法】平成26~29年度に県内の6地区(朝日町、黒部市、滑川市、富山市、射水市、氷見市)で60歳代~70歳代のとやま食の 匠・伝承の匠の認定者及び食生活改善普及員の女性6名を対象に、昭和30年~40年代から作られていた家庭料理について聞き書き調査を行った。調査した料理から主菜に分類されるものを抽出した。また富山県の食文化関連の書籍や文献等を参考に、上記以外の主菜を検索し、主菜の特徴をまとめた。<br>【結果】富山県の主菜は、四季を通じて食べられる豊富な魚料理が特徴である。富山湾は、温暖な対馬海流と立山連峰からの伏流水が流れ込むため、水温が1~2度と低く、海洋深層水が層をなしている。海底には魚の餌となるプランクトンが豊富にあるため、魚種が豊富である。3月~5月が旬の滑川漁港で水揚げされる「ホタルイカ」は刺身、酢味噌和えにした。4月から11月には新湊漁港で獲れる「白えび」は干したり、から揚げや大門素麺のだしのつゆに用いた。かき揚げで食べるようになったのは20年ほど前からである。通年漁獲される「バイガイ」は旨煮にして、日常や正月に食べた。県内全域では魚の保存と昆布のうま味を生かした昆布じめを作った。昆布に魚を挟んだ独特の昆布料理で先人の知恵により受け継がれてきた。県境に近い宮崎海岸では「すけそう鱈」でたら汁にした。「真鱈」は昆布じめにしたあと、味付けした真子を和えて子付けにして日常や正月に食した。鱈は干し鱈として長期保存し、棒鱈の甘煮にした。氷見漁港で獲れる「ぶり」は刺身、ぶり大根にした。日常によく食べる「いわし」は酢を入れて醤油で煮たり、すり潰してすりみにして味噌汁にした。大衆魚の「イカ」は刺身、イカの鉄砲焼き、里芋とイカの煮物にしてよく調理した。
著者
安部 恵 板垣 千尋 鈴木 惇 山田 正子 中澤 勇二 伊藤 晋治
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.18, pp.183, 2006

目的: ブルーチーズには、複屈折性を示す結晶状の構造が、タンパク質の基質および脂肪球に存在する。カビの増殖した部位と結晶の分布状態および結晶構造に脂肪酸が係わるかを確かめるために、この実験を行った。<BR>材料: ロックフォール、ブルーデコース、スティルトンおよびゴルゴンゾーラを用いた。組織化学的方法によりカビと脂肪酸を染色して、カビと脂肪酸の分布を調べた。結晶の分布を偏光装置を用いて調べた。<BR>結果: これらのブルーチーズでは、多くの脂肪は複屈折性を示す結晶性の構造物が脂肪内にあった。また、タンパク質の基質に複屈折性を示す結晶が存在した。基質に分布する複屈折性を示す小さい結晶は、スティルトンが最も多く、次にロックフォールで、ブルーデコース、ゴルゴンゾーラの順に少なかった。これらのブルーチーズには、大きな結晶の集積および不定形をした結晶の塊が、カビが増殖した部位およびその近くに分布していた。大きな結晶の塊は、ロックフォールで多く、ブルーデコースおよびゴルゴンゾーラで少なく、スティルトンでは非常に少なかった。基質に分布する結晶および脂肪の一部は、脂肪酸の染色に染まり、脂肪酸が存在した。脂肪酸は結晶を構成する一成分となっていた。染色された部位の大きさと染色の強さによる脂肪酸の分布は、スティルトンで最も多く、ロックフォール、ブルーデコース、ゴルゴンゾーラの順に少なかった。
著者
西原 百合枝 池口 舞 田﨑 奈緒子 藤本 彩花 朝倉 富子 舟木 淳子
出版者
日本調理科学会
雑誌
大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017-08-31

【目的】高齢者は食事摂取量低下などによって、タンパク質やエネルギーなどが不足しがちとなる。本研究では、われわれが嚥下困難者用食品として作製しているパン粥において、不足しやすい栄養を補給することを目的に、タンパク質を多く含む大豆製品を添加したパンを作製し、これらのパンを使用したパン粥の作製を検討した。<br />【方法】パンはホームベーカリー(SD-BMT2000、パナソニック株式会社)を用いて作製した。大豆製品はきな粉、おからパウダー、大豆粉を使用し、それぞれ強力粉重量の20%を置き換えた。これらのパン(きな粉20%、おからパウダー20%、大豆粉20%)について、比容積を測定した。その後、パンのクラムを水とともに攪拌、加熱しパン粥を作製した。パン粥はクリープメータ(株式会社山電)を用いてテクスチャー解析を行った。<br />【結果】パンの比容積は、きな粉20% 3.10±0.06 ml/g、おからパウダー20% 1.50±0.03 ml/gとなり小さかったため、4.35±0.10 ml/gとなった大豆粉20%についてパン粥を作製した。加熱時間5分30秒間のパン粥を45±2℃で測定した場合のパン粥の硬さは0.69±0.06 kPa、付着性は0.42±0.09 kJ/m<sup>3</sup>、凝集性は0.70±0.04となった。20±2℃で測定した場合の硬さは1.46±0.28 kPa、付着性は0.79±0.14 kJ/m<sup>3</sup>、凝集性は0.62±0.05となった。これらの値は消費者庁のえん下困難者用食品たる表示の許可基準に当てはまっており、大豆粉を添加したパンを使用したパン粥は、嚥下困難者用食品として利用できる可能性があると考えられた。<br />本研究の一部は、総合科学技術・イノベーション会議のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「次世代農林水産業創造技術」によって実施された。