著者
奥本 牧子 畑江 敬子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1083, 2009

<BR>【目的】 煮物の味は冷めるときに染み込む、と一般にいわれているが、それを確かめるために実験を行なった。前報では、3種の食品を1% NaCl溶液中で加熱し、温度降下速度をかえて、一定温度で保温し、食品中の食塩の濃度を測定した。その結果、温度が高いほど食品中のNaCl濃度は高く、冷めるときに味が染み込むということは確認出来なかった。そこで、さらに温度降下条件を急速にし、煮汁の温度が冷めるときに味が染み込むかどうか確かめることを目的とした。さらにソレー効果との関係を考察した。 <BR>【方法】 試料として前報同様ジャガイモ、ダイコン、コンニャクを用い、一辺2cmの立方体に成型し1% NaCl溶液中で一定条件で加熱した後、とりだして、予め、0,30,50,80,95℃に設定した1% NaCl溶液に移し、5,10,30分後に取り出し、前報同様に内層(表面より3mm内側)と外層(表面より3mmまで)に分けて、イオンメーターでClイオンを測定し、NaCl濃度を算出した。<BR>【結果】 いずれの場合においても高温に保った方がNaCl濃度は高い傾向にあった。今回の実験でも冷めるときに味が染み込むことは確認出来なかった。ソレー効果は温度が定常状態の場合に液体中のNaCl濃度が移動するという現象で、濃度によって温度は異なるが、ある特定の温度(海水程度では12℃)を境にしてNaClは高温側から低温側、あるいは低温側から高温側に移動するという現象で、煮物の味の染み込みを説明するには無理があるのではないかと考えられる。
著者
洪許 于絹 石井 克枝
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.15, pp.9, 2003

【目的】台湾の家庭では薬膳スープを作り、食されている。四物湯はその中でもよく作られているスープである。本研究は台湾の家庭の調理方法により、加熱時間による呈味と呈味成分の変化を調べるともに、日本人を対象に嗜好調査を行った。<br>【方法】生薬は台湾の漢方専門店で購入し、鶏肉は市販手羽元を用いた。四物湯の調製は鶏肉480gと生薬(当帰・熟地・川芎・芍薬)47gと純水1150ml(台湾ではこの1/3量を使用するのが一般的)を加えて加熱した。加熱時間は30、45、60、90分とした。加熱には「大同電鍋」(間接釜式の電気炊飯器)を用いた。スープは加熱終了後1000mlに定容した。呈味成分の測定試料は一定量のスープを同量のn-ヘキサンで脱脂し、終濃度80%のエタノールで除タンパク後、減圧蒸留した。呈味成分はIMP、イノシン、ヒポキサンチン(HPLC)、還元糖(ソモギ・ネルソン法)、乳酸(酵素法)、タンパク質(Lowry法)を測定し、さらに、スープの官能検査(2点識別・嗜好法変法)を行った。<br>【結果】IMPは45分のスープにもっとも多く含まれ、タンパク 質や還元糖は90分のスープで多く、乳酸は60、90分で多い傾向がみられた。呈味成分全体としてみると、60分スープの量がもっとも多かった。官能検査では45分のスープを基本として比較した。30分はうま味やこくがなく、60分はうま味やこくが弱い傾向であったが有意差はなく、90分はうま味やこくが少なく好ましくないと評価された。官能検査では、45分のスープが最もおいしいと評価された。台湾の家庭では加熱時間を経験的におよそ1時間としており、その加熱時間の妥当性が明らかになった。
著者
大迫 早苗 永島 伸浩
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.18, pp.84, 2006

【目的】新食料資源として注目されているキヌアは、アカザ科に属する1年草の植物でたんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などに富み、アレルギーを起こしにくい食品の1つとして知られている。最近 クッキー、ケーキ、シリアル、醤油など加工食品として利用されているが、まだまだ利用率は低い。そこで前報では、キヌアの調理への利用として餅にキヌア粒および粉末を添加することに試みた。さらに利用を拡大するためにキヌアの配合割合を変えて各々の違いがパンの性状および食味特性におよぼす影響について検討した。<br>【方法】材料として強力粉、キヌア粒・粉末を用い、ナショナルホームべーカーリーSD-BT102の基本配合割合でパンを調製した。キヌアの添加量は強力粉の10、20および30%とした。生地比重、焼成後のパンの高さ、比容積、断面組織の観察、表面と断面の色(日本電色工業ZE2000)、水分含量を測定し、テクスチャーは(山電製RE-33005)硬さ、凝集性について測定した。また焼成後のパンの経時変化による硬化度についても調べた。官能評価は外観、色、味、風味、きめ、硬さ、弾力などについて行った。<br>【結果】生地の比重はキヌアの添加量が増加するとともに大きくなり、比容積は20%を過ぎると小さくなった。硬さはキヌアの添加量の増加とともに硬くなった。断面組織の観察ではキヌア添加のものにきめの粗さが認められた。表面の色は添加量とともに濃くなる傾向が見られた。官能評価では、キヌア無添加と10%添加のものは香りもよくきめが細かく、弾力性があったことより好まれた。20%添加からはキヌア特有のにおいが強くなった。また 粉末添加より粒添加のキヌアパンのほうか評価が良かった。
著者
千田 麻美子 川野 亜紀 高橋 智子 大越 ひろ
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.15, pp.4, 2003

【目的】 リゾットはイタリアの米料理であるが、そのテクスチャーとおいしさに関する報告はほとんど見られない。そこで、本研究ではリゾットのテクスチャーとおいしさに及ぼす米品種の影響について検討した。【方法】 日本米(Aこしひかり)およびイタリア米3種(Bウ゛ィアローネナノ,Cカルナローニ,Dアルボーリオ)の計4種を材料として用いた。調製方法は日本イタリア料理協会会員を対象に行ったアンケート調査を参考に、実験室レベルで調製可能なモデルを検討した。リゾットのテクスチャーとしては、調製後30分までの変化について、リゾット全体(全粒法)のテクスチャー特性の硬さ,凝集性,付着エネルギーおよび、米粒一粒あたり(一粒法)の破断荷重を測定した。また、シェッフェの一対比較芳賀変法を用い、調製後のリゾットについて、かたさ、存在感、べたつき感、好ましさの4項目について評価してもらった。【結果】 4種の米を用いたリゾットは、いずれも調製直後から経時的に、テクスチャー特性の硬さは増加傾向を示し、米一粒の破断荷重はやや減少傾向を示した。付着エネルギーは放置時間に伴い4試料とも増加傾向を示したが、Aこしひかりを用いたリゾットが他のイタリア米3種のものより大となった。しかし、Dアルボーリオを用いたリゾットは他のイタリア米のものより付着エネルギーの増加が顕著であった。官能検査の結果、AこしひかりとCカルナローニで調製したリゾットが好まれた。
著者
辰口 直子 大 雅世
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

<目的>温泉卵を作る際の加熱温度は、一般に65~70℃といわれている。本研究では加熱到達温度と時間経過が凝固状態に与える影響を明らかにし、好みの温泉卵を作る加熱条件を明らかにすることを目的とした。到達温度65℃、68℃、70℃における凝固状態を確認し、その温度をそのまま保った場合の経時変化を測定した。<br /><br /><方法>恒温槽を用い、水温65℃、68℃、70℃に設定し、卵をいれて中心が設定温度になるまで加熱し、その後所定の時間保持した。卵は市販の物を購入して用いた。水温、卵中心温度は熱電対で測定した。加熱後の卵を割卵し、形状(長径、短径等の大きさ)と、TEXTURE PROFILE UNIT卓上型物性測定器(YAMADEN TPU-2S)を用いテクスチャー(破断強度、凝集性、付着性)を測定した。<br /><br /><結果>所定の温度に達した時点の凝固状態を確認した。この温度に一定時間保持した場合の変化は、卵白の凝固は65℃では変化はないが、68℃、70℃では時間経過によって、卵白では水溶状態の減少傾向がみられた。卵黄は65℃、68℃では保持時間が長くなると形状が変化し、高さが増す傾向にあったが、70℃では大きな差はみられなかった。到達温度と各温度での保持時間での、卵白と卵黄の凝固状態が明らかになったので、これらの結果を利用して好みの成績を得るための操作の指標のためのデータが得られた。
著者
川村 昭子 請田 芳恵 粟津原 理恵 新澤 祥恵 中村 喜代美 嶋田 靖子 張江 和子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.20, pp.146, 2008

<BR> 【目的】<BR> 2003~4年にかけて、石川県を金沢を中心に南部の加賀、北部の能登の三地域に区分して、調査を行った特別研究「調理文化の地域性と調理科学-魚介類の調理-」より、今回は、調理法で最も一般的な「生・煮る・焼く」をとりあげ、三地域において出現している魚介類との比較検討を行った。<BR>【方法】<BR> 出現料理7389件(金沢2598件、加賀846件、能登3945件)を調理法別に分類し、「なま物・煮物・焼き物」の調理法に用いられている魚介類をとりあげ検討した。<BR>【結果】<BR> 「なま物・煮物・焼き物」の三調理法で全調理法の77.0%を占めていた。地域別にみると、金沢、加賀、能登の順に高くなり、金沢はこの三調理法以外の調理法が多かった。出現率は煮物、なま物、焼き物の順に高かった。地域別にみると、金沢・加賀は同様の結果であったが能登は、煮物、焼き物、なま物の順であった。年齢別では、なま物は40~70代、特に60代が多く20・30代は少なかった。煮物は各年齢にあまり差がみられないが50・60代が多く、焼き物は20・30代に多く出現していた。三調理法に出現していた魚介類は85種で、なま物は63種、煮物は67種、焼き物は67種であり、そのうち46種が三調理法すべてに出現していた。なま物では、金沢のタラ、ホタルイカ、マグロ、加賀のホッケ、キス、能登のトビウオ、スズキ、煮物では、金沢のサワラ(カジキマグロ)、フグ、加賀のエイ、カワハギ、能登のタコ、焼き物では、金沢のドジョウ、ホッケ、マス、ムツ、加賀のカマス、カレイ、サケ、サンマ、能登のイワシ、タチウオ、タラ、ニギス、メバルなどに出現率に差がみられ、出現料理にも行事に用いられるものもあり差異がみられた。
著者
篠原 久枝 長野 宏子 磯部 由香 秋永 優子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】日本調理科学会特別研究平成24~25年度「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」の聞き書き調査を元に,宮崎県の家庭料理の主菜の特徴を明らかにすることである。<br>【方法】平成24~26年度に県内の8地区11ヶ所の昭和2年~昭和22年生の女性35人を対象に,昭和30~40年代から作られていた家庭料理について聞き書き調査を行い,主菜に分類される料理を抽出し特徴について検討した。<br>【結果】昭和30~40年代は、多くの農家の庭先で鶏が飼われていたが、卵は貴重品であり生で食したり、卵焼きにして弁当のおかずとした。正月や祭り、屋根の吹き替えなどの行事がある時には、鶏をつぶして刺身や煮物、すき焼きにして食された。大ばらし(足分け)までは男性の仕事であった。北部山間部では、豚一匹を使った料理(諸塚村)やアシナガやキイロなどの蜂の子を使った料理(五ヶ瀬町)も見られた。魚介類は地域差が見られ、北部沿岸部(延岡市)では、ぐち、いか、鰯、アジなどが多くとれ、日々の食事に魚を切らすことはなかった。内陸部や山間部では、昭和30年代までは、塩をしていない魚(無塩)は滅多に手に入らず、塩イワシやイワシの丸干しが食されていた。北諸県地区(都城市)では、イワシの丸干しをてんぷらにした「魚んてんぷら」が運動会や田植えのさのぼりの時のご馳走であった。南那珂地区(日南市)ではイワシのすり身に豆腐と黒砂糖を合わせて揚げた「飫肥のてんぷら」が冠婚葬祭の時に食されていた。豆腐は各家庭で作られていたが、東臼杵南部の椎葉村では、焼畑で栽培した大豆を使って、平家カブの葉や藤の花を入れた「菜豆腐」が作られていた。以上より、ひなたの海幸・山幸を活かした主菜が各地区でみられた。
著者
長屋 郁子 小川 宣子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.17, pp.170, 2005

<br><B>目的:</B>日常から地域性を意識した食事をすることで伝統的な日本型食生活が継承され、心が満たされる食生活につながるのではないかと考える。そこで本研究では、地域における伝統的な食生活を把握するため、地域産物や旬の食材を活用した伝統食の伝承が岐阜県の中でも比較的残っている飛騨地域の日常食の特性を調べることを目的とした。<BR><B>方法:</B>調査は地域の特性を地域産物や伝統食の食材料及び調理方法から明らかにするため、日本の伝統的な日常食であるごはん、大豆料理、漬物をとりあげ、飛騨地域の特徴を調べた。調査対象は、飛騨地域の中でも最北部にあり鉱山で発展してきた神岡町の65歳から80歳の男女18名と、北西部に位置し12月から2月にかけての平均気温が神岡町の0.8℃に比べて-0.2℃と低い農山地である白川村の40歳から73歳の男女14名に聞き取り調査を行った。大豆料理は、比較として県庁所在地のある岐阜地域の女性12名にも聞き取り調査を実施した。<BR><B>結果:</B>白川村では日常食のごはんに近隣の山の産物を加えることが多く、栗飯、山菜おこわを食べる家庭がいずれも29%あり、これらは神岡町では食べられていなかった。飛騨地域の大豆料理には、朴葉にのせて焼く朴葉味噌、すがたつまで茹で水分が少ないため保存性が優れているこも豆腐、豆乳を利用したすったて汁といった岐阜地域ではみられない地域特有の調理方法があった。日常的に食べられている漬物は、野菜を切ってから塩で漬ける切り漬が神岡町67%、白川村28%と多かった。また漬物の利用方法として、古くなった切り漬を加熱調理し、煮たくもじや漬物ステーキとして食べる家庭が白川村では神岡町に比べて多く、冬季に漬物を温かくして食べる工夫がみられた。
著者
山田 加奈子 島本 国一 白 ろ 宮崎 直人 吉元 寧 松枝 博明 川邊 清隆 西田 毅 松田 寛子 白井 隆明
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】我々は、カボチャの主要品種である「えびす」のでん粉が果実内で急速に糖化し、食味が変化することを報告している。近年、消費者志向の変化をうけて、粉質感が強い品種の栽培が増えている。8品種のカボチャの貯蔵中の成分変化および嗜好評価をおこない、品種の特性を明らかにすることを目的とした。<br>【方法】北海道の同一圃場で収穫された5品種(えびす、北渡交4号、雪化粧、ジェジェJ、TC2A)および産地より調達した収穫日が既知の3品種(くりゆたか、くり将軍、プリメラ115)のカボチャをそれぞれ10℃および常温で貯蔵したものを試料として用いた。各試料について、収穫直後、1ヶ月または2ヶ月後の固形量や遊離糖組成を分析し、でん粉を抽出してラピッド・ビスコ・アナライザー(RVA)粘度特性などを測定した。また、各貯蔵期間における全ての試料を用い、カット後に蒸煮し冷凍貯蔵した試料を解凍して「パンプキンサラダ」を調製し官能評価をおこなった。<br>【結果】固形量は、経時的に減少し、でん粉の分解と呼吸により水分が増加したと考えられる。一方の遊離糖は、経時的に増加したが、還元糖とショ糖が同時に増加する「えびす」型と還元糖の増加が少なくショ糖を増加する「北渡交4号」型の2タイプが見られた。<br> 抽出でん粉の6%RVA粘度は、「えびす」では、貯蔵により粘度が低下したが、他の品種では、特有の粘度特性を持つが、貯蔵中の変化が小さかった。サラダの嗜好では、貯蔵と共に糖化が進んだ甘いだけ品種よりも、硬さや甘さのバランスが取れた品種の方が評価が高い傾向にあった。
著者
阪中 專二
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成23年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.65, 2011 (Released:2011-08-30)

【目的】カフェインはコーヒーや茶などの嗜好飲料の原料である植物に多く含まれる。強い中枢神経興奮作用を有するカフェインは過剰に摂取すると健康人でも極度の興奮,神経過敏,吐き気,不眠などの作用を引き起こす。カフェインは胎盤を通過したり,母乳中に容易に移行することから妊娠周辺期の女性では過剰の摂取に注意が必要であるとの指摘もある。本研究ではカフェイン含有飲料から,他の成分に影響することなく簡易にカフェインを除去する方法を試験した。 【方法】緑茶の熱水抽出液または緑茶抽出物粉末の溶解液に種々の吸着剤を添加し,抽出液中に残存するカフェイン(CF)と茶ポリフェノール類(エピガロカテキンガレート(EGCg),エピカテキンガレート(ECg))の含量をHPLC分析(Develosil ODS-HG使用)により測定した。吸着剤処理前後のカフェインと茶ポリフェノール類との割合(EGCg /CF)を比較し,効率的な分離を評価した。また,処理後の吸着剤の除去を濾過や遠心分離することなく磁石で簡易に行う方法として吸着剤の磁性化についても試験した。 【結果】試験した吸着剤中,カオリン,酸性白土および活性白土が選択的にカフェインを除去した。これらの吸着剤はいずれもカフェイン残存率が10%以下,EGCg残存率が75%以上であり,選択的なカフェインの除去が可能であった。最も効率的なカフェイン除去効果を示した活性白土を用いて磁性化活性白土を調製し,緑茶抽出液のカフェイン除去を試験した結果,活性白土と同様EGCg/CF割合が約10倍上昇し,90%以上のカフェインを除去することができた。
著者
柘植 光代 大越 ひろ
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

<br><br>【目的】山梨県の2地域について、伝統的な家庭料理の特徴を把握すること及び地域住民が次世代に伝え継ぎたいと考えている料理を明らかにする目的で、生活基盤となる暮らし及び家庭料理の過去と現在の状況について聞き書きとアンケート調査を行った。<br><br>【方法】日本調理科学会特別研究の調査ガイドラインに基づき、2013年と2014年に聞き書き調査を行い、同時にアンケート調査も実施した。南アルプス市(峡西地域)と南部町(峡南地域)に30年以上居住し、家庭の食事作りに携わった16人の女性を調査対象者とした。食料の生産方法と加工・保存方法、日常食と行事食、食の思い出や伝え継ぎたい料理について調査した。<br><br>【結果】南アルプス市は盆地特有の内陸性気候で扇状地であるため米作には不適であるが、日照時間が長いことを活かして、現在は果樹栽培が盛んである。昭和30年代は、主食として米の補食用に麦飯やほうとうを1日1食は作り、副食は野菜、豆、卵、川魚を食べ、菓子、味噌、醤油、菜種油も自家製であった。日常食ではかぼちゃを使った「おしくじり」、行事食としては各種の餅、太巻き寿司、「みみほうとう」、「やこめ」が次世代に伝えたい料理として挙げられた。南部町は静岡県に隣接した県最南端部に位置する。温暖多雨の気候を活かして、茶、たけのこ、生姜等が特産である。昭和30年代は、主食には粉物も利用し、副食には干し魚、野菜を使い、野菜やいもの乾燥品や漬物、味噌、醤油、菜種油も自家製であった。行事食として灌仏会の「おしゃかこごり」、田植えの「新じゃがと真竹の煮物」等を料理した。伝え継ぎたい料理として、特産品を活かした「富沢こわめし」、たけのこの煮物、生姜の佃煮や天ぷら等が挙げられた。
著者
北山 育子 真野 由紀子 中野 つえ子 安田 智子 今井 美和子 澤田 千晴 下山 春香 鎌倉 ミチ子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.20, pp.162, 2008

<BR> 【目的】<BR> 前報では地域性のある米の伝統料理が以前ほど家庭や地域に伝わっていないことを報告した。その伝統料理の伝承をたやさないために、今回は津軽地域と南部地域に伝わる米料理の調理方法や伝承の仕方などを調査した。<BR> 【方法】<BR> 平成18年12月~平成19年1月に青森県在住の調理担当者399人(40~50才代が79.7%)を対象に選択肢法と自記式でアンケート調査を行った。その中から家庭や地域に伝わる米料理についてまとめた。<BR> 【結果】<BR> 津軽地域は津軽平野を有した米作地帯であり、豊富にとれるうるち米のほかに、もち米や米粉を使用した米料理が作られていた。一例としてはうるち米ともち米を使い、たっぷりの砂糖を入れた太巻き寿司、米粉と砂糖を練ってかまぼこ形にしたお菓子のうんぺいなどがあった。干し餅は寒さの厳しい冬に寒気を利用して切り餅を乾かして作られるこの地方独特のものである。また、沿岸地方ではコンブの若芽で包んだ若生(わかおい)おにぎりなどがあった。南部地域はヤマセのために稲作に厳しい土地柄で、昭和の中頃までは雑穀や粉食が多かった。そのため、米の不足を補うためにかぼちゃを加えて食されていたかぼちゃ粥が今も作られていた。また、ウニやアワビを使った炊き込みご飯や茹でた長芋とごはんを混ぜた味噌餅などがあった。カワラケツメイ(マメ科の一年草)を乾燥して作るお茶を使った茶粥は上北郡野辺地町独特の料理である。米料理の多くは母親、祖母、義母(姑)から教わっており、家庭における世代間で伝承されていた。その他に地元や近所の人など、地域の交流が伝統料理の伝承の場として大切になってきている。
著者
大須賀 彰子 大越 ひろ 茂木 美智子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.19, pp.26, 2007

<BR><B>【目的】</B><BR> 既報では、千葉県内を調査地とし、すしの利用において種類や具材等に地域差や特徴があることを報告した<SUP>1)</SUP>。本報告では、手作りのすしを使う割合が高かった内陸部と低かった都市部に限定し、食生活におけるすしの位置づけを、年齢層の差として把握することを目的とした。調査地域に10年以上在住する15~40歳、41~64歳、65歳以上の女性を対象にアンケート調査を行い、分析した。<BR><B>【方法】</B><BR> アンケートは既報に準じ、自己記入式の用紙を各地域で配布し、その場で回収をした。調査時期は平成18年6月~10月、調査対象は都市部・内陸部に10年以上在住する15~40歳 (91名・41名)、41~64歳 (79名・164名)、65歳以上 (37名・71名)と、3セグメントの年齢区分を行った。分析項目はすしの嗜好・印象、食生活におけるすしの利用とし、各セグメントの比較を行った。<BR><B>【結果】</B><BR> すしは年齢に関係なく好まれていることが確認され、年齢が高くなるに従い、すしという料理へのごちそう感が強くなる傾向を示した。家で作るすしは、地域に関係なく、年齢が上がるに従い、手間のかかるすしが多く回答され、年齢が低くなるに従い、手軽に作れる形態のすしが多くなった。手間のかかるすしとしては都市部で散らしずし、内陸部では太巻きずしが挙がり、地域差もみられた。すしの作り方は年齢に関係なく、母親からの伝承が多かった。すしを購入する場所は、都市部では、年齢が上がるに従い、すし専門店とデパートの食品売り場が多く回答され、内陸部では、年齢に関係なく、すし専門店とスーパーマーケットの回答が多く、地域・年齢による違いがみられた。<BR>1)日本家政学会第59回大会研究発表要旨集 P.156(2007)
著者
河野 由香里 赤石 記子 長尾 慶子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

<b>[目的] </b>ホワイトソルガムはグルテンを含まないために、グルテンフリー食品としての利用が期待される。我々はホワイトソルガムの基礎研究として、糊化特性や調理特性を明らかにしてきたが、今回は得られた知見をもとに実際の調理への応用適性を検討することにし、バッター状食品の応用例としてクレープとフライ衣を、ドウ状食品の応用例として揚げドウを想定し、嗜好性、外観および物性面から小麦粉製品の代替適性を検討した。<br><b>[方法]</b> 揚げドウは、粉、BP、砂糖、水を基本材料とし、予備実験からホワイトソルガム粉ドウの適性加水量を小麦粉の150%と決定し、揚げドウにした場合の吸油率・脱水率を測定比較した。また膨化を改善するためにアルカリ水(pH約9)を使用した揚げドウの比容積、破断強度、色差測定および官能評価を実施した。クレープは粉、砂糖、水を基本材料とし、バッター生地を調製直後2時間以上放置後に焼成した。カツレツ試料の衣に用いるバッターも同様に調製し、製品の官能評価及び破断試験を実施した。<br><b>[結果]</b> ホワイトソルガム粉で調製した揚げドウは、吸油率が約9%(小麦粉約15%)、脱水率が約35%(小麦粉約30%)と軽くてヘルシーな揚げ物が得られた。また、アルカリ水と重曹の使用によりホワイトソルガム粉の膨化の悪さが有意に改善されたが、脆さと色差が増した。薄力粉バッターの粘度が調製30分後まででピークに達するのに対し、ホワイトソルガム粉バッターの粘度は、放置時間とともに上昇する傾向にあったことより、ホワイトソルガム粉でつくる食品は、調整後の放置時間が必要不可欠であることが明らかにされた。ソルガムは淡白な味なので副材料や調味料の工夫で嗜好性の向上が期待できる。
著者
南 舞 星野 亜由美 飯田 文子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】牛肉は産地、飼料等の違いで肉質や食味特性が異なる。中でも黒毛和種は他品種に比べ良い風味を持ち、それらが食味評価に強く寄与していることが明らかとなっている。しかし、官能評価の香りと香気成分との関連性をみることは困難であるため、本研究では的確で詳細に香り特性を捉えるパネリスト育成方法確立を目的とした。<br><br>【方法】1種の香気成分を用いた牛肉の香り識別訓練と、2種の似た香りとされる香気成分を用いた応用識別訓練を行った。各試料には、黒毛和種の香気成分として同定されている中から代表として、γ-Nonalactone, γ-Dodecanolactone, 2,5-Dimethylpyrazine, 2-ethyl-3,5-Dimethylpyrazine等計10種を用いた。2:5点試験法を行い、2回正解したものを合格とした。併せて、香りの言葉出しも行った。また、訓練前と、訓練後に行った官能評価における用語数を比較し、訓練効果を検証した。<br><br>【結果】牛肉の香り識別訓練では、パネリスト間の合格への過程が異なり、既知の閾値とは関係なく、パネリスト間での差が示唆された。また、訓練の言葉出しでは、γ-Nonalactoneはココナッツ様・桃様・杏仁様の香り、γ-Dodecanolactoneは桃様・パイナップル様・バター様の香り等10種類の香気成分のそれぞれに特有な用語が挙げられた。また、応用識別訓練では表現用語の統一性がより顕著になった。実際の黒毛和種官能評価の香りの言葉出しでは、抽象的であった用語が減り、より具体的な用語が増えた。以上、これら訓練方法は、香りを適格に評価できるパネリスト育成に有効であることが示された。
著者
中山 優子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】日本人の平均寿命は男性79.59歳、女性86.35歳と世界一位を維持し、出生率の低下も続いており急速に人口高齢化が進んでいる。人口高齢化に伴い摂食・嚥下障害の人も増える事が予測される。摂食機能が低下した高齢者が口から安全に美味しく食べることは栄養管理として重要な要因である。そこで、本実験では、摂食機能におうじて展開された献立と具材料のテクスチャ特性の硬さ、凝集性、付着性の3つの要素から調査したので報告する。【方法】1.食べる人の摂食機能に対応した食事の形態区分、調理形態の分類を4段階に示した 2.テクスチャー測定は、クリープメーター自動解析装置(山電CA-3305)を用いた。測定方法は、厚生労働省が示した高齢者用食品の試験方法に従った。 3.分析方法は、硬さ、凝集性、付着性それぞれの区分ごとに行った。【結果】段階的に展開した献立例は、主食1例、主菜3例、副菜2例、間食2例の合計8献立。食形態区分は、Ⅰの普通軟らか食、Ⅱの軟らか一口大食、Ⅲの軟らか刻み食、Ⅳのペースト・とろみ食からなる。硬さは、Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ.Ⅳへと展開することで軟らかくなった。また、献立の具材料の単品食材では硬さの差が大きく、複合することで軟らかい値となった。付着性および凝集性が大きい値の献立は単品食材を複合することで、口の中でまとめ易い食形態になる。付着性が小さく、凝集性が大きい値の献立は単品食材を複合することで、滑らかで喉ごしが良い食形態になる。【考察】摂食・嚥下が困難な食材であっても、食材の組み合わせ、形態、調理方法を工夫することで、摂食機能に応じた献立として活用可能になると考える。
著者
湯浅 正洋 田川 夕映奈 冨永 美穂子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.61, 2017 (Released:2017-08-31)

【背景】アルギン酸ナトリウムとカルシウムのイオン架橋により生じる球状のゲルは分子キャビアと呼ばれ、欧米諸国では様々な料理に利用されている。一方、わが国では人工イクラが分子キャビアの具体例として挙げられるが、和食へはほとんど応用されていない。そこで演者らは、分子キャビアの和食への応用を目的とし、和風の調味料の中でも汎用性の高い「めんつゆ」を用いた「めんつゆキャビア」を開発した。本研究では、めんつゆキャビアの実用化を目指し、キャビアの物性に及ぼす影響とその嗜好性を明らかにした。【方法】めんつゆは塩分濃度の異なる4種類の市販品を用いた。各めんつゆに対し約1%(w/w)重量のアルギン酸ナトリウムを溶解し、約5%(w/w)乳酸カルシウム溶液に滴下することで、めんつゆキャビアを調製した。調製後の時間経過がキャビアに及ぼす影響を明らかにするために、調製後60分までの破断解析を行った。また、調製後の時間経過の異なるキャビアを用いて、女子大学生30名による官能検査を行い、嗜好性を評価した。【結果・考察】4種類のめんつゆキャビアの破断荷重は、どれも調製後の時間経過に伴い高値を示した。時間経過に関わらず、塩分濃度の低いキャビアの方が破断荷重が高値を示した。そこで、用いためんつゆと同程度の濃度の食塩水キャビアの破断解析を行ったところ、食塩濃度が低い方が破断荷重が高値を示した。このように、キャビアの硬さには調製後の時間経過と塩分濃度が影響することが明らかになった。一方、調製後の時間経過の異なるめんつゆキャビア0、15、30分の嗜好性を評価したところ、「食感の好み」および「総合評価」は調製後の時間が短い方がより好まれた。以上より、めんつゆキャビアを料理として供する場合、調整後15分以内のものが適していることが示唆された。
著者
川上 栄子 森下 紗帆
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.28, 2016

<br><br><b>【目的】</b>日本の食文化において緑茶は欠かすことのできないものであり、最近では、緑茶が健康に及ぼす好効果も評価されている。また、静岡県では日本有数な緑茶の産地として有名であるが、急須で入れる緑茶(リーフ)を飲む習慣が薄れ、家庭でもペットボトル緑茶が飲まれている現状がある。そこで、その実態を明らかにするために、緑茶離れが進んでいる大学生を対象にアンケートを行なった。<br><br><b>【対象及び方法】</b>本調査は、2015年6月~12月の間に、授業において説明の上、同意が得られた学生に対して、自己記入アンケート形式で行われた。対象者は、H市内の2校に通う大学生213名で、その内訳はT大学169名(女98名、男71名)、S大学44名(女35名、男9名)である。アンケート調査は4項目とした。質問内容は属性、各食事の主食の内容、各食事における1日の飲料の種類及び量、1日の食事以外に飲む飲料の種類及び量である。統計分析はSPSS(ver.20)により行なった。有意水準は5%とした。<br><br><b>【結果】</b>対象者の年齢、体形、居住状況は以下の通りであった。T大学の平均年齢は19.8歳、S大学は20.0歳。T大学の自己申告の体形が、やせ22名(13%)、普通123名(72.8%)、肥満24名(14.2%)。S大学はやせ3名(6.8%)、普通29名(65.9%)、肥満12名(27.3%)であった。また。T大学の居住状況は単身62名(36.7%)、核家族82名(49.1%)、3世帯同居24名(14.2%)。S大学は単身16名(36.4%)、核家族19名(43.2%)、3世帯同居9名(20.4%)であった。2大学間の属性に大きな差異がなかったため213名の調査結果をまとめた結果、朝食時では緑茶(リーフ)が16.4%、ペットボトル緑茶が15.5%であり、昼食時では緑茶(リーフ)が12.7%、ペットボトル緑茶が37.1%で、夕食時は、緑茶(リーフ)が21.6%、ペットボトル緑茶が18.3%という結果であった。<br><br><b>【結論】</b>緑茶は、昼食時では緑茶(リーフ)よりペットボトル緑茶が飲まれている。朝食時と夕食時においては、ペットボトル緑茶より緑茶(リーフ)が飲まれていることがわかった。
著者
山崎 貴子 伊藤 直子 岩森 大 堀田 康雄 村山 篤子 古田 和浩 金子 慶子 田中 照也
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 創立40周年日本調理科学会平成19年度大会
巻号頁・発行日
pp.105, 2007 (Released:2007-08-30)

【目的】 硬さのために食用としての利用度が低い牛肉の部位について低温スチーミング調理により軟らかく食べやすくなることを報告した。一方、食肉の軟化としてキウイ、パパイヤやショウガなどのプロテアーゼの利用による報告もある。低温スチーミング調理は任意の温度管理が容易のため、種々の内在性および外から添加した酵素を最大限利用することができることが特徴である。そこで、低温スチーミング調理とキノコのプロテアーゼを併用した食肉軟化について検討した。 【方法】 キノコにはカゼイン分解活性の高かったマイタケを用いた。マイタケに2倍量の水を加えてろ過したものを抽出液として牛肉とともに加熱した。比較として、マイタケ抽出液のかわりに水、ショウガ抽出液を用いたものについても同様に行い、加熱後溶出したペプチド・アミノ酸量、遊離グルタミン酸量、肉の物性測定および官能検査により評価した。さらに低温スチーミング調理による効果をみるため、70℃2hスチーミングしたものと茹で10分加熱したものを比較した。 【結果】 肉をマイタケ抽出液とともに加熱すると、水やショウガ抽出液とともに加熱した場合より、溶出したペプチド・アミノ酸量、グルタミン酸量が多かった。また物性測定、官能評価の結果でも肉が軟らかくなっていた。スチーミングしたものと茹でたものではスチーミングしたものの方が全体的に評価が高く、特にマイタケ抽出液とともに低温スチーミングをした肉について高い評価が得られた。
著者
杉山 寿美 平岡 美紀 大重 友佳 石永 正隆
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 創立40周年日本調理科学会平成19年度大会
巻号頁・発行日
pp.107, 2007 (Released:2007-08-30)

【目的】 結合組織蛋白質コラーゲンは三重らせん部位とテロペプタイド部位で構成,食肉の硬さを決定している。我々は生姜プロテアーゼがコラーゲン繊維の構造が緩む条件下でテロペプタイド部位のみに作用することを報告している。このことは生姜搾汁が生肉の筋繊維を分解する一方でコラーゲン繊維を分解せず「すじ」が残ることを示している。本研究は新調理システムでの食肉蛋白質の変化を把握・利用し,生姜搾汁でコラーゲンを分解,食肉を軟化することを目的とした。 【方法】 鶏もも肉は中心温度75℃までオーブンで加熱した。その後,65℃の温湿蔵庫で保存したもの,急速冷却し再加熱したもの,生姜搾汁を加熱前後で添加したものを試料とした。コラーゲンは酸可溶性コラーゲン:ASC,ペプシン可溶化コラーゲン:PSC,不溶性コラーゲン:ISCとして抽出し,定量した。剪断強度はかみそり刃を装着したレオメーターで筋線維に垂直方向で測定した。 【結果】 加熱により総コラーゲン量は減少しゼラチン化が認められたが,ISC量は増加しコラーゲン繊維の収縮が推察された。加熱肉のISC量は冷却保存・再加熱したもののISC量と同程度であったが,温蔵したものでは著しく減少した。生姜搾汁を加熱後(温蔵前)に添加した場合は,総コラーゲン量,ISC量が著しく減少した。これは収縮したコラーゲン繊維がゼラチン化するとともに,構造弛緩に伴いプロテアーゼが作用した結果であると考えられた。この総コラーゲン量,ISC量の減少と剪断強度の低下,官能評価の結果は一致していた。すなわち,温蔵中のコラーゲンの構造変化とプロテアーゼ作用を利用することで,噛み切りやすい鶏肉が調製されることが示された。