著者
矢田 勉
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

今年度は東京大学史料編纂所に所蔵される古文書影写本のうち、青方文書・阿蘇文書・市河文書・留守文書について調査した。また京都府立総合資料館には二度、のべ六日調査に赴き、東寺百合文書を中心に調査を行った。その他写真等の公刊されている文書についても若干の調査を行い、それにより平安時代から室町時代末期にかけての平仮名文書一二七通について釈文及び仮名字体表を作成し、またその一部を写真撮影することができた。それにより得られたデータを総合することで、平安時代から室町時代末にかけて、頻用の平仮名字体がどう変化してきたか、また平仮名体系の持つ字種のバリエーションの総体がどう変化してきたかについてアウトラインを明らかにするに至っている。今後、中世文書の更に広汎な調査(殊に東大寺文書、他地方の文書)と近世文書の調査を行い、また今回の研究で明らかになりつつある平仮名字体変遷史を書記史の原理という観点からどう位置づけるかの考察を加えることが課題である。また、今回の研究の過程で、前近代日本の文字教育に大きな役割を果たした平仮名書いろは歌に見える平仮名字体が中世平仮名文書の平仮名字体体系と密接な関係にあること、また平仮名書記について、平安時代と鎌倉時代の間には踊り字の用法を指標として大きな転換期があること、そしてその転換が異体がなの使い分けの発生の原因となった事が分かった。それぞれ今年度、論文として発表したものである。
著者
鈴木 基之 迫田 章義 藤江 幸一 花木 啓祐 黒田 正和 梶内 俊夫 岡田 光正
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

本研究は、使用水のリサイクル推進が、異なる局面で招く恐れのある処理設備および資源・エネルギー消費の増大を定量的に解析し、トータルな環境負荷を増大させない効率的な水再利用プロセス像を明らかにするとともに、そのための今後の技術開発の方向に関して提言を行うことを目的としている。水多消費型の主要産業に対してその排水量・排水性状、現状処理方法、処理水質、リサイクル状況およびエネルギー消費などについて調査を実施した。この調査結果に基づいて、排水および処理水の水質、処理方法と所要エネルギーの関係を示し、エネルギー消費の観点から今後のCOD削減、すなわち処理水質向上目標の設定および処理プロセスの選択のための指針を提案した。生活・事務系排水の循環利用状況の調査結果をもとに、各排水処理システムの設計条件と製造コストを検討し、水の処理レベルと再生水の用途、単位操作の組み合わせ方法とエネルギー消費との関係を解析した。中水道用の水処理プロセスに対して二酸化炭素排出量を指標にライフサイクルアセスメントを行い、膜分離方式は設置面積が小さく、処理水質が優れているが、建設時と運用時の環境負荷が大きいことが定量的に明らかになった。雨水利用についても、ある実例についてその業績を詳細に検討し、処理コストとエネルギー消費の解析を行うとともに、大規模建築物における雨水の利用における水のバランスなどを検討した。加えて、最も広く利用されている好気性生物処理法や、今後導入が期待される生物活性炭処理法と膜分離法などについて、その処理対象物質および処理最適濃度・到達できる処理水質・所要エネルギーとコストについて定量的評価を行い、エネルギー効率を向上できる操作条件を示した。さらに、既存の窒素・リン除去技術の適用範囲、処理能力とエネルギー消費特性を明らかにし、最適な窒素・リン除去方式を選択するため基礎データが得られた。
著者
齋藤 幹久
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、構造物への着雷様相を観測することを目的として行われた。構造物への着雷様相の観測は送電線や風力発電用風車の耐雷設計の他、避雷針の保護範囲等の検討を行うために大変重要であるが、雷は何時何処に落ちるか判らないため、近年高速度カメラが発達してくる以前は、観測する事が大変難しかった。上記の目的のために、本研究では、高速度カメラを用いた東京スカイツリーへの着雷様相の観測を行った。2013年12月までに11例の雷放電が観測され、その多くは耐雷設計上最も重要である下向き落雷であった。
著者
平原 衣梨
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本年度は、π共役系有機配位子の自己組織化を利用した新規集積型白金錯体の開発に取り組み、二色性の色変化を伴う熱相転移挙動について調査した。分子設計においては、剛直なπディスク状ユニットであるトリフェニレン(TP)がカラム集積しやすい性質に着眼し、金属配位能を付与したTP配位子を開発した。これを同じく平面性の高い配位様式を好む二価Ptイオンと反応させ、白金二核TP錯体を得た。この錯体はアセトニトリルに溶解してオレンジ色、固体粉末においては深青色を呈する。ところが、室温で単離したこの深青色粉末を加熱すると、昇温過程175℃付近で相転移するとともに赤色粉末へと変化する。このとき深青色の相では、錯体はある程度スタックしながら凝集した状態であるのに対し、この赤色に呈色した第二の相ではより高度な結晶性を獲得し、対称性の高いスクエア型のナノ粒子化することが明らかになった。さらに、この赤色粉末は乳鉢で擦るといった力学的負荷をかけることで、初期の深青色へ戻る。つまり、熱および圧力という外的な物理刺激に応答して二つの準安定相を往復し、各相がそれぞれ異なる発色をもつことによってそのダイナミクスを目で見て知ることが可能な系といえる。また発光スペクトルにおいては、第一相(深青色)では無発光であるのに対し、第二相(赤色)では680nm付近にMMLCT(金属-金属/配位子間電荷移動)遷移由来と考えられる強い発光が確認できており、Pt-Pt間結合の形成を強く支持している。このように、ある次元性を有する集積構造制御しながら、バルク固体にも関わらず外部刺激に応答した可逆かつ動的ふるまいをみせる材料は非常に稀少であり有用性が高い。π共役系有機分子の制御性を導入することで、固体無機材料に潜在する多彩な物性をより高度に操作できれば、今後の新規材料開発に大きく貢献できるものと思われる。
著者
加我 君孝 狩野 章太郎 伊藤 健 山岨 達也
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

(1)対象の選定東京芸術大学音楽部の学生のうち絶対音感を持つ学生と東京大学医学部の絶対音感を持たない学生を対象とした。被験者の聴覚中枢のどこが関係するかを解剖学的に明らかにすべく、脳のMEGで調べた。(2)方法音源定位については聴覚心理学的には、a.頭蓋内の音像が正中よりのずれの程度の認知を調べる音源定位法と、b.左右45度づつの範囲内にスピーカーを10度おきに配置して調べる音源定位法、c.バイオーラルステレオ録音を行い、音像移動法の3つについて改良を加えて用いた。aについてはリオン社製の旧式モデルを改良した。bとcについてはコンピュータ処理する方法を開発した。すでに脳磁図は東大病院検査部にあるフィンランド製のWhole head型を用いて、双極子の位置を調べた。脳の解剖と機能の両方から調べた。(3)結果1)絶対音感を持つ被験者の方向感も音源定位も非絶対音感者に比べ有意に域値が低いことがわかった。2)MEGでは絶対音感者は左右の側頭平面のより限局した部分に聴覚中枢が限局していることがわかった。
著者
近藤 成一 海老澤 衷 稲葉 伸道 本多 博之 柳原 敏昭 遠藤 基郎 渡邉 正男 鴨川 達夫 金子 拓 西田 友広 遠藤 珠紀 山田 太造 神野 潔 野村 朋弘 岡本 隆明 アドルフソン ミカエル
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

1600年以前の日本の古文書に関する諸情報を共有し、文書名の付与や年代比定などの基礎作業を共同で行う「古文書バーチャルラボ」を構築した。「古文書バーチャルラボ」の運用により、史料編纂所歴史情報システム上の古文書に関するデータを修正・追加することを試行し、また古文書学上の研究成果については公開研究会において発表した。また『鎌倉遺文』未収録の文書数について検討した。以上の内容を報告書にまとめ、「東京大学史料編纂所研究成果報告2012-4」として刊行した。
著者
上田 和夫 堀田 貴嗣 榊原 俊郎 三宅 和正 播磨 尚朝 横谷 尚睦 籐 秀樹 石田 憲二
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2008-11-13

新学術領域研究「重い電子系の形成と秩序化」(平成20年度から平成24年度)の最終年度の研究成果について、公表された論文リストおよび国内学会あるいは国際学会等における発表について取りまとめを行った。これらの基礎データに加え、研究活動報告、特許出願状況などを加え、冊子体の成果報告書をまとめ印刷した。この成果報告書は当新学術領域研究の計画研究代表者、研究分担者、公募研究代表者に配布したほか、関連研究分野の有識者にも見ていただけるよう送付した。この冊子体については正式の成果報告書として6月に文科省に提出する予定である。当新学術領域研究のホームページhttp://www.heavy-electrons.jpに関しては、上記の論文リスト、学会発表等のデータを含むよう更新した。重い電子系に関する研究は今後もさらに発展していくことが期待される。それに資することが出来るように、研究期間終了後もホームページを閲覧できる状態にして研究成果の公開を継続する体制を整えた。当新学術領域研究の研究テーマと密接に関連する強相関電子系国際会議は平成25年8月5日から9日まで東京大学伊藤国際研究センターにおいて開催された。この会議の参加者は809名に上った。4つの基調報告を含む46件の招待講演、52件の口頭発表が伊藤謝恩ホールを主会場とし経済学部赤門総合研究棟の大講義室を第二会場として、パラレルセッションで講演が行われた。口頭発表のほか、639件のポスター発表が行われた。当新学術領域研究での研究成果が多数報告された。
著者
豊川 智之
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

目的検診受診者の受診時におけるHCV及びその治療や検診に関する知識、不安などについて明らかにすることを目的とした。方法調査は2005年11月から2006年11月に、調査協力の得られた関東H市のHCV検診で行った。自記式調査票により属性(性・年齢・職業など)、C型肝炎に関する知識、および検診結果やC型肝炎の進行想定下での効用値などについて調べた。C型肝炎に関する6健康状態の効用値は、Visual Analog Scale(VAS)を用いて測定した。結果HCV検診受診者1,047名のうち、調査への参加に同意し、性・年齢で欠損データのない503名を分析対象者とした。C型肝炎の知識に関する正答率は「年齢が高い人ほど感染者が多い」19.5%、「昔うけた大きな手術には感染の恐れがある」58.5%、「長期間の血液透析には感染の恐れがある」33.7%、「ボディピアスや入れ墨には感染の恐れがある」29.9%、「現在、輸血による感染の恐れはほとんどない」23.0%であった。各肝炎状態に対するVASによる評価を平均値で示すと、現在の健康状態が76.3(SD;16.1)、陰性結果による安心感84.3(SD;16.5)、陽性結果に対する不安感35.6(SD;24.2)、軽度の肝炎状態33.8(SD;23.4)、重度の肝硬変状態19。1(SD;21.0)、副作用状態25.8(SD;23.0)であった。考察・まとめC型肝炎に関する知識を問う問題の正答率から、リスクへの知識が十分に高い者が検診を受けているとは考えにくい。各肝炎状態に対するVASによる評価を見ると、陽性結果に対しては、強いショックを受けることが示された。肝炎の進行に伴い、生活の質が大きく落ち、副作用に対しても、生活の質に対する影響が強いと推定することが示された。
著者
岡 良隆 赤染 康久 神田 真司
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008-04-08

我々は、脳内のGnRH1、GnRH2、GnRH3ニューロンのそれぞれが特異的にGFPを発現する遺伝子組換メダカを作り、それらを生きたまま可視化した。神経回路を保ったままの丸ごとの脳をin vitroに保ち、顕微鏡下で単一のGFP標識GnRHニューロンからの自発的な神経活動や神経修飾・伝達物質に対する神経応答を記録することにより、それらの機能を生理学的に解析した。また、脳下垂体からの生殖腺刺激ホルモン放出をモニターできるような遺伝子改変動物を作成してホルモン放出の調節機構を解析した。これにより、進化の過程で多様な機能をもつに至った、GnRHペプチド神経系の機能に関する理解が飛躍的に深まった。
著者
平井 上総
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究は、日本の中世と近世を分かつ兵農分離という概念について、社会の実態や政策理念などの多角的視野から再検討することによって、中世から近世への移行を捉え直すことを目的としている。本年度は、豊臣政権期に成立する大名権力の法が、上位権力との関係や在地との関係などにどれだけ規定されているのかを解明することを目的としていた。まずは太閤検地について、検地条目と呼ばれる法の条文・運用実態を、検地の負担構造解明という視点から検討し、豊臣政権によって取立てられた新規大名が統一政権の方法を真似る形で統治を行なっていたことをあらためて確認した。また、新規大名には統治にあたり統一政権を参考とする傾向があり、統一政権側も安定した統治のためにそれを望んでいたものとみた。新規大名の中には自身の家臣に対して同様に統治の基本方針を示す者もおり、そうした構造が近世的支配構造の展開を進めていったといえる。一方、従来からの大名は独自の支配を展開することが多く、それに対する統一政権側からの対応も一定しない。これは取次関係による指南の有無や、軍役勤仕の度合いによるものとみられる。以上から、統一政権が画一的支配構造を全国に強制する意図をもっていたとはいえず、近世諸藩にみられる支配の多様性は豊臣期の影響が大きかったものとみた。これらの点については、次年度に研究報告を行なう予定である。本年度は他に、織田権力期の和泉国の支配構造について、織田権力が現地勢力(守護代権力)にかなりの部分を委ねていたこと、天正八年の大坂本願寺との講和以後に支配構造の転換が図られたことなどを明らかにした。
著者
尾上 陽介
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

藤原定家の日記『明月記』原本の復元を目指し、各地に大量に存在する明治期以降の古美術品売立目録を網羅的に調査し、細かく切断された原本断簡などの定家関係資料を蒐集し、従来の原本一覧を増補・改訂するとともに、新たに判明した『明月記』逸文については翻刻した。また、陽明文庫などに所蔵される『明月記』原本から剥離された紙背文書についても調査し、撮影した画像を研究成果報告書で公開した。
著者
柴山 充弘 伊藤 耕三 遠藤 仁
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

高分子ダイナミクスの強力な測定手段である光子相関法を中心とし、小角中性子散乱、中性子スピンエコー測定(スピン相関法)を相補的に使用して高分子ゲルを対象とした高分子凝縮系ダイナミクス物理の構築・展開を目指した研究を遂行した。
著者
磯貝 明 木村 聡 岩田 忠久 和田 昌久 五十嵐 圭日子 齋藤 継之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009-05-11

結晶性ミクロフィブリルを有する構造多糖のセルロースおよびキチン、貯蔵多糖のカードランについて従来型および新規TEMPO触媒酸化を適用し、反応条件と酸化多糖の化学構造、ナノ構造、分子量変化を明らかにするとともに、新たな酸化機構を見出した。得られたバイオ系ナノフィブリル表面を位置選択的に高効率で改質する方法を検討し、生分解性のスイッチ機能付与、親水性から疎水性へのスイッチ機能付与方法を構築した。得られたバイオ系ナノフィブリルから各種複合材料を調製して構造および特性を検討し、軽量高強度化、ガスバリア性・選択分離性、重金属捕捉機能、透明導電性など、新規バイオ系ナノ材料として優れた特性を見出した。
著者
稲垣 奈都子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

多様性の高いゲノムを有するエイズウイルスの中で比較的保存性が高いゲノム領域にコードされるGagカプシドタンパク(CA)の構造上の制約を知ることは、ワクチン抗原デザインや抗HIV薬開発に有用である。私は細胞傷害性Tリンパ球の認識に影響するCAの1アミノ酸置換を有する変異体の解析を行い、CAのN末端ドメイン内のある1アミノ酸とC末端ドメイン内の1アミノ酸の相互作用がウイルス複製に重要であることをin vitroおよびin vivoの両視点から明らかにした。具体的には、今年度は、構造的な相互作用を探るため、現時点で報告されているHIV-1のCA構造を基にSIV CAの構造シミュレーション解析を行った。Gag205はGagがコードするCA内のNTDに位置するのに対し、今回新たに見出された代償性変異Gag340はCAのCTDに位置しておりCA六量体構造シミュレーション解析により両者のアミノ酸の分子間相互作用が示唆された。更にin vitro core stability assayを用いてCAコアの安定性を検討したところGagD205E変異によりコアの安定性が低下し、GagV340M追加変異により回復することが示され、CA六量体での分子間相互作用を支持する結果が得られた。また、MHC-Iハプロタイプ90-120-Ia陽性サルのSIVmac239感染慢性期に、GagD205E+GagV340M変異が選択されることを見出した。培養細胞でのSIVmac239Gag205E継代実験でGag205Eから野生型のGag205Dに戻るのではなくGagV340Mの追加変異の出現を認めたが、同様にサル個体においてもGagD205E+V340Mが選択された。このことは、Gag205D-Gag340VおよびGag205E-Gag340Mの相互作用の存在、つまりCANTDのGag205番目とCA CTDのGag340番目間に機能的相互作用の存在が示唆された。本研究は、CAドメイン間の機能的相互作用のための構造上の制約を提示するものである。
著者
高田 康民
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

通常のグリーン関数法と密度汎関数超伝導理論(SCDFT)との対応を考え、SCDFTにおける対形成ポテンシャルの新汎関数形を構成し、それを用いて擬クーロンポテンシャルの決定を含めて超伝導転移温度を第一原理的に計算する枠組みを提案した。また、それをグラファイト層間化合物に適用し、その超伝導機構を明確にした。さらに、この物質系も含めて、高温超伝導体合成に向けて理論的観点から思索し、強いフォノン媒介引力とクーロン斥力との相殺系の重要性を示唆した。
著者
手嶋 政廣 鈴木 誠司 木舟 正 永野 元彦 林田 直明
出版者
東京大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1992

宇宙線のエネルギースペクトルが10^<20>eVまで延びていることは実験的に知られている。これらの宇宙線の起源は銀河系外であると考えられているが、既存の天体での粒子加速により説明するのは容易ではない。これらの宇宙線の起源の特定には、精度良い宇宙線のエネルギー測定とその粒子同定が重要である。現在稼動している検出器では粒子同定ははなはだ困難であり、将来の検出器としてはこの識別能力を持つ必要がある。宇宙線が大気に入ってくると、大気原子核と衝突し多数の二次粒子を生成する、この現象を空気シャワー現象という。この空気シャワーの最大発達の位置X_<max>が親の粒子同定に有効であることを米国Fly's Eyeの実験は示した。さらに高分解能の装置による測定によりよい実り多い結果が期待できる。日本の宇宙線研究所を中心とする我々のグループは、さらに高分解能の撮像システムからなる。Telescope Arrayを計画している。本試験研究では、Telescope Array計画に必要とされる高分解能の空気シャワーシンチレーション光撮像装置の開発研究を行った。この撮像装置のデバイスとして64チャンネルマルチアノード浜松ホトニクスと共同で開発を行ない、当初の目標としていた仕様を満たすことができた。
著者
吉田 豊信 神原 淳 田中 康規 澁田 靖
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009

ウエーハ等価薄膜太陽電池製造を可能とする次世代シーメンス法開発に向け,製造装置や安全性も考慮したプロセスの低コスト化等の技術開発研究と,成膜前駆体としてのクラスターの成長・堆積過程の解明や励起水素原子密度の絶対計測等の学術研究との融合知を礎としたシリコン膜堆積の系統的実験により,シーメンス法の速度論的限界を超えた高歩留まり超高速エピ堆積を実証するとともに,メゾプラズマCVD法の特徴を明確化した。
著者
武田 弘資 野口 拓也
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

口腔領域の悪性腫瘍の大半を占める口腔扁平上皮癌については、診断ならびに治療法が着実に進歩しているものの、癌細胞の悪性度や抗癌剤に対する感受性などの多様性がいまだに治療の大きな障壁となっている。また、発癌機構についても不明な点が多く残されている。われわれは本研究において、ノックアウトマウスならびにマウス由来培養細胞を用いた解析により、新規ストレス応答キナーゼASK2が癌の抑制に働く機構を明らかにした。
著者
福田 桃子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究課題の採用最終年度となる本年は、プルーストと19世紀から世紀転換期の作家たちとの間テクスト性の研究を中心に据えた。アナトール・フランスは、若き日のプルーストにとって最愛の作家であり、『ジャン・サントゥイユ』『失われた時を求めて』における作家・芸術家像に投影されるとともに、その美学にも多くの共通点が見られる。パリの家庭で女中を雇うことは、言語、服装、料理、信仰などを介してパリに田舎を見出すことであるが、これはアナトール・フランスの作品に度々登場する女中の役割とも重なっている。これまで論じられることが少なかった影響関係について研究をすすめるなかで、プルーストが女中の言語を称揚するアナトール・フランスの美学に共感を寄せつつも(『失われた時を求めて』において、主人公がベルゴットの作品に共鳴するのは女中の描写を通してである)、パリという土地および時代の変化を通してこうした「美」が破壊される過程を描き、アナトール・フランスのユートピア的な価値観を乗り越える過程が明らかになった(論文3)。土地を介した貴族との呼応という点に関しては、バルベー・ドールヴィイの諸作品がとりわけ重要な参照項となった。「聖女」と「女中」のアナロジーについては、ユイスマンス『大伽藍』およびフロベール『純な心』との比較検討をおこなった。これまで数多のテーマ研究が示してきたように、プルーストは、文学史および同時代のコンテクストや常套句を作品に採り入れる手法の独創性と視野の広さにおいて特異な作家であった。今後も文学史が編み上げた「女中」という主題系の整理・検証と作品読解を相互補完的に行うことで、作家の文学的素地をなす諸作品を新たな視座のもとにとらえ、作家が19世紀および世紀転換期の文学に何を負い、いかにして独自の小説美学を構築するに至ったのかを詳らかにすることを目指したい。
著者
経塚 淳子
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2009

本研究では、イネの花序形成においてメリステムの相転換を制御する遺伝子ネットワークに関する知見を得ることを目的とした。シロイヌナズナUFOのオーソログABERRANT PANICLE ORGANIZATION1 (AP01)は、UF0とは逆に、花メリステムへの転換を抑制し(Ikeda et al. 2007)、この効果はAP01発現量に依存する。また、生殖成長転換時に起こるメリステムサイズの急激な増加もAP01に依存する。これらから、AP01が、メリステムでの細胞増殖の制御を介して花メリステムへの相転換を抑制すると考え、解析を進めることにした。今年度は、RCN(イネTFL1)がAP01の下流で働き、メリステムでの細胞増殖を促進することを示した。また、RFL(イネFLORICA/LFY)がAP01と相互作用すること、AP01機能にはRFLが必須であることを確認した。AP01、RFLは生殖成長転換直後にSAM全体で発現を開始する。同様の発現パターンを示す遺伝子群に関する情報を得て、それらの機能解析を開始した。イネの花芽運命決定遺伝子を単離し、これがOsMADS34とよばれるSEPファミリー遺伝子をコードすることを明らかにした。LOGのSAM先端での発現に必要なシス配列は翻訳開始点より上流5kbまでには存在せず、翻訳開始点と第3イントロンの間に存在することを明らかにした。