著者
浅井 幸子
出版者
東京大学
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.307-316, 1998-03-26

The aim of this paper is to describe the thought process of Sukeo Sakurai (1887-1951) at a private experimental primary school "Ashiya-Jido-no-Mura" (1925-1938), forcusing on his pursuit of "Self". In Taisho liberal education the construction of "Self" in children was regarded as essential. But Sakurai attempted to reform education through pursuing for "Self" in himself as a teacher. Sakurai was a teacher at the elementary school attached to Nara women's higher normal school from 1917 to 1924,which was the main research center for developing "Learning Method". He criticized the proponents of the method on two grounds. First, after he lost his identity as a teacher at the school, he tried to reestablish it based on unmediated and emotional relationships with children. Second, he denied the existence of the generalizable truth in his pursuit for his inner truth. Sakurai established "Ashiya (Mikage)-Jido-no-Mura" in 1925 as a place where there was no oppression on "Self" of each child and teacher. Teachers came to the school to depict their own "Selves". Sakurai dreamed a utopia where people lived with perfect freedom, consolation, and happiness as in a playing park. But Sakurai's dream gradually became narcistic. With the shortage of funds, what "Ashiya-Jido-no-Mura" meant changed from a place as an utopia of "Self" to the stage where he performed a tragic hero. After closing the school in 1938,his pursuit for "Self" turned out to have stemmed from his narcistic love to "Mother", which supported and symbolized the nation "Japan".
著者
黒澤 耕介
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究では、天体衝突によって原始無生物地球上に生命前駆物質を供給する可能性について実験的に検証することを目的としている。先行研究から原始地球環境下では、天体衝突による生命前駆物質の合成効率は低く、生体関連分子までの化学進化を起こすのは難しいと考えられている。これは端的には、隕石中には窒素がほとんど含まれていないことが原因である。本研究では衝突天体物質に含まれる炭素と原始地球に豊富に存在したと考えられる窒素が効率よく反応する過程を提唱している。直径1km以下の天体が、低角度斜め衝突を起こした場合、衝突で粉砕された天体が下流側に飛び出し、周辺大気と激しく混合する。この過程は生命前駆物質として最重要物質であるシアノ化合物を効率よく生成できる可能性があるが、複雑な過程であるため、再現実験によるデータをもとにしたモデル化を行うことが求められている。今年度は、宇宙科学研究所の2段式軽ガス銃を利用し、再現実験を行う技術開発を行い、予備的な結果を取得した。従来加速銃を用いた実験では加速ガス、ガンデブリのために生成ガスの化学分析を行うことは困難であったが,これらの化学汚染を極力抑える手法を開発し、ガス分析を行う技術を確立することに成功した。弾丸,標的ともに酸素を含まないプラスチックを用いて、窒素中で衝突を起こした。最終的に生成された気体を簡易ガス検知管で分析したところ,およそ0.1%の蒸発炭素がシアノ化合物に変換されていることがわかった.シアノ化合物は生命起源に最も重要な役割を果たしたと考えられている。今後は実際の隕石試料を標的に用い、シアノ化合物の生成効率を計測する。またパラメータ依存性を調べることで現象のモデル化を行い、実際に原始地球表層環境での天体衝突によるシアノ化合物の合成量を推定していく。
著者
長濱 浩平
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

歯科矯正治療では、歯および骨の三次元的な形態・位置・方向を正確に把握することはきわめて重要であり治療結果に直結する。矯正歯科医の新しい目として歯および骨の位置情報をリアルタイム三次元ディスプレイで患者に重ね合わせて表示できれば、歯科矯正治療の操作性を著しく向上させると考えられる。本研究は、リアルタイム三次元ディスプレイを用いたコンピュータ・グラフィックスで作られた物体が現実に実在するかのように感じられる拡張現実感技術を矯正歯科領域に導入し、矯正歯科医が患者から目を離さず直接的に、三次元画像を患者に重ね合わせて立体的に視覚化できるシステムを開発し、未来の新しい治療環境を実現することが目的である。本研究では、立体画像表示システムを用いて歯の三次元拡張現実感表示に向けたシステムの構築を行った。CTや歯列を三次元スキャニングした画像データを収集し、高精度3Dプリンタを用いて歯・骨・歯肉を再現した実物大立体モデルを造形した。三次元画像を構築して客観的かつ定量的な予知性・安全性の高い治療計画を正確に実現するため、コンピュータシミュレーションにより最適設計を行なった。埋入矯正用アンカーインプラントの植立の際の埋入位置や方向の三次元的な位置関係を重畳提示してナビゲーションの精度を埋入目標と埋入位置の平均値と標準誤差を求め検証した。歯および骨を立体映像として実空間に立体表示し、空間的な位置関係を立体的に理解することが可能であった。
著者
岸岡 歩
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

恐怖条件付け学習では、音と電気ショックは視床の異なる核を経由してそれぞれ扁桃核に入力し、この領域で連合され、記憶として保持されるという単純な神経回路が考えられていた(Le Doux.2000,Annu.Rev.Neurosci.23:155-184)一方で、これまでの研究から線条体は弱い電気ショックを与えたときの恐怖条件付けに関与することが示唆された(Kishioka et al., 2009)。そこで本年度は、線条体と扁桃体の機能の違い、および両者の関係を明確にすることを目的とし、以下の検討をおこなった。(1)C57BL/6系統のマウスの扁桃体Lateral Amygdala(LA)の両側にMuscimol(MUS)を投与し、神経活動を抑制した。このマウスを用いて0.3mAの弱い刺激条件で恐怖条件付けを行ったところ、3時間後(STM)と24時間後(LTM)ではいずれも有意に学習が障害された。これにより、弱い刺激条件での恐怖条件付けの記憶獲得には扁桃体が関与することが明らかとなった。(2)次に、あらかじめ0.3mAの弱い刺激条件で条件付けをしたC57BL/6系統マウスの扁桃体LAの両側にMUSを投与することで神経活動を誘導し、扁桃体の長期記憶への寄与を検討した。3時間後のSTMと24時間後のLTMを計測した結果、いずれも有意に学習が障害された。これより、扁桃体の神経活動は学習後の記憶の固定の過程にも重要であることが示唆された。(3)さらに、線条体神経細胞除去マウスを用い、0.3mAで恐怖条件付けをおこない、24時間後の長期記憶のtestの前にMUSを両側の扁桃体LAに投与した。LTMを計測した結果、有意な差は見られなかった。続いて、このマウスの線条体をRU投与により除去したところ、RU投与群の学習は障害される傾向にあった。このことから、長期記憶の表出には扁桃体は関与しない一方で線条体は関与する可能性が示唆され、それぞれの部位の恐怖記憶への関与の違いが明らかになった。
著者
刈間 文俊 若林 正丈 村田 雄二郎 クリスティーン ラマール 生越 直樹 伊藤 徳也 代田 智明 瀬地山 角 高橋 満 古田 元夫 若林 正丈 黒住 真 代田 智明 深川 由紀子 生越 直樹 クリスティーン ラマール 高見澤 磨 楊 凱栄 谷垣 真理子 伊藤 徳也 瀬地山 角 田原 史起 有田 伸 岩月 純一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

中国では、漢字が、簡略化や教育によって、血肉化され、作家達も、前近代的なものを凝視し続けた.戦前の日中関係では、日本の漢学者と漢字紙が大きな役割を果たした.戦後韓国は、漢字を駆逐する一方、伝統的な同姓不婚制度を再構築させ、台湾は、漢字を簡略化せず、80 年代以降には、多文化主義的な社会統合理念を形成した.それに対して、中国大陸では今や、漢字文化からも消費文化からも疎遠な農村が、自律と国家による制御の間で揺れ動いている.本研究は以上を実証的に解明した.
著者
市原 美恵 ビダル バレリー
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

非ニュートン性流体中の連続的な気泡の上昇・破裂に伴う音波を調べる室内実験を行い,音波発生の時間間隔,波形,前兆信号,それらを支配する記憶効果やフィードバック機構を明らかにした.また,浅間火山に空振観測システムを設置し,研究機関中である2009年2月に発生した噴火,及び,その後の火口活動をとらえた.独自の計測方法や解析方法を試み,微弱な空気振動から火口活動の発生を検知できるようになった.
著者
ROBERT CAMPBELL (2010) CAMPBELL Robert (2009) FRALEIGH Matthew
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

幕末から明治初期にかけて漢詩文著作がいかなる意義を持ったか、具体的にどのように行われたかといった問題に照明を当てるために、成島柳北の詩文的な交流を中心に調べることにした。国立国会図書館の鶚軒文庫に所蔵されている柳北と交流を持った詩人の原稿を題材に、柳北との詩文上のつながりを明らかにした。周知のとおり柳北は、維新後にジャーナリズムという新しい分野で活躍したが、幕府の瓦解まで培った詩人のネットワークはいかなる変遷を辿ったかということを確認するのに、『朝野新聞』及び『花月新誌』の詩文を調べた。その調査によって明らかになったことをただいま発表にむけて執筆しているところである。また、柳北の代表的な作品である『柳橋新誌』及び『航西日乗』の英訳をまとめ、注釈をつけて出版することができた。この二つの作品をより広い文学史的な文脈に位置づけるために、『柳橋新誌』と同じ「繁昌記物」なるジャンルに入る松本萬年著作の『田舎繁昌記-文明餘誌』との比較を試みた。研究成果をアメリカのアジア研究協会のフィラデルフィアに行われた2010年の総会で発表した。また遊郭のことを漢詩文に取り入れた前例として、市河寛斎の『北里歌』が挙げられるが、中国及び日本における「竹枝詞」というジャンルの意義も含めて、祇園南海の『江南歌』など竹枝詞の前例との比較を試みた。その研究成果をアジア研究協会のホノルルに行われた2011年の総会で発表した。
著者
村上 健太郎
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

食環境データセット(店舗名と住所をもとに開発)と既存の女子学生のデータセット(約300の市区町村に居住する約1000人)を用いて、食環境と栄養素摂取量(24時間畜尿による)との関連を検討した。近隣に駄菓子屋/パン屋が多いひとほど、尿中カリウム排泄量が少なく、尿中ナトリウム・カリウム比が高かった。また、米屋が多いひとほど、カリウム排泄量が少なく、スーパー/食料品店が多いひとほど、カリウム排泄量が多かった。さらに、八百屋が多いひとほど、ナトリウム・カリウム比が低かった。
著者
宮崎 徹
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

小児の先天性代謝疾患で頻度が高いプロピオン酸血症(PA)は、Propionyl-CoA calboxylase (PCC)が欠損もしくは機能が低下する劣性遺伝病である。特定のアミノ酸・脂肪酸の代謝不全により中間代謝産物が蓄積するため、出生後ミルク摂取によりケトアシドーシスを呈し最悪の場合死に至る。PAの治療法は栄養制限療法が主であるが、低栄養による様々な副作用の併発などにより予後は必ずしも良くない。肝移植が一定の効果をあげているとはいえ、長期的予後の判定は今後の課題であり、患者にとっての侵襲は小さくない。私たちは、以前、新たな根治的治療法の開発としてPCCa鎖(PCCA)遺伝子をノックアウトすることにより、PAモデルマウスを確立した。さらに、このマウスの肝臓に正常の15%の酵素活性を戻すだけで症状が著しく改善することを証明した。この成果をもとに本申請研究では、非ウイルス性のナノ・ミセルを用い、患者胎児の肝臓にPCC遺伝子をデリバリーする胎児治療法を提案し、その効果と安全性についてモデルマウスを用いて実証を試みた。1.ナノ・ミセル型遺伝子ベクターの作製・最適化東京大学工学系研究科・片岡一則教授の協力のもと、まずは予備実験としてGFP遺伝子発現プラスミドDNAをポリエチレングリコールの外殻で被ったナノ・ミセルベクターの最適化を行った。2.GFP発現ベクターを用いた胎仔肝臓での発現に関する予備実験次に、妊娠メスマウスを麻酔下で腹側より子宮を露出し子宮壁を一部切開し、羊膜上血管からGFP発現ベクターDNAを封入したナノ・ミセルベクター溶液を注入した。注入後、経時的に肝臓を摘出し、組織標本を作製・観察したところ、導入したGFP遺伝子は注入後1日で発現が確認され、2週間以上持続した。本研究により、ナノ・ミセルベクターによる胎仔肝臓への遺伝子デリバリーとその遺伝子発現がマウスにおいて可能になった。今後は実際にPCC遺伝子をノックアウトマウスへ導入し、PA治療への効果を検証したい。
著者
範 国輝
出版者
東京大学
雑誌
本郷法政紀要
巻号頁・発行日
vol.2, pp.171-211, 1994-02
著者
大貫 隆 北川 東子 黒住 真 杉田 英明 増田 一夫 村田 雄二郎 網野 徹哉 安西 信一 安岡 治子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

ユダヤ、キリスト、イスラームの三大一神教を「アブラハム的伝統」と捉え、そこに内在する差異、および他の宗教との差異を、地域文化研究に特有な多元的視点でもって分析、理論化した。その作業によって、「文明の衝突」論に見られるような、文明(西洋)/野蛮(非西洋)という図式の看過や行きすぎを指摘、訂正するとともに、世俗性もしくは世俗化についても、社会のあり方に応じて多様な形態がありうることを示した。
著者
池田 昌之
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

中生代三畳-ジュラ系遠洋性層状チャートの層厚変動がミランコビッチサイクルと呼ばれる地球軌道要素変動に伴う日射量分布変動を反映した事を明らかにした(Ikeda et al., 2010a EPSL : 2010b ESF).今年度は,ミランコビッチサイクルが層状チャートの堆積リズムに反映されたメカニズムを解明するため,チャート・頁岩単層単位で連続的に元素分析を行い,層厚変動の要因を検討した.その結果,チャート層厚は生物源シリカの埋没速度を反映したことを明らかにした.さらに,層状チャート中の生物源シリカの全球的な堆積速度を推定した.その結果,現在の全海洋に堆積する生物源シリカの堆積速度と同程度から倍以上にも相当した.海洋に堆積する生物源シリカは溶存シリカの主要シンクであるため,この結果から,中生代以前においては層状チャートが海洋の溶存シリカの主要シンクであることを示した.一方,海洋の溶存シリカの主要ソースは陸域のケイ酸塩風化速度変動であるため,これが層状チャート中の生物源シリカの埋没速度の変動要因であった可能性を示唆した.天文学的周期におけるケイ酸塩風化速度変動は夏モンスーンに駆動されることが気候モデル(Kutzbuch,1994,2008)により示されている.これらのことから,天文学的周期における夏モンスーン強度変動でケイ酸塩風化速度が変動し,海洋への溶存シリカの供給量が変動した結果,層状チャートとして堆積する生物源シリカの埋没速度が変動し,層状チャートの堆積リズムが形成されたというモデルを提唱した.このモデルをペルム紀末大量絶滅からの回復過程にあたる下部-中部三畳系に適用した。その結果,前期三畳紀の生物源シリカの埋没速度は異常に高く,その後,中期三畳紀にかけて減少したことから,回復過程において陸域ケイ酸塩風化速度が徐々に弱まった可能性を示した.さらに,地層の周期を年代目盛としてサイクル層序を構築すると共に,長周期日射量変動と古環境変動,生物多様性変動との関連性の検討,およびその日射量変動の周期変調から太陽系惑星運動のカオス的挙動の意義について研究している.
著者
佐藤 竜一
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究は,渓流食物網における窒素(N),リン(P)フローを生態学的化学量論の観点から解明するため,様々な底生動物種について,1.食物資源の元素比とその変異,2.栄養素要求(NとPのどちらにより生存,成長,発育が影響されやすいか),3.発育段階及び食物条件による体組織元素比の可塑性,4.回帰する栄養塩の特性(NとPの回帰速度),さらに5.栄養塩添加に対する,落葉リター,微細有機物,藻類のN:P比変化,6.渓流における各発育段階の底生動物種についてのバイオマスの季節変化を明らかにすることを目的とする。渓流における底生動物(シュレッダー)について,食物資源である落葉リターの元素比が,樹種や分解過程によって異なり(目的1),体組織の元素比との比較から,シュレッダーはPよりもNに対する要求度が高いことが示唆された(目的2)。またN:P比の異なる落葉リターを用いた飼育実験から,シュレッダーの元素比可塑性は食物条件よりも発育段階によるところが大きく(目的3),Pの回帰速度はその要求度が規定している可能性が示された(目的4)。さらに,栄養塩の添加によって落葉リターのN:P比,特にP含有率は変化した(目的5)。渓流食物網のエネルギー源として落葉リターが支配的であることから,シュレッダーから他の摂食機能群へのPフローの重要性が示唆されたため,本年度は目的6の達成とともに,シュレッダーについての追加実験を行うことでサンプル数を増やすこと,他の底生動物(コレクター,グレイザー)のそれぞれ数種についてもシュレッダーと同様に栄養素要求の特性について明らかにすることを目的とした。しかしながら,記録的な豪雨による調査地河川の大出水などにより底生動物群集が大きな攪乱を受けた影響で,これらの目的は十分に達成できなかった。
著者
井上 健 菅原 克也 杉田 英明 今橋 映子 モートン リース 劉 岸偉
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

近代東アジアにおいて異文化はいかに受容され、各文化圏の相互影響のもといかなる近代的諸概念や訳語を生み出していったのか。こうした問題意識に立脚して、まずは、近代日本における訳語の成立、近代的諸概念の成立に焦点をあて、調査、考察を試みた。近代日本の翻訳文学を戦前と戦後の連続と非連続の相においてとらえることによって、あるいは、日中、日韓の文化交流の諸相を具体的に辿ることによって、こうした視座の有効性が確認できた。
著者
齋 治男
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

研究実施に際しては、まず安全作業を行うための非接触駆動機構の試作・確認を行った。ミーリングによる穴あけおよび切削において、手動送りによる加工を行い脱調による危険回避が出来るか確認を行った。結果として、過負荷や送り速度超過でネオジウム磁石の駆動トルクを超えた時に脱調(空回り)し、過度な切り込みや工具破損を防げることが判った。脱調のタイミングは駆動側と従動側の駆動磁石の間隔を調整することで変動できる。しかし、常に同じトルクや送り速度で脱調が起きるようにすることは難しかった。そこで、非接触駆動機構と数値制御駆動を併用することで、確実な危険回避と加工精度の向上を目指した。駆動用モータ軸と回転工具ツール軸に磁石を取り付け非接触駆動機構とし、数値制御加工機(マシニングセンタ)の主軸に取り付け加工を行った。手動加工と同様に、危険回避には有効であるが、磁石駆動トルク内でも脱調が起きる場合があり、特に切削加工では送りを速くすると目的位置到達前に脱調が起き切削効率が悪化した。次に、旋盤工具台に非接触駆動機構を取り付け、リュータ型の回転装置による工具回転で切削(ドリリング)研削・放電加工を試みた。旋削加工での表面改質および仕上げ加工を同一機械上で実現出来・特に砥石割れ事故の回避に有効と考える。今後は、加工効率・加工精度をいかに向上させるかが課題である。
著者
阿部 敏秀
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

本研究では、臨床において重症患者に連続投与されることが多い14通りの組み合わせの抗菌剤を対象に、配合変化の結果生じうる微粒子(1.3-100μm)を光遮蔽型自動微粒子測定装置パーティクルカウンターを用いて定量的に評価し、より安全かつ効率的な薬物療法を行うための情報を得ることを目的として検討を行った。配合変化試験の前に行った単独の注射薬における微粒子測定では、凍結乾燥製剤で用事溶解するファンガード^<[○!R]>やクラフォラン^<[○!R]>などの製剤は溶解時の微粒子数が多い傾向が認められ、特にファンガードは第15改正日本薬局方の基準(1mL当たり10μm以上のもの25個以下、25μm以上のもの3個以下)を上回る場合があった。一方、ダラシン^<[○!R]>やビクロックス^<[○!R]>のような液状アンプル製剤の場合には、注射液中の微粒子は少ない傾向が認められた。次に抗菌薬同士を混合する配合変化試験では、抗菌薬の14組の組み合わせのうちバンコマイシン^<[○!R]>とファンガード^<[○!R]>では配合直後より微粒子の増加が認められ、連続投与によってルート内で白濁などが生じることが示唆された。バンコマイシンとファンガード以外の組み合わせでは、配合変化に関する各書籍に混合に関する注意事項が記載されていても、20分までは微粒子レベルでも配合変化が生じていないことがわかった。今回の配合試験の結果と書籍の情報の相違の原因は、書籍の配合変化情報は薬剤の濃厚溶液を用いた配合変化試験を元にしているためであることから、輸液に希釈して連続投与する場合にはがない場合が多いことが示唆された。従って、配合変化に関する各書籍の情報から連続投与時のルート内での安定性を予測することには限界があり、臨床において使用される濃度を用いた微粒子測定などの個々の配合変化情報の構築が必要であると考えられた。
著者
金子 知適
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

大量の経験的データから学習した知識を利用する効率的な探索技術の研究を行った.探索においては対象の知識を活用することで効率が向上することが知られている.本研究により棋譜に残された人間の判断履歴から,80万次元以上のパラメータを調整し計算機が活用可能な知識とすることが可能となった.研究成果を将棋プログラムへと応用したところ,現時点で最も強いコンピュータプログラムを作成することができた.このことは本研究の有用性を示していると考えられる.
著者
吉田 英人 寺澤 敏夫 中村 卓司 吉川 一朗 宮本 英明 臼居 隆志 矢口 徳之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、送信点と異なる場所に多数の受信点を配置し(多地点観測法)、流星が流れたときその飛跡に沿って生じるプラズマで反射した電波(流星エコーと呼ぶ)を、複数の地点で受信して、その到達時間差と送信点-反射点-受信点の距離を同時に測定することにより、精密な流星飛跡を求める観測装置を開発した。この教材は携帯性に優れ、流星の諸パラメータを求めることができ、超高層大気と極微小天体の関係を身近に感じることができる実習教材である。
著者
有川 正俊 相良 毅
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2003

位置をキーとして検索されるべきコンイテンツが質・量ともに不十分であることが問題となっている.そこで,われわれはこのような位置をキーとして管理される情報を「空間コンテンツ」と呼び,各種情報源から空間コンテンツを獲得・管理する手法の開発を行った.本研究では,(1)Web文書と(2)映像を対象に,位置情報を利用したコンテンツの獲得・抽出・管理・統合・提供の手法およびプロトタイプシステムを開発した.以下では,2つの課題の成果をそれぞれ説明する.1.Web文書からの空間コンテンツ獲得手法[目的]・特定の地域・特定の業種に関するページを短時間で収集する・収集したページから,エラー・情報の少ないものをできる限り除去する[開発した手法]・タウンページの店名・電話番号・住所をキーワードとして利用した検索精度の向上・後処理で住所一致を確認し,同名他店を除去・複数の店舗情報が含まれるページのブロック分割・揚所とキーワードによる検索システムを開発・一致度・ブロックに含まれる文字数による順位付け2.高精度な空間情報付き写真データの管理手法[目的]・空間メタデータを持つ写真データ(空間情報付き写真)の管理手法の体系化[開発した手法]・写真データが3次元実空間から切り取るボリューム(Field of View)を決定するパラメータ(視点,撮影方向,画角)を空間メタデータとて付与し,各過程(空間索引/検索手順/ユーザインタフェース)において適切な形状で扱う枠組みの開発・ある位置を見る写真/ある位置から見る写真/今見ている位置を横から見る写真,等の検索機能・各場所がどれだけ多くの写真に写されているのかという密度の視覚化機能・3次元位置情報を持った文字情報(店舗名や建物名等)の写真上への動的な重ね合わせ機能・空間メタデータを持たない写真と地図上とで対応する数点をクリックすることで,空間メタデータ(視点と撮影方向)を作成するツールの実装